呪術廻戦ー呪いを斬るー   作:先導

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昏乱

都心メトロ明治神宮前駅B5F渋谷駅線路上

 

電車に乗った真人が向かった先が悟と赤女(あかめ)がいる渋谷であるとわかった冥冥班は線路上を走り、急ぎ渋谷駅へと向かっている。

 

ピチャンッ!

 

「きゃっ!」

 

走っている最中、雨水が滴る音と共にマインの耳に何か冷たいものが落ちてきた。

 

「?先輩?」

 

「どうしました?」

 

「いや・・・今なんか耳に・・・」

 

マインが耳についた冷たいものがなんであるか確認しようと手を伸ばす。

 

[聞こえるカ?三好マイン]

 

「!」

 

すると、マインの耳についた冷たいもの・・・メカ丸の顔を模した端末からメカ丸の声が聞こえてきた。

 

[よく聞ケ・・・]

 

バッ!カーンッ!!

 

[アッ!!]

 

メカ丸の声にムカついたマインは耳についた端末を外して力強く地面に叩きつけた。そして勢いで宙に浮いた端末を手に取り、粉々に砕こうと力を込めて握りしめる。

 

[待て待て待て、味方だバカ!!京都校のメカ丸ダ!!]

 

声の主が本当にメカ丸本人であるとわかったマインは握りしめる力を緩め、他の3人にもメカ丸の声が聞こえるように手を開く。

 

[時間がなイ。1度で聞き分けロ]

 

メカ丸は4人に向けて、嘘偽りのない事実を告げる。

 

[五条悟が封印されタ]

 

「!!」

 

悟が封印されたと聞いて、悠仁は驚くように目を見開いた。しかし、冥冥とマインはその話に疑いの目を向けている。

 

「あの五条悟だよ?それに、赤女(あかめ)ちゃんも一緒に行動してたはずだ。彼女が一緒にいたならなおさら・・・何を根拠にそれを信じればいい?」

 

「そうよ・・・そんな素っ頓狂な話を信じろなんて、到底無理な話よ」

 

対しメカ丸は返ってきた想像通りの問いかけに淡々と答える。

 

[言いたいことは尤もダ。悪いが証明できる方法も何もなイ。あえて言わせてもらえバ、俺がここにいることが証明ダ]

 

「・・・どういうこと?」

 

[俺はすでに10月19日、真人という特級呪霊に殺されていル。今の俺は生前に残した保険にすぎなイ。高度な保険ダ。発動条件を五条悟の封印後に限定せざるを得なかっタ。不発のリスクを低減するたメ、事前にこの傀儡を忍ばせるのも4か所までとしタ]

 

10月19日に何があったのか。聞きたいことは山ほどあるが、今は時間がないと悟っているのか全員メカ丸の話に耳を傾けている。

 

[虎杖悠仁と三好マインは高専所属の術師の中デ、最も内通者の可能性が低イ。そしテ冥冥。あんたモこの状況で完全にシロと確信しタ]

 

「なぜ?」

 

なぜ自分たちが内通者ではないと言い切れるのか。冥冥の問いかけにメカ丸は根拠を述べる。

 

[索敵に長けている人間が渋谷で暗躍せず明治神宮前に派遣されているからダ。三好は俺から見ても直情的な人間ダ。そんな人間は内通者としては致命的ダ]

 

「悪かったわね、直情的で・・・!」

 

[虎杖はそもそも数か月前まで呪術界との繋がりがなかっタ]

 

「いやいや、体よく協力を拒むためかもよ?それにすぐに渋谷に向かおうとした虎杖君を今の今まで止めていたのは私だ。待機命令が出ていたとはいえ」

 

メカ丸の主張に冥冥は意地の悪い返答を返す。姉の本意を理解している憂憂はクスリと笑っている。

 

[ではなゼ、あんたを始末するための呪詛師がここに向かっていル?]

 

メカ丸の問いかけと同時に、4人はこちらに向かってくる強大な呪力に気付いた。マインはメカ丸の端末を悠仁に預け、ライフルガンのスコープで確認して向かってくる呪詛師の姿を確認する。こちらに向かってくるのは鎖で繋がれた犬の呪霊。その飼い主である爬虫類の被り物をした上半身裸の男だ。

 

「マインちゃん、向こうに何人いる?そいつらと君と虎杖君が戦った呪霊とどっちが強い?」

 

「1匹と1人ね。総合力から見ても、さっきのバッタよりも強い」

 

問いかけに答えるマインの回答に、冥冥は思案する。

 

(2人が祓った呪霊は人語を操っていたらしいし、少なく見積もっても準1級以上・・・そんな連中がうようよいるのか。今までどこで何してたんだろ?)

