小3の時、俺にナマこいた高校生をボコった。年上だろうと、生意気は生意気。相手が俺をナメてて、俺がナメられてると感じるその瞬間にゴングは鳴ってるのさ。
面白くなんてない。退屈な奴捻ったって退屈に決まってんだろ。
「ナイスファイト!ボーイ!」
そんな時だ。俺の師匠・・・九十九由貴と出会ったのは。
「どんな女がタイプかな?」
「誰、あんた?」
退屈が裏返る・・・そんな予感がした。
●
花御との戦闘に参戦した悠仁と東堂、
「俺の術式を解禁する!!!」
「てめぇ最初ん時使ってただろーがぁ!!!」
交流会のゴタゴタで悠仁を暗殺しようとした際に東堂が術式を使っていたことを清孝が指摘するが、今は気にしている場合ではない。
「だが!術式について詳しく説明している暇はない!!俺からお前たちに言えることはただ1つ・・・止まるな!俺を信じろ!!!」
「2つじゃねぇか!!!」
「けど、あいわかった!!」
「オッケー!!」
言うことが1つだけなのに2つなっているという矛盾があるものの、3人は東堂を信じる。東堂は花御に勝算があるのかどうか・・・自身の持ち前の頭脳を活かして分析する。
(彼奴の手札を整理しよう。地面より発する木の根・・・これはおそらく、本数と射程を絞るほど、強度と速度が上がる。
樹の鞠・・・1つの鞠から1、2本の攻撃、その後消滅。対空可能時間差に注意か。
呪いの種子・・・伏黒がくらっていたものだろう。1つでも打ち込まれたらアウトか?その分乱発はないと信じたい。
お花畑・・・気が緩んでしまうようだが、さっきの負傷で気つけが効いてる。そこまで警戒は必要はない。
さらに、あの時解き放たれた左腕・・・そして、これらがブラフである可能性!
だが、どんな術式でも発動させなければいいだけのこと。不測の事態を考慮したうえで、IQ53万の俺の脳内CPUが弾きだした結論は・・・
相手の手の内を考えたうえで出された結論は勝利以外は出なかった。ちなみに東堂のIQ53万は自称である。
(なぜなら、俺は1人じゃないから!!!俺には、頼りになる仲間が、こんなにもいるから!!!)
勝利を導き出した東堂はその頼りになる仲間たち3人と共に花御に攻撃を仕掛けようと走り出す。
ガシィ!!!!
「あ」
だがその直後、東堂の右足は花御が召喚した木の根によって巻かれ、捕まってしまう。木の根は成長し、東堂を振り回す。
「東堂!!」
「言ってる傍から!!」
「何やってんだぁ!!!」
東堂を振り回す木の根は彼を放り投げる。放り投げられ、地面を転がっていく東堂の進路先に、樹のトゲが現れる。このまま進めば串刺しになってしまうが、転がりの勢いは止まらない。。
「東堂!!」
「くそ、間に合わねぇ!!」
3人は東堂を助けに向かおうとするが、悠仁は花御に妨害され、
〘まずは1人・・・〙
勢いが止まらず、東堂が樹のトゲの串刺しにされようとした瞬間・・・
パンッ!
ズシャア!!!
〘ぐはっ・・・!〙
手の叩く音が鳴り響いたその瞬間に、東堂と花御の位置が入れ替わり、花御が樹のトゲの串刺しになった。
「!東堂!!」
「え・・・ええ!!?」
位置が入れ替わったことによって東堂は花御の代わりに悠仁に顔を殴られたが、当の本人はふてぶてしい姿勢だ。急に東堂と花御の位置が入れ替わったため、初見の
〘なるほど・・・シンプル。ゆえに厄介な術式〙
「そう、俺の術式は相手と自分の位置を入れ替える・・・『
東堂の術式、
「東堂!」
「しっ。相手が慣れる前に仕留めるぞ」
悠仁の考えを言わずとも汲み取る東堂は茶目っ気なしぐさを取る。
「兄弟!俺たちの後に続け!東堂の術式に慣れる前に!」
「お、おう!!」
清孝は自分たちの後に続くように
「ちなみに手を!」
パンッ!
