呪術廻戦ー呪いを斬るー   作:先導

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肆章『起首雷同』
起首雷同


6人しかいない特級呪術師の1人であり、傑の協力者であるエスデスは実に多忙な日々を送っている。まず、彼女が所属するアイヌ呪術連からの呪霊討伐任務。任務完了し、報告を終えれば次は総監部からの呼び出し、そこで新たな高難易度任務。その合間をぬっての傑との計画の話し合い。それが終わればまたアイヌ呪術連からの任務。この繰り返しである。

 

彼女の目的は非常に単純。戦いで勝利を収め、全てを蹂躙すること。その欲求のみが彼女を突き動かす。呪術連や総監部などは、そのための駒でしかない。ただ最近はレベルの低い相手ばかり戦っているので、欲求不満気味。五条悟との本気の殺し合いができればどれほど楽しいものか・・・彼女はいつも想像している。そんな時に1年前の百鬼夜行、その後の傑の計画である。傑の計画は彼女の求めるものと利害が一致している。ゆえに彼女は傑と協力関係を結んだ。自分が望む・・・永遠の戦いを終わらせないために。

 

そんな彼女は現在、総監部本部にいる上層部からの話を終え、蝋燭で明かりが灯っている廊下を1人歩いている。

 

「ぬふふ・・・お勤めご苦労様です、エスデス特級術師殿」

 

そんな彼女に声をかけたの1人の男。この暗い廊下のせいで姿は見えない。代わりに聞こえるのはくちゃくちゃと汚らしい音だけだ。

 

「お前か。相変わらず上層部の影に隠れて好き放題やってるらしいな」

 

「はい。気に入らないから殺す。食べたいから最高の肉を頂く。己の欲するままに生きることのなんと痛快なことか・・・。ふふふ・・・」

 

「お前ならば上層部の席に座れるだろうに」

 

「いやいや、あやつらは頭が固いですからな。それに加えて、今は五条悟もいる。安寧した生活を送るのに大事なのは、欲張りすぎないことです。だから今のポジションが、私にとっては都合がいいのです」

 

「ふっ・・・過度の間食で病気になるなよ」

 

「これでも健康です。失礼な」

 

会話内容から察するに、男は上層部の秘書的な役割を担っており、その気になれば上層部の席に座れるほどの手腕を持っているようだ。ただ上層部と折り合いが悪く、なおかつ悟との接触をなるべく避けるためにあえて今のポジションに立っている様子である。ただ彼の性根は残虐。これまでも陰で上層部を利用し、気に入らない術師を特権や討伐対象の呪霊を使って何人も殺してきた悪魔だ。実質的に呪術界を陰で牛耳っていると言っても過言ではない。だがそれでも悟がいる以上、あまり好き放題できないためにそれなりの節度を保ちながらやっているようだが。

 

「それより順調ですかな?五条悟封印の準備の方は」

 

そんな彼はエスデスの協力者でもある。今回の悟封印の計画は彼にとっては願ったり叶ったりで、そのためならば助力は惜しまないつもりでいる。特級術師昇格以来、彼とは長い付き合いであるため、彼女はそのことをよく理解している。ゆえに今回それを利用する。

 

「そのことで、お前に1つ頼みたいことがある」

 

「何ですかな?」

 

「計画の決行日は10月31日。場所は渋谷。この計画のために、ある程度の戦力が必要なのだが・・・お前には確か呪詛師の知り合いが何人かいたな?最低でも・・・そうだな・・・4、5人だ。それを決行日までにかき集めてもらいたい」

 

4、5人の戦力を10月31日までに集める。呪詛師は己の私利私欲のために動く術師。知人とはいえそれを集めるだけでも大変なのに期日も少ない。ハッキリ言って無茶難題もいいところだ。

 

「10月31日などもう1か月もありませんぞ。そのうえで呪詛師を4、5人など、要求がドSすぎます」

 

「だがギリギリ事足りるであろう?」

 

それでも問題ないと確信しているエスデスの発言に男は口元にニヤリと笑みを浮かべた。

 

「揃える代わりと言っては何ですが・・・私、いなくなってほしい人たちがいるんですよね」

 

「ふっ・・・悪巧みか。まぁいい。こちらもちょうどいいと思っていたところだ」

 

エスデスが服のポケットより取り出したのは、真人が高専から奪取し、傑より預かった特級呪物、禍津神三貴子(まがつがみみはしらのうずのみこ)の1つである青色の勾玉であった。

 

男との話を終えた後、エスデスは総監部本部から外に出て、入り口の前で跪いて待機していた3人の部下たちに命令を下す。

 

「お前たちに新しい命令をやろう。今までと趣向がちと異なるが」

 

彼らはエスデスの親衛隊と呼ばれる術師、『三獣士』。彼らはエスデスに絶対服従を誓っており、彼女から与えられる任務を断る理由など、どこにもない。

 

「何なりとお申しつけください、エスデス様」

 

「僕たち3人はエスデス様の忠実なる僕」

 

「如何なる時、如何なる命令にも従います」

 

「よし」

 

3人の返答に笑みを浮かべたエスデスは自分が持っている青色の勾玉と黄色の勾玉・・・禍津神三貴子(まがつがみみはしらのうずのみこ)を渡すのであった。

 

 

 

 

 

呪術廻戦ー呪いを斬るー

 

