都心メトロ渋谷駅B2F
パリィィィィン!!
時は少し遡り、悟が特級呪霊たちの相手をしている時間帯。地下2階の探索をしていた
パリィィン!!
勘づいた
「シン・陰流我流奥義―――『双月』」
ズドオオオオン!!
(どんな攻撃を仕掛けても、本体には届いていない・・・。領域展延ならば届くだろうが、生得術式が使えない以上、その場凌ぎにしかならないな。まずは奴の術式の法則を読み解かなければ・・・)
鏡を壊しても意味を成さないと理解した
『さすがに、特級呪術師の相手は骨が折れますね』
鏡に映る人影の正体とは、
「お前、受肉した
『鏡はあらゆるものを映し出す。目に見える物質だけでない。過去、未来、事象、幻影、真実。あなたの心は何を映すのでしょうね?』
鏡のアマテラスはざっと走り出し、
「シン・陰流―――抜刀!」
(創る鏡自体はどこにでもあるただの鏡のようだな。無限に鏡を作って私の体力を削る気か?だが私の術式を知ってる者がそんな策で来るとは考えにくい)
思案する
『・・・ええ。わかっていますよ、ツクヨミ』
何かを了承するアマテラスは目を開け、
『ところであなたが探しているのは・・・この方たちですか?』
アマテラスを映す鏡はキランと輝くと、別のものを映し出す。それはこの渋谷駅の地下5階の光景。悟が特級呪霊と戦っている最中に天井が割れ、宙に浮かぶ鏡が割れ、一般人が一斉に落ちていく光景であった。
「貴様・・・やはり一般人を・・・」
『
(一般人を地下5階に落とすことで悟の動きを封じる気か?いや、そんな狙いがあるとは到底思えない。鏡に映す光景だけでは判別できないな。やはり直接捕まえて問い詰めるほかあるまい)
アマテラスが何の狙いがあって一般人を捕まえ、地下5階に落とすのか。なぜ自分のその光景を見せるのか。わからないことだらけだが、それは彼女を引きずりだして捕まえればいいとして、
『あなたの実力は理解できました。やはりあなたを相手にするには少々分が悪いようです。ですので・・・少し趣向を変えましょう』
アマテラスがそう言うと、自分を映す鏡の周りに新たな鏡を3つ作り上げ、光を収束させる。
「反射鏡」
収束された光は光線となって反射するが如く、レーザーのように発射される。
「葬る!」
「友鏡」
鏡に帯びた光に輝きが放つと、アマテラスを映す鏡に彼女ではなく、別の人物が映し出される。それを一瞬ながらでも見逃さなかった
パリィン!!ガキィィン!!
鏡の割れる音と共に放たれた斬撃を刀で防御し、受け止めた。鏡から出てきたのはアマテラスではなく、コートを着込んだ男であった。
「んんー?おかしいねぇ。俺は確か渋谷でいろんな奴の首を斬ってたはずなんだがねぇ・・・どうして渋谷駅にいるんだ?」
コートの男はなぜ渋谷駅2階に来ているのかわけがわからず、指で頭をかいている。
「貴様は・・・」
「まぁいいや。おいしいものは先に食べた方がうまいからねぇ」
男は愉快そうに笑い、自身のコートを脱ぎ捨てて両腕に備えてある刃を露にさせた。
「辻斬りに加え、特級呪術師と来たもんだ。今年のハロウィンは物騒だねぇ。愉快愉快」
現れた男とは、巷で話題になっている殺人鬼であり、交流会を強襲した呪詛師の1人、首切りザンクであった。
「首切りザンク・・・」
「ほぉ、俺を知っててくれていたとは光栄だねぇ。愉快愉快。会いたかったぞ、特級呪術師殿」
(瞬間移動・・・というよりは転移の方が正しいな。でなければ奴の残穢がザンクの身体に染みついている説明がつかない)
「なるほど、そういうことだったのか。いつの間にマークされたんだろうねぇ?まったく、鏡使いは面白いねぇ。愉快愉快」
自身の術式、
「そうか。それがお前の術式というわけか」
(透視!)
