呪術廻戦ー呪いを斬るー   作:先導

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起首雷同ー参ー

思わぬ形で最大の怨敵、斬鬼と対峙した(たつみ)は斬鬼が繰り出した電気の爪による連撃を屈み、側転、バク転、そしてスライディングで躱してすり抜ける。斬鬼の間を掻い潜った(たつみ)は未だ眠ったままの恵を担ぎ、八十八橋の河原を走り、斬鬼から距離を取ろうとする。

 

「おいおい、啖呵切っておいて逃げんのかぁ!!」

 

斬鬼は(たつみ)を逃がすまいと言わんばかりに右手の電気の爪を納め、指先をパカッと開かせる。開いた指先の穴より、電気の弾丸がマシンガンのように放たれる。(たつみ)はジグザグに走りながら電気の弾丸を確実に躱していく。

 

(感情に吞まれるな!冷静になれ!兄貴が言ってたじゃねぇか!熱いだけじゃ生き残れないって!)

 

斬鬼に対し、強い憎悪はあるものの、(たつみ)は冷静さは失っておらず、今自分がすべきを徹して行動している。

 

(伏黒はまだ眠ったままだ。この状態でこいつやあいつら(壊相と血塗)に襲われでもしたら・・・。そっちが最悪のパターンだ!まずはあいつらから距離を離す!その後にこいつさえ引き付ければ・・・!)

 

恵を抱え、走り続ける(たつみ)に対し、斬鬼は射撃を停止し、彼に向けて掌を掲げる。掲げた掌に穴が開かれる。

 

「あくまでも()らねぇってんなら・・・俺様は一方的に()らせてもらうぜぇ!!」

 

ビュオオオオオオオ!!!

 

斬鬼が掲げた掌の穴より、極寒の猛吹雪が吹き荒れた。迫ってきた猛吹雪に(たつみ)は跳躍して躱した。しかし、放たれた猛吹雪は水飛沫をあげる川の水を凍らせただけでなく、足場全体までもが凍らせた。地に着地した(たつみ)は滑って態勢が崩れそうになる。

 

「うぁっ!こいつ・・・電気しか操れねぇんじゃなかったのか⁉」

 

斬鬼の術式の一部しか見ていなかった(たつみ)はこの能力に驚愕している。それに構わず斬鬼は足に車輪を展開し、自分自身に太陽のように炎を纏い、猛スピードで(たつみ)に突進を仕掛ける。

 

「ぶらあああああああああ!!!!」

 

斬鬼の炎の突進に、態勢が崩れている(たつみ)は防御することもままならず、攻撃をくらってしまう。

 

「うああああ!!」

 

突進をくらった(たつみ)は吹っ飛ばされ、担いでいた恵を遠くへ手放してしまう。

 

「ぐ・・・ああ・・・あちぃ・・・!」

 

起き上がった(たつみ)は制服に先ほどの攻撃の炎で火がついたため、その場に脱ぎ捨てた。すると斬鬼は倒れ伏す恵に気がついた。

 

「そういやそっちの小僧はさっきから寝てばっかだなぁ」

 

恵の様子を見て、斬鬼はあくどい笑みを浮かべた。

 

「なぁ~んだ、そいつさえぶっ殺しちまえばちったぁやる気出すのかぁ」

 

矛先を恵に変更した斬鬼は両手に電気の爪を生成し、彼に近づいていく。それを見た(たつみ)は痛みを堪え、斬鬼に向かって走り出し、青龍刀による斬撃を放った。(たつみ)に感づいた斬鬼は両腕を交差して斬撃を防御して後退る。

 

「そう急かすなよ鉄クズ・・・目一杯楽しませてやるよ・・・。地獄めぐりだ!!」

 

もうこれ以上突き放すことは不可能であると判断した青龍刀を構え、改めて斬鬼と対峙する。

 

「くっくっく・・・それでいい。水くせぇことをしてくれるぜ」

 

(たつみ)が戦いにやる気を出したのだと感じ取った斬鬼は好戦的な笑みを浮かべ、構え直す。

 

(伏黒に目を付けられちまった以上、注意を俺に向けさせるしかねぇ。あいつは強い。生半可じゃ挑めねぇ。最初っから全力でいくぜ!)

 

(たつみ)は冷静さを保ったまま、本気で祓いに行く気で斬鬼に攻撃を仕掛けようと接近する。すると・・・

 

ズズズズッ・・・

 

「!!」

 

突然(たつみ)の左腕に薔薇の花ような紋様が浮き出てきた。

 

「な・・・なんだよ・・・これ・・・⁉」

 

浮き出てきた薔薇の花の紋様に困惑している間にも、斬鬼は(たつみ)の懐に入り、右腕を振るって彼を地面に叩きつけた。

 

「が・・・!」

 

「九相図共め・・・小僧に妙な術式を発動させやがったな」

 

この薔薇の花の紋様が壊相の術式によるものであると理解している斬鬼は少し忌々し気な感情を露にしている。

 

「その様子じゃあまともに動けねぇだろ。白けてくるぜぇ。となったら俺様の唯一の楽しみは1つ・・・イジメてやる他ねぇなぁ?」

 

倒れ伏す(たつみ)に対し、斬鬼は非常にどす黒い笑みを浮かべている。斬鬼の指摘の通り、現在(たつみ)の肉体は薔薇の花の紋様を通して激しい痛みが伴っており、まともに動けないでいる。ただ、体を動かせない原因は激痛だけではない。

 

(くそ・・・身体がめっちゃいてぇ・・・!やっぱりあいつ(壊相)の血、何か仕込んでたか・・・!悠仁と釘崎は大丈夫なんだろうな・・・?)

