呪術廻戦ー呪いを斬るー   作:先導

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悠仁

お前は強いから人を助けろ。


霹靂ー弐ー

春太の不意打ちを受けて瀕死の重傷を負った恵はこれ以上春太に近づける隙を与えないようにしながら重い足取りでふらふらと歩いている。

 

「はぁ・・・はぁ・・・俺の十種影法術(とくさのかげぼうじゅつ)・・・最初は2匹の玉犬だけが与えられる・・・。他の式神は調伏を済ませなければ扱えない・・・。手持ちの式神を増やしながら調伏を進めていくことで・・・ようやく十種の式神を手にすることができる・・・」

 

ふらふらの足取りの中で、恵は自身の術式の詳細を明かしていく。

 

「終わり?」

 

ただでさえ瀕死状態で不意打ちの傷を与えた本人である春太はある程度は恵の話を聞いていた。

 

「さっきの女の子もそうだけどすごく強いよね。若いのに。ボロボロなのに近寄る隙を見せない。でもその出血じゃあ俺が何にもしなくたって・・・」

 

ドサッ・・・

 

「あ~あ・・・」

 

体の方に限界が来た恵は出血多量でふらつき、倒れ伏す。

 

「・・・調伏はな・・・複数人でもできるんだ・・」

 

だが、まだ気を失うわけにはいかず、恵は立ち上がる。

 

「だが、複数人での調伏はその後無効になる・・・。つまり、当の術師にとっては意味のない儀式になる・・・。だがな・・・意味がないなりに使い方があるんだ・・・」

 

ドオオオオオン!!!

 

恵が話を勧めていると、渋谷ストリームの方角で大きな大爆発が起きる。

 

「ははっ、誰だよ?派手だな・・・っ!」

 

大きな爆発に春太は呑気に笑っているが、恵から不穏な呪力の気配を感じ取った。

 

「続きだ。要は、式神は調伏しないと使えないが・・・調伏するためならいつでも呼び出せるんだ・・・」

 

「・・・まさか・・・」

 

恵が今からやろうとしていることに気付いた春太は表情を歪ませている。その間にも恵はある式神を呼び出す構えをとる。そう・・・今までやろうとして全部不発に終わったものだ。それが今、ここで解放される。

 

(歴代術師の中にこいつを調伏できた奴は1人もいない)

 

 

『なぜ五条家と禪院家が不仲なのか・・・その理由は知っているか?』

 

ある日のこと、赤女(あかめ)は恵に五条家と禪院家の歴史を教える際、このような質問を問うた。

 

『何であたしまで嫌いな御三家の話を聞かなくちゃいけないのよ』

 

『だって~、こうでもしないと話聞かないでしょ~?』

 

『あたしは五条家とは関係ない。そっちの事情に巻き込むな』

 

『まぁまぁそう言わずに~』

 

悟のせいで話に巻き込まれたマインは隠しようがない不機嫌な表情を浮かべている。

 

『・・・そもそも仲悪かったんですか?先生たちを見てたら全然そんな風には見えませんが』

 

『それは僕らが特別ってだけ。実際はもうバチバチよ~?』

 

『禪院家の事情は知らないけど、あたしなんて女って以前に五条の血ってだけで門前払いよ。ほんと、迷惑な話だわ』

 

『・・・話の続きだが、だいたい・・・江戸時代か慶長時代の頃かな。その時当主同士の間の御前試合で本気で殺し合って両方死んだんだ』

 

『・・・その時の当主って・・・』

 

『僕と同じ六眼持ちの無下限呪術使い』

 

『そして、対する禪院家の当主の術式が恵と同じ・・・』

 

『!十種影法術(とくさのかげぼうじゅつ)・・・』

 

『・・・僕たちが言いたいこと・・・わかる?』

 

 

(だからってあんたに勝てる術師になれるかよ。その当主も、こういう使い方をしたんだろう)

 

心の中で悟に毒づく恵は十種影法術(とくさのかげぼうじゅつ)の切り札を出すために必要な言葉を唱える。

 

布瑠部(ふるべ)・・・由良由良(ゆらゆら)・・・」

 

その瞬間、街の電気が全て消えた。

 

 

都心メトロ明治神宮前駅B5F渋谷駅線路上

 

冥冥と戦っていたエスデスは彼女が操る全ての鴉を氷漬けにし、粉々に砕いた。その頃には冥冥も憂憂の姿がどこにもなかった。

 

「・・・逃げたか。あの小僧の術式か?なんにせよ、拍子抜けだ。欲求不満とはまさにこのことだな」

 

戦いを娯楽としているエスデスは冥冥たちが逃げたことによって、隠しようがない不満を露にしている。その直後だ。地上で強烈な気配を2つ感じ取ったのは。1つは宿儺。もう1つは・・・。

 

「おや・・・逃げられたのかい?君もドジを踏むんだね、案外」

 

すると偽夏油が現れ、彼女に皮肉な言葉をかけた。

 

「――」

 

エスデスはこの偽夏油の真の名で呼ぶ。

 

「なんだい?」

 

「今こそ縛りを果たす時だ。私の好きにさせてもらうぞ」

 

「構わないよ。これで死ぬようならその程度だってだけだからね」

 

「抜かせ」

 

偽夏油の軽い皮肉に対しても、エスデスは軽く笑い、地上へ向かって歩いていく。

 

「もし君が生きていたなら、次なるステージでまた会おう」

 

「誰に物を言っている。誰が相手だろうと・・・」

 

