思わぬ形で最大の怨敵、斬鬼と対峙した
「おいおい、啖呵切っておいて逃げんのかぁ!!」
斬鬼は
(感情に吞まれるな!冷静になれ!兄貴が言ってたじゃねぇか!熱いだけじゃ生き残れないって!)
斬鬼に対し、強い憎悪はあるものの、
(伏黒はまだ眠ったままだ。この状態でこいつや
恵を抱え、走り続ける
「あくまでも
ビュオオオオオオオ!!!
斬鬼が掲げた掌の穴より、極寒の猛吹雪が吹き荒れた。迫ってきた猛吹雪に
「うぁっ!こいつ・・・電気しか操れねぇんじゃなかったのか⁉」
斬鬼の術式の一部しか見ていなかった
「ぶらあああああああああ!!!!」
斬鬼の炎の突進に、態勢が崩れている
「うああああ!!」
突進をくらった
「ぐ・・・ああ・・・あちぃ・・・!」
起き上がった
「そういやそっちの小僧はさっきから寝てばっかだなぁ」
恵の様子を見て、斬鬼はあくどい笑みを浮かべた。
「なぁ~んだ、そいつさえぶっ殺しちまえばちったぁやる気出すのかぁ」
矛先を恵に変更した斬鬼は両手に電気の爪を生成し、彼に近づいていく。それを見た
「そう急かすなよ鉄クズ・・・目一杯楽しませてやるよ・・・。地獄めぐりだ!!」
もうこれ以上突き放すことは不可能であると判断した青龍刀を構え、改めて斬鬼と対峙する。
「くっくっく・・・それでいい。水くせぇことをしてくれるぜ」
(伏黒に目を付けられちまった以上、注意を俺に向けさせるしかねぇ。あいつは強い。生半可じゃ挑めねぇ。最初っから全力でいくぜ!)
ズズズズッ・・・
「!!」
突然
「な・・・なんだよ・・・これ・・・⁉」
浮き出てきた薔薇の花の紋様に困惑している間にも、斬鬼は
「が・・・!」
「九相図共め・・・小僧に妙な術式を発動させやがったな」
この薔薇の花の紋様が壊相の術式によるものであると理解している斬鬼は少し忌々し気な感情を露にしている。
「その様子じゃあまともに動けねぇだろ。白けてくるぜぇ。となったら俺様の唯一の楽しみは1つ・・・イジメてやる他ねぇなぁ?」
倒れ伏す
(くそ・・・身体がめっちゃいてぇ・・・!やっぱり
薔薇の紋様が浮き出た原因は壊相の翅王をくらったことに原因があるとわかった
●
一方その頃、悠仁は野薔薇を抱え、翅王の攻撃を避けて森を飛び出し、その下にある高速道路に着地する。迫ってきた翅王の血は射程外なのかこれ以上追ってくることはなかった。
「うっし、射程外だな」
「よくやった。褒めてつかわす」
「へいへい」
「嘘。ありがと」
ひとまず翅王の射程から外れたことに安堵していると、ガードレールの外から血塗が現れ、第2の口から血を発揮出そうとしている。
「!!」
それに気づいた悠仁は野薔薇を突き飛ばし、血塗が吐き出す血を顔から浴びてしまう。
(最短距離で先回りされたか!)
悠仁たちが遠回りの森を通ったのに対して血塗はこの高速道路の最短距離を真っ直ぐ突き進んで先回りをして、2人が来るのを待ち構えていたのだ。
「虎杖!!」
ズシャア!!
野薔薇が悠仁に駆け寄ろうとした時、もう追いついてきた壊相の翅王の血が彼女の左腕に突き刺さる。この血液によって野薔薇の左腕に激痛が走り、制服の左袖も溶けてしまっている。
「釘崎!!」
「心配しなくても、弟の血に私のような性質はありませんよ。私のだって全身に浴びでもしない限り死にはしません。まぁー、死ぬほど痛みますがね。私たちの術式はここからです」
2人に自分と血塗の血液が入り込んだのを確認した壊相は自分と血塗の術式を発動させる。
「蝕爛腐術―――朽」
ズズズズズズ!
