高専京都校から離れた神社、交流会1日目、団体戦後、硝子の治療を終えたコルネリア(私服)は1人でお参りに来て、手を合わせている。
(団体戦で負けた以上、巻き返すためには個人戦で勝ち星を上回るしかない。でも、チーフも
悟の強さは化け物じみている。そんな相手から勝ち星を挙げられるか彼女は不安がっている。今日だって、傑に1本を取ることができなかったのだから余計にだ。
(・・・ううん!弱気になっちゃダメ!必ず五条と当たるとは限らない!しっかりしなくちゃ!)
個人戦は競技内容、及び対戦相手はクジの抽選によって決まる。悟に勝たなければならないというルールは存在しない。最低でも4勝すればいいのだ。コルネリアは頬を叩いて気持ちを切り替える。
(・・・水浴びでもしようかな)
少しでも気持ちを落ち着かせるために近くの湖で水浴びをしようと考えたコルネリアはお祈りを済ませ、そこへ足を運んだ。少し歩いて湖まで辿り着いた時、そこにはすでに先客がいた。湖にいた先客は水面をプカーッと浮いていた。それこそ、遠くから見れば死体が浮きあがってるかのように。
「!!?し、死んでる!!?」
先客の様子を見て死んだのかと思ったコルネリアは容態を確認しようと急ぎ、湖の中に入り、先客の元へ駆けよる。
「あの!!大丈夫ですかー!!?」
「ん・・・?」
先客の女性はコルネリアの声で何事かと思い、ケロッとした様子で起き上がり、思い違いをした彼女は思わずずっこけ、湖にダイブしてしまう。
これがコルネリアとタエコの出会いであった。
●
その後、コルネリアと着替え終えたタエコは焚火を焚き、ホットミルクで身体を温めている。
「いやぁ・・・なんだか早とちりしちゃった。ごめんね?」
「・・・こちらも紛らわしかった。すまない。てっきり誰も来ないものかと・・・」
「わかるわかる。私もちょっと泳ごうとしてたし」
コルネリアとタエコはお互いに勘違いの謝罪をしている。
「私はタエコ。祖母と各地を旅して見識を広げている」
「私はコルネリア。ここの神社でお参りしてたの。大会に勝てますようにって」
「大会に出場してるのか?すごいな」
「はは、といっても学校行事のだけどね」
お互いに自己紹介をしつつ、会話で盛り上がり、華を咲かせている。
「それにしてもこのホットミルクはおいしいな。ホッとする味だ」
「クスッ」
「?どうかしたか?」
「タエコさんが他校の友達に似ててつい・・・」
●
「・・・クシュンッ」
「ん?風邪か?」
「いや、誰か噂した気が・・・」
「夏油さん頑張ってください!」
「五条悟!嵌め技いけー!」
「ほらほらー、抜け出せるもんなら抜けてみろー」
「くっ、さっきから卑劣なコンボを・・・!」
●
「・・・友達・・・か。いいな。ワイワイ楽しそうで」
「?」
コルネリアが友達の話をしていた時、タエコは少しもの寂しげな顔をしている。
「私にはほとんどいないんだ、友達。祖母はよくしてくれるが・・・」
タエコの話を聞いて心情を察したコルネリアは優しい笑みを浮かべて彼女に質問する。
「・・・タエコさんはしばらく京都にいるの?」
「祖母次第だがそのつもりだ」
「じゃあ、私でよければまた話し相手になってよ。私、京都に住んでるからさ」
コルネリアはそう提案しながらカップを差し出す。思ってもみなかった言葉にタエコは多少なりとも驚き、その後笑みを浮かべて乾杯に応じる。
「よろしく」
「ありがとう」
2人はこの出会いを祝して乾杯。他愛ない話で盛り上がり、2人は友達となった。・・・お互い、呪術師と暗殺者という素性を知らぬままに。
●
一方その頃、悟たちはせっかく来た京都ということもあり、街を観光していた。現在はバーガーショップで注文したハンバーガーを食しているのだが・・・
「うまっ!美味!」
「
「同じクズならより勝てる方を選んだだけだよ」
「言われてんぞー、傑―」
「・・・お前もだろうが」
「なんか裏切られた気分だ・・・」
「ほら1年、ちょっと弱くなってんぞー?」
「「・・・・・・」」
硝子は灰原と七海に肩を揉んでもらいご満悦、悟と