「叩くのが!」
パンッ!
「発動条件だ!!」
パンッ!
まず先手を打つのは東堂、悠仁、清孝の3人だ。東堂は自分と悠仁、清孝の位置を入れ代わって、花御の視線を惑わせ、回り込む。前方の悠仁が拳を繰り出そうとしたタイミングで東堂が
パンッ!
悠仁と東堂の位置が入れ変わり、花御の背中に悠仁の拳が叩き込まれる。さらに続いて清孝の拳、東堂の拳をくらい続け、花御は多大なダメージを受ける。
(3人の体格差・・・入れ替わり後の差異が大きい!)
さらに東堂は自分と清孝の位置を入れ替え、清孝は強烈な蹴りを放ち、花御の顔に当てる。
(私と入れ替わるか、宿儺の器と入れ代わるか、怪力の少年と入れ替わるか、手を叩くたびに迫る3拓で思考が鈍る!そして・・・猛攻の中未だに攻撃を仕掛けてこないあの呪力のない少年・・・狙いはおそらく不意打ち・・・。しかし、少年がどこから来るか・・・いつ少年と入れ替わるか・・・気が逸らされて集中できない・・・!)
パンッ!
東堂はさらに悠仁のとの位置を入れ替え、悠仁は花御にアッパーを叩き込んだ。
(まずい!これは・・・)
パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!
(抜け出せない・・・!)
(来た!一撃を与えるため、少年の位置を入れ替えるはず!そこを狙う!)
花御は
パンッ!
手の叩く音に花御は振り返り、東堂と入れ替わった相手を攻撃しようとする。しかし花御の予想は大きく外れた。入れ代わったのは
(何っ!!?入れ替わったのは宿儺の器か!!)
「はあ!!!」
ザシュッ!!
〘ぐああああ!!〙
不意を突かれた花御は
(そうだ。それでいいんだぜ兄弟。お前はそのまま真っ直ぐ突き進め。その真っ直ぐな心が腐ってた俺の魂を、奮い立たせるんだ!)
交流会での殴り合いの際で、
「せぇい!!」
〘ぐぅ・・・!〙
さらに続く
(!またあれが来る!!)
花御は黒閃が来ると感じ取り、警戒を強めている。
●
黒閃連続発生記録保持者、七海健人は語る。
黒閃を連続で出すのがすごいわけじゃない。2回以上出すなら連続、またはその日の内でないと難しいでしょう。
1回目の理由はまぐれでも実力でもなんでもいい。黒閃をキメると術師は一時的にアスリートで言う『ゾーン』に入った状態になる。普段、意図的に行ってる呪力操作が呼吸のように自然に廻る。自分以外の全てが自分中心に立ち回ってるような全能感・・・とでもいうのでしょうか。
・・・私の記録ですか?・・・ふぅ・・・4回。運がよかっただけですよ
●
「黒閃!!!!」
ドオオオオオン!!!!
悠仁が再び放った黒閃は見事花御に直撃し、確実なダメージを与える。
(ブラザー・・・お前からはいつだって予感がする!)
黒閃をくらった花御は体に回る黒い呪力が弾け、怯んでいる。だが、悠仁の攻撃はこの1回だけで終わることはない。
「黒閃!!!」
ズウゥゥン!!!
2回目。悠仁は1回目の拳を放った後、すぐに跳躍し、花御の顔に蹴りを放ち、2回目の黒閃を放った。
「すげぇ・・・」
黒閃を初めて見た
「黒閃!!!」
ズウゥゥン!!!
