呪術廻戦ー呪いを斬るー   作:先導

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立派な刃・・・それが何を意味しているのか俺にはわからねぇ。

もしかしたら、そんなもんはないんじゃないかって思ったことはある。

それでも俺は・・・死んだ友達や親父に誇れるような男になるためにも、前に進まないといけないんだ。

そのためにも・・・目の前のこいつだけは・・・絶対に祓う!!!


感謝・共犯

八十八橋の峡谷の戦闘。(たつみ)と恵の連携によって機械の身体が壊れ、本来の姿を現した斬鬼。これだけでも絶望的なのに、これまでの攻防で斬鬼本体はノーダメージ。この事実に恵は少なからず動揺し、冷や汗をかいている。

 

「んん~~?どうした小僧共ぉ?俺様のこの逞しいフォルムに見惚れでもしたかぁ?」

 

「ふざけたこと言ってんなよ。まだ生きてんのなら、またぶっ殺してやるだけだ!」

 

「はっ、強がるねぇ」

 

斬鬼の煽りに対し、(たつみ)は睨みを利かせ、游雲を構え直す。その様子に斬鬼は小ばかにするように鼻で笑う。

 

(あいつは今まで重りをつけた状態で戦っていた・・・たたでさえ攻撃が多彩で威力も凄まじいのに・・・。重りが外れたってことは必然的に・・・)

 

恵が考察している間にも、斬鬼は彼に向けて人差し指を刺す。

 

ビュンッ!

 

「「!!」」

 

すると斬鬼の人差し指から電気のレーザーが彼に向かって一直線に放たれる。恵は咄嗟に青龍刀で受け止め防御する。しかし・・・

 

ビビ・・・ゴロゴロ・・・ドオオオオオン!!!

 

「ぐあああ!!」

 

青龍刀に帯びた電気がまるで落雷が落ちたかのように弾け、恵にダメージを与える。

 

「伏黒!!」

 

恵がダメージを負い、(たつみ)が声をあげると同時に、斬鬼は右手に灰色のボールを作りだし、それを(たつみ)に向けて投げ放つ。

 

「!このぉ!!」

 

それに気づいた(たつみ)は迫ってきた灰色のボールを游雲で上空に打ち上げた。だが打ちあがったボールはカプセルのように割れ、中から出た槍のように鋭い雨が(たつみ)に降り注ぐ。

 

「そぅら、大雨注意報だ!!!」

 

「く、くぅぅ!!」

 

降り注ぐ鋭利の雨を(たつみ)は游雲を振り回して豪雨を弾いていく。だが全てを弾くことはできず、1滴、1滴がすり抜け、(たつみ)の頬や腕、足などに雨がかすり、切り傷ができる。防御に徹している(たつみ)に対し、斬鬼は自身の体を捻じる。そして、捻じった反動で体を回転させ、竜巻を発して(たつみ)に放つ。

 

「鎌鼬ぃ!!!」

 

「うわああああああ!!!」

 

「和倉!!」

 

鎌鼬が突風となって放たれ、豪雨に集中しすぎていた(たつみ)は吹っ飛ばされ、風の刃と雨の槍で身体の至る所に切り傷が与えられる。

 

(やっぱりだ・・・!重りが外れたことで・・・断然強くなっている!!)

 

やはり身を包んでいた機械の身体が外れたことで斬鬼の攻撃がさらに激しくなってきている。考察する恵に斬鬼は腕に電気を纏ってランスを作り上げ、一直線に突っ込んできた。攻撃を察知した鵺は恵の背中を掴んで持ち上げて飛び、斬鬼の攻撃を躱す。

 

「逃がすかよぉ!!」

 

斬鬼は周りに冷気を放ち、川の水を全て凍らせ、氷柱を作り上げる。そして作り上げた氷柱を飛んでいる鵺と恵に向けて放つ。鵺は恵を守るように、迫ってきた氷柱を風の流れに逆らいながら危なげに全て避ける。

 

「ちょこまかと・・・」

 

斬鬼が次の一手に出ようと動こうとすると、(たつみ)が斬鬼に接近し、振るって打撃を与えた。だがここで予想外のことが起きた。(たつみ)が振るった打撃を受けた斬鬼の胴体は霧のように霧散し、直後に斬鬼の身体からもくもくと溢れ出し、上半身と下半身がくっつき、元通りになる。その時間、僅か0.02秒。

 

「なっ・・・!!?」

 

「効かねぇなぁ・・・ぶらぁ!!!!」

 

ブオォ!!ドォォォン!!

 

「ああああああああああ!!」

 

元通りになった斬鬼はニヤついた笑みを浮かべ、左腕を振るって突風を放って(たつみ)を吹き飛ばす。さらに右手の人差し指で電気のレーザーを撃ち放ち、直撃と同時に弾け、感電してダメージを負う。

 

「和倉!!」

 

「人の心配してる場合かぁ⁉鎌鼬ぃ!!」

 

恵が声をあげると同時に、斬鬼は彼に向けて鎌鼬を放つ。鎌鼬に直撃した鵺は吹っ飛ばされ、掴んでいた恵を手放してしまう。

 

「くっ・・・!玉犬!」

 

落下する恵は咄嗟に玉犬『渾』を召喚し、攻撃指示を出す。玉犬『渾』は落下の勢いに乗りながら斬鬼に爪を振るうが、結果は同じだ。爪が直撃した部位は霧散し、雲によって欠損部位が元通りになる。地に着地し、恵も追撃で青龍刀を振るうが、これも同じ結果で斬鬼に傷1つ負わせることができない。

 

「くそっ・・・化け物め・・・!」

 

「お褒めの言葉、ありがとよぉ!!」

 

ドゴォ!!