そんなごく普通な高校生のやり取りをババラは一般人を装いながらもカウンター席で見張っていた。
(なんて緊張感のない奴らだ。狙われてるって自覚があるのかい?・・・と言いたいところだが、少なくともあの3人はこっちに気がついているだろうね・・・)
見るからに警戒心がないように見えるがそんなことはない。実際悟たち最強3人はババラの見張りに気がついている。ただ街で大きな騒ぎを起こしたくないだけだ。
(特に五条悟・・・あいつの存在感は半端ない。同業の『粟坂』や『オガミ』が大人しくなったのも無理もない)
若い頃に睨みあいをしていた同業者たちが急に大人しくなったことを思い出し、いざ悟を見てみるとそれに納得するババラ。
(今はとにかく、タエコと偵察の者を待つしかないねぇ。でなければ何も始まらん)
ババラは注文したハンバーガーを店員から受け取った後、悟たちよりも早く店から退店する。
「うぷっ・・・もう無理・・・
「だから大丈夫かって聞いたのに・・・」
「やった、得した気分」
「いいなー」
「まだ入んの?姉妹揃ってバケモンかよ」
「私にも失礼だぞ硝子」
●
頃合いの時間になった頃、コルネリアはタエコを見送るのために下山し、京都の街まで来ている。
「送ってくれてありがとう。ここまででいい」
「そう?じゃあまた明日ね」
「うん。また明日」
明日また会う約束を交わしタエコは宿泊先の宿へと向かう。見送りを終えたコルネリアは自分も高専へ戻ろうと道を引き返す。その道中で不自然にきょろきょろしている
「
「うおっ⁉な、なんだコルネリアか・・・驚かせんなよ」
「はぁー・・・どうせ遊郭でしょ?また延長料踏み倒したの?さすがに庇いきれないわよ?庇う気もないけど」
「いやいや違うって!博打でちょーっと敗けただけで・・・」
「そういう言い訳はいいから」
図星を突かれた
「3年にもなって恥ずかしい・・・ちょっとは自分を変えようっていう努力はしないの?」
「だったら俺の彼女になってくれよ。そうしたら考えるからよー」
「またその話・・・何度も言ってるでしょ?お断りよお断り」
彼女になってほしいという
「・・・コルネリアは昔からみんなにコル姉って言われて甘えられてるけど・・・」
「いきなり何よ?」
「実は甘えたいんじゃないか?俺にはわかるぜ」
(うっ・・・そういうところは確かにあるけど・・・)
得意げに笑って図星を指す
「そこでこの俺!!包容力の塊の出番というわけだ!!」
「はいはい、毎回毎回飽きないわね」
「!じゃあ明日の個人戦で五条に勝ったら本気で考えてくれるか?」
「え?」
付き合う条件として悟に勝つという無理な提案をしてきた
「五条に勝つって・・・もしかして団体戦のこと気にしてるの?」
「当たり前だ!あんな屈辱的な埋められ方されて黙ってるなんざ漢が廃る!あの最強にさえ勝てば気分がいいし、お前と付き合えて、ついでに俺の名も広まる!まさに一石三鳥だぜ!」
「付き合うなんて一言も言ってないけど・・・」
「まあ明日を楽しみにしとけって。まだワンチャンあいつに勝てるからよ」
「その自信はいったいどこから来るんだか・・・」
無謀もいいところだが、
「ふぅ・・・そういうセリフは本当に勝ってから言ってよね」
「おうよ。明日はきっと伝説になると・・・」
「!!」
2人が話し込んでいると、何者かの気配を感じ取り、そちらに顔を振り向いた。そこには舌を出してこちらを見ている普通の犬がいた。
「はっはっはっ」
「・・・なんだ野良犬か」
「んだよビビらせやがって・・・」
視線の正体が犬だとわかった途端に警戒心を解いた。
●
同時刻、京都の街にある宿屋の一室。そこでは犬のように四つん這いになり、部屋中をうろうろしている男がいる。この一室には部屋を取ったタエコとババラが戻ってきており、2人はその様子を見ていた。しばらくその様子を見ていると、途端に男は立ち止まり、すっと立ち上がった。
「何かわかったかい?」
「有益な情報かどうかはわかりませんがね・・・」
男は自身の術式で得た情報を2人に共有する。その情報を聞いたタエコは少なからずショックを受けている。