 

薔薇の紋様が浮き出た原因は壊相の翅王をくらったことに原因があるとわかった(たつみ)は壊相と血塗を引き付けている悠仁と野薔薇の安否を気にするのだった。

 

 

一方その頃、悠仁は野薔薇を抱え、翅王の攻撃を避けて森を飛び出し、その下にある高速道路に着地する。迫ってきた翅王の血は射程外なのかこれ以上追ってくることはなかった。

 

「うっし、射程外だな」

 

「よくやった。褒めてつかわす」

 

「へいへい」

 

「嘘。ありがと」

 

ひとまず翅王の射程から外れたことに安堵していると、ガードレールの外から血塗が現れ、第2の口から血を発揮出そうとしている。

 

「!!」

 

それに気づいた悠仁は野薔薇を突き飛ばし、血塗が吐き出す血を顔から浴びてしまう。

 

(最短距離で先回りされたか!)

 

悠仁たちが遠回りの森を通ったのに対して血塗はこの高速道路の最短距離を真っ直ぐ突き進んで先回りをして、2人が来るのを待ち構えていたのだ。

 

「虎杖!!」

 

ズシャア!!

 

野薔薇が悠仁に駆け寄ろうとした時、もう追いついてきた壊相の翅王の血が彼女の左腕に突き刺さる。この血液によって野薔薇の左腕に激痛が走り、制服の左袖も溶けてしまっている。

 

「釘崎!!」

 

「心配しなくても、弟の血に私のような性質はありませんよ。私のだって全身に浴びでもしない限り死にはしません。まぁー、死ぬほど痛みますがね。私たちの術式はここからです」

 

2人に自分と血塗の血液が入り込んだのを確認した壊相は自分と血塗の術式を発動させる。

 

「蝕爛腐術―――朽」

 

ズズズズズズ!

 

「「!!」」

 

壊相が蝕爛腐術、朽を発動した瞬間、悠仁の顔と野薔薇の左腕と左頬に薔薇の花の紋様が浮き出てきた。壊相は術式効果を引き上げるために自身の術式を打ち明ける。

 

「粘膜、傷口・・・私たち兄弟のどちらかの血を取り込み、私たち兄弟どちらかが術式を発動すれば、侵入箇所から腐蝕が始まります。そちらの少年は持って15分、そちらのお嬢さんは10分・・・そしてあなた方と離れた少年は5分が限界でしょう。朝には骨しか残りませんよ」

 

(術式ってことは、解除させちまえばいいわけだ。(たつみ)の猶予時間は俺たちより短い。急がねぇと)

 

自分たちと同じ状況に陥り、より短い猶予しかない(たつみ)を助けるためには5分以内に術式を解かせなくてはいけない。術式内容を理解した悠仁は冷静だ。

 

「やっぱ毒か」

 

「結果有毒なだけであって私たちの術式はあくまでも『分解』ですよ。さて、どうします?」

 

具体的な時間の猶予を述べてはいるが、術式の開示によって術式の効果が上がり、実際の時間より短くなっているのは言うまでもない。(たつみ)や2人にとってまさに危機的状況だ。

 

(術式の開示は済んだ。実際はもっと早く死ぬな。兄さん・・・こいつら大したことないよ)

 

壊相はここに来る前に自身の兄・・・呪胎九相図の1番と話したことを思い返す。

 

 

明治の初め。呪霊の子を孕む特異体質の娘がいた。

 

身に覚えのない懐妊に始まり、親類縁者からの風当たりは常軌を逸し、彼女はこの亡骸を抱え、ある呪術師が開いた寺に駆け込んだ。が、その時点で彼女の運は尽きてしまう。

 

加茂憲倫(のりとし)。多くの呪術文化財と共に史上最悪の術師として名を残す御三家の汚点。彼の知的好奇心は呪霊と人間の間に生まれた子の虜となる。

 

九度の懐妊。九殿の堕胎。それらがどのように行われ、その後彼女がどうなってしまったのか・・・一切の記録は破棄されている。

 

呪胎九相図、1番から3番。特級に分類されるほどの呪物。その呪力の起源は母の恨みか・・・それとも・・・。

 

だが受肉を果たした彼らに母の記憶はない。人間にも術師に対しても特段恨みがあるわけではない。150年・・・彼らはお互いの存在だけを頼りに封印を保ってきた。

 

受肉を果たした呪胎九相図の1番は言った。

 

「呪霊側につくぞ」

 

兄が下した決定に壊相は少し不安がある。

 

「大丈夫かな?あいつら胡散臭いよ、兄さん」

 

「呪霊が描く未来の方が俺たちにとって都合がいい。ただそれだけのことだ。受肉の恩は忘れろ」

 