ザンクは
(結果、隠し武器、特になし)
(・・・
「俺を殺して鏡使いを追いかけるって?無理無理。お前の心視えてるから」
「確かに心が読まれてるのは厄介だな。だが、動きに対応できていなければ、意味がない」
刃と刃の攻防の中、ザンクは刀に押し返されて背中から壁に衝突する。そこへ
(手練れだ・・・相当の実戦を積んでいる。少なくとも・・・あの呪詛師よりは強い)
この時彼女の頭に浮かんでくるのは交流会に襲撃してきた呪詛師、組屋鞣造だ。ザンクは彼よりも断然強いと
(速度だけではない・・・腕力もあるな。そしてそこからの・・・)
「シン・陰流我流奥義―――『一閃・暗夜』!」
(威力を最大に落としたオリジナル技!)
(ここは狭すぎる。あまり広範囲の斬撃は放てない。とはいえ、威力を弱くしすぎても打ち消されるだけか。ならば・・・)
打開策を熟慮した
「ほぉ・・・無心になったか。すごいな。大掛かりな技や、小細工はやめてコンパクトな攻めに回ったか。確かにそれなら、洞視は意味を成さない」
「だが
ガキンッ!!
「・・・視える」
ドオオオン!!
「・・・くらってしまったか。これでは悟に笑われてしまうな」
「・・・やれやれ・・・一殺呪毒って、刀で斬りつけられたらアウトなんだろう?かすり傷1つ許されないってのはずるいねぇ」
「私も心も動きを視られている。お互い様だ」
ザンクの文句に対し、
「なぁ
「?声?」
声と言われても何のことかさっぱり理解できない
「ほら・・・黙ってると聞こえてくるコレだよ。今まで殺してきた人間たちの地獄の呻き声だ。俺を恨んで・・・呪って・・・こっちへ来い・・・早く
呪術師は呪詛師を含めて、いい意味でも悪い意味でもイカれた者が数多い。だがこのザンクは日々の死人の怨嗟の声に頭を悩ませていても首切りの快感には勝てなかった。それほどまでに彼はイカレきっており、救いがない。
「俺はしゃべって誤魔化してるが、お前はどう対処・・・」
「聞こえない」
「!」
「私には・・・そんな声は聞こえない」
ザンクの問いかけを遮るように
「・・・なんと。お前、御三家の養子だろ?お前なら人をたくさん殺してきただろうに。それならこの悩みも分かち合えると思ったんだが・・・」
少し憂いた様子のザンクが口を開くと、額にある目の装飾が見開かれる。同時にザンクは
「・・・悲しいねぇ!!」
目の装飾が完全に見開かれると、そこから眩い閃光が放たれた。あまりの眩しさに
「・・・
その人物とは
(『幻視』。その者にとって1番大切な者が目の前に浮かび上がる。奴は今、俺の姿がその最愛の人間に視えているはずだ)
そう、
(これで動きは封じたも同然。やりやすいことこのうえないなぁ。愉快愉快♪)
自身の勝利を確信したザンクは幻影に紛れてニヤリと口角をつり上げて歪んだ笑みを浮かべた。
●
都心メトロ渋谷駅B5F新都心線ホーム
偽夏油の策略にまんまと嵌まり、獄門疆に捕まってしまった悟は今まさに、封印されようとしていた。
「おやすみ、五条悟。新しい世界でまた会おう」
「僕はな。お前はそろそろ起きろよ」
抵抗することもできず、もうじき封印されるというのに悟は笑みを浮かべて口を開く。ただし、偽夏油にはなく、肉体に残された残滓に向けてだ。
「・・・いつまでいいようにされてんだ・・・傑」
悟が言い終えると、偽夏油にとって不可思議なことが起きた。
グググ・・・
「ん?」
バッ!ガシィ!!ギュウウウゥゥ・・・!!
