呪術廻戦ー呪いを斬るー   作:先導

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理非ー参ー

渋谷駅地下2階  23時16分

 

悠仁との戦闘を繰り広げていた本物の真人は彼の心を折るためにまだ地下に残っていた一般人に手を伸ばして、数人まとめて貫いて殺害した。

 

(もうちょい陀艮に人間残してもらえばよかったかな)

 

ただ真人の想定していた以上に人が少なかったため、思うような戦略が取れないでいる様子だ。

 

「ま、十分か!」

 

それでも悠仁を追い詰めるには事足りると判断した真人は腕を伸ばし、自分を追ってきた悠仁に打撃を放つと同時に貫いた一般人を放り投げた。

 

(くそ・・・!)

 

打撃を受けた悠仁は飛ばされつつも、1人の一般人を受け止めた。

 

「ああ・・・」

 

「大丈夫か⁉」

 

「う・・・うん!」

 

ブクゥ!パァァァン!!!

 

だが、一般人が悠仁に顔を向けた瞬間、無為転変によって顔が膨れ上がり、粉々に破裂して血飛沫が舞う。飛んできた血が悠仁の目を覆う。

 

(しまった・・・!)

 

虚を突かれた悠仁に右手を棍棒に変えた真人が迫る。真人は悠仁の背後に回り、棍棒の右手を悠仁に振り下ろそうとする。

 

 

道玄坂小路

 

同時刻、(たつみ)と野薔薇と対峙する真人(分身)は右手をトゲ棍棒に形を変えて(たつみ)に振り下ろそうとする。(たつみ)は逃げることをやめ、インクルシオの鍵を構えて振り下ろされた真人の右手を斬り落とした。そこから(たつみ)は斬撃を放ち、真人(分身)の胴体を斬りつける。

 

「ははっ!いいんじゃない⁉」

 

真人(分身)は胴体にできた傷口から複数のトゲを生やして(たつみ)に攻撃を仕掛ける。後退してトゲを躱した(たつみ)はまだ迫りくるトゲをインクルシオの鍵を振るって斬り落とす。そこへ野薔薇が真人(分身)の側面に回り込み、トンカチを振るって釘を打ち飛ばす。釘は真人(分身)の脳天に直撃する。しかしダメージは与えられない。真人(分身)は左手を伸ばし、野薔薇に触れようとする。(たつみ)はそれを阻止するように走り出し、真人(分身)の左手を斬り落とした。

 

「だーから無理だって言ってるでしょ」

 

「無理だとわかってても、やらなきゃいけねぇ時はあんだよ!!」

 

「げぇ~~~・・・アホクサ」

 

(たつみ)の言葉に対して真人(分身)はバカにするような反応を示す。直後、野薔薇は釘を打ち放った。真人(分身)は顔を逸らして直撃を避けた。

 

ザンッ!!

 

そこへ(たつみ)が真人(分身)を突き刺し、そのまま押し倒す。

 

「今だ、釘崎!」

 

「でかしたぁ!」

 

(たつみ)が真人(分身)から距離を取り、そこへ建物に飛び乗った野薔薇が釘を打ち放ち、真人(分身)の両足、両手、胴体に釘を打ち込む。

 

「簪!」

 

そしてそのまま簪を発動させ、膨張した呪力で真人(分身)を拘束する。さらにそこへ野薔薇は真人(分身)に飛び乗った。

 

「ずっと考えてたんだ。あんたの術式聞いた時から・・・こいつは効くんじゃないかって」

 

「あ?」

 

野薔薇は真人(分身)の額に釘を添えて藁人形を突き刺す。

 

「共鳴りぃ!!」

 

カァン!!

 

野薔薇はトンカチを振るって真人(分身)の額の藁人形の釘を打ち込んだ。

 

 

ズシャア!!

 

「ぶはあ!!!」

 

真人が悠仁に棍棒の右手を振るおうとした時、突如として棘の物体が体内から貫かれた。

 

「なっ・・・⁉」

 

「・・・釘崎?」

 

何の前ぶれもなく真人にダメージが入った。その理由が遠くで野薔薇の術式が発動したのだと悠仁は理解した。

 

 

芻霊(すうれい)呪法は魂の繋がりを辿る術式。欠損部位に藁人形を通して釘を打ち込むことで対象の魂にダメージを与えられる。ゆえに分身に対して共鳴りを使えば、本体にダメージを与えることができるのだ。

 

(まさか・・・まさかだ!俺の天敵は・・・虎杖悠仁だけではなかった!!)

 

共鳴りをまともにくらった真人(分身)は血を吐き、膝をつく。

 

「・・・妙だな。少し離れたところで私の呪力が爆ぜる感じがした」

 

野薔薇の発言によって、(たつみ)はようやく理解した・・・いや、疑問が解かれたの方が正しい。

 

「そういうことかよ。妙だと思ってたんだ。前に戦った時より呪力が中途半端だし、手数も少ねぇ。さっきだって手を生やしてがっつり触ればよかっただけなのによ」

 

「お前、分身かなんかで術式使えねぇんだろ」

 

「・・・正解」

 

分身であるとバレた真人(分身)は額の釘を抜き、ニヤリと笑う。

 

(和倉、あいつに共鳴りが効く以上、もうさっきまでのようにドカドカ攻撃は入んない。釘を打ち込めるようにしっかり援護しろ)

 

(おう!)

 

共鳴りが効くとわかり、2人はやるべき方針を固め互いに構える。

 

「おい真人。こっからが本番だぜ。覚悟しろ!」

 

「・・・いや」

 

真人(分身)は身構えた後・・・

 

バッ!

 

「逃げま~~す!」

 

「「はあ!!?」」

 

逃げる選択肢を選んだ。

 

「待て!!」

 

(たつみ)と野薔薇は真人(分身)を見失うわないように追いかける。

 

(こいつを逃したら後々ろくなことにならねぇ。今ここで、確実に殺す!!)