「そんな・・・コルネリアが・・・」
「確定ですよ。五条に勝つとかどうとかほざいてましたし。間違いなくあいつらは高専の京都校の奴らですよ」
男の術式は自分と犬や猫、鳥とかの動物の魂を入れ替えるというもの。つまり男は野良犬の魂と入れ替えてコルネリアに近づき、情報を集めていたのだ。
「・・・他に何か言ってたかい?」
「特には。ただ、個人戦がどうとかって話がありまして、多分何かの学校行事で呪力を消費してると思います」
男の話を聞いてタエコはコルネリアの話を思い出す。彼女は言った。大会に勝てるようにお祈りをしてると。そしてその大会が今報告に上がっているものであると理解した。
「けど気ぃつけてください。残穢を残さず尾行すんのに神経使いましたからね。あいつら、強いです」
「よくやった。後はワシらに任せな」
ババラは食べていたハンバーガーの包みをクシャッと丸めたる。
「聞いたね、タエコ。若いのが掴んだこのチャンスを無駄にせず、叩くよ。今の戦力を分散して帳で誘き寄せる。ワシが標的を捌くから、あんたらは邪魔になる術師を始末しな」
作戦が始まればコルネリアと戦うかもしれない。せっかくできた友達に手を掛けることなどしたくはない。しかし・・・
「・・・了解した」
彼女とて殺し屋の1人。仕事に情を持ち込むことなど、一切しない。
●
夕方の京都の高専。交流会の間はある程度のスケジュールが決まっている。その1つが入浴時間。現在の時刻だと、女子の入浴の時間だ。なので現在女子たちは団体戦、及び自由時間での疲れを癒すために学生寮の浴場の湯船に浸かっている真っ最中だ。
「ふぅ~・・・気持ち~・・・」
「うちの風呂とは全然違うんだな」
「そりゃそうよ~。何せうちのは天然温泉だもの~」
「ほぉ~?そりゃ肩こりによさそうだな、
「べ、別に私は肩はこってないないよ硝子ちゃん」
女子は湯船に浸かって気持ちよさそうにのんびりとリラックスしている。
「それより、明日の個人戦ではどんな競技が出るんだろうな?勝てる競技だといいが・・・」
「特級呪術師が何言っちゃってんのさ?」
「そうだよ!お姉ちゃんが負けるところなんて考えられないよ!」
明日の個人戦で不安を口にしている
「そういえば
「ああ。苦手の克服こそが教育をモットーにしている。ある意味夜蛾先生の気付きを与える教育にかなり近い。くじ次第によっては、私や傑が苦手な競技が出るかもしれない」
「だとしてもでしょ。そっちには五条がいるんだし」
悟がいるから東京校の1勝は確実と考えているポニィに
「・・・ここだけの話だがな、実は悟は1人の時が1番全力を出せるタイプなんだ」
「「?」」
何の話かよくわかっていないポニィと
「もしかして、集団系や護衛系の競技は苦手なの?」
「さすがコル姉だ。実際に今日の団体戦、あいつ1人で行動していただろう?」
「言われてみればそうね・・・。じゃあもしその競技が出れば・・・」
「私たちにも勝つ見込みがワンチャンあるってことね!もし私たちが勝ったら五条を雑魚呼ばわりしちゃおう!」
「それは後が怖すぎるよ・・・」
悟の苦手競技を教えてもらったことにより、ポニィたちは希望が湧いてきて笑みを浮かべている。
「よかったのか?そんなこと教えても?」
「これも交流会の醍醐味だと私は思ってる。それに・・・もし負けても
「お姉ちゃん・・・♡」
「ま、私はどっちみち出ないからなんでもいいけど」
競い相手に自分たちの情報を教えてもよかったのかと疑問を抱く硝子に
「あなたたち、入浴中に申し訳ないんだけど・・・」
「?歌姫先輩?」
「歌姫ちゃん?」
楽しそうに話し込んでいると、浴場に歌姫が入ってきた。ただ、服装や真剣な表情からしても、入浴に来たわけではない。
「緊急事態よ。すぐに出られるようにしてちょうだい」
『!!』
緊急の任務が入った。その知らせを聞いた女子たちは気を引き締めた表情をし、急ぎ湯船から出るのであった。
●
同時刻、学生寮のロビー。女子の入浴上がりを待っている男子たちはここで女子たちが上がるのを待っている。なお
「ったく、女たちの風呂は長いよなぁ。5分で出ろよ」
