交流会1日目、団体戦チキチキ猛攻呪霊叩き。開始と同時に京都陣営にいきなり現れた龍型の呪霊、虹龍は辺りを暴れて建物を破壊した後に空へと昇り、傑の元へと戻っていく。
「び・・・ビックリしたぁ・・・」
「いきなり先手とは・・・やってくれるわね、夏油」
「各自、態勢を立て直せ!取り乱しては奴の思う・・・」
先制威嚇から態勢を整えるようにナハシュが指示を出しそうとした時、すぐ近くに膨大な呪力を感じ取った。その方角を見てみると、そこにはポケットに手を突っ込んで余裕の態度を見せている悟の姿があった。
「あーれれー?皆さんお揃いでどったのー?奇襲にでもあったかー?」
(五条・・・!もうこっちに来たのか・・・!)
「ま、なんだっていいけどね。さぁーて、誰からやろっかなー?」
悟の襲撃は予想していたが、思っていた以上に早いために内心焦りを生じる京都陣営。対照的に悟は誰から片付けようかと品定めをしている。
「くっ・・・!」
咄嗟の判断でグリーンは鞭の呪具を振るって攻撃を仕掛ける。同時に
「ウソっ⁉」
「ちぃ!」
「遠慮すんなって。もっとこっちに近づけよ」
ガシッ、グイ!
「うわっ!!?」
悟は鞭の先端を掴み、それをグイっと引っ張ることでグリーンを自分の元まで引き寄せた。
「そーれ!!」
バキィ!!
「がっ!!」
グリーンを引き寄せた悟はそのまま拳を振るって彼を地面に叩き込ませた。
「グリーン君!!」
「おっと、落とし物だよ」
ピンッ!
「ひゃあ!!」
さらに悟は宙に止まる弾をデコピンで弾いて
ボコォ!!
そこへ、地面の中より戦闘スーツを着込んだ
「くそっ!」
「残念。不意打ちは効かねーよ!」
ドゴォ!!
「ぐぅ・・・!!」
悟はニヒルな笑みを浮かべたまま
「散れっ!」
「あ!てめぇら!」
ナハシュの号令で一同は
「ひぃ~、怖かったぁ~」
「かなりズレはあったけど、ひとまずは作戦通りだね」
右方向は
「コル姉が化け物って言ってた意味、今わかったわ・・・」
「でしょ?だから無視無視」
左方向はポニィ、コルネリア、ナハシュ。これで京都陣営は作戦通りに動くことができる。
「五条てめぇ!!無下限を解きやがれ!!」
「はっ!やなこった!」
ドォォン!!
「うおおお!!」
悟が手を翳すと
(逃げた・・・わけじゃねぇな。お得意のモグラ戦法か)
鎧の呪具、レイア―スーツ。土を操作することができる。これによって土に潜ることはできるが、無から土を生成することはできない。また、特級ほどではないにしろ、装着者の負担が大きいため、使い手の体力が試される。
「オラァ!!」
悟の背後の地面より再び
「コソコソしやがって。後で泣いてもしらないよ?」
●
何とか悟から撒くことに成功したナハシュたち呪霊刈りチームは敷地内に蔓延る呪霊を探しに走り回っている。
「お前たち、わかってるな?」
「呪霊刈り優先、東京陣営を見つけても相手にするな、でしょ?」
「さすがにわかっていたか」
「夏油は手の込んだことをするから、気を緩めずに行きましょう」
東京陣営・・・特に傑を警戒しつつ、3人はできる限り有利になるようにそれぞれ三手に分かれた。進路をまっすぐ突き進んでいくポニィはさっそく標的である呪霊を数体発見する。
【・・・私一人なの・・・】
【ケテケテケテケテ・・・】
「思ってたより多いわね!」
両手が微妙に長い小人の4級呪霊の群れはポニィを見つけるや否や襲い掛かってくる。対し、ポニィは構わずに突っ込み、装着しているスパッツについている青い装飾が輝く。
ビュンッ!