 

「がっ・・・!!」

 

元通りになった斬鬼は拳に氷の棍を作り上げ、鈍器を伸ばすことで恵の顔面に打撃を与え、殴り飛ばした。強烈な打撃をくらった恵は地に倒れる。これによって術式が途切れ、玉犬『渾』と鵺が影に戻る。

 

「てめぇらの攻撃なんぞもう二度と効かねぇよぉ。雲の体に刃物も鈍器も通用しねぇ!全ての天候を支配する俺様は無敵だぁ!!!」

 

体を雲にして攻撃を無効化させることで圧倒的有利に立っている斬鬼は得意げに笑う。

 

(お前が無敵だって?そんなわけあるか!こいつの呪術にだってきっと弱点はあるはずだ!それさえ突けば・・・!)

 

よろよろと立ち上がる(たつみ)は斬鬼を祓う一手を懸命に考える。まだ立ち上がろうとする(たつみ)と恵に斬鬼はニヤリとあくどい笑みを浮かべる。

 

「小僧共、俺様は言ったよなぁ?お返しは返さなきゃってなぁ。楽しませてもらった礼をくれてやるぜ!!!」

 

斬鬼が両手を広げた途端、強大な呪力が解放され、凄まじいプレッシャーを放つ。(たつみ)と恵は肌でそれを感じ取った。

 

(⁉なんだこの呪力量は・・・⁉)

 

斬鬼の呪力が解放されたことで大地は揺れ、5つの巨大な竜巻が大地から現れる。竜巻にはそれぞれ、炎、水、雷、吹雪、砂と天候に関連する属性が纏っている。

 

「・・・っ!和倉!逃げるぞ!!」

 

「特大サービスだ!!!!遠慮せず受け取りやがれぃ!!!!」

 

斬鬼は自身が作り上げた5つの異なる属性の竜巻を逃げ出した2人に向けて一斉に放った。

 

「極ノ番!!伍龍!!!!」

 

斬鬼の極ノ番、伍龍の竜巻が迫り、(たつみ)と恵は走りながら竜巻を1つずつ的確に避けていく。しかしそれを読んでいたのか竜巻は走る2人の周りを囲んで回り、逃げられなくし、全ての竜巻は一斉に迫る。

 

「くっ・・・鵺!!」

 

恵は鵺を召喚し、迫ってくる5つの竜巻の隙間を掻い潜らせ、斬鬼に帯電を帯びた翼をぶつけようと猛接近する。

 

「おっと!」

 

突進してくる鵺に斬鬼はしゃがんで回避した。竜巻に飲み込まれようとした(たつみ)はその一瞬を見逃さなかった。その間にも竜巻は(たつみ)と恵を飲み込んだ。そして、5つの竜巻は合体し、さらに巨大なものになって風と5属性が2人を襲う。そして・・・

 

ドガアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!

 

斬鬼がぐっと両拳を握りしめたことで、風と5属性が合わさって大爆発を引き起こした。竜巻の大爆発の中、鵺は背後から斬鬼に突進を仕掛けようとするが、途中で術式が解けて元の影に戻る。大爆発によって吹っ飛ばされた(たつみ)と恵は川に落ち、強い水飛沫をあげた。

 

「・・・死んだか。体が残ってんのはちと驚いたが、楽しい時間は呆気なく終わるもんだなぁ」

 

斬鬼は鵺が影に戻った瞬間を目撃したことから倒れ伏す2人がもう死んだと思い、興味が薄れていった。

 

「さぁーて、次はどうするかねぇ。こいつらのお仲間を絶望させてやろうかぁ?」

 

まだまだ暴れたりないのか斬鬼は次なる標的を悠仁たちに定め、すぐに移動を開始しようとする。しかし、一歩踏み出した時、すぐに立ち止まった。斬鬼は驚きつつ、後ろに視線を向ける。

 

「・・・マジか。極ノ番を耐えきったのかよぉ」

 

「勝手に人を殺してんじゃねぇよ、クソ野郎が」

 

斬鬼の視線の先にはボロボロながらも立ち上がった(たつみ)と恵の姿がある。あれほど強大な呪術を耐えきることができたのは、竜巻が直撃する寸前で恵が召喚した脱兎のおかげだ。脱兎は群れを成す式神。本体が無事である限り、何匹でも脱兎を召喚できる。2人は脱兎の群れに包まれて、事なきを得たのだ。ただ斬鬼の極ノ番は非常に強力。まったくの無傷とはいかず、(たつみ)も恵も大きなダメージを負い、脱兎本体も破壊されるギリギリの状態で、恵のダメージによって影に戻ってしまっている。

 

(指の特級呪霊との怪我は治っても、呪力は戻ってねぇ。領域展開ももう使えない。出せる式神も呪力切れで限られてる。そのうえ脱兎も破壊寸前・・・これ以上は出せねぇ)

 

恵はこの状況の打開策を模索しているが、自分たちの攻撃が効かない斬鬼が相手では、どう考えても打開策が見当たらない。・・・ある1点を除けば。

 

「結局こうなるか・・・」

 

ビリッ・・・

 

「!!」

 

恵から凄まじいプレッシャーを放たれたことに気がついた斬鬼は顔を強張らせ、身構える。

 

(んだこのプレッシャーは・・・?あの式神の小僧から・・・?)