 

私の前では全てが凍る

 

 

自分が死ぬことは決してありえない。絶対的な自信を持つエスデスはそう吐き捨て、上を目指していく。極上の戦を求めて。

 

 

渋谷ストリーム(崩壊後)

 

「・・・ん?」

 

自分に仕える1000年前の術師、裏梅と再会した宿儺は不穏な呪力を感じ取った。

 

「宿儺様?」

 

「急用だ」

 

「左様で」

 

急用とだけ言い残してどこかへ向かおうとする宿儺に対し、裏梅は気に止めない・・・というより、主君のやるたいこと止めるなど、恐れ多いことであり、無礼であり、命知らずなことだ。

 

「俺が自由になるのも、そう遠い話ではない。ゆめ準備を怠るな」

 

「!」

 

「またな、裏梅」

 

「御意に。お待ち申しております」

 

宿儺は準備を進めるようにと裏梅に言いつけ、不穏な呪力の元へと向かって行く。裏梅はただ主君の命令を聞き入れ、主の背中を見送るのだった。

 

 

十種影法術(とくさのかげぼうじゅつ)の奥の手。それを使用すれば敵はほぼ間違いなく一掃することができる。だがそれと同時に、自らも危険に晒すことになり、高確率で命を落とすことになる。恵はそれを承知のうえでそれを使用した。

 

(やられた・・・!儀式を・・・俺を巻き込んで2人で強制的に始めやがった!!)

 

十種影法術(とくさのかげぼうじゅつ)の奥の手・・・それは、十種の式神で最強の式神の道連れ前提の調伏の儀式だ。

 

八握剣異戒神将魔虚羅(やつかのつるぎいかいしんしょうまこら)

 

恵の背後より現れた十種影法術(とくさのかげぼうじゅつ)の最強で最凶の式神の覆っていた封印が解かれ、その姿を露にした。

 

筋骨隆々の人型で、両目部位には翼が生え、後頭部は蛇の尻尾のように伸び、そして頭には八握剣の紋章を模した方陣が浮かんでいる。

 

この式神こそが大昔先代五条家当主と先代禪院家当主の命を奪った十種影法術(とくさのかげぼうじゅつ)の奥の手・・・八握剣異戒神将魔虚羅(やつかのつるぎいかいしんしょうまこら)だ。

 

『自分を犠牲にしようなんてこと、もう二度とすんな』

 

『後でな』

 

『応!』

 

(悪い・・・和倉・・・虎杖)

 

以前自分を説教した(たつみ)の言葉を思い出し、彼といずれ合流すると誓った悠仁との約束を果たせない彼に恵は心の中で謝罪する。

 

「おい、クソ野郎。先に逝く。せいぜい頑張れ」

 

ドカァ!!

 

恵は春太に不敵な笑みを浮かべてそう言い残した直後、自らが召喚した魔虚羅(まこら)に殴り飛ばされ、店のシャッターに叩きつけられた。この一撃によって、恵は気を失った。1人残った春太はその光景に唖然とする。魔虚羅(まこら)は目の前にいる春太に狙いを定め、彼に近づく。

 

「・・・待って・・・待て待て待て待て待て!!!ふざけんなよ!!こんな・・・!!」

 

自身の危機に勘づいた春太は慌てだし、態勢を崩して尻もちをついた。

 

「くそっ!!起きろよ!!クソ術師!!」

 

春太は気を失った恵に向けて声を荒げるが、こんな事では恵は目を覚まさない。その間にも魔虚羅(まこら)の手が春太に迫る。

 

呪詛師、重面春太の術式は日常の小さな奇跡を記憶から抹消し、蓄える。その蓄えは目元の紋様に表れ、命に係わる局面で放出される。しかし、本人はそれを自覚していない。

 

ヒュオオオオ・・・ビキビキビキ!!パキィィィン!!

 

魔虚羅(まこら)の手が春太に迫ろうとした時、突如極寒の冷気が吹いた。その瞬間、襲われそうになっている春太もろとも、魔虚羅(まこら)が氷漬けになる。

 

この冷気を放ち、凍らせたのは6人いる特級呪術師の1人、最初の特級にして氷の女王、エスデスであった。

 

(・・・調伏の儀か。なるほど・・・おそらくこいつは道連れ前提で召喚されたのだろう。そして・・・あれを召喚したのは・・・あいつか。最凶の式神と戦える機会など滅多にあるものではない。やはり私は運がいい)

 

エスデスは最凶の式神を前にして、好戦的な笑みを浮かべている。そして、魔虚羅(まこら)の目の前にいる春太に顔を向ける。

 

「が、それはそれとして・・・弱き者は淘汰されて当然。邪魔だ、失せろ」

 

エスデスは戦いの邪魔になるとして春太をどかすため、腕を振るって冷気の突風を放った。

 

ドオオオン!!

