呪術廻戦ー呪いを斬るー   作:先導

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正義

1年前。傑が高専に宣戦布告し、呪術テロ、百鬼夜行の準備をしていた時のことである。

 

「夏油様!」

 

「ん?なんだいセリュー?」

 

「百鬼夜行では私にお任せください!必ずや、夏油様の邪魔をする悪党どもを全員皆殺しにしてみせます!」

 

「ああ、その件なんだけどね・・・実は君にはドクターと一緒に他にやってもらいたいことがあってね」

 

「やってもらいたいこと・・・ですか?」

 

「うん。君にしかできないことなんだ。任せてもいいかな?」

 

「私にしか・・・!はい!お任せください夏油様!この身は、全て、正義と夏油様のために!」

 

傑はにこにこと微笑みながらセリューに百鬼夜行当日にやってもらいたいことを話している。その様子を遠くで見ているのは黒女(くろめ)と夏油一派の幹部の1人、右目に大きな傷跡があるバンダナを着けた呪詛師、祢木利久だ。

 

「夏油先輩も人が悪いよね。あれ体よく厄介払いしてるだけじゃん」

 

「だが夏油様は正しいご決断をなさっている」

 

「まぁね。あんな危険思想の持ち主を百鬼夜行に参加させるわけにはいかない。下手したら私たちの目的がバレて敵意が私たちに向けられる」

 

「・・・とはいえ、セリューも俺たちの仲間であることには変わりない。こうやって騙すのは、心が痛む」

 

「祢木ってそういうとこ、不器用だよね」

 

こうした経緯があり、夏油一派の信者であったセリューは百鬼夜行に参加することはなかった。だがそれこそが間違いであった。

 

(あの時、私が夏油様にもっと、私の意思を伝えれていれば、夏油様が殺されることはなかった・・・!)

 

自分が百鬼夜行に参加してれば、結果は違っていたかもしれない。だが嘆いても事実は覆らない。傑が殺されたことで、教会は解体し、一派の幹部も雲隠れしてしまった。選択を間違ってしまったから。

 

だが次は間違いない。必ず・・・この世界を害するを悪を・・・断罪する。セリューはそう胸に誓った。

 

 

渋谷の街。渋谷駅までもうひと踏ん張りというところで来ていた悠仁、マイン、シェーレの3人だったが、そのあと一歩手前で正義の使者を名乗る術師、セリュー・ユビキタスに阻まれてしまう。

 

「駅はもう目の前だって言うのに・・・!」

 

「でも呪詛師はあいつだけ。さっさと倒せば巻き返しできる」

 

悠仁たちの前に立ち塞がるセリューは憎悪に満ちた表情を見せ、さっきを滲ませながら3人に指を指す。

 

「・・・悪は生死問わず。ゆえに私が処刑する!私のパパはお前たちのような凶悪と戦い殉職した!パパだけじゃない・・・私を育ててくれたママも、私の恩師も・・・お前たち呪術高専が殺した・・・!」

 

「・・・っ」

 

「絶対許さない・・・!!」

 

大事な人・・・家族が呪術高専に殺された。その恨みを強く持っているセリューに対し、祖父を亡くしてその痛みを理解する悠仁は彼女に同情している。

 

「あっちは()る気満々ね」

 

「・・・あんたのこと、かわいそうだとは思うよ。俺も、じいちゃん死んじゃったから」

 

同情しているからこそ、悠仁は一歩も引かず、拳に呪力を纏って戦闘態勢をとる。

 

「けど・・・悪いけど、逆恨みで殺されるわけにはいかねぇんだわ」

 

悠仁の主張でセリューの殺意はより一層に高くなった。

 

「先手必勝!!」

 

先に行動に出たのはマインだ。マインは先手としてライフルガンを構え、弾丸をマシンガンのように撃ち放つ。弾丸がセリューに迫る中、彼女のそばにいた犬の呪骸、ヘカトンケイルことコロが前に出る。

 

「キュアーー!!」

 

弾丸は直撃し、硝煙が立ち込める。硝煙が晴れると、そこにはコロが巨大化して、銃弾を全て身体で受け止めていた。後ろにいるセリューは全くの無傷だ。

 

「いっ⁉デカッ!」

 

「やはり、あれは呪骸です!」

 

「みたいね。しかもパンダと同じ自立型か」

 

悠仁がコロに驚いている間にもセリューは自身の呪具であるトンファーを模した銃を二丁構える。

 

旋棍銃化(トンファガン)!」

 

セリューは呪具、トンファガンの弾丸を3人に撃ち放つ。3人は迫った弾丸を左右に分かれて躱す。

 

(この距離じゃ効果は薄いか・・・なら・・・)

 

トンファガンでは牽制にすらならないと判断したセリューはコロに指示を出す。

 

「コロ!捕食!」

 

指示を受けたコロは巨大化を保ったまま大きく口を開けてシェーレを食らおうとする。対するシェーレは冷静にエクスタスの鞘を抜き取り、刃を開き、術式でコロの7対3の線分を測る。

 

ジャコンッ!!!