 

「・・・布瑠部(ふるべ)・・・由良由良(ゆらゆら)・・・」

 

恵は奥の手を繰り出そうと構え、祓詞を唱える。だがその最中に(たつみ)が彼の拳を下ろし、祓詞を中断させる。それには恵の動きが止まり、斬鬼は怪訝な顔をする。

 

「ああ?」

 

「和倉?」

 

「・・・何する気か知らねぇけど・・・それはまだ早ぇだろ」

 

「そうは言ってもだな・・・」

 

「奴に攻撃を当てる方法がわかったかもしれねぇ」

 

「!!」

 

自分を止めようとする(たつみ)に恵は異議を唱えようとするが、攻撃を当てる方法について反応をする。彼は至って真剣で、まだ諦めていない様子だ。

 

「つまりは祓えねぇ相手じゃねぇ。なら今ここで確実に祓うぞ!!」

 

ここで斬鬼を祓う選択を出した(たつみ)に恵は斬鬼に攻撃を当てる方法について尋ねる。

 

「・・・その方法ってのは?」

 

「今は言えねぇ。あいつに核心を勘づかれたくない。でもあいつの雲の呪術にはきっと何かしらのルールが存在してるはずだ。そこさえ突けば・・・勝機がある」

 

「だが・・・」

 

「伏黒」

 

煮え切らない様子の恵に(たつみ)は彼に顔を向けて笑みを浮かべる。

 

「俺を信じろ」

 

自信に満ち溢れた真っ直ぐな瞳。その目を見た恵は目を閉じて少し考え、やがて目を開いて覚悟を決め、持っていた青龍刀を(たつみ)に返す。

 

「・・・勝算はあるんだろうな?」

 

「数字で語るなよ。できなきゃ待ってるのは死だけだ」

 

「もしこれで死んだらお前を呪う」

 

「じゃあ是が非でも成功させなきゃな」

 

(たつみ)は游雲を恵に返し、青龍刀を受け取って構える。

 

(何だったんだ今のは・・・?あの式神の小僧、まだ何か隠してんのか?先に奴を仕留めるべきか?それとも・・・?)

 

プレッシャーから解放された斬鬼は恵にはまだ何かあると考え、彼に警戒を示している。対し恵は游雲を影に収納し、鳥とカエルの手影を作る。

 

不知井底(せいていしらず)!」

 

拡張術式で不知井底を召喚した恵は(たつみ)と顔を合わせ、お互いに顔を縦に頷く。直後、恵と(たつみ)は左右に分かれ、残った不知井底は斬鬼の両手片足に向けて舌を伸ばし、拘束しようとする。しかし、両手片足は触れた途端に雲のように千切れて掴むことができない。直後にまた元通りになる。

 

「効かねぇと言ってんだろうが!!!」

 

斬鬼が笑い飛ばす中、(たつみ)は斬鬼の懐に入り、青龍刀を振るって斬撃を放ったが、雲となってまた元通りになるだけでダメージは与えられていない。

 

「こっちだノロマ!!追いつけるもんなら追いついてみろ!!」

 

斬鬼に攻撃を放った後、(たつみ)は1匹の不知井底を担ぎ、斬鬼を煽りながら川に続く道のりを走っていく。

 

「・・・誰にもモノを言ってんだ小僧・・・!お前の走りなんざなぁ・・・アリ同然なんだよぉ!!」

 

(たつみ)の煽りに触発された斬鬼は両足に凄まじい電気を纏い、強く踏み込みを入れて一歩を踏み出す。すると斬鬼は目にも止まらない(たつみ)に追いつき、腕に帯びた電気の槍で(たつみ)と1匹の不知井底を貫いた。

 

「ぐあ・・・!!」

 

貫かれたことによって不知井底1匹は消滅し、背中を刺された(たつみ)は体制が崩れ、転げる。

 

(まだだ・・・まだ止まるな・・・!)

 

不知井底のおかげで致命傷は免れた(たつみ)は起き上がり、走って先を進む。そんな彼を斬鬼は追いかける。(たつみ)を追う斬鬼に左右から現れた2匹の不知井底が舌を伸ばす。だがやはり一部が雲となって掴むことができない。

 

「さっきまでの威勢はどうしたぁ!!」

 

「ごはっ・・・!!」

 

何度も何度も斬鬼の攻撃は受けては先へ進むの繰り返し。(たつみ)の身体も限界が近い。先に進むにつれ、川の水は広くなっていき、深さも増している。

 

「ハッキリ言ってやる。無駄な足掻きなんだよぉ!!!」

 

斬鬼は小型太陽の球を作り上げ、(たつみ)に投げ放つ。

 

ドカアアアアン!!!!

 

投げ放たれた小型太陽は(たつみ)にあたる直前で爆発する。爆発で吹っ飛ばされる(たつみ)はダメージを負い、川の水の中に着水する。

 

(水・・・まさか俺様の電気で感電させるつもりだったのか?バカな奴だ。俺様が扱えるのは電気だけじゃねぇってのをもう忘れたか?仮に考え通りだったとしても俺様の電気は効かねぇ。感電するのはてめぇだけだ)

 

(たつみ)の作戦を考察する斬鬼は彼を小ばかにするようにニヤリと笑う。対し、(たつみ)は身体中の痛みを堪えつつ、立ち上がる。

 

「いい加減しぶてぇなぁ、小僧。心配せずとも、式神の小僧も後を追わせてやるから・・・てめぇはさっさと・・・逝っちまいなあああ!!!」

 

斬鬼は片腕に電気の槍を纏わせ、水に濡れた(たつみ)に近づき、彼の腹部を貫こうとする。

 

バッシャアアン!!ガシィ!!ズン!!

 

その直後、川の中より不知井底が現れ、舌を伸ばして斬鬼の電気の槍を掴み拘束する。腕を拘束された斬鬼は雲にはなっておらず、同時に繰り出された(たつみ)の突きによって胸を貫かれる。

 

「ご・・・あ・・・!」

 

「鼻から感電なんて狙ってねぇよ・・・クソ野郎・・・!」

 

「・・・てめぇ・・・いつ気付いた・・・?」

 

「大技ぶっ放してた時、鵺の攻撃を避けてたのが気になってな・・・。もしかしたらって思ってたけど・・・ビンゴだぜ。お前は・・・他の呪術を使ってる間は雲にはなれねぇ!」

 

(たつみ)は予想が当たり、相打ち覚悟の攻撃を当てたことで笑みを浮かべる。言われてみればその通りだ。斬鬼が雲になっていたのはどれも呪術を使い終えた後からだ。攻撃と同時使用はしていなかった。恵の言葉を借りれば、攻撃性能が高い分、防御面に引き算として作用されているのだ。その弱点を補っていたのが、あの機械の身体だ。

 

「伏黒!!今のうちだ!俺ごとでも構わねぇ!!でかいのをぶっ放せぇ!!」

 

(たつみ)が大声を出して合図を出した瞬間、恵が斬鬼の背後に現れる。それと同時に不知井底を解除し、象の手影を作る。

 

「満象」

 

恵の影から満象が召喚され、満象は長い鼻を膨らませる。

 

(こいつら・・・正気か!!?この状況はマズい!!小僧を殺さねば!!)