 

冷気の突風はシャッターと衝突し、土煙が発する。土煙が晴れると、春太の姿も、恵の姿もどこにもいなかった。この場に現れたもう1つの強烈な呪力を感じ取り、エスデスは不敵な笑みを浮かべ、その出所に視線を向けた。

 

「・・・この瞬間をどれほど待ちわびたことか・・・会いたかったぞ、両面宿儺!」

 

エスデスの視線には、生きた災厄にして呪いの王、両面宿儺が立っていた。彼の右手には恵を抱え、左手には春太の首根っこを掴んでいた。

 

「・・・へ・・・?」

 

今の今まで何が起きたのかわからず、春太は困惑している。その間にも宿儺は恵の容態を確認する。

 

(・・・仮死状態か。なるほど・・・やはりこのゴミを助けたのは正解だったな。おそらく道連れの形で調伏の儀に巻き込んだのだろう。このゴミも死ねば儀式終了、伏黒恵の死も確定してしまう)

 

恵の死を望んでいない宿儺は春太を手放し、恵に反転術式をかけて傷の治療をする。

 

「死ぬな。お前にはやってもらわねばならんことがある」

 

「あ、あの~・・・」

 

「黙れ」

 

恵の傷を治し終えた後、宿儺はポケットに手を突っ込み、魔虚羅(まこら)とエスデスに視線を向ける。

 

(伏黒恵を生かすには、異分子の俺がこの式神を倒し、調伏の儀をなかったことにする。だがそのためには・・・あの女は厄介すぎる。そもそもあの女は何者だ?呪力総量だけでいえば、俺より弱い。だがあのざわつかせるほどの殺気。現に15本とはいえ、この俺が後れを取ったほどだ。俺が後0.1秒ほど遅ければ、このゴミが死に、伏黒恵の死は確定していた)

 

魔虚羅(まこら)を倒すことを目的と据えるが、その障害であるエスデスを一目見た時から、悟と匹敵するほどの術師であると宿儺は睨んでいた。

 

「まぁ、何者であれ殺すことには変わらんがな」

 

そう言って宿儺は不敵な笑みを浮かべて一歩歩みを進める。その瞬間、エスデスの姿は消えた。

 

「むっ!」

 

宿儺が背後を振り向くと、そこにはエスデスが回り込んでいた。エスデスは宿儺に拳を放つが、宿儺はその拳を片手で受け止めた。

 

(カイ)

 

スパパパパパッ!

 

宿儺が術式を発動すると、エスデスは体の至る所に斬撃を受け、バラバラになる。だがそのバラバラになった体は氷となり、粉々に砕け散る。

 

「ほう・・・」

 

瞬時に偽物と入れ替えた業に宿儺は関心の声を上げる。そして、当のエスデスは宿儺から距離を取り、地に片手を付け、氷の柱を瞬時に作り上げ、宿儺を凍らせて持ち上げる。

 

スパァ!!

 

宿儺は術式で斬撃を飛ばし、一瞬で氷を粉々切り裂いた。だが一瞬で宿儺の間合いに入ったエスデスに顔に蹴りを入れられ、蹴とばされる。

 

「どうした?かの呪いの王がこの程度ではあるまい・・・っ!!」

 

エスデスが余裕を見せていると、氷から脱出した魔虚羅(まこら)が接近してきて、右前腕部に備えられた剣を出して攻撃を仕掛けてきた。

 

「ふっ・・・」

 

エスデスは魔虚羅(まこら)が振るう剣を片手で受け止めた。すると、魔虚羅(まこら)の剣が光始めた。

 

「むっ・・・!」

 

エスデスが気づいた頃には、力で押し負け、彼女は吹っ飛ばされてしまう。

 

ヒュンッ!ザンッ!!

 

魔虚羅(まこら)が追撃しようとすると、宿儺の斬撃が飛んできて、魔虚羅(まこら)の身体に一筋の傷ができあがる。攻撃を受けた魔虚羅(まこら)は宿儺に接近し、宿儺もまた、魔虚羅(まこら)に接近する。そのタイミングでエスデスが飛び出し、三者は同時に右腕部での攻撃を放つ。各々の攻撃はすさまじく、三者は同時に吹っ飛び、建物をぶち破る。土煙が晴れると、三者は何事もなかったかのようにピンピンしており、エスデスは飲み物を飲み、宿儺はポップコーンを食べている。

 

(あの刃・・・対呪霊に特化した退魔の剣か・・・。反転術式と同様生のエネルギー。私が呪霊なら、最初の一撃で消し飛んでいたな)

 

魔虚羅(まこら)の右腕部の剣の力を見抜いたエスデスは飲み物を飲み干した後、容器をその場に捨てる。

 

「・・・ふんっ、まずい・・・ペッ」

 

宿儺は食べたポップコーンに悪評を付け、唾を吐いた。そして、軽く指を振るった。

 

スパァ!!

 

その瞬間、魔虚羅(まこら)の身体に切り傷がついた。斬撃はエスデスにも飛んできたが、彼女は瞬時で氷を作り上げ、それで斬撃を防いだ。そして、巨大な氷を作り上げ、それを宿儺に放った。対応が遅れた宿儺はもろに直撃し、氷もろともビルと激突した。

 

ヒュンッ!ドオオオン!