 

準1級以上の手練れと相手をするなど時間の無駄以外ない。今ここで無駄な戦闘をする必要がないと判断する冥冥はスマホを取り出し、悟の安否を確認しようと動く。

 

「呪詛師は無視して先に進もう。まずは赤女(あかめ)ちゃんと連絡を取って五条君の安否確認だ」

 

[ダメダ。もう渋谷の状況は変わっていル。相手の結界術はこちらの数段上手ダ]

 

メカ丸は冥冥を呼び止め、渋谷の現在の状況を説明する。

 

[今渋谷には5枚の帳が降りていル。

A、一般人を閉じ込める帳。

B、五条悟を閉じ込める帳。

C、禪院赤女(あかめ)を閉じ込める帳。

D、術師を入れない帳。

E、Aと同じ一般人を閉じ込める帳ダ]

 

「この線路の先もDの帳で塞がれていると」

 

[そうダ。既に待機していた術師たちは帳の中だろウ。帳の内側では携帯は使えなイ]

 

「それだけじゃないみたいだ。帳外にいるはずの補助監督とも連絡が繋がらない」

 

術師を入れない帳があるのならば、このまま進んでも弾かれてしまうのは言うまでもない。連絡を入れようとしていた補助監督の連絡が取れないことから、だんだんとメカ丸の話の信憑性が高くなってきている。

 

[そして最悪なことニ、奴らが立てた禪院赤女(あかめ)を始末する計画が始まっていル。もちろンあいつが簡単にやられるようなことはないガ、敵には術式を使えなくする術を持っていル奴がいル。もしそれを使われてしまえば・・・]

 

「最悪、彼女が殺されてしまう可能性が大幅に上がるというわけか・・・」

 

[頼ム。俺の指示に従ってくレ。俺のこの保険もすぐ消えてしまウ。頼ム]

 

「冥さん。ムカつくけどこいつの話、信じてもいいと思う」

 

「うん。俺も同感っす」

 

マインと悠仁は死んだ人間が保険を残してまで嘘をつくとは到底思えなかった。何より、今のメカ丸には敵の計画を止めたいという誠意が感じられた。

 

「う~ん・・・」

 

冥冥は少しばかり考え、最終的にはメカ丸の話を信用し、指示に耳を傾けようとする。

 

「わかった。言ってごらん?」

 

[虎杖と三好は明治神宮前に戻り、地上から渋谷に向かってくレ。五条封印、及び禪院赤女(あかめ)の危機を術師全体に通達。五条奪還、禪院赤女(あかめ)の解放をこちらの共通目的に据えロ]

 

「応!」

 

「わかったわ」

 

[冥冥は虎杖たちが抜ける隙を作ってくレ。呪詛師撃退後はとりあえずこの線路を抑えておいてほしイ。だが相手の出方がわからン]

 

「臨機応変ね。ところで君の口座はまだ凍結されていないね?」

 

[エッ?]

 

(あ、この人搾り取る気ね・・・)

 

どうやら冥冥は見返りとしてメカ丸が術師として稼いだお金が狙いのようだ。それで動くからいいが、相変わらずの守銭奴ぶりにマインは引き気味で憂憂はクスクスと笑っている。

 

[五条悟や禪院赤女(あかめ)が消えれば呪術界も、人間社会もひっくり返ル。すまないが命懸けで頼ム]

 

指示を出すメカ丸が一瞬浮かび上がるのは、優しく微笑む三輪の姿であった。

 

(それでもいいと思っていたんだが・・・最低だな、我ながら)

 

同級生・・・彼女に会うためなら何を犠牲にしてもいいと考えていたメカ丸は心ながらに自傷する。

 

「ねぇねぇ、僕は?」

 

[好きな方に付ケ]

 

「じゃあ姉様!!」

 

「ブレないわね、このクソガキも・・・」

 

4人の中で唯一役割を与えられなかった憂憂はメカ丸の言葉に迷わず冥冥側についた。姉弟そろってブレない姿勢を見てマインは呆れた様子を見せている。

 

「みんな、来たよ」

 

話している間にも犬呪霊と爬虫類の被り物をした呪詛師、蝦名が姿を現した。

 

「冥冥だな?」

 

メカ丸の言うとおり、蝦名の狙いは冥冥の命だ。であるならば彼の妨害を突破して明治神宮前まで戻るのはそう難しいことではない。3人はそれぞれ身構え、戦闘態勢に入る。

 

「好きに動いていいよ。合わせるから」

 

「押忍!」

 

「了解!」

 

かくして、五条悟の奪還、禪院赤女(あかめ)救出に向けての行動が開始されるのであった。

 

 

21時25分 幻魔鏡内部

 

目を閉じていた赤女(あかめ)は目を開けて辺りの空間を見渡す。その空間は辺り一面に鏡が張り巡らされており、至る所に彼女の姿が映し出されている。

 

「・・・ここは・・・」

 

「幻魔鏡。アマテラスが数多く持ってる結界術の1つ。ここに入れられた奴はみーんな、術式が使えなくなるんだよ。それはお姉ちゃんも感じてるんじゃない?」

 

赤女(あかめ)の疑問に答えるように、同じく閉じ込められた黒女(くろめ)が鏡の台座から降りてきて彼女の前に立つ。

 

黒女(くろめ)・・・」

 

「でもね、私はあいつに許可をもらってるから術式が使えるよ。それだけじゃない。呪力も力も満ち溢れてる。今ならなんだってできる気分だよ」

 