 

これから起きることを予測した斬鬼は焦りだし、拘束から逃れようと再び電気の槍を腕に纏わせ、(たつみ)の心臓目掛けて貫こうとする。だがそれよりも早く、満象は水を噴射させて、(たつみ)ごと斬鬼を吹っ飛ばす。水と言えど、物量が大きく、多少なりとも斬鬼にダメージを与えられている。

 

(なんつー物量だ!この俺様に・・・!しかも・・・まだ小僧の呪具が・・・!)

 

『青龍刀がまだ突き刺さっている』斬鬼が焦った表情を浮かべる中、恵は満象を消し、鳥の手影絵を作る。

 

「鵺!!」

 

恵の影から再び現れた鵺は翼に帯電を帯び、斬鬼に追撃の攻撃を与える。満象によって体が濡れた斬鬼は感電する。

 

「ぬおああああああああああああ!!!!!」

 

どうやら自分の電気は効かなくとも、術師による攻撃ならば効くようだ。そして今、斬鬼は川の水の上にいる。感電の威力も大きく、多大なダメージを負っている。そして何より、斬鬼は雲になる呪術を発動していない。

 

(呪具が刺さったままだと雲にはなれないのか。好都合だ。奴は防御面は薄い。このまま畳みかける!)

 

恵は今の状況は好機だと受け取り、鵺に追撃を指示し、斬鬼を連続攻撃で畳みかける。

 

(俺様が・・・負ける・・・?こんなガキ共に・・・?いや!!俺様がガキに負けるなんざ・・・あってたまるかぁ!!!)

 

防御面に弱い斬鬼はこのままでは祓われると直感し、手段は択ばないと言わんばかりに、最後の奥の手、領域展開を繰り出そうと印相を結ぼうとする。

 

「領域展・・・」

 

ザシュ!!!

 

斬鬼が領域展開を繰り出そうとした時、背後に回った(たつみ)が発動よりも早く短刀を振るい、斬鬼の腕を肩ごと斬り落として領域展開を阻止した。

 

(ありがとうな、伏黒)

 

(たつみ)の短刀の呪具は鵺が斬鬼を畳み込んでいる間、気づかれないように負傷した脱兎を召喚し、駆けつけさせた。そして、辿り着いたタイミングで影に戻ったと同時に出てきたのが、短刀である。

 

「こ・・・小僧がああああああああああああ!!!!!」

 

領域展開を阻まれた斬鬼は憤怒の表情を浮かべながら、氷柱を纏った腕で(たつみ)の頭を貫こうとする。

 

ザンッ!!シュババババババ!!!

 

だが(たつみ)はそれよりも早く短刀を振るって斬鬼の腕を斬り落とし、さらに突き刺さったままの青龍刀を手に取り、目にも止まらぬ速さで斬鬼を急所の頭ごと体を細切れのように切り裂いた。急所ごとバラバラに刻まれた斬鬼は黒い塵となり、跡形もなく消え去った。

 

「うるせぇ。てめぇ1人で逝ってろ」

 

怨敵、斬鬼を祓うことに成功した(たつみ)は悪態をついた後、川の水飛沫をあげながら倒れる。

 

「和倉!」

 

恵が(たつみ)に駆け寄ると、彼の顔を見て少し呆れたような顔になる。

 

沙良(さよ)・・・家康(いえやす)・・・親父・・・見てるか?仇は・・・取ったぜ」

 

友と父の仇をようやく取ることができた(たつみ)は清々しいまでの満面の笑みを浮かべるのであった。

 

 

一方高速道路での戦闘。時は野薔薇の簪で血塗を倒したところまで遡る。

 

「・・・血塗・・・」

 

目の前で弟の命が散った光景を見た壊相は悲哀の表情を浮かべ、涙を流す。

 

『俺たちは、3人で1つだ』

 

(ごめん、兄さん・・・私がついていながら・・・)

 

慈愛の涙。想定外の感情の振れ幅に悠仁の追撃の手が止まる。同時に、血塗の遺体を見た野薔薇の手も止まる。

 

(こいつなんで消えない⁉まだ生きて・・・違う!呪霊じゃない!肉体があるんだ!)

 

呪胎九相図は元々は呪物。1人の人間に受肉することで初めて肉体を得る存在だ。つまりはれっきとした一個人の命。野薔薇はそれに気づいて驚愕しているのだ。

 

ビィィィィィ!!

 

悠仁と野薔薇が止まっていると、トンネルから軽トラックが現れ、クラクション音が鳴り響いた。その音に2人は我に返り、左右に分かれて軽トラックを躱す。

 

「危ねぇなぁ!!」

 

軽トラックに乗っていた男性は高速道路にいた悠仁たちに毒づいている。その直後・・・

 

ガシッ!

