呪術廻戦ー呪いを斬るー   作:先導

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変身

渋谷駅に向かう電車の中。京都校の三輪霞はこの電車に乗って、渋谷へと向かっている。そんな彼女の表情はどこかもの悲し気だ。

 

[もう決着がつく頃ダ。今から渋谷に向かっても意味はなイ。戻るんダ、三輪]

 

彼女の手元にはメカ丸が残した最後の端末があり、メカ丸は戻ることを促している。

 

「・・・・・・何で東堂先輩と新田君だけ・・・」

 

[東堂は渋谷でも9割9分死なんと判断しタ。東堂と同行している新田もナ。あいつの術式は役に立ツ]

 

「私は!」

 

三輪はメカ丸の声を遮るように声を上げる。

 

「・・・私は・・・役立たず?」

 

[・・・もうそういう次元の話のじゃないんダ。お前だけじゃなイ。真衣、加茂、西宮、ラバ、清孝、歌姫、チェルシーも31日には京都以南の任務に就くよう細工しておいタ]

 

もう渋谷についている東堂と(あらた)が渋谷に赴き、なおかつ状況を知っていたのはこのメカ丸が彼らに情報を伝えていたからであり、他のメンバーが今まで事情を知らなかったのは、渋谷の事件が起こる以前に任務に細工を施して渋谷への介入を遠ざけようとしていたからだ。全ては京都校の仲間を守るために。

 

「なんで何も言ってくれなかったの?なんで相談してくれなかったの?私たちは仲間じゃないの?」

 

[・・・・・・・]

 

「私が弱いから?」

 

[違ウ。弱いのは俺ダ。弱いからやり方を間違えタ。弱いから・・・間違いを突き通せなかっタ]

 

三輪の言葉を否定するメカ丸は自分の想いを告げる。仲間に・・・仲間の中で特別な彼女に。

 

[大好きな人がいたんダ。どんな世界になろうト、俺がそばで守ればいいと思っていタ。その人が守られたいのハ・・・俺じゃなかったかもしれないの二]

 

ポタッ・・・ポタッ・・・

 

「うっ・・・ううっ・・・うっ・・・」

 

もう会うことも叶わない大事な仲間、メカ丸を想い、三輪はポロポロと涙をこぼす。

 

[時間ダ、三輪]

 

「嫌!!」

 

[さよなラ。今まで・・・]

 

「さよならなんて言わないで!!」

 

[三輪]

 

「メカ丸!!」

 

「三輪」

 

 

 

 

幸せになってくれ。どんな形であれ、お前が幸せなら、俺の願いは叶ったも同然だ。

 

 

 

 

「!」

 

一瞬、隣にメカ丸・・・与がいたように感じ、三輪は隣の席に顔を向けた。だが振り返っても、与の姿はない。同時に、メカ丸の端末の機能が停止し、完全に動かなく。

 

「メカ丸・・・」

 

メカ丸との永遠の別れに、三輪は声を上げて涙を流した。

 

隣の車両には他の京都校の2、3年全員と歌姫、チェルシーがおり、三輪の心情を察し、物悲し気な表情を浮かべている者がいれば、三輪を泣かせた敵に対し、怒りを浮かべる者もいる。

 

「・・・先生。メカ丸がしたことは・・・」

 

「不問よ。本人が死んでるんだもの」

 

「死んでる子が罪を問いただせるわけないしね」

 

「随分低く見積もられたものだな」

 

「ほんと、メカ丸俺らのこと舐めすぎでしょ」

 

「ね。東堂君なら死なないとか、私たちなら死ぬとか関係ないっつうの」

 

「細けぇ話はいいんだよ。俺らはただ、ダチを泣かせた野郎をぶち殺す。それだけだ」

 

京都校のメンバーは各々の思いを胸に抱いて、魔境と化した渋谷へと向かうのであった。

 

 

渋谷駅地下2階

 

真人は改造人間のストックで2つの槌を作り上げ、両手に持って悠仁、東堂を殴り飛ばし、蹴りを放とうとする(たつみ)を叩き飛ばす。

 

パンッ!

 

体勢を立て直すタイミングで(たつみ)と東堂の位置が入れ替わり、東堂は真人が振るう槌を両方とも両腕で受け止める。

 

パンッ!

 

「てやあ!」

 

東堂は槌を払い除けて手を叩いて自分と悠仁の位置を入れ替え、そこから悠仁は真人に突っ込んで跳び蹴りを放つ。

 

パンパンパンッ!

 

蹴とばされた真人が体制を立て直した時、東堂は3回手を叩き、自分たちと無機物の位置を入れ替え、宙に浮かぶ。

 

(無生物との位置替え!)

 

東堂は悠仁と(たつみ)を力いっぱい押し、押された2人は勢いに乗って真人に同時に蹴りを放つ。

 

ドオオオオオオオン!!