「いや、45分は必要だ」
「
入浴時間に個人差がある
「別に何分でもよくね?その間スマブラやり放題だし」
「先輩も一緒にやりませんか?」
「てか傑!てめぇさっきから復帰潰してんじゃねーよ!!」
「勝負とは非常だよ、悟」
「これ以上ないくらいエンジョイしてるね君ら」
「・・・すみません。うちの先輩と同期が」
七海を除いた東京校の男子が他校の寮というのに配慮も遠慮もなしにテレビゲームをしていることだ。七海はナハシュと共に持ってきた本で読書をしている。
「なぁ、小便行きたいから縄解いてくれよ」
「解いたらレイア―スーツで覗きに行く気でしょ。
「ちっ、みんなで覗けば怖くねーじゃん」
「私はいかないよ?怒られるなら1人で怒られてくれ。それよりグリーン、君『裸を見せるわけにはいかない』ってところ、やけに感情が籠ってたね?」
「・・・確かにな」
「あ、僕も気になりました!」
「え・・・あ・・・いや!」
傑がグリーンの発言に対して指摘すると全員が彼に注目を集めた。自分のミスに気がついたグリーンは動揺を見せている。明らかに女子メンバーの誰かに好意を寄せている反応だ。
「何眼鏡君、お前好きな女子とかいる感じ?コル姉とか」
「何!!?もしそうなら表に出ろ!!!ボコボコにしてやる!!」
「コル姉は違うって!!適当なこと言うな五条!!」
悟が好意の相手にコルネリアの名を出した途端
「じゃあ
「「「確かに」」」
「いや違う・・・!」
「わかった!家入さんですね!美人だし!」
「「ないないないないない」」
「なぜあなたたちが否定するのですか?」
「いや・・・まぁ、違うんだけどね?」
灰原が硝子の名をあげると、なぜか悟と傑が否定している。どっちにしろ違うようだが。
「もしや・・・
「なっ!!?」
「もしくは、私たちの裸に興味があるとかそんなオチはあるかい?」
「そうなんですか⁉」
「キャー!!エッチー!!」
「ちがーーーーーーーーーーーう!!!!」
とことん悪ふざけをする男子たちにグリーンは思わず絶叫する。その様子に七海は同情する。
「くっ・・・変な誤解されちゃたまらない・・・。仕方ない、白状するよ」
これ以上誤解を生まないためにグリーンは観念して好きな相手の名を告白する。
「・・・東京校の
「え?
「悟。でも意外なチョイスだね」
「顔もマジっぽいしな」
「これは驚いた」
「いやマジでどこがいいわけ?あいつ大食漢よ?」
「それはさすがに失礼だよ」
「でも実際に気になるよな?1年もそうだろ?」
「はい!気になります!」
「私は別に」
「暇つぶしに聞いてやる」
「・・・泣ける話だからハンカチを用意してくれ」
●
あれはそう・・・去年の夏の出来事だ。僕が東京校に足を赴いた時だった。
『家入さん、ちょっと治療を頼めるかい?少ししくじって・・・」
『ん。実験終わらすからテキトーに座ってろ』
その時に偶然私服で寝てる
(な・・・なんだ・・・⁉この沸き上がる変な感覚は⁉わ・・・ワキから目が離せない!!)
そこでワキフェチに目覚めてからというものの、彼女に時々会ってはワキを見ていた。
●
「・・・気がついたら
グリーンは誇らしげな表情をしているが、話を聞いた男子の反応はというと・・・
『・・・・・・』
全員が白けたように冷めた表情をしていた。全肯定の灰原ですらこれである。
「あれっ?何そのリアクション⁉」
「「・・・・・・」」
「ドン引きです」
「引かれた⁉」
「うん。まぁ。好みはそれぞれさ」
「すまん雑魚」
「そしてなぜ突然の謝罪⁉」
「ごめん」
「五条まで⁉」
ドン引きされる理由がわからないグリーンは困惑している。そこへ夜蛾が通りかかった。
「お前たち、そこで何している?」
『いえ別に』
夜蛾の問いかけに男子全員白けたままで答える。
「・・・まぁいい。それより緊急任務だ。すぐに支度しろ」
『!!』
夜蛾から緊急任務を言い渡され、白けた男子はすぐに気を引き締めた顔をし、身支度を整え始めた。
●