 

シェーレは線分のクリティカル部位を狙い、刃を閉じてコロを真っ二つに両断した。

 

「すいません」

 

シェーレはいつもの口癖を口にし、セリューに迫ろうとする。だがセリューは不敵な笑みを浮かべている。それはなぜか?それは真っ二つにされたはずのコロが自己修復で両断された傷を塞ぎ、起き上がったからだ。

 

「!」

 

それに気づいたシェーレは立ち止まり、自分の真後ろに立つコロを見て驚愕する。

 

ドォン!!

 

シェーレに迫るコロにマインはライフルガンにギアをチェンジして砲撃を撃ち放つ。砲撃は直撃し、コロは吹っ飛ばされる。そこへさらに悠仁が呪力を纏った拳を叩き込む。打撃を受けたコロは後退る。

 

「呪骸ってあんなすぐに治るもんなの?」

 

「確かに呪骸は呪力補完で欠損部位の修復は可能ですが、あんな超スピードの修復は見たことがありません。恐らく、第三者の術式が絡んでるかと」

 

「けど、所詮は呪骸。動力である核さえ潰せば機能は停止するわ」

 

驚異の修復能力の速さは厄介ではあるが、それを除けばコロも普通の呪骸とそう変わらない。であるならば対処のしようはあると3人は判断する。

 

「コロ、腕」

 

ボコォ!!

 

セリューが指示を出すと、コロはセリューより送られてきた呪力を練り上げ、自身の腕を筋肉質なものへと変化する。

 

「キュウウゥゥゥゥ・・・」

 

「キモッ!」

 

「同感・・・」

 

ただでさえ巨大化でかわいげがなくなったのに両腕が人型の筋骨隆々なものに変わったことに悠仁とマインは率直な嫌悪感を出している。

 

「・・・虎杖、少しでもいいからあの呪骸を止められる?」

 

「・・・やってみるっス」

 

マインの指示通りにこれから来るであろうコロの攻撃を受け止めようと、悠仁は身構える。

 

「粉砕!!」

 

「キシャアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

セリューの指示を受けたコロは怒涛のラッシュをかけながら3人に猛接近する。

 

「ゴメンやっぱ無理!!!」

 

「役立たず!!」

 

さすがの悠仁でもコロの巨体で嵐のラッシュを防ぎきるのは困難らしい。悠仁の前言撤回にマインは彼をなじる。

 

「マイン!悠仁!私の後へ!」

 

そこへシェーレはすかさず2人の前に出て、エクスタスを構えて防御態勢をとることでコロのラッシュを何とか防いでいる。

 

「ぐっ・・・重い・・・!」

 

しかし、一撃一撃が重く、シェーレは堪えるので精いっぱいだった。少しずつ後退し始め、防御が崩れるのも時間の問題だ。

 

「嵐のような攻撃・・・これはまさしくピンチ!完全に仕留めるには足りないけど・・・今はこれでいい!」

 

シェーレがコロの攻撃を止めている隙に、高く跳躍し、ライフルガンの狙いをコロに定める。銃口にはすでに、強力なエネルギーが溜まっている。

 

「浪漫呪法―――『満開』!!」

 

 

ドオオオオオオン!!!!

 

 

マインが引き金を引いたと同時に、強大な砲撃が撃ち放たれ、砲撃がコロを覆い尽くす。砲撃に飲まれたコロの身体は凄まじい火力によってボロボロと崩れていく。

 

「⁉射撃の威力が上がった⁉でも・・・!」

 

砲撃が止むと、コロの身体は原型を留めれていないほどにズタボロになっている。だが修復能力が凄まじく、もう体の修復が始まり、傷が徐々に治っていく。

 

「ちっ!わかっていたとはいえ、もう修復が始まってる!なんて犬っころ!」

 

コロの驚異的な修復能力にマインは毒づく。

 

「コロの耐久性を舐めるな・・・」

 

バッ!

 

「!!」

 

硝煙が晴れようとしていると、硝煙の中より悠仁が飛び出し、セリューに接近している。悠仁の脳裏に浮かんでくるのは、悟からの教えである。

 

『呪骸を使う術師との戦い方は基本的には式神使いとそう変わらないからねー。呪力を送る術師さえ潰せば、呪骸は止まる』

 

(こいつ・・・!狙いは最初から私か!)

 

狙いが自分で会ったと気づいたセリューはトンファガンの銃口を悠仁に向けて弾丸を撃ち放った。悠仁は屈んで弾丸を躱し、呪力を拳に乗せて打撃を放つ。セリューは両腕を交差してトンファガンで防御する。悠仁の打撃の威力が高く、セリューは後退る。

 

(重っ・・・!)