 

この衝撃によって地面は崩れ、3人はさらに地下へと落ちていく。地に着地した真人は壊れた柱や障害物に回り込みながら走り、2人の視界を撹乱させようとする。2人は慌てることなく、冷静に攻撃タイミングを見極める。2人が構えた時、障害物から真人が現れる。ただし、分裂して3人になっている。

 

(分裂か!)

 

「「「ええ~~い!!」」」

 

3人の真人が同時に巨大な拳を放った。

 

パンッ!パンッ!

 

そこへ東堂が手を叩き、2人と無機物の位置を入れ替えたことによって攻撃を回避する。真人は東堂に視線を向け、突っ込もうとする。

 

パンッ!

 

東堂は無機物との位置を入れ替えて真人と距離を取る。3人は3人の真人の繰り出す攻防をいなしていく。

 

「多重魂・撥体!!」

 

跳躍した真人本体はストックした数多の改造人間を放ち、魂を融合させて爆発力を高めた連撃を3人に放った。

 

ドオオオオオオオン!!!

 

この攻撃によって地面は崩壊し、4人はさらに地下へと落ちていく。

 

(チョンマゲゴリラの魂の残量は万全だが、今の俺ならワンタッチで殺せるか?)

 

真人は堂々と立っている3人の魂を見て、戦況を確認する。

 

(和倉の魂は未知数、虎杖の魂は1割ってところかな。そして俺の魂は残り3割。分身が潰されたことと虎杖のラッシュ、和倉のラッシュに黒閃でずいぶん削られた。それも全てあの女のせいだ。ザコのくせにしっかり爪痕残しやがって。でもそれ以上にムカつくのはあの鎧に宿る魂だ。何なんだあのクソトカゲ?あれのせいで和倉を潰す段取りがめちゃくちゃだ)

 

真人は自分に爪痕を残した野薔薇とインクルシオに宿っているタイラントの魂にイラつきを生じている。

 

(まずは厄介な位置替えから消す!)

 

真人は両手を合わせ、改造人間の形を変える。形を変えた改造人間は巨大列車のように巨大化し、3人向かって突進してくる。さすがに分が悪いと思い、3人は走り出して迫る改造人間から逃げる。3人が新都心線ホームに辿り着くタイミングで真人はストックした改造人間を放り投げる。改造人間はトゲを生やした壁に形が変わり、3人の行く手を阻む。

 

パンパンパンッ!

 

だが東堂は事前に持ってきていた小石に呪力を流し込んで放り投げ、手を叩いて小石と3人の位置を入れ替えて改造人間電車の突進を回避する。だが改造人間電車の胴体の一部が伸び、3人の間に入り込んだことで東堂は2人と分けられてしまう。

 

「ハハッ!」

 

伸びてきた改造人間の口が開かれ、真人が出てきて東堂を追いかける。真人は近くにいた何人もの一般人の形を変えて剣にして東堂に投げ放つ。東堂は走って剣を躱し、改造人間電車に乗り込んでその場をやり過ごす。しかし真人は途端にスピードを減速して東堂から距離を取る。真人の行動に疑問を浮かべた東堂は改造人間電車から降りる。

 

「!」

 

だがその理由をすぐに理解した。真人は階段の近くにいた2人の一般人の形を変えて、剣を作り出した。2つの剣を構えた真人は東堂に近づき、剣を振るう。東堂は真人が振るった斬撃を躱す。

 

「ええ~い!」

 

「ふっ!」

 

東堂は真人の追撃の斬撃を躱し、壁を蹴って跳躍して真人に蹴りを入れる。真人は体を仰け反って蹴りを躱す。真人は体の位置を入れ替えて東堂に振り返り、2つの剣を振るう。東堂は真人が振るった斬撃を指で止めた。そのタイミングを狙って真人は腹部に手を伸ばし、東堂に触れようとする。

 

パンッ!

 

東堂は剣から手を放して即座に手を叩いて自分と剣の位置を入れ替えて真人の手を回避する。

 

「ふんっ!」

 

「うっ!」

 

東堂は真人に蹴りを入れて彼をエレベーターに叩き込む。エレベーターは扉を閉め、真人を乗せて上へあがっていく。東堂は階段を使って真人を追いかける。その道中で、改造人間電車の胴体をぶち破った悠仁と(たつみ)と合流し、共に上に上がる。階段を上がった先で真人が待ち構えている。

 

「ブラザー!!」

 

東堂は落ちていた小石を拾い、悠仁に渡した。

 

「うらああああああ!!」

 

悠仁は渡された小石に呪力を流し、真人に向けて投擲する。だがこれは攻撃のためのものではない。

 

パンッ!

 

この小石は、東堂との位置を入れ替えるためのものである。東堂は、かつて悠仁に放った言葉を思い返す。

 

『そのレベルで満足していると、俺とお前は親友でなくなってしまう・・・』

 

(和倉はインクルシオを覚醒させ、この呪霊もすでに黒閃をキメているという。今置いてかれてるのは俺。強くなったな、ブラザー・・・。お前はそれでいいのか、東堂葵?再びブラザーを独りにする気か?東堂葵!)