肆章

起首雷同

 

 

 

 

 

 

3ヶ月間。日本各地で奇妙な殺人事件が起きている。被害者が住んでいた自宅マンションのオートロックの自動ドアが開きっぱなしという問題が起き、被害者が管理会社に苦情を入れていた。数週間苦情を入れても全く改善されておらず、何度目かの苦情の後に、被害者が刺殺された。その件数、合わせて3件。犯人が呪霊であることはわかっている。この奇妙な殺人事件を解決するために、高専の1年生4人が派遣された。悠仁、(たつみ)、恵、野薔薇の4人は補助監督の1人、新田明の車で移動しながら、彼女と共に事件の状況を整理している。

 

「6月盛岡、金田太一。8月横浜、島田治。9月名古屋、大和広。3人とも、同じ状況で死んでるんスよ。自宅マンションのエントランスで呪霊による刺殺。しかも全員、死ぬ数週間前から同じ苦情を管理会社にチクってる。オートロックの自動ドアが開きっぱなしだって。他の住人に心当たりはなかったっス」

 

明が被害者の死亡前の出来事を説明し、4人はタブレットで被害者の情報を確認する。

 

「でも日付も場所もバラバラ。同じ呪霊にやられたんですか?」

 

「なあなあ、自動ドアって呪霊のせい?呪霊って自動センサーとか引っ掛かんの?カメラとか写んねぇよな?」

 

悠仁の素朴な質問に明が答える。

 

「カメラじゃなくて、ドアオペレーターの方が呪霊の影響でバカになったみたいっス」

 

「ほーう・・・オペレーター・・・」

 

「で、同じ呪霊の仕業かって話っスけど・・・残穢だけだと、ちょっと断定はできなかったっス。なんせ時間が空いてるし。そんで、3人の共通点を調べたっス。3人とも、同じ中学に2年間在籍してたっス」

 

「っていうと、昔3人が同じ呪いを受けて、時が経ってそれが発動したって感じ?」

 

「おお!」

 

「そうっス。それ濃厚っス。で、今からその中学と3人の被害者の共通の知人に話を聞くので、4人にも術師視点でいろいろと探ってほしいっス」

 

「釘崎、お前すげぇな!」

 

「ふっ、当然」

 

一定の時間差で発動する呪い説が濃厚であることを当てた野薔薇に(たつみ)は称賛を送っている。当の野薔薇はまんざらでもなさそうに得意げな笑みを浮かべている。2人のやり取りに呆れている恵が注目しているのは、被害者の中学校、浦見東中学校の名である。

 

話している間にも、車は被害者の知人の家・・・森下家に辿り着いた・・・のだが、森下家では現在葬式を執り行われていた。

 

「ここがその知人の家っすか?なんか葬式やってんだけど・・・」

 

「そう・・・なんスけど・・・」

 

葬式が執り行われているのを見て、明は嫌な予感が込み上げてきた。

 

 

話を聞いてみたところ、明の嫌な予感は見事に的中した。被害者の知人である男も先日亡くなったようなのである。しかも、被害者の3人と全く同じ状況らしい。

 

「これは参ったっス・・・。他の3人と同じ死に方っス。実家暮らしなんで、オートロックじゃないんスけど・・・玄関の前で殺されてるっス。以前から1人で帰宅した際、鍵が開いてるのにドアが開かないと、他の家族に言ってたみたいっス。ご両親に伺ったんスけど・・・亡くなった3人との関係はよく知らないって・・・。あ~あ・・・唯一の手掛かりがぁ・・・」

 

「どんまいっす!この中学なら絶対何かあるはずっすよ!」

 

「そうだといいんスけど・・・」

 

情報源である被害者の知人までもが亡くなり、めぼしい情報が得ることができなかった5人は現在、被害者の共通点である中学校、浦見東中学校までやってきた。手がかりがなくなり落ち込んでいる明に(たつみ)がフォローを入れる。

 

「とりあえず、先生にアポとったんで、お願いするっス」

 

「了解」

 

5人が浦見東中学の中を歩いていると、野薔薇が見るからにわかりやすい不良が2人が煙草を吸っている姿を発見する。

 

「わっかりやすいのがいるわね!ぶん殴って更生させましょ!」

 

「なんで?」

 

「お前問題起こさないと気が済まない質なの?」

 

それとなく情報を聞くだけでいいのに余計な手出しまでしようとする野薔薇の提案に悠仁と(たつみ)は退いている。

 

「お"ぉ”?」

 

「あ"ぁ"ん?」

 

当然ながら不良たちはこの発言に対して気に障り、5人に睨みを利かせた。しかし、5人を見た不良は突然顔を青ざめた。

 

「「ひぃぃ!!お、お疲れ様です!!!」」

 

まだ何もしていないのに恐れをなした不良2人は突然礼儀正しくお辞儀している。

 

「ふっ、何よ。わかってるじゃな~い」

 

「オーラって奴は隠しても滲み出るもんだからなぁ」

 

「ふっ・・・これが俺たちの才能って奴か・・・」

 

野薔薇、悠仁、(たつみ)はまんざらでもなさそうに得意げな顔をしてカッコつけている。

 

「卒業ぶりですね、伏黒さん!!」

 

「「「・・・お?」」」

 