「「!!」」
壊相が蝕爛腐術、朽を発動した瞬間、悠仁の顔と野薔薇の左腕と左頬に薔薇の花の紋様が浮き出てきた。壊相は術式効果を引き上げるために自身の術式を打ち明ける。
「粘膜、傷口・・・私たち兄弟のどちらかの血を取り込み、私たち兄弟どちらかが術式を発動すれば、侵入箇所から腐蝕が始まります。そちらの少年は持って15分、そちらのお嬢さんは10分・・・そしてあなた方と離れた少年は5分が限界でしょう。朝には骨しか残りませんよ」
(術式ってことは、解除させちまえばいいわけだ。
自分たちと同じ状況に陥り、より短い猶予しかない
「やっぱ毒か」
「結果有毒なだけであって私たちの術式はあくまでも『分解』ですよ。さて、どうします?」
具体的な時間の猶予を述べてはいるが、術式の開示によって術式の効果が上がり、実際の時間より短くなっているのは言うまでもない。
(術式の開示は済んだ。実際はもっと早く死ぬな。兄さん・・・こいつら大したことないよ)
壊相はここに来る前に自身の兄・・・呪胎九相図の1番と話したことを思い返す。
●
明治の初め。呪霊の子を孕む特異体質の娘がいた。
身に覚えのない懐妊に始まり、親類縁者からの風当たりは常軌を逸し、彼女はこの亡骸を抱え、ある呪術師が開いた寺に駆け込んだ。が、その時点で彼女の運は尽きてしまう。
加茂
九度の懐妊。九殿の堕胎。それらがどのように行われ、その後彼女がどうなってしまったのか・・・一切の記録は破棄されている。
呪胎九相図、1番から3番。特級に分類されるほどの呪物。その呪力の起源は母の恨みか・・・それとも・・・。
だが受肉を果たした彼らに母の記憶はない。人間にも術師に対しても特段恨みがあるわけではない。150年・・・彼らはお互いの存在だけを頼りに封印を保ってきた。
受肉を果たした呪胎九相図の1番は言った。
「呪霊側につくぞ」
兄が下した決定に壊相は少し不安がある。
「大丈夫かな?あいつら胡散臭いよ、兄さん」
「呪霊が描く未来の方が俺たちにとって都合がいい。ただそれだけのことだ。受肉の恩は忘れろ」
彼らは呪霊が掲げる理想に何1つ共感はしていない。ただ自分たちにとって都合いいというだけ。それゆえに彼らは呪霊側に一応協力はしている。それはこの光景を遠くで見ていたツクヨミ、ウサギのぬいぐるみ、そして隣にいたツクヨミの姉、もう1人の
「いいか弟たちよ。壊相は血塗のために、血塗は俺のために、俺は壊相のために生きる。俺たちは、3人で1つだ」
兄弟のため、兄弟が望むのであれば、彼らはそれに殉ずるのみ。それが呪胎九相図、1番から3番の行動理念である。
●
当たれば勝利確実の術式、蝕爛腐術、朽を発動させた壊相は悠仁と野薔薇に対し、得意げな笑みを浮かべている。
「辛いようでしたら、今すぐ殺して差し上げましょうか?」
「・・・くっくっく・・・」
「?」
朽が発動されている中、野薔薇は不敵に笑ったことで壊相は怪訝な表情を見せる。
「当たれば勝ちの術式・・・強いなお前ら。でも残念・・・私との相性最悪だよ!!」
野薔薇はポケットから1本の釘を取り出し、それに呪力を纏わせる。
「
なんと野薔薇は呪力が纏った釘を薔薇の花の紋様が出ている自身の左腕に1本打ち込んだ。すると・・・
ドクンッ! ドクンッ!