 

「⁉うわああ!!?」

 

いつの間にか軽トラックの荷台に乗り込んでいた壊相が彼を助手席から引っ張り上げた。

 

「さ、沢村さん!!?」

 

「スピードをあげろ。ブレーキを踏めば殺す。お前もこいつも。わかったな?」

 

運転手の男に向けて壊相は一方的な指示を出した。男は恐怖心から下手に逆らうことができず、震えながらも首を縦に頷き、指示に従う。軽トラックのスピードが上がる中、悠仁は全力で走って追いかける。追いかけてくる悠仁に対し、壊相は引っ張り上げた沢村という男の首に血で作り上げた腕を押し当てる。血の腕を押し当てられた沢村の首は蝕爛腐術の毒によって強烈な痛みが発する。

 

「あああああああああああ!!!!」

 

「追うなよ、呪術師」

 

腕が吹っ飛ばされた今、勝てないと判断した壊相は撤退するべきと判断し、悠仁から振り切るために人質をとっているのだ。

 

(この2人・・・特にあの女は傷を癒し確実に殺す。すまん、血塗・・・弔ってやれなくて・・・。だが、私が必ず仇を・・・)

 

軽トラックで離脱を測ろうとする壊相はあの場に残った野薔薇が何かをしようとしている姿を目撃した。

 

「あの女・・・何してる・・・?」

 

「釘崎!!!!」

 

「急かすな!!!」

 

野薔薇は悠仁が黒閃で吹っ飛ばした壊相の腕に藁人形を乗せる。そして・・・

 

芻霊(すうれい)呪法―――共鳴りぃ!!!」

 

呪力を纏った釘を藁人形に向けて撃ち込んだ。

 

ズシャア!!!

 

「ぐはあ・・・!!」

 

これによって藁人形と連動し、棘の物体が壊相の胸を体内から貫いた。これによって壊相は沢村を手放し、軽トラックの荷台から飛び出してしまう。

 

「クソ・・・がぁ・・・!!」

 

彼女にしてやられた壊相は毒づく。

 

(呪詛返しの術式ではなかったのか・・・⁉)

 

軽トラックから飛び出した壊相の目の前には、悠仁が呪力を纏った拳を放とうとする姿があった。

 

「・・・ごめん」

 

ドオオオオオン!!!

 

悠仁が放った拳は壊相の腹部に直撃。呪力は打撃の直撃と合わせて弾け、壊相の内臓を破壊した。この一撃によって壊相は命尽き、静かに倒れた。

 

「・・・・・・・・・いってぇ・・・」

 

自分の拳で人1人の命を奪った悠仁は打撃の痛みと罪の痛み・・・二重の痛みを噛みしめるのであった。

 

 

傑たちのアジトの中。傑、エスデス、真人・・・そして1人の男と人生ゲームに興じている。男の姿は黒髪の二つ結びのパンクという独特な髪型をしており、目元は隈のように紫に染まっており、鼻には横一線の刺青があるのが特徴だ。

 

「エスデス、株券」

 

「生意気な奴だ」

 

真人の番が終わり、次はパンク結びの男の番。が、男が駒を進めようとした時、動きが止まる。

 

「どうした?脹相」

 

パキッ!

 

パンク結びの男・・・呪胎九相図の1番、脹相は突然持っていた駒を壊した。

 

「あーーー!!駒壊すなよー!!」

 

「・・・弟が死んだ」

 

脹相が自分の弟、壊相と血塗が死んだことをいち早く気づいたことに、エスデスはその能力に関心を示す。

 

「ほう・・・そういうこともわかるのか」

 

「どういうことだ・・・?受肉体ならまだしも、2人が指1本分の呪霊がやられるとは思えん」

 

2人が指の特級呪霊にやられることはまずないとわかっている脹相は疑問を抱いている。そこへ漏瑚たちがやってきた。

 

「真人」

 

「あ、漏瑚ー。漏瑚もやる?今このゲーム・・・」

 

「・・・斬鬼が死んだ」

 

「・・・・・・・・・マジ?」

 

漏瑚からの斬鬼が死んだという知らせに真人は駒探しの手が止まり、面をくらった表情を浮かべている。

 

「・・・ざんきぃ・・・」

 

〘・・・くっ・・・〙

 

「・・・え?マジで死んだの?」

 

「だからわからんのだ。奴が好戦的なのは知っておるが、指の呪霊如きに負けるはずがない」

 

斬鬼が死んだという事実に陀艮は涙を流し、花御は拳を握りしめ、悲しみを表している。斬鬼と付き合いが長い漏瑚はどういうことかわからないがゆえに疑問を抱いている。すると、エスデスのスマホから着信が鳴る。

 

禍津神(まがつがみ)からの報告かい?」

 

「ああ」

 

エスデスは報告の内容を確認しする。その内容に一瞬目が点になり、直後に愉快そうに笑みを浮かべる。

 

「真人、脹相。斬鬼、壊相、血塗を殺したのは・・・呪術高専1年・・・虎杖悠仁とその一派だ」

 

報告の内容を聞いた真人はあくどい笑みを浮かべるのであった。

 

この件によって悠仁は脹相の、(たつみ)は特級呪霊たちの恨みを買う結果となってしまったことを、彼らは知らない。

 

 

斬鬼を祓い終えた(たつみ)と恵はお互いを支え合いながら悠仁と野薔薇と合流するために来た道を引き返している。

 

「・・・五条先生からあの特級呪霊のことは聞いていた。仇だったんだな」

 

「・・・おう。でも元を正せば・・・俺が悪かったんだ。あの時俺が家康(いえやす)の誘いに乗らなかったら・・・ちゃんと止めていれば、沙良(さよ)家康(いえやす)があいつに殺されることはなかった。親父だって・・・死ぬことはなかったんだ・・・」

 

「・・・悪い」

 

嫌なことを思い出させてしまったと思い、恵は(たつみ)に言葉足らずの謝罪をする。

 

「なんで謝るんだよ。むしろ伏黒には感謝してるんだ」

 

「?」

 

「だってお前なら撤退とか勧めてきそうだったから」

 

「俺は本気で撤退しようと思ったさ。ただ・・・お前らには津美紀の件で迷惑をかけたからな。その借りを返しただけだ」

 

「それでもだろ。お前がいなきゃあいつは祓えなかった。ありがとな、俺を信じてくれて」

 

「・・・・・・」

 

(たつみ)は笑顔を向けながら恵に心からの感謝の言葉を送る。恵は特に反応を示すことなく無表情だ。

 