 

後退するセリューに悠仁は呪力を纏った蹴りをすかさず放つ。セリューは屈んで躱し、トンファガンを振るって連撃を放つ。悠仁はその一撃一撃を見極めて、躱したり、いなしたりしつつ、一瞬の合間を狙って打撃を放つ。

 

「くっ・・・!」

 

セリューは悠仁が繰り出す一撃を何とか躱すが、悠仁はすかさず連撃を放つ。セリューは危なげに一撃をいなしつつ、少しずつ後退していく。セリューも決して弱いわけではない。だが近接戦闘においてずば抜けた能力を持つ悠仁が1枚上手だった。

 

「!」

 

セリューの劣勢に気づいたコロは彼女を助けようと駆け寄ろうする。だがマインはそれを防ぐためにライフルガンのギアをチェンジし、貫通弾を撃ち放つことでコロの注意を自分の注意を向けさせる。

 

「おっと!あんたはあたし!行かせないわよ!」

 

貫通弾を受けて風穴が開いたコロは体を修復させた後、マインにずんずんと近づいていく。

 

(よくパンダと組んでいたから核の場所は何となくわかる。仕留めるには難しいけど、足止めには十分!)

 

マインがコロを足止めしている間にも、悠仁は連撃でセリューを押し続ける。セリューは拳をいなしながら、反撃の機会を伺う。

 

(一撃は重いけど、対処できないほどじゃない!一瞬の気を見て、弾丸を撃ち込む!)

 

次に繰り出すの悠仁の一撃をセリューは両腕を交差してトンファガンで受け止めた。セリューはそこで反撃に出ようと試みる。

 

ドォン!!

 

しかし次の瞬間、悠仁の呪力が一気に膨れ上がり、後追いで呪力の打撃が打ち込まれる。そう、逕庭拳だ。

 

(なっ・・・⁉呪力が後追いで・・・⁉)

 

悠仁は交流会を経たことで、呪力の流れを掌握することに成功した。そのため、一時的に使用できなくなったが、戦いを経て再発できるようになり、通常の打撃と使い分けることが可能になったのだ。逕庭拳をくらってよろめいたセリューに悠仁はさらに拳を握りしめ、逕庭拳を打ち込む。

 

「ごは・・・!」

 

逕庭拳をくらったセリューは吹っ飛ばされる。そこから態勢を整え後退るセリューはトンファガンの弾丸を撃つ。悠仁はとっさに転んで弾丸を回避する。

 

「悠仁!目を閉じてください!」

 

「!」

 

そこへシェーレの指示が飛んできて悠仁は従って目を閉じた。シェーレはエクスタスの鞘を抜き取り、その刃を露にさせた。

 

「エクスタス!!」

 

ビカーーッ!!

 

「ぐっ⁉しまった・・・!もう1人・・・!」

 

エクスタスの強烈な金属発光が放たれ、セリューは思わず目を閉じてしまう。光が収まり、目を開けてみるとそこにはすでにシェーレがエクスタスの刃を開いて迫っていた。シェーレは術式でセリューの7対3の線分を引く。

 

(まずい!こうなれば・・・!)

 

セリューは咄嗟に両腕を交差し、シェーレの攻撃に備える。

 

ジャコンッ!!

 

「がああああああああ!!!」

 

だがエクスタスとシェーレの術式の前では防御の意味はなさず、セリューの両腕は両断されてしまう。ただセリューはそのことを理解していた。理解した上でこの方法をとった。

 

(!腕を捨てて致命傷を防いだ⁉)

 

殺すとまではいかないが、気絶させるほどのダメージを与える気でいたシェーレはセリューの思い切った行動に心ながらに驚愕する。彼女が思い切った行動をした理由は、その次の行動だ。

 

「・・・正義は!!!必ず勝ぁぁぁつ!!!!」

 

なんと両腕の切断箇所から銃が出てきたその銃口はシェーレに向けられる。呪霊ではなく、人間が体内に呪具などの武器を入れるなど、どんな術師でも不可能だ。それを可能にできる方法はたった1つだけ。

 

(人体改造⁉)

 

「恩人から授かった切り札だ!!くらええええええええ!!」

 

バンッ!!

 

セリューは両腕の銃の弾丸を撃ち放った。しかし、シェーレはセクスタスでその弾丸を防いだ。

 

(防いだ⁉)

 

シュピィ!!

 

シェーレはセリューがまた弾丸を撃ち放たないようにエクスタスを振り上げて両腕の銃を斬り捨てた。

 

「ぐっ・・・!まだまだぁ!!」

 

武器を失ってもセリューは戦意を失わなかった。

 

(使うとオーバーヒートで数か月コロが動けなくなるけど・・・仕方ない・・・!)

 

セリューは打開策は1つしかないと判断し、隠していた奥の手を使用することに決めた。

 

「コロ!奥の手!狂化!!!」

 

セリューの声を聞いたコロは送られてきた呪力を使い、その姿を変化させた。体に凄まじい筋肉ができ、毛も荒々しくなり、表情も狂ったように険しいものになった。その姿はまさにバーサーカー。

 

 

「ギョアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

 

 

コロは口を大きく上げて、渋谷全体に鳴り響くほどの雄たけびを上げた。あまりの騒音に3人は耳を塞いだ。

 

「うああああっ!!」

 

「う、うるせぇ・・・!!」

 

「ぐっ・・・!」

 

(あの呪骸にこんな奥の手が・・・!)

 

ガシィッ!!