しかし、不良たちが敬意を払っていたのが恵であり、自分たちには向けられていなかった3人は目が点になっている。3人は恵に顔を向けて見ると、彼は非常に気まずそうに3人から顔を逸らす。

 

「・・・俺・・・中学・・・ここ・・・」

 

どうやらここは恵がかつて通っていた母校らしく、この不良たちが突然姿勢を正したのは5人を恐れたというより、恵を恐れているからであったようだ。こっ恥ずかしくカッコつけた3人はどういうことか恵に絡む。

 

「それも驚きだけどそうじゃねぇだろうが!!!こっち見ろや!!!」

 

「何した⁉お前中学で何した⁉いや、あいつらに聞いた方が早いな!」

 

「おい、バカA、バカB!!こいつに何された!!?」

 

3人に話を振られた不良2人は中学時代の恵に何をされたのかを話す。

 

「俺ら・・・っていうか、この辺の不良、半グレ、その他諸々・・・伏黒さんにボコられてますから」

 

「「「はい?」」」

 

不良の発言に3人はまた目が点になり、再び恵に視線を向けた。恵はまたも3人から顔を逸らす。

 

「「「・・・え?」」」

 

「・・・ボコッ・・・た・・・」

 

「なんでさっきからカタコトなんだよ!!こっち見ろって!!」

 

「何してんの⁉お前何してんの⁉」

 

「あれか⁉昔やんちゃしてましたって奴かお前⁉」

 

またもあいまいながらに答える恵に3人は再び絡む。

 

「コラ!!なんだ君たちは⁉他校の生徒たちが入っちゃいかん!!」

 

そこへこの中学校で働いている公務員の人間がやってきて4人を怒鳴る。

 

「あんたこそ何よ!!ああん⁉」

 

「公務員さんだろ・・・何で強気なの?」

 

「釘崎マジで手ぇ出すなよ?」

 

喧嘩っ早い野薔薇に悠仁と(たつみ)に引いている。その間にも明が公務員の男と話をする。

 

「入館許可はもらってるっス」

 

「んん?ああ、君たちが。みんな若いな。入館証は首にかけてもらわないと・・・」

 

公務員の男は恵の顔を見て少し驚いた顔を見せた。

 

「!伏黒君か」

 

「・・・どうも・・・」

 

「「「覚えられてるぅ~♪」」」

 

公務員の男に顔を覚えられいて、恵は少し照れくさそうな表情を見せている。対して3人はニヤニヤした表情をしながら恵をからかっている。

 

「この人はこの学校長いんスか?」

 

「多分。武田さんは正規の人なんで」

 

「じゃあ、後任せたっス!」

 

(職務放棄・・・)

 

大人との話は補助監督がすべきなのだが、その全てを学校関係者である恵に丸投げした明に彼は少し呆れている。とはいえ、恵が知っている人間ならば話がスムーズにいくのは間違いないため、公務員の男、武田との話は恵がすることになった。恵は武田にまず今回の事件の被害者が亡くなったことを伝えた。

 

「金田、島田、大和・・・それに森下か・・・。亡くなったことにも驚きだが・・・彼らが卒業してもう20年近く経つのか・・・。昨日のことのように覚えているよ。伏黒君ほどではないが、問題児だったからね。何が聞きたい?」

 

「変な噂、黒い噂、悪い大人との付き合い・・・」

 

「「「や~い、問題児~」」」

 

「後、罰当たりな話とかあれば・・・」

 

少しでも情報を得るために、呪術関連のことは避け、噂程度の情報を聞き出そうとする恵。その際に野薔薇、悠仁、(たつみ)の3人にからかわれたが、1発殴って黙らせた。

 

「黒い噂?問題児とはいえ、並みの中学生の域は出んよ。・・・だが待て?罰当たり・・・?」

 

「あれじゃないですか?八十八橋のバンジー」

 

「お前らまだいたのかA、B」

 

罰当たりという単語に心当たりがあるのか武田は少し考え込むと、まだいた不良たちが八十八橋のバンジーという気になる単語を口にした。

 

「八十八橋って?」

 

「自殺の名所。この辺で有名な心霊スポットだ」

 

悠仁の疑問に恵が答えると、武田は思い出したような反応を示した。

 

「おお、そうだ。深夜バンジージャンプをするのが不良少年の間で流行ったんだ。いわゆる度胸試しだね」

 

「どこの部族よ・・・」

 

「バカ丸出しだろ・・・」

 

「俺よりバカって意外といるよな!」

 

「紐どうすんだよ・・・」

 

心霊スポットで度胸試しとしてバンジージャンプをしていた当時の不良たちにかなり呆れている1年生ズ。

 

「俺たちはやんないっすよ。親世代の先輩たちが話してんの聞いただけで」

 

まだグレてはいるものの、不良たちはちゃんと良識があるようでこの度胸試しバンジーはやらなかった様子である。

 

「ある日、金田たち4人が無断欠席をしてね。そう珍しいことでもなかったんだが、家に連絡して見ると、前日から帰ってないと言うじゃないか。結構な騒ぎになってね。そしたら、橋の下で倒れてるのが見つかってね。大説教になったが、本人たちは何も覚えてないの一点張りだったよ」

 

4人揃っての無断欠席。八十八橋のバンジー。記憶の消失。場所は違えども鍵の苦情の後の刺殺。これらの情報は、事件の関連性が大きく繋がっている。

 

 

武田からの有益な情報を掴んだ5人は車の前で八十八橋について話し合う。

 

「当たり・・・っスかね」

 

「八十八なら俺も行ったことあります」

 

「バンジーしに?」

 

バキッ!