突然壊相と血塗の身体に強烈な痛みが走った。まるで心臓を締め付けられるかのような・・・そんな感覚だ。
「我慢比べしよっか♡」
自身の術式で2人にダメージを与えている野薔薇は痛みが走りながらも、あくどい笑みを浮かべている。
「痛いのは嫌だろう?ならさっさと泣きながら術式解けよ」
(呪詛返しの術式・・・!我慢比べ・・・こちらが術式を解かねばこれが続くというわけか・・・!)
(弟の方にも効いたのはタナボタだな。このままじゃどうせ和倉も私たちも死ぬんだ。じゃんじゃか共鳴りぶち込んでやる!)
なかなかに強烈ではあるが、それだけでは壊相が朽を解くことはない。
(なかなかに強烈ではあるが、何度やっても私たちの命には届かない。我慢さえしていれば、いずれ死ぬはあなた方!しかも、朽の発動中は痛みと毒でまともに動け・・・!)
壊相が術式を発動している中で、彼にとって予想外のことが起きている。朽の発動中は常に激痛が走る。それだけでなく毒も存在する。その両方が伴っている中でも、悠仁は機敏に動いていた。
(なぜそこまで動ける?)
ズンッ!ズンッ!
「共鳴り」
ドゴォ!!!
壊相が驚愕している間にも野薔薇は2回目の共鳴りを発動。壊相と血塗にダメージが入る。そして、血塗は同時に、呪力が込もった悠仁の拳を人面に直撃する。
悠仁は猛毒、呪いの王両面宿儺の器。ゆえに、あらゆる毒に耐性がある。
『結果有毒なだけであって私たちの術式はあくまでも『分解』ですよ』
分解の痛みはあるだろうが、その果てにある毒は彼には効かない。だが痛みだけでは・・・
虎杖悠仁は止まらない!!!
ドドドドドド!!
毒が効かない悠仁は痛みなどお構いなしに動き、血塗に拳による連撃を叩き込んでいく。
「血塗ううううううううう!!!!」
弟の危機に壊相は叫びつつ、血塗を助けようと走り出す。
「うるせぇなあ!!共鳴り!!」
野薔薇は3回目の共鳴りを発動させ、壊相と血塗にさらにダメージを与える。
「なんの!!」
壊相は何とか踏ん張り、走り続けるが、ここで血塗を相手にしていた悠仁が野薔薇とシフトチェンジし、壊相に迫ってくる。
(スイッチ!瀕死の女により瀕死の弟に当てるか!いつでも動きを止められるとでも⁉)
血塗に向かって走り出す野薔薇は壊相にちらっと視線を向ける。血塗にとどめを刺しに行くつもりの野薔薇に壊相は激昂する。
「女ぁ!!!!」
壊相はここで血塗を助けるために2つの選択肢が迫られる。
(術式を解くか否か・・・。このままでは弟を助けに行けない。朽の発動中に翅王は出せない。だが、今のあの女に弟を殺すだけの余力があるか?女が死ぬより先に私がこの男に殺されることはないだろう!指のところに向かったあの茶髪の少年は持って後1、2分!絶対に、術式は解かない!!)
壊相は悠仁と野薔薇、
「あ、あ・・・兄者・・・」
「!!!」
しかし、弱々しく自分を呼ぶ血塗の声に壊相は兄の言葉を思い出す。
『俺たちは、3人で1つだ』
兄の言葉を思い出した途端、壊相は無意識に朽の発動を解除した。これによって悠仁と野薔薇の薔薇の紋章は花が散るように消えていった。朽が解かれた瞬間、悠仁は回し蹴りを壊相に叩き込む。悠仁はさらに拳を放つが、壊相はこれを躱し、悠仁に拳を叩き込んだ。悠仁はいったん距離を取り、再度壊相に蹴りを2回放ち、呪力を纏った拳を彼の腹部に叩き込んで壁に叩きつけた。
(気づいた時には術式を解いていた・・・!)