 

耳を塞いだことで隙ができてしまったマインは凶暴化したコロの片手に捕まってしまう。

 

「!!しまっ・・・」

 

「!先輩!!」

 

「マイン!!」

 

「握りつぶせぇ!!!!」

 

ギュウウウウウウウ!!!ミシミシミシ・・・

 

「ぐ・・・ううぅ・・・!」

 

マインを握りしめるコロの力がだんだんと強くなっていき、そして・・・

 

バキィ!バキバキバキ!

 

「あああああああああああああ!!!」

 

彼女の両腕の骨が折れる嫌な音が鳴り響く。

 

スパァ!!

 

そんなマインの窮地を救ったのはシェーレだった。マインが捕まった直後、シェーレは真っ先に彼女に駆けつけ、コロの腕の線分を引いてその急所を狙ってエクスタスを振るうことでコロの腕を斬り落としたのだ。

 

「シェーレ!」

 

「間に合ったようですね」

 

マインが無事であったことにシェーレはほっと安堵の表情を浮かべた時だった・・・

 

パァン!

 

1発の弾丸がシェーレを体を撃ち抜いた。この弾丸はどこから来たのか。その答えはセリューにあった。何と彼女は口の中も改造されていたようで、彼女の口には銃が備わっていた。そして、撃たれたシェーレに大きな口を開けたコロが迫っている。

 

「体が・・・動か・・・」

 

口に銃を備えたセリューは歪んだ笑みを浮かべる。

 

「正義、執行!」

 

死を覚悟したシェーレは目を閉じた。しかし、いくら待っても痛みが来ることはなかった。恐る恐る目を開いて見ると・・・

 

「ぐ・・・ぐうぅぅぅ・・・!!」

 

「!悠仁!」

 

「虎杖・・・」

 

シェーレの目の前に悠仁が立っており、彼は両手と片足で閉じようとしているコロの口を抑え込んでいる。悠仁の両手と片足は牙が食い込んでおり、血が滲んでいる。コロは悠仁を食らおうと、口を閉じようとしている。悠仁はそうはさせまいと両手と片足に力を込め続ける。

 

「ぬ・・・ぬぉ・・・ぐぅぅぅぅ・・・うおりゃああああああああああ!!!」

 

ベキィ!!!!

 

「な・・・何ぃ!!?バカな!!!」

 

悠仁は両手と片足にさらに力を入れ、持ち前のバカ力を発揮することで、コロの口をへし折った。狂化したコロが推し負けた姿を見たセリューはありえないと言わんばかりに驚愕に満ちる。よろめくコロに悠仁は軽く飛んでコロの顎を蹴り上げ、呪力を纏った拳を放とうとする。そして、放たれるその呪力は、黒く輝く。

 

 

ズン!!!!!

 

 

黒閃!!!!

 

 

黒閃をまともにくらったコロは強烈な打撃によって右肩ごと抉られ、セリューの目の前まで吹っ飛ばされる。これによって呪力が大きく漏れたのかコロはシュンシュンと縮み、元の姿に戻る。

 

「キュ・・・キュウ・・・」

 

(そんな・・・狂化したコロがあっさりと・・・)

 

コロがたった1人の人間に負けたことにセリューは目の前の現実を到底受け入れられず、悠仁に対して悔しさと憎悪をさらに膨れ上がらせる。

 

「この・・・存在そのものが醜悪のくせに・・・!」

 

セリューの捨て台詞に気にも留めず、悠仁はシェーレとマインに顔を向ける。

 

「シェーレ。先輩を連れてここを離れてくれ。後は俺1人で行く」

 

「しかし悠仁・・・」

 

「大丈夫だって。後から伏黒もナナミンも来るし」

 

心配をするシェーレに悠仁は笑ってみせた。そんな彼の背後でセリューは再び口に銃を装備し、1発の弾丸を撃ち放った。だが悠仁はその迫った弾丸を片手で受け止めてみせた。そして彼はセリューに顔を向ける。

 

「くそ・・・くそ・・・!!」

 

「・・・命は取らん。けど俺たちの邪魔はしないでくれ」

 

敵に塩を送る情け。それがセリューの神経を逆なでし、激情する。

 

「ふざけるな!!!悪の施しなんか受けない!!そんなことされるくらいなら死んだ方がマシだ!!!」

 

「・・・俺はあんたのことは何も知らん。けど、今のあんたを見て、父ちゃんと母ちゃんは喜ぶのか?」

 

「悪が知った風な口を・・・!!」

 

これ以上問答しても決して分かり合えない。そう判断した悠仁は再び彼女に背中を向ける。

 

「どこまでも甘い後輩ね・・・」

 

「先輩。怪我、ちゃんと治してね」

 

「うっさい」

 

「シェーレ。先輩を頼む」

 

「・・・悠仁も気をつけて」

 

悠仁は2人に一声かけて、渋谷駅へと走り始めた。

 

「・・・マイン。私たちも・・・」

 

シェーレが倒れるマインに肩を貸そうとしたその瞬間・・・

 

ズシャア!!!

 

「「「!!?」」」

 

シェーレの背中に何かが貫いた。それを見たマインとセリューは目を見開き、悠仁も歩みを止めて、驚愕する。シェーレの背中を貫いたもの。それは傀儡の手だった。シェーレの背後にはフリフリなドレスを着込んだ傀儡が立っていた。傀儡、マクスウェルの虚ろな目はシェーレをしっかりと捉えていた。

 

「ごは・・・」

 

「・・・シェー・・・レ・・・?」

 

(なんだこいつ・・・?全然接近に気付かなかった・・・!)