彼らは呪霊が掲げる理想に何1つ共感はしていない。ただ自分たちにとって都合いいというだけ。それゆえに彼らは呪霊側に一応協力はしている。それはこの光景を遠くで見ていたツクヨミ、ウサギのぬいぐるみ、そして隣にいたツクヨミの姉、もう1人の禍津神三貴子(まがつがみみはしらのうずのみこ)の女性も目的は違えども同意見である。

 

「いいか弟たちよ。壊相は血塗のために、血塗は俺のために、俺は壊相のために生きる。俺たちは、3人で1つだ」

 

兄弟のため、兄弟が望むのであれば、彼らはそれに殉ずるのみ。それが呪胎九相図、1番から3番の行動理念である。

 

 

当たれば勝利確実の術式、蝕爛腐術、朽を発動させた壊相は悠仁と野薔薇に対し、得意げな笑みを浮かべている。

 

「辛いようでしたら、今すぐ殺して差し上げましょうか?」

 

「・・・くっくっく・・・」

 

「?」

 

朽が発動されている中、野薔薇は不敵に笑ったことで壊相は怪訝な表情を見せる。

 

「当たれば勝ちの術式・・・強いなお前ら。でも残念・・・私との相性最悪だよ!!」

 

野薔薇はポケットから1本の釘を取り出し、それに呪力を纏わせる。

 

芻霊(すうれい)呪法―――『共鳴り』!!」

 

なんと野薔薇は呪力が纏った釘を薔薇の花の紋様が出ている自身の左腕に1本打ち込んだ。すると・・・

 

ドクンッ! ドクンッ!

 

突然壊相と血塗の身体に強烈な痛みが走った。まるで心臓を締め付けられるかのような・・・そんな感覚だ。

 

「我慢比べしよっか♡」

 

自身の術式で2人にダメージを与えている野薔薇は痛みが走りながらも、あくどい笑みを浮かべている。

 

「痛いのは嫌だろう?ならさっさと泣きながら術式解けよ」

 

(呪詛返しの術式・・・!我慢比べ・・・こちらが術式を解かねばこれが続くというわけか・・・!)

 

芻霊(すうれい)呪法、共鳴り・・・対象から欠損した一部に人形(ひとがた)を通して呪力を打ち込むことで対象本体にダメージを与える術式。術式範囲の制限は緩く、対象との実力差、欠損部位の希少価値によってその効果は変わる。血液は芻霊(すうれい)呪法において決して高くない。だが共鳴りは対象との繋がりを辿る。今、野薔薇の中にある2人の血液は蝕爛腐術の術式で強く繋がっている。ゆえに、壊相の血でおいても、蝕爛腐術との繋がりによって、血塗にもダメージを与えているのだ。

 

(弟の方にも効いたのはタナボタだな。このままじゃどうせ和倉も私たちも死ぬんだ。じゃんじゃか共鳴りぶち込んでやる!)

 

なかなかに強烈ではあるが、それだけでは壊相が朽を解くことはない。

 

(なかなかに強烈ではあるが、何度やっても私たちの命には届かない。我慢さえしていれば、いずれ死ぬはあなた方!しかも、朽の発動中は痛みと毒でまともに動け・・・!)

 

壊相が術式を発動している中で、彼にとって予想外のことが起きている。朽の発動中は常に激痛が走る。それだけでなく毒も存在する。その両方が伴っている中でも、悠仁は機敏に動いていた。

 

(なぜそこまで動ける?)

 

ズンッ!ズンッ!

 

「共鳴り」

 

ドゴォ!!!

 

壊相が驚愕している間にも野薔薇は2回目の共鳴りを発動。壊相と血塗にダメージが入る。そして、血塗は同時に、呪力が込もった悠仁の拳を人面に直撃する。

 

悠仁は猛毒、呪いの王両面宿儺の器。ゆえに、あらゆる毒に耐性がある。

 

『結果有毒なだけであって私たちの術式はあくまでも『分解』ですよ』

 

分解の痛みはあるだろうが、その果てにある毒は彼には効かない。だが痛みだけでは・・・

 

 

虎杖悠仁は止まらない!!!

 

ドドドドドド!!

 

毒が効かない悠仁は痛みなどお構いなしに動き、血塗に拳による連撃を叩き込んでいく。

 

「血塗ううううううううう!!!!」

 

弟の危機に壊相は叫びつつ、血塗を助けようと走り出す。

 

「うるせぇなあ!!共鳴り!!」

 

野薔薇は3回目の共鳴りを発動させ、壊相と血塗にさらにダメージを与える。

 

「なんの!!」

 

壊相は何とか踏ん張り、走り続けるが、ここで血塗を相手にしていた悠仁が野薔薇とシフトチェンジし、壊相に迫ってくる。

 

(スイッチ!瀕死の女により瀕死の弟に当てるか!いつでも動きを止められるとでも⁉)

 

血塗に向かって走り出す野薔薇は壊相にちらっと視線を向ける。血塗にとどめを刺しに行くつもりの野薔薇に壊相は激昂する。

 

「女ぁ!!!!」

 

壊相はここで血塗を助けるために2つの選択肢が迫られる。

 

(術式を解くか否か・・・。このままでは弟を助けに行けない。朽の発動中に翅王は出せない。だが、今のあの女に弟を殺すだけの余力があるか?女が死ぬより先に私がこの男に殺されることはないだろう!指のところに向かったあの茶髪の少年は持って後1、2分!絶対に、術式は解かない!!)