「仇は討てたけど・・・まだ終わりじゃねぇ。俺にはまだ、立派な刃の意味をまだ理解できてねぇ。これが何を意味してるのか・・・それを理解して立派な刃になれるのか・・・まだまだ課題は残ってるんだ。これからも、手伝ってくれよな」

 

(たつみ)は恵に向けて拳を突きつけてくる。その意味を理解した恵は少し呆れるようなため息をこぼしつつも、それに応じるように拳と拳をぶつけ合わせるのであった。

 

 

一方の悠仁と野薔薇も、(たつみ)と恵に合流するために、峡谷へ続く森の中を歩く。

 

「・・・釘崎、大丈夫か?」

 

「ああ、まぁねー。痕は残るかもねー。あのオッサン大丈夫かしら?車行っちゃったし。毒の方は・・・まぁ、うん。今から帰って硝子さん起きてるかな?そんでシラフかな?」

 

野薔薇に気を遣っている悠仁は何か言おうとしているのだが、どこか気まずく言い辛そうにしている。。

 

「何もじもじしてるのよ?キモイわよ?」

 

「・・・初めてなんじゃねぇかと思って・・・。祓ったんじゃなくて、殺したの」

 

「あんたは?」

 

「俺は前に一度・・・いや・・・あれを一度っていうのはズルか。3人だ」

 

悠仁が言っているのは里桜高校で真人と戦った際に、子供の改造人間のことを指している。

 

「私よりあんたの方が大丈夫じゃないでしょ」

 

元より人がいい性格をしている悠仁。そんな彼が改造人間とはいえ3人も・・・しかも子供を殺したのだ。メンタル的に言えば、野薔薇よりも悠仁の方が辛い思いをしている。

 

「私はぶっちゃけ何ともない。術師やってりゃこういうこともあんでしょ。伏黒ほどじゃないけどさー、結局助けられる人間なんて限りがあんのよ。私の人生の席・・・ていうか、そこに座ってない人間に私の心をどうこうされたくないのよね」

 

野薔薇は自分の心情を入れつつ、未だに顔色が優れない悠仁にフォローを入れる。

 

「冷たい?まっ、あんたみたいに自分の椅子持ってきて座ってる奴もいるけどねー。フォローするわけじゃないけど、呪霊か呪詛師か気にしてる余裕とかなかったじゃん。人間だとして、あのレベルのを長期間拘束する術はない。わかってんでしょ?」

 

「・・・でも・・・あいつ泣いたんだよ。目の前で弟が死んで・・・」

 

「・・・そっか」

 

「俺は自分が・・・釘崎が助かって生きてて嬉しい。ホッとしてる。それでも・・・俺が殺した命の中に涙があったんだなって。それだけ」

 

「・・・そっか・・・。じゃあ、共犯ね、私たち」

 

どんな理由をつけようとも、相手が異形であろうとも、壊相と血塗が人間と同じ命を持っているのだ。その命を奪った悠仁と野薔薇は、その罪を一生背負っていくのだ。それでも彼らは前に進むしかない。進むしかないのだ。

 

「お、悠仁ー!釘崎ー!お前ら無事だったかー!」

 

森を抜けて峡谷を歩いていると、その先の道で(たつみ)と恵の姿を目認できた。

 

「「うわっ!!ボロッボロじゃん!!何があった!!?」」

 

「声量落とせ・・・身体中いてぇ・・・」

 

自分たちよりひどくボロボロの2人を見て悠仁と野薔薇は声をあげて驚愕する。その声量で(たつみ)と恵は傷口が響いている。

 

「はぁ・・・どんな無茶すりゃそんな大怪我負ってくんのよ・・・。で、指はどうしたのよ?」

 

呆れながら尋ねる野薔薇の質問に(たつみ)と恵は少し固まる。

 

「・・・えーっと・・・実はですね・・・」

 

(たつみ)はぎこちないながらもありのままの事実を全て話した。

 

「はあああ!!?盗まれたぁ!!!??しかもその時伏黒は寝てたぁ!!?」

 

「ぐああああ!しょ、しょうがねぇだろ!あの後もすっげぇ大変だったんだから!」

 

「いや、マジで面目ねぇ」

 

ありのままを聞いた野薔薇は(たつみ)の両肩を掴み、ぐわんぐわんと揺らす。特級呪霊の戦いの後で仕方ないとはいえ、恵が寝ていたことに原因があったため、恵は素直に謝罪をする。

 

「でも・・・結局何だったんだあいつ・・・?俺たちに敵対してるようには見えなかったけど・・・」

 

「見てないんだから知らないわよそんなこと」

 

(たつみ)は恵の怪我を治していたツクヨミについて考えるが、痛みのせいで頭が回らなかった。

 

「ダメだ・・・頭回んねぇ・・・」

 

「同じく・・・」

 

「お、おお、大丈夫か?あんま無理すんな?」

 

余程に疲れたのか(たつみ)と恵はその場に座り込む。その様子に悠仁は心配をしている。

 

「くぉらぁ~~~!!!!お前らぁ!!!!今まで何してたんスかぁ!!!!」

 

「あ、新田さん」

 

「ブチギレてるわねぇ」

 

「報連相してなかったしな」

 

そこへ八十八橋の真上から明の怒号が聞こえてきた。報連相をしていなかったためか彼女は相当にキレている。

 

「・・・んじゃ、帰るとするか」

 

「お腹すいた~。この辺りっぱずしあるのかなぁ?」

 

「りっぱずしの新幹線すごかったでしょ!」

 

「うるさい」

 

苦難を乗り越え生きながらえた4人は明の怒号を聞きながら戻るのであった。

 

 

2日後。どこかの村。村はまるで廃村のように誰もおらず静かな空気が流れている。そんな村の建物の中から1人の女性が出てきた。黒髪の長髪で神々しさを感じさせる巫女服を着込んだ女性。そして彼女の特徴は胸に埋め込まれている黄色の勾玉である。

