呪術廻戦ー呪いを斬るー   作:先導

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賢者

俺は親父を尊敬していた。尊敬していたんだよ。

 

『納得できません父上!!手腕も血筋も父上の方が加茂家に相応しいはずだ!!それなのになぜ父上が分家に身を置かねばならぬのですか!!』

 

『・・・私が加茂家相伝の『赤血操術』を受け継がれなかったからであろう』

 

『本家は血筋よりも術式を取るというのか!!ふざけやがって!!』

 

本家が必要としているのは血筋も濃く赤血操術を会得した後継者だ。それは理解できる。理屈はわかるが筋が通らねぇ。だから納得できねぇんだ。

 

『清孝。私は加茂家のためにできうる最善を尽くすつもりだ。このような立場でも、意味があるはずだ。お前はこのような父を持ってしまった。許せよ、清孝』

 

『・・・いえ。ご立派です、父上』

 

俺は親父を信じてた。だから分家にだって意味があるって信じたかった。

 

だが意味なんてなかった。だから親父は変わっちまった。俺が尊敬していた親父はもうどこにいない。俺は加茂家の全てに失望した。

 

だから俺が加茂家を正しく変え、俺をコケにしてきた加茂家の連中に復讐してやる!自分たちが招いたことを一生後悔させてやる!

 

だからこそ・・・俺は加茂家の人間として、振る舞い続けなければいけないんだ。

 

 

交流会1日目、団体戦チキチキ呪霊討伐猛レース。森の中で清孝と交戦する(たつみ)は彼が放った白虎斧・左刃に追いかけられている。迫る白虎斧・左刃は途端に推進力が上がり、(たつみ)に迫る。それに感づいた(たつみ)は跳躍して木の枝の上に飛び移って回避する。白虎斧・左刃は地面を抉りつつも軌道を変え、木の上に乗った(たつみ)にもう1度迫る。(たつみ)は後退して白虎斧・左刃は躱し、別の木の枝に着地する。その際に、自分を追いかけてきた清孝に目線を向ける。

 

(追いかけてくるなら自滅狙いで突っ込んで当てる。前の俺のならそう考えてた。けど慌てるな・・・兄貴が言ってたろ)

 

(たつみ)は山で特訓していた際に、ブラートの助言を思い出す。

 

『得物が追いかけて来る時、術師本人はカウンター狙いで待ち構えてくる時がある。それは相手の必勝形態。そこにホイホイ突っ込んでいったら、相手の思う壺だ』

 

(これは今まさにそれだ!ならどうすればいい?簡単だ!)

 

(たつみ)は別に木に飛び移り、迫ってきた白虎斧・左刃を避ける。さらに、白虎斧・左刃が迫る前に、(たつみ)は別の木に飛び移る。

 

(相手の予測を超えた動きを作ればいい!)

 

木の枝に飛び移り、また別の木の枝に飛び移る。(たつみ)は変則的な動きでこれを繰り返し、清孝が目で追えないような状況を作り上げた。白虎斧・左刃は(たつみ)の動きについていけず、右往左往している。

 

(クソッ!目で追えねぇ!呪力がねぇから動きも読み辛ぇ!だが勘頼りじゃねぇ。1年が持ってる呪具の呪力!そっちの方を追えばいい!・・・にしても・・・速すぎんだろ!)

 

目で追うことができないなら青龍刀の呪力を頼りに、清孝は白虎斧・右刃を投擲する。2つ合わさった白虎斧は交差するように回転し、大きな竜巻を作り出した。

 

「白虎演舞!!」

 

竜巻は清孝の周りを踊るように周りの木をなぎ倒して1周、2週、3週と往復する。竜巻が何週か回っていると、清孝は竜巻の中から青龍刀の呪力が感じ取れた。

 

「捕まえたぞゴラァ!!もう逃げられねぇぞ!!」

 

白虎斧・双刃は竜巻を維持したまま、青龍刀の呪力に向かって突進し、攻撃が直撃した。同時に、竜巻が霧散した。しかし、霧散した竜巻の中心部には(たつみ)の姿はなく、あるのは彼が持っていた青龍刀だけであった。

 

「!!?い、いねぇ!!」

 

「待ってたぜこの瞬間を!!!」

 

「なっ!!」

 

清孝が驚いていると、背後から丸腰の(たつみ)が清孝に向かって猛接近している。

 

(こ、こいつ・・・呪具をわざと竜巻に放り込んで・・!!?)