悠仁は拳で追撃していくが、壊相は壁に沿って回転して1回、2回の拳を躱していく。
「翅王!!!」
壊相は距離を取り、翅王を発動して血のレーザーを悠仁に放つ。向かってきた血のレーザーを悠仁は走って躱し、ガードレールの隙間を潜り抜けて、崖沿いに走って助走をつけ、高く跳躍して壊相の背後に立ち、拳に呪力を乗せる。
野薔薇は向かってくる血塗に呪力が纏った釘を打ち込もうとする。
瞬間に、悠仁の呪力と野薔薇の呪力が・・・黒く輝く。
野薔薇の中に毒はまだ残っている。だが術式が解け、晴れた痛みでより深く意識は研ぎ澄まされていく。その先で爆ぜる、100万の火花。
眼前の敵を仕留める誠心、悠仁の本領。禪院真希を凌ぐ身体能力、格闘センス。そこに与えられた呪いの力。彼は、黒い火花に愛されている。
ズン!!!!!
黒閃!!!!
野薔薇が放った黒閃によって、血塗は釘を打ち込まれ、大ダメージを負い、壊相は悠仁の黒閃による打撃によって右腕が吹っ飛ばされる。
(なんだ・・・今の黒い光は・・・?私は確かに、確実に呪力で強化した腕で拳を受けた。だが気づけば肩ごと飛ばされていた・・・)
壊相は困惑する中で、今にも死に絶えそうな血塗に目を向ける。
(ああ・・・弟よ・・・死ぬな・・・弟よ・・・)
壊相は失った右腕を抑えながら弟の生を祈る。野薔薇は血塗から背を向け、壊相に近づこうと歩き出す。すると・・・
「兄者ああああああああ!!!!」
壊相の祈りが届いたのか血塗が起き上がり、叫びながら野薔薇に襲い掛かろうとする。
「まだこっちは見せてなかったわね」
パチンッ!
ズシャア!!!
「ああああああああああああああ!!!!」
「簪」
野薔薇が指を鳴らすと、
「心配しなくても、すぐに兄貴も送ってやるわ」
●
一方、蝕爛腐術、朽による毒と激痛で動けなくなった
「い~い様だなぁ。俺様にナマこいた奴がボロボロになる姿を見るのはやっぱスカッとするぜぇ」
好戦的な性格とはいえ、斬鬼もやはり呪い。わざわざ殺さず、十分に痛めつけてその姿を嘲笑う。まさに呪いの本能に忠実ともいえる。斬鬼にとって唯一不満があると言えば、楽しむ時間が極端に少ないということくらいだ。
「・・・見た感じもう1、2分が限界かぁ。もっと楽しみたかったがしょうがねぇ。殺される前に逝っちまえなぁ!!!」
朽の限界時間を理解している斬鬼は
「!!」
「オラ!!」
ザンッ!!
「ぬぅ!!」
電気の爪を躱した
「どうやら術式が解けたみてぇだなぁ」
「人の体をズタズタに斬りやがって・・・!殺したいならさっさと殺せばよかっただろ」
「わかってねぇなぁ。それじゃあ歪んだ顔が見れなくて楽しみがなくなるだろ。痛めつけて痛めつけて・・・絶望した瞬間に殺すのが俺様の通なのさぁ」
斬鬼はニタニタと笑いながら斬り落とされた腕を呪力で再生させる。
「あっそ。聞いてもねぇのに教えてくれて・・・ありがとよ!!!」
「落雷の弾丸、味わってみるかぁ!!?」
斬鬼は突風を放ちつつ、電気の弾丸を5発撃ち放つ。
「思い切り踏み込んでからの返す刀で切り上げ・・・悪くねぇ動きだぁ」
切り上げの後、
「だがなぁ小僧・・・フェイクが見え見えなんだよぉ!!!」
斬鬼は
「ごあ・・・!」
「まだ終わりじゃねぇぞ!!」
よろめく
「鎌鼬ぃ!!!」
「ぐあああ!!」
竜巻による斬撃と共に
(くっ・・・吹雪に炎・・・さらには突風に竜巻・・・強ぇ・・・!白金高校の時は全然本気じゃなかったのか・・・!)