 

(たつみ)は馬力を踏んで高く跳躍して真人(分身)に追いつき、斬撃を放つ。

 

「おっと危ね!」

 

真人(分身)は足の形を馬の足に変えてスピードを上げ、2人の距離を取る。そして真人(分身)は渋谷駅に通じる階段を下りる。

 

「地下!ちょうどいい!和倉!このまま下りて地下に向かうわよ!」

 

「おう!」

 

2人は真人(分身)を追って地下へと降りていった。・・・それが真人の狙いだとも知らずに。

 

 

芻霊(すうれい)呪法によってダメージを受けた真人本体はよろめく。直後、悠仁が呪力を乗せた拳を拳を叩き込んだ。

 

「ぐっ・・・がはっ!」

 

悠仁はさらにラッシュをかけて真人に着実にダメージを与え、壁まで追い込む。

 

(術式の余韻が長い!まだ体が思うように動かない!)

 

反撃しようにも共鳴りの余韻が長く、呪力を練ることができず、真人はただ一方的に悠仁に殴られ続ける。

 

「うらぁ!」

 

悠仁は真人の髪を掴みとり、引き寄せて壁に叩きつけてさらに蹴りを放つ。蹴りを受けた真人は柱に叩きつけられる。そして、悠仁は両拳に呪力を乗せ、真人の腹部に叩き込んだ。

 

(釘崎・・・ありがとう。俺には誰も救えなかった。みんなの苦労も台無しにしてしまった。それでも・・・俺は1人じゃないと、そう思わせてくれて!)

 

悠仁はさらに呪力を込めた拳をもう一撃叩き込む。そしてさらに反撃を与えないようにラッシュをかける。

 

(だから!お前は!!ここで!!)

 

 

殺す!!!!!

 

 

悠仁の放った拳が真人に直撃した。その瞬間、真人は一頭身台サイズの個体に複数分裂した。

 

(分裂した!どれだ?どれか1つには、潰せば致命傷になる魂の部位があるはずだ!)

 

どれが本体が探りを入れていると、1体の個体から強い呪力が放たれる。悠仁はその個体に向けて蹴りを放って潰した。

 

「引っ掛かった!」

 

だが今の個体はただ呪力が宿っただけの分身で、本体は他の個体を回収して逃げ出した。

 

(くそ!呪力につられた!)

 

悠仁は真人を追いかけて走り出す。曲がり角を曲がると、上に通じる階段が見えてきた。するとそこへ、真人(分身)が降りてきた光景を目撃する。

 

(真人が2人⁉分身を作って別行動していた⁉1つに戻って修復する気か!)

 

真人が分身体と1つとなって、自身の回復を狙っていると悠仁は踏んだ。

 

しかし真人は分身とは1つにならず、互いにすれ違った。

 

(なんっ・・・はっ!!)

 

悠仁がその先を見据えていると、たった今階段から降りてきた(たつみ)の姿を目撃する。

 

「!悠仁⁉」

 

「やめろおおおおおおおおおおお!!!」

 

「ヒヒヒッ!!」

 

悠仁は声を張り上げる。真人は(たつみ)に触れようと手を伸ばそうとする。しかしその瞬間、(たつみ)は目をギラリと光らせ・・・

 

ザンッ!!

 

インクルシオの鍵を振り下ろし、真人を一刀両断する。

 

「・・・ヒヒッ!!」

 

だが両断された真人はニヤリと笑い、左面を捨て、右面を再生させて元の姿に戻る。そして、そのまま跳躍して、高く飛び、階段を降りようとする野薔薇に迫る。

 

「なっ⁉」

 

「ハハハハハハ!!」

 

「逃げろおおおおおおおお!!釘崎いいいいいいいいいいい!!」

 

(たつみ)は後ろにいる野薔薇に向けて声を張り上げるが・・・もう遅い。

 

バッ!

 

野薔薇に近づいた真人は片手を伸ばし、彼女の顔に触った。

 

「ブハハハハハ!!鼻からお前は狙ってねーよバーッカ!!」

 

グシャア!!

 

「邪魔だ!!」

 

(たつみ)をバカにする真人(分身)を悠仁は殴り潰す。悠仁はすぐに(たつみ)に駆け寄る。

 

「おい!大丈夫か⁉」

 

悠仁は(たつみ)に呼び掛けるが、(たつみ)は真人に触られた野薔薇を見て呆然とする。それに続いて悠仁は野薔薇に顔を向ける。

 

「・・・釘・・・崎・・・?」

 

(さて、七三術師は一度触れただけでは仕留めきれなかったけど・・・どうなる?)

 

真人に顔を触られた野薔薇は片手で顔を覆い、思い馳せる。

 

 

当時の私は、村の人間は全員頭がおかしくて、自分だけが正気だと・・・そう思い込んでいた。

 

 

 

野薔薇の小学校の頃からの友達、ふみは語る。

 

「6年生まで使うんだよ?本当にいいの?」

 

お母さんにはそう言われたけど、私は水色のランドセルを選んだ。小学校に上がると同時に、村に引っ越してきた。両親は田舎の不便を心配していたが、私は友達に離れ離れになるのが嫌だった。

 

全校生徒19人。一クラスじゃないよ。みんな、赤か黒のランドセル。私は赤も黒も好きだけど、みんなは水色が嫌いだったみたい。高いロッカーに積み上げられたりした。私は椅子に乗ってランドセルを取ろうとした時、ランドセルを落としそうになって転びそうになった。その時だ。野薔薇ちゃんと会ったのは。

 

「あ・・・ありがとう」

 

「ねえ!ふみのランドセルさ!交換しよ!」

 

「へっ?」

 

「交換!しよ!」

 

「え・・・」

 

勢いに流れるがまま、私たちはランドセルを交換した。やんちゃというべきかなんというか・・・野薔薇ちゃんはランドセルを背負ってランドセルをロッカーに乗せた子たちを蹴り倒した。もちろん、先生には怒られてたけど。

