呪術廻戦ー呪いを斬るー   作:先導

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Q:アナタにとって五条悟とは?

悠仁「先生!先生がいなかったら、俺今頃死刑だったみたいよ。そんで・・・」

(たつみ)「大恩人かな。あの人がいなかったら、俺も姉さんも死んでたし。それと、これは外せねぇな」

恵「一応恩人です。一応。それから、これは俺に限った話ではないですが・・・」

野薔薇「正直、私そこまで知らないのよねぇ。ただこれだけは言えるわ」

赤女(あかめ)「友達だな。どうしようもないクズだが。そして・・・」

真希「バカ」

マイン「バカね」

パンダ「バカだな」

棘「シャケ」

マイン「・・・でも・・・」

七海「軽薄。個人主義」

東堂「言うまでもなく・・・」

全員「最強!」


渋谷事変 開門

都心メトロ渋谷駅B5F新都心線ホーム

 

特級呪霊たちと対峙している悟は青の瞳を露見させ、強烈なまでの殺意を溢れさせ、花御に指をさす。

 

「そこの雑草。会うのは3度目だな。舐めた真似しやがって。まずはお前から殺す」

 

悟は再び車線上に飛び移りる。

 

「ほら、来いよ。どうした?逃げんなつったのは・・・お前らの方だろう」

 

特級呪霊たちを煽りつつ、悟は彼らの攻撃範囲のど真ん中に立つ。その直後、ウサギが爪を振り下ろし、漏瑚が展延を帯びた拳を叩き込もうとする。

 

ズシャア!!ガシッ!!

 

しかし悟は手刀でウサギの爪を肩ごと斬り落とし、漏瑚の拳をいなして手首を掴みとる。

 

「ぐがっ・・・!!」

 

(!!今触れ・・・⁉)

 

周囲に無下限を張ることで悟に触ることができないのは漏瑚たちは知っている。だからこその領域展延。しかし拳をいなされた時の感触は展延で呪術を中和するような感触ではなかった。

 

グイッ!

 

「ぐおっ・・・!!」

 

漏瑚が疑問を抱く間にも悟は彼をグイっと引き上げ、自身の背中に背負い込むことで花御の放つ蹴りに当てさせようとする。漏瑚は体を軽く反らすことでギリギリで蹴りを躱す。漏瑚は何とか体制を整えようとするが、腕はまだ悟につかまれたままだ。

 

「せぇーの!」

 

ブチィ!!!!

 

「ぐおおおおおおお!!」

 

悟は両足で腕をガッチリ固定させ、力をしっかり込めて漏瑚の腕を引きちぎった。そこへ花御が拳を叩き込もうとするが、悟は拳を腕を千切った手で受け止め、蹴りを放って蹴とばす。悟はそこから襲い来るウサギに漏瑚の腕を放り投げて仰け反らせ、さらに漏瑚を放り投げて反対車線の壁に叩き込ませた。展延を使って無下限を破る感触が全くないのには理由がある。

 

(あくまでも漏瑚狙い・・・先刻の宣言は心理誘導か。そしてこの男・・・無下限の術式を解いている!)

 

そう、現在悟は無下限の術式を解いているため、誰でも簡単に彼に触れることができるし、どんな攻撃でも届く状態になっているのだ。

 

(術式の微調整を捨て、人間がはけ始めたこのスペースで呪力操作のみのコンパクトな攻めに回るつもりか)

 

悟の攻撃を考察する花御は無下限を解いている今が好機と踏み、展延を解いて自らの術式で樹の根を発生させる。

 

(だがこれならわざわざ人混みに紛れる必要もない。こちらは術式を使うまで!)

 

花御は樹の根を操り、悟に攻撃を仕掛ける。しかし、花御が術式を使った途端、悟は目を見開き、狂気にも近い好戦的な笑みを浮かべて標的を花御に変更した。

 

「!!展延を解くな、花御!!!!」

 

腕を再生し、距離を取る漏瑚が声を上げたが遅い。花御が操る樹の根の攻撃を悟は素早く動いて難なく躱し、気づいた時にはすでに花御の肩に飛び乗り、彼の両目の樹を掴んでいた。

 

「ここ、弱いんだって?」

 

ブチイィィ!!!!