 

突然現れたマクスウェルの接近に気付かなかった3人の顔は驚愕に満ちている。しかしそれ以上に驚愕していたのはセリューだった。なぜなら、マクスウェルの存在を子供のころから知っているから。

 

「・・・ウソ・・・だって・・・え・・・?」

 

マクスウェルは自身の手を抜き取り、その手でシェーレを強く払い除ける。打撃を受けたシェーレは強く吹っ飛ばされる。

 

「シェーレ!!!!」

 

「っ!!!このぉ!!!!」

 

シェーレがやられたことに激情したマインは骨折の痛みを耐えてライフルガンをマクスウェルに向け、何発もの弾丸を撃ち放つ。弾丸の嵐にマクスウェルは全弾直撃し、いくつもの風穴が開く。その直後・・・

 

ゴゴゴ・・・

 

「「「!!」」」

 

こちらに近づいてくる膨大な呪力の気配を感じ取り、悠仁とマインは顔を強張らせた。

 

(何・・・この呪力・・・?こんな呪力・・・今まで・・・)

 

パリィィィン!!

 

マインが呪力の出所を探っていると、近くの建物の窓が割れる音と共に第三者がこの場に乱入してきた。ヘッドギアを身に着け、橙色の短髪の女の傀儡。翔琉の術式によって傀儡として復活を果たした殺人人形(キラードール)、マリー・ユビキタス。だがその目は傀儡のものでも、人間のものでもなく・・・ただただ狂ったように目が回っている。

 

(・・・間違いない・・・あいつから・・・!)

 

(この呪力・・・五条先生・・・⁉いや・・・それ以上に不気味な・・・。見ただけでわかる・・・こいつ・・・ヤバすぎる・・・!)

 

呪力の出所がマリーにあると気づいたマインと悠仁は彼女がどれだけ危険な存在であるか、一目見て・・・いや肌でピリピリと伝わってきた。そして彼らの本能が叫ぶ。

 

逃げろ!!!!と。

 

それとは対照的にマリーの姿を見たセリューは信じられないといった顔を向けて、一筋の涙が溢れている。

 

「・・・ママ?」

 

地に着地したマリーはゆったりと、ゆらりと体を起こし、顔を向ける。その狂った視線はマインをとらえており、歩みを進める。

 

「く・・・来るな!!」

 

マインはライフルガンを向けようとするが、骨折しているせいでうまく動かすことができない。マリーはさらにゆらりと一歩を歩んだ時・・・

 

ビュンッ!!ドゴォ!!

 

目で負えないスピードでマインに接近し、彼女を蹴り上げて上空に浮かび上がらせる。

 

「あ・・・!」

 

何が起こったのかわからないマインは目を見開く。それも束の間、一瞬で間合いに近づいたマリーは彼女の頭を鷲掴み、重力に従い落下する。

 

ドゴォォォン!!

 

「が・・・あ・・・」

 

マリーに頭から地面に叩きつけられたマインは強い衝撃で気を失った。

 

「先輩!!!」

 

悠仁はマインを助けようと本能を振り切ってマリーに近づく。その間に入ってきたのは、マインが壊したはずのマクスウェルだった。

 

(は?なんで?先輩が壊したはずじゃ・・・)

 

悠仁が戸惑っている間にもマクスウェルは右手を鋭く尖らせ、突き刺す。悠仁は咄嗟に両腕を交差して防御して、上に弾かせる。直後、マクスウェルは左の拳で悠仁の腹部に打撃を与えた。

 

「ぶっ・・・!」

 

悠仁が苦痛で表情を歪ませた直後、マクスウェルは右手に拳をつくり、そのまま振り下ろして彼を殴り飛ばす。一方で、マリーはマインが持っていたライフルガンを手に取り、両手に力を入れ・・・

 

バキィ!!

 

真っ二つにへし折って見せた。マリーは折ったライフルガンを捨て、それを足で踏みつけて粉々にする。それはもう何度も何度も踏み壊して。その暴れ具合は、正気を失っているかのように狂っている。

 

「ママァ!!!」

 

セリューの必死な叫びによって、ようやくマリーの動きが止まる。そして、ブリキ人形のようにギギギッ、と音を立てながら視線をセリューに向ける。

 

「・・・あぁ・・・やっぱりママだ・・・生きてた・・・生きて・・・」

 

どんなに姿が変わっても、自分を育て、愛を注いでくれた母を、決して見間違えたりしない。母は生きていた。そう思ったセリューは大量の涙を流す。だが、マリー自身は娘を認識していないのか、それとも見えていないのか。いずれにしてもなんの反応も示さず、次の獲物を定めたかのように顔を俯かせ、ゆっくりと歩み・・・

 

ガシッ!ドォォォン!!ドォォォン!!