3回目。悠仁は花御にチョップを放ち、3回目の黒閃を放った。
「マジか・・・これで3連チャンかよ・・・」
黒閃自体は清孝も見たことはあるが、3回連続で黒閃を放つ術師は滅多にいないために、驚きを隠せないでいる。そして悠仁をリスペクトしている東堂は感動からか涙を溜めらせている。
〘調子に乗るな・・・!〙
花御はこれ以上悠仁に黒閃を出させまいと攻撃を仕掛けようとする。するとその直後、東堂が背後に回り、
(!位置替え!今警戒すべきは・・・宿儺の・・・)
花御は東堂が
パンッ!
手の叩く音は鳴り響いた。だが、東堂と悠仁の位置は入れ替わっていなかった。
(!替わっていない!!)
「手を叩いたって、術式を発動するとは限らない!単純だけど引っ掛かるよなぁ!」
花御にブラフをかけた東堂は悠仁に強い期待を抱いている。彼が初めて師匠である九十九由貴と出会った時と同じように。
(あの時と同じ・・・退屈が裏返る予感!!!)
東堂のブラフに引っ掛かったことによって、悠仁への注意が疎かになった。そして・・・放たれる・・・4回目の黒閃が。
ドオオオオオオオオン!!!!!!
「黒閃」
悠仁の4回連続の黒閃。これによって花御は大ダメージを受けた。しかし、花御はよほどにタフなのかまだ祓いきるにはまだ届かないようだ。花御は樹の根の塊・・・鞠を召喚して悠仁に攻撃する。悠仁向かってきた鞠を後退して躱し、花御から距離を取った。悠仁が距離を取ったタイミングで
先手を入れに来た清孝に花御は拳を放ち、清孝は拳を防御して受け止める。清孝はさらに受け止めた花御の拳に腕を絡め、背負い投げで花御を地面に叩き込み、起き上がりのタイミングで蹴りを入れた。蹴りを受け、後退した花御は蹴りを放ち、続く清孝の蹴りを受け止めた。
パンッ!
花御が距離を取ったタイミングで東堂が
パンッ!
悠仁と並ぼうとしたタイミングで東堂は自分と花御の位置を入れ替える。その直後、樹の根はさらに根を生やし、東堂に向けて攻撃する。手を叩くのが間に合わないと判断した東堂は腕を交差して伸びてきた根を防御して受け止める。悠仁は東堂と入れ替わった花御に拳を叩き込んだが、同時に花御も悠仁に拳を叩き込んできた。
(野郎!入れ替え先に攻撃を仕掛けてきやがった!)
(こいつ、東堂の術式に慣れてきている!)
(だがさっきの黒閃ラッシュが効いている!)
(祓えるぜ!俺たちでなら!)
東堂の術式に慣れてきたとはいえ、花御は4回連続の黒閃によって相当なダメージを負っている。このまま押し切れば、祓えるのも時間の問題だ。
(ここまで手傷を負ったのは、生まれて初めてだ。それでもなお・・・衰えることのない戦いへの愉悦!!!)
追い詰められているにも関わらず、花御の高揚感は収まらず、それどころかさらに高ぶりを見せている。花御は地面より巨大な蕾を召喚する。蕾が花開くと、中から大量の呪種がぎっしりと詰まっている。呪種の木の実は花御のの意思によって呪種を噴き出し、4人に迫る。攻撃範囲が広く、避けられない。
「下がれ兄弟!」
「!兄弟!お前!」
パンッ!
するとここで東堂の
(!術式開示は嘘偽り!自分以外の者同士でも入れ替え可能なのか!)