 

同時に魔虚羅(まこら)はエスデスを掴み上げ、近くのビルに叩きつけて放り投げる。だがエスデスはビルの壁に片手で立て、態勢を整えた。

 

「やるか!」

 

魔虚羅(まこら)が追撃し、拳を叩きつける。エスデスは後退して拳を避ける。拳を放った直後、魔虚羅(まこら)はビルに潜り込み、バタフライで泳ぐようにエスデスを追撃する。エスデスは連続バク転で攻撃を全て躱す。魔虚羅(まこら)は両手を合わせ、それをハンマーのように振り下ろした。エスデスはその攻撃を躱し、魔虚羅(まこら)の顔に蹴りを放った。直後、宿儺の斬撃が両者に飛んできた。その斬撃に魔虚羅(まこら)は片足を斬られる。エスデスは氷の防御壁を何層にも分けて作って防御する。だが相殺する威力が凄まじく、エスデスは吹っ飛ばされる。

 

魔虚羅(まこら)は宿儺に顔を向けて、咆哮を放つ。その咆哮で宿儺は吹っ飛ばされるが、別のビルの壁で態勢を整える。そこへ魔虚羅(まこら)が追撃し、宿儺を押しつぶそうと力を籠めるが、宿儺はそれを片手で受け止め、蹴りを放って魔虚羅(まこら)を蹴とばす。宿儺は追撃をし、拳を放つ。対し魔虚羅(まこら)も拳を放って迎え撃とうとする。そのタイミングでエスデスが飛び出し、両者の間に入って拳を放つ。

 

ドオオオオン!!!パリィィィン!!!

 

三者の拳がぶつかり合い、辺りのビルの窓は粉々になる。地に降り立った瞬間、魔虚羅(まこら)はエスデスに拳を放つ。が、エスデスはその拳を片手で難なく受け止める。だが魔虚羅(まこら)の攻撃はこれで終わらず、拳の連撃を放つ。エスデスはその連撃を全ていなし、最後の一撃は屈んで躱し、後退する。

 

ヒュンッ!!ザシュ!!

 

その瞬間、宿儺の斬撃が飛んできて魔虚羅(まこら)だけがダメージを受ける。宿儺の斬撃を躱したエスデスは天井を突き破り、ビルの外へと飛び出す。その瞬間・・・

 

バアアアアアアン!!!

 

3人がいたビルは粉々に崩壊する。宙に浮くエスデスは崩壊したビルに向かって氷の一撃を放とうとする。

 

ギュルルル・・・バシィ!!

 

「!」

 

すると、彼方からロープが伸びてきて、エスデスの身体を瓦礫と一緒に巻き付け、拘束した。瓦礫ごとエスデスを巻き付けた宿儺は力いっぱい引っ張り上げ、近くの高層ビルに叩きつけた。宿儺は追撃に向かおうと飛び出す。エスデスは数多の氷柱を作り出し、それを全て宿儺に放つ。さらに下にいる魔虚羅(まこら)は近くの車を掴み上げ、何台も投げ放つ。

 

「ヒヒッ!」

 

宿儺は迫ってきた氷柱と車を斬撃を放っていくつかを切り裂き、残ったものは蹴りを放ち、斬撃を放つと同時に氷柱と車を弾き返した。弾き返した車はエスデスの元に向かったが、作り上げた氷の柱に乗って、斬撃共々回避する。一方魔虚羅(まこら)は宿儺が弾き返した氷柱が全て突き刺さり、斬撃によって顔が両断される。

 

ガコンッ!!

 

すると、魔虚羅(まこら)の法陣が回った。その瞬間、今まで受けた魔虚羅(まこら)が全て完治されている。

 

「ほう・・・これはおもしろい」

 

「ふん・・・何かしたな」

 

今まで受けた傷が全てなかったことになったこの事象に宿儺とエスデスは魔虚羅(まこら)には何かしらの能力があると勘ぐっている。ほんの数秒の間が開いた瞬間・・・

 

ドォォン!!ドォォォン!!ドゴオオオオオオオン!!!

 

三者の戦闘はさらに激化し、周りの建物が崩れ、屋上が切り裂かれ、破損した車と共に瓦礫が道路に落ちていく。魔虚羅(まこら)の一撃によって吹っ飛ばされた宿儺は一般人が避難していた地下を突き破り、態勢を整える。そこへ、魔虚羅(まこら)が天上を壊し、退魔の剣を振り下ろした。宿儺はその一撃を躱し、斬撃を放って魔虚羅(まこら)の足を斬り落とす。

 

バッ!ズズズズズズズズン!!!

 

そして魔虚羅(まこら)の身体に幾度もの斬撃を放つ。連続の斬撃を受けて魔虚羅(まこら)は倒れる。だがこれで仕留めたわけではないとわかっている。

 

(妙な手応えだな)

 

何かあると悟り、宿儺は軽く後退して魔虚羅(まこら)から距離を取る。すると魔虚羅(まこら)は起き上がり、左拳を振るい、退魔の剣を振り下ろす。宿儺はその拳と斬撃を後退して躱す。魔虚羅(まこら)はさらに追撃し、退魔の剣を宿儺に放つ。首を撥ねる一撃を宿儺は首に自らの口を出し、歯で受け止めてへし折る。そして魔虚羅(まこら)を地上に向けて蹴とばす。

 

ピキピキピキ・・・ヒュンッ!ドォォォン!!

 

魔虚羅(まこら)が飛び出してきたタイミングでエスデスは氷の氷柱を作り出し、それを放って地下にいる宿儺もろとも魔虚羅(まこら)を貫く。そして一瞬で魔虚羅(まこら)の間合いに入り、蹴とばしてビルに叩きつけた。

 

ピキ・・・ズンズンズンズンズン!

 

魔虚羅(まこら)が起きようとした時、辺りに舞う一滴一滴の水滴が一瞬で凍り、氷柱となって魔虚羅(まこら)を刺し貫く。すると、魔虚羅(まこら)の法陣が光り輝き、回りだし、傷が全て完治する。

 

「またか!」

 

それを見た瞬間、エスデスは地に手を翳し、巨大な氷柱を作り上げて魔虚羅(まこら)の腹部を貫いた。

 

スパパパパッ!!ドォォォン!!