 

自問自答する東堂の答えは決まっている。当然・・・

 

 

否!!!

 

 

もう悠仁を孤独にはさせない。東堂のその思いがビッグバンを生み、推しの声に背中を押され・・・東堂の一撃が・・・

 

 

黒く輝く!!

 

 

たんたかた~~~ん!!

 

 

ドオオオオオン!!!

 

 

黒閃!!!!!!

 

 

東堂の炸裂した黒閃は真人に直撃した。真人は黒閃をもろに受けて吹っ飛ばされる。だがその一撃は悠仁のものとは違い、真人にダメージを与えられない。当然だ。いくら黒閃であっても、魂には直接届いていないのだから。

 

(どんな強力な一撃・・・黒閃を繰り出そうと、魂に響かないお前の攻撃は無意味なんだよ)

 

だが、これにより4者それぞれが・・・120%のポテンシャルを引き出すに至る!

 

「うっ・・・おえええええ!!」

 

「「「!!」」」

 

真人は口の中よりストックした改造人間を取り出し、それらの魂の形を無理やり合わせる。

 

「多重魂・撥体!!!!」

 

改造人間たちは拒絶反応を引き起こし、全方位に膨張して3人に襲い掛かる。それこそ、地上を突き破るほどの勢いだ。

 

(入れ替え無意味の全方位範囲攻撃!こいつ、ギアが!)

 

「アーッハハハハハハハハ!!!」」

 

どんどん膨れ上がり、伸びていく改造人間に圧されていく3人。

 

ドオオオオオオオン!!!

 

改造人間は天井を突き破り、そしてついには地上に飛び出した。改造人間に圧された3人も、これに合わせて地上に飛び出し、真人も後追いで地上に出る。地上に出た改造人間は混ざり合い、地面を覆い尽くす。

 

 

「上げてけよ虎杖、和倉ぁ!!!!俺とお前ら!!!最後の呪い合いだああああああああ!!!!」

 

 

興奮して高らかに叫ぶ真人に対し、3人は身構える。

 

「ふっ・・・おいおい・・・俺は仲間外れかい?」

 

構える3人は互いにアイコンタクトを取る。直後、(たつみ)は跳躍して後ろに後退する。

 

パンッ!

 

その瞬間、悠仁と真人の位置が入れ替わる。そして、悠仁と(たつみ)は真人に接近し、同時ラリアットを決めようとする。

 

「にぃ!」

 

ブチィ!!

 

だが真人は自らの首を捻じって自切し、2人のラリアットを回避する。

 

(自切⁉)

 

(こいつ・・・!)

 

普通の人間では不可能な回避方法。肉体をいじれる呪霊だからこそできる業である。残った真人の胴体は首に目を生やし、両腕を刃に変えて3人に同時攻撃を放つ。東堂と悠仁はその攻撃を躱し、(たつみ)は刃の腕を躱して掴み上げ、殴り飛ばす。

 

パンッ!

 

直後、東堂は(たつみ)と真人の胴体の位置を入れ替え、そこへ悠仁が拳を叩き込む。しかし胴体だけとはいえ、真人も負けておらず、両腕を伸ばして3人に攻撃を仕掛ける。真人の胴体の放つ攻撃を3人は躱していく。3人が胴体を相手をしている間にも真人本体は自分の形を変えて元に戻り、改造人間の魂を練り合わせる。

 

「多重魂」

 

拒絶反応の微弱な魂たちは混ざり合い、体を成す。

 

「幾魂異性体!」

 

拒絶反応によって練り合わさった改造人間、幾魂異性体は分身体となった真人の胴体を死闘を繰り広げている3人に向かって走り出し、乱入しようとする。

 

(あの改造人間は・・・!)

 

パンッ!

 

真人の胴体が伸ばす腕の攻撃を躱した東堂は自分と幾魂異性体の位置を入れ替えた。東堂と位置が入れ替わった幾魂異性体は真人の胴体が伸ばす腕を体を仰け反らせて躱した。

 

(俺たち3人を足止めできていたことから、分裂の力の配分はおそらく2対8)

 

真人の胴体は両腕を刃に変えて悠仁に振り下ろそうとする。

 

パンッ!

 

そこへ東堂が手を叩き、分身体と真人本体の位置が入れ替わる。悠仁は入れ替わった真人本体に拳を叩き込む。(たつみ)は真人の胴体に近づき、拳を叩き込んで刃をへし折る。

 

(そして!弱体化している2が本体!そちらを確実にブラザーに潰させる!)

 

真人本体は体勢を立て直し、続く悠仁のラッシュを防御する。対して東堂は接近してきた幾魂異性体が放ってきた拳を壊す。

 

(改造人間の等級は3級から2級弱と聞く。手早く潰せ、東堂葵!)