 

〘ぐあああああああああああああああ!!!!〙

 

悟は力いっぱいに両目の樹を引っこ抜いた。両目の樹が弱点である花御はこれが抜かれたことによって多大なダメージを負う。

 

「やっぱりな。展延と生得術式は同時には使えない」

 

これこそが領域展延の弱点。術式の中和自体は可能ではあるが、どんな術師でも発動している間は生得術式を使うことができない。ゆえにどうしたって攻撃の威力が落ちてしまうのだ。これらの弱点を補うには、術師本人の高い身体能力が必須となる。だがそれでどうにかなる悟ではない。

 

(ワシがまだ無事なのは展延で守っていたからだ。体術では禪院赤女(あかめ)とは大きく下回るものの、基礎的な呪力操作と体術でこのレベル・・・五条悟・・・逆に貴様は何を持ちえないのだ!!?)

 

両目の樹を引っこ抜き、花御から距離を取る悟の背後から脹相が血のレーザーを放ち、一般人ごと貫いて攻撃を仕掛けてきた。しかし、悟はまた無下限を張ることで攻撃を反射させた。

 

「ちっ・・・」

 

(あいつ呪霊じゃない・・・受肉した九相図ってところかな。ウザいけど、後回しだな)

 

脹相が呪霊ではなく、九相図であると見抜く悟は彼を後回しにし、漏瑚たちに集中する。そんな彼にウサギは側面から回り、悟を噛み砕こうと大きく口を開けて迫る。しかし逆に無下限で止められてしまい、悟が拳を叩き込ませたことでウサギの頭は粉砕される。だが奇妙なことが起きた。粉砕したウサギの頭は粒子の粒となり、ウサギの体と繋ぎ合わせて元の状態に戻る。それだけじゃない。よく見てみれば斬り落としたはずの肩も腕も何事もなかったかのように再生されている。

 

(再生した?この式神、壊せない・・・だけじゃねぇな。そんじょそこらの式神とはレベルが違いすぎる。下手すりゃ恵の式神以上の質・・・)

 

ウサギが式神の一種であると見抜いた悟はウサギを操っている術師を探す。すると、蛇の形をした槍が一般人を貫き、悟に迫る。だがやはり無下限で直前で止まる。槍が放たれた方角を見てみると、そこにはツクヨミの姿があった。彼女が槍を投擲したのだ。

 

(あいつか・・・。さしずめ、受肉した禍津神(まがつがみ)ってところかな。でも九相図と違って、受肉体は選別されてる。ウザいけどあいつも後回しだな)

 

始末したい気持ちはあるものの、今は展延を使う漏瑚たちを優先すべきと判断する悟。花御は起き上がり、再び展延を纏って拳を放つ。漏瑚も後に続いて展延の拳を放つ。展延は確かに悟の無下限を中和している。だが今度は悟の無下限の力が強すぎて、迫るに迫れない。それどころか、押し返されているようにも見える。

 

「いいのか?お前が展延で僕の術式を中和するほど、僕はより強く術式を保とうとする。こっちの独活はもうそれに耐える元気ないんじゃない?」

 

「なっ!ぐっ・・・!」

 

悟は無下限呪術の強度をさらに上げて漏瑚を押し返し、花御を壁に叩きつける。無下限によって押し潰されそうになる花御は展延で耐えようとしている。しかし悟の指摘通り、花御は両目の樹を引っこ抜かれてダメージを負っている。それこそ、樹を再生できないほどに。展延で守り続けようにも、今の花御の呪力では維持し続けることはできないだろう。

 

「五条悟!!!こっちを見ろ!!!」

 

漏瑚は花御を救おうとあえて展延を解き、一般人に炎を向ける。一般人を人質にとって悟の注意を引こうとしているのだ。だが悟はそれを無視して花御に迫る。花御の身体は悟が迫ることで亀裂が入っていき・・・そして・・・

 

グシャア!!!!!