2006年8月、京都府の5つの市内に一般人を巻き込んだ5つの帳が降ろされた。この時期は呪術師にとっては繁忙期。ほとんどの術師が任務に追われているため、今派遣できるのは悟たち以外にいなかった。早期解決のために上は5つの班に分けて悟たちを派遣させた。
「これは侵入のみが許される帳です。おそらく、この舞鶴市を中心に張られた帳の中に、帳を降ろした呪詛師がいます」
「中に一般人を閉じ込めておくってことは、犯人は私たちを誘ってるってことだよね?」
「だろうな。この繁忙期の中で今自由に動けるのは、交流会真っ最中の私たちだけだからな」
福知山市
禪院
六道
「皆さんの任務は一般人の保護。帳を降ろした呪詛師を捕縛すること。ただ帳の中では電波も断たれています。中がどうなっているかは私たちにもわかりません。どうかご武運を」
任務の詳細を理解した
「・・・中は何も起こってない・・・みたいだね」
「いやそうでもないようだ。あれを見てくれ」
「あの・・・大丈夫です・・・!」
女性の状態を見た
「・・・っ、ひどい・・・」
あまりの状況に吐き気を催していると、2人は殺気に気がつき、それぞれ構える。辺りを見回してみると、数多くの一般人が虚ろな目をしてこちらに近づき、ナイフなどの刃物をちらつかせている。
「こ、この人たちは・・・」
「気をつけろ。ただの一般人じゃない」
「ということは・・・」
「呪詛師の攻撃はすでに始まっているということだ」
虚ろな目をした一般人たちは一斉に
●
同時刻、別の帳を担当している悟の班は帳の中に侵入したところだ。こちらの方は別の意味で大騒ぎしている。街の至る所で火事が発生しており、一般人は大パニックを起こしている。
「どうなっとんねん!!?」
「なんで消防車が来ぉへんの!!?」
「あー。こりゃ意図的にやってるなぁ」
「惨いな・・・」
南丹市
五条班
五条悟(特級呪術師)
六道グリーン(2級呪術師)
ドカアアアアアン!!
『きゃあああああ!!?』
「なんやなんや⁉」
2人が考えている間にも遠くで爆発が起き、一般人はさらにパニックに陥る。
「ふむ」
「いくら何でもやりすぎだろ・・・」
「ま、狙いは何となくわかったかな。眼鏡君、一般人の保護を頼むわ。呪詛師は俺がやるから」
「わ、わかった!」
悟の指示を受けたグリーンは騒いでいる一般人の保護のために動き出した。自分が出ても悟の足手まといになるのはわかり切っているからだ。
「舐めた真似しやがって。誘い、乗ってやるよ」
首を軽く鳴らす悟は助走をつけ、再び鳴った爆発に向かって最速で走り始めた。
●
一方の別の帳。この帳を担当する傑の班は特に目立った被害は出ておらず、スムーズに一般人を保護している。
「この辺りに一般人はもういないわね」
「でも帳は無駄に広いですからね。閉じ込められた人はまだまだいそうだ」
京都市
夏油班
夏油傑(特級呪術師)
六道コルネリア(準1級術師)
(・・・タエコさん、無事かしら・・・)
この京都市には友達になったタエコがいる。もし彼女の身に何かあったならばとコルネリアは心配している。
「これでは効率が悪いな。コルさん、ここは二手に分かれましょう。私があちらを見てみるから、コルさんはそちらをお願いします」
「わかったわ」
「一応は呪霊もつけておきます。視覚共有はできませんが、ヤバくなったらすぐに状況を教えてくれますので」
傑からカメレオンのような呪霊を受け取ると、呪霊はコルネリアの背中に回り込み、一体化するように透明になる。
「夏油、気をつけてね」
「そちらこそ」
呪詛師捜索、一般人の保護の効率を考えて傑は道路沿いの道に、コルネリアは曲がり角方面に分かれた。
「コルネリア」
コルネリアがしばらく走っていると、建物の陰からタエコが現れ、彼女に声をかけた。心配していた友達が無事であったことに、コルネリアは綻びる。
「!タエコさん!よかった、無事だったのね」
「私はな。だが祖母が・・・」
切羽詰まったような表情で話すタエコの様子にコルネリアは表情を変え、話に耳を傾ける。
「泊まっていた宿に突然不気味な奴が現れて・・・私は外にいたから難を逃れたが・・・宿にはまだ・・・祖母が・・・」