 

壊相は悠仁と野薔薇、(たつみ)を殺すことを優先し、術式を解かない決定を下した。

 

「あ、あ・・・兄者・・・」

 

「!!!」

 

しかし、弱々しく自分を呼ぶ血塗の声に壊相は兄の言葉を思い出す。

 

『俺たちは、3人で1つだ』

 

兄の言葉を思い出した途端、壊相は無意識に朽の発動を解除した。これによって悠仁と野薔薇の薔薇の紋章は花が散るように消えていった。朽が解かれた瞬間、悠仁は回し蹴りを壊相に叩き込む。悠仁はさらに拳を放つが、壊相はこれを躱し、悠仁に拳を叩き込んだ。悠仁はいったん距離を取り、再度壊相に蹴りを2回放ち、呪力を纏った拳を彼の腹部に叩き込んで壁に叩きつけた。

 

(気づいた時には術式を解いていた・・・!)

 

悠仁は拳で追撃していくが、壊相は壁に沿って回転して1回、2回の拳を躱していく。

 

「翅王!!!」

 

壊相は距離を取り、翅王を発動して血のレーザーを悠仁に放つ。向かってきた血のレーザーを悠仁は走って躱し、ガードレールの隙間を潜り抜けて、崖沿いに走って助走をつけ、高く跳躍して壊相の背後に立ち、拳に呪力を乗せる。

 

野薔薇は向かってくる血塗に呪力が纏った釘を打ち込もうとする。

 

瞬間に、悠仁の呪力と野薔薇の呪力が・・・黒く輝く。

 

野薔薇の中に毒はまだ残っている。だが術式が解け、晴れた痛みでより深く意識は研ぎ澄まされていく。その先で爆ぜる、100万の火花。

 

眼前の敵を仕留める誠心、悠仁の本領。禪院真希を凌ぐ身体能力、格闘センス。そこに与えられた呪いの力。彼は、黒い火花に愛されている。

 

ズン!!!!!

 

黒閃!!!!

 

野薔薇が放った黒閃によって、血塗は釘を打ち込まれ、大ダメージを負い、壊相は悠仁の黒閃による打撃によって右腕が吹っ飛ばされる。

 

(なんだ・・・今の黒い光は・・・?私は確かに、確実に呪力で強化した腕で拳を受けた。だが気づけば肩ごと飛ばされていた・・・)

 

壊相は困惑する中で、今にも死に絶えそうな血塗に目を向ける。

 

(ああ・・・弟よ・・・死ぬな・・・弟よ・・・)

 

壊相は失った右腕を抑えながら弟の生を祈る。野薔薇は血塗から背を向け、壊相に近づこうと歩き出す。すると・・・

 

 

「兄者ああああああああ!!!!」

 

 

壊相の祈りが届いたのか血塗が起き上がり、叫びながら野薔薇に襲い掛かろうとする。

 

「まだこっちは見せてなかったわね」

 

パチンッ!

 

ズシャア!!!

 

「ああああああああああああああ!!!!」

 

「簪」

 

野薔薇が指を鳴らすと、芻霊(すうれい)呪法、簪が発動し、血塗に突き刺さったままの釘が呪力によって動き出し、彼の身体を貫いた。内臓ごと貫かれ、血を噴き出した血塗は倒れ伏し、今度こそその命を絶った。

 

「心配しなくても、すぐに兄貴も送ってやるわ」

 

 

一方、蝕爛腐術、朽による毒と激痛で動けなくなった(たつみ)は斬鬼の電気の爪によって死なない程度に斬り刻まれ、至る所に切り傷をつけられて倒れている。

 

「い~い様だなぁ。俺様にナマこいた奴がボロボロになる姿を見るのはやっぱスカッとするぜぇ」

 

好戦的な性格とはいえ、斬鬼もやはり呪い。わざわざ殺さず、十分に痛めつけてその姿を嘲笑う。まさに呪いの本能に忠実ともいえる。斬鬼にとって唯一不満があると言えば、楽しむ時間が極端に少ないということくらいだ。

 

「・・・見た感じもう1、2分が限界かぁ。もっと楽しみたかったがしょうがねぇ。殺される前に逝っちまえなぁ!!!」

 

朽の限界時間を理解している斬鬼は(たつみ)にとどめを刺そうと電気の爪で心臓目掛けて突き刺そうとする。すると、(たつみ)の左腕の薔薇の紋様が消えた。朽の効果が消えた途端に、(たつみ)はカッと目を見開き、後転して電気の爪を間一髪で躱した。

 

「!!」

 

「オラ!!」

 

ザンッ!!