 

「がっ・・・⁉」

 

娘の胸ぐらを掴みあげ、放り投げた。セリューはいくつもの建物と衝突しあい、大きな血反吐を吐く。そしてマリーは遠くへと行ったセリューを追いかけるように跳躍していった。敵味方お構いなしに暴れ狂うその姿はまさに狂人。そう、マリー自身の意識はそこにはない。今はただただ、己の飢えを満たすためだけの存在に成り果てているのだ。

 

「・・・なんなんだよあれ・・・わけわかんねぇ・・・」

 

突然現れて、一方的に攻撃し、嵐のように去って行った。わけがわからなくなり、悠仁は困惑する。

 

「いやそれよりも・・・」

 

だが今はそんなことはどうでもいいことだ。なぜならまだ事態は収まっていない。この場にはまだマクスウェルが残っているのだから。

 

(シェーレも先輩もダウンした。2人を置いて逃げられねぇ。やるしかねぇ!)

 

例え敵わない相手だとしても、このまま2人が死ぬよりマシだと考え、悠仁は戦う意志を見せる。だが目の前の光景を見て、悠仁は絶句する。

 

「・・・嘘だろ?」

 

その光景とは、目の前のマクスウェルとは違う個体のマクスウェルが次々と降りてきたのだ。戦力も、数も、圧倒的にあちらの方が上。加えてこちら側は負傷者2名。まさに絶体絶命の危機だ。

 

「多すぎだろ・・・いったい、何体までいるんだよ・・・!」

 

数多のマクスウェルが悠仁をとらえ、一斉に襲い掛かろうと動き出した。

 

ジャコンッ!!!

 

だが動き出したマクスウェルは全員エクスタスの刃で真っ二つに両断された。倒れるマクスウェルの背後には、頭から血を流しているシェーレの姿があった。

 

「シェ・・・シェーレ・・・」

 

「悠仁・・・マインを連れてここから逃げてください」

 

自分とマインを逃がして、ここに残ろうとするシェーレに悠仁は異議を唱えようとする。

 

「何言ってんだよ・・・俺も一緒に・・・」

 

「傀儡を操る術師がいなくなった今、ここに残っても意味はありません」

 

シェーレがそう言い放つと、真っ二つになったマクスウェルは自身の再生を始めた。彼女の言うとおり、マリーが去った今、ここに残っても延々とマクスウェルと死ぬまで戦わされることになる。それでは意味がないのだ。

 

「けど・・・だからって置いていくなんて・・・」

 

「悠仁」

 

葛藤に苦しむ悠仁にシェーレは彼に微笑みを見せて、彼への最大の呪いを送る。

 

「後は頼みます」

 

呪いの言葉を放った後、シェーレはマクスウェルの群れに突っ込んでいき、エクスタスを振るって次々とマクスウェルを斬っていく。だが斬っても斬っても再生されていく。再生したマクスウェルはそれぞれ右手で突きを放ち、シェーレの身体を貫く。だがシェーレはその痛みを耐えて、復活したマクスウェルを斬っていく。

 

「シェ・・・」

 

悠仁が声を上げようとした時、他のマクスウェルが気絶しているマインを狙って動き出そうとしている。それを見た悠仁は歯ぎしりを立て、彼女が言った言葉を思い出す。

 

『あたしたちの最優先事項は何⁉』

 

最優先事項はあくまでも悟と赤女(あかめ)だ。こんなところで立ち止まるわけにはいかない。かと言って、何の抵抗もできないマインを見殺しにはできない。そのためにはシェーレを置いていく以外に方法はない。葛藤を続けた悠仁は苦渋の決断をし、マインを抱きかかえてこの場を走り去っていく。

 

「シェーレ・・・ごめん・・・ごめん・・・!!」

 

走り去る悠仁にマクスウェルは追いかけようとするが、その前をシェーレが阻み、一刀両断する。

 

「それでいいんです」

 

決断を下した悠仁にシェーレは安堵の笑みを浮かべ、目の前のマクスウェルの軍勢と相対する。

 

「・・・ああああああああああ!!!」

 

シェーレはマクスウェルの軍勢に突っ込み、エクスタスを振るって何体も、何体も、数えきれないほどの軍勢を斬り捨てていく。その度に修復するマクスウェルはシェーレを突き刺し、傷を与えていく。斬って、傷つき、斬って、傷つき・・・終わることのない連鎖に飲まれながらも、シェーレは自身の術師としての人生を振り返る。

 

 

私の人生・・・苦しいことの連続でしたが・・・それ以上に・・・楽しかった。

 

呪術高専・・・私の居てもいい居場所・・・。

 

『合格だ。ようこそ呪術高専へ』

 

『七海と同じ会社の人?へー?いいんじゃない?君、今日から七海と組んでみたら?』

 

『己が力は有用であると証明することに尽力してください』

 

『ここは変な奴らばっかりだが、苦楽を共にする仲間だ。よろしく頼む』

 

『見ててください!シェーレさん!俺、絶対七海さんの推薦もらってきますから!』

 

『シェーレ!憂太と一緒に作ったスイーツ、食べてみて!甘党悟のお墨付きよ!』

 

シェーレ!

 

シェーレさん!