 

そう、(たつみ)は変則的な動きをしている中で呪力が纏っている青龍刀をわざと竜巻の中に放り込んで、清孝のそちらに気を逸らした隙に彼の背後に回ったのだ。白虎斧を回収しようにも間に合わない。

 

「俺たちの仲間を殺してまで成し遂げたい事情なんて知ったこっちゃねぇ!!!俺は俺が正しいって思ったことをやるだけだ!!お前だっていろいろ大変なんだろうがこれだけはハッキリ言ってやる!!お前のやってることに、意味なんてねぇんだよ!!!!」

 

(たつみ)は足に力を込め、推進力を維持したまま跳躍し、清孝にドロップキックをかました。避けられず、まともにドロップキックをくらった清孝は大きく吹っ飛ばされて森を抜け、その先にあった湖と衝突した。

 

「ぐっ・・・おぇ・・・クソがぁ・・・!」

 

湖の中に入った清孝は口に含んだ水を吐き、起き上がろうとする。すると大嫌いな父の姿が頭によぎり、清孝は目を見開く。

 

「俺は!!!」

 

「とどめだぁ!!」

 

青龍刀を回収した(たつみ)はとどめをさそうと湖の中に入り、清孝に接近する。しかし・・・

 

ドゴォ!!!

 

「ぐぁ・・・⁉」

 

突如として湖の水が弾丸のように動き出し、(たつみ)の背中に打撃を与えた。突然のダメージに(たつみ)はよろめく。

 

「水分子操術」

 

清孝が一言呟くと、湖の水は途端に大きな水飛沫をあげ、複数の水柱となる。これは清孝の術式によるものだ。

 

「こんなところ倒れてたまるかよ、クソがぁ!!!」

 

水をまるで生き物のように操り、意のままに動かすことができる術式・・・それが、加茂家相伝の術式の1つ、水分子操術である。

 

「水塊弾!!!!」

 

水柱は清孝の意思に従うかのように、(たつみ)に攻撃を仕掛ける。

 

「しゃらくせぇ!!!!」

 

迫ってきた水柱を(たつみ)は青龍刀で真っ二つに切り裂いた。(たつみ)と清孝の激闘は、まだまだ続く。

 

 

一方の高専が保有する屋敷の中。廊下を駆け巡る恵に呪力が纏った数本の矢が迫る。恵はまるで意思を持ったかのように動く矢を避けていく。だが矢はまだ残っており、恵は体を後ろに振り返って矢を躱し、障害物に矢を突っ込ませたりして着実に避ける。これらの矢は憲紀が放ったものだ。

 

憲紀はさらに矢を放つ。矢は軌道を変え、階段の下にいる恵まで迫る。恵は慌てずトンファーで矢を叩き折る。しかし全ては捌ききれず、矢は恵の背後に回っている。背後から矢が迫ろうとした時、恵のそばにいた式神、不知井底が舌を伸ばし、矢を受け止める。恵はトンファーで矢を叩き折る。すると、矢尻についていた血が壁についた。

 

(矢尻に少量の血・・・やっぱ物理法則なしの軌道は加茂さんの術式か)

 

憲紀の術式について考察する恵に憲紀は彼に話しかける。

 

「同時にもう1種式神を出せるだろ?出し惜しみされるのはあまり気分がよくないね」

 

(玉犬が仕事中だっつーの)

 

偵察している玉犬がすでに召喚されているのだが、それを悟られないように恵は口を開く。

 

「加茂さんこそ矢ラス1でしょ。貧血で倒れても助けませんよ」

 

恵は憲紀が使用する術式について、ある程度の知識を持っている。

 

(赤血操術・・・自身の血とそれが付着したものを操る。血筋大好き御三家らしい術式だな)

 

「心配いらないよ。これらは全て事前に用意したものだ」

 

憲紀も恵が使う術式についての知識を持っている。なぜなら、恵の使う術式もその御三家の1つ、禪院家相伝の術式だからだ。

 

十種影法術(とくさのかげぼうじゅつ)・・・禪院家相伝の術式の1つ。影を媒介とした十種の式神術。真希や真衣にこれが遺っていればね・・・)

 

憲紀は最後の矢を恵の頭上の天井に向けて放ち、天井を破壊する。天井の破片が目くらましとなり、恵の前方の視界が一瞬遮った。視界が晴れるとすぐ目の前には憲紀が迫っており、恵はトンファーで咄嗟に防御を試みる。憲紀は防御態勢を取った恵に拳の打撃を放ち、彼を軽く吹っ飛ばした。

 

(こんなパワーあったかこの人・・・?)

 

「よく反応したね・・・気を抜くなよ」

 

恵が憲紀のパワーに疑問を浮かべていると、彼の右目周りに血の独特な紋様が現れ出た。すると憲紀は瞬間移動したかのように素早く動き、恵の側面に立ち、掌底を放ち、壁に叩きつけた。咄嗟に防御したためさほどダメージは入っていないが、この衝撃でトンファーが壊れてしまう。

 

(呪力で守るの遅れた。スピードもパワーもさっきまでとはまるで別人・・・)

 

憲紀の急なパワーアップは彼の術式によって得た物だ。

 

血を操るということは、形状や運動だけではない。体温、脈拍、赤血球量などの血中成分まで自由自在。

 

「赤燐躍動」

 

「ドーピングか!」

 

「よく気づいた。だが俗な言い方はやめてほしいね」

 

矢がなくなったからといって、戦いが有利になったというわけではない。むしろここからが本番であると考えた方がいいだろう。

 

 

カァー、カァー

 

(かーたなー、とーられちゃったーよ~・・・)

 

一方その頃森の中、刀を取られた三輪は呆然と立っていた。

 

(真衣のお姉ちゃん、どっか行っちゃった・・・。あの人足速いんだもん。まぁ、刀のない私は戦力にならないから正しい判断だ。・・・タピオカっていうほどおいしいか・・・?)