するとポニィの走る速度が急に増し、その瞬発力が加わった呪力を帯びた蹴りで呪霊を蹴とばし、さらにそこからすぐそばの呪霊も呪力の蹴りで祓っていく。
布の呪具、ヨクトボトムス。加速能力と脚力増強を得ることができる呪具。ただし、増加値はそこまで高くないので使用者の強さが必要不可欠という癖が強い代物だ。
【・・・一緒にいてぇ・・・】
群れのリーダー格の呪霊は長い手を伸ばしてポニィを掴まえようとする。ポニィは伸びてきた手を華麗な身のこなしで躱していき、ヨクトボトムスで速力と脚力を上げて呪霊の首を蹴り上げる。しかし、これで終わりではない。
ゴォン!
ポニィは呪霊の首を器用に足で絡ませ、勢いを乗せて呪力を込めた頭突きを叩きつけて祓ってみせた。
「結構数が多かったけど、何とかなるね!『頭使って倒せ』って書いてあったから頭使ったし!」
言葉の意味を間違ってはいるが、多勢の呪霊を祓ったことで得意げな様子である。するとそこに1、2匹の呪霊が現れ、その様子を伺っている。
「あ!また発見!」
ポニィに見つかった呪霊は様子を逃げ始めようとする。しかし、ヨクトボトムスによって上がった速力よってすぐに追い抜かれ、彼女の蹴りによって呪霊は祓われる。
「また2体撃破!この交流会に勝ったら、お父さん褒めてくれるかな?」
ポニィはこの交流会を見ているであろう自分たちの育ての親からの褒め言葉を期待しつつ、この交流会を楽しんでいる。
●
一方、左方角に進んだナハシュは川エリアに到達する。川エリアでは獣型の呪霊、空には鳥型の呪霊、そして川には魚型の呪霊が集まっており、ナハシュが来たことで警戒を強めている。
「弱い奴ほどよく群れるとは、真理のようだな」
集まっている4級呪霊は一斉にナハシュに襲い掛かってきた。
「とはいえ・・・面倒だな」
ナハシュは物動じせず剣を抜き、襲ってくる呪霊を1体ずつ冷静に斬り祓っていく。
「これだけいては、どの個体が『本命』かわからん」
このチキチキ猛攻呪霊叩きは呪霊を祓った数によって討伐ポイントが加算されるわけなのだが、そこには落とし穴も存在している。それを理解しているナハシュは少し愚痴をこぼした。
●
同時刻、右方角に進んだコルネリアは寺の中に入り、呪霊を探している。呪霊刈りの範囲は京都校の校舎以外の全域。で、あるならば建物の中にだって呪霊は潜んでいるのだ。
ギ・・・ギィ・・・
「!」
歩いていると背後で廊下が軋む音が聞こえてきて、コルネリアは背後を振り向く。しかし、そこには誰もいない。されど、彼女はわかっているのだ。すぐ近くに呪霊がいると。
【いないない・・・ばぁああああああ】
振り向いた直後、廊下と一体化している呪霊がまたコルネリアの背後に回り込み、姿を現し襲い掛かろうとする。
ガシャンッ!
「はああ!!」
コルネリアは慌てることなく即座に手甲を装備し、呪霊が攻撃を仕掛けるより早く拳を叩き込んで呪霊を貫いた。1体は祓ったが、廊下と一体化している呪霊は他にもいる。
「競技だから当然だとはいえ、さすがに数が多いわね・・・それなら!」
策を思いついたコルネリアは走り出し、呪霊の攻撃を掻い潜って天井まで跳躍する。そして、彼女は天井に向けて、手甲を付けた拳を叩き込む。
「粉砕王!!」
ドォン!ゴオオン!!ガラガラガラ!!