 

無下限の負担に耐えきることができず、花御は粉砕し、完全に消滅された。

 

「花御・・・」

 

先日の斬鬼に続いて今日、花御まで犠牲になった。志を共にする仲間が散っていった光景を目の当たりにした漏瑚は憂いている。

 

「・・・次」

 

花御を祓い終えた悟は狙いを漏瑚に定め、青い瞳をぎらつかせた。

 

 

渋谷の作戦が決行される前日。エスデスは傑たちの拠点で漏瑚、真人、傑と共に麻雀をしながら、悟封印に使う特級呪物、獄門疆の概要を説明する。

 

「獄門疆は生きた結界・・・源信の成れの果てらしい。獄門疆で封印できないものはまず存在しない」

 

「だがさすがに封印条件があるのであろう?」

 

「1分だ」

 

「・・・は?」

 

「獄門疆開門後、封印有効範囲、半径約4メートル以内に1分間、五条悟を留めなければならない」

 

獄門疆の封印条件を軽く説明を受けた後、しばらくの沈黙。聞こえてくるのは役を打つ音のみ。漏瑚の番となった時・・・

 

ガラララッ!プシュ―!

 

 

「おい・・・焼き殺すぞ。よもやその無理難題を押し付けるために手を組んだのではあるまいな?」

 

 

あまりにも無理難題な条件を突き付けられた漏瑚は怒りで興奮し、熱蒸気を噴射させながらエスデスに強い殺気を放つ。

 

「その条件下であれの1分。五条悟は禪院赤女(あかめ)と同格かそれ以上・・・蒙昧な人間共その一生を幾千積み重ねても釣り合わんぞ」

 

「・・・暑いぞ、漏瑚。少しは頭を冷やせ」

 

漏瑚の怒気に対してもエスデスは氷のように冷静でもろともせず、役に手をとってゲームを続けようとする。

 

「何も問題はない。1分といってもな・・・」

 

 

「ぐっ・・・!」

 

殺気が自分に向けられた漏瑚はひとまず悟から距離を取ろうとする。対し悟はゆっくりと、本当にゆっくりと歩み、漏瑚に近づこうとする。しかし漏瑚は一般人を適当に選び、掴みかかって悟に放り投げる。迫ってきた一般人は悟の無下限で止められ、宙に浮く。

 

「おおっ!!?なんだ!!?」

 

「えっ?えっ?」

 

呪霊が見えていない一般人から見てみれば、投げられた人間が突然宙に浮いているようにしか見えず、さらにざわめきだす。漏瑚は人が多い車線外に飛び移り、悟は歩いて追いかける。

 

(花御の死を無駄にするな。人間に紛れ、ヒット&アウェーに徹するのだ!)

 

漏瑚はさらに一般人を放り投げ、悟の周りに何人か固めさせる。そして、宙に浮く数名の一般人に紛れ、漏瑚は悟に蹴りを入れる。ウサギもそれに乗じて爪を振るう。しかし宙に浮く一般人でわかるように、爪と蹴りは止められる。ウサギと漏瑚は悟が次の行動に出る前に距離を取る。

 

「脹相!!ツクヨミ!!協力しないのであれば、貴様らから殺すぞ!!!」

 

「はいはい」

 

漏瑚の声に合わせ、脹相は両手を合わせ、血の矢を放つ。血の矢は一般人ごと貫いて悟に迫るが、やはり無下限によって止められる。そしてツクヨミは悟に狙いを定め、人差し指を向ける。同時に、粒子が集まり、1匹の青白い蝶が出現する。

 

「月光蝶・指銃」

 

ツクヨミは指に止まる蝶を弾丸のように撃ち放った。撃ち放たれ、羽を動かし、弾丸のように速い蝶は一般人の頭を貫きながら悟に迫るが、蝶は無下限によって止められる。

 

(つかず離れず。でもそれも限界でしょ。呪霊が見えない人たちが僕を避け始めた。このまま人が減り続け、スペースができれば火山頭を捕らえられる。さっきみたいに術式を解いて誘うのはなしだな。こっちの狙い、近接フルボッコはもうさらしたし、距離を取って九相図と禍津神(まがつがみ)と連携して人混み越しに大技を出されても面倒だ)

 

一般人が悟から離れている者が何人も現れ始めたことから漏瑚たちの取る作戦ももう限界に近づいていると彼は察している。だがそれでも、大多数だろうと少数だろうと、この先の戦闘で犠牲が増えるのは避けられないだろう。

 

(ごめん・・・全員は助けられない。その代わり・・・絶対祓ってやる)

 

悟は犠牲が出ることを前提に考え、漏瑚たちを祓うことを心の中で約束をする。

 

(まだか?もう20分は過ぎたはずだ!)