 

高専のみんなと一緒に過ごした時間・・・私の1番の宝物です。

 

『俺は強くなるよ。強くなきゃ、死に方さえ選べねぇからな』

 

悠仁・・・後のことは、頼みましたよ・・・。

 

『ありがとな、シェーレ』

 

すいません・・・(たつみ)・・・。

 

もう、抱きしめてあげられません・・・。

 

 

事が終わったマクスウェルは次の獲物を求めて、各々が散らばり渋谷の帳内を飛び回る。

 

この場に残ったのは・・・体の至る所を貫かれ、体を両断されたシェーレの遺体のみであった。

 

彼女は、呪術師としての責務を全うし、その人生に幕を閉じたのであった。

 

 

22時10分

 

目を覚まさないマインを抱きかかえて、悠仁は急ぎ先へと進んでいく。

 

「きゃあーーー!!」

 

「ひっ・・・ひぃーー!!」

 

「ぎゃああああああ!!」

 

その道中で悠仁は数多くの一般人が大量の改造人間に襲われている光景を目撃して立ち止まる。

 

「なんつう数だよ・・・!ほっとくわけにはいかねぇ・・・!でも全員助ける時間はねぇ・・・!駅は・・・先生たちはすぐそこ・・・!でも、先輩を連れていくのも置いていくのもできねぇし・・・!もたもたしてたらあの人形が来るかもしれねぇ・・・!くそ、どうすれば・・・!」

 

一般人を放っておくわけにはいかない。だが目的の駅はすぐそこにある。さらにマインをこのまま連れていくわけにも、置いていくわけにもいかない。どうすればいいか困惑する悠仁。

 

「明太子!」

 

すると、この場に聞き覚えのある語彙が聞こえてきた。

 

「!その語彙は!狗巻先輩!」

 

「シャケ!」

 

橋の下を見てみると、そこには単独行動をとっている棘の姿があった。悠仁はすぐに降りてきて、マインを彼に託そうとする。

 

「マイン先輩、頼めますか?」

 

「シャケ」

 

悠仁の言葉に棘は頷き、彼からマインを引き取る。

 

「頼んます!!」

 

「シャケシャケ」

 

棘に後を託した悠仁は階段を下りて駅へと向かって行く。残った棘は近くの柵にマインをそっと下ろし、労いとして彼女の頭をポンポンと撫でる。

 

「・・・いくら」

 

労いを終えた棘はすっと立ち上がり、チャックを開けてを口を露にする。そして、改造人間目掛けて、メガホンで呪言を放つ。

 

動くな

 

 

ようやく渋谷駅に辿り着いた悠仁は地下5階へ目指し、構内を走っていく。悠仁は改札口を通り、その先のエスカレーターから勢いよく飛び降りる。彼が進んだ先には・・・1人構内を歩く脹相の姿があった。そこで悠仁の姿を目撃した脹相は憎悪の表情を浮かべ、顔の模様より、自身の血液を飛ばす。

 

「虎杖悠仁!!弟の仇!!」

 

脹相は飛ばした自身の血液を両手で圧縮する。

 

「百斂!!」

 

赤血操術『百斂』。血液を加圧し、限界まで圧縮する技。

 

脹相は圧縮した血液を悠仁目掛けて撃ち放つ。それに気づいた悠仁は両腕で防御し、激しい痛みに耐えながらも弾いた。

 

百斂で圧縮した血液を一点から解放。呪力で強化され、撃ち出された血液の初速は音速をも超える。赤血操術奥義・・・その名を・・・

 

「穿血」

 

脹相は再び穿血で血のレーザーを放つ。悠仁はギリギリで血のレーザーを躱し、掻い潜りながら脹相に逕庭拳を打ち放つ。脹相は構えたまま防御を取り、後退する。

 

(二重の衝撃・・・妙な技だ・・・)

 

初手の穿血を受けたことで悠仁の腕には血が滲んでいるが、ゆっくりと息を整える。すると、脹相が口を開く。

 

「・・・お前に聞きたいことがある。弟は最期に何か言い残したか?」

 

「弟?」

 

「ちっ・・・お前たちが殺した2人の話だ」

 

「あ・・・」

 

脹相の言葉に悠仁は覚えがあった。それは八十八橋で会った呪胎九相図の壊相と血塗であった。悠仁はすぐに理解した。あの2人は、脹相の弟であったと。彼に憎まれて当然のことをした悠仁は正直に答える。

 

「・・・別に・・・何も・・・。でも・・・泣いてたよ」

 

「!!」

 

悠仁の言葉を聞いた脹相はさらに怒りを込み上げ、顔の模様の血が広がっていく。

 

「壊相!血塗!見ていろ・・・これがお前たちの・・・」

 

ブシャアアアアアアアア!!!

 

 

お兄ちゃんだ!!!!