「ぐっ⁉が・・・がっがっ・・・!」
なんと偽夏油は本人の意思とは関係なく右手が勝手に動き、自らの首を強く締めあげている。傑の肉体にはまだ魂の残滓が残っており、悟の言葉でそれが目覚めて偽夏油に反発したのだ。
「ぐっ・・・くっ・・・くふふふ・・・はは・・・はははははは!すごいな!初めてだよ、こんなの!」
偽夏油は苦しそうにしながらも愉快に笑い声を上げて、初めて経験する現象にはしゃいでいる。すると、真人があくび交じりに無量空処の影響からいち早く目覚めた
「ふわぁ~・・・・・・。・・・あっ、夏油~・・・」
「真人、見てくれ。君は魂は肉体の先にあると述べたが、やはり肉体は魂であり、魂は肉体なんだよ。でなければこの現象にも、入れ替え後の私の脳に肉体の記憶が流れてくるのにも説明がつかない」
偽夏油は反発する傑の魂の残滓を無理やり抑え込み、締め上げてくる右手を左手を抑え込む。偽夏油の問いかけに対し、真人はきょとんとしながらもさも当然のように答える。
「それって一貫してないといけないこと?俺と夏油の術式では世界が違うんじゃない?」
「・・・術式は世界か・・・ははは・・・いいね。素敵だ」
「ん?」
真人の主張に偽夏油は共感を抱く。そんな彼に真人は少しばかり怪訝な顔になる。
「お~い、やるならさっさとしてくれ。むさっ苦しいうえ眺めも悪い」
「こちらとしてはもう少し眺めていたいが・・・そうだね。何かあっても嫌だし」
うんざり気味な表情を浮かべる悟の言葉に同意するように、偽夏油はにっこりと微笑み・・・
「閉門」
獄門疆の閉門を宣言する。すると獄門疆の無数の目は見開き、悟を覆いつくすように閉じていった。悟を閉じ込めた獄門疆は元の小さな箱へとサイズを落としていき、偽夏油の手元にわたる。
「・・・これ、もう使えないんだっけ?」
「ああ。定員1名、中の人間が自死しない限り、使用不可だ。だから立て続けに禪院
「ふーん。つまんなっ。ま、何はともあれ・・・」
「封印完了」
偽夏油の策略によって、現代最強の呪術師が封印されてしまうというあってはならない事態が起きてしまった。
「・・・さて、禪院
上階を見上げる偽夏油はいったん手元の獄門疆を置き、真人に指示を出しつつ移動を始める。
「私は少しだけ席を外させてもらうよ。後のことはエスデスに任せておくから、彼女の指示に従って行動してくれ」
「あれ?もう行くわけ?」
「ああ。早くしないと・・・せっかくの同窓会に遅れてしまうからね」
首を傾げる真人に偽夏油は振り返り、口角を上げて笑みを浮かべるのであった。
●
都心メトロ渋谷駅B2F
「いい顔だなぁ。我ながらいいものを見せてあげてるようだ。この幻視は1人にしか利かないが催眠効果は絶大。そして・・・どんな手練れだろうと、最愛の者を手にかけることなど不可能」
ザンクは両腕の刃を再び展開して、
「愛しき者の幻影を見ながら死ね!禪院
『お前、
『・・・正直に言えば、殺したくはない。だが、話し合いではどうにもならないのもわかっている。・・・だからこそ・・・』
ズドッ!!!
ガキンッ!!!
自分自身の言葉がよぎった
「なっ・・・⁉こいつ・・・容赦なく・・・」
最愛の人物を視たにも関わらず攻撃してきた
「何故だ!!?1番愛する者が視えたはずだ!!!」
ザンクの疑問に、
「最愛だからこそ、早く止めなければいけないんだ。例え・・・殺すことになったとしても」
ゾッ・・・
(こいつ・・・何を・・・⁉)
「・・・今ので勝負はついた」
ピシッ!
ザンクの両腕の刃は今の一撃が堪えたのかヒビが入った。
(いかん・・・折れる!)