 

漏瑚自身も作戦限界を感じているようで、必要最低時間20分も過ぎていることで焦りを生じている。

 

 

漏瑚たちが作戦に集中している中、渋谷駅から遠いようで近い車線上。陀艮と三獣士を後ろにつかせているエスデスは氷の玉座に座りながら、漏瑚たちの姿を静かに諦観している。

 

「まだまだ。五条悟は全然余裕だぞ。もっとヒリヒリした戦闘を見せてみろ」

 

戦闘に介入する気がないエスデスは悦に浸りながら戦闘の行く末を見守っている。

 

 

都心メトロ明治神宮前駅B5Fホーム

 

冥冥班がホームに辿り着いたはいいが、地下5階には呆然と座り込んでいる女性しかおらず、他の一般人は1人もいなかった。

 

「・・・ねぇ。あんた、ここで何が・・・」

 

「みんな・・・化け物に・・・電車・・・に、乗って・・・わ、私は・・・満員だったからいらないってぇぇぇえぇ・・・】

 

マインが質問しようとした時は女性はここで何があったのか話したが、その途中で顔が変形し、脳圧上昇による呼吸麻痺を引き起こして死亡した。顔を歪められて死亡するさまを見て、マインは初めて見る異様な死に方に思わず吐き気を堪え、口元を抑える。

 

「・・・っ」

 

「あいつがいたんだ・・・くそ・・・!」

 

悠仁はここに真人がいたことを確信し、間に合わなかったことを悔やんで歯ぎしりを立てる。するとマインは女性が言ったことを思い出し、冷や汗をかく。

 

「!・・・みんな・・・電車に乗って・・・⁉虎杖!次の駅って確か・・・」

 

「・・・!!」

 

マインの指摘に悠仁は気がついた。この駅から向かう、次の駅を。

 

「先生・・・!」

 

行ってしまった電車が向かった駅は・・・悟と赤女(あかめ)がいる渋谷であった。

 

 

都心メトロ渋谷駅B5F新都心線ホーム

 

プオー!

 

「ん・・・?」

 

漏瑚を追い詰めている悟は警笛の音を聞き取ったと同時に、こちらに近づいてくる反応に気がついた。

 

「あっ・・・おお!」

 

「助かった・・・!」

 

「おおお!」

 

一般人は警笛が聞こえてきたことにより、安堵の声を上げている。車線上を見てみると、明治神宮前駅の線路から1機の電車がこの渋谷駅に向かってきている。

 

「!来たな!」

 

漏瑚は電車が来たことにより、悟攻略の僅かな希望が見えてきた。電車は渋谷駅に辿り着き、停車する。同時に、一般人は電車に乗り込もうと一斉に群がり始める。

 

「電車だ!どけや!俺が乗る!!」

 

「何すんだ!!」

 

「どうすんの!!」

 

一般人の1人は群がる人だかりを押し退けながら電車の扉の前に立つ。

 

「!あっ・・・あっ・・・ああっ・・・」

 

しかし、その一般人は電車の窓で中の様子を見て、絶句している。なぜなら電車に乗っていたのは・・・明治神宮前駅で真人によって形を変えられた改造人間が詰め込まれていたからだ。

 

グシャア!!

 

「きゃあああああああああああ!!!」

 

電車の扉が開いた瞬間、改造人間が一斉に出てきて、目の前の一般人を殺害した。異形の化け物が出てきたことにより、一般人は改造人間から逃げ始める。

 

「何考えてやがる・・・!」

 

「じょ~ご~!!」

 

すると改造人間に紛れて一緒に電車に乗っていた真人が降りてきた。

 

「すぅ~・・・はぁ~・・・。いやぁ~、空気がおいしいね!恐怖が満ちてる!やっぱり人間少し残そうよ。週末は森に放して狩りをするんだ♪」

 

「森ごと焼いていいのか?」

 

「花御に怒られるよ?」

 

「花御は死んだ」

 

「・・・・・・マジ?」

 

呑気に話す真人だったが、漏瑚から花御が死んだことを知らされ、少なからず驚愕している。

 

「くっ・・・!」

 

改造人間の乱入によって混乱はさらに増すばかり。同時に相手の狙いがわからなくなる悟は苛立つように毒づいている。一般人は悟攻略に必要不可欠な存在のはずだ。そこに改造人間を投入なんてすれば一般人をさらに危険にさらし、減らすことに繋がる。そうなれば敵のヒット&アウェー効果が薄まる。わけがわからなくなる一方だ。そんな悟に真人はお構いなしに改造した人間の上に乗って彼に迫り、刃が備わった腕で斬りつけようとする。しかし、無下限を張っているため当然、真人の攻撃は届かない。

 

「ハハッ!マジで当たんない!」

 

(!ツギハギ!七海たちが言ってた奴か!)