 

「姉様」

 

そんな彼女に声をかけてきたのは、禍津神三貴子(まがつがみみはしらのうずのみこ)、ツクヨミである。相も変わらずウサギのぬいぐるみを抱いている。

 

「どうでしたか?」

 

女性の問いかけにツクヨミは首を横に振る。

 

「・・・ここもガセでしたか。戻りましょう」

 

「姉様・・・本当に呪霊側につくの?」

 

ツクヨミの問いかけに対し、女性は口を開く。

 

「ツクヨミ、(わたくし)たちの目的はなんですか?」

 

「・・・まだ受肉を果たしてない『スー君』を見つけ出すこと・・・だよね?」

 

「その通り。現代の呪術界において、(わたくし)たちの存在は認められないでしょう。それならば呪霊が描く未来の方が(わたくし)たちにとって利点が大きい。今においても、呪霊の理想が叶っても。ただそれだけのことです。受肉体に心を痛めるその思いも、今は忘れなさい」

 

「それはわかってる。でも・・・」

 

ツクヨミは頭では納得できているとしても、心の方がまだ踏ん切りがつけていない様子である。

 

「いいですかツクヨミ。(わたくし)たちの理念は呪胎九相図の3人と同じです。脹相の言葉を借りるのならば、ツクヨミは『スサノオ』のために生き、スサノオは(わたくし)のために生き、(わたくし)はツクヨミのために生きる。(わたくし)たち姉弟はそうやって長い時を生きてきた。それは未来永劫変わることはありません。今までも、これからも。1人でもかけてしまっては意味がないのです」

 

「・・・うん・・・ごめん・・・そうだったね・・・私・・・頑張るよ・・・アマテラス姉様」

 

禍津神三貴子(まがつがみみはしらのうずのみこ)の1番にして長女、アマテラスは無理してるようにも見えるツクヨミに対し、一瞬だけ辛そうな顔をし、すぐに優しい笑みを浮かべる。

 

「では帰りましょう。今日はあなたが気になっているという月見ハンバーグを作ってみましょう」

 

アマテラスはツクヨミの頭を撫で、村の出口に向かって歩き出す。ウサギのぬいぐるみ、ウサギはツクヨミを元気づけようと声をかける。

 

「元気出して、ツーちゃん。ツーちゃんがやりたくないなら・・・無理しなくてもいいんだよ?」

 

「・・・ううん。大丈夫。スー君と姉様のこと、大好きだから。2人ために頑張らなくちゃ」

 

ツクヨミはアマテラスの後をついていき、2人一緒に村を出た。2人が村から姿を消した瞬間、急に村人たちが何事もなかったかのように現れ、先ほどまでの静寂が嘘のように活気を出していた。

 

 

東京校の1年生が特級クラスを4体倒したという話は呪術界の中で早くも広まっている。そんな中、赤女(あかめ)は職員室で書類仕事をしている。

 

「聞いたよ赤女(あかめ)。今年の1年が特級相当を4体倒したって話。しかも(たつみ)は因縁のあいつを祓ったらしいじゃん?あの時の少年がもう特級を祓えるほどの実力になるなんてな~。スカウトした私も鼻高々だよ♪」

 

1年ズが特級・・・(たつみ)が斬鬼を祓ったという話に機嫌をよくしているのは用があって赤女(あかめ)に会いに来たレオーネだ。彼女は今職員室の机に胡坐をかいている。

 

「レオーネ、机の上に乗らないでくれ。それより、頼んでおいた例の物は?」

 

「モチ。調べてきたよ」

 

「ありがとう。助かった」

 

「いいって。他ならぬ親友のためだしさ♪」

 

レオーネは頼まれていた資料を赤女(あかめ)に渡し、茶目っ気たっぷりのウィンクをしてみせた。用が済んだレオーネは職員室から退室しようとする。

 

「もう行くのか?お茶くらいは・・・」

 

「悪いね、これから任務なんだ。ジジィの人使いの荒さときたら・・・。でも硝子には顔出しておくよ」

 

「そうか。引き留めてすまない」

 

「じゃーね、赤女(あかめ)。次ぎ合う時は飲み会で♪」

 

レオーネは笑みを絶やさぬまま手を振って職員室を後にした。赤女(あかめ)は受け取った資料をさっそく確認する。その内容は元上層部が殺された事件の記録と、その元上層部の2人の娘の行方不明となった記録をまとめたものだ。

 

(ここ最近起こっている元上層部殺しに娘の行方不明・・・術師失踪事件の犯人である黒女(くろめ)が関わってる可能性はまずないだろう。元上層部の居所を知ってるとなると、内通者の手引きによるものだと考えた方がいいな。この事件と同時期に現れた呪胎九相図・・・そして(たつみ)が見たという女・・・。・・・無関係と言い切るのは不自然か・・・)

 

様々な考えや憶測が出てくる赤女(あかめ)は考えても埒が明かないと思い、少しでも情報を得るためにある人物に電話を入れる。

 

「急な電話で申し訳ない。まだ見つかっていない禍津神三貴子(まがつがみみはしらのうずのみこ)の3番について少し意見が欲しい」

 

 

一方の高専の別室、悟はコーヒーに大量の砂糖を入れながら電話している。

 

「いやぁ~、岩見沢の呪霊と指の呪霊だけじゃなくってさ、遺体を調べてなんとビックリ!何と例の物の受肉体だったの!指を回収できなかったのは残念だけど、特級相当を各個撃破!(たつみ)も仇を討てて万々歳!今年の1年は豊作だね。僕の指導者としての腕がいいのかなぁ?」

 

悟と電話をしている相手、チェルシーは自慢話にウンザリ気味である。

 

『あのさ~、自慢話なら切ってもいいかなぁ?オフの時に長話したくないって言って歌姫の代わりされてる身にもなってよ』

 