「まずは武器を葬る」
「ぬああああああああああ!!!死んでたまるかあああああああ!!!」
ザンクは意地を見せるかのように近づいてきた
(先に殺す!未来の動きが視える俺が有利!)
ザンクは未来視で事を有利に運ぼうとするが、
(ぐっ・・・即座に対応できん!なます斬りにする前に俺の剣が・・・!)
ギャリィ!!!
「葬る」
ズドッ!!
ザンクの首筋に刀を振るって、一筋の傷を与えた。
「カハッ・・・!」
喉元を斬られたことでザンクは倒れた。その瞬間・・・
ギュイン!
「!」
一筋の閃光が走り、
(!
「逃がすか!!」
アマテラスが鏡に入る前に
(また転移か!だが呪力からしてそう遠くはない!場所は・・・地下3階!)
(・・・音が・・・止んだ・・・)
自分に付き纏う怨嗟の声が聞こえなくなり、ザンクはにっと笑う。
「ゆ・・・愉快・・・愉快・・・。ありがとうよ・・・
ザンクは
●
都心メトロ渋谷駅B3F
アマテラスを追って地下3階に辿り着いた
ぐにゃり・・・
「う・・・」
すると一瞬、
『きゃあああああああああ!!!』
【ろ・・・ろ・・・ろろろろろ・・・】
【み・・・かかか・・・ん・・・はは・・・い~かが~?】
「・・・なんだこれは・・・」
それは大量の改造人間が一般人を襲い掛かっている光景だ。一般人は改造人間から悲鳴を上げて逃げたり、殺されて非飛沫をあげたり、改造人間に食われたりとまさに混沌と化している。
(あれが改造人間・・・。ということは、下にいるのか・・・七海が言っていた人型呪霊が)
悟が真人に負けることはないだろうと
「助けて!!誰か助けてくれぇ!!」
「!おい!下がれ!死ぬぞ!!」
恐怖で顔を引きつっている1人の一般人が改造人間から逃げるように
ボオオオオ!!!
何の前ぶれもなく青い炎が灯り、彼を焼き尽くした。そして炎は広がり、
特級仮想仮想怨霊 九尾
「うわあああああ!!化け物が増えたぁ!!」
「ひいいいいいいいい!!」
(ちっ、仮想怨霊か!いや、それよりも・・・非術師は今、見えているのか?目の前の呪霊が)
死に追いやるほどの恐怖によって非術師が呪霊の姿が見えるというケースは少なからず存在する。だがそれでも呪霊の姿が見えない事例の方が大きい。だが非術師は全員九尾の姿を視認できている。
ギュンッ!
するとその隙を与えないかのように一筋の閃光が迫ってきた。
(!
【オーーーーン!!】
ギュンッ!ギュンッ!
躱した瞬間、さらに別方向からも閃光が複数放たれてきた。
(3人だと⁉分身か!いや、鏡の術式ならば何も不思議なことは・・・)
鏡。その単語が頭によぎり、はっとした表情を浮かべた。そしてその直後に浮かんだのはザンクが見せた
(鏡・・・幻覚・・・まさか、これは・・・)
底まで考えると
(これで禪院
アマテラスの狙いとは、この状況を打破する唯一の手段を使わせることだ。
●
『鏡花水月。その能力は絶対催眠』
ハロウィン前日。アマテラスはツクヨミとウサギに術式能力を説明しつつ、作戦の説明する。
『5分間、鏡を割られることなく張り続けることによって完成する結界術。これに入ったが最後、その者は絶対催眠に陥る。
『?そりゃなんで?』
『禪院
『そりゃぶっ潰すでしょ』
『・・・あ、そっか。鏡花水月は姉様の思うがままに設定できる。非術師は非術師のままに、改造人間は改造人間のままにすることだってできる。それで討伐対象と護衛対象をごちゃまぜにしちゃえば・・・』
『そう、下手に手を出すことはできない。絶対催眠の状態で攻撃してしまえば、討伐対象と勘違いして非術師を殺しかねないですからね。その逆も然り。何もしなければ非術師に扮した改造人間が裏で非術師を殺しかねない。しかしそれでは領域展開を使う決定打にはならない。ゆえに、特級呪霊を使って無差別に暴れさせる。特級呪霊が暴れる中で、生者も死者も増えてしまえば、彼女も諦めて領域を使わざるを得ない』
絶対催眠の結界、鏡花水月を打ち消すには使用者であるアマテラスを殺すか、領域展開で結界そのものを打ち消す以外に方法はない。アマテラスはこの作戦で
『・・・でもそれだと非術師も巻き込むことになるんじゃあ・・・』
『神樂海紅の呪毒の強弱は禪院
●
アマテラスの読みは正しかった。これが罠だったとしても・・・
「領域展開―――"神樂海紅"」
パリィィィン!!