 

悟は真人の腕を払いのけ、拳を振るう。だが真人は高く跳躍して一般人を飛び越えながら後退する。

 

「人間のキショいところ、1つ教えてやるよ」

 

真人はにたりと笑いながら、指を上に指す。

 

「い~っぱいいるところ♪」

 

ドオオオオオン!!!

 

『きゃあああああああああああ!!!』

 

すると花御が閉ざしていた樹に衝撃が走り、天井より大量の一般人が降ってきた。これによって減り続けてきた一般人が増え、状況がリセットされる。

 

(くっ!やっぱ上にも呪詛師がいるな・・・)

 

上階に呪詛師が潜んでおり、その呪詛師が一般人を落としているのだろう。一般人が降ってくる状況の中、ツクヨミは天井を見上げる。

 

「・・・姉様。もういいよ。やっちゃって」

 

パリイイイイイイイイン!!!!

 

『うわあああああああああああああ!!!!』

 

ツクヨミがブツブツと呟くと、何かが割れる音と共にさらに一般人が降り注いでいく。さらに一般人が増え続ける状況下に悟は顔をしかめる。

 

(高専から持ち出された禍津神(まがつがみ)は2つ・・・!上に1番がいやがったのか!どうりで1人足りないと思った!)

 

今すぐにでも上にいる呪詛師を片付けたいところだが、今は手がいっぱいいっぱい。そのうえ今ここで上に向かったら一般人は全滅してしまう。ならばここは上にいる赤女(あかめ)に任せるしかない。

 

「無為転変―――『多重魂・撥体』」

 

「赤血操術―――『百斂・超新星』」

 

「八尺瓊勾玉―――『大蛇槍・(エクリプス)』」

 

苛立ちを隠せない悟に真人、脹相、ツクヨミは同時に攻撃を仕掛ける。真人は2つの人間の魂を融合させ、強い拒絶反応によって質力を爆発的に高めて、一般人を巻き添えにして悟に放つ。脹相は宙に浮かせた血液を散弾銃のように放ち、こちらも一般人を巻き添えにして悟に放つ。ツクヨミは粒子で作り上げた赤黒い蛇の槍を悟に目掛けて投擲する。蛇の槍の先端は形を変え、3つ首の本物の蛇となり、またも一般人を巻き添えにして悟に迫る。しかしどんなに強力な技でも全て悟の無下限によって止められてしまう。

 

「ぐおおおおおおお!!」

 

「てやああああああ!!」

 

さらに追撃するようにウサギと漏瑚が悟に接近し、攻撃を仕掛ける。悟はウサギと漏瑚の腕を掴みとり、攻撃を止める。だがその直後、ウサギと漏瑚は自分の腕を斬り落として再び悟から距離を取る。一般人が増え続けることによって、ヒット&アウェー作戦が有効となる。これも漏瑚たちの作戦の1つである。

 

(五条悟が虎杖悠仁と違って冷酷さを持ち合わせてることは知ってる。ある程度の犠牲を前提として、確実に俺らを祓いに来るだろうと。だが死者が増え、生者も増え続けるこの状況では、そのある程度の天秤はもう機能しない)

 

(貴様が今すぐしなければならないのは、無量空処でワシらと人間を皆殺しにし、領域外の人間を救うこと。だがそれはできんだろう。貴様の想定している犠牲は『呪霊に殺される人間』であって、『五条悟に殺される人間』ではないからだ)

 

ある程度の犠牲という天秤が増え続ける一般人によってもはや機能しなくなり、領域展開でここにいる全員を皆殺しにするか、このままやり続けて犠牲を増やし続けるかを選択肢を与えさせることによって、彼の動きを制限させる。それが漏瑚たちの狙いだったのだ。

 

(考えろ。迷え。集中するのだ)