 

「ぬぅ!!」

 

電気の爪を躱した(たつみ)は起き上がり、青龍刀を強く握って地に突き刺さった斬鬼の腕に斬撃を放った。油断していた斬鬼は腕を斬り落とされ、よろめく。

 

「どうやら術式が解けたみてぇだなぁ」

 

「人の体をズタズタに斬りやがって・・・!殺したいならさっさと殺せばよかっただろ」

 

「わかってねぇなぁ。それじゃあ歪んだ顔が見れなくて楽しみがなくなるだろ。痛めつけて痛めつけて・・・絶望した瞬間に殺すのが俺様の通なのさぁ」

 

斬鬼はニタニタと笑いながら斬り落とされた腕を呪力で再生させる。

 

「あっそ。聞いてもねぇのに教えてくれて・・・ありがとよ!!!」

 

(たつみ)は青龍刀を構えて斬鬼に接近して斬撃を放つ。斬鬼はその斬撃を身体を捻って躱し、(たつみ)に向けて掌を翳し、掌の穴より突風を放ち、彼を吹き飛ばす。さらに突風を放っている斬鬼の手の指がパカッと開く。

 

「落雷の弾丸、味わってみるかぁ!!?」

 

斬鬼は突風を放ちつつ、電気の弾丸を5発撃ち放つ。(たつみ)は突風で宙に放り出されている中、迫ってきた電気の弾丸を1発、2発と5発全てを青龍刀で斬り落とす。(たつみ)は地に着地して、強く踏み込んで助走をつけて斬鬼に突っ込んで上段から斬撃を放つ。斬鬼は軽く後退してその斬撃を躱す。直後、(たつみ)は下段から返す刀で切り上げ、斬鬼は右腕で防御をする。

 

「思い切り踏み込んでからの返す刀で切り上げ・・・悪くねぇ動きだぁ」

 

切り上げの後、(たつみ)は斬鬼の顔を目掛けて突きを放とうとする。

 

「だがなぁ小僧・・・フェイクが見え見えなんだよぉ!!!」

 

斬鬼は(たつみ)の突きを屈んで躱し、両手に電気の爪を展開して彼の腹部をクロス状に切り裂いた。

 

「ごあ・・・!」

 

「まだ終わりじゃねぇぞ!!」

 

よろめく(たつみ)に斬鬼は追撃を仕掛ける。斬鬼の胴体が上下に開き、中から扇風機の羽根のような部品が展開され、上半身と共に回転する。回転した瞬間、凄まじい竜巻が発生する。

 

「鎌鼬ぃ!!!」

 

「ぐあああ!!」

 

竜巻による斬撃と共に(たつみ)は吹っ飛ばされて倒れる。

 

(くっ・・・吹雪に炎・・・さらには突風に竜巻・・・強ぇ・・・!白金高校の時は全然本気じゃなかったのか・・・!)

 

白金高校での斬鬼は本気ではなかったが、その強さは本物であることを(たつみ)は改めて実感させられる。

 

「オラオラ!!休んでる暇はねぇぜ!!」

 

斬鬼は掌を掲げ、氷柱を(たつみ)に向けて撃ち放つ。(たつみ)は咄嗟に起き上がって迫ってくる氷柱を躱す。斬鬼は(たつみ)に連続で氷柱を撃ち続ける。(たつみ)は横跳び、バク転、走り込みで氷柱を躱して斬撃に近づき、青龍刀を振るって横一閃で薙ぎ払う。斬鬼は足に車輪を展開して後退し、体から霧をガスのように噴射させ、霧で自身の姿を隠す。

 

「くそ!今度は霧か!」

 

辺りに霧が充満し、何も見えなくなる中(たつみ)はどこから斬鬼の攻撃が来るのか周囲を警戒する。警戒を続けていると、周囲にガシャンガシャンという機械音が響く。その音を聞いて(たつみ)が青龍刀の柄を握りしめ、構える。すると同時に、斬鬼の部品で生まれた式神が数体現れ、(たつみ)に襲い掛かる。(たつみ)は1体の機械の式神の振るう腕を屈んで躱し、切り上げて式神を1体破壊する。

 

「こんなんで止まると思うなよ!!」

 

(たつみ)はさらにそこから1体、また1体と式神を切り裂いて破壊する。最後の1体を斬った直後、斬鬼が現れ、(たつみ)に向けて電気の爪を振るった。(たつみ)は咄嗟に青龍刀で防御し、爪を防御する。

 

「ぐっ・・・!」

 

「思っちゃいねぇよ!!」

 

しかし斬鬼は爪を展開する腕に力を込めたことで(たつみ)を押し上げ、吹っ飛ばした。吹っ飛ばされた(たつみ)はこれによって充満する霧から脱出できたが、直後に小型の太陽のような砲弾が迫り・・・

 

ドカアァァァン!!!

 

直撃と同時に爆発したことで彼はさらにダメージを受けた。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

「どうやら毒が完全に抜け切れてねぇようだなぁ?えぇ?小僧よぉ」

 

斬鬼の指摘の通り、(たつみ)は朽による毒がまだ抜けきれておらず、体に重りがついたような状態と同じように動きが鈍っているのだ。

 

「辛いようなら命乞いでもするかぁ?他のお仲間が来る時間稼ぎになるかもしれねぇぞぉ?」

 

挑発ともとれる斬鬼の発言に(たつみ)は血反吐を吐く。

 

「ペッ!ざけんなよ。てめぇみてぇな悪趣味な鉄くず野郎に、命乞いなんてするわけねぇだろ!!!」

 

「ぐわっはっはっは!!それでこそ殺し甲斐がある!!」

 

(たつみ)の悪態に対し、斬鬼は愉快そうに豪快に笑う。

 

(思うように動かねぇなら、いっそシンプルにいく!この一撃に、今の全てを乗せる!!)