 

東堂は幾魂異性体を速攻で潰そうと強烈な拳を叩き込もうとする。だが幾魂異性体は彼の予想を上回る動きで拳を躱した。それだけにとどまらず幾魂異性体は躱した直後に東堂に裏拳を叩き込んだ。

 

(ぐっ・・・何?)

 

「「東堂!!」」

 

悠仁と(たつみ)が東堂に気にかけた時、真人は悠仁に拳を叩き込み、分身体は腕を伸ばして(たつみ)を殴り飛ばす。

 

「ハハハ!舐めてっから!!」

 

想像以上の力を持つ幾魂異性体はさらに強力な拳を東堂の腹部に叩き込んだ。

 

「かはっ!」

 

さらに幾魂異性体は拳を放って東堂を殴り飛ばす。吹っ飛ばされた東堂はショッピングモールのビルを突き破り、建造物の外に出て倒れる。東堂が起き上がろうとした時、幾魂異性体は追撃するように降りてきた。幾魂異性体の追撃を東堂は躱す。

 

「ふん!」

 

東堂は落ちていたハンガーを拾い、それを呪力を込めてブーメランのように幾魂異性体に投げ放つ。迫る幾魂異性体は放たれたハンガーを躱した。

 

パンッ!

 

しかしすれ違い直後、東堂はハンガーとの位置を入れ替えて幾魂異性体の背後に回り込む。

 

「ふん!」

 

東堂は幾魂異性体の顔に拳を叩き込み、地面に叩きつけた。追撃の一撃をかけようとした時、東堂は止まった。幾魂異性体は東堂の一撃を受けてピクリとも動かないのだ。

 

「死んでいる・・・あれだけのパワーがありながら、たった一撃で・・・」

 

そう、幾魂異性体は一発の拳を受けただけで死んでいたのだ。そのメカニズムを東堂はすぐに理解した。

 

(なるほど!複数の寿命(たましい)を一瞬で燃やし尽くすことで爆発的にパワーを得たわけか)

 

幾魂異性体は混ざり合った魂を焼き尽くすという命の対価の差し出しによって強制的に力を限界まで引き延ばしたということだ。原理としては冥冥が使用したバードストライクに近い。

 

(超攻撃型改造人間・・・それが・・・もう2体)

 

東堂の背後には、真人が作り上げた幾魂異性体がもう2体ほどいた。攻撃に特化した改造人間が2体。それを相手にするにはさすがの東堂も骨が折れる。が、障害になりえるほどのものではない。

 

「許せ、哀れな魂たちよ」

 

東堂は身に着けていたロケットペンダントにキスをして、2体の幾魂異性体と対峙する。

 

一方、(たつみ)は真人の胴体を殴り飛ばす。殴り飛ばされた胴体は形を変え、悠仁の相手をしていた真人本体と1つになる。

 

(チョンマゲゴリラとの分断は済んだ。このまま、押し切る!!)

 

真人は改造人間のストックを取り出し、地面と一体化した改造人間の魂と混ぜ合わせ、多重魂・撥体を放つ。これによって改造人間は蛇のように体を伸ばし、悠仁と(たつみ)を襲う。跳躍して躱した悠仁だが、他の改造人間が口を開いて突進し、悠仁をビルに叩きつけた。

 

「うわっ!」

 

ビルに叩きつけられた悠仁に何体のも改造人間が突っ込んできた。そこへ(たつみ)は伸びる改造人間の体に乗り、滑って悠仁を襲う改造人間に近づき、高く跳躍して蹴りを放ち、数多の改造人間の体をへし折った。そこへ他の改造人間が口を開き、(たつみ)を食らおうとする。

 

「悠仁!」

 

「応!」

 

衝撃に乗じて脱出した悠仁はスタンバイする(たつみ)の足を蹴り、彼を押し飛ばす。勢いに乗った(たつみ)は一回転し、勢いを乗せた蹴りを改造人間の口の中に入り、体内を抉り取り、貫く。悠仁と(たつみ)は改造人間の猛攻を躱しながら、改造人間の体を滑って真人に近づく。

 

「にぃ~・・・」

 

ニヤリと笑う真人に悠仁と(たつみ)は跳躍し、飛び蹴りを放つ。しかし真人は2人の蹴りを受け止め、両腕の形を大きくして両者をぶつけ合わせる。

 

「「かはっ!」」

 

「え~~~い!!!」

 

真人はそこから力を込めて悠仁と(たつみ)を投げ飛ばす。真人は2人を追いかけ、追撃をかけようとする。

 

「ん?ちっ・・・」

 

「どうやらとことん、俺を仲間外れにしたいらしいな」

 

だがそこには幾魂異性体を片付け終えた東堂が2人のそばに立っており、形勢は元に戻った。

 