 

するとエスデスの足元に切れ目ができ、崩壊すると同時に上空に打ちあがった。それを追うのは宿儺だ。エスデスは向かってきた宿儺に接近し、打撃を放つ。宿儺はエスデスの攻撃をいなし、腕を振るって攻撃を放つ。エスデスは腕を振るって攻撃を弾く。その瞬間、魔虚羅(まこら)が飛び出し、左腕の打撃を放ってエスデスを地面に叩き落とす。そして魔虚羅(まこら)は宿儺に向けて再生した退魔の剣で突きを放つ。宿儺はその一撃を払い除け、魔虚羅(まこら)を殴り飛ばす。宿儺はクレーンのワイヤーを掴み、勢いをつけて魔虚羅(まこら)を蹴り飛ばし、クレーンに叩きつける。

 

ドォォォォン!!

 

この衝撃でクレーンは壊れ、崩れ落ちていく。地に着地した宿儺に魔虚羅(まこら)は退魔の剣で攻撃を仕掛けようとする。そこへ、エスデスは崩壊したワイヤーを手に取り、放り投げて魔虚羅(まこら)の身体に巻き付け、凍らせる。ワイヤーで身体を巻きつけられた魔虚羅(まこら)は無理に抵抗し、ワイヤーを引き千切る。

 

ドゴオオオオオオン!!!

 

その瞬間、支えられていた建造物が崩壊し、車も、逃げ遅れた一般人も、建物に避難した一般人も大量に巻き込まれていく。そんなことはお構いなしに三者の戦闘はさらに激しさを増す。後退していくエスデスに宿儺は追撃し、斬撃を放つ。斬撃はエスデスが作った氷の防御壁と建造物を切り裂いていく。破壊された建造物の裂け目の間をすり抜け、エスデスは宿儺を上空に蹴とばした。

 

ドオオオオン!!

 

宙に浮くに宿儺は魔虚羅(まこら)が放り投げた電車と激突する。しかし宿儺は電車をりんごの皮を剝くように切り裂いていく。直後、魔虚羅(まこら)が宿儺に接近し、呪力が込められた右腕部で打撃を与えた。

 

(呪力?)

 

宿儺は魔虚羅(まこら)の打撃を防御したが、電車と共に吹っ飛ばされる。宿儺は体勢を立て直し、電車の上に立つが、直後にエスデスが生成した巨大な氷が降ってきて、電車と共に押しつぶされる。

 

「貴様ら、やってくれたな!」

 

宿儺はお返しとばかりに自分をサンドする電車と氷を術式でバラバラに斬り刻み、その破片をエスデスと魔虚羅(まこら)に放つ。迫ってきた破片をエスデスは氷の防御壁で防ぎ、魔虚羅(まこら)は電車で防いで宿儺に接近する。

 

「お」

 

魔虚羅(まこら)は電車を振り下ろし、宿儺を電車の車内に入れる。そして、宿儺がいる車両を捻じり、接近するエスデスに向かって放り投げた。エスデスは氷の防御壁を展開するも、力負けして電車に激突し、ビルに激突する。この激突でビルの中に入った宿儺は後退し、エスデスが作った氷柱を躱す。後退する間際、宿儺は逃げ遅れた一般人を巻き込んだ斬撃を放つが、エスデスは氷の柱を作り上げる。氷の柱は真っ二つに両断されるが、斬撃は軌道を逸らし、エスデスに直撃しなかった。

 

「素晴らしい・・・!これこそが真の戦場だ!!」

 

「ハハハハハ!!貴様ら!見えているな!俺の術が!!」

 

さらに宿儺は斬撃を飛ばし、エスデスを吹っ飛ばす。そこへ魔虚羅(まこら)が接近し、エスデスを叩き落とそうとするが、エスデスは空中で態勢を立て直し、氷のサーベルを作り上げて魔虚羅(まこら)の右腕を両断する。そして、エスデスは魔虚羅(まこら)を蹴とばして後退し、宿儺の放つ斬撃を躱した。斬撃を受けた魔虚羅(まこら)は真っ二つに両断される。しかし、魔虚羅(まこら)は一瞬で身体が再生し、宿儺に接近する。

 

バッ!シュバババババ!!

 

宿儺は絶え間ない斬撃を放ち、魔虚羅(まこら)の腕や首を撥ね飛ばすが、腕や首が失ってなお魔虚羅(まこら)は動き、一瞬で欠損個所を再生する。魔虚羅(まこら)は宿儺に打撃を与えようとするが、宿儺は一撃一撃をいなし、魔虚羅(まこら)を潜り抜けて斬撃を与えた。

 

宿儺はエスデスが飛ばしてきた巨大な氷柱を腕を振るって斬撃を放って壊す。氷柱が真っ二つに斬れた瞬間、エスデスは宿儺の間合いに入り込んで、彼にかかと落としを放ち、そこから回し蹴り、さらに接近して殴り飛ばす。

 

その瞬間、魔虚羅(まこら)がエスデスの目の前に現れ、彼女を殴り飛ばす。さらに魔虚羅(まこら)は高く跳躍してエスデスを踏みつけようとする。エスデスは体を捻って魔虚羅(まこら)の攻撃を躱し、態勢を整え、構える。対し魔虚羅(まこら)も身構える。

 

バッ!ドシャアアアアン!!