 

交流会とは関係ないことを考えていると、彼女の携帯から着信が届いた。

 

(メカ丸だ)

 

着信の相手はメカ丸であるとわかり、三輪は無防備にも通話に出てしまう。

 

「はい、役立たず三輪です」

 

眠れ

 

電話から聞こえてきた声はメカ丸のものではなかった。三輪は電話から聞こえてきた声によって、途端に眠気が襲い、そのまま寝てしまった。

 

京都姉妹交流会 団体戦

 

三輪霞ーリタイア

 

 

先ほどメカ丸のスマホを通して三輪に電話をかけていたのは棘であった。棘はメカ丸のスマホを利用して呪言を放ったことで彼女を眠らせたのだ。棘は通話を切り、メカ丸の手を放り投げて近くにいた玉犬を撫でる。

 

戻れ

 

玉犬は棘の呪言に従うかのように影に戻った。棘がその場を離れようとすると・・・

 

ヒュンヒュンヒュン・・・ビシィ!!!

 

「!!!」

 

糸が棘に纏わりつき、棘を拘束する。

 

「おっと振り向くなよ?余計に糸が食い込むぜ?」

 

「・・・すじこ・・・」

 

「呪言を放つ前に潰せか・・・確かに清孝の言うことも一理あるな」

 

棘を拘束した張本人、ラバックは棘の背後から現れて、ゆっくりと近づいていく。

 

「お前がいるとさ、こっちが不利になんだよ。悪いけど大人しく寝ててよ」

 

「・・・おかか・・・!」

 

ラバックが糸で棘を気絶させようと糸を操ろうとすると・・・

 

ズズズズ・・・

 

「「!!!」」

 

突如として近くに不穏な気配を感じ取り、2人は視線をそちら側に向けた。

 

 

高専の作戦室、教師陣営たちはモニターで三輪が寝てしまった姿を目撃した。

 

「あーあ、寝ちゃった・・・」

 

「私、ちょっと行ってくるよ」

 

「え?」

 

「呪霊がウロチョロしてる森に寝てる生徒を放置できないでしょ?」

 

チェルシーは生徒の身の安全のために森の中に入ろうと行動に移そうとする。モニターの様子を見て楽厳寺は交流会が始まる前のことを思い返す。

 

 

交流会が始まる数分前のこと。楽厳寺は憲紀を連れて、交流会に使用する呪霊を見せる。その呪霊は落ち武者のような顔をした蛇のように長い体を縛られている。

 

「これは?」

 

「エリアに放つ準1級呪霊」

 

「放つのは2級呪霊では?」

 

「2級では心許ないのでな」

 

どうやら楽厳寺は予定を変更して悠仁を殺すために手懐けておいた準1級呪霊を放つようだ。

 

「うちはまとまりないからのぉ」

 

楽厳寺は憲紀は何かの液体が入った小瓶を渡す。

 

「こいつの躾に使った匂いと笛じゃ。場合によってはうまく使って虎杖を殺せ」

 

「使う前に狩られてしまうかもしれませんよ」

 

「安心せい。笛が鳴るまで大人しくするよう躾けてある」

 

憲紀は楽厳寺の指示に了承し、臭いの小瓶と笛を受け取るのであった。

 

 

交流会に準1級呪霊が使われてると知っているのは楽厳寺と憲紀のみ。生徒はおろか、教師陣営、夜蛾もこのことを知らない。

 

(加茂憲紀のことだ。映像が切れた時の接触で虎杖に匂いはつけてあるじゃろう。あやつの血を混ぜておけば容易なこと。東堂と戦っているのであればただでは済まん。その後のタイミングで準1級呪霊に襲われたなら・・・まず、死ぬ)

 

算段は完璧であるものだと思い、楽厳寺は不敵な笑みを浮かべている。

 

「そうさの。三輪が心配じゃ。早う行ってやれ」

 

楽厳寺はこのような思惑を隠して、生徒の保護の駆り出しを許可するのであった。

 

 

森の中、不穏な気配を感じ取り、ラバックは棘の拘束を維持したまま、身構える。

 

ズシン・・・ズシン・・・

 

「本命の呪霊・・・だよな・・・?」

 

「・・・昆布・・・」

 

森に、不穏な足音が鳴っている。そしてその音は、こちらに近づいている。ラバックが身構えていると、木の奥から呪霊の顔が現れ出た。

 

「「!!」」

 

その呪霊は楽厳寺が放った準1級呪霊であった。だが・・・不穏な気配はこの呪霊からではない。

 

【・・・・・・】グリンッ

 

準1級呪霊は突如として白目を向き、木から飛び出した。だが出てきたのは顔だけ。長い体は千切られていた。ラバックは棘の拘束を解除し、棘はいつでも呪言が放てるように制服のチャックに手を伸ばす。しばらくすると・・・その不穏の正体が現れ出た。