黒女(くろめ)は説明が真実であると証明するために自らの術式を使い、彼女が仕入れた骸人形を1体召喚する。

 

「どう?なかなか強そうでしょ?百鬼夜行で五条悟に全部壊されたからね。一から揃えるのに苦労しちゃったよ」

 

饒舌に語る黒女(くろめ)だが、赤女(あかめ)はそんなことは気に止めず、気になっていることを尋ねる。

 

「・・・黒女(くろめ)。お前、初めから気付いているのだろう?あいつが、傑じゃないことを」

 

赤女(あかめ)の問いかけに対し、黒女(くろめ)は嬉々とした表情から一気に冷めた顔つきになる。

 

「・・・当たり前だよ。あの人とは11年も一緒だったんだ。間違えるわけがないよ」

 

「ならなぜだ⁉なぜ傑の皮を被ったあの道化と手を組んでいるんだ⁉」

 

黒女(くろめ)は質問に答える気がないようで、刀を抜いてその切っ先を赤女(あかめ)に向ける。

 

「そんなこと教えると思う?私が何をして、誰と手を組もうが、私の勝手でしょ?」

 

「・・・やはり、お前とは分かり合えないのか?」

 

「無理だよ。私が猿が大嫌いなのは揺るがない事実。そいつらを守ろうとする術師とは、絶対に相容れられない。それが例えお姉ちゃんであってもね」

 

わかっていたこととはいえ、愛する妹からの拒絶の言葉を放たれて、赤女(あかめ)はもの悲し気な表情を浮かべる。が、すぐに平常心を取り戻し、刀を構える。

 

「・・・そうか。なら私は、何としてでもお前を止めなくてはならない。例えそれで、殺すことになったとしてもだ」

 

「お姉ちゃんの腕っぷしや技量は私が1番知ってる。術式が使えなくなったからと言って、手加減するつもりはないよ。最初から全力で行くから」

 

手加減する気がない黒女(くろめ)は自分が所持している骸人形を一気に8体全部を召喚してきた。黒女(くろめ)自身も刀を構え直し、真っ向から赤女(あかめ)に挑もうとする。

 

人知れない鏡の中で、姉妹同士の殺し合いが今、始まろうとしていた。

 

 

21時26分 都心メトロ渋谷駅B5F新都心線ホーム

 

偽夏油から獄門疆を預かったエスデスは陀艮と三獣士を引き連れて、無量空処の影響で未だボーッとしている漏瑚、脹相、ツクヨミ、ウサギの回復を待っている。しばらく待つと3人と1体は眠そうにしているが、ようやく影響が抜けてきた。

 

「全員起きたな?では今後の・・・」

 

エスデスが次の方針を話そうとした時、持っていた獄門疆に変化が起きたことに彼女は気がついた。

 

「?どうした?」

 

エスデスはその変化から獄門疆を手放した。すると・・・

 

ズシイイイイイイイン!!!!

 

獄門疆はありえないほどの重力に引かれたかのように落ち、凄まじい衝撃音と共に地面にめり込む。その衝撃波クレーターが出来上がるほどである。

 

「なっ!!?」

 

「くっ・・・なんて奴だ・・・!!」

 

獄門疆に起きた前代未聞の事態。さすがに予想外だったのかエスデスは苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべている。獄門疆についている複数の目はギョロギョロと動き、涙の雫が溢れ出た。

 

 

獄門疆の中は非常に異質なものだ。辺りは真っ暗で、周りには数多の遺骨がカタカタと動いている。いかにも気が狂いそうな空間で悟は寝そべり、アイマスクをかけ直しながら今の状況を分析する。

 

「物理的時間は流れてないっぽいね。まずったよなぁ。いろいろとヤバいよなぁ」

 

状況を理解しているのかしていないのか、悟は呆れるほどに呑気で楽観的だ。

 

「ま、何とかなるか」

 

獄門疆の中では呪術は使えないため、抵抗しても無駄とわかっている悟が思い浮かべるのは自身が期待を寄せている大事な生徒たちの姿だ。

 

「期待しているよ、みんな」

 

 

同刻、ずっと待機していた各班の呪術師たちも動き始めた。

 

JL渋谷駅新南口(帳外)

 

日下部班

 

「確かに・・・駅に閉じ込められた分を差し引いたとしても、人口密度低かったな」

 

渋谷マークシティ レストランアベニュー入り口(帳外)

 

禪院班

 

「改造され、建物内に待機していた人間が今になって非術師を襲い始めたか」

 

待機している間、直毘人はいくつものビールを飲み干し、ちょっと酔っぱらっている様子である。任務であるにも関わらず堂々と酒を飲んでいる直毘人にレオーネを始め、真希、野薔薇は冷たい視線を彼に送っている。

 

金王八幡宮(帳外)

 

ブラート班

 

「だから俺たちもここで待機をやめて、突入を決行。仕方ないこととはいえ、対応が後手に回りすぎだぜ」

 

都心メトロ渋谷駅 13番出口側(帳外)

 

七海班

 

「・・・だが1番気掛かりなのは・・・」

 

「同時に下りた術師を入れない帳ですね。五条先生たちが現着してからそこそこ時間が経ってる。なぜこのタイミングなのでしょうか?」

 