白金高校での斬鬼は本気ではなかったが、その強さは本物であることを
「オラオラ!!休んでる暇はねぇぜ!!」
斬鬼は掌を掲げ、氷柱を
「くそ!今度は霧か!」
辺りに霧が充満し、何も見えなくなる中
「こんなんで止まると思うなよ!!」
「ぐっ・・・!」
「思っちゃいねぇよ!!」
しかし斬鬼は爪を展開する腕に力を込めたことで
ドカアァァァン!!!
直撃と同時に爆発したことで彼はさらにダメージを受けた。
「はぁ・・・はぁ・・・」
「どうやら毒が完全に抜け切れてねぇようだなぁ?えぇ?小僧よぉ」
斬鬼の指摘の通り、
「辛いようなら命乞いでもするかぁ?他のお仲間が来る時間稼ぎになるかもしれねぇぞぉ?」
挑発ともとれる斬鬼の発言に
「ペッ!ざけんなよ。てめぇみてぇな悪趣味な鉄くず野郎に、命乞いなんてするわけねぇだろ!!!」
「ぐわっはっはっは!!それでこそ殺し甲斐がある!!」
(思うように動かねぇなら、いっそシンプルにいく!この一撃に、今の全てを乗せる!!)
「何をするか知らねぇがぁ、やらせねぇよぉ」
斬鬼は両手に電気の爪を展開し、足の車輪で素早く動き、
「いくぞおおおおおおおおお!!!」
「!!!」
ザンッ!!
「ぐおお!!」
しかしそれよりも先に
ブシュッ!!
が、斬鬼もいつの間にか左腕の爪を振るっていたのか、
(予測を超えた斬撃・・・!こいつ毒で鈍ってんじゃなかったのかよ・・・!)
「俺を殺したいんじゃなかったのか・・・?仕留め損なってんじゃねぇかよ・・・。笑わせるぜ、へぼ野郎」
「・・・っ!調子に乗るな小僧!!!!」
「鵺!」
ドカァ!!
「ぬっ!!」
すると側面より鵺が現れ、翼に帯電を帯びて体当たりを放った。帯電の体当たりで斬鬼はよろめく。
「さっきからうるせぇよ。頭に響くだろ」
鵺が現れた方角を見てみると、ようやく目を覚ました恵が鳥の手影絵を作って立っていた。
「伏黒!!」
「ちっ・・・ずっと寝てりゃよかったものを・・・」
恵が目を覚ましたことで
(あの呪霊・・・交流会に現れた
目が覚めて間もない恵は今がどういう状況かが理解できず、困惑している。
「黒髪の小僧!俺様の楽しみの邪魔すんじゃねぇ!!!蟻地獄!!」
斬鬼は右腕を再生させ、両手を地につける。すると、至る所から砂の竜巻がし、鵺と恵に迫る。恵はいったん鵺を解除し、砂嵐を避けながら犬の手影絵を作る。
「玉犬!」
恵の影より玉犬『渾』が召喚され、玉犬『渾』は素早い動きで砂嵐を躱しながら斬鬼に近づき、鋭利な爪を振るった。斬鬼は玉犬『渾』の攻撃を避けたが、回避しきれず頬が少し掠れる。
「ちっ・・・!」
斬鬼が玉犬『渾』に気を取られている隙に恵は
「和倉、虎杖と釘崎は?」
「変な奴らと戦ってる。多分こいつの仲間だ。後、指はあいつらとは別の仲間に奪われた」
「だろうな」
「後、お前の傷はそいつが治したんだ」
(仲間・・・というよりかは利害一致の協力関係と考えた方がいいかもな。じゃなきゃ俺の怪我を治す理由がわからねぇ)
わからないことは多々あるものの、今の状況は
「とにかく、お前は応急手当てに専念しろ。俺が何とか時間を稼ぐ」
「伏黒」
「すぐに戻る。無茶すんなよ」
「・・・いいからさっさと行け」
恵は戦線離脱を促しながら
「逃がすかぁ!!」
斬鬼は逃がすまいと左掌を掲げて氷柱を撃ち放とうとする。
ガシィ!!