 

筋骨隆々で布のようなもので片腕を封じ、そして両目の位置する箇所に2つ木が備わっている。そう・・・特級呪霊の1体、花御である。

 

「ーーーーーーー」

 

「どう見ても2級・・・じゃないよね・・・」

 

「シャケいくら。明太子」

 

突如として現れた特級呪霊花御にラバックと棘は身構えた。

 

 

高専の敷地内にある屋敷の屋根。この屋根に人影が3つある。

 

1人は至る所にツギハギがある人型呪霊真人。

 

1人は額に目玉のような装飾を付けたコートを着込んだ大男。

 

1人は職人エプロンを着込んだスキンヘッドの男。

 

真人の隣にいるこの2人は傑と協力関係にある呪詛師である。

 

「さて、俺らも仕事を始めよう」

 

「今日は何人斬れるかなぁ。愉快愉快」

 

「ハンガーラックを作ろう・・・五条悟は190あるんだろ?い~いハンガーラックが作れる」

 

交流会は特級呪霊と呪詛師の侵入によって、予期せぬ事態が起こり始めようとしている。

 

 

湖の上での戦闘、(たつみ)は清孝が操る水柱を1つ、また1つと次々と青龍刀で切り裂いていく。だがいくら斬ってもあれらは水。ここは湖の上。清孝の武器である水が尽きることはまずない。

 

「あいつは⁉」

 

(たつみ)が辺りを見回すと、湖から突如として水でできた巨大な虎の顔が出現する。清孝はその水の虎の上にいる。

 

「で、でけぇ!!」

 

「水圧で潰れろ!!!1年!!!!」

 

清孝が高く跳躍すると、水の虎は大きな口を開けて(たつみ)を飲み込もうとする。

 

「水獣牙!!!」

 

水の虎は大きな口を閉じ、(たつみ)を飲み込んだ。すると、水の虎の顔に切れ目が現れ、それに沿って水の虎は(たつみ)の青龍刀によって真っ二つに一刀両断される。しかし、(たつみ)が水の虎を斬ったと同時に、清孝はすでに彼の側面に移動していた。

 

(なっ!!速・・・)

 

(たつみ)が気づいた時はもう遅かった。清孝は(たつみ)の腹部に拳を叩きつけ、上空に吹き飛ばす。

 

(がっ・・・!スピードもパワーも最初とは全然違う!・・・水・・・⁉)

 

宙に浮く(たつみ)は湖の水を見て、清孝のこれまでの怪力の正体に気がついた。

 

(気づいたか1年。水を操るというのは何も目に見える水だけってわけじゃねぇ。人間の水分量は成人でも60%含まれている。自身の水分の形状だって、思うがままだ。これが、水鱗躍動)

 

そう、清孝のこれまでの怪力は水鱗躍動で自身の水分を操作して繰り出していたのだ。

 

「1年、てめぇは俺のやってることに意味がねぇって言ったな。ああそうさ!!その通りだ!!!だがな、それが筋を通さねぇ理由にはなんねぇんだよ!!!」

 

清孝は湖の水を操り、濁流の槍を(たつみ)に放った。

 

「濁流槍!!!」

 

空中では避けることがままならず、(たつみ)はまともに濁流槍の水圧に押し潰されそうになるが、彼は全力で耐える。

 

「水かけられて沈むほど・・・俺のハートはやわじゃねぇ!!!」

 

「御三家の1つ加茂家が最も求めているのは、加茂の血を継いだ赤血操術が使える後継者だ。それ以外の奴は落伍者から人生をスタートさせられる。俺も親父もそうだった。わかるか?俺の存在は加茂家にとって意味なんてねぇんだ。加茂の血を最も濃く継いだこの俺がだ!!!」

 

加茂家の内情によって翻弄され続け、怒りに燃える清孝は湖の水で、複数体の水の虎を作り上げる。

 

「加茂として振る舞い続け、加茂家を正しく変える。それが俺の奴らへの復讐だ。筋を正しく通すためにも・・・俺はここで、負けるわけにはいかねぇんだよ!!!!!」

 

加茂家の復讐を誓っている清孝は呪力を解放し、全ての水の虎を(たつみ)に向けて解き放った。

 

「怒涛の水獣王!!!」

 

襲い掛かる水の虎の水圧と濁流に(たつみ)は飲み込まれていく。(たつみ)を飲み込んだ水の中より、青龍刀が回転しながら飛び出し、湖の地に突き刺さった。

 

「勝負ありだな」

 

これを見た清孝は勝負ありだと確信し、湖から上がろうとする。すると・・・

 

「そういうセリフはよぉ!!!」

 

「!!」

 

「ちゃんと確認してから言いやがれぇ!!!」

 

バキィ!!

 

「ぐお!!」

 

霧散した水の中から(たつみ)が飛び出し、勢いを乗せた拳を清孝に叩き込んだ。

 

(こいつ・・・耐えやがった・・・!!)