「中で何かあったのか・・・戦略上このタイミングである必要があったのか・・・。いずれにしても、確実に言えるのは無策で挑んでくるタイプではないということです」

 

敵の出方を考察するシェーレが真っ先に思い浮かんだのは神奈川で二度戦った真人であった。

 

「私は帳を降ろしてる敵を。3人は片っ端から一般人を保護してください」

 

七海は指示を出し、3人を引き連れて帳の中へと突入していった。

 

七海班だけではない。日下部班、禪院班、ブラート班。それぞれの班が帳の中へと入っていく。

 

四班、突入。

 

 

都心メトロ渋谷駅13番出口(帳外)

 

連絡係としてここで待機している伊地知は連絡網の強固のために補助監督同士の連携強化の連絡を各補助監督にとっている。現在はメッセージ用のスマホで他の補助監督にメッセージを、電話用スマホで明と連絡を取り合っている。

 

「ええ。はい。状況を確認次第、新田さんはもう1度帳の外へ。中で電波が断たれる以上、常に誰かが外にいなくてはならない。あなたにはその役をやってもらいたい。今から補助監督役だけで何としても連絡網を確立する。非番と窓の一部も動員すれば可能・・・」

 

「えい」

 

ズンッ!!

 

「うっ・・・」

 

伊地知が連絡を取っていると、何者かが彼の背後に立ち、鋭利な剣で彼の腹部を貫き刺した。

 

「えいっ!えいっ!え~い!」

 

ズンッ!!ズンッ!!ズンッ!!

 

1回だけにとどまらず、2回、3回、4回と連続で突き刺され、伊地知は倒れ、鉄柵に頭をぶつけて気を失ってしまった。伊地知を刺したのは交流会襲撃に参加していた呪詛師、重面春太であった。春太は伊地知の頭を踏みつける。

 

「やっぱ俺には弱い者いじめが向いてるなぁ~。これでいいんでしょ?」

 

春太が問いかけている相手は、偽夏油と行動を共にしていた年齢不詳の銀髪おかっぱの呪詛師であった。

 

「はい。あなたはこのまま帳の外でスーツの人間を狩り続けてください」

 

呪詛師がスーツの人間・・・即ち、補助監督を狙う理由はただ1つ、術師との連絡手段を遮断させるためだ。しかしそんな狙いがあることは春太は知らないし、興味もないことだ。

 

「は~い。終わったら中行ってもいいよね?」

 

無邪気に返事をする春太に対し、おかっぱの呪詛師はただにっこりと微笑んでいる。

 

 

都心メトロ渋谷駅B5F新都心線ホーム

 

獄門疆が急に重くなり、手で持つことができなくなってしまったこの事態に特級呪霊たちは疑問符を浮かべている。

 

「何これ?どういうこと?」

 

「封印自体は完了している。だがまだ獄門疆が五条悟という情報を処理しきれていないのだ。しばらくは動かすことはできんな」

 

どうやらこれは封印した悟の情報の処理にかなり手間取っていることで発生した現象のようだ。それほど悟の存在は規格外で、エスデスにとっても予想できたものではなかった。すると真人は何かの存在に気がつき、視線を別のところに向けた。そして、その視線の先にあるものに向けて腕を伸ばしてそれを破壊した。

 

「・・・はっ。これは1本取られたな」

 

破壊されたものを見てエスデスは不敵な笑みをこぼした。真人が破壊したものとは、メカ丸が残した4つの保険の内の1つであった。そしてこの保険端末が見た情報は、残り3つの保険端末にしっかりと情報が共有されている。

 

 

都心メトロ渋谷駅B3F

 

アマテラスの幻魔鏡を使い、姉妹同士の殺し合いを画策した偽夏油はアマテラスと次の方針について話し合っている。

 

「さて、と・・・私は一旦下に戻らせてもらうけど・・・君はどうする?」

 

「下にいるツクヨミと合流します。その後は弟を探しに、渋谷中を散策するつもりでいます。構いませんね?」

 

「もちろん。幻魔鏡を維持さえしていれば、後は好きにすればいい」

 

アマテラスはツクヨミと合流しようと、下の階に向かおうとした時、こちらを見つめてくる視線に気がついた。そして、視線が向けられているものに向かって彼女は鏡を召喚し、光のレーザーを放った。レーザーは視線を向けられていたもの、メカ丸の端末を粉々に破壊した。

 

「・・・やられたね」

 

こちらの状況を見られてしまい、偽夏油は不敵な笑みを浮かべる。事の顛末は全て見てきたため、情報は残り2つの端末に共有された。

 

 

21時27分 明治神宮前~渋谷間

 

蝦名という障害を突破し、地上に出て渋谷に向かって走っている悠仁とマインにメカ丸は地下3階、地下5階の保険端末が見た情報を伝える。

 

[虎杖、三好、いいニュースダ]

 

「え?何?」

 

[奴ら封印した五条を地下5階から動かせなイ]

 

「なんで?」

 

[五条悟だからダ]

 

「ははは、納得!」

 