そう、東堂の術式開示は半分は嘘で、本当は自分以外の者でも入れ替えが可能なのだ。交流会の際、悠仁暗殺のごたごたの際、悠仁と憲紀はこれによって位置が入れ替わっていたのだ。
「東堂!!俺を庇って・・・」
(心配無用さブラザー。俺が本気で固めた肉体と呪力ならば、この程度の種子、弾いて見せるさ)
東堂は迫りくる呪種を完璧に防御するため、全身に呪力で肉体強化を試みた。
●
東堂の脳内。そこでは何故か教室を映し出しており、脳内意識の東堂は中学の制服を着込んで夕焼けを眺めている。
ガララッ
「ん?」
「本当に?」
教室のドアが開き、そこから東堂の考えに異を唱える声が聞こえてきた。東堂がそちらに視線を向けると、彼は驚愕に満ちた顔になる。
「た・・・高田ちゃん!!!!」
なぜなら現れたのは東堂が推している唯一至高のアイドル、高田ちゃんなのだから。
「伏黒君の傷口、覚えてる?」
「覚えているとも!今まさに俺に撃ち込まれようとしている呪いの種子!だからこうして・・・」
「でもさー、伏黒君の種子はちょっと成長してたよね?」
「!!!!!」
高田ちゃんの指摘によって、東堂に衝撃が走った。
「血液を吸って成長したのかな?ありえなくはないね。でもさ、和倉君もあの種子をさっき受けてたよね?。なのに彼の種子は全然成長してなかった」
「!!!!!!!」
さらなる高田ちゃんの指摘に、東堂は衝撃を通り越してカルチャーショックを受けた。
「相手は呪霊だよ?だとすれば、1番考えられる可能性は?」
「・・・呪力!」
高田ちゃんの指摘によって東堂は閃き、答えが出た。この間、0.01秒。
●
迫りくる呪種を前に東堂は呪力を帯びていたが、当たる直前で自身の呪力を霧散させ、己の肉体のみで防御した。
(!!直前で呪力を解いた!気づいたのか⁉呪種は呪力で守れば守るほどそれを糧に強化されることに!)
呪種のトリックに気がついた東堂に花御は驚愕している。
「次回は全握かぁ・・・感謝の意を伝えねば・・・な!」
自身の脳内での高田ちゃんに東堂は感謝している。ちなみに全握とは全国握手会のことである。
「ラァ!!!」
花御が驚愕している間にも清孝は花御に白虎斧・左刃の斬撃を入れる。斬撃でよろめく花御の肩に東堂は蹴りを打ち込んだ。
(特級呪霊よ、あの時の俺の発言は言葉足らずだと気づいたはずだ。だがお前にはもう1つ考えなければならないことがある。
4人は後退する花御を追いかける。そんな中で東堂は近くにある川に注目を向けている。
(特級呪霊よ、気づいているか?俺たちは再び、あの場所に戻ってきている!ここには、『あれ』が眠っている!!)
パンッ!
東堂が
『川底に真希さんの特級呪具・・・顔面の樹が格段に脆い』
東堂の脳裏に浮かぶは、恵が去り際に放ったこの言葉だ。
「あれっ⁉消えた⁉京都の人、何と入れ替わったんだ⁉」
生物のみ有効と思い込んでいた悠仁は清孝の位置が三節棍の呪具と入れ替わったことに気付いておらず、困惑している。東堂が受け取った三節棍の呪具の名は・・・
特級呪具『游雲』
ドオオオオオン!!!
東堂は特級呪具を振るい、地面を抉りながら、花御の顔に強烈な打撃を与える。強力な打撃を受けた花御は樹を折られ、血反吐を吐きつつも、樹の根を生やし、東堂に攻撃する。東堂は体を反らして攻撃を躱し、後退する。
(特級呪具に俺の呪力を乗せた打撃でも仕留めきれんとは・・・)
(けど、確実にダメージは与えたはずだ!)
〘どうやらあなたは、入れ替わりの対象にはならないようだ〙
(!こいつ、気づきやがった!)
(やべぇ!青龍刀を手放しちまった!このままじゃ・・・)
払い除けによって青龍刀を手放してしまった
「水塊弾!!!」
そこへ游雲との位置が入れ替わり、川にいる清孝は水分子操術で水を操り、水の弾丸を放った。視覚外からの攻撃によって防御が遅れた花御は水の弾丸に直撃し、その後の悠仁の蹴りをくらってしまう。
「兄弟!」
清孝は白虎斧・右刃を
「サンキュー、兄弟!」
白虎斧・右刃を受け取った
(くそ!やっぱ兄弟の怪力あってのでかい威力か!傷が薄い!)