拳が叩き込まれたことによって天井は呪力を帯びてバラバラに砕け散り、それが降り注ぐことで呪霊を一網打尽にする。
手甲の呪具、粉砕王。装着者に常人を遥かに凌ぐ怪力を宿す呪具。ただし、使い方を間違えてしまうと自分にダメージが入ってしまうため、取り扱いには注意が必要となる。
「ふぅ・・・さすがに無茶だったかしら・・・」
降り注ぐ瓦礫を何とか巻き込まれずに済んだコルネリアはこんな悪手を今後使わない事態にならないことを祈った。
●
一方の森の中。傑は目の前の呪霊を自身の呪霊で祓い終える。
「いったいどれくらい祓われたんだろうね?使い捨て用だからいいけど、やっぱり視覚共有がないのは痛いね」
そう嘆く傑は京都校全域に呪霊を蔓延らせておいたのだが、操る呪霊との視覚を共有できない状況に少し不憫に感じている。
放たれた呪霊の腹の中には呪符が存在しており、呪霊討伐と同時に対となっている呪符が消滅する。その消滅反応によって出た炎の色の数によって勝敗が決まるのだ。当然ながら傑が召喚した呪霊には呪符が存在しないため、これを祓ったとしても討伐ポイントが加算されない。これを対象の呪霊と混ぜることによって正確なポイントの語弊を意図的に生じさせることが可能なのだ。そして呪符が腹の中にある以上、どれが討伐対象の呪霊かは、東京陣営側にしかわからない。
ちなみに、傑が呪霊操術によって呪霊を取り込んでも、呪符は消滅しないため東京校のポイントの加算にはならない。だが逆を言えば、強い呪霊を取り込み、あえて相手にけしかけることで相手側にポイント加算のリスクも込みだが混乱や妨害、うまくいけば相手を脱落に追い込ませることも可能である。これこそがチキチキ猛攻呪霊叩きの落とし穴である。
この競技、東京側・・・というか傑に完全に有利な競技である。ただ先ほど傑が言ったように、呪霊との視覚共有はできないため、新たな呪霊を投入するタイミングは非常に重要なのだ。
「競技開始から3分か・・・そろそろ3級が投入されそうだけど・・・そっちの方はどうだい?」
3級呪霊の投入時間を予想する傑は電話で
●
崖エリア。
「今のところはまだ邪魔も入らず、スムーズにポイントを稼いでいる。ただ、やはり京都陣営と比べれば、稼ぎは著しく悪いと思う」
『だろうね。でも今は辛抱する時だ。この作戦は2級が入ってからが勝負の分かれ目だからね。なに、心配はいらないさ。きっとうまくいくはずだ』
「そうだといいが」
『さて、こちらもそろそろ3級を投入するとしよう。じゃ、お互い頑張ろう』
「ああ。健闘を祈る」
傑との通話を切り、改めて競技に集中する
「
「ああ。見てたぞ」
「それにしても、競技のためにこれほどの呪霊をよく飼い慣らしたものです」
「噂じゃ呪霊を飼う呪具を使って調教してるって話だよ。本当かどうかは知らないけど」
「いずれにしても、呪霊は本来害のある存在だ。それを操れるなら、こんなことに使うより傑みたいにもっと有効に使えばいいと思うのだがな」
競技のためとはいえ、悪意の塊である呪霊を術式ならともかく、人が飼い慣らすということにあまり肯定的ではない
「と、話してる場合じゃないな。競技に戻ろう」
時間は有用、話している間にも差をつけられてはならないと考え、
「あ!また呪霊発見!すぐに祓ってきますね!」
灰原は呪霊を見つけるや否や呪霊に向かって突っ込んでいく。だが
(妙だな・・・あの呪霊・・・突っ込んできたというよりかは、何かに追い込まれているような・・・)
少し思案顔になると、
「灰原!!迂闊に近づくな!!これは罠だ!!」
パァン!!
「「!!」」
しかし遅かった。灰原が剣を振り下ろそうとした瞬間、森から弾丸が放たれ、彼の頭に直撃し、そのまま倒れる。
「「灰原!!」」
「遠距離射撃・・・
「有効射程ギリギリ・・・よかったぁ・・・当たったぁ・・・」
『安心するのは早いよ。
射撃が当たり、1人をリタイアさせてホッとする
『他の1年も実力は未知数だからね。予定通りそのまま威嚇射撃を続けて。後は僕が何とか戦力を分断してみる』
「う、うん、わかった」
グリーンとの通話を終えた
「お姉ちゃん!待ってて、今加勢に・・・」
「!
ドンッ!シュルルル!
「七海!!」
「!グリーンもいるのか!」
「くっ・・・!」
七海は足と鞭が巻かれた腕に力を込め、逆に引っ張り上げようと試みる。しかし、抵抗虚しく彼は力負けして森の中へと引きずり込まれた。
「ぐあ・・・!」
「七海!」
「待ってて!今私が・・・」
バァン!
(人⁉もしかして、あれがお父さんが言ってた死骸操術⁉そんな惨い術式を・・・こんなかわいい子が使うなんて・・・)
(!!い、いけない!競技に集中しなくちゃ!)
それに気づいた
ギュイン!ズン!