ランドセルはその日に返ってきた。

 

「そもそもランドセルきら~い」

 

「えぇ・・・」

 

その日から野薔薇ちゃんはウチに入り浸ってよくお父さんとゲームをしていた。野薔薇ちゃんは村の人たちが嫌いだった。

 

「狭ぇ村だからさ、友達になるより他人になる方が難しいんだよ」

 

いいことじゃないか、と私は思った。けど数年たって、近所のおばあちゃんが赤飯を炊いて持ってきた時、野薔薇ちゃんの言ってたこと、その気色悪さを理解できた気がする。

 

ある日のこと・・・

 

「ふみ!秘密基地見つけたの!」

 

野薔薇ちゃんは子供らしからぬことを言ったと思えば、急にこんなことも口にする。

 

「今日からそこに住むんだ~!」

 

今思えば、あれは誰かの受け売りだったと思う。例えばお母さんとか。野薔薇ちゃんの言う秘密基地は、人ん家だった。

 

「あ、本当に来てくれた。いらっしゃい、寒かったでしょ」

 

その子は沙織ちゃんといって、私より後に村に引っ越してきた。いつも突然訪ねてくる私たちを、嫌な顔1つせず迎え入れてくれた。・・・そうだ、沙織ちゃん、いつも家にいたな。

 

沙織ちゃんに会って野薔薇ちゃんは変わった。口調も柔らかくなって、なんというか、品のようなものが身についていったんだと思う。私と同じよそ者だけど、私と沙織ちゃんは何もかも違いすぎた。

 

それから少しして、沙織ちゃんの家の様子がおかしくなった。ゴミとか落書きとか、明らかに人為的に積まれた雪とか。立派なお家が、不気味に見えるくらい。

 

それから少したって、沙織ちゃんが引っ越した。野薔薇ちゃんと2人で見送ったけど、その時、誰が何と言ったとか、どんな天気だったとか、思い出すことができない。でも・・・とにかく野薔薇ちゃんが顔をべちゃべちゃにして泣いていた。この子も泣くんだと、その衝撃で他のことが頭に入ってこなかったんだと思う。

 

そして、今年の6月。野薔薇ちゃんが東京の高校に通うことが決まった。おばあちゃんと揉めて時期が中途半端になってしまったらしい。

 

「じゃあ、二度とここには戻ってこねぇから!ふみ、あんたもそのうちこの村出なさいよ!」

 

「・・・うん・・・」

 

私の時は泣かないんだ。なんて最低なセリフがよぎったせいで、何も言えなくなってしまった。

 

あれから私たちは沙織ちゃんの話をしていない。

 

「ふみ」

 

「!」

 

「次会う時は3人で」

 

そう言った野薔薇ちゃんの顔は・・・涙ぐんでた。私と別れるのが寂しくて泣いてるんだ。そう思ったら私自身も・・・涙がポロポロと溢れ出ていた。

 

「・・・うん!」

 

私も、いつかこの村を出て、野薔薇ちゃんと沙織ちゃんに会うんだ。そう、誓ったんだ。

 

野薔薇ちゃん、元気かなぁ。

 

 

「沙織~、ちょっと休んだら?」

 

「ダメですよ。校了日今日・・・ていうか昨日ですよ?」

 

「ふっ、朝までは今日よ」

 

「ふふ・・・ん・・・んん~!あっ!ニキビできてる~・・・」

 

「渋谷やばいよ。テロかな?」

 

「・・・先輩って結婚願望ありましたっけ?」

 

「ん?何?急に」

 

「あ、いや、こんなはずじゃなかったなあって。中2の時、ド田舎に引っ越したんですよ」

 

「転勤?」

 

「あ、いや、うちの母オーガニックでスピリチュアルなヤバい女なんで」

 

「なんとなく察したわ」

 

「そこで2人の女の子・・・えっと7個下か。特に野薔薇ちゃんって子がすごい懐いてくれて・・・あ、私1人っ子だから、もう野薔薇ちゃんがかわいくってかわいくって・・・慕ってほしくてお姉さんぶって・・・紅茶なんて出しちゃってりして・・・ふふふ、小1相手にですよ?」

 

「ふふ、かわいいじゃん」

 

「連絡先は交換しなかったんです。徐々に疎遠になるのが怖くて・・・村を離れる時わんわん泣かれたなぁ・・・」

 

元気かな?野薔薇ちゃん。今どこで何してるんだろう?

 

 

あの村の連中は全員頭がおかしい。

 

そんなことはない。

 

でもおかしい奴の声は大きくて、自分以外の全てに思えて、土足で他人の人生を踏みにじるもんなんだ。

 

「・・・っていうわけでもなかったかなぁ」

 

私がそう思えるのは多分、私の周りに椅子を持ってきて笑って来る連中のせいかもね。

 

虎杖に和倉に伏黒・・・それから五条先生に赤女(あかめ)先生。

 

他にも、真希さんやマインさん・・・狗巻先輩にパンダ先輩。

 

それから絶対に外せないのが・・・親友のふみ。

 

「ごめんね、ふみ」

 

約束、守れなくて

 

 

「・・・虎杖、みんなに伝えて」

 

野薔薇は悠仁に顔を向けて、誇らしい顔で告げる。

 

「悪くなかった!」

 

そう伝えた後、野薔薇は(たつみ)に顔を向ける。

 

「和倉。あんたにはこれだけは伝えとく」

 

野薔薇は(たつみ)にグッドサインを送り、にっと笑みを浮かべる。

 

「熱かったよ!あんたの兄貴!」

 

ビキッ!パァン!!