 

これならば悟の神経をすり減らすことができる。漏瑚たちはそう考えている。

 

「「「「!!!??」」」」

 

「マジか・・・!」

 

だがしかし、ここで漏瑚たちにとって予想外の行動を悟は取った。何と悟は、この状況下で片手で印を結び、領域展開を発動しようとしている。

 

 

「領域展開―――無量空処

 

 

悟が領域展開、無量空処が発動。するとホーム全体が宇宙空間のような光景が広がり、漏瑚たちや改造人間、一般人全員を閉じ込めた。だが発動した瞬間に悟はすぐに領域を閉じ、元の空間に戻した。だがその瞬間的な発動でも無量空処は強烈。脳に多大な情報量を流し込まれ、一般人や改造人間はもちろんのこと、真人や漏瑚、脹相、ツクヨミとウサギまで影響を受け、指先1つ動かすことができない。

 

ザシュ!ザシュ!ザシュ!!

 

そんな静寂の中で1人だけ動くことができる悟は目にも止まらない速さで走り、1体、2体、3体と1秒ごとに改造人間の首を撥ね飛ばしていく。

 

一か八かの0.2秒の領域展開。0.2秒は五条悟が勘で設定した。非術師が廃人にならず、後遺症も残らないであろう無量空処の滞在時間。0.2秒の間に改造人間を含めた非術師の脳には時間にして約半年分の情報が流し込まれ、全員が立ったまま気を失った。しかし、地下5階の生き残りはふた月後に社会復帰を果たすそのレベルの無量空処。特級呪霊は今この瞬間に目を覚ますかもしれない。五条悟はカウンターを考慮し、標的を改造人間に絞った。

 

現代最強の呪術師は地下5階に放たれた改造人間およそ1000体を領域解除後、299秒で鏖殺。

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

しかし、領域解除後に5分も機敏に動いたのだ。現代最強の呪術師でも、さすがに疲れが見え始めている。それこそ、息を整えている悟が、すぐ目の前に護符で包まれた小さな箱の存在に気付けなかったほどに。

 

 

 

 

 

「獄門疆、開門」

 

 

 

 

 

 

何も問題はない。1分といってもな・・・

 

 

五条悟の脳内時間で1分だ

 

 

 

悟の目の前の小さな箱、獄門疆が開門された。その瞬間、獄門疆は自ら護符を外し、中心に目が位置するアメーバのような形状へと変化する。一目見た瞬間から、悟は直観した。『何だか知らないが、これは危ない』『すぐにそばから離れないと』と。そう考え、悟はすぐに獄門疆から離れようとする。すると・・・

 

「や、悟」

 

突然背後から五条袈裟を着こんだ男に声をかけられた。もう聞くことも、見ることも叶わなかった、たった1人の『親友』に。

 

「・・・は?」

 

「久しいね」

 

見間違えるはずもない親友・・・夏油傑。彼の姿を見て悟は動きを止め、呆然とし、様々な疑問が浮き出る。なぜここにいる?どうして生きてる?と。当然だ。なぜなら、殺したからだ。友達の目の前で、自らの意思で、親友を、この手で。

 

(偽物・・・?変身の術式・・・?いや・・・本物!!)

 

悟は目の前の傑が偽物であると考えようとする。しかし、六眼に映る情報は確かに示している。目の前にいる夏油傑は・・・本物であると。

 

彼の脳に溢れだす。楽しかった3年間・・・高専での青い青春。

共に笑いあったあの日々・・・共に苦しみあったあの日々・・・

あの瞬間も・・・あの出来事も・・・全部・・・全部・・・

 

だが感傷に浸る余韻もなく、獄門疆は自らのパーツを伸ばし、悟の身体を縛り上げた。

 

「うっ・・・!!」

 

「ダメじゃないか、悟。戦闘中に考え事なんて」

 

獄門疆に捕まった悟を見て、傑は薄ら笑いを浮かべる。

 

(・・・呪力が感じられない。体に力も入らん・・・。・・・詰みか・・・)

 

抵抗しようにも身体に呪力が回らず、体も動かすことがままならない。悟は直観的に理解した。抵抗しても意味がないほどに、詰んでいると。だがせめて、せめて目の前の男に、聞いておかないといけないことがある。親友と同じ姿をしている男に。