 

「いっでぇ!!!」

 

バカなことを言う悠仁に恵は1発げんこつで黙らせた。

 

「心霊スポットとかは学校とかと同じ呪いが溜まりやすい。だから高専関係者が定期的に巡回するんだ。そん時は何もなかったですね。有名っちゃ有名ですけど、普通に使われてる橋ですし」

 

「でも行ってみるしかないわよね」

 

「情報がある以上、無視はできねぇからな」

 

「そうっスね」

 

八十八橋に何かがある可能性があるとして、5人はそこへ向かう方針を固めた。

 

「伏黒君」

 

そこへ、武田がやってきて恵に声をかけてきた。

 

「すまない。気になることがあってね」

 

「どうしたんすか?」

 

「学校にいた時はいろいろ世話になってたんでな。津美紀君は元気か?」

 

「・・・・・・はい」

 

武田の問いに恵は少し間を開けて答えた。津美紀という人物に3人は少し気になっている様子だ。

 

「津美紀って誰?」

 

「・・・姉貴」

 

「はあ⁉お前、姉貴いたの⁉」

 

「あんた自分の話しなさすぎじゃない⁉」

 

「そうだそうだ!」

 

恵が自分のことを話さなさすぎで3人は文句を言っているが、恵はこれを無視。ちょっとしたひと悶着はあるが、5人は今度こそ八十八橋へ向かうのであった。

 

 

一方その頃、人手が通らない交通トンネルを1台の高級車が通っている。車には1人の老人とその護衛が何人かが乗っている。

 

「年々呪霊のレベルが高くなっていっているな・・・。それに伴い、呪詛師の数も増えてきた・・・。なのに彼奴らは私腹を肥やすばかり・・・嘆かわしい」

 

「そんな腐敗していく呪術界を憂い、毒蛇の巣へ戻る父上は立派だと思います」

 

「今のままでは日本さえも腐敗しかねん。五条悟もいつ暴れ出すかわからん。こうなったらワシは彼奴等ととことんまで戦うぞ」

 

現在の呪術界を嘆いている老人の名は兆里(ちょうり)。数十年前までは呪術界の上層部にいた人間であるが、今は引退し、今日まで隠居生活を送っていた老人である。呪術界と日本の未来の安寧を願っており、もし悟と合っていれば、『そのまま残ってればよかったじゃん』と言いそうなくらい良識のある人物である。

 

「父上の身は私が守ります!」

 

兆里(ちょうり)の隣にいる金髪の長髪の女性の名はスピア。兆里(ちょうり)の護衛の術師の1人であり、彼の1人娘でもある。ちなみに名は上層部の娘ということを秘匿するために偽名を使っている。

 

「いい()に育ったのう。勇ましすぎて嫁の貰い手がないのが玉に瑕か・・・」

 

「そ・・・それは関係ないでしょう⁉」

 

親子2人の微笑ましい会話が繰り広げられてる中、車は急停止された。

 

「!なんだ・・・?」

 

何事かと思い、前方を確認して見ると、目の前には3人の術師たちが立ちふさがっている。その術師たちは、エスデス親衛隊、三獣士であった。

 

「・・・!呪詛師か⁉ワシの命を狙って・・・⁉」

 

「今までと同じように蹴散らす!油断するな!」

 

スピアを含めた護衛の術師たちは兆里(ちょうり)を守ろうと車から飛び出し、各々の呪具を構えた。

 

「ダイダラ」

 

「おう」

 

彼女たちの前に立ったのは茶髪の長髪を持ち、顎髭を生やした大男、ダイダラである。ダイダラは背中に背負っていた大きな両手斧の呪具を手に持ち、一斉に攻撃を仕掛けてきたスピアたちを迎え撃つ。

 

呪具、二挺大斧ベルヴァーグ

 

ガゴオオオオオン!!!!

 

ダイダラが振るった大斧、ベルヴァーグはたった一振りでスピアを除いた護衛の術師を全て真っ二つに切り裂かれ、命を落とした。唯一生き残ったスピアは槍の呪具を折られ、腹部に傷がついて地に膝を付けた。

 

(う・・・強すぎる・・・!私の槍術が・・・!)

 

スピアが膝をついていると、金髪の短髪の少年、ニャウが近づいてきて、彼女の顔を覗き込んできた。

 

「へぇ・・・お姉ちゃんやるねぇ。ダイダラの攻撃で死なないなんて」

 

ニャウは自分のズボンのポケットからあるものを取り出した。

 

「でも・・・これから起こることを考えると・・・死んどいたほうがよかったかもね♪」

 

取り出されたのはエスデスより預かった禍津神三貴子(まがつがみみはしらのうずのみこ)の1つである青の勾玉であった。禍津神三貴子(まがつがみみはしらのうずのみこ)を知っている彼女は実物を見て驚愕する。

 

「そ、それは!!?なぜお前たちがその呪物を持っている!!?」

 

「んー・・・教えなーーい♪」

 

「んがっ!!?」

 

「はい、あ~~ん♪」

 

「もがぁ!!!??」

 

ニャウは片手でスピアの口を無理やり開けて、彼女の口の中に青の勾玉を入れ、飲み込ませた。

 

ドクンッ・・・!