 

伝えることを伝えた瞬間、片目が破裂して、階段から倒れようとする。

 

「!!釘崎ぃ!!!」

 

(たつみ)は野薔薇に駆けつけて階段から落ちてきた野薔薇を受け止める。彼女の顔の抉れ具合からして、生還は絶望的な状況だ。

 

「おい・・・嘘だろ・・・釘崎・・・。俺約束したよな・・・?兄貴のこと・・・ちゃんと教えろって・・・。なのに・・・!なぁ・・・返事してくれよ釘崎・・・なぁ、おい!!」

 

(たつみ)は目の前の現実を受け入れられず、野薔薇を起こそうと揺さぶる。だがどれだけ揺さぶっても、彼女はピクリとも動かない。

 

「・・・・・・・・・釘・・・崎・・・」

 

一方悠仁は、野薔薇を見て呆然とし、瀕死のシェーレを置いていってしまったこと、無関係の人間を殺した時の出来事、七海が破裂した時の光景がフラッシュバックし、動悸が激しくなり、息遣いが荒くなる。

 

「・・・だ・・・ダメダ・・・ふぅ・・・ふぅ、ふぅ、ふぅ・・・く・・・釘・・・」

 

これまで自分のやってしまった罪が掘り起こされ、そして、今野薔薇が倒れ・・・悠仁の心が・・・折れた。

 

ドォン!!

 

野薔薇に声をかけ続ける(たつみ)に真人は容赦なく顔面を殴って彼を飛ばし、、改造人間を使って壁に固定させた。

 

「がっ・・・!てめぇ・・・真人ぉ!!!!!!!

 

怒号を飛ばす(たつみ)に真人は異を介さず悠仁に接近する。

 

(ゾクゾクする!自分の才能に!あぁ~・・・俺って・・・)

 

 

俺こそが!!!!呪いだああああああ!!!!!

 

 

真人は悠仁に向けて、呪力を纏った拳を打ち放とうとする。その瞬間・・・真人の呪力が・・・

 

 

黒く輝く

 

 

ドオオオオオオオン!!!!!

 

 

黒閃!!!!!

 

 

興奮して放たれたれた真人の黒閃は悠仁の腹部に直撃する。黒閃をまともにくらった悠仁は吹っ飛ばされていく。

 

「悠仁ぃ!!!こ・・・この野郎ぉ・・・!!」

 

(たつみ)はじたばた動いて改造人間をどかそうとするが、びくりともしない。彼のもがく様子を、真人は薄ら笑いを浮かべる。

 

「・・・お前は・・・後だ。言ったろ?肉も、骨も、魂も・・・お前の大事なものも・・・友達も親友も恋人も師匠も・・・何もかも全部壊すってなぁ!まずはぁ・・・お前からだぁ!!虎杖悠仁ぃ!!!!」

 

真人は右手を伸ばして吹っ飛ばされる悠仁を引き寄せ、拳を叩きこみ、放り投げて壁に叩きつける。

 

「ハハハ!!どうせお前は!!害虫駆除とか!!昔話の妖怪退治とか!!その程度の認識でここまで来たんだろ?甘ぇんだよクソガキが!!!」

 

ゲシィ!!

 

「ごは・・・」

 

「悠仁ぃ!!くそぉ!!」

 

真人は悠仁を蹴り飛ばし、襟首をつかんで地面に叩きつけたり、一方的に悠仁を痛めつける。

 

「これはな!!戦争なんだよ!!!間違いを正す戦いじゃねぇ!!正しさの押し付け合いさぁ!!ぺらっぺらな正義のなぁ~!!!!」

 

壁に叩きつけられた悠仁に真人は近づく。

 

「お前は俺だ。虎杖悠仁。俺が何も考えずに人を殺すように、お前も何も考えずに人を助ける!!!」

 

真人は悠仁の襟首を掴み上げ、彼を殴りつける。何度も何度も。

 

「俺たちの本能と!!お前らの理性が獲得した尊厳!!100年後に残るのはどっちかっつぅそういう戦いだあ~!!!」

 

「やめろ!!!やめてくれぇ!!!」

 

「お前も同じだよ、和倉(たつみ)ぃ。そんなことに気付けない奴がどうして俺に勝てるよ?」

 

饒舌に語る真人とは対照的に、心が折れた悠仁は顔を項垂れ、虚無を映している。

 

「・・・なあ、虎杖悠仁。殺した呪いを数えたことはあるかい?」

 

「・・・・・・・」

 

「ないよなあ。俺も俺も。殺した人間の数とか、マジでどうでもいいもん。お前のことも、そのうち忘れるさ」

 

真人は悠仁にとどめを刺そうと、右手を鎌のような刃へと変化する。

 

 

「やめろって言ってんだろおおおおおおおおお!!!!」

 

 

・・・グルルルルル・・・!!

 

ゾワッ・・・

 

「!!?」

 

その瞬間、怒号を放つ(たつみ)から強烈な圧を真人は感じ取った。振り返ると、(たつみ)の中から、何かが溢れだし、巨大化していく光景が真人の目に広がっていく。

 

(な・・・なんだ・・・?)

 

巨大な何かが姿を形どった。その姿は・・・星のように鋭い眼光を放つ巨大な龍だ。

 

ゴオオオオオオオオオオオオ!!!!

 

「いぃ!!?」

 

龍が耳を塞ぎたくなるほどの咆哮を上げた。真人が両手を塞ぐと、その龍は何もなかったかのように消え、元の空間に戻る。

 

(なんだ今のは・・・?今和倉(たつみ)から、でけぇ龍が出てきたような・・・)

 

真人が困惑していると・・・

 

パァン!パァン!