「あ・・・!」
「!!しまった!
2人を通り過ぎていった弾丸が突如不自然に軌道が曲がり、そのまま
銃型の呪具、プロメテウス。撃ち放った弾を曲射したり撥ねさせたり様々な撃ち方が可能だが、連続で使用すると精度が落ちてしまうので、使うタイミングが重要となってくる。ゆえに、プロメテウスとは別の銃の呪具を組み合わせることで十分なプレッシャーを与えさせることができる。
「よし!もう1発!」
「や・・・やば・・・」
(う~ん、惜しい。やっぱり
「大丈夫か、
「大丈夫・・・とは言い難いかも。弾はゴムだけど麻酔が入ってた。しかもかなり強烈な奴。油断してると眠っちゃいそう・・・」
「灰原が倒れたのはそれか」
どうやら弾丸(ゴム)には強力な麻酔薬が投入されており、灰原はこれで寝てしまったのだと
「ごめんね、お姉ちゃん・・・せっかく交流会に誘ってくれたのに・・・」
「そんなこと言うな。
「本当?」
「ああ。だから今は自身の回復に集中してくれ。七海の援護と
「あ、待ってお姉ちゃん。だったら、せめてこれを」
「人には使えないけど、呪霊刈りだけになら十分に使えるはずだよ」
「・・・ああ。ありがとう、
妹から刀を預かった
撫で終えた
「くっ・・・!」
態勢が崩れた
(落ち着いて・・・お父さんが言ってた・・・。こういう時は目で追っちゃいけない・・・僅かな音や、呪力の方を追うべきだと)
ガサササッ!バッ!
葉の激しい音と共に
(リボルバーは6発撃ったな?これ以上の装填はさせない!)
(さすがに精度は落ちてるけど・・・当てるだけなら!)
バァン!
自分に近づいてくる
バシィ!!シュウウウゥゥ・・・
だが直撃手前で
「嘘ぉ!!?」
「くっ・・・素手で受け取るものじゃない・・・な!」
「まだ、続けるか?」
「ま・・・参りました~・・・」
勝ち目がないと判断した
東京・京都姉妹交流会 団体戦
灰原雄
ーリタイア
六道
●
一方、森から放たれた鞭に腕を巻きつかれた七海は引っ張られ、森のさらに奥へと引きずり込まれている。
「この速さ・・・明らかに人の力によるものではない・・・うぉ!」
引きずられながらも冷静に分析する七海は突然宙に浮く。慌てずに上を見てみると、木の枝には腕の鞭と同じものが引っ掛けられていた。さらにその先には、枝に向かって攻撃を仕掛けようとする鳥型呪霊の姿があった。
(地形を利用したトリック・・・ならば!)
トリックを理解した七海は流れをあえて身に任せながら拳に呪力を込め、鞭が巻きつかれている枝に向かって拳を叩き込み、枝をへし折り飛ばした。呪力が纏った枝は迫る鳥呪霊を貫くだけでなく、他の枝に巻き付いていた枝を次々折った。だが鞭の支えがなくなり、七海は地に落ちる。
「ぬん!!」
七海は特に慌てることなく、鞭が巻きついた腕ごと拳を地面にめり込むように叩きつけて土埃を上げた。土埃が晴れると、七海は拳を地面から抜くことで利用して巻きついた鞭を外した。
「・・・ずっと見ていたのでしょう?いい加減出てきてはどうですか?」
七海は手を開いたり握ったりしながらそう発言する。対し、鞭を放った張本人、グリーンは鞭を操作して先端を地面から引っこ抜いて姿を現す。
「思ったよりやるね。地形を利用して窮地を脱するなんて」
「私は戦う気がないので、見逃してくれると助かるのですが」
「それを許すと思うかい?」
「まぁそうでしょうね」
グリーンがみすみす自分を逃がす気がないのはわかりきっていた七海は腰の鉈を手に取り、どうやって
(術式は使えないようだが、相手は皇拳寺の選抜メンバー。交流会で準1級が使われてる時点で、全員が1級と渡り合える実力者。一筋縄ではいかない。加えて相手は中距離タイプ。絶対に近接戦闘を避けるようにするはずだ。だがそこを突けば
「何かいろいろ考えてるようだけど、僕は正々堂々とやり合う気はないよ。利用できるものは何だって利用する。例えば・・・こんな風にね!」
七海の考えを見透かしたグリーンはたまたま空を飛んでいた3級の鳥呪霊に目をつけ、鞭を放って足に巻き付けて捕まえる。
「!」
「はあ!」
グリーンは捕まえた鳥呪霊を七海に向けて放った。予想だにしなかった攻撃に七海はギリギリで鳥呪霊を躱し、グリーンに接近しようとする。グリーンは七海を近づけさせまいと鞭を振るう。
「ふん!!」
七海は構わずそのまま接近し、鞭・・・ではなく地面の線分を7対3に測り、鉈を振るって地盤を叩き割って土埃を発した。
「そう来ると思ったよ」
しかしグリーンが放った鞭の軌道はジグザグに変化し、地盤を避けて土埃から飛び出し、七海を掴まえた。
「くっ!」
「初めから
捕まった七海はグリーンが振るった鞭の軌道によって釣りあげられ、巨木に叩きつけられる。
「ぐはっ!」
さらにグリーンはそこから鞭を振るい、七海に連撃の嵐を叩きつけた。七海は耐えて鞭の軌道を読もうとするが、変則自在なため見切ることができないでいる。
(変則的な動きで・・・攻撃が見切れない・・・!)