「うお⁉」
すると、事前に恵が召喚したカエルの式神、蝦蟇が斬鬼の背後に立ち、下を伸ばして斬鬼の左腕を巻き付けて引っ張り上げ、射線から外した。
「邪魔だぜ!!」
斬鬼は右手に電気の爪を展開し、蝦蟇の舌を切り裂いた。そのタイミングを狙って恵は斬鬼に近づき、青龍刀による斬撃を放つが、斬鬼は自由となった左腕で防御する。
「踏み込みがなってねぇぜ!!」
斬鬼はすぐに恵に向けて右手の電気の爪を振るった。恵は体を少し捻って爪を躱そうとしたが、完全には避けきれず、右肩に切り傷がついてしまう。
「ぐっ!」
「俺様の邪魔をした罪は重いぜ!オラオラオラァ!!」
斬鬼は電気の爪の連撃を恵に放つ。恵は後退しながら連撃を躱し、斬鬼から距離を取る。距離を取られた斬鬼は両手を伸ばし、指先を開いて電気の弾丸をマシンガンのように撃ち放つ。対し、恵は青龍刀を地面に突き刺し、蝦蟇を解除して両手でウサギの手影絵を作る。
「脱兎!」
恵の影よりウサギの式神、脱兎が大量に現れ、数えきれないほどの脱兎が塔のように積み重なり、電気の弾丸を脱兎1匹につき1発ずつ受け止めた。
「ああ⁉何だこりゃ⁉」
ドカッ!
「うが!!」
脱兎の出現に困惑する斬鬼に1匹の脱兎が斬鬼の顔に蹴りを入れ込んだ。それだけにとどまらず、他の脱兎が体当たり、頭突きと数で猛攻を繰り出していく。
「鬱陶しいんだよぉ!!!鎌鼬ぃ!!!」
数の暴力に怒りを示す斬鬼は胴体に羽根を展開して回転し、鎌鼬を繰り出して竜巻を作り、斬鬼の周囲の脱兎を1匹残らずバラバラに斬り裂く。竜巻が収まり、斬鬼が周囲を見回すと、恵と残りの脱兎の姿は見えなくなっている。
「ちぃ!あの式神の小僧!どこにいきやがったぁ!」
斬鬼は警戒しながら恵がどこに向かったのか探す。すると上空から呪力の気配を察知し、斬鬼は上を見上げる。上空より、鵺がこちらに向かって体当たりを仕掛けてくる。斬鬼は迫ってくる鵺に向けて両手の電気の爪を突き刺す。鵺は電気の爪が突き刺さる直前で影に戻る。
(囮か!!)
ザンッ!!
「ぐぅ!!」
斬鬼が鵺は囮だと気づいた時には恵は斬鬼の懐に入り、腹部を青龍刀で切り裂いた。
(装甲はそれなりに固いが、
恵が考察する中で、斬鬼は青龍刀を自身の影に突き刺して収納する恵に向けて電気の爪を振るった。対し恵は犬の手影を作って玉犬『渾』を召喚する。玉犬『渾』は身を任せる恵を抱え、素早い動きで電気の爪を回避する。その直後、先読みをしていたのか斬鬼は玉犬『渾』が避けた方角に左手を翳し、小型太陽の砲弾を撃ち放った。
ドカアアアアン!!
「ぐうううう!!」
小型太陽の砲弾が爆発し、ダメージを受けた恵は玉犬『渾』と共に後退る。
「式神諸共・・・まとめて
斬鬼は背中の装甲を展開して砲台を装備、恵に向けて狙いを定めた。砲台の発射口に電気が集まっていき、強大なものになっていく。対し恵は影から青龍刀を取り出し、構える。十分に電気が溜まり、斬鬼は電気を砲弾として撃ち放った。
(特級だからって怯むな・・・!強く・・・イメージしろ!奴に勝つ・・・イメージを!!)