 

突如として手を叩く音が2回鳴り響いた。その瞬間、悠仁と(たつみ)を抑え込んでいた改造人間が消えた。

 

「!い、今のは・・・」

 

手を叩く。その行為に思い当たる節があった(たつみ)は音の発信源に顔を向ける。そこには消えた悠仁と、手を叩いたであろう大漢の姿があった。

 

「祇園精舎の鐘の声。諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色。盛者必衰の理を表す」

 

手を叩いたその大漢は平家物語の一節を述べながら歩く。

 

「ただし・・・俺たちを除いてな」

 

その大漢とは・・・京都校最強の1級術師として名高い変人、東堂葵その人である。

 

 

都心メトロ渋谷駅地下5階新都心線ホーム  23時9分

 

時は遡り、立ったまま気を失っている一般人が蔓延る地下5階。ここで待機していた偽夏油の姿はもうそこにはいなかった。そこに東堂と一緒についてきた金髪の高専生が到着した。

 

この金髪の少年の名は新田(あらた)。呪術高専京都校に属する1年生で、補助監督の新田明の弟である。

 

「・・・この人らは・・・生きてますよね・・・?」

 

「・・・・・・」

 

東堂は一般人には気を止めず、クレーターができあがった場所に近づく。

 

「どうやら夏油傑はすでに獄門疆を持ち去った後のようだな」

 

「そんな・・・」

 

「ただ。ここに禪院赤女(あかめ)の残穢が残っている。おそらくは禪院赤女(あかめ)は今、夏油傑と戦っている」

 

「てことは、赤女(あかめ)さんは無事なんですね!」

 

赤女(あかめ)が自ら窮地を脱し、無事であるとわかった(あらた)は安堵して希望を見出している。

 

パチンッ!

 

「切り替えろ。俺たちの介入は、禪院赤女(あかめ)の邪魔になる。俺たちの役目は、五条悟を救出することから、味方を救い、できうる限り敵戦力を削ぐことへと、今変わったんだ」

 

状況を見て東堂は今自分が何をするべきなのかを冷静に判断し、決断する。

 

「急ごう。ブラザーなら近くに来ているはずだ」

 

そう言って東堂は上へと続く階段を上がっていく。

 

(兄弟おったんや。絶対1人っ子やと思ってたわ)

 

(あらた)は彼の発言から東堂に兄弟がいるという盛大な勘違いを起こすのであった。

 

 

ドオオオオオン!!!

 

【おおおおおおおおお・・・】

 

渋谷の地上の地面が割れ、そこから大量の呪霊が溢れだしてきた。それと同時に現れたのは、獄門疆を持っている偽夏油と、蛇型特級呪霊を祓ってきた赤女(あかめ)の姿だ。

 

「本当に祓って来るとはね。私の計画がめちゃくちゃになりそうで怖いよ」

 

「悟は返してもらうぞ」

 

溢れ出す呪霊は宙に浮く赤女(あかめ)に襲い掛かる。赤女(あかめ)は刀を構え、抜刀体制に入る。

 

「シン・陰流我流奥義―――『一閃・暗夜』!」

 

ドオオオオオオオオン!!!!!

 

赤女(あかめ)が刀を抜刀すると、凄まじい威力の赤黒い斬撃波が放たれ、襲い掛かる呪霊を全て一掃する。地に着地した赤女(あかめ)は偽夏油に向かって走り出す。偽夏油は迫って来る赤女(あかめ)に下級呪霊を一斉に放つ。走る赤女(あかめ)は刀を振るい、下級呪霊の群れを次々と斬り捨てる。そして偽夏油まで近づいた赤女(あかめ)は刀を振るって斬撃を放つ。だがその一撃は機会に身を包んだ呪霊のケーブルによって受け止められる。

 

「ちっ・・・」

 

赤女(あかめ)はいったん機械呪霊から距離を取る。

 

「一殺呪毒の弱点は無機物系の物質には呪毒を流し込めない点にある。例えば呪骸とか機械とかね。それでも脅威であることには変わらないけどね」

 

距離を取った赤女(あかめ)は刀を振るい、斬撃波を放った。放たれた斬撃波は機械呪霊を真っ二つに切り裂いた。だがそこへ偽夏油が赤女(あかめ)に近づき、三発の打撃を放ち、彼女を仰け反らせる。

 

「くっ!」

 

「うずまき」

 

ドオオオオオン!!

 

仰け反ったタイミングで偽夏油は下級呪霊を呪力の塊にして、砲撃のように放った。砲撃が止むと、そこには彼女の姿はなく、代わりに彼女の刀のみが残った。

 

「!」

 

ガッ!グググググ・・・!

 

「ぐっ・・・がっ・・・!」

 

偽夏油が目を見開くと、一瞬で背後に回った赤女(あかめ)が足で彼の首を締め上げ、頭を掴んで首をへし折ろうとする。それを阻止するように偽夏油は自身の周りに触手呪霊を召喚する。触手呪霊の触手は赤女(あかめ)の脳天を狙って伸ばすが、危機を察した赤女(あかめ)は体を反らして攻撃を回避し、そのまま偽夏油を仰け反らせ、地面に叩きつけた。

 

「ちぃ・・・!」

 

起き上がった偽夏油の前に、距離を取った赤女(あかめ)が投げ放った刀が迫った。偽夏油は首を逸らし、ギリギリで回避した。が、そのタイミングで赤女(あかめ)が近づき、呪力を纏った蹴りを放って偽夏油を蹴とばした。

 

「はは、やるね。私が怪我を負うなんて何年ぶりだろうね」

 

まだまだ余裕を見せる偽夏油に対して、赤女(あかめ)は口を開く。

 

「・・・お前のその額の縫い目」

 

「ん?」

 

「お前が傑じゃないなら、おそらくお前は脳を入れ替えて体を転々とする術式の持つ術師だろう。であるならば、お前はこの時代の術師じゃない。少なくとも100年や200年は生きている。もしくはそれ以上の可能性も。傑の肉体を利用するお前は何者だ?」

 

「・・・・・・・・・そこまで勘が鋭いと、気色悪さを通り越して不気味だよ」

 

自身の正体に勘ぐりを入れる赤女(あかめ)に対し、偽夏油は不気味さが入り混じった笑みを浮かべた。

 

 

渋谷駅地下2階

 

「と・・・東堂⁉」

 

自分たちの窮地を救った漢、東堂の登場に(たつみ)は目を見開いて驚愕する。

 

(何が起こった?)