鞭型の呪具、サイドワインダー。持ち主の意のままに操作ができる。しかし癖が強すぎて操作性に難があるため、相応な熟練度がないとうまく操作できないのが欠点。
「悪いね、優しくできなくて。でもこれも勝負だから」
(これが・・・皇拳寺の選抜メンバーの実力・・・!このような相手が後5人もいるのか・・・!今の私たちでは・・・まだ・・・!)
実力面も頭の切れもグリーンの方が上手で勝つ見込みがないと判断した七海はふっと目を閉じ、ギブアップしようと考えた。すると・・・
ボコッ・・・ドォォン!!
「うわっ!!?」
「なっ・・・」
突然として2人がいる一定範囲の地面が何の変哲もなく凹み、勢いよく盛り上がって2人は跳ね上がる。
(地面が・・・盛り上がった⁉)
(こんな芸当・・・まさか・・・!)
グリーンは宙が浮かび上がる中で奥の木々の中を確認する。そこにはゴリラとは似ても似つかないような呪霊が地面に向かってツッパリを放っている姿があった。ゴリラ呪霊の突っ張りは大地を揺らし、さらに地面を盛り上げた。
「準1級呪霊!!?もう投入されたのか!!?予定より速すぎる!!」
予定より速い準1級呪霊の登場にグリーンは驚愕する。準1級呪霊の乱入により、七海の窮地は脱したが、危機は依然変わっていない。なぜなら呪霊は東京校・京都校に無差別で攻撃を仕掛けてくる。調教されているため殺すことはまずないが、負傷状態で襲われでもしたらリタイアはまず免れない。ゴリラ呪霊は木を持ち上げて地面を抉り取り、それを盛り上がった大地に向けて投げ放った。その上には宙に浮かぶグリーンと七海が。
(先ほどの攻撃で身体が動かない・・・。これはもう・・・詰みか・・・)
空中では避けることもできないし、受け止めようにも対象が巨大でどうにもならない。七海はもう流れに身をゆだねようとする。すると・・・
バッ!スパァ!!
「
「無事か、七海?」
「ええ・・・おかげさまで」
七海はまだリタイアしてないと確認すると、
(準1級がもう投入されたということは・・・悟の方は決着がついたのか。さすがだな。予想よりかなり速い)
準1級の登場で
「葬る」
ザンッ!!!