 

 

脹相は背中から大量の血液を噴き出し、それを片手に凝縮させていくのであった。

 

 

同時刻、渋谷駅の別エリア。ツクヨミと鉢合わせをした(たつみ)は戦闘を開始していた。先手必勝と言わんばかりに(たつみ)はツクヨミに接近し、青龍刀に連撃を繰り出す。ツクヨミは斬撃を1つ1つ避けながら後退していく。その最中、ツクヨミの足に粒子が集まり、蝶の羽を作り上げた。

 

「せやっ!」

 

(たつみ)が青龍刀を横一閃に振るうと、ツクヨミは高く跳躍して躱す。そして、空中で手に持っていた槍を呪力を纏わせて構える。

 

「呪槍術―――『天罰』」

 

ツクヨミは受肉体であるスピアが持っている呪術、呪槍術を使って槍を(たつみ)に投擲する。(たつみ)は逃げることなく青龍刀を構え、斬撃を放って槍を斬り裂いた。対し、ツクヨミは両手に粒子を集め、2つの球を作り上げた。ツクヨミはつくったその球を(たつみ)に向けて投げ飛ばす。(たつみ)はその2つ球を左右に動かして躱した。が、ここでバウンドする球に変化が起きる。バウンドした球はぐんと形を変え、それぞれ黒の狼と白黒の狼へと変化する。

 

「⁉なんだ⁉球が狼に⁉」

 

球が急に狼と化したことに(たつみ)は驚愕する。2匹の狼は駆け抜け、(たつみ)の周りを走り出す。そこに狼化のウサギもその輪に入り込み、2匹の狼と共に襲い掛かる。

 

「シェアアアアアア!!!」

 

「ぬぅう!!」

 

(たつみ)は青龍刀を振るって斬撃を放ち、2体の狼を斬り裂いた。だがウサギだけは軽い身のこなしでするりと躱し、着地と同時に(たつみ)に噛みつく。(たつみ)は青龍刀を突き出し、噛みつかれるのを回避する。

 

「グルルルル!!」

 

「ぐぅ・・・!」

 

青龍刀に噛みつくウサギは顎に力を込める。ウサギが(たつみ)を抑えている時、ツクヨミは地に着地し、倒れる狼に接近する。ツクヨミが2匹の狼に触れた瞬間、狼は粒子となり、それぞれ形が異なる双剣へと変わる。

 

(今度は狼が双剣に⁉)

 

(たつみ)はウサギを蹴り飛ばし、ツクヨミが振るう双剣の連撃を躱していく。(たつみ)はツクヨミが振り上げる斬撃を後ろへ跳躍して躱す。ツクヨミはさらに双剣を光の粒子に変えて集約し、再び槍に変えて(たつみ)に投擲する。(たつみ)は迫る槍をその場で転がって躱し、鏡に背を持たれる。

 

(何なんだあいつの術式は?球が狼になったり狼が剣になったり・・・)

 

(たつみ)がツクヨミの術式を考察していると、背にもたれている鏡に気が付く。

 

「!鏡?こんなところに鏡なんてあったか?」

 

(たつみ)がこの場にある鏡について疑問を抱いていると・・・

 

ガシッ!!

 

「!!」

 

鏡に映る人影が鏡に映る(たつみ)の左手首を掴みとった。その人影は、禍津神三貴子(まがつがみみはしらのうずのみこ)の1番、ツクヨミの姉、アマテラスであった。掴みとられた感触は、鏡の外にいる(たつみ)に伝わっている。

 

(!なっ・・・鏡に・・・⁉)

 

鏡のアマテラスは(たつみ)を鏡の中に引きずり込もうと彼の腕を引っ張る。

 

「うおおおおおお!!その手を放せぇえ!!」

 

(たつみ)はアマテラスを振り払おうと鏡の彼女に向けて拳を放つ。そして、次の瞬間・・・

 

パキッ!パリィィィン!!バキィ!!

 

なんと鏡の中にいたアマテラスは鏡が割れる音と共に(たつみ)の拳が直撃し、吹っ飛ばされる。

 

「はあああああああ!!??」

 

「姉様!!?」

 

鏡の中にいたアマテラスが外にいる(たつみ)の拳が直撃して吹っ飛ばされたことにウサギとツクヨミは驚愕する。(たつみ)はアマテラスに接近し、青龍刀を振るおうとする。

 

「くっ・・・!」

 

体制を整えるアマテラスは自身の背後に鏡を作り上げ、後退して中に入る。(たつみ)はその鏡に向けて斬撃を放つ。

 

ピシィ!!

 

青龍刀の斬撃は鏡を真っ二つにしたと同時に、中に入ったアマテラスにもダメージを与えた。だがアマテラスは咄嗟に腕を組んで防御したため、大したダメージは入っていない。

 

八咫鏡の弱点。それは炎や水などの自然物や『呪力が含まない』建築物には効果を発揮できない。元々呪力を持たない(たつみ)は呪術的には建築物として扱われる。そのため、鏡の世界を素通りし、中にいるアマテラスに攻撃が届いた。

 

加えて青龍刀は呪術を切り裂く名刀。使用者がその真価をハッキリ理解していれば、その能力は完全なものとなる。これまでの戦いを経て、青龍刀の真価を完全に理解した(たつみ)の振るう斬撃は、呪術を無効化させる。

 

「お前、そいつの姉貴か?いろいろ知ってそうだな。全部話してもらうぞ!」

 

そう、アマテラスにとって(たつみ)という存在は、自身を脅かす・・・

 

 

天敵!

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