 

大技を出して耐え抜いた(たつみ)の頑丈さに清孝は驚愕する。そんな彼の耳の穴から血が出ていることを(たつみ)は見逃さなかった。

 

(耳の穴に血!大技の連発で身体がボロボロになったのか!なら、もうあの怪力は出せねぇだろ!)

 

(たつみ)は今が好機だと思い、清孝に連続で殴り、清孝にダメージを与える。

 

「舐めんなぁ!!!」

 

だがそれでも清孝は負けじと(たつみ)の腹部に拳を叩き込んだ。(たつみ)の思惑通り、あの怪力はもう出せないようだが、それでも力は十分に強い。

 

(こいつ素でこれかよ!!けど、負けるか!!)

 

強烈な一発をくらった(たつみ)はお返しと言わんばかりに清孝に腹部に拳を叩き込んだ。清孝は痛みを堪え、(たつみ)を殴り、(たつみ)もまた殴り返す。もうここからは呪術も何も関係ない。互いの意地をぶつけ合ったただの殴り合いだ。そんな中で2人の顔は、とても生き生きしていた。

 

「どうしたぁ!!それで終わりかよ!!」

 

「るせぇ!!勝つのは俺だぁ!!」

 

(たつみ)と清孝は互いに拳に力を乗せ、拳を放った。拳と拳は互いにすれ違い、お互いの頬に直撃した。そんな中でも2人は好戦的に笑っている。2人の殴り合いは、まだまだ続く。

 

 

一方の屋敷での戦闘、恵と戦闘を繰り広げている憲紀は自分が呪術師として、加茂家として振る舞う理由を思い返していた。

 

『何で皆、母様を虐めるのですか?』

 

『爛れた側妻だからよ』

 

『では何故私を贔屓する?何故嫡男と偽り迎えた!!』

 

『正室が術式を継いだ男児を産めなかったからよ』

 

(ならば、加茂家次代当主として・・・)

 

互いに間合いを取り、先に動いたのは憲紀だ。憲紀が放つ打撃を恵はまだ壊れていないトンファーで受け流しつつも、憲紀が着地したタイミングでトンファーを振るう。憲紀は屈んでその一撃を躱し、さらに続くトンファーの連撃を防御し、最後に振るった攻撃を受け流し、掌底を放つ。恵は咄嗟にトンファーで防御したため、後退る程度で済んだが、トンファーは完全に折れて壊れてしまった。

 

「近接戦でここまで立ち回れる式神使いは貴重だよ。成長したね。嬉しいよ」

 

「ちょいちょい出してくる仲間意識なんなんですか?」

 

共感(シンパシー)さ。君はゆくゆく、御三家を支える人間になる」

 

憲紀は恵に共感性を抱きつつ、自身の本心を打ち明ける。

 

「私は虎杖悠仁を殺すつもりだ」

 

「楽厳寺学長の指示ですか?」

 

「いや、私個人の判断だ。それが御三家・・・加茂家の人間として正しい判断だと思っている」

 

憲紀は次代当主として、加茂家としての振る舞いを示し続けなければならない。だがそれは、御三家のためではない。

 

(私は加茂家嫡男として振る舞わねばならない・・・母様のために)

 

自身を産み、愛情を注いでくれた母のためにも、加茂家の嫡男としての示しを証明するためにも、悠仁の暗殺は必要なことだと彼は考えている。

 

「君にも理解できるはずだ。君と私は同類だ」

 

「違います」

 

憲紀の発言に対し、恵はきっぱりと否定する。

 

(急に怖いこと言い出したな・・・)

 

「・・・違くない」

 

「違います。そういう話は真希さんにしてください。俺にもう、禪院家との繋がりはありませんよ。それに俺は自分のこと正しいだなんて思ってないです。・・・いや、すみません。違いますね。俺は自分が正しいとか間違ってるとかどうでもいいんです」

 

恵の脳裏に浮かび上がってくるのは、恵にとって唯一肉親だと言える女性の優しい笑顔であった。

 

「ただ俺は、自分の良心を信じてる。自分の良心に従って人を助ける。それを否定されたら、後は・・・もう呪い合うしか、ないですよね?

 

恵は自身の身体から湧き上がる呪力を解放する。すると、憲紀の背後より不知井底が襖を壊して現れる。

 

(!式神!まだ残っていたのか!)

 

憲紀は振り返り、不知井底を組み倒そうとする。直後、不知井底は溶けるように影に戻っていった。

 

(!解除前の式神を囮に使ったのか!)

 

「これは呪力食うので単体でしか使えないんです。最近調伏したばかりなので」

 

不知井底が囮だとわかったところでもう遅い。恵は新たな式神の召喚の体制に入っている。新たに造り上げた手影絵は象。

 

「満象」

 

象の手影を作り上げ、恵の影の中から象の式神、満象が現れる。

 

(的が大きい!先手を取る!)

 

憲紀が先手を取ろうと動き出した時、満象は頬を大きく膨らませ、長い鼻より大量の水を噴出した。

 

「水⁉」

 

流れが速い水の圧と量によって屋敷の壁は破壊され、憲紀は押し流されて外に放り出される。

 

(圧と量で押し流された⁉広い場所はまずい!あれが来る!)