タエコの話を聞いて、コルネリアはきっとそれが元凶である呪詛師であると理解し、自分が術師であるとバレない範囲で彼女から情報を聞き出す。
「その宿はどこに・・・?」
コルネリアの問いかけにタエコは答えた。
●
情報を聞き出したコルネリアはタエコに人を呼んでくると嘘を言ってその場所へと向かった。教えられた場所へ向かってみると、そこは宿とはかなり程遠い廃墟であった。
「・・・ここであってる・・・わよね?でもこれはどう見ても・・・」
コルネリアが疑問を抱いていると、強い殺気を感じ取り、後ろを振り向く。その瞬間、背後に立っていた人物が刀を振るい、斬撃を放つ。コルネリアは咄嗟に背中を逸らすことで何とか躱した。
「躱されたか・・・。できれば苦しめたくなかったけど・・・」
攻撃を仕掛けてきた相手とは、先ほど情報を教えたタエコだった。
「タエコさん・・・あなたは・・・」
「私がこの帳を降ろしている元凶」
「!」
薄々ながら勘づいてきたコルネリアは目を見開く。
「・・・お友達になれると思った。でも・・・私とコルネリアはこうするしかないみたい」
タエコが帳を降ろした敵であると認識したコルネリアは友好的が顔から嘘みたいに冷めた表情をし、粉砕王を装備する。
「敵として向かってくるなら迎え撃つ!!」
友達でありたいと願っているのはコルネリアも同じ。だが、敵として現れたなら、情を捨てて殺す冷酷さを、彼女は持ち合わせている。それは、タエコもそうだ。
「我こそ死神オールベルグの息吹。無常の風。汝を冥府へと導かん」
タエコが刀を構えると、彼女の周りに吹く風が少し強くなる。風のようにゆられと動くと、タエコはコルネリアの間合いに瞬時に移動し・・・
「颪!!」
刀を振り下ろすことで風と合わせた二重の斬撃を放った。コルネリアは咄嗟に躱すことで難を逃れる。
(風の術式⁉)
タエコは刀を持ち直し、横一閃の二重の斬撃を放つ。コルネリアは腕を交差することで粉砕王を盾代わりし、斬撃を防御する。さらにコルネリアはそこから呪力を帯びた蹴りを放つが、タエコは後退することで攻撃を躱す。
(速い!私だって準1級なのに、間合いに入れそうにない!)
コルネリアは間合いに入る隙を作るために地面に拳を叩きつけて衝撃を与えることで土埃による煙幕を張る。対ししてタエコは刀を先ほどとは違う型に構え直す。すると、彼女の身に纏う風が止んだ。
(花風。寄らば斬る)
風が途端に止んだことに対し、コルネリアはタエコの出方を考察する。
(風の術式ならこれくらいは払えるはず。それをしないということは・・・何かあるわね。なら!)
今近づいたらやられると勘づいたコルネリアは粉砕王で壊れた柱を軽々と持ち上げ、土埃で隠れているタエコに向けて投げ放った。土埃に紛れて柱が迫ってきたことを確認したタエコは二重、三重の風を放ち、刀に纏わせる。
「嶺渡」
スパァ!
タエコが振るった風の纏った斬撃を放つことで柱は真っ二つに両断する。だがその時すでにコルネリアはタエコの背後に回り込み、間合いに入り込まれている。
(入った!私の間合い!)
「何ッ⁉」
「粉砕王!!」
粉砕王の拳をもろに受けたタエコは大きく吹っ飛ばされる。しかしタエコは地面の衝撃を利用して着地し、態勢を立て直した。
(・・・!粉砕王の拳をくらって戦闘続行可能だなんて・・・)
例外を除き、今まで粉砕王の拳を受けて戦闘を続けられた者は誰1人としていなかった。それがこうして耐えられたことに対し、コルネリアは驚いている。しかし、先ほどの一撃でタエコの片腕は損傷しており、痺れも出ている。
(呪力の肉体強化はしてるのにこの痺れ・・・二度は防げないか・・・。もう体術の間合いには入らせない!)
タエコは二度目の一撃を受けないように、突風のように素早く動き、コルネリアに接近する。だが彼女に同じ手は二度も通用しない。
コキッ!ヒュンッ!ガッ!
なんとコルネリアは関節を外して足を伸ばし、リーチが広がった蹴りを放つことでタエコの刀を弾き飛ばした。
(なっ!関節を外して足を・・・!)
「私だけができるパパ直伝!拳に気を取られすぎたわね!)
(くっ!ならばこちらもリミッターを外す!)