 

(たつみ)は青龍刀を構え、次に放つ一撃に今の持てる力を込める。

 

「何をするか知らねぇがぁ、やらせねぇよぉ」

 

斬鬼は両手に電気の爪を展開し、足の車輪で素早く動き、(たつみ)の次の一手を防ごうと試みる。

 

「いくぞおおおおおおおおお!!!」

 

「!!!」

 

ザンッ!!

 

「ぐおお!!」

 

しかしそれよりも先に(たつみ)が速く動き、斬鬼の懐に入って斬撃を放った。これによって斬鬼の右腕は斬り落とされる。

 

ブシュッ!!

 

が、斬鬼もいつの間にか左腕の爪を振るっていたのか、(たつみ)の背中に切り傷がつき、出血する。

 

(予測を超えた斬撃・・・!こいつ毒で鈍ってんじゃなかったのかよ・・・!)

 

「俺を殺したいんじゃなかったのか・・・?仕留め損なってんじゃねぇかよ・・・。笑わせるぜ、へぼ野郎」

 

「・・・っ!調子に乗るな小僧!!!!」

 

(たつみ)の挑発に触発された斬鬼は彼にとどめを刺そうと、接近して電気の爪の突きを放とうとする。

 

「鵺!」

 

ドカァ!!

 

「ぬっ!!」

 

すると側面より鵺が現れ、翼に帯電を帯びて体当たりを放った。帯電の体当たりで斬鬼はよろめく。

 

「さっきからうるせぇよ。頭に響くだろ」

 

鵺が現れた方角を見てみると、ようやく目を覚ました恵が鳥の手影絵を作って立っていた。

 

「伏黒!!」

 

「ちっ・・・ずっと寝てりゃよかったものを・・・」

 

恵が目を覚ましたことで(たつみ)は素直に喜び、斬鬼は面倒そうに頭をかいている。

 

(あの呪霊・・・交流会に現れたあいつ(花御)と同じ特級呪霊か。風姿も五条先生の絵と近い。たくっ・・・次から次へとどうなってんだ?)

 

目が覚めて間もない恵は今がどういう状況かが理解できず、困惑している。

 

「黒髪の小僧!俺様の楽しみの邪魔すんじゃねぇ!!!蟻地獄!!」

 

斬鬼は右腕を再生させ、両手を地につける。すると、至る所から砂の竜巻がし、鵺と恵に迫る。恵はいったん鵺を解除し、砂嵐を避けながら犬の手影絵を作る。

 

「玉犬!」

 

恵の影より玉犬『渾』が召喚され、玉犬『渾』は素早い動きで砂嵐を躱しながら斬鬼に近づき、鋭利な爪を振るった。斬鬼は玉犬『渾』の攻撃を避けたが、回避しきれず頬が少し掠れる。

 

「ちっ・・・!」

 

斬鬼が玉犬『渾』に気を取られている隙に恵は(たつみ)の元に駆け寄る。

 

「和倉、虎杖と釘崎は?」

 

「変な奴らと戦ってる。多分こいつの仲間だ。後、指はあいつらとは別の仲間に奪われた」

 

「だろうな」

 

「後、お前の傷はそいつが治したんだ」

 

(仲間・・・というよりかは利害一致の協力関係と考えた方がいいかもな。じゃなきゃ俺の怪我を治す理由がわからねぇ)

 

わからないことは多々あるものの、今の状況は(たつみ)のある程度の説明でなんとなくだが理解できた。

 

「とにかく、お前は応急手当てに専念しろ。俺が何とか時間を稼ぐ」

 

「伏黒」

 

(たつみ)の代わりに斬鬼と戦おうとする恵に(たつみ)は自分の青龍刀を彼に渡す。

 

「すぐに戻る。無茶すんなよ」

 

「・・・いいからさっさと行け」

 

恵は戦線離脱を促しながら(たつみ)から青龍刀を受け取る。恵に青龍刀を預けた(たつみ)は走り出し、戦線を離脱しようとする。

 

「逃がすかぁ!!」

 

斬鬼は逃がすまいと左掌を掲げて氷柱を撃ち放とうとする。

 

ガシィ!!

 

「うお⁉」

 

すると、事前に恵が召喚したカエルの式神、蝦蟇が斬鬼の背後に立ち、下を伸ばして斬鬼の左腕を巻き付けて引っ張り上げ、射線から外した。

 

「邪魔だぜ!!」

 

斬鬼は右手に電気の爪を展開し、蝦蟇の舌を切り裂いた。そのタイミングを狙って恵は斬鬼に近づき、青龍刀による斬撃を放つが、斬鬼は自由となった左腕で防御する。

 

「踏み込みがなってねぇぜ!!」

 

斬鬼はすぐに恵に向けて右手の電気の爪を振るった。恵は体を少し捻って爪を躱そうとしたが、完全には避けきれず、右肩に切り傷がついてしまう。

 

「ぐっ!」

 

「俺様の邪魔をした罪は重いぜ!オラオラオラァ!!」

 

斬鬼は電気の爪の連撃を恵に放つ。恵は後退しながら連撃を躱し、斬鬼から距離を取る。距離を取られた斬鬼は両手を伸ばし、指先を開いて電気の弾丸をマシンガンのように撃ち放つ。対し、恵は青龍刀を地面に突き刺し、蝦蟇を解除して両手でウサギの手影絵を作る。

 

「脱兎!」

 

恵の影よりウサギの式神、脱兎が大量に現れ、数えきれないほどの脱兎が塔のように積み重なり、電気の弾丸を脱兎1匹につき1発ずつ受け止めた。

 

「ああ⁉何だこりゃ⁉」

 

ドカッ!