特級呪具、青龍刀・・・高い斬撃性能を誇る呪具。その一撃は呪力で強化された肉体をも切り裂けるほどの威力を持つ。だがその真価はそれだけに非ず。青龍刀は龍の逆鱗を砕き、龍の牙さえも切り裂くと評される。呪霊が龍の逆鱗だとするならば、龍の牙は、呪術を意味する。即ち・・・
呪術を切り裂く名刀!!!
ザンッ!! ドカアアアアアアアン!!!!!
恵は迫ってきた電気の砲弾を青龍刀で真っ二つに切り裂いた。電気の砲弾は2つに分かれ、恵の背後で大爆発を引き起こした。
(!!なんつー呪具だ!俺様の呪術を切り裂くとは!)
斬鬼が青龍刀の性能に驚いている間にも、玉犬『渾』が迫り、爪を振るおうとしている。斬鬼は玉犬『渾』が振るった爪を側面に回りギリギリで回避する。
「こんなもんで俺様が・・・」
斬鬼が口を開いた途端、玉犬『渾』は術式の解除で影に戻る。その際戻った影から三筋棍の呪具が飛び出してきた。その飛び出してきた三筋棍の呪具を、応急処置を済ませ戻ってきた
(!!小僧!!もう戻って・・・⁉)
斬鬼が驚いている間にも
特級呪具『游雲』!
ドカァ!!
「小僧が!舐めるんじゃねぇよ!!」
斬鬼は電気の爪による連撃を
「でえええええい!」
「ぬおおおおおお!!」
(こいつ・・・さっきまでの動きとはまるで違ぇ!!こいつは・・・あの時と同じ!!?いや、それ以上の動き!!いったいどうなってやがる!!?)
急に動きがよくなった
(!式神を使って・・・!)
斬鬼は驚きつつも
蝕爛腐術によって回っていた
ドオオオオン!!!
「ぐおおおおおおおおお!!!」
「く・・・クソがぁ・・・!!」
起き上がろうとする斬鬼に恵は青龍刀を構えて接近し、斬撃を放とうとする。そして
ズンッ!!!!
恵の放つ斬撃と
「ぬがあああああああああああああああああ!!!!!」
ドオオオオオオオオオオオン!!!!!!
体の負荷が耐え切れず、斬鬼は大爆発を起こした。爆煙が立ち込める中、ダメージのせいか、緊張が抜けたから知らないが、一気に力が抜け倒れそうになる。そんな彼を恵が支える。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「お前・・・無茶しすぎだ」
「へへ・・・伏黒に言われたかねーよ。あんな傷負ってさ」
「うっせ」
お互いに悪態をつきつつ労う2人は爆煙に視線を向ける。
「・・・祓った・・・てことでいいのか・・・?」
「!!伏黒!!」
恵が疑問を口にすると同時に、爆煙に変化が起きたことに
シュッ!!ズシャ!!
「ぐあ!!」
「和倉!!」
ズンッ!!
「がは・・・!」
恵が
「伏黒!!」
「大したもんだぜぇ・・・小僧共」
2人がダメージを負うと、爆煙から斬鬼の声が聞こえてきた。
「まさか俺様の『鎧』をぶっ壊すたぁ、想像すらしてなかったぁ。いやはや、称賛に値するぜ、本当によぉ」
「・・・嘘だろ?」
「・・・てめぇ・・・!」
爆煙から姿を現した斬鬼の姿を見て、恵は驚愕し、
「俺様はシャイだからよぉ・・・あんま姿を見せたくなかったんだが・・・そうも言ってらんねぇ。この礼はたっっっっっぷりお返ししなきゃだよなぁ?」
今の斬鬼の姿は全身黒い肌に引き締まった筋肉を持ち、長い白髭と長い白髪が特徴的な厳つい顔を持った老人のような魔人だ。
「てめぇら!!皆殺し決定だ!!!!」
この姿こそが、呪力で作った機械で身を包んでいた天候の特級呪霊斬鬼の本来の姿である。斬鬼との戦いはまだ終わりではない。