 

「あ・・・が・・・!!ああ・・・!!!」

 

青の勾玉を飲み込んだスピアは途端に苦しみだし、呻き声を上げている。苦しみの中、彼女が飲み込んだ青の勾玉が彼女の内部から埋め込まれるように出てきて、勾玉に封じられていた強大な呪力が解放された。

 

一方のダイダラはベルヴァーグを振り下ろし、兆里(ちょうり)が乗っていた車を破壊する。何とか脱出した兆里(ちょうり)は尻もちをつき、口元に髭を生やした水色髪のポニーテールの男を見て、驚愕に満ちた表情をする。

 

「お・・・お前は・・・加茂!!??」

 

男は加茂という呼び方をあえて否定せず、礼儀正しく頭を下げる。

 

「はい。あなたの手腕は尊敬しておりました」

 

「な・・・ならばなぜ私を狙う!!?」

 

「主の命令は・・・」

 

シュッ!

 

「何においても絶対ですので」

 

男が振り払う動作をした途端、兆里(ちょうり)の首は斬り落とされた。兆里(ちょうり)の命を奪ったこの男の名はリヴァ。加茂家に生まれ、加茂家の人間として振る舞った男であり、自ら加茂を捨てた男でもある。

 

 

一方その頃、1年生ズたちは被害者と深い接点がある八十八橋に到着した。その頃にはもうすっかり夜になっていた。

 

「着いたっス。鯉ノ口峡谷、八十八橋。呪霊が確認でき次第、帳を下ろすっス」

 

「了解!」

 

車から降りた1年生ズはしっかり呪霊に警戒しつつ、八十八橋の調査を開始するのであった。

 

 

兆里(ちょうり)の暗殺を終えたダイダラとリヴァは自分たちがやったという痕跡を消すために残穢を取り除く作業に入っている。

 

「倒したのは15人ってとこか!よーし、この経験値が俺をさらに強みへ導くぜ!」

 

「さっさと痕跡を消すぞ」

 

リヴァは持ってきていた斬鬼の術式が凝縮されたカプセルを取り出し、それを上に放り投げた。カプセルは宙で割れ、中より大量の雨が降り注いでいく。

 

「便利なものだな。天候の呪霊の術式は」

 

リヴァが斬鬼の術式に対して称賛していると、ダイダラは持っていたもう1つの禍津神三貴子(まがつがみみはしらのうずのみこ)である黄色の勾玉に対して素朴な疑問を浮かべている。

 

「こういう呪物はよぉ、なんで壊そうとしねぇんだ?」

 

ダイダラの疑問にリヴァが答える。

 

「壊さないのではなく、壊せないのだ。特級ともなると特にな。自らの生命を止め、他に害を成さないという縛りで存在を保証しているのだ」

 

「宿儺の指は有害じゃねぇか」

 

「あれは特別だ。呪物となってそのうえ20に分割してもなお、時を経て呪いを呼び寄せる文字通りの化け物だ。それゆえに、器を選ぶ」

 

「ほぉー、そっか!じゃあこいつや呪胎九相図は誰でもいいわけかぁ!」

 

「・・・前の現場でも説明しただろうが」

 

納得がいったダイダラに対し、前の仕事で同じ説明をしたリヴァは彼に呆れている。

 

「こっちは終わったよー。あーあ、もったいないなぁ・・・」

 

そこへスピアに禍津神三貴子(まがつがみみはしらのうずのみこ)を飲ませ終えたニャウが彼女を連れてきた。連れてきたスピアの姿はもうすでに本来の彼女の姿ではなくなっている。長かった金髪は短く黒く変色しており、瞳はライトグリーンになっており、胸元には青の勾玉が大きくなって浮き出ている。唯一面影が残っているのは服装と帽子のみ。

 

「これが受肉だ」

 

「すっげ。完全に別人じゃん」

 

そう、彼女はもうスピアではない。彼女は体も、意識も、全て呪物と化していた禍津神三貴子(まがつがみみはしらのうずのみこ)の1人に支配されているのだ。

 

「起き抜け早々に申し訳ないが・・・1つ御使いを頼みたい」

 

「・・・・・・」

 

リヴァは受肉によって復活を果たした禍津神三貴子(まがつがみみはしらのうずのみこ)の1人に1つの仕事を与える。対し、彼女は頭の帽子が煩わしいと思ったのか、雑に地面に放り投げたのであった。

 

 

一方その頃の八十八橋。1年生ズは八十八橋の調査を行ったのだが、結果は呪霊どころか残穢も見つからなかった。日時ももうすっかり朝になっていた。

 

「ふわぁぁ~・・・」

 

「ちょっと・・・呪霊の呪の字も出ないじゃない・・・」

 

これ以上の進歩もないため、1年生ズは一旦調査を打ち切り、明と共にコンビニで軽めの朝食を買って食事にありつく。

 

「残穢も気配もまるで感じられませんでした」

 

「っスか。となるとハズレっスかね」

 

「ここに来て振出しに戻るのかよ・・・」

 

「でも、時間かけるのはマズくね?」

 

「なんでよ?」

 