(幾魂異性体2体では仕留めきれなかったか。こいつに攻撃を当てるにはかなりハードルが高い。かといって領域を展開すれば・・・俺は宿儺に触れ、殺される。おそらくは、クソトカゲの魂と混ざり合ってる和倉も同様の作用が起こると思う)

 

東堂に攻撃を必中させるには領域展開は必要不可欠だ。だが隣には宿儺を宿した悠仁がいる。領域を発動したら、宿儺の逆鱗に触れて里桜高校の時の二の舞になる。あの時唯一領域に入れることができなかった(たつみ)はインクルシオを見に纏っている今なら領域を入れることは可能ではあるだろうが、悠仁と同じ現象が起きるだろうと推測を立てている。

 

(結界術は複雑だ。領域から除外という手段をさらしている。虎杖には同じ手は通じないだろう。ならばどうするか・・・それを教えてくれたのは・・・)

 

真人の脳裏に浮かんだのは、0.2秒間だけ領域を発動することに成功した五条悟の姿だ。ならば、使わない手はない!

 

「「!!」」

 

 

「領域展開―――自閉円頓裹

 

 

真人の領域、自閉円頓裹が発動し、空間は数多の手の牢獄を作り上げようとする。

 

(それは自殺行為だろう⁉)

 

(一か八か!!0.2秒の領域展開!!!)

 

東堂の領域から身を守る術、九十九由貴直伝簡易領域の展開。それよりも速く無為転変の解放前に真人を祓うため、悠仁と(たつみ)は駆けだしていた。さらに速く、真人は術式を発動。生得領域の具現化と術式の発動。本来2段階の工程を1つにまとめる。黒閃を経た覚醒状態が可能にした早業。

 

 

「・・・セーフ・・・ってことでいいのかな宿儺?」

 

自閉円頓裹を発動した瞬間、真人の魂は宿儺と顔を合わせていた。

 

「あんたのことだ。虎杖との間に保険は作ってあるんだろ?・・・させねぇよ。代わる間もなく虎杖は殺す。黙ってここで見ててくれ」

 

真人がそう言った直後のこと・・・

 

ヒュンッ!

 

 

ゴオオオオオオオオオオオオ!!!!

 

 

(たつみ)の魂に纏わりついていたインクルシオに宿る魂・・・巨大な龍、タイラントが現れ、真人の魂を襲おうとする。

 

「てめぇもだよクソトカゲ。お前は和倉(たつみ)ごと殺す。黙って鎧に閉じこもってろ」

 

真人がそう言った瞬間、魂の空間は砕けた。

 

 

0.2秒が経過した瞬間、真人は即座に領域を解除した。これによって真人は宿儺に身体を抉られることなく、自由に動ける。東堂が簡易領域を発動させる前に領域に入れた。それ即ち、真人に触られたと状態と同然である。

 

ボコボコボコ!

 

「!」

 

領域が解除されたと同時に、真人の術式によって東堂の左手が膨張した。

 

スパァ!!パァァァン!!

 

命の危険を察した東堂は体にまで回らないように迷うことなく右手の手刀で左手を斬り落とした。その瞬間、真人の無為転変によって左手は破裂した。破裂した左手の破片は飛び散り、ガラスの破片のように迫る。破裂した破片は東堂の足や頬を切り、ポケットペンダントの紐を微かに切った。

 

「「東堂!!」」

 

悠仁と(たつみ)が彼に顔を向けた時、真人は2人を殴って退けさせ、一直線に東堂に迫る。

 

「なんだよ、せっかくおしゃれにしてやったのに」

 

領域展開後、肉体に刻まれた術式は一時的に焼き切れ使用困難になる。真人はそのことを里桜高校での遁走から理解していた。ゆえに真人は東堂に触ると装い、間合いに入ったタイミングで手を握りしめ、拳を放つ。と、ここで真人の拳に纏った拳が黒く輝く。

 

ドオオオオオオン!!

 

「黒閃!!!!」

 

真人の黒閃を受けた東堂は後退った。

 

(こいつ!ヤマ勘で腹に全呪力を集中させやがった!)

 

そう、東堂は咄嗟に自身の呪力を全て腹部に集中させて黒閃の威力を和らげたのだ。

 

「かはっ!」

 

とはいえ、黒閃は強力な一撃。いかに呪力で腹部を強化させても、ダメージまでは緩和しきれず、腹は腫れ、内臓も抉れて東堂は血反吐を吐く。そして最悪なことに、真人の呪力は回復して、いつでも術式が使える状態になってしまった。

 

(だが術式は回復した!叩く手はもうない!今度こそ確実に殺す!)

 

真人は東堂にとどめを刺すために両手に呪力を纏い、彼に触れようと接近する。

 

ブチッ!