 

「鵺!」

 

恵は満象を解除し、鳥の手影を作って鵺を召喚する。鵺は帯電を帯びた翼を纏い、憲紀に突進してダメージを与える。

 

「・・・っ!!」

 

水によって感電する憲紀の脳裏に浮かぶは、幼き自分を優しく抱きしめた母の姿だ。

 

『私がいると、憲紀の邪魔になるから・・・!』

 

「私は!!!!」

 

憲紀は懐から補血袋を取り出し、鵺に向けて投げ放ち、中に入っている血を操る。

 

「赤血操術―――『赤縛』!!!」

 

補血袋の血は縄を形作り、鵺を縛り上げて地に落とした。

 

「負けるわけには、いかないのだぁ!!!!」

 

鵺を解除し、近接戦闘を持ち込もうとする恵に憲紀が迎え撃とうとする時だった。

 

ドオオオオオオオオン!!!!

 

屋敷外より巨大な木の根が飛び出してきて、2人に迫ろうとしている。

 

「なんだこれは!!?」

 

予定外のアクシデントに憲紀は困惑している。すると2人は屋根の上に上って迫ってくる根から逃げているラバックと棘に気付いた。

 

「!ラバック!」

 

「狗巻先輩!」

 

「ぼーっとすんな!!」

 

逃げろ!!!!

 

棘は2人に呪言を放ち、逃げるように指示を出した。呪言を聞いた2人は迫りくる巨大な根から走って逃げだした。

 

 

ボウッ!!!

 

作戦室にも変化が起きた。壁際に貼ってあった呪符が一斉に全て赤色の炎に包まれ、燃え尽きた。異例の事態に教師陣営は反応する。

 

「え・・・ゲーム終了・・・?しかも全部赤色・・・」

 

「妙だな。カラスたちが何も見ていない」

 

「グレートティーチャーゴジョーの生徒たちが祓ったって言いたいとこだけど・・・」

 

「未登録の呪力でも札は赤く燃える」

 

「外部の人間・・・侵入者ということですか?」

 

モニターを映すカラスがボス呪霊を祓った姿を見ていない、一斉に燃える呪符、そして全て赤色の炎で燃えた。これらのことを踏まえると、高専に侵入者が現れた可能性が高いという答えに行きつく。

 

「天元様の結界が機能してないってことかな?」

 

「外部であろうと内部であろうと、不測の事態に変わりあるまい」

 

用意した準1級呪霊が祓われたという予想外の事態に楽厳寺は呪霊を祓った術師について考察する。

 

(あれを祓ったとなるとそれなりの手練れ・・・何者だ?)

 

不測の事態に夜蛾は立ち上がり、悟と赤女(あかめ)、冥冥に指示を出す。

 

「俺は天元様の所に。悟と赤女(あかめ)は楽厳寺学長と学生の保護を。冥はここでエリア内の学生の位置を特定、悟たちに逐一報告してくれ」

 

「委細承知。賞与、期待してますよ」

 

夜蛾の指示を受けた悟たちはさっそく行動に移す。

 

「ほらお爺ちゃん、散歩の時間ですよ。昼ご飯はさっき食べたでしょ」

 

「急ぎましょう」

 

悟はこんな時でも楽厳寺を煽っているが、全員それを無視して学生の保護のために作戦室から退室していった。

 

 

ドオオオオン!!!

 

凄まじい衝撃音が聞こえてきた時、高専の敷地内に侵入した額に目玉の装飾を付けた金髪のコートの呪詛師は何か杭のようなものを打ち付けている。

 

「んー・・・混沌の匂いがするねぇ・・・愉快愉快」

 

この呪詛師の名はザンク。呪詛師の中でも名が知れた凶悪な首切り殺人鬼である。

 

「ただねぇ・・・呪霊は斬ったらすぐに消えるし一貫した顔だから、面白くないんだよなぁ」

 

ザンクはぶつぶつ何を言いながら右腕に展開した刃で杭のようなものを最後まで打ち込む。

 

「よーしよし・・・後は総仕上げだ」

 

杭を打ち終えたザンクは作業の仕上げにかかる。

 

「闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え」

 

ザンクが帳の術を唱え終えると、帳が現れ、高専の敷地内を覆い尽くそうとしている。

 

「おお、本当にできたよ。愉快愉快。後は、餌がかかるのを待つだけだぁ」

 

下ろされた帳を見たザンクはニヤリと歪んだ笑みを見せるのであった。

 

 

帳が高専の敷地内を覆い尽くそうとしている光景は森の中にいる生徒全員(一部は除く)が目撃した。生徒たちの保護を命じられた悟たちは急いで交流会のエリアに向かっているが、帳は間もなく下ろし終えそうだ。

 

「五条!帳が降りきる前に、あんただけ先に行け!」

 

「いや、無理」

 

「はぁ⁉」

 

帳が降りきる前に入ることはできないと悟は断言している。その理由は帳事態にある。

 

「実質あの帳はもう完成してる。視覚効果より術式効果を優先してあるみたいだ。うまいな・・・」

 

なかなかに効率的に帳を下ろした敵に対し、悟は正直に敵に称賛を送っている。全員がエリアの入り口につく時には、帳はもうエリア全体を覆い尽くしていた。

 

「どんな帳であろうと、下りたのならば破ればいいだけの話だ」

 

赤女(あかめ)は降りた帳を破ろうとして手を伸ばし、帳に触れた直後・・・

 

バチィ!!!