 

「うが!!」

 

脱兎の出現に困惑する斬鬼に1匹の脱兎が斬鬼の顔に蹴りを入れ込んだ。それだけにとどまらず、他の脱兎が体当たり、頭突きと数で猛攻を繰り出していく。

 

「鬱陶しいんだよぉ!!!鎌鼬ぃ!!!」

 

数の暴力に怒りを示す斬鬼は胴体に羽根を展開して回転し、鎌鼬を繰り出して竜巻を作り、斬鬼の周囲の脱兎を1匹残らずバラバラに斬り裂く。竜巻が収まり、斬鬼が周囲を見回すと、恵と残りの脱兎の姿は見えなくなっている。

 

「ちぃ!あの式神の小僧!どこにいきやがったぁ!」

 

斬鬼は警戒しながら恵がどこに向かったのか探す。すると上空から呪力の気配を察知し、斬鬼は上を見上げる。上空より、鵺がこちらに向かって体当たりを仕掛けてくる。斬鬼は迫ってくる鵺に向けて両手の電気の爪を突き刺す。鵺は電気の爪が突き刺さる直前で影に戻る。

 

(囮か!!)

 

ザンッ!!

 

「ぐぅ!!」

 

斬鬼が鵺は囮だと気づいた時には恵は斬鬼の懐に入り、腹部を青龍刀で切り裂いた。

 

(装甲はそれなりに固いが、あいつ(花御)ほどタフじゃねぇ。その分攻撃の手数が多彩だな・・・)

 

恵が考察する中で、斬鬼は青龍刀を自身の影に突き刺して収納する恵に向けて電気の爪を振るった。対し恵は犬の手影を作って玉犬『渾』を召喚する。玉犬『渾』は身を任せる恵を抱え、素早い動きで電気の爪を回避する。その直後、先読みをしていたのか斬鬼は玉犬『渾』が避けた方角に左手を翳し、小型太陽の砲弾を撃ち放った。

 

ドカアアアアン!!

 

「ぐうううう!!」

 

小型太陽の砲弾が爆発し、ダメージを受けた恵は玉犬『渾』と共に後退る。

 

「式神諸共・・・まとめて()ねやあ!!!!!」

 

斬鬼は背中の装甲を展開して砲台を装備、恵に向けて狙いを定めた。砲台の発射口に電気が集まっていき、強大なものになっていく。対し恵は影から青龍刀を取り出し、構える。十分に電気が溜まり、斬鬼は電気を砲弾として撃ち放った。

 

(特級だからって怯むな・・・!強く・・・イメージしろ!奴に勝つ・・・イメージを!!)

 

特級呪具、青龍刀・・・高い斬撃性能を誇る呪具。その一撃は呪力で強化された肉体をも切り裂けるほどの威力を持つ。だがその真価はそれだけに非ず。青龍刀は龍の逆鱗を砕き、龍の牙さえも切り裂くと評される。呪霊が龍の逆鱗だとするならば、龍の牙は、呪術を意味する。即ち・・・

 

 

呪術を切り裂く名刀!!!

 

 

ザンッ!!  ドカアアアアアアアン!!!!!

 

恵は迫ってきた電気の砲弾を青龍刀で真っ二つに切り裂いた。電気の砲弾は2つに分かれ、恵の背後で大爆発を引き起こした。

 

(!!なんつー呪具だ!俺様の呪術を切り裂くとは!)

 

斬鬼が青龍刀の性能に驚いている間にも、玉犬『渾』が迫り、爪を振るおうとしている。斬鬼は玉犬『渾』が振るった爪を側面に回りギリギリで回避する。

 

「こんなもんで俺様が・・・」

 

斬鬼が口を開いた途端、玉犬『渾』は術式の解除で影に戻る。その際戻った影から三筋棍の呪具が飛び出してきた。その飛び出してきた三筋棍の呪具を、応急処置を済ませ戻ってきた(たつみ)が手に取る。

 

(!!小僧!!もう戻って・・・⁉)

 

斬鬼が驚いている間にも(たつみ)は三筋棍の呪具を振るう。青龍刀に並ぶほどの呪具。その名も・・・

 

 

特級呪具『游雲』!

 

 

ドカァ!!