鏡の割れる音と共に、その真の姿を現した。3人のアマテラスや一部の一般人は改造人間となり、一部の改造人間は一般人となった。鏡花水月の効果が完全に消えたのだ。
ザシュ!!ザシュザシュザシュ!!
それを確認した
一か八かの賭けの0.2秒の領域展開。非術師が死亡せず、後遺症も残らないであろう最弱の呪毒。非術師は呪毒に蝕まれ、四肢の動きや全ての感覚が完全に遮断され、立ったまま気を失った。しかし半月後には全ての代謝機能が回復し、社会復帰を果たすそんなレベルの神樂海紅。九尾がいつまた動くかわからない。禪院
禪院
「はぁ・・・はぁ・・・」
「お見事」
その直後、目の前に鏡が現れて、そこからアマテラスが姿を現した。
「よく鏡花水月を見破られましたね」
「白々しい。わざとそう仕向けさせたのだろう。そのためにザンクを嗾けたんだ」
「・・・・・・」
「私の術式を知っている者が策を持たず挑んでくるわけがない。幻覚を作り出せるのならばなおさらだ。お前は私に領域を使わせるために、遠回しに自分の手の内を明かしたのだろう?違うか?」
「・・・
あっさりと自分の思惑を告白したアマテラスに
「もうお気づきですよね?過去、未来、事象、幻影、真実。
八咫鏡。
「・・・なぜ
「・・・もう貴様の遊戯に付き合ってられん。貴様はここで、葬る!」
自らの真意を話そうとするアマテラスに
「それはあなたと、あなたの一殺呪毒を封じるためですよ」
対しアマテラスは自身の目の前に鏡を作り上げ、転移の呪術を使う。
「そしてそのための仕掛けは・・・すでに動いています」
●
どんな形でもいい。必ず領域展開を使わせるんだ。その後は・・・
彼女と私の出番だ。
●
パリィィン!!ガキンッ!!
作り上げた鏡が割れると同時に、鏡より現れた人物は
「なっ・・・」
「・・・久しぶり。百鬼夜行以来かな?」
アマテラスによって転移させられた人物を見て、
「また会えて嬉しいよ、お姉ちゃん」
「・・・
その人物とは禪院
「・・・お前がなぜここにいる?なぜ
「まさかでしょ。こんな大規模な作戦、私には思いつかないよ」
「私はただ命令でここに来ているだけ。それ以上でも以下でもない」
「命令だと?誰の命令だ」
「お姉ちゃんもよーっく知ってる人だよ」
「何・・・?」
「ほら・・・すぐ後ろにいるよ」
そう言って
「や、
不意に背後からかけられた声。その声に
「・・・す・・・ぐる・・・?」
「久しいね」
そう、夏油傑だ。しかし、この男は夏油傑の皮を被った別の何かである。偽夏油は白々しくも友人と久しぶり会うような立ち振る舞いを演じている。もちろん、そんな事情を知らない
(なぜ・・・傑が・・・?いや・・・ありえない・・・だって・・・悟が・・・目の前で・・・)
困惑する思考とは別に、
「八咫鏡―――幻魔鏡」
「!!しまっ・・・!」
その隙を突くようにアマテラスは
「どうしたんだい、
赤女が鏡に閉じ込められた姿を見て、偽夏油は薄ら笑いを浮かべる。油断してまんまと罠にはまり、苦虫を噛み潰したような顔をする赤女。だが皮肉にもそのおかげで冷静になることができた。
「・・・違う」
「ん?」
「お前は夏油傑ではない」
「・・・何を言うんだい?まさか私が偽物だと言いたいのかい?悲しいね」