 

「!!!」

 

彼女の侵入を拒むかのように帳は彼女の手を弾いた。

 

「・・・弾かれた・・・?」

 

(・・・なんだ?今の違和感・・・)

 

赤女(あかめ)の侵入を拒んだ帳に違和感を感じた悟はそれを確認しようと帳に手を伸ばし、それに触れた。

 

バチィ!!

 

だが結果は同じだ。悟の手は帳に侵入を阻むかのように弾かれる。

 

「ちょっと・・・なんであんたたちが弾かれて、私が入れんのよ」

 

「私も入れるよ?」

 

ところが、歌姫やチェルシーが手を伸ばしてみると、帳は2人を拒むことなく、手はすんなりと帳の中に入れた。

 

「・・・なるほど」

 

これを見た悟は先ほどまで感じ取っていた違和感の正体に気がついた。

 

「歌姫、チェルシー、お爺ちゃん、先に行って。この帳、『五条悟、並びに禪院赤女(あかめ)の侵入を拒む代わりに、その他全ての者が出入り可能な結界』だ」

 

「「!!」」

 

悟と赤女(あかめ)が入ることができない代わりにその他全ての人間が中に入れる。その効果に歌姫とチェルシーは驚愕で目を見開く。楽厳寺も納得がいったかのように目を見開いている。

 

「なるほどな。確かにそれなら足し引きの辻褄が合う。だが特定の人物のみに作用する結界を張れるとなると、よほどの腕が立つ呪詛師がいるな。しかもこちらの情報をある程度把握している。でなければ交流会の日を狙って襲撃するなど不可能だ」

 

「次から次へと、よくもまぁ面倒ごとが転がり込んでくるものだね」

 

赤女(あかめ)の解釈に対し、悟は面倒くさそうに頭をかいている。

 

「ほら、行った行った。何が目的か知らないけど、1人でも死んだら僕らの負けだ」

 

どちらにしても、2人が中に入れない以上、ここから先は歌姫、チェルシー、楽厳寺の3人で行くしかない。歌姫とチェルシーはお互いに首を縦に頷き、楽厳寺と共に帳の中に入っていく。

 

 

帳の中に入った途端、3人は異様すぎるほどに大きい呪力を感じ取った。

 

(!なんて濃い呪いの気配・・・!まさか、この場に特級クラスが来てるんじゃないよね・・・?)

 

「おいおいおい!」

 

「「「!!」」」

 

チェルシーがこの場に侵入してきた敵について考察していると、門の前に1人の呪詛師が現れた。職人エプロンを付けたスキンヘッドの男だ。

 

「おいおいおいおい!!五条悟いねぇじゃーん!」

 

このスキンヘッドの男の名は組屋鞣造。日用品や武器を作ることを趣味としている呪詛師だ。ちなみに、その日用品などを加工する際に使う素材が人間である。

 

(呪詛師・・・気配の主ではないが中々にできるの・・・)

 

楽厳寺は一目見ただけで鞣造がどれほどの実力を持っているか理解できた。

 

「あの生臭坊主、騙しやがったな!」

 

悟をハンガーラックにしようと考えている鞣造はこの場に悟がいないために怒りを示している。

 

「歌姫、チェルシー、先に行け。学生の保護を優先、極力戦うな」

 

楽厳寺の指示に歌姫とチェルシーは了承するが、敵である鞣造は片手斧を取り出し、野次を飛ばす。

 

「待て待て!!せめて女を()らせろ!!ジジィのスカスカの骨とシワッシワの皮じゃなんも作れねぇよ!!!!」

 

「スカスカかどうかは・・・」

 

ジャラーーーン!!!!

 

楽厳寺は着物を脱いでジャズTシャツというギャップがすごい格好になり、アタッシュケースからエレキギターを取り出して音を鳴らす。

 

「儂を殺して確かめろ!!」

 

「牛乳飲んで出直して来い!老いぼれ!!」

 

自分の前に立ちふさがる楽厳寺に鞣造は渋々ながらに戦うことになるのであった。

 

 

一方の高専のエリア内、恵、棘、ラバック、憲紀の4人は突然現れ襲い掛かってきた木の根から出口に向かって逃げている曲がり角向かった先にはエリアの出口に通じる門がある。しかし・・・

 

ドオオオオン!!!