武器を手放してしまったタエコは自身のリミッター解除の呪術を使用する。
「竜巻!!」
リミッター解除技、竜巻を使用したことで彼女の頬に緑の紋様が浮き出る。その瞬間にタエコの姿が一瞬にして消えた。コルネリアは慌てることなく、気配と殺気を辿り、背後に現れたタエコの風を纏った蹴りを粉砕王で受け止める。コルネリアはそこから拳や蹴りでタエコに連撃を繰り出していくが、その全てを受け流して攻撃を最小限に捌いていく。速さも力も攻撃のキレも段違いなのは明らかだ。
(受け流して捌いてる⁉動きがさらにとんでもなくなってるんだけど・・・!でも、それでも押し切れるわ!体術勝負で負けるわけがない!)
コルネリアが考えている通り、体術では彼女の方が一枚上手でタエコは押し切ることができない。自身に不利だと悟ったタエコは口に含んでいた含み針を放った。だがコルネリアはそれを容易く躱してみせた。
「くっ・・・!」
「これで!」
コルネリアがもう一撃の粉砕王の拳を放とうとした時・・・
ドクンッ
突然心臓が脈打ち、コルネリアの口から血が軽く噴き出た。
「・・・え?」
これによって一瞬の隙ができ、タエコはそれを逃さず風の纏った肘打ちでコルネリアを突き飛ばした。
「ぐわっ!」
「最初の一発・・・先制のアドバンテージ」
(これは・・・毒!最初のあの一撃、掠ってたのね・・・)
そう、これはタエコが先制攻撃を躱しきれず頬に傷がつき、刀に染み込んでいた毒が入り込み、それが回ってしまった結果である。
「耐性あるみたいだけど、動き回ってようやく効いてきたんだね。オールベルグ産の強力な奴なんだけど」
タエコは地面に突き刺さっていた自身の刀を拾い上げ、構える。
「毒は反転術式の弱点。この毒は解毒するより早く回る。もうコルネリアは助からない」
「・・・どうかしらね。うちには優秀なドクターがいるもんで」
コルネリアの脳裏に浮かび上がるのは未成年なのに煙草も酒も嗜む東京校の後輩の姿であった
「それに、こっちは野生児。しぶとさには自信があるのよ。タエコを倒してゆっくり休ませてもらうわ」
ゆっくりと立ち上がり、構え直すコルネリア。そんな中透明化している呪霊は彼女の危機に合わせ、自身の呪力でこの場にはいない傑に危機を教えている。
●
一方、コルネリアと別れた傑はもう1体のカメレオンの呪霊を肩に乗せ、エイ型の呪霊に乗って急いで移動している。カメレオンの呪霊の体色はごちゃごちゃと変わっていき、落ち着きがない。
(呪霊の危険信号が止まらない・・・!コルさんが呪詛師にやられるとは考えにくいが・・・いったい何が起きているんだ?)
コルネリアの危険を知らせる呪霊の反応が止まらない様子を見る度に傑の中の嫌な予感がだんだんと強くなっていく。
(とにかく、私が着くまで無事でいてくれ、コルさん・・・!)
傑はエイ呪霊に指示を出し、飛ぶスピードを速め、急ぎコルネリアの元へ向かうのであった。
●
同時刻、別の帳を担当しているナハシュの班は全てのある程度の一般人の保護を完了し終えたところだ。しかし、今のところはまだ帳を降ろした元凶を見つけることができていない。特に被害が出ていないのがせめてもの救いではある。
「こうもなんもねぇと、拍子抜けしちまうな」
「気を緩めるな、雑魚」
伊根町
ナハシュ班
六道ナハシュ(1級術師)
六道
禪院
「・・・灰原と七海、大丈夫かな・・・」
「ポニィや冥さんがいるから大丈夫だろ。あの人美人で強いし」
「・・・ん?」
呑気に話していると、3人の行く道に1人の老婆が立っていた。
「なんだ?あのババア」
怪訝な反応を見せる3人に老婆・・・ババラはにっこりと笑っている。
●
戦闘続行の意を示すコルネリアにタエコは眼光を鋭く光らせる。同時に浮き出ていた紋様も消えていった。竜巻の効果が切れたのだ。
(リミッター解除の効果は切れたが、呪具さえあればこちらが有利・・・)
(風の呪術と組み合わせた剣術に呪力による肉体強化・・・そして含み針や毒・・・何をしてくるかわからない・・・。それでも攻めないと!毒が回り切る前に!)