パンッ!
(!呪具と呪具の入れ替え・・・!)
「!こいつは!」
「そいつを使え、和倉!」
「おう!ありがとよ、東堂!!」
東堂が白虎斧・右刃を投擲したと同時に、
〘ごは・・・!〙
体制を立て直そうとする花御に東堂が放った白虎斧・右刃が迫ってきた。花御は跳躍して迫ってきた白虎斧・右刃を躱す。
パンッ!
そのタイミングを狙っていたかのように東堂は
〘が・・・!〙
白虎斧・右刃によるダメージを負った花御に東堂は青龍刀を手に取り、追撃として強力な斬撃を放ち、背中にさらに傷を与える。これだけの猛攻を受けてもまだ祓われない花御は左手を地面につけ、植物を伸ばして東堂と
(驚愕!これだけの猛攻でもまだ祓えんとは!)
東堂が驚いていると、自分たちの周りの植物に変化が起きた。草や木が生命を吸われているかのように枯れていっている。その原因は花御の左腕にある。あの腕が植物の生命を吸い取っているのだ。
〘植物は呪力を孕みません。私の左腕は植物の命を奪い、呪力へと変換する。それが私に還元されることはない。その全ては、この供花へ〙
花御の左腕に備わっていた供花は蕾から花開き、中央に備わっている単眼が見開かれる。供花に膨大な呪力が膨れ上がり、花御はそれを撃ち放とうとしている。
(できることなら使いたくはなかった)
星を守ることを目的としている花御としてはこの供花は忌みものそのものである。それを今解いたということは、花御は東堂に本気の一撃を放とうとしているのだ。
「東堂!」
「来るなブラザー!とんでもない呪力出力だ!」
〘しかしあなたの術式があれば、躱すのは容易いでしょう。ならばどうするか・・・〙
東堂に確実な一撃を与えるにはどうするかなど、簡単なことだ。絶対に逃れられない一撃を放てばいい。それを可能にできるのが・・・領域展開。
〘領域展・・・〙
バシュッ!!
〘!!〙
「!帳が!!」
花御が領域展開を発動しようとした時、高専内を覆っていた帳が解除された。この場にいる全員が何事かと思い、空を見上げてみると、そこには宙を浮いてたっている人物がいる。その人物は普段目隠しに使っていたアイマスクを外し、きれいな青の瞳が澄んで輝いている。
そう・・・最強の呪術師と名高い・・・五条悟である。
●
高専エリアの社の前、鞣造と対峙する楽厳寺はエレキギターで激しい旋律を刻む。すると、ギターの音に呪力が乗り、超音波が発生する。完全に油断していた鞣造は呪力が乗った超音波による風圧によって吹っ飛ばされ、後退る。この一撃で、鞣造は楽厳寺の術式について理解する。
(なるほどねぇ・・・アンプもねぇのにいい音出すと思ったら・・・このジジィ自身がアンプなのか。奏でた戦慄を増幅させ、呪力として撃ちだす術式。わかりやすい中距離タイプ。近づかれたくねぇのが見え見えだ)
戦術は理解できるがそこそこに強いと判断した鞣造はニヤリと笑みを浮かべる。
「財布を作ろう。加齢臭たっぷりのな」
どんな時でも鞣造が考えているのは、相手をどんな日用品に加工するかどうかだ。そこに相手の強さなど関係ない。
●
一方その頃、高専エリア内を先に進む歌姫とチェルシー。この帳では通信電波が断たれていないため、歌姫は一足先に帳から出た西宮からの報告の電話を取っている。
「了解。西宮もそのまま硝子のところにいて。大丈夫、三輪は冥さんが見てる」
歌姫は西宮に待機指示を出し、通話を切る。
(電波は断たれてないみたいだね。帳の効果を考えれば当然だけど・・・)