 

対して真人は舌を出して東堂に視線を向ける。

 

(顔面の傷・・・今のは位置の入れ替え!花御を追い込んだ術師か!)

 

(たつみ)が驚いている間にも(あらた)が東堂に駆け寄る。

 

「東堂さん!あっちの子の処置終わりました!でも、多分死んでますよ。後で俺のせいにせんといてくださいね」

 

「御託はいい。和倉とブラザーにも頼む」

 

東堂は悠仁に近づき、声をかける。

 

「起きろブラザー!俺たちの戦いはこれからだ!」

 

((縁起悪!))

 

ずっと虚無を視線に移していた悠仁の視界は東堂を捉えた。

 

「・・・東・・・堂・・・」

 

しかし悠仁は横たわったまま蹲り、涙を流して起き上がろうとしない。

 

「俺は・・・もう・・・戦えない・・・。釘崎だけじゃない・・・ナナミンも死んだ・・・!」

 

「!」

 

「七海さんが⁉」

 

「宿儺が・・・いっぱい殺したんだ・・・!俺は・・・死に間際のシェーレも置いてった・・・!」

 

「シェーレまで⁉」

 

「だから・・・俺はもっといっぱい・・・人を助けなきゃって・・・!だけどできなかった!!俺はただの人殺しだ!!俺が・・・信念だと思っていたものは・・・俺のための言い訳だったんだよ!!!」

 

自身の信念が打ち砕かれ、後悔と罪悪感に飲まれている悠仁は泣き叫ぶ。

 

「・・・俺は・・・もう・・・俺を許せない・・・」

 

「声が小さくて聞こえねぇよぉ~~!!!!」

 

だがそんな蹲る彼に、真人は容赦なく襲い掛かろうとする。

 

パンッ!

 

真人が刃の腕を振るおうとした瞬間、東堂は手を叩き、(あらた)と真人の位置を入れ替えて攻撃を回避させた。真人は振り返り、東堂に攻撃を仕掛けようとする。

 

パンッ!ゲシィ!

 

「ぶお!!」

 

しかし東堂は再び手を叩いて自分と真人の位置を入れ替え、真人に強烈な蹴りを叩き込んだ。その際蹴り飛ばした真人が(あらた)とぶつかりそうになるが・・・

 

パンッ!

 

再び手を叩いて(あらた)と真人の位置を入れ替えてそれを阻止した。

 

(ハハハ!面白い!わかっていてもここまで混乱するものなのか!!)

 

位置の入れ替えトリックがわかっていても混乱する真人はこの戦闘を純粋に楽しんでいる。

 

「・・・悠仁」

 

そんな中、(たつみ)は悠仁に近づき、彼の首根っこを掴み上げる。

 

「・・・歯ぁくいしばれぇえええ!!!!」

 

バキィ!!

 

(たつみ)は拳を握りしめて、力いっぱい悠仁を殴り飛ばした。

 

「・・・た・・・つみ・・・?」

 

「・・・痛ぇか?痛ぇだろ?俺だって痛ぇよ。けどな・・・これまで犠牲になってきた人たちや、今を戦ってる術師たちは、これ以上の痛みを抱えて戦ってんだ!!!」

 

(たつみ)は殴り飛ばした悠仁に近づき、襟首を掴み上げて顔を近づける。

 

「それを、人を殺したって簡単に認めて、もう戦えないって勝手にいじけて・・・お前何様のつもりだよ!!!。ここで逃げちまったら、お前が今まで助けてきた人たちの思いや、今まで犠牲になってきた人たちに対する裏切りになるんだぞ!!!」

 

(たつみ)・・・」

 

「ギャンギャンギャンギャンうるっせぇんだよぉ!!!和倉(たつみ)ぃ!!!!」

 

(たつみ)が悠仁を説き伏せっている間にも、真人が(たつみ)に向かって刃を振るおうとする。

 

パンッ!

 

だがそれを東堂が手を叩き、自分と真人の位置を入れ替えることでそれを阻止する。その間にも(たつみ)は悠仁を下ろし、インクルシオの鍵を手に取る。

 

「俺は・・・戦う。これまで犠牲になってきた人たちの十字架を背負って・・・前に進む!それが・・・俺の・・・和倉(たつみ)の・・・呪術師としての・・・」

 

 

生き様だあああああああああああ!!!!

 

 

ザンッ!!

 

 

「インクルシオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」

 

 

(たつみ)がインクルシオの鍵を地に突き刺し、高らかに叫んだ瞬間、彼の呼び声に応え、インクルシオが姿を現す。

 

(!鎧⁉あれは剣の呪具じゃなかったのか⁉)

 

真人がインクルシオが剣ではなく、鎧の呪具であったことに気付いた。だがその時、真人は目を見開いて驚愕する。

 

ベキベキベキ・・・

 

 

ゴオオオオオオオオオオオオ!!!!

 

 

突如としてインクルシオの形が変わり、まるで生きた生物のように大きな咆哮を上げた。その様を真人は・・・インクルシオに1つの魂が宿ったように見えた。

 

(がっ⁉こいつは・・・さっきの龍か⁉まさか・・・!!あの鎧、生きてるってのか!!?)