 

その瞬間、東堂のロケットペンダントが落ち、その中身が開かれる。ロケットペンダントの中に入っていたのは・・・

 

 

満面な笑みを浮かべた悠仁と高田ちゃんの写真であった

 

 

「え?・・・は?え?」

 

その写真を目にした真人はあまりの意味不明さに一瞬思考が停止する。

 

※ここからは東堂のイメージです。

 

すると、辺りの背景にバラ色が咲いた。それだけではない。東堂のそばにはセーラー服を着込んだツインテールの高身長の女子がそこにいた。その正体は、東堂が唯一推している高身長アイドル、高田ちゃんである。高田ちゃんに気付いた東堂は途端に元気が湧いてきて、高田ちゃんと共にキメポーズを決める。

 

バキィ!

 

直後、東堂は真人を殴り飛ばし、さらにそこへ高田ちゃんが蹴りを入れた。

 

「こぉ~・・・」

 

そこから東堂と高田ちゃんは真人に猛攻撃をかける。その間際でいつの間にか東堂はなぜか高田ちゃんと同じセーラー服を着込んでいた。気持ち悪さ全開の格好のまま、東堂は高田ちゃんと共にラッシュをかけ真人をタコ殴りにする。

 

カンカンカンカーーン!!

 

真人を一通り殴り終えた時、ゴングが鳴り響いた。高田ちゃんは勝利を称え、東堂と握手を交わそうと手を伸ばす。東堂は笑みを浮かべ、高田ちゃんの手を握り、握手を交わした。

 

※これは東堂のイメージです。

 

パンッ!

 

東堂は右手で思考が停止した真人の手を叩いた。その瞬間、東堂と悠仁の位置が入れ替わる。

 

「しまっ・・・」

 

バキィ!

 

ドオオオオオオオオオオン!!!!

 

 

「黒閃!!!!!」

 

 

悠仁の放った黒閃をまともに受けた真人は強く吹っ飛ばされる。

 

真人との位置を入れ替えた東堂の右手は炎に焼かれたかのように皮膚が抉れていた。いくら術式を使うためとはいえ、真人の手を一瞬で触れたのだ。こうなるのは当然ともいえる。ただ、真人が全快の状態であったならば、この程度では済まなかっただろう。

 

(一瞬でも触れたんだ。これで済んだだけでも奇跡だな)

 

東堂は(たつみ)と共に真人を追いかける悠仁を一目見て、目を閉じて気を失った。

 

(後は任せてくれ、東堂!ありがとう、東堂!)

 

悠仁は自分を元気づけ、共に戦ってくれた東堂に心ながらに深く感謝している。

 

(くそっ!このタイミングで黒閃をもろにくらうとは・・・!最後までふざけやがってあのゴリラ!だがついに掴んだ!俺の魂の本質!本当の形を!!)

 

真人は東堂に対しイラつきながらも、自身の魂の本質を掴みとり、その姿を形作ろうと術式を発動させる。

 

「無為転変」

 

術式を発動させた瞬間、真人の姿形が変わり始める。

 

「遍殺即霊体」

 

変化したその姿は、今までの人間の姿から一変し、まさに怪人と言っても差し支えないものだ。

 

「ハッピーバースデーってやつさ、虎杖、和倉」

 

今までとは違う真人の姿を見て、悠仁と(たつみ)は戦慄する。

 

(これは・・・今までの手段としての変形じゃねぇ・・・何が違うんだ?)

 

「黒閃を経て理解したんだ。俺の本当の・・・むき出しの魂を」

 

「驚いたよ。お前が自分探しをするタイプだったとはな」

 

「ククク・・・そうだな。でも仕上げはこれからだ。お前らを殺して、俺は初めてこの世に生れ落ちる」

 

互いに強い殺意を募らせ、ゆっくりと歩いて近づく。同時に走り出って近づき、悠仁は真人に蹴りを入れようとする。だがその蹴りは首の装飾を伸ばし、足に巻きつかせて止めた。そこから真人は生えた尻尾を動かし、悠仁を貫こうとする。

 

「でやああああああ!!」

 

悠仁は足に力を入れて装飾を引きちぎり、迫ってきた尻尾を踏みつけて攻撃を阻止した。そのタイミングで(たつみ)は真人に接近する。真人は(たつみ)に向けて拳を放つ。(たつみ)は真人の拳を払い除け、彼の横腹に拳を叩き込んだ。

 

ガキンッ!

 

だが遍殺即霊体となった真人の身体は非常に硬く、インクルシオを纏った拳でもダメージを与えられなかった。

 

(硬い!生身で・・・)

 

「ヒヒッ!」

 

真人は(たつみ)に向けて拳を打ち放つ。(たつみ)は放たれた拳を両腕を交差して防御する。

 

(ぐっ・・・!重い・・・!)