 

「・・・で、誰だよお前?」

 

「夏油傑だよ。忘れたのかい?悲しいね」

 

目の前の男はあくまでも夏油傑であると主張する。六眼に映る情報も本物であるとしている。しかし悟にはわかっている。この男が、夏油傑ではないことを、本能的に。

 

「・・・肉体も呪力も・・・この目に映る情報はお前を夏油傑だと言っている。だが・・・俺の魂がそれを否定してんだよ!!!さっさと答えろ!!!お前は誰だ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・キッショ」

 

悟に問い詰められると、傑は自身の額にある縫い目を外す。そして、縫い目を解かれ、頭部がパカッと開かれる。

 

「・・・何でわかるんだよ」

 

頭部が開かれると、彼の脳みそが露になる。あまりにも不気味な笑み。この笑みだけでもわかる。この男は夏油傑ではない。夏油傑の(がわ)を被った別の何かであると。

 

「そういう術式でね。脳を入れ替えれば、肉体を転々とできるんだ。もちろん、肉体に刻まれた術式も使えるよ」

 

肉体に刻まれた術式というと、呪霊操術のことだろう。傑・・・以降は偽夏油は傑の身体を乗っ取ることで彼の呪霊操術が使えるようになっているのだろう。

 

「彼の呪霊操術とこの状況が欲しくてね。・・・君たちさぁ・・・夏油傑の遺体の処理を家入硝子にさせなかったろ?変なところで気を遣うね。おかげで楽にこの身体が手に入った」

 

偽夏油の指摘で悟は表情を歪めている。赤女(あかめ)と話し合って決めたことが、こんなことに繋がるなんて想像すらできなかった。もし別の処理を行っていれば、偽夏油が親友の身体を利用するなんてことはなかったかもしれない。

 

「心配しなくても、封印はそのうち解くさ。100年・・・いや、1000年後かな?君、強すぎるんだよ。私の目的に邪魔なの」

 

偽夏油は外した頭部を元に戻し、縫い目を入れてしっかりと固定する。強すぎるからといって封印されるのは癪ではあるが、悟は挑発的な笑みを浮かべる。

 

「ハッ。忘れたのか?僕に殺される前その体は誰にボコられた?」

 

去年の百鬼夜行。傑を瀕死の状態に追いやったのは悟ではない。いるのだ。夏油傑の肉体を瀕死に追いやった天敵といえる存在が。しかし偽夏油は彼の存在に興味を抱いていない様子だ。

 

「乙骨憂太か・・・私はそこまで彼に魅力を感じないね。無条件の術式コピー。底なしの呪力。どちらも最愛の人の魂を抑留する縛りで成り立っているにすぎない。残念だけど、乙骨憂太は君に成れないよ」

 

この世で五条悟に成れる人間は誰1人としていない。偽夏油がそう主張するも、悟は挑発的な笑みを崩さない。

 

「くく、僕には成れない、ねぇ?でもいいのかなー?僕のことを封印しちゃって。忘れてないか?最強なのは、僕だけじゃないんだぜ?」

 

悟の挑発に対しても偽夏油は余裕の笑みを一切崩さない。

 

「禪院赤女(あかめ)のことだろう?確かに彼女の存在は脅威ではあるね?現状では、君に最も近しい存在は彼女だろうね。でも同時に、君に最もかけ離れた存在であるということも忘れちゃダメだよ?」

 

「・・・・・・」

 

「私の言っている意味がわかるかい?彼女は禪院赤女(あかめ)であって、五条悟じゃないんだよ」

 

五条悟という人間はたった1人だけ。成り代わることなど不可能。そんな当たり前のことを告げる偽夏油は口角をさらに上げて、悟を見下すのであった。

 

 

都心メトロ渋谷駅B2F

 

同時刻、この階を調査していた赤女(あかめ)は、目の前に現れた人物を見て、目を見開いて絶句している。その人物は刀を携え、短く黒い髪をなびかせている。この世に置いて、1番大切で1番愛している最愛の人物。

 

「・・・黒女(くろめ)・・・?」

 

赤女(あかめ)の妹にして唯一の家族、そして呪術界を脅かす術師失踪事件を起こした張本人、呪詛師禪院黒女(くろめ)は絶句する姉を見て、ニヤリと口角をつり上げた。

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