辺りを見回してまだエリア内に残っている生徒を探しているチェルシーの脳内に浮かび上がるのは悟の言葉だ。
『高専に呪詛師・・・あるいは呪霊と通じてる奴がいる』
(勘違いってわけじゃなさそうだね・・・)
呪詛師と呪霊が通じている者が高専にいる。最初は半信半疑であったが、今回の騒動で勘違いではないと判断し、チェルシーは調査を前向きに考えている。だが今はそれよりも生徒の保護が最優先のため、先に進む。
「おやおや・・・これはこれは・・・かわいらしい魚が釣れたものだ」
「「!!」」
先を進んでいると、前方に侵入してきた呪詛師の1人、ザンクが2人の前に立ちふさがる。
「こんにちは、お嬢さんたち」
「人間・・・呪詛師か!」
「まぁ、1人だけとは思ってなかったけどね・・・!」
目の前に呪詛師が現れて、歌姫は身構え、チェルシーは片足を一歩後退る。
「やだなぁ、呪詛師じゃ誰が誰だかわからないじゃないか。俺のことは、こう呼んでくれ。親しみを込めて・・・首切りザンクと!!」
ザンクは両腕に備えた刃を展開し、戦闘の構えを取る。ザンクの名を聞いた2人は目を見開いて驚いている。
(ザンク・・・⁉あの首切りザンクのこと⁉)
(ザンクは元々呪術連に所属してた処刑人。上の命令で呪詛師や秘匿死刑を命じられた術師の首を何人も斬ってきた。何人も何人も・・・命乞いをする相手にもお構いなしに。いつしか首を斬るのが快感になって、上の命令だけじゃ満足できなくなって辻斬りに)
ザンクは名が知れ渡るほどの極悪人。そんな大物呪詛師が高専にやってきたことによって2人の警戒をさらに強める。
「ピンポーン!大正解。俺も有名になったものだ。愉快愉快。そして今、戦闘を避けてさっさとこの場を離れなければ。だがどうやって隙を作ろう・・・と思っていただろ?」
「「!」」
チェルシーの考えていることを肯定し、的を当てたザンクの発言に2人はさらに驚愕している。
(今、私の考えていることが読まれた・・・?)
(これがザンクの術式・・・相手の考えを読む能力かしら?)
歌姫がザンクの術式について考察しているとまたもやザンクが口を挟む。
「ブッブー!正しくは見る術式さ。俺の術式『
(どさくさに紛れての術式開示・・・こいつ無茶苦茶慣れてる・・・!)
会話に紛れて自身の術式能力の開示をした。これによってザンクの能力が上がったのは間違いないため、チェルシーは苦虫を嚙み潰したような顔になる。
「さてお嬢さん、正解した褒美と残念賞として俺の干し首を贈呈しようか?」
「いらねぇよ!!!てかよくしゃべるわね」
「趣味がおしゃべりだからな。トークに紛れての奇襲作戦は考えてないんで安心してくれ。まぁ・・・クズガキはやる気満々みたいだけどな」
ザンクが話し込んでいると、2人の背後より別の呪詛師が奇襲を仕掛けてきた。気配で呪詛師の行動がわかっていた2人は呪詛師が振るった刃を跳躍して躱した。
「あれ?オッサンのおしゃべりに夢中だったから絶対斬ったと思ったのに・・・はぁ・・・これだから俺は・・・」
ザンクの意に反して(そもそも本心かどうかもわからないが)奇襲を仕掛けてきた金髪のポニーテールの呪詛師、重面春太はへらへらと笑っている。春太が持っている刃の取っ手は人の手という悪趣味さがある。
「いいでしょ、これ。鞣造が造ってくれたんだぁ。さっき会わなかった?『お前は非力だから刀からも握ってもらえ』って。・・・ねぇ、お姉さんたちは俺に何をくれるの?」
ニヤついた笑みを浮かべる春太は刃を構え、じりじりと2人に近寄ってくる。そして2人の背後にはザンク。