「だって有名な心霊スポットなんだろ?呪われてる人はまだまだいるかも。しかも今のところ、致死率100%。これ以上人死には勘弁だろ」

 

「確かにね」

 

悠仁の確かな情報と他にも呪われてる人間がいることも考慮してあまり時間はかけられないと考えている。悠仁の思いは野薔薇を始め、全員が同じだ。そこで明が1つの閃く。

 

「ピコーン!流行ってたのはバンジーっスよね?飛び降りるって行為が鍵なんじゃないっスか?」

 

「ピコーンッて言った?今言った?」

 

「言った!言った!」

 

「かわいいところあるなぁ!」

 

意外とかわいげのある明の発言に悠仁、野薔薇、(たつみ)はちょっぴりときめいている。

 

「それはもう虎杖で試しました」

 

「え?」

 

恵からすでに実践済みと聞いて、明は疑問符を浮かべた。するとここで明は調査の際、悠仁が持っていたビニール紐の意味を理解した。

 

「えぇ!!??もしかしてあのビニール紐で飛んだんスか!!?」

 

明は恵と野薔薇が悠仁をビニール紐でぐるぐる巻きにして、(たつみ)が悠仁を蹴とばして落とす光景を想像して顔を青くして頭を抱えている。

 

「あ!いた!よかった!伏黒さーーん!!」

 

と、そこへ昨日のリーゼント頭の不良が自転車に乗ってやってきた。

 

「誰だっけ?」

 

「伏黒の後輩だろ。釘崎散々いじってたじゃん」

 

「ああ」

 

「釘崎すげぇな。昨日のことなのにもう忘れるとか」

 

昨日散々いじっていたのにもう記憶にない様子の野薔薇に(たつみ)は少し引き気味である。

 

「八十八橋って言ってたから・・・本当によかったぁ~・・・」

 

自転車の補助席には茶髪の短髪の少女が乗っている。恵には不良が連れてきたこの少女に覚えがあった。

 

「・・・藤沼?」

 

「?」

 

「同級生」

 

「姉ちゃんです」

 

「よかった・・・覚えてくれてて・・・」

 

どうやらこの少女、藤沼は恵の中学生時代の同級生で、不良の姉のようだ。

 

「昨日、姉ちゃんに伏黒さんの話したんですけど・・・」

 

「あの・・・森下さんって近所でお葬式やってて・・・その人と八十八橋のこと調べてるってこの子に聞いたから・・・何か・・・関係あるのかなって・・・」

 

恵は明に顔合わせをする。一般人に余計な不安を与えないように、話は避けるようにと明は首を振って促した。

 

「関係って?」

 

「だから、森下さんが亡くなったことと、橋が・・・」

 

「関係ない。俺たちはただ・・・」

 

「私・・・私行ってるの・・・中2の時、夜の八十八橋に・・・」

 

(げっ・・・!)

 

夜の八十八橋に行っている。それ即ち、藤沼姉も呪霊のターゲットにされている可能性が高い。さらによく見てみれば藤沼姉の表情には不安なようなものが見え隠れしていた。詳しい状況を聞くために、話を続ける。

 

「最近何かお家で変なことないっスか?家族の中で自分だけが感じる違和感とか」

 

「!・・・私の家・・・地方のアンテナショップやってるんですけど・・・私が帰る時だけ、お店の自動ドアが開きっぱなしなんです。お父さんもお母さんもたまたまだって言うんですけど・・・絶対・・・何かいるんです・・・。怖くて・・・そんな時、伏黒君の話を聞いて・・・八十八橋のことを思い出して・・・」

 

藤沼姉は自分だけに起きている現象に恐怖で震えており、身を固くしている。

 

「自動ドアの話はいつ頃からっスか?」

 

「ちょうど1週間前から1日置きぐらい・・・」

 

1週間から1日置きに開きっぱなしになるドア。被害者たちとの共通点と同じだ。

 

(被害者4人とも、異常発覚から亡くなるまで、最低でも2週間は空いてる)

 

(まだ少し余裕があるな)

 

異常発覚から亡くなるまでの時間帯を考えると、まだ少しの猶予はあるが、藤沼姉の身の安全を考えると、なるべく急がなくてはならない。

 

「当時、八十八橋に1人で行ったわけじゃないわよね。誰と行ったか覚えてる?」

 

「あの・・・やっぱり何か関係が・・・?」

 

「自動ドアとはね。でも、森下さんが亡くなったのとは関係ないっスよ。私の大学のレポートを伏黒君たちに手伝ってもらってるんス。心霊スポットにおける電磁波と電化製品への影響!ゲロダルいっス!でもいろんな人の話聞きたいから、一緒に行った人、教えてほしいっス」

 

野薔薇の質問で感づかれそうになったところを明が嘘を行って何とか誤魔化しながら当時藤沼姉が八十八橋に行った時のメンバーを聞き出そうとする。藤沼姉の安全のためにも。

 

(嘘つくからには、助けないと)

 

藤沼姉は森下との関係がないと聞くと、不安だった表情が少し和らぎ、笑みを浮かべている。

 

「肝試しに行ったのは部活の先輩2人。あ、そうだ伏黒君。あの時、津美紀さんも一緒にいたよ」

 

「「「!!!!!!」」」

 

恵の姉、津美紀が八十八橋に行った。その情報に悠仁、野薔薇、(たつみ)は目を見開く。

 

(津美紀って・・・!)