「確かに、これ以上ないくらいの納得材料ね!」

 

五条悟だから動かせない。そんな簡潔な言葉だけで納得する悠仁とマイン。

 

[だが悪いニュースもあル。禪院赤女(あかめ)抹殺計画が最終段階に入っタ]

 

「てことは、赤女(あかめ)はもう幻魔鏡の中に⁉」

 

[そうダ。幻魔鏡を破るにハ、禍津神三貴子(まがつがみみはしらのうずのみこ)、アマテラスを倒す以外方法がなイ。それまでハ、禪院赤女(あかめ)が無事であることを祈る以外なイ]

 

起こってほしくない最悪のシナリオが起こったことを知らされ、マインは苦虫を嚙み潰したような顔になる。

 

「大丈夫だよ。先生は誰が相手でも、負けないから」

 

そんな中、悠仁は赤女(あかめ)のことを信じてそう断言している。何の根拠もない言葉だが、その力強い言葉にマインは一瞬呆けるが、すぐに自然と笑みを浮かべる。

 

[包囲網を作るゾ。渋谷駅、各地下鉄線路の隣駅から術師を向かわせロ。術師を入れない帳が上がり次第、突入ダ]

 

「向かわせろって言ったってどうやって他の奴らに伝えるよ⁉さっきから伊地知さんや他の補助監督と連絡取れないのよ⁉」

 

「う~ん・・・あっ」

 

「え、何?」

 

[なんダ?]

 

伊地知や他の補助監督と連絡が取れない状況下でどうやって他の術師に連絡を入れるべきか考えると、悠仁はあることを思い出した。それは明治神宮前に行く前のことだ。

 

『ねえ、渋谷には誰が来てんの?』

 

『え~っとね~・・・』

 

悠仁が渋谷に来ているメンバーを思い出している間にも、渋谷に到着し、2人が帳の中へと突入する。帳の中では改造人間が外に溢れ出て、一般人を襲っている。これを見た悠仁はすぐに助けに向かおうとする。しかしそれより早くマインはライフルガンの引き金を引き、改造人間の脳天に弾丸を撃ち込んだ。

 

「ここはマルチタスクで行くわよ!あたしが改造人間を引き付けるから、あんたは他の術師に伝達を!」

 

「押忍!」

 

マインの指示を聞き入れた悠仁は常人を越えた身体能力で跳躍し、段差を1段ずつ飛び越えて1番高いビルの屋上まで向かう。マインの存在に気付いた改造人間は一斉にマインに襲い掛かってきた。マインは近づいてくる改造人間を1発ずつ弾丸を撃ち放ち、改造人間の脳天を貫いて倒していく。背後からも改造人間が襲ってきたが、マインは改造人間の攻撃を屈んで躱し、バク転と同時に改造人間の顎を蹴り上げ、弾丸を撃ち込む。1体倒し、さらにもう1体弾丸を撃ち込んで次々と改造人間を倒していく。押し倒してくる改造人間もマインはいくつもの風穴をつくるように撃ち込んで倒していく。改造人間を次々と撃ち倒していくと、建物の中より他より巨大な改造人間が飛び出してきた。

 

【よ~よよよよ・・・呼んだあ~?】

 

巨大改造人間はマインに向かって突撃し、拳を振るう。マインはその大振りの拳を躱し、体を支えている腕に蹴りを叩き込み、巨大改造人間の体制を崩す。倒れてくる巨大改造人間にマインはライフルガンを改造人間の顔に突きつけ、弾丸を何十発も撃ち込み、倒していく。

 

「たくっ、どいつもこいつも・・・趣味悪いったらありゃしない!」

 

人間を改造して呪霊のように襲わせるこれにマインはイラつき、悪態をついている。マインが改造人間の相手をしている間にも悠仁は1番高いビルの屋上まで登り切った。大声を出せばこだまが聞こえてきそうなこの場所で、悠仁は大きく息を吸い込み、力いっぱいの大声を張り上げる。

 

 

 

「ナナミ~~~~~~~~ン!!!!!!」

 

 

 

ナナミ~~~~~~~~ン!!!!

 

 

 

「ナナミンいる~~~~~!!!???」

 

 

 

ナナミンいる~~~~~!!??

 

 

 

悠仁の張り上げた大声は渋谷の街に大きく響き渡っていく。

 

 

ナナミンいる~~~~~!!??

 

「!虎杖?」

 

「悠仁?」

 

「な、ナナミン?」

 

悠仁のこだまする声は渋谷中に広がっているため、簡単に聞きつけることができる。そのためしっかりと聞き取れた七海班はすぐに反応した。

 

五条先生があ!!!封印されたんだけど~~~~!!!

 

「!!!!」

 

「封印!!??」

 

悟が封印された。そんな信じがたい情報に七海班は目を見開いて驚愕する。

 

んでぇ!!!赤女(あかめ)先生があ!!!なんか大ピンチっぽいんだけど~~~~!!!