「首を斬られた時の表情ってさぁ、たまらなくイイんだよなぁ・・・。意外に多いのはキョトンとした顔でね。『えっ?』ていう感じ。さあ、お嬢さんたちはどんな表情をするのかなぁ?愉快愉快♡」
2人の呪詛師に囲まれ、どうピンチを切り抜けようかと冷静に考える歌姫とチェルシー。すると・・・
「お前ら!モテないだろ!出会い頭てめぇの話ばっかり!金取んぞ」
「あんたのどこに金取れるだけの聞き手の器量があんのよ」
「うるせー!!こんな時に喧嘩売ってんじゃねぇよ!!」
危機を駆けつけたかのように野薔薇と真衣がこの場についた。真衣に煽られ、怒りを浮かべる様子は相変わらずと言ったところか。
「あんたたち!」
「よかった、無事だったんだね!」
生徒たちが無事であったことに歌姫とチェルシーは笑みを浮かべている。しかし、状況を打破したわけではない。
「わぁ~!女の子がいっぱい!モテモテだぁ!」
「人の話聞いてんのかよ・・・」
この場に女子が来てテンションが上がっている春太に対し、野薔薇は引き気味である。
「ん~、若いってのはいいねぇ。特に茶髪のお嬢さん。素直で正直、強くなろうと願う真っ直ぐさ。気に入った!俺の干し首コレクションに加えてやろうか?」
「干し首ぃ?キッショ!!そんなもんお断りよ!!!」
「援護は任せて。誤射されないように気をつけなさい」
「おめぇこそ気をつけろ!!」
野薔薇を煽る真衣に野薔薇が悪態をついた時、帳が上がり、日の光が差し込んできた。
「帳が上がった!!?」
「きっと悟君だよ!」
帳が上がったことによってこの場にいる全員が驚いている。
「なんと・・・もうタイムアップか。まだ30分も経ってないはずだがねぇ」
「マジぃ?こんなの聞いてないよ。逃げよ!」
帳が上がった途端春太は1人で一目散に逃げていった。
「なんだったんだ・・・あいつ?」
「さあ・・・?」
結局春太が何をしたかったのかわからない歌姫とチェルシーは少し呆気にとられる。
「1人くらいは首を斬りたかったんだがねぇ・・・。しょうがない、楽しみは取っておくとしようか」
「あ!待てコラァ!!」
「また会おうぜ、お嬢さんたち」
帳が上がった以上、今は逃げた方がいいと判断したザンクは高く跳躍して屋根を飛び越え、高専エリアから去っていくのであった。
●
帳が上がった光景は社前にいる楽厳寺と鞣造も確認できた。
「おいおいおいおい・・・イカしたハンガーラックが目に浮かぶぜ」
この場に悟が現れたのだと確信している鞣造は胸躍る気分になっている。
ズンッ!
「「!」」
すると、楽厳寺と鞣造の間に一刀の刀が降ってきて、地面に突き刺さった。2人が上を見上げると、1人の女性が飛び出し、地面に突き刺さった刀を回収して、鞣造の背後に立った。鞣造の背後に立った女性、禪院
「・・・ほっほ~~う?あんた・・・い~い肌してるなぁ・・・。ハンガーラック・・・にはならないが・・・もっとい~~~いものが作れそうだ~」
鞣造は
「よ~し・・・トレンドバッグを作ろう。高級感溢れる香りも添えてなぁ!!!!」
鞣造は涎を垂らしながら斧を振り回しながら
「殺すな!!!!」
ザンッ!!!!!
「ぐはぁ・・・!!!」
「安心しろ、死にはしない。だがお前にはいろいろと聞きたいことがある。治療は拘束した後だ。楽厳寺学長、運ぶのを手伝ってください」
「・・・うむ・・・」
いろいろと癪ではあるが、悟よりはマシだとして、楽厳寺は
「いでぇ・・・いでぇよぉ~~~」
「黙れ」
バキッ!