「・・・その呪力、その姿・・・確かに見れば見るほど、私の知っている夏油傑だと思わせられる。・・・だが!私の本能が、お前は違うと叫び続けているんだ!!早く答えろ!!お前は何者だ!!?」
殺気が込められた赤い瞳で睨まれている偽夏油は変わらず笑みを浮かべたまま。しばらくの沈黙の後、偽夏油の薄ら笑いはさらに不気味さを増し、観念したかのように口を開く。
「・・・はっ・・・五条悟といい・・・なんでわかるかなぁ。気色悪すぎでしょ」
自分の本性を現した偽夏油と彼の発した発言に
「お前・・・悟に何をした!!」
「そう睨むなよ。むしろ封印対象から外してやったんだ。生き地獄を味わう思いをしないだけありがたいと思わなきゃ。あ、でも、これから起こることを考えると、むしろ封印された方がよかったかもね?」
偽夏油は睨みを介さず、
「封印だと・・・?」
「ああ、心配しなくても、それは封印術じゃないよ。時間が経てば術は解ける。でも、その間の命の保証はできないけどね。理由はわかるだろう?」
偽夏油の言葉に対し、
(体に力や呪力が回らない・・・これでは術式が使えない・・・。それに対し、一緒に閉じ込められた
幻魔鏡の中にいる間、
「・・・君の術式凶悪すぎるんだよ。私の目的には邪魔なの。でも用意できる封印手段が1つしかなくてね。こういう手段をとらざるを得なかったんだよ。ホント、笑っちゃうよね」
自傷気味に苦笑する偽夏油が悠長にしゃべっている間、
「・・・おい、聞こえているのだろう。目が覚めているのならさっさと起きろ。・・・いつまで寝ぼけてるつもりだ、傑」
「はぁ・・・余計な手間を取らせないでもらいたいものだね。この魂を抑えるのも疲れるんだ。お互い無駄な労力を使うのはやめにしないか?どうせ無駄なんだから」
しばらく封じ込めていると、左手の震えは封じ込められたように収まった。するとずっと黙っていた
「お~い、やるならさっさとしてくれないかな?下手くそな演技を見せつけられて、こっちはムカついてんだよ」
「
「・・・ごめんね、お姉ちゃん。私には、優先したい子たちがいるから」
「ああ、すまないね。水を差すつもりはなかったんだ。後は姉妹水入らずで、ゆっくりと語ろうといい。アマテラス、もういいよ」
これ以上時間を先延ばす理由がない偽夏油はアマテラスに指示を出す。彼女はそれに従い、2人を閉じ込めている鏡に手を翳す。
「閉門」
アマテラスが宣言すると、鏡は強い光を放ち、辺りの空間を包み込む。光が収まると、鏡は手鏡のように薄っぺらく、小さいものへとサイズを落としている。中にいる
「以前にも説明しましたが、幻魔鏡はそう長く維持はできません。最低でも2時間が限界です」
「でもその間、禪院
偽夏油はふっと笑みを浮かべ、小さくなった鏡を手に取り、壁に放り投げて壊した。
「何はともあれ・・・作戦成功だ」
●
都心メトロ明治神宮前駅B5F渋谷駅線路上
時間は遡って、悟が封印された直後の時間。真人の向かった先が渋谷であると気付き、急ぎ渋谷へと急ぐ冥冥班。
そんな彼ら進む線路上の天井。何も見えない暗闇の中で、小さな起動音が人知れず鳴った。
希望の灯は、まだ完全に消えたわけではない。