「ちょっとした世間話じゃない~。で、本題だけど・・・どう?目星ついた?」

 

『飲み会の幹事の件でしょ?全然。私含めてみんな忙しいの。どうする?学生のみんなにも声かける?』

 

「僕下戸だからノンアルでも構わないよ。引き続き、声かけよろしく♪」

 

会話内容だけ聞けば飲み会に行くかどうかの話だが、実際に行くわけではない。本題である内通者の調査を隠すために飲み会を盾にしているだけだ。

 

(歌姫たちの周りは何が聞いてるかわからないからなぁ。内通者が学生ってのは考えたくないねぇ。めんどくせー)

 

だるそうにしている悟はスマホを使って何かの手続きを行っている。

 

「さて、後は頼むよ、冥さん」

 

 

日本国内の銀行。冥冥はここで通帳に刻まれた振りこみ金額を確認している。振り込み金額の中には悟からの送り金も振りこまれていた。

 

「・・・ふふ・・・あっはっはっはっは!!」

 

振り込み金額を見て冥冥は愉快そうに大笑いしている。悟が冥冥に支払った振り込み金額はざっと一千万円である。

 

 

高専の手洗い場。恵はここに(たつみ)と野薔薇を呼び出し、宿儺の指の共振についての情報を共有する。

 

「虎杖には共振の話はするな」

 

「・・・それって確定なの?」

 

「ほぼな。終わった案件だ。気づく可能性があるとすれば、俺たちか新田さんくらいだと思う。虎杖・・・宿儺の受肉はきっかけにすぎない。八十八橋の呪殺はいつ始まってもおかしくなかった。そもそも指を飲み込んだのは、俺を助けるためだ」

 

「なるほどな。あいつなら、それで納得するわけねぇもんな」

 

「そうだ。だから言うなよ」

 

悠仁を気遣う恵の考えに(たつみ)と野薔薇は同意する。

 

「言わねぇよ。レディの気遣い舐めんな」

 

「しっかし・・・どうして悠仁の周りには、こういう皮肉なことばっか起こるんだろうな・・・」

 

悠仁には共振の話はしない。そういう決断に至り、この話は3人だけの秘密として抱えるのであった。

 

 

しかし、恵たちの気遣いは・・・この呪いの手によって全て無に帰すのであった。

 

「お前のせいだ。お前が俺を取り込んだ。目覚めたんだよ。切り分けた俺の魂たちが。ケヒヒ、ヒヒ・・・」

 

宿儺は悠仁に共振の話を持ち出し、精神を負いこもうとしている。

 

「大勢の人間を助ける・・・か。小僧!お前がいるから人が死ぬんだよ!」

 

「おい。それ伏黒には言うなよ」

 

冷たい声質で話す悠仁の頭に浮かんでくるのは恵の言葉だ。

 

『自分が助けた人間が将来人を殺したらどうする⁉』

 

「・・・言うなよ」

 

悠仁は恵を気遣い、共振の話は彼にはしないように宿儺に言い聞かせた。

 

 

運動場では2年生4人が集まっており、パンダと棘は真希とマインの模擬戦の審判をしている。真希が振るう薙刀の木刀を振るい攻撃を放つ。マインは真希の連撃を躱し続け、ライフルガンで攻撃を防御し、足払いで彼女の体制を崩した。

 

パァン!ポコッ!

 

「だっ!・・・てぇ・・・!」

 

態勢を立て直そうとする真希にマインは彼女の額にライフルガンの弾(ゴム弾)を撃ち放ち、1本を取った。

 

「お、珍しいな。マインが勝った」

 

「高菜」

 

珍しい展開だったのかパンダと棘は感嘆の声をあげる。

 

「どうしたのよ?少し鈍った?動きにキレがなかったわよ」

 

「うるせえー。安静にしてたらなまったんだよ」

 

「ま、そういうこともあんだろ。それより聞いたか?1年ズの話」

 

「ああ。特級相当を4体って話だろ?」

 

「シャケ」

 

1年ズが特級相当の相手に4体も勝ったという話は2年ズの耳にも届いており、4人は負けていられないと言わんばかりの闘志を燃やしている。

 

「じゃあ、あたしたちも後輩に負けてはいられないわね」

 

「すじこ」

 

「おう!」

 

「・・・へっ!」

 

闘志を燃やした真希は薙刀の木刀を構え、問答無用でマインに襲い掛かってきた。真希が振るう薙刀の木刀をマインはギリギリで躱した。

 

「ちょっ!!?危な!!!あんた今本気でやったでしょ!!??」

 

「本気でやんなきゃ訓練になんねーだろ」

 

「今のは意味が違うでしょ絶対!!!」

 

「あーあ・・・こりゃマインの負けだな」

 

「昆布」

 

真希のやる気スイッチをまんまと押したマインに対し、パンダと棘は彼女に同情をしている。

 

 

高専京都校の学長室。ここに集まったブラート、東堂、冥冥は楽厳寺にとある話を打ち明けた。その内容を聞いた楽厳寺は険しい顔つきになっている。

 

「特級は術師の格付けの中で斜めに外れた位置じゃ。1級こそ他の術師、延いては呪術界を牽引していく存在であるとワシは考えておる。危険、機密、俸給・・・準1級以下とは比べ物にならん。それを踏まえた上で今なんと?」

 

楽厳寺の問いかけに3人は臆さず、先ほど話した内容をもう1度述べる。

 

「禪院真希、パンダ」

 

「三好マイン、和倉(たつみ)

 

「伏黒恵、釘崎野薔薇。そしてマイブラザー、虎杖悠仁。以上7名を東堂葵」

 

「冥冥」

 

「ブラートの名の下に・・・」

 

 

「「「1級術師に推薦する」」」

 

 

その内容とは、高専東京校の2年と1年の1級術師推薦の話であった。




アニメ1期分の話はこれで終わりですが、起首雷同は後1話続きます。

・・・つまりは『そういうこと』です。
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