 

「んなっ!!??」

 

赤女(あかめ)が!!?」

 

悟に封印に続き赤女(あかめ)が危険な状況にあるという情報に七海班の驚愕はさらに強くなる。

 

「3人とも、予定変更です。すぐに虎杖君と合流します」

 

驚く情報でも七海は冷静に頭を回転させ、最適な指示と行動をとる。

 

「もし五条さんの封印が本当で、赤女(あかめ)さんまで失ってしまえば、終わりです。この国の人間全て」

 

考えたくもない最悪のシナリオ。それを回避するためにも1秒でも早く詳細を聞き、行動に移さなければならない。さもなくば本当に日本は終わる。

 

 

都心メトロ渋谷駅B5F新都心線ホーム

 

「いや~、バレたね。こっちの状況。術師が総力を挙げてここに来るよ」

 

真人は生前の与が残した端末を踏みつけ、粉々に砕く。

 

「私はここに残るが・・・貴様らはどうする?」

 

「俺は弟の仇、虎杖悠仁と釘崎野薔薇を殺す。その後高専に保管されている他の弟たちを回収する」

 

脹相が悠仁を殺すことを明確にすると、漏瑚が異を唱える。

 

「釘崎とやらは知らんが虎杖はダメだ。宿儺にする」

 

「関係ない」

 

「ああ?」

 

意見がすれ違う脹相と漏瑚はガンを飛ばし睨みあう。そんな2人を真人が止める。

 

「漏瑚落ち着いて。う~ん・・・」

 

真人は考える素振りを見せて、自身の考えを明かす。

 

「やっぱり俺も虎杖殺したいかな」

 

「真人!!何を!!」

 

「五条悟の実物を見た感じさ。五条を封印した今、術師の頼りは禪院赤女(あかめ)なわけじゃん?でも今あいつの魂の位置が見えないんだよね。てことはさ、鏡の世界に閉じ込めることに成功したってわけだ。禪院赤女(あかめ)が介入できなくなった今、術師と呪霊はイーブン。宿儺が復活すれば超優勢。ほぼ勝ちってことでしょ?」

 

「まぁそうだな」

 

「じゃあさ、今の戦力でも勝つときは勝つってことじゃん」

 

この渋谷での戦いで呪霊側が勝つ見込みは十分にあると判断した真人はニヤリと歪んだ笑みを浮かべる。

 

「虎杖殺しちゃお。大丈夫。宿儺なんていなくたって俺たちなら勝てるさ」

 

「本気か?」

 

「本気と書いて大マジさ」

 

勝てると言い切れるほどの自信と同時に現れる傲慢ぶり。真人の主張は正しいのかもしれない。しかしそれ以前に漏瑚の目的、呪いと人間の立場が遠のく可能性が高い。ゆえに漏瑚は真人の主張を受け入れるわけにはいかない。

 

「宿儺は味方ではない。復活したことで儂らが負うリスクが大きいかもしれん。だが宿儺が復活すれば確実に呪いの時代が来る。儂らは今の人間共とは違うのだ。死すら恐れず、目的のために裏表のない道を歩む。それが偽物共にはない呪いの神髄だ」

 

「違うっしょ」

 

「ん!!??」

 

「軸がぶれようと一貫性がなかろうと、偽りなく欲求の赴くままに行動する。それが俺たち呪いだ」

 

真人の主張に対し、漏瑚はだんだんと怒りがこみ上げ、頭から湯気が沸騰してくる。

 

「ああ~、違うって言ったのは呪いの在り方で復活案自体はありだと思ってるよ?漏瑚と争う気もない。だから・・・ゲームをしようよ」

 

真人は漏瑚をなだめつつ、自身が提案するゲームについてのルールを説明する。

 

「俺が先に虎杖とエンカウントしたら奴を殺す。漏瑚が先なら指を差し出して宿儺に力を戻せばいい」

 

「俺が先なら俺が()る。いいな?」

 

「おい!!」

 

「お、脹相も参加する?もちろんいいよ」

 

弟たちの敵討ちに燃えている脹相の参加表明に真人は歓迎している様子だ。その後、真人はツクヨミと三獣士に視線を向ける。

 

「で、君たちはどうする?参加は大歓迎だよ?」

 

「くだらない・・・暴れたいなら勝手に暴れればいい。私は姉様と合流したい」

 

「だってさ。残念だったね、モブ呪霊」

 

「ふ~ん。つまんな」

 

不参加を主張するツクヨミに真人はノリの悪さからひどく落胆する。

 

「貴様ら呪霊の指示は受けん。エスデス様の命令であるのならば、それに殉ずるのみ」

 

「だってさー。エスデスは夏油に雇われてるわけだから、どっちかっていうと漏瑚派だろ?どうなの?」

 

「夏油が留守の間、私が獄門疆を見ていなければならない。参加したいのならば好きにすればいい」

 

「・・・ふーん?」

 

エスデスは参加の選択権を三獣士自身に任せた。尤も、ダイダラの方は戦いたくてウズウズしている様子であるため、おそらくは参加だろう。対し真人は口元に笑みを浮かべてはいるが、彼の目線はどこか疑惑が込められていた。

 

「遠慮することはない。私にとっても夏油にとっても、宿儺は獄門疆が失敗した時の代案にすぎない」

 