 

真人が放つ拳の一撃は重く、インクルシオ越しでもその反響が響くほどのものだ。さらに真人は両肘に備わっていたブレードを右肘のものを展開し、(たつみ)に振るう。危機を感じた(たつみ)は後退してブレードを躱す。だが躱しきることができず、ブレードは(たつみ)の腕を掠った。しかも、インクルシオの装甲を破り、切り傷を受けて血を流している。

 

(たつみ)!!」

 

「くっ・・・インクルシオの装甲を・・・!」

 

固い防御力で何とかダメージを受けずにいたが、(たつみ)がここでダメージを受けた。そのことで2人は真人の言葉の意味を理解した。

 

『黒閃を経て理解したんだ。俺の本当の・・・むき出しの魂を』

 

(そういうことか!)

 

真人は悠仁に接近し、両肘のブレードを展開して猛攻撃を仕掛ける。悠仁は真人の繰り出す猛攻を躱していく。だが今までよりもスピードが速くなっているため、全てを避けきれず、傷が増える。

 

「ハハハハハッ!」

 

真人は右肘のブレードを伸ばし、悠仁に突きを放った。悠仁は首を捻って突きを躱し、真人に拳の連撃を放つ。だが体が非常に固く、思うようなダメージを与えられない。

 

(こいつはもう・・・呪霊として、変身前とは別次元の存在となったんだ!)

 

悠仁の拳が効かない真人は左肘のブレードを伸ばして突きを放った。その一撃は悠仁の唇の左口角を抉った。そこから真人は悠仁に拳を叩き込み、殴り飛ばす。そこへ(たつみ)が真人に近づき、拳を二連撃放つ。真人はその二連撃を腕で防御し、そこから両肘のブレードを伸ばして突きを放った。(たつみ)は体を反らして突きを躱すが、そこへ真人が彼の腹部に拳を振り下ろし、地面に叩きつけた。

 

「ぐは・・・!」

 

さらに真人は(たつみ)に蹴りを入れて強く吹っ飛ばす。態勢を立て直す(たつみ)だったが、真人がもうすでに目の前まで迫り、顔を鷲掴みにされて悠仁に向かって投げ飛ばした。

 

「「ぐあ!」」

 

真人に迫る悠仁は放り投げられた(たつみ)と衝突し、2人同時に倒れる。そこへ真人が追撃し、2人は真人の強烈な拳を叩き込まれる。

 

ドオオオオオン!!!

 

この衝撃によって地面は割れ、3人は地下へと落ちていく。落ちていく3人は浅い水辺に着水して、態勢を立て直す。

 

(こいつを倒すには俺の最大呪力出力の黒閃をぶつけるしかない!)

 

真人を倒すには悠仁の最大出力の黒閃を放つ以外に方法はない。2人は『黒閃を狙って出せる術師はない』という概念を取り払い、構える。

 

ガクッ・・・!

 

ところが、悠仁の左膝にガタが入り、急に力が抜けて膝を折る。

 

フラッ・・・

 

「くっ・・・!」

 

ここで(たつみ)の方も、禍津神三貴子(まがつがみみはしらのうずのみこ)での戦闘からここまでの疲労が蓄積され、ふらつく。さらに言えば、インクルシオは装着者の体力を激しく消耗させる。それも相まって、(たつみ)の身体は限界に近い。その隙を逃さず真人は2人に追撃をかける。しかし・・・

 

バキンッ!!

 

「かはっ!!」

 

悠仁が放った黒閃のダメージが後追いできて、左肘のブレードが折れ、真人は血反吐を吐く。

 

(一瞬とはいえ領域展開直後に黒閃をくらったのはまずかったな・・・)

 

足に踏ん張りを利かせた真人は体勢を立て直す。

 

ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!

 

(たつみ)は自分の両足を強く叩いて、無理やり疲労を吹っ飛ばして体を鼓舞させて構える。悠仁も左膝を叩いて鼓舞し、冷静に深呼吸して構える。

 

「・・・お互い・・・元気いっぱいだなぁ!!」

 

ドオオオオオン!!

 

真人は足を大きく振り上げて、着水と同時に水を噴射させた。水の波が押し寄せる中で(たつみ)は拳を放ち、その風圧で霧散させた。だがその直後に真人は(たつみ)の背後に回り込み、右肘のブレードを放った。(たつみ)は咄嗟に振り返り、ダメージ覚悟で両腕を交差して防御し、ブレードを受け止める。そこを狙って悠仁は真人に近づき、呪力を纏った拳を放とうとする。その瞬間、悠仁の拳の呪力が、黒く輝く。

 

「っ!!」

 

身の危険を感じた真人は即座にブレードを元に戻し、後退して悠仁と距離を取る。(たつみ)は距離を取る真人を追い、真人に猛攻を仕掛ける。真人は(たつみ)の猛攻をいなしつつ、狙いを悠仁に定める。

 

(黒閃を狙って出せる術師はいない。だが今の虎杖は黒閃を打つと確信させるものがある。だったら!)