 

「・・・成ったな」

 

驚愕する真人に対し、東堂はふっと笑みを浮かべる。

 

特級呪霊タイラント、登録済み。タイラントは得物を見つけるために常に徘徊しており、生物と出くわせば根こそぎ喰らってゆく災厄の化身と言われていた。この呪霊の術式は、あらゆる環境に適応する進化。時には灼熱の砂漠に適合し、時には極寒の凍土でも適合する。術師の討伐隊が赴いた時にも防衛本能から透明化するという進化も果たした。

 

タイラントが祓われても、その魂と術式は消えておらず、それらは1つの鎧に宿ったという。それこそが、インクルシオである。

 

そして今、インクルシオに封印されていた魂が解かれ・・・敵を滅ぼすために進化を続けようとしている。

 

(ミスターブラートはこの極致に辿り着くことはできなかった。だがミスターブラートが見込んだお前なら)

 

インクルシオは(たつみ)が動きやすいように、鎧の形を変えていき、彼の身体に纏っていく。

 

「なんだ・・・いったいなんだってんだ!!?」

 

(熱く燃え滾れ、和倉。お前のその熱い魂こそが、インクルシオを・・・)

 

 

進化させる!!

 

 

「・・・鎧を通じて伝わってくる・・・。兄貴は・・・死んだんだな。いや、なんとなく察してはいたんだ。でもそれを認めたくなくて・・・気付かないフリをしてた。でも・・・目を背けてちゃダメなんだよな。そうしちまったら、兄貴にぶん殴られちまう。兄貴・・・俺、強くなるよ。インクルシオを使いこなしてみせる。だから・・・」

 

 

しっかり見守っていてくれ!

 

 

「人の命を散々弄んできたその所業・・・報いを受ける時が来たぜ、真人!!」

 

インクルシオを身に纏い終えた(たつみ)はマントを靡かせ、真人と対面する。

 

「はっ!!鎧纏った程度で調子づいてんじゃあ・・・」

 

ドゴォ!!!

 

真人が動くより先に(たつみ)は一瞬で真人の間合いに入り込み、彼の顔面に拳を叩き込み、強く吹っ飛ばした。

 

「だからてめぇの攻撃なんざ効かねぇって・・・」

 

グチャア!!!

 

「・・・ああ⁉」

 

真人が(たつみ)を煽ろうとした時、真人の鼻が抉れ出し、血を噴き出した。これは真人にダメージを与えていることを意味している。(たつみ)は真人に接近し、反撃を許さないラッシュを繰り出す。今までと違い、その一撃一撃は、着実に真人にダメージを与えている。

 

(まさか・・・まさかこいつ!!俺の魂を直接叩いてやがる!!)

 

真人にダメージを与える方法。それは直に魂に攻撃を当てる。だが魂は目で見えず、直に触れられないもの。魂の繋がりを辿る野薔薇の共鳴りや、宿儺を宿し、魂の輪郭を叩ける悠仁でしか基本的にはダメージを与えられない。だがインクルシオは常に進化する。進化の過程で、直に魂を叩くことなど、造作もないこと。つまり、インクルシオは真人にとっての・・・

 

 

天敵!!

 

 

「調子に乗ってんじゃねぇぞ、クソガキがぁ!!」

 

分裂して(たつみ)の一撃を躱した真人はすぐに元の姿に戻って彼の背後に回り込む。そして腕を伸ばして鎌の刃と化した腕を振るった。

 

バキンッ!!

 

「なっ⁉」

 

だが真人の振るった刃はインクルシオの硬度によってあっさりへし折られる。(たつみ)は振り返り、真人に近づいて強烈な拳を腹部に叩き込んだ。

 

「ぐうううううううううう!!!」

 

(たつみ)の拳を受けた真人はダメージを受け、血を吐き出す。賢明に戦う(たつみ)の姿を見て、悠仁は唖然としている。

 

(たつみ)・・・」

 

「ブラザー。お前ほどの男が小さくまとまるなよ」

 

すると東堂は悠仁に背を向けたまま口を開く。

 

「俺たちは呪術師だ。俺と、お前と、和倉。釘崎、ミスター七海、ミスシェーレ。あらゆる仲間・・・俺たち全員で呪術師なんだ。俺たちが生きている限り、死んでいった仲間たちが、真に敗北することはない!罪と罰の話ではないんだ。呪術師という道を選んだ時点で、俺たちの人生がその因果の内に収まりきることはない。ちりばめられた死に意味や理由を見出すことは、時に死者への冒涜となる。それでも!」

 

東堂は自身の学ランを脱ぎ捨て、話を続ける。

 

「お前は何を託された?」

 

「あっ・・・」

 

東堂の言葉に、悠仁は散り間際に思いを託した野薔薇、七海、シェーレの姿が思い浮かび、目に光が戻る。

 

「今すぐ答えを出す必要はない。だが、答えが出るまで、決して足を止めるな。それが呪術師として生きる者たちへのせめてもの罰だ」

 

伝えることを伝え終えた東堂はゆっくりと歩き、戦いに介入しようとする。

 

(あのことを今のブラザーに言う必要はないな)

 

東堂は他にも何か伝えたいことがあったようだが、悠仁を考えてそれは胸の内にとどめることにした。東堂が戦いに参加しようとしている間にも、(あらた)は悠仁に術を唱え、背中を叩く。

 

「俺の術式を施しました。いいですか、虎杖君。君が今まで受けた傷はこれ以上悪化しません。治ってはいませんが、出血も止まり、痛みも和らぐでしょう。でも、今ある傷だけです。また攻撃をくらえば傷は増えるし、その傷に関しては俺の術式の対象外です」

 

施した術式を開示する(あらた)は悠仁の顔を見てこう思った。

 

(東堂さんの弟、あんま似てへんな)

 

兄弟の意味を盛大に勘違いしている(あらた)は話を続ける。

 

「あっちの子にも、同じ処置をしました」

 

「!!」

 

「呼吸も脈も止まっていましたが、時間はそんなに立ってないんで、助かる可能性は0じゃない」

 

つまり野薔薇は(あらた)の術式によって怪我の悪化はしなくなり、彼女の命が助かる可能性が0%ではなくなったということだ。

 

「俺は彼女を連れて離脱します。0じゃないだけですからね!あんま期待せんといてくださいよ!」

 

「うん・・・うん・・・!」

 

野薔薇が助かる可能性が1%でも上がり、希望を見出した悠仁は涙がこぼれそうになりながら首を縦に頷く。

 

「んんんんん!!!」

 

真人は右腕をトゲ棍棒に変えて(たつみ)に打撃を与える。強度も大きくしたため、折れることはないが、それでも(たつみ)にはダメージが入らない。

 

「効くかぁ!!」

 

ドゴォ!!