 

(たつみ)は手に取った游雲を振るい、斬鬼の顔に強烈な打撃を与えて岩壁に叩きつける。さらに(たつみ)は休むことなく追撃し、斬鬼の頭部目掛けて振るい放つ。斬鬼は岩壁沿いに回転して一撃を躱す。

 

「小僧が!舐めるんじゃねぇよ!!」

 

斬鬼は電気の爪による連撃を(たつみ)に繰り出す。(たつみ)は一撃を躱しつつ、游雲をヌンチャクの要領で振るって防御しながらやり過ごす。そして、最後に放った斬鬼の突きを躱し、(たつみ)は游雲で斬鬼の腕を引っ掛けて抑える。

 

「でえええええい!」

 

「ぬおおおおおお!!」

 

(たつみ)は斬鬼の腕を抑えつつ、また岩壁に向けて投げ放つ。斬鬼をまた岩壁に叩きつけた(たつみ)は游雲の第三の棍に蹴りを放って威力をあげて振るい、斬鬼に強烈な一撃を与えた。

 

(こいつ・・・さっきまでの動きとはまるで違ぇ!!こいつは・・・あの時と同じ!!?いや、それ以上の動き!!いったいどうなってやがる!!?)

 

急に動きがよくなった(たつみ)の動きに困惑する斬鬼。(たつみ)は追撃の手を緩めず、さらに游雲を横一閃に振るう。斬鬼は背中にブースターを展開し、空高く跳躍する。高く浮遊する斬鬼は(たつみ)目掛けて電気の砲弾を背中の砲台から放とうとする。対して(たつみ)は構えの体制を取る玉犬『渾』に向かって走り出し、跳躍して玉犬『渾』の右掌の上に片足で乗る。(たつみ)が右掌の上に乗ったことを確認した玉犬『渾』は砲丸投げの要領で(たつみ)を斬鬼に向けて投げ放つ。

 

(!式神を使って・・・!)

 

斬鬼は驚きつつも(たつみ)に狙いを外さず、電気の砲弾を撃とうとする。だが発射直後、鵺が体当たりを仕掛け、見事直撃したことで斬鬼の射程がズレ、電気の砲弾は上空に向かって放たれた。

 

蝕爛腐術によって回っていた(たつみ)の毒は休んでいる間にも回り続けていた。しかしその回り続ける毒が逆に彼の身体機能のツボを刺激していた。そして、毒が完全に抜けきったのと同時に、彼の身体能力は飛躍的に向上する効果をもたらした。彼の身体能力を乗せた特級呪具による一撃は呪力の壁を打ち砕く。

 

ドオオオオン!!!

 

「ぐおおおおおおおおお!!!」

 

(たつみ)は斬鬼に游雲を叩き込み、彼は川に向けて落とす。勢いに乗って降下する斬鬼は川の水飛沫をあげて地面に叩きつけられる。

 

「く・・・クソがぁ・・・!!」

 

起き上がろうとする斬鬼に恵は青龍刀を構えて接近し、斬撃を放とうとする。そして(たつみ)は向かってきた鵺の両足を足場として強く踏み込み、斬鬼に向かって勢いよく降下し、打撃を与えようとする。

 

ズンッ!!!!

 

恵の放つ斬撃と(たつみ)の放つ打撃が交差しあったことにより、斬鬼の身体は斬れ、数多くの部品が破壊される。

 

「ぬがあああああああああああああああああ!!!!!」

 

ドオオオオオオオオオオオン!!!!!!

 

体の負荷が耐え切れず、斬鬼は大爆発を起こした。爆煙が立ち込める中、ダメージのせいか、緊張が抜けたから知らないが、一気に力が抜け倒れそうになる。そんな彼を恵が支える。

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

「お前・・・無茶しすぎだ」

 

「へへ・・・伏黒に言われたかねーよ。あんな傷負ってさ」

 

「うっせ」

 

お互いに悪態をつきつつ労う2人は爆煙に視線を向ける。

 

「・・・祓った・・・てことでいいのか・・・?」

 

「!!伏黒!!」

 

恵が疑問を口にすると同時に、爆煙に変化が起きたことに(たつみ)は真っ先に気付き、彼を突き飛ばす。

 

シュッ!!ズシャ!!

 

「ぐあ!!」

 

(たつみ)が恵を突き飛ばした時、爆煙から一閃の風の刃が放たれ、彼の肩に傷を入れた。

 

「和倉!!」

 

ズンッ!!

 

「がは・・・!」

 

恵が(たつみ)に駆け寄ろうとした時、爆煙から氷柱が放たれ、恵の腹部を突き刺した。

 

「伏黒!!」

 

「大したもんだぜぇ・・・小僧共」

 

2人がダメージを負うと、爆煙から斬鬼の声が聞こえてきた。

 

「まさか俺様の『鎧』をぶっ壊すたぁ、想像すらしてなかったぁ。いやはや、称賛に値するぜ、本当によぉ」

 

「・・・嘘だろ?」

 

「・・・てめぇ・・・!」

 

爆煙から姿を現した斬鬼の姿を見て、恵は驚愕し、(たつみ)は怒りが込み上げる。

 

「俺様はシャイだからよぉ・・・あんま姿を見せたくなかったんだが・・・そうも言ってらんねぇ。この礼はたっっっっっぷりお返ししなきゃだよなぁ?」

 

今の斬鬼の姿は全身黒い肌に引き締まった筋肉を持ち、長い白髭と長い白髪が特徴的な厳つい顔を持った老人のような魔人だ。

 

「てめぇら!!皆殺し決定だ!!!!」

 

この姿こそが、呪力で作った機械で身を包んでいた天候の特級呪霊斬鬼の本来の姿である。斬鬼との戦いはまだ終わりではない。

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