真人の疑惑の視線に対し、エスデスはのらりくらりと返答を返す。

 

「バカバカしい。術師たちは虎杖を含め皆五条を助けにここに向かってくる。ならばここで待てばいい。ゲームになら・・・」

 

「用意・・・ドーン!!」

 

真人は漏瑚の言い分を聞かず、陀艮と共に上階へと向かって行った。脹相も漏瑚に向けて小ばかにした笑みを浮かべて上階へと向かって行った。

 

「~っ!待たんかぁ!!!」

 

漏瑚も真人たちを止めるべく上階へ向かって行く。

 

「ではエスデス様、我々も」

 

「うむ。思う存分暴れてこい」

 

「はっ。行くぞ」

 

「はーい♪」

 

「待ってましたぁ!!」

 

三獣士も思うがままに暴れるために上階へと向かって行く。

 

「・・・行こ、ウー」

 

「ニヒッ、アマさんと合流、だね!」

 

「うん」

 

ツクヨミもアマテラスと合流するために上階へと向かって行く。この場に残ったのはエスデスと、無量空処で廃人と同然の一般人のみである。

 

「・・・呪霊の方が貴様らより利口だな」

 

エスデスは背を向けて、一般人の群れの中に隠れている者に声をかけた。

 

 

 

「返せ」

 

 

 

隠れていた者とは、傑に崇拝する夏油一派の呪詛師、金髪お団子ヘアのギャルの少女、柳場菜々子と黒い髪の大人しめな少女、柳場美々子の双子の姉妹であった。

 

「私たちはお前たちに協力し、猿共を落とし続けた」

 

「約束通りあいつから夏油様の体を奪い返せ」

 

「夏油様をこれ以上・・・」

 

「これ以上弄ぶな」

 

菜々子と美々子は上から一般人を落とし続けた対価として、偽夏油が乗っ取っている傑の遺体を要求している。

 

「はっ。バカか貴様らは?話は聞いてやるとは言ったが、約束を守るとは言っていないぞ?それとも貴様らのお姉様は縛りの重要性を教えてもらわなかったのか?次術師と約束する時は、縛りを明確にしておくのだな」

 

これが縛りであるならばともかく、縛りでもない約束を果たすつもりがないエスデスは2人に向かってバカにするような笑みを浮かべる。

 

「・・・私は慈悲深い。今この瞬間の出来事はなかったことにしてやる。だからさっさと去ね。不愉快だ。それとも、崇拝する夏油様に殺されたいか?」

 

「・・・後悔するぞ」

 

話をするだけ無駄であると悟った菜々子と美々子はあっさりと引き下がり、悪態を残してその場を去っていった。

 

「・・・後悔、か。さて、それはどんな味だ?」

 

2人が去った後、氷の玉座を作り上げて座り込んだ。苦し紛れな悪態にエスデスは挑発的な笑みをこぼしている。

 

 

 

 

「ナナミ~~~~~~~~ン!!!!!!」

 

 

 

ナナミ~~~~~~~~ン!!!!

 

 

 

「ねぇ。・・・ねぇって!」

 

ビルの屋上で懸命に七海に呼び掛ける悠仁に改造人間を倒し終えたマインが声をかける。しかし、自分自身の大声とこだまによって彼女の声はかき消されている。

 

 

 

「ナ・ナ・ミン!!!ナ・ナ・ミン!!!ナ・ナ・ナ・ナ・ナ・ナ・ミン!!!」

 

 

 

ナ・ナ・ミン!!ナ・ナ・ミン!!ナ・ナ・ナ・ナ・ナ・ナ・ミン!!

 

 

 

「・・・聞けぇ!!!」

 

ドゲシィ!!!!

 

「ぐへ!!?」

 

いい加減鬱陶しく感じたマインは悠仁に痛い蹴りを放つ。この痛みでようやく彼女に気がつく悠仁。彼女の元には悠仁のこだまで駆けつけた七海班の4人が集まっていた。

 

「たくっ・・・こんな時に遊んでんじゃないわよ」

 

「あっ!先輩・・・と、伏黒!ナナミン!シェーレ!・・・誰?」

 

(ナナミンってマジで七海さんのことだったんだな・・・)

 

何はともあれ、悠仁とマインは七海班に地下でメカ丸のこと、現在の状況、渋谷の状況をメカ丸と共に伝えた。その際に、七海は傑の名前に反応する。

 

「夏油さんが?」

 

[正確に言うト、夏油傑の裏にいる何者かダ。今渋谷駅構内はまさニ伏魔殿。特級とそいつらが連れてきた呪霊。夏油の息のかかった呪詛師。そして改造人間と一般人]

 

状況を聞けば聞くほど、全員は渋い顔つきになる。

 

「でもまさか、エスデスや夏油の名前まで聞くとは思わなかったわ」

 

「あれ?知ってるんすか?」

 

「エスデスは悟や赤女(あかめ)、それから憂太と夏油と同じ特級の1人よ。夏油とは・・・まぁ去年ちょっとした因縁があってね。とにかくそいつらはあんたらの想像の上を越えるくらい強い」

 