 

(伏黒のお姉さん・・・!)

 

この情報だけでも驚きだが、津美紀の血縁者である恵は驚くほどに冷静だ。

 

「そうか。じゃあ、津美紀にも聞いてみるわ」

 

「んじゃ、私はこの2人を家まで送り届けるんで、レポートの続き、お願いするっス」

 

「やっぱり、何かあるんすか?」

 

「2人乗りで帰らすわけにはいかんでしょ」

 

明は藤沼姉弟に悟られないように2人を家に送り届ける。

 

「・・・伏黒。伏黒!!」

 

藤沼姉弟が去った後、(たつみ)は恵に声をかけるが、反応がない。それもそのはずだ。彼は内心ではかなり焦っているのだ。表面上、悟られないように取り繕っていたが、姉が呪霊のターゲットになっているだなんて、焦らないはずがない。その場で取り乱さない方が奇跡と言っても過言ではない。

 

「伏黒!!しっかりしろ!!まずは安否確認だろ!!」

 

「・・・大丈夫・・・悪ぃ・・・少し外す・・・」

 

恵は顔色が優れないまま、3人から離れる。3人はそんな彼の様子を心配している。

 

3人から離れた恵は伊地知に連絡を入れる。その際に事情の説明、津美紀の安否確認、さらに護衛の術師の派遣を要請する。

 

『事情はわかりました。津美紀さんの護衛ですね。ですが、今手が空いているのが2級術師の方だけで・・・』

 

「2級・・・」

 

『被呪者の数がこちらの想定よりずっと多いとなると、呪いの等級も見直さねばなりません。おそらく、虎杖君の成長を加味した上で割り振られた任務。そこからさらに危険度が上がるとなると、2級術師の手には余るかと。皆さんも同様危険です。個人的には、撤退を勧めます』

 

護衛は回すが、任務の危険度が上がる可能性が高いことから伊地知は2級術師では処理しきれない案件であると伝え、4人の撤退を勧めている。通話を切った恵はどうするかを真剣に考える。

 

(どうする・・・?俺だけでも今すぐ戻るか?いや・・・もう4人でも危険な任務だ。3人だけには任せられない。来週には五条先生も赤女(あかめ)先生も戻ってくる。その時にも改めて・・・)

 

確かに悟や赤女(あかめ)ならばこの任務は容易い案件であるだろうが、問題はそこではない。

 

(違ぇだろ!問題はタイムリミットだ!呪霊が襲ってくるタイプじゃなく、マーキングした人間の内側から術式が発動するタイプなら、そばで守り続けても意味がない!今すぐ祓うしかない!!)

 

時間の経過によって発動する術式を持つ呪霊ならばその場に呪霊がいなくとも遠隔で発動できるし、そばで守ったところで術式によって身体の内側から壊されるならば護衛の意味がない。悠長に時間を待っていたら藤沼姉はおろか、津美紀の命が危ないかもしれない。ならば残された手段はただ1つ、今すぐ呪霊を見つけ出して祓う外ない。

 

「今話してたのは伊地知さんか?」

 

「なんで伊地知さんと話してんの?」

 

「津美紀の姉ちゃん、無事だったか?」

 

恵の考えがまとまると、すぐ目の前には自分を心配する3人が顔を覗き込んでいた。

 

「問題ない。それより任務の危険度がつりあがった。この件は他の術師に引き継がれる。お前らはもう帰れ」

 

任務の危険度が上がり、他の術師が引き継がれることを説明し、恵は3人を帰らせようとしている。だがそれで納得する3人ではない。

 

「ええ?なんだよ?お前らはって・・・伏黒は?」

 

「俺は武田さんに挨拶して帰る。早く行け」

 

全然納得していない3人を恵は今到着した明の車に無理やり乗せた。3人が車に乗ったのを確認し、明は車を発車させる。1人残った伏黒が目指すのはただ1つ・・・元凶である呪霊が潜む八十八橋だ。

 

 

夜の八十八橋の下。恵は橋の下に呪霊がいると確信しており、呪霊がいるとされる場所を目指して歩いている。

 

『お疲れ様です。新田さんですか?聞きたいことがあるんですけど・・・』

 

恵は電話で明に確認した内容を思い出す。

 

『手順っスね。藤沼さんは八十八橋の上には行ってないっス。肝試しは橋の下で行われたっス』

 

『下なら虎杖も行きましたよ』

 

『多分、上から降りちゃダメなんスよ。呪霊が結界内にいるなら、手順は大事っス。『夜に』。『下から』。それからもう1つ』

 

呪霊がいる場所というのは、八十八橋の下にある呪霊が貼った結界の中。そこへ行くためには、1つ1つ手順がある。恵が夜に行動して、下から移動しているのはそのためである。

 

(術式を付与した領域を延々と展開し続けるのは不可能だ。となると、この結界は少年院の時のような未完成の領域だ。今回は逆に助かった。帳の必要がない)

 

恵は八十八橋のちょうど真下におり、彼はそこから上を見上げる。

 

「自分の話しなさすぎ」

 

「「だな」」

 

そこへ自分が帰らせたはずの悠仁、野薔薇、(たつみ)が恵の隣に立っていた。3人の存在に気がつかなかった恵は苦渋な表情を浮かべている。

 