 

門の外より追ってくる根とは別の根が扉を壊し、出口を塞いだ。後ろの木の根は4人が逃げられないように壁となる。門の根と共に現れたのはこの根を操っている特級呪霊、花御である。

 

「なぜ高専に呪霊がいる?帳も誰のものだ?」

 

「多分その呪霊と組んでいる呪詛師です」

 

「ゲホッ・・・」

 

「ん?お前ら、何か知ってるのか?」

 

恵たち東京陣営は悟から徒党を組んでいる特級呪霊について教えられたから存在自体は知っていた。しかも子供が描いたような絵も添えてだ。

 

『こいつら、未登録の特級呪霊!しかも人間と組んでるっぽいんだよね~』

 

「以前、赤女(あかめ)先生を襲った特級呪霊だと思います。風姿も近い。あの人の絵でもわかるもんだな・・・」

 

悟の絵のセンスは小学生並みのそれだが、ちゃんと的を射ているために恵でもちゃんと気付けている。

 

「ツナマヨ」

 

「そうですね。五条先生に連絡しましょう」

 

「ちょっ・・・とタンマ。お前、狗巻が何を言ってるのかわかるのか?」

 

ラバックはおにぎりの具で会話をする棘が何を言っているのかわからないため、彼と普通に会話している恵に疑問符を投げかける。

 

「今そんなことどうでもいいでしょ。相手は領域を使うかもしれません。距離を取って、五条先生のところまで後退・・・」

 

恵がラバックの質問を一蹴し、悟に連絡を取ろうとした時、花御はもうすでに4人のそばまで近づいていた。

 

「「「「!!」」」」

 

花御は腕を振るって恵の持っているスマホを叩き壊した。

 

動くな!!!!

 

棘は呪言葉を放ち、花御の動きを止めた。だが花御は特級呪霊。呪言の効果は一時的なものだ。花御が動かなくなったタイミングで3人は花御から距離を取る。

 

「赤血操術―――『苅祓』!!!」

 

憲紀は懐から出した補血袋の血を操って手裏剣を作り上げ、それを花御に投げ放った。放たれた血液の手裏剣は花御の顔に直撃したが、ダメージを受けた様子は見られない。

 

(ダメージなしか!)

 

花御が動こうとする前に、ラバックは花御を搔い潜って呪力が纏った鋭利な糸で両腕、両足を拘束し、さらに体と首に糸を巻き付かせる。ラバックはこのまま花御の身体を斬り刻み、首を折ろうとするが、花御の皮膚が非常に頑丈ゆえか、糸が皮膚に食い込めない。

 

(か、固ぇ・・・!力入れてんのに切れねぇ・・・!)

 

糸で拘束されている花御に恵は鵺を召喚し、鵺は電気を帯びた翼で体当たりを放った。帯電する花御に恵は真っ黒な刀身の刀の呪具で花御に斬撃を放った。だが斬撃はズボンを斬った程度で花御自身にはダメージが入っていない。

 

(チィ・・・やっぱこれじゃあ弱いか!)

 

(あの刀・・・どこに隠し持っていたんだ・・・?)

 

自分と戦った時には使わなかった刀の呪具を恵はどこで取り出したのか気になる憲紀だが、今は花御に集中する。花御は自分を拘束する糸を両腕と両足に力を込めて引きちぎり、胴体、首の糸も自由になった両腕で容易く千切る。

 

「ーーーーー、ーーーーーー」

 

拘束を無理やり引き千切った花御はわけのわからない言語を話す。すると・・・

 

〘やめなさい、愚かな児等(こら)よ〙

 

「「「「!!!!」」」」

 

花御のしゃべった言葉の内容が4人の頭の中に流れ込んできた。

 

(なんだこれ・・・⁉音では何言ってんのかわかんねぇのに意味は理解できる。気持ち悪ぃな・・・)

 

耳だけで聞けば花御は何を言っているのかわからない。しかし、どういうわけか内容が理解できるため、不気味で気持ち悪さがある。漏瑚と斬鬼が花御に極力しゃべらせないようにしていたのは主にこの感覚を嫌っているからだ。

 

〘私はただ、この星を守りたいだけだ〙

 

「呪いの戯言だ!耳を貸すな!」

 

「バカ言うな!低級のそれはわけが違うんだぞ!」

 

「ええ。ラバックさんの言うとおりです」

 

低級呪霊が放つ言葉は上辺事の方が多い。しかしこの花御は言語は理解できないものの、人の言葉を理解し、意思疎通が可能だ。つまり、ちゃんと会話として成立ができるということだ。

 

〘森も海も空も、もう我慢ならぬと泣いています。これ以上人間との共存は不可能です〙

 

「独自の言語体系確立してるんだ・・・!」

 

〘星に優しい人間がいることは彼らも知っています。しかしその慈愛がどれだけの足しになろうか〙

 

「こいつは・・・想像以上にやべぇ・・・!」

 

〘彼らは時間を欲している〙

 

「狗巻を下がらせろ・・・!」

 

〘時間さえあれば、星はまた青く輝く〙

 

「・・・・・・っ」

 

〘人間のいない時間〙

 

花御は術式によって自身の周りに木の枝を出現させ、4人に向けて殺意を向ける。

 

〘死して賢者となりなさい〙

 

特級呪霊花御との戦闘は、避けられそうになさそうだ。

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