「ぶへっ!!?」
あまりの激痛で泣き言を言っている鞣造に
(・・・後は頼むぞ、悟)
鞣造を運ぶ中、
●
帳を解除させた悟は高専エリアの遥か上空に浮かび、辺りを見回している。そんな中で、
「お~、さっすが
仕事が速い
(歌姫とチェルシーのところにいた呪詛師2人の気配が消えた。片方は僕の考えを覗き込んでたみたいだし・・・逃げの算段は万全だった、というわけか。てことは残ったのはあいつだけか)
悟の視線は、悠二、東堂、
(くっ・・・!どうやらここまでのようですね・・・)
悟の登場により、花御は苦虫を嚙み潰したような感情が沸き上がる。
「なんだあれ?」
「あ⁉五条先生!!?」
遠くにいるため見え辛かったが、
(悠仁のレベルが格段に上がっている・・・。そうか!葵か!確かにあいつは悠仁と相性いいだろう。この呪力量にも納得だ)
交流会を経て強くなった悠仁を見て、悟は嬉しそうに口元に笑みを浮かべている。
「しっかし、ここからじゃちょっと距離があるな。あれも逃げがうまいし・・・仕方ない。少し、乱暴しようか」
今いる位置では花御に逃げられると判断した悟は無下限呪術のとっておきの大技を出すために呪力を練り始める。
術式順転―――蒼
術式反転―――赫
〘・・・退きます。五条悟を相手にするほど驕っていない〙
悟がいるのであっては勝ち目がないとわかっている花御は足元に樹を生やし、自身を覆ってこの場を退こうとしている。
「ざけんな!!何がしてぇんだよてめぇら!!!」
「待てブラザー!!」
悠仁は逃がさないと言わんばかりに花御に近づこうとするが、ここで東堂が止める。
「東堂!なんで止めるんだよ!」
「それ以上進むな!」
「兄弟!おめぇも進むんじゃねぇ!!巻き込まれんぞ!!!」
「え・・・巻き込まれる?」
何に巻き込まれるのかよくわかっていない悠仁と
「虚式―――"茈"」
ドオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!!
悟が放った蒼の術と赫の術を衝突させて生まれた仮想の質量、茈は進路先にある木や地面を抉り取りながら、進行し、完全に樹で覆った花御を覆った。その威力は凄まじいなどとは言葉で言い表せないほどに高い。あまりに高い威力に悠仁と
「くっくっく、相変わらず規格外だな」
「やりすぎなんだよあのクソボケ!これじゃあ祓ったかどうかわかんねぇだろうが!!!」
茈の進行後は原型が残らないほどに抉り取られており、深い谷が出来上がってしまっている。
「イェーイ!一件落着!!」
当の本人はというと非常に楽観的で笑みを浮かべながらアイマスクを付ける。
(・・・って、わけにはいかないか・・・)
ただ口とは裏腹に、悟は事件が解決しても、事態が安定したわけではないと睨んでいる。
●
高専のどこかにある倉庫らしき場所。入り口前には頭を変形させられて、死亡している護衛の術師が横たわっていた。
「花御は無事かな?」
倉庫の中から出てきたのは中に入っていた物をごっそりと奪い取った真人である。
「任務完了っと」
奪い取った物の1つである宿儺の指には、何か札のようなものが巻きつかれていたのであった。
じゅじゅさんぽ「シャケ!」
Q.あなたは犬派?猫派?
悠仁「犬・・・いや・・・猫かなぁ・・・?待って・・・大型犬なら犬かも・・・」
恵「犬」
真希「犬・・・かな?」
野薔薇「えー!私絶対猫!」
マイン「猫でしょ」
棘「シャケ」
パンダ「パンダ派に決まってんだろ!!!!!殺されてーのか、おおおん!!?」クワァ!!!
キレた直後、体育座りをして落ち込むパンダ
パンダ「・・・みんな俺のこと・・・嫌い・・・なのかな・・・」
悠仁「いや・・・二択だったから・・・」
マイン「バカやってるわねぇ」
真希「ほっとけ」
完