「ふぅ・・・傑に怒られるかな。いや、意外とよくやったと褒めるか・・・?」
(準1級呪霊が・・・たった一撃をくらっただけで・・・⁉あれが
準1級は自分や灰原、
『簡単なことだ。交流会向けの術式じゃないからだ』
(呪霊を簡単に祓えるあの術式がもし人に使われていたとなると・・・。あの言葉はこういうことだったのか・・・)
交流会開始前に言っていた言葉の意味が理解し、納得する七海に
「よく持ちこたえてくれたな、七海」
「いえ・・・ただ運がよかっただけです・・・」
「立てるか?手を貸そう」
「お気遣いなく。それよりも・・・あの人は?」
辺りを見回してみると、七海と一緒にいたはずのグリーンの姿は消えていた。
「混乱に乗じて逃げたみたいだな」
「すみません・・・実力不足なばかりに・・・」
「気にするな。最初は誰もがそうだ。例外はいるが、私だってそうだった。だが、それを力を合わせて補うのが、仲間だろう?」
「・・・そうですね」
七海は
「それに、傑がすでに手を打ってある」
「!」
彼女は顔を上にあげて空を見上げる。七海もそれに合わせて見上げて見る。空には先ほどまでいなかった巨大魚の呪霊が京都校の敷地内を飛び回っており、口を大きく開けて傑が取り込んだ数多くの呪霊たちを放っている。召喚主である傑もマンタ型の呪霊に乗って3級以下の呪霊を放ちながら飛び回っているのだった。
●
一方、
(さて・・・ここからどうするべきか・・・
呪霊討伐ポイントが勝利条件である以上、傑はすぐには大物呪霊を放って(最初のけしかけは別)自由に暴れさせたりはしない。ある程度時間をおいて、最高ポイントを有している準1級が登場したタイミングで強い呪霊を放ち、ポイント稼ぎや妨害工作のレベルを最大にまで引き上げるはずだ。狙いは当然、準1級。準1級の討伐ポイントを積み重なってしまえば、自分たちに勝ち目はない。
(かと言って、夏油もそう簡単にやられてくれるような相手じゃないからなぁ・・・。それに、あいつのことだ。妨害で済ませることはしないかもしれない・・・)
グリーンが必死に状況の打開を考えていると、準2級の呪霊が傑の呪霊を避けながら移動している姿を目撃する。
「今はとにかく、呪霊刈りに専念しないと!」
グリーンが標的を呪霊に変え、サイドワインダーを振るおうとした時、辺り一帯がまるで凍り付いたかのように空気が一変した。彼の背後には人型の呪霊が立っており、呪霊はこう質問する。
【ねぇ・・・わた・・・私・・・きれい・・・?】
(く・・・口裂け女・・・!!)
仮想怨霊、口裂け女の登場にグリーンは顔を青ざめ、強い焦りを生じた。
(間違いない・・・夏油は今・・・本気で僕たちを潰しにかかっている!!)
●
一方その頃、順調に呪霊を刈ってポイントを稼いでいたポニィの元にも傑の呪霊の妨害に合い、ヨクトボトムスの能力を使って懸命に逃げている最中であった。
「はぁ・・・はぁ・・・もう、本当にしつこいわね!」
彼女を追っている呪霊とは、最初に傑が召喚した龍の呪霊、虹龍であった。虹龍は木々を薙ぎ倒しながらポニィに迫る。
「この・・・!いい加減・・・こっち来んな!!」
逃げても埒が明かないと判断したポニィは振り返って迫る虹龍と対面する。虹龍が大きな口を開けた瞬間にポニィは高く跳躍し、虹龍の目に向かって飛び蹴りを放った。飛び蹴りによって目に強い痛みが走った虹龍は顔を仰け反った。ポニィはそれを突くように虹龍の顔に強烈な蹴りを放った。
(固・・・!!)
だが虹龍は傑が持っている呪霊の中でも1番の硬度を持つ。ちょっとやそっとでは倒すことは叶わない。
「ちょ・・・待って待って!!こんなの聞いてな・・・きゃあああ!!」
怒りを示す虹龍は暴れるように身体を動かしながら辺り一帯を薙ぎ倒していく。ポニィはその暴れっぷりに成す術なく、逃げるので手一杯だった。
●
一方別のエリア内で呪霊刈りをしていたコルネリアも傑の呪霊たちによる妨害を受けていた。彼女は降下してくる呪霊を持ち前の格闘術で次々といなしていく。中には標的の呪霊や2級呪霊もいたが、粉砕王の能力のおかげで今のところは問題はない。
「段々呪霊の動きが苛烈になってきたわね・・・。それだけ夏油も本気になったってわけね・・・」
悠長に構えてる場合ではないと判断したコルネリアは急ぎ次のエリアへ移動しようとする。しかしその最中、上からイカ型呪霊が弾丸のように降ってきた。コルネリアはそれに勘づき、咄嗟に躱した。
「これは・・・夏油ね!」
上を見てみると、彼女の予想通り傑がイカ型呪霊を弾丸のように撃ちながら周囲を飛び回っている。
(空を飛んでいる以上、無理に接近戦は持ち込めない・・・返り討ちにあうもの。それなら!)