 

「ゴホ・・・にぃぃぃ!」

 

(たつみ)は真人の腹部に拳を叩き込んだが、真人は余裕があるようにニヤリと笑い、(たつみ)に蹴りを入れて吹き飛ばし、天井に拳を叩きつけて瓦礫を落とす。瓦礫は(たつみ)に向かって降り注ごうとする。

 

パンッ!

 

そこへ東堂が手を叩き、(たつみ)と真人の位置を入れ替える。それによって真人が自分が落とした瓦礫に飲まれる。

 

(たつみ)には呪力がないため、不義遊戯(ぶぎうぎ)の対象外だ。だが今はインクルシオを身に纏って、身体中に呪力が纏わりついている。指定対象をインクルシオに定めることによって、(たつみ)はインクルシオを通して位置の入れ替えが可能となった。そしてインクルシオもまた、進化し、位置の入れ替えにも即座に適応した。

 

ドゴンッ!

 

瓦礫に埋もれた真人はその状態で腕を伸ばして手を刃に変え、東堂に向かって振り下ろす。

 

パンッ!

 

その瞬間、東堂はまた手を叩き、再び自分と(たつみ)の位置を入れ替えた。(たつみ)は迫ってきた刃を拳を放ってへし折った。直後、真人は跳躍して瓦礫から脱出し、両手を伸ばして(たつみ)と東堂に同時に攻撃を仕掛ける。

 

パンッ!

 

東堂は手を叩いて今度は自分と真人の位置を入れ替えて両社への攻撃を回避する。真人は伸ばした両腕を振るい、東堂に攻撃を仕掛ける。

 

パンッ!

 

東堂は自分と真人の位置を入れ替えて攻撃を回避し、真人を(たつみ)に向けて蹴とばす。(たつみ)は真人に近づき、拳を振り下ろして地面叩きつけた。

 

「ゴブ・・・!!・・・にぃ」

 

地面に叩きつけられた真人はにぃと笑い、即座に起き上がり、両腕をトゲ棍棒へと形を変えて回転して攻撃を放つ。(たつみ)はその攻撃を両腕を交差して防御するが、吹っ飛ばされる。東堂は高く跳躍して攻撃を回避する。

 

「にいいいいいいい!!」

 

真人は腕を巨大化させて東堂に向けて振り下ろした。東堂は軽く後退して回避し、真人に拳を放とうとしたが、真人が自身の体の形をトゲ網に変えたタイミングで寸止めした。

 

パンッ!

 

東堂は即座に自分と(たつみ)の位置を入れ替えた。(たつみ)は真人の顔面に拳を叩き込み、吹っ飛ばした。

 

「がは・・・ヒヒ!」

 

だが真人は吹っ飛ばされた先にいる東堂に触れようと自身の形を変えて方向転換し、勢いに任せて東堂に触れようとする。

 

パンッ!

 

だが東堂は自身と真人の位置を入れ替えることでこれを阻止、真人は勢いに乗って壁に叩きつけられる。

 

「どうした?俺には触ってくれないのか?」

 

(あのチョンマゲゴリラ・・・やり手だな。和倉と協力しながらくたばりぞこないの虎杖と距離を取りながら俺をいなしてる)

 

自分と渡り合うことができている東堂の実力を認めている真人は笑みを浮かべる。

 

「それだけじゃないんだよね」

 

東堂の足元には、入れ替わり様に落としておいた小さな改造人間があった。改造人間は形を変え、東堂の脳天を貫こうとする。だが東堂は勘づき、体を反らして改造人間を躱す。

 

(躱すか!)

 

パンッ!

 

攻撃を回避直後、東堂は自身と(たつみ)の位置を入れ替え、(たつみ)は真人に拳を叩き込もうとする。

 

(来いよ!ダメージが入るようになったのは完全に想定外だが、対応できないわけじゃない!てめぇに黒閃(あれ)をもう1度決めたい!もう少しで辿り着ける気がする・・・俺の魂の本質へ!)

 

真人が(たつみ)に攻撃を与えようとした時、東堂は真人の背後に回り込み・・・

 

パンッ!

 

自分と、拳を構える悠仁の位置を入れ替えた。

 

(ごめん・・・シェーレ、ナナミン・・・楽になろうとした。罪すらも、逃げる言い訳にした)

 

悠仁の脳裏に浮かんだのは、シェーレと七海の姿だ。脳裏に浮かぶシェーレと七海は自分に向かって笑みを浮かべ、口を開く。

 

『『後は頼みます』』

 

 

ドオオオオオオオン!!!!

 

 

黒閃!!!!!

 

 

「ぎいいいいいいいいいいいいい!!!!」

 

(たつみ)の放つ拳と、悠仁の放った黒閃が板挟みになり、真人は強烈なダメージを受ける。

 

(俺、ナナミンとシェーレの分まで、ちゃんと苦しむよ)

 

2つの強烈な拳を受けた真人は腕がへし折られ、吹っ飛ばされる。態勢を立て直す真人は折れた腕を再生させる。

 

「ちっ・・・死に体がぁ!!!」

 

生気を取り戻し、目に光が戻った悠仁の隣に(たつみ)と東堂が並ぶ。

 

「おかえり」

 

「復帰したところで・・・あのクソ野郎ぶちのめすぞ!」

 

「応!」

 

東堂が自身のTシャツを破り、(たつみ)と悠仁は拳を構えて、真人と対峙するのであった。




多分後3話くらいで渋谷事変編が終了し、死滅回游編に突入します。どんな結末でも、最後まで見届けてくれたら嬉しいです。
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