 

直後、宿儺が腕を振るい、地面を抉って両者を吹き飛ばす。そこから宿儺は魔虚羅(まこら)を通り抜け、数多の斬撃で魔虚羅(まこら)を細切れにする。

 

そこへエスデスが宿儺に接近し、氷のサーベルの斬撃を放つ。宿儺はその斬撃を体を捻って躱し、腕を振るって斬撃を放つ。エスデスは何層もの氷の防御壁で斬撃を相殺させ、氷のサーベルを振るう。宿儺は斬撃を屈んで躱し、側面に回り込んで斬撃を放つ。エスデスは同じ要領で氷の防御壁で相殺させる。そして、腕を振り上げて巨大な氷柱を作り、宿儺を打ち上げる。宿儺は氷柱に斬撃を放ち、後退する。

 

そこへコマ切れ状態から再生した魔虚羅(まこら)がエスデスに何発もの拳を放つ。エスデスは後退してタワーの中に入り、魔虚羅(まこら)の攻撃を全て躱す。そして地面を抉るほどの一撃をエスデスは両腕で掴み上げ、さらに来る拳をひらりと躱し、魔虚羅(まこら)の両手を払い除けてドロップキックを放って天井まで蹴とばす。

 

【ウ・・・ウゥ・・・ウウーウウー!】

 

魔虚羅(まこら)は体勢を立て直し、タワーの天辺を持ち上げ、それを宿儺に投げ放つ。迫ってきたタワーの天辺を宿儺は斬撃を放って粉々にする。粉々になった破片は渋谷中に降り注ぎ、さらに上空には宿儺の術式が直撃し、飛行機が墜落してくる。宿儺は一瞬で魔虚羅(まこら)に近づき、片腕を掴んで振り回し、墜落する飛行機に向けて放り投げる。

 

飛行機をぶち破った先でエスデスが待ち構わびおり、彼女は飛行機に纏う炎を凍らせて、それを足場にして跳躍して跳び蹴りを放つ。蹴りを受けた魔虚羅(まこら)は飛ばされ、さらにエスデスが振るった飛行機の翼に直撃して、飛距離が増してプールに着水する。

 

「グラオホルン」

 

エスデスは魔虚羅(まこら)目掛けて巨大な氷柱を放った。氷柱は魔虚羅(まこら)の腹部を刺し貫き、プールの水を一瞬で凍らせる。だが魔虚羅(まこら)は凍ったプールの中で動き、力を込めて氷を粉々にし、氷柱の雨を降らせる。エスデスは着地した瞬間地面を凍らせ、滑って降り注ぐ氷柱の雨を避けきる。直後、彼女の背後に魔虚羅(まこら)が降りてきた。エスデスは魔虚羅(まこら)が放つ一撃を跳躍して避け、氷の隕石を魔虚羅(まこら)に放つ。氷の隕石が直撃し、魔虚羅(まこら)は飛ばされる。

 

そこへ宿儺がエスデスに接近し、腕を振るって斬撃を放つ。エスデスは跳躍して斬撃を回避し、宙に氷の足場を作り、それを伝って距離を取る。宿儺は飛び降りて橋の柱を斬撃で斬り落とし、それをエスデスに投げ放つ。エスデスは迫ってきた橋の柱を氷のサーベルで真っ二つにする。直後、魔虚羅(まこら)がさらに柱をいくつも投げ放った。エスデスは氷のサーベルで柱を全て斬り落とすが、すぐそこに魔虚羅(まこら)が迫り、呪力が纏った一撃を放つ。

 

ドカアアアアアン!!

 

魔虚羅(まこら)の一撃で爆発する。爆風の中より全く無傷のエスデスが飛び出してきた。魔虚羅(まこら)はエスデスに迫るが、両者の間に宿儺が割り込む。

 

バッ!ズババババババババババババババ!!!!

 

宿儺が両手を広げると、魔虚羅(まこら)とエスデスに絶え間ない斬撃が襲い掛かる。エスデスは1つ1つの斬撃を見て、いくつもの氷を作り上げて全ての斬撃を防御する。それに反し魔虚羅(まこら)は防御できず、全ての斬撃を受けてしまう。しかし、法陣がまた動き出し、全てのダメージがまたなかったことになる。

 

(宿儺の術式はおそらく目に見えぬ斬撃・・・いや、まだ何か隠しているな。斬撃を放つ至ってシンプルな術式だが、それゆえに小回りが利きやすい。その斬撃は宿儺の呪力出量と技量によって威力を増している。おそらく20本全てを取り込んでいれば、今の私なら即死だっただろうな。だが脅威は宿儺だけではない)

 

エスデスは実際に宿儺と戦ってみて、その実力を垣間見たエスデスは今まで感じたことのない高揚感で胸が満ちている。そして、エスデスは魔虚羅(まこら)に視線を向ける。

 

(氷凝呪法か・・・その術式のことはよぉーく知っている。だが、その練度や精度は1000年前の術師や呪霊と比べても次元が違いすぎる。裏梅で勝てるかどうか・・・いや間違いなく負けているな。もし奴が1000年前に生きていれば、当時の術師も呪霊も、奴1人で全滅していただろう。そして・・・)

 

エスデスと戦ってみて、彼女がどれほどの脅威ある存在であるかを認識した宿儺は心の中で彼女を称賛している。そして、宿儺は魔虚羅(まこら)に視線を向ける。

 

(あの式神・・・八岐大蛇に近いものだな。私の氷や宿儺の斬撃を見切り、そして呪力を込めた攻撃。どちらもあの法陣が回転した後にだ。布瑠の言とあの法陣は完全な循環と調和を意味する)