コルネリアは近くにある木を粉砕王で軽く持ち上げ、振り回すことでイカ呪霊をはね除ける。
「へぇ、やるね」
傑が感心していると、コルネリアが振り回した木を投げ放ってきた。傑は降下して木を躱し、マンタ呪霊から飛び降りる。そこを狙ってコルネリアは粉砕王を外し、挌闘戦に持ち込もうとする。
(粉砕王を使えば、夏油を・・・ううん、人を殺しかねない。なら呪具なしで攻めていくしかない!)
傑が放つ小型呪霊を躱し、懐に入ったコルネリアは拳を彼に叩き込む。傑は構えをとって防御し、同じく格闘戦で応戦する。お互い格闘戦を得意としており、勝負は近郊している。いや、傑は呪霊操術を好きなタイミングで使えるため、彼の方が一歩上ともいえる。
「お疲れでしょう?無理せず休まれてはどうです?」
「そうね・・・あなたが敵でなければの話だけどね!」
コルネリアが放つ蹴りを傑も蹴り返して相殺しする。さらに傑は距離をとるタイミングで呪霊を放ち、自身の戦況を有利に進める。
(今の私じゃ夏油を抑えるので精一杯・・・他の皆は大丈夫かしら?)
傑に一歩及ばないとわかっているコルネリアは他の仲間を信じて、彼の足止めに集中するのであった。
●
同刻、1人で1番多く呪霊を刈っていたナハシュは今、最大の危機に陥っている。それは自他共に最強と吟われる呪術師である悟と出くわし、逃げに徹していることだ。
「ぐぅ・・・!」
「逃げんなよ。俺が悪いことしてるみたいじゃんか~」
心にも思ってないことを言う悟だが、逃げてばかりもいられ野も事実だ。出くわしてしまった以上は戦わないといけない。そうしなければ、仲間が足止めをしていた
(くっ・・・自惚れていた・・・!俺の責任だ・・・!俺も残って足止めに徹していれば・・・!全て俺の驕りだ・・・五条は・・・以前よりもさらに強くなっている!!)
自身の采配を見誤ってしまい、ナハシュは心の中で自責の念を抱いていた。
●
ちなみに短い時間しか足止めできなかった
「ち・・・チクショ~・・・五条の野郎!!覚えてやがれ!!つーか抜け出せねぇ!!!」
二度と地面に潜り込めないように大樹に抜け出せないほどに強くめり込んでいたのだった。
東京・京都姉妹交流会 団体戦
六道
●
(だが、ただではやられん!せめて、奴に一撃だけでも当てる!!)
ナハシュは戦うに十分な広間までやってきて、逃げることをやめて剣の呪具を抜く。そして、追いかけてくる悟が草むらから出てきたところに突きを繰り出す姿勢をとる。
グイッ!
「何ッ⁉」
しかしナハシュは悟の無下限呪術によって引っ張られ、彼の懐まで引き寄せられてしまう。
「俺からのプレゼントだよ。受け取れ・・・よ!!」
ドゴォ!
ナハシュを近くまで引き寄せた悟は目の止まらぬ素早くも強烈な拳を彼の腹部に叩き込んだ。
(は、速い・・・!速すぎて何をされたのか理解できなかった・・・!ただ呪力で強化した拳ではないことは確かだ!)
「まだまだ!こんなもんじゃねぇぞ!」
さらに悟は強烈な連撃を繰り出し、ナハシュに確実にダメージを与えていく。いったん距離を取るものの、悟はそれを許さないかのように再びナハシュを引き寄せ、地面に叩きつけて押しずらしていく。
「この・・・舐めるな!!」
ナハシュは悟に蹴りを入れて距離を取り、剣の呪具を振ろうとするが、既に悟の姿は彼の背後に立っていた。そして・・・
ドオオオン!!!!バッシャアアアアアアン!!!!
強烈な蹴りを叩き込まれ、湖に叩きつけられる。悟は追撃しようと思い、湖近づき、そっと水面に立つ。すると、ナハシュの呪力の流れが変わったことに気がつく。
(!呪力が大幅に膨れ上がった。なるほど・・・ただでは転ばないってわけね)
バシャアアアアン!!