「ここまで来て気付かねぇなんて、マジでテンパってんだな」

 

「別に何でも話してくれとは言わねぇけどさ・・・せめて頼れよ。友達だろ」

 

悠仁の言葉に少しの沈黙を貫く恵。少し黙っていると、恵が口を開く。

 

「・・・津美紀は・・・寝たきりだ」

 

「「「!」」」

 

「この八十八橋の呪いは被呪者の前にだけ現れる。本人が申告できない以上、いつ呪い殺されるかわからない。だから今すぐ祓いたい」

 

恵にとって津美紀は自分を呪術師の道に赴くきっかけとなった人物でもあり、唯一の肉親でもある。そんな彼女を殺そうという呪霊の存在がいる以上、悠長に待ってる気など微塵もない。だが3人を危険に巻き込みたくなかったのも事実だ。

 

「でも任務の危険度が上がったのは本当・・・」

 

「はいはい、もうわかったわよ」

 

「はじめっからそう言えよ」

 

「そう言うなって。これでも進歩してんだぜ」

 

しかし、危険を承知のうえで厄介ごとに首を突っ込んでくるのもこの3人だ。恵は3人の助力に呆れつつも、頼もしく思い口元に笑みを浮かべている。結界内にいる呪霊を祓うと決めた4人は八十八橋の下の峡谷を通っていく。ずっと先へ進んでいくと、川を発見する。

 

『呪霊が結界内にいるなら、手順は大事っス。『夜に』。『下から』。それからもう1つ・・・峡谷の下に、川があるかも。川や境界をまたぐ彼岸へ渡る行為は呪術的に大きな意味を持つっス』

 

4人は明の助言を信じ、川に向かって一歩踏み出した。すると、4人がいる空間に変化が起きた。空間の至る所に岩石とフジツボのような殻が現れ、4人は閉じ込められる。さらに複数のフジツボの殻より柱のような物体が噴き出し、この空間の岩石に突き刺さる。4人は呪霊の結界の中に入ることに成功したのだ。そして、特に大きなフジツボの殻の中より、茶色いフジツボのような呪霊が出現した。

 

【ナアアアアアアアア】

 

「出たな」

 

「祓い甲斐がありそうね」

 

「んじゃ、ちゃちゃっと祓おうぜ」

 

4人が呪霊を祓おうと行動しようとした時だった・・・

 

「キエエエェェェェェェ!!!!!!」

 

「「「「!!!!」」」」

 

4人の背後から奇妙な奇声と共に何かの気配を感じ取り、4人はさっと左右に分かれて突っ込んできた何かの突進を躱した。乱入してきた何かの姿は実に異形だった。青緑色の肌にやや細長い手足が生えたようなずんぐりとしたカエルのような胴体。そして何より異形とも言わしめる要員である人面の下に大きな2つ目の口が備わった怪物だ。

 

「お?なんだぁ?先客かぁ?」

 

この異形の存在は人語を理解し、悠長に会話ができている。この異形で唯一わかっているのは、今回の任務の討伐対象外の存在であることだけだ。

 

「伏黒、こいつ別件だよな?」

 

「ああ」

 

「じゃあ、お前らはそっち集中しろ。こいつは俺が祓う!」

 

悠仁は両手に呪力を纏って構える。

 

「俺も加勢するぜ、悠仁。1人より2人の方が早く祓えるだろ」

 

(たつみ)は悠仁の隣に立ち、腰の青龍刀を抜いて構える。

 

「なんだぁ?遊んでくれるのかぁ?きええええ・・・」

 

異形の存在・・・呪胎九相図の3番、血塗は奇妙な奇声をあげながら、悠仁と(たつみ)と対峙するのであった。




じゅじゅさんぽ

女性「キャーー!誰かー!引ったくりよー!」

1年ズ「!」

1年ズ、ひったくり犯を撃退、女性の荷物を取り戻す。

女性「ウチ、中華料理屋やってて・・・お礼にごちそうさせてください」

野薔薇「悪いですよ~」

悠仁「いいんですか⁉ありがとうございます!!ごちそうさまでーす!!」

(たつみ)「お前はちょっとは遠慮しろ!ゴチになります!!」

恵「・・・お前もじゃねぇか」

1年ズ、お言葉に甘えて中華料理屋で昼食に。

女性「4代続くこの店も、本当は父の代でたたむはずだったんですけど・・・私がわがまま言って続けてるんです。残したかったんですよね・・・この店・・・この味を・・・」

悠仁、(たつみ)、野薔薇(ええ話や~・・・)

そうしてるうちに料理が完成

女性「お待たせしました!当店自慢代々伝わる餃子定食です!」

悠仁、(たつみ)、野薔薇「いっただっきまーす!」

恵「いただきます」

1年ズ、あっという間に餃子定食完食。

1年ズ「ごちそうさまでした」

1年ズ、中華料理屋を出て、道のりを歩く。

恵「・・・お前らさ、全然肉の味がしなくてほぼツナギとキャベツみたいな餃子、どう思う?」

野薔薇「よく言った伏黒!!!」

(たつみ)「餃子だけど餃子じゃない感がすごかった!!うまかったけど!!」

悠仁「いい人だったんだけど!!いい人だったんだけどね!!でも餃子って、肉料理じゃなくて野菜料理らしいよ?」

(たつみ)、恵、野薔薇「マジ?」

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