 

(推し量るにこの式神の能力はあらゆる事象への適応!最強の後出し虫拳!あの時の俺なら、この式神にも女にも、敗れていたかもしれんな)

 

魔虚羅(まこら)の能力を見抜いた宿儺は魔虚羅(まこら)を完全に葬り、エスデスを完全に打ちのめすために印相を結ぶ。

 

「ケヒッ!ククク・・・魅せてくれたな伏黒恵、女ぁ!!」

 

宿儺の動作を見て、エスデスは彼が何をしようとしているのかを理解した。

 

「ふふ・・・出す気だな?ならば・・・こちらも出し惜しみはなしといこう!!」

 

エスデスは魔虚羅(まこら)と宿儺を本気で蹂躙するために、片手を上空に掲げ、拳を握りしめる。

 

「「領域展開」」

 

宿儺とエスデスが術を発動した瞬間、2人の領域が顕現しようとしている。

 

 

"伏魔御廚子"

 

 

"氷嵐大将軍"

 

 

2人が術を発動させた瞬間、宿儺の元に異形の生物の頭骨に象られた禍々しきが異形の生物の頭骨に象られた禍々しきお堂が出現し、そしてエスデスの周りを含んだ広範囲に全てを包み込むほどの猛吹雪が吹き荒れる。そしてこの2つの領域は・・・今まさに現実に現れ出て、互いに領域の押し合いをしている。

 

宿儺の領域、伏魔御廚子。

 

エスデスの領域、氷嵐大将軍。

 

この2つの領域は他とは異なり結界で空間を分断しない。結界を閉じず生得領域を具現化することはキャンバスを用いず空に絵を描くに等しい。まさに神業。加えて『相手へ逃げ道を与える』という縛りによって底上げされた必中効果範囲は両者ともに最大半径200メートルに及ぶ。両者は伏黒恵への影響を考慮し、効果範囲を半径140メートル地上のみに絞る。そして2人の領域は閉じない領域・・・必中効果を定義する外殻がないため、領域の押し合いにおいても、エスデスと宿儺以外には必中効果が消えない。

 

ズズズズズズズズズズズズン!!!!

 

両者の領域の間に挟まった魔虚羅(まこら)は宿儺の絶え間ない斬撃の嵐と、エスデスが作り出す氷剣が数多に突き刺さり、反撃する隙がない。斬撃はエスデスにも迫るが、彼女は自身の四方八方に吹雪で包みこみ、斬撃を相殺する。対する宿儺にも絶え間ない氷の攻撃が迫るが、それを斬撃で相殺させている。

 

そして、両者の領域は半径140メートルに存在する全ての建築物、そして全ての人々を巻き込み、全てを消滅させた。

 

宿儺の斬撃は2種類。必中効果範囲内の呪力を帯びた者には『(ハチ)』、呪力のない者には『(カイ)』伏魔御廚子が消えるまで絶え間なく浴びせられる。

 

対するエスデスの領域、氷嵐大将軍で操れるのは2種類。1つは生成される氷。1つは領域内に吹き荒ぶ極寒の吹雪。吹き荒ぶ吹雪は(ハチ)を相殺できるほどに攻守共に優れている。

 

唯一の魔虚羅(まこら)の破り方・・・初見の技にて適応前に屠る。(ハチ)はその条件に適しているが、適応が(カイ)ではなく斬撃そのものに行われた場合、その限りではない。ゆえにエスデスは、魔虚羅(まこら)への攻撃手段を氷のみに集中させ、吹き荒ぶ吹雪を自身に纏わせ続ける。

 

魔虚羅(まこら)の再生が終わろうとしていた。その瞬間、渋谷一帯に全てを焼き尽くすほどの高火力が、全てを凍て尽くすほどの極低温が半々に覆い尽くそうとしていた。

 

「凍れ」

 

(フーガ)

 

エスデスは片手を振るい、魔虚羅(まこら)に向けて溜めに溜めた猛吹雪を竜巻のように放った。そして宿儺もまた高火力の炎の矢を魔虚羅(まこら)に放った。

 

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!

 

炎の矢と猛吹雪の竜巻は衝突しあい、大きな衝撃が発生し、互いに螺旋を描いた。その衝撃に周りの建物は焼け崩れ、凍り付いて粉々に砕いていく。

 

 

炎と吹雪の螺旋が収まると、両者の領域は消えた。その瞬間、エスデスは一瞬で領域範囲外の建物の屋上に降り立った。

 

「く・・・くくく・・・ははははははは!!これが宿儺か!!これが呪いの王か!!想像以上だ!!これほど満ちた戦は久しぶりだ!!」

 

エスデスは充実した戦闘を経験し、興奮が高ぶり、高揚感に満ちた笑い声をあげる。だがまだ足りない。まだ己の飢えは、満たされていない。

 

「いいんですかー、エスデス様ー?宿儺を生かしちゃって」

 

彼女の背後には片膝を折ってひれ伏している自分の部下、三獣士がいた。

 

「構わん。元よりこの戦は私が呪いの王を相手にどこまでやれるか、確かめるためであったのだ。そして、異戒神将との三つ巴の戦で、私は確信した。私は今よりもっと高みを目指せると」

 

エスデスはさらに強くなれると確信し、拳を強く握りしめている。そして、己をさらに強くさせるのは、偽夏油の言う次なるステージであると睨んでいる。

 