水飛沫を上げながら、ナハシュは湖から這い上がる。しかしその姿は少し変わっていた。彼の髪が長く伸び、剣に帯びている呪力が彼の身体中を駆け巡っている。
剣の呪具、水龍の剣。肉体強化の術式が施されたこの水龍の剣の能力を使うと、3分間だけ強くなるが、使用後は急激な疲労状態になる使用後の反動が強い呪具。
(勝負は3分・・・この3分でどこまで食らいつけるか・・・!)
「ま、どんなことしたって、結果は同じだけど」
悟はナハシュに向けて術式による衝撃波を放った。しかし、ナハシュは悟の予想を超えた素早さで躱し、湖から脱出する。
(!速い!いつの間に背後に⁉)
ナハシュの気配を背後から感じた悟は振り返るが、その瞬間に彼は素早く動き、視界から外れてしまう。目で追えない動きを繰り出し続けながら悟に近づき、彼が無下限を張る前に水龍の剣を振るおうとする。だが悟は彼の呪力を頼りにして動きを感知し、術式によって彼を吹き飛ばした。
「当てられるとでも思ったか?残念、当たんねーよ」
煽り言葉を放つ悟だが、既にナハシュの姿はなく、また素早く動いて悟の視界を惑わせている。
(ちっ、あの呪具、強化系の術式が刻まれてるな。けどそれ使っただけでここまで変わるか普通?でも捉えきれねぇわけじゃねぇ。そのうえ3分たてば弱まる。それまで待てばいいさ)
呪力を辿りながら考えている悟の背後にナハシュは回り込み、水龍の剣を振るう。悟はそれに気づき、咄嗟に無下限の守りを張り、術式の衝撃波を放つが、避けられてしまう。
「ちっ!にしても、速ぇなぁ、おい!」
「高飛車でいられるのも今の内だ、雑魚!」
「ああ?」
自分より実力が下の相手に雑魚と言われるのが我慢ならない悟は触発し、3分待たずして決着をつけようとする。
「雑魚が調子乗ってんじゃねぇよ」
(!来る!)
悟が両手を翳すと呪力が大きく膨れ上がった。それを察したナハシュは咄嗟に距離を取る。掌の空気が青く染まって悟の身の回りのものを吸い込み始める。
「出力最大・・・術式順転―――"蒼"!」
悟が放った青の空気は周りのものを吸い込みながらナハシュに迫ろうとしている。
(くっ・・・ここで倒れるものか・・・!)
蒼の引力に引き込まれそうになるが、彼は速度を上げて全力で抗う。蒼は効力が弱まり、吸い込んだものを落としながら徐々に消えていく。だが、蒼に気を取られすぎたせいか、悟の先回りを許してしまい、彼が放つ拳を直に顔に叩き込まれた。
「ごぁ・・・!」
ガシッ!
さらに悟はもう逃げられないように彼の手首を強く掴みとり、ガッチリとその場で固定させた。
「なっ・・・!」
ズンッ!!
そして渾身の一撃を叩き込ませ、ナハシュを木に叩きつけた。
(ここまでやってなお・・・届かないのか・・・!)
負ったダメージが大きすぎてナハシュは意識を手放し、その場に倒れて気絶した。
「雑魚が調子乗ってんじゃねーよ」
ブオオオオオオ!!
悟が悪態をつくと同時に、競技終了の合図が京都校全体に鳴り響いた。
『そこまで!!放った呪霊が全て祓われたため競技終了だ!ただいまより集計を行う!各自治療を受け、しばし待つのだ!』
かくして交流会1日目、団体戦チキチキ猛攻呪霊叩きが終了した。
姉妹交流会
1日目 団体戦チキチキ猛攻呪霊叩き
東京校1505P 京都校973P
勝者 東京校
これで東京校が1歩リード。勝敗は2日目の個人戦によって決まる。だがその個人戦が執り行われることは・・・なかった。
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記録
2006年 8月
京都市に5つの帳が降ろされる。
事件発生直後、東京校1、2年、京都校2、3年が派遣され
内1名 死亡
遅くなって申し訳ありません。
この話が1番の鬼門で若干スランプになっていました。
ひとまず途中から渋谷事変の下書きを1話書いてモチベを持ち直してようやく今日完成しましたが、低クオリティになってしまったかもしれません。