悟や赤女(あかめ)と同じ特級呪術師であるエスデスと傑は強いとハッキリ言ったことで恵と悠仁は固唾を飲みこむ。マインが去年の百鬼夜行で傑に痛めつけられたこともあることから、信憑性はかなり高いと恵は睨んでいる。

 

「確かにそれなら地下鉄の隣駅から攻めた方が1番手っ取り早いですね」

 

「だが、そのためにはまず帳を解かなくては」

 

突入するにしても、術師を入れない帳がある以上、術師が地下駅に入ることは叶わない。まずは帳を降ろしている元凶を絶たなければならない。だが悠仁たちを信用してないわけではないが、ここで戦力を分散していいものかと七海は思案する。

 

[緊急事態ダ。マルチタスクで頼ム]

 

(四の五の言ってる場合ではないか)

 

しかし悟が封印されている今、悠長に考えている余裕はないとし、即座に指示を出し、行動を移すことにする。

 

「1級でしか通らない申請がいくつかある。外に出て伊地知君とそれら全てを済ませてきます。皆さんにはその間、術師を入れない帳を解いてほしい。シェーレさん、猪野君」

 

「「!」」

 

「日下部さんやブラートさん、禪院特別1級術師もこの帳内にいるはずです。合流できた場合、現状を伝えて協力を仰いでください。あの大声でもう伝わってるかもですが」

 

「はい」

 

「了解!」

 

「それから・・・3人を頼みます」

 

「「・・・!はい!!」」

 

七海は5人に術師を入れない帳の対処を任せ、1級術師しかできない申請手続きのために扉からビルを降りていく。その際に学生たちのことを頼まれたシェーレと猪野は七海に頼られたことで気合の入った返事を返す。猪野はその余韻に浸っている。

 

「猪野さん?」

 

(・・・七海さんに・・・頼られちゃった・・・!)

 

かわいい後輩の猪野の気持ちを察しているのかシェーレはクスリと微笑んでいる。

 

「お前ら!任務の前に事の重大さを教えてやる。題して!五条さんと赤女(あかめ)さんがいなくなって困る3つのこと!

1つ!五条家の失墜!五条家は五条悟のワンマンチーム。五条さんが利かせていた融通(わがまま)で救われていた術師が多くいる。虎杖、お前もその1人なんじゃないか?」

 

「っすね!」

 

「軽いな!」

 

(そういえば憂太も似たようなもんだっけ)

 

悟のわがままで救われた1人である悠仁の軽さに猪野はツッコミを入れる。マインは同級生の憂太も悠仁と似たような状況であったことを心ながらに思い出していた。

 

「そういう連中がみ~んな困ったさんになってしまい、最悪消される。

2つ!赤女(あかめ)さんが築き上げた術師の統率の崩壊!禪院家の当主じゃないにしても彼女の発言力は五条さんに救われた術師にとっては大きな影響力がある。そんな彼女がいなくなってしまったなんて話が知れ渡ってもみろ。み~んな大混乱。最悪の場合だと困ったさんみんな仲良く潰し合いだ。

そして3つ。パワーバランスの崩壊。五条悟がいるから。禪院赤女(あかめ)が怖いからという理由で大人しくしてた呪詛師、呪霊たちが一斉に動き出す。その1とその2でごたついてる時、その3の奴らとプチ戦争なんて起こってみろ。負けるぜ。俺とシェーレさん、七海さんはそう読んでる。負けたらどうなる?」

 

「少なくとも日本では人間の時代が終わるかもしれませんね」

 

「そうならないためにも2人を・・・最低でも赤女(あかめ)は助けないといけない、でしょ?」

 

「へっ、わかってんじゃねぇか。行くぜ後輩ちゃんズ!七海さんが戻る前に帳をぶっ壊す!」

 

これからやるべき方針を見据えた5人はすぐに行動に移った。

 

「五条悟と禪院赤女(あかめ)を助けるぞ!!」

 

こうして、悟と赤女(あかめ)、2人の救出作戦が今、始まる。

 

 

渋谷Cタワー

 

悠仁たちが行動を開始した頃の渋谷Cタワー。タワーの屋上では偽夏油の指示で待機していた呪詛師がいる。

 

1人は執事服を着込んだ白髪も髭もしっかり整えた老人。

 

「・・・オガミさん、栗坂さん、聞こえましたか?五条悟が封印された。敵方に情報が漏れておりますぞ」

 

1人はギッチギチの白Tシャツに短パン、そして腹巻という半世紀ぐらい前の服装をした達磨眉を持つ初老人。

 

「いいじゃねぇかダニエル。俺はようやく実感が湧いてきたぜ。マジで封印されたんだな、五条悟。興奮して来たぜ。これからどうなっちまうのかなぁ、この国は。なぁ、オガミ婆」

 

1人は法被を着込んだ古めかしいイタコ風の身なりをした反転目の老婆。そのすぐそばに金髪モヒカンのあまり目立たない男がいる。

 

「何も変わらん。呪い呪われ死ぬだけよ」

 

この3人の老人呪詛師とその連れはこれから来るであろう術師たちを迎え撃つために静かに待つのであった。

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