「エスデス様、後のことは我々にお任せを」

 

「うむ。総監部への言い分もこれで十分だ。後は存分に楽しむがいい」

 

エスデスは後のことを全て三獣士に任せ、自分は早々に渋谷を離れるのであった。

 

 

崩壊した渋谷の街。強烈な2つの攻撃を受けた魔虚羅(まこら)は消滅し、法陣が転げる。その法陣の機能が停止し、影になった直後、宿儺は地に降り立った。激しい激闘を見ていた春太は呆けた表情で宿儺に顔を合わせる。

 

「何を見ている」

 

「うっ・・・」

 

「去ね」

 

そう言って宿儺は歩き、その場を去ろうとする。

 

「し・・・失礼しま~~す!」

 

自分は助かったのだと確信した春太は走ってその場から去ろうとする。

 

「やっぱ俺は運がいい・・・!今日も・・・生き延びたーーー!!」

 

スパッ!!

 

だが春太の身体は真っ二つに両断され、絶命して倒れた。春太の蓄えた奇跡は七海健人との戦闘で使い果たしていた。そう、正真正銘、彼は死んだのだ。

 

「・・・おっ、そろそろだな」

 

宿儺の手が震え出したことにより、彼は悠仁の人格がそろそろ目覚めようとしているのだと確信する。エスデスと魔虚羅(まこら)の戦いで一通り満足はした。後は総仕上げだ。

 

 

首都高速3号渋谷線 渋谷料金所

 

ドサッ・・・

 

「「「!!」」」

 

渋谷料金所で待機していた硝子、夜蛾、ブラートの3人は物音に気付いた。振り返ってみるとそこには気を失ったままの恵がいた。

 

「伏黒!!」

 

倒れた恵を目撃したが、夜蛾は一瞬だけだが、宿儺の姿も目撃して冷や汗をかいている。

 

(今一瞬見えたのは虎杖・・・いや、宿儺なのか?)

 

「学長!!」

 

すると少し慌てた様子のブラートが声を上げる。

 

「今度は何だ⁉」

 

(たつみ)がどこにもいねぇ!!」

 

「なんだと!!?」

 

負傷して眠っていたはずの(たつみ)がいなくなったと聞き、夜蛾は驚く。

 

「・・・無茶と無謀は履き違えるなよ・・・(たつみ)・・・!」

 

ブラートはいなくなった(たつみ)を安否を祈り、彼を探しに料金所を飛び出すのであった。

 

 

道玄坂 SHIBUYA109前

 

恵を送り届けた宿儺は渋谷の街の崩壊跡地に戻ってきた。彼の視界には崩壊した渋谷が広がっている。

 

「小僧・・・せいぜい噛みしめろ」

 

宿儺がそう呟くと、顔の紋様が消え去った。主人核が悠仁に戻ったのだ。

 

「・・・・・・・」

 

悠仁は目の前の凄惨な現場を目撃し、呆然としている。そして次第に理解し始めると、悠仁はわなわなと震え始める。そして、彼の脳裏に宿儺が暴れまわった時の記憶が溢れだしてきた。

 

「・・・うっ!うぅ・・・ううううぅぅ・・・うっ・・・」

 

自身が犯してしまった罪に悠仁は気分を害して蹲る。悠仁は名前は知らないが黒女(くろめ)が大切に想っていた菜々子と美々子を殺害し、黒女(くろめ)を傷つけただけに飽き足らず、渋谷の街を破壊し、関係のない一般人をたくさん殺した。

 

全部・・・

 

全部全部・・・

 

全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部!!!!

 

 

全部自分が殺した

 

 

「うっ・・・うえぇ!!!」

 

あまりの大きい自分の罪の意識に悠仁は吐いた。

 

「・・・死ねよ・・・自分だけ・・・自分だけ!!!」

 

悠仁は自分のしてしまったことを激しく責め、涙を流し叫ぶ。

 

「死ね!!!!今!!!!!」

 

どれだけ自分を責めようとも・・・どれだけ自分を憎もうとも・・・どれだけ自分の死を望もうとも・・・自分が渋谷を破壊したというこの事実は決して覆らない。

 

エスデスが半分壊した?

 

関係ない。

 

全て宿儺のせい?

 

違う。

 

全ては宿儺を御せなかった自分の弱さのせいだ。

 

どれだけ言い訳しても、自分が殺したことには、変わらない。

 

「・・・・・・・・・行かなきゃ。戦わなきゃ」

 

泣き叫んだ後、悠仁はゆっくりと立ち上がり、戦いに戻ろうとする。しかしその表情は虚無を通り越していた。一言で例えるならそれは・・・

 

 

幽鬼

 

 

「このままじゃ俺は・・・」

 

 

 

ただの人殺しだ

 

 

 

 

渋谷駅に通じる入り口前。そこを手ぶらの状態でふらふらと歩いて中に入ろうとする男がいた。その姿は包帯で身を包んでおり、今にも傷が開きそうなほどに痛々しい姿だ。

 

「行かねぇと・・・。俺だけ眠ってるわけには・・・いかねぇ・・・!」

 

禍津神三貴子(まがつがみみはしらのうずのみこ)によって深手を負ったはずの(たつみ)の闘志は・・・まだ消えてはいなかった。




閉じない領域同士のぶつかり合いだとどうなるか全くわからないのでこのような感じに描写してみましたが・・・やっぱり無理やり感が強いですかね?
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