ちんたらしていては毒によって自分は死んでしまう。相手の出方がわからない不安要素はあるが、コルネリアはとにかく攻めるためにタエコに接近しようとする。
「黄塵」
対するタエコは身に纏う風の流れを緩やかにし、刀の刃を隠すように構える。
(!剣を隠した・・・)
タエコの構えを見て今攻めるのは危険と判断したコルネリアは警戒しつつ、そのまま突っ込む。近づいてきたタイミングで風は急に強く吹き、タエコは流れに乗るように刀を振るい、横一閃の風の二重の斬撃を放つ。だがコルネリアは粉砕王でその斬撃を防御し、蹴りを放つ。
「ぐぅ!」
蹴りが顔にもろに直撃し、後退るタエコにコルネリアは追撃しようと迫る。タエコは刀を鞘に納め、構え直す。
「光風!」
突風が吹き荒ぶと同時にタエコは抜刀。突風と共に放たれた素早い斬撃をコルネリアはまたも粉砕王で防御。そこからコルネリアはタエコの腹部を蹴り上げる。
(速度重視の斬撃すらも・・・!私の動きが鈍っているのか・・・!)
「そっちもキツイみたいね・・・。粉砕王の衝撃が体の内部まで浸透しているのよ」
そう、最初にもらった粉砕王の一撃が影響を受けており、タエコの本来の動きを充分に発揮できなかったことが今に繋がっている。術式こそ持たないが、コルネリアはもう十分に1級を狙えるほどの実力を有している。相当な手練れであるタエコを追い詰めているのがいい証拠だ。
(くっ・・・術式もなしにこれとは・・・!毒も回っているというのに・・・!どうする・・・竜巻は連続で使えない・・・!)
(一発当てたのは無駄じゃなかった・・・これならいける!)
コルネリアは粉砕王の拳を振るって打撃を与えようとするが、タエコは刀を振るって打撃を流す。だがコルネリアはそのまま回転蹴りを放ち、タエコに手痛い打撃を与える。
「ぐあ・・・!」
ダメージを受けたタエコは後退し、刀を構え直す。すると、身に纏っていた風がまたもピタッと止まる。
(花風!寄らば斬る!)
(!あの技・・・あの時の。シン・陰流簡易領域と同じ解釈でいいのよね?)
タエコの構えを見たコルネリアは煙幕を出した時と同じ技であると推察し、追撃を止める。
(同じ崩し方は食わない・・・!)
(障害物を投げても、今度は対応してくるでしょうね・・・。それなら)
コルネリアは下手に近づくことはせずにその場で構え、粉砕王に自身の呪力を最大まで送り込む。
「タエコ・・・決着をつけましょう」
「・・・そうだな、コルネリア」
しばらくの沈黙。それを先に打ち破ったのはコルネリアであった。
「はあああああああ!!!」
ブオオッ!!
(なっ・・・風圧⁉)
コルネリアが放つ粉砕王の拳は突風レベルの風圧を発し、これによって周りに纏う風が霧散し、タエコも強く吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられる。
「粉砕王!!!!」
コルネリアはこれを好機とし、十分な呪力を残したまま粉砕王による強烈な拳を叩き込もうと迫る。
「光風!」
対しタエコは速度重視の技、光風を放とうとする。
(無駄よ!粉砕王は斬撃を弾く!)
コルネリアの放つ粉砕王の拳がタエコに直撃しようとした瞬間・・・
ザンッ!!!!!
「・・・え?」
タエコが放った光風の斬撃がコルネリアの腕を粉砕王ごと斬り落とした。斬撃を弾く一撃を受け止めたならまだしも、自らの腕を斬り落とされたことにより、コルネリアは一瞬ながらも呆ける。
「呪具の性能を過信しすぎたね。呪具は防御に使えるが、万能じゃない」
(同じところに斬撃を当て続けて粉砕王を砕いた・・・⁉)
粉砕王は防御面にも優れているが、タエコの言うとおり決して万能ではない。どんな固いものでも、攻撃を受け続ければ必ずヒビが入る。そこに強い衝撃など与えてしまえば、壊れてしまうのは当然のことだ。
ザンッ!!ズシャアア!!
「あ・・・!」
コルネリアが呆けている間にもタエコはさらに風を纏った斬撃を放ち、彼女の身体を斬り裂く。そして・・・
ズンッ!!!!
さらに突きを放つことによって、危険を知らせ続けた呪霊ごとコルネリアの腹部を貫き、呪霊の血と彼女の血が飛び散った。
この世界は呪術廻戦の世界ですからタエコの技の仕様は原作と比べても少し違います。違うどころか強化しているのかも。詳しい詳細は住古来今編終了後の設定まで待っていただけると幸いです。