 

真人は(たつみ)の繰り出す拳を受け止めて、彼の腹部に拳を叩き込んで吹き飛ばす。そして、呪力を拳に纏って悠仁に接近する。拳を構えていた悠仁は近づいて拳を放ってきた真人に拳を放つ。拳と拳は互いにすれ違い、悠仁の拳は真人に迫る。

 

「ヒヒッ!」

 

「!」

 

すると真人は体を覆っていた装甲を自ら外し、悠仁の放つ拳を滑らせる。そのタイミングを狙って体を仰け反らせた真人は悠仁にさらなる拳を叩き込もうとする。

 

「うおおおおおおおおおおお!!」

 

ドォン!!

 

「あ・・・!!」

 

だが拳を放つ直後、悠仁の放った拳の呪力が今になって爆発し、真人は呪力による二度目の打撃を受けて仰け反った。そう、逕庭拳だ。

 

(時間差で・・・!)

 

だが真人は体勢を立て直し、右肘のブレードを悠仁に放とうとする。

 

「呪霊よ。お前が知らんはずもあるまい」

 

すると、自分たちが落ちた穴の上から、復活した東堂が姿を現す。心なしか彼の背後に後光が指している。

 

「腕なんて飾りさ。拍手とは、魂の・・・喝采!!」

 

ドォン!!

 

東堂は右手と失った左手を叩いた。

 

「・・・っ!」

 

真人は悠仁が背後に入れ替わったと思い、即座に振り返ってブレードを放った。だが、振り返ってみると入れ替わりなど起きておらず、真人の一撃は空を切る。

 

(入れ替わって・・・ない・・・⁉)

 

「・・・残念だったな。俺の不義遊戯(ぶぎうぎ)は・・・もう死んでいる」

 

不義遊戯(ぶぎうぎ)は手を叩くことによって初めて入れ替えができる術式。そのために必要な手がなくなったということは、不義遊戯(ぶぎうぎ)の死を意味する。東堂の発言はそれを悟らせないためのただのハッタリだ。

 

「おおおおおおおおおおお!!」

 

「!!」

 

不意を突かれた真人に(たつみ)は猛スピードで接近し、拳を握りしめて強力な拳を放とうとする。その際に、真人を捉える(たつみ)の目は一瞬、星のようにぎらつく。

 

インクルシオは常に進化を繰り返す。打ち砕けぬ岩がそこにあるのならば、インクルシオはその岩を砕くために戦闘の中で進化を繰り返し繰り返し行い、適応する。適応が完了したその一撃は時に・・・黒閃と同等の威力を解き放つ。

 

 

ドオオオオオオオオオン!!!

 

「ぐっ・・・があああああああああああああ!!!」

 

(たつみ)の放った強烈な一撃は真人の腹部に直撃し、凄まじい破壊力によって、真人を覆う装甲を破った。

 

「最後は決めろ!!悠仁ぃ!!!」

 

真人の装甲を破り、(たつみ)は高く跳躍して後退する。その瞬間、悠仁が飛び出して、真人に呪力が籠った拳を打ち放つ。そしてその間際・・・拳に纏う呪力は・・・

 

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!

 

 

黒閃!!!!!!!!

 

 

「うああああああああああああああああ!!!!」

 

 

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!

 

 

悠仁の打ちはなった黒閃は遍殺即霊体を破り、地上を突き破って真人を吹き飛ばした。遍殺即霊体が砕かれ、地上を転がった真人の身体はボロボロだ。

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・まだ・・・まだだ・・・!」

 

真人はまだ戦う意欲を見せようと、口に手を突っ込んでストックしていた改造人間を取り出そうとする。だが何をやっても吐き出したのは胃液のみ。改造人間のストックは、(たつみ)と悠仁の一撃によって全て消滅したのだ。

 

(改造人間のストックも・・・!)

 

「これでチェックメイトだぜ、真人」

 

往生際が悪い真人に(たつみ)はチェックメイトを言い放った。すると、悠仁は真人に近づき、冷たい視線を送って口を開く。

 

「認めるよ、真人」

 

「!」

 

「俺はお前だ。俺はお前を否定したかった。お前の言ったことなんて知らねぇよって。今は違う。ただお前を殺す。また新しい呪いとして生まれたら、そいつも殺す。名前を変えても、姿を変えても、何度でも殺す」

 

表情を変えることなく淡々を言い放つ悠仁に、次第に真人は恐怖に震え出す。弱り切った真人の視界には、周りが全てを白く覆い尽くす極寒の冬景色のように見え、目の前の悠仁が・・・底知れない獣のように見せた。

 

「もう意味も理由もいらない。この行いに意味が生まれるのは、俺が死んで何百年もたった後なのかもしれない。きっと俺は大きな・・・何かの歯車の1つにすぎないんだと思う。さび付くまで呪いを殺し続ける。それが・・・この戦いの俺の役割なんだ」

 

猛吹雪が吹きすさぶ光景の中で、悠仁が血に飢えた狼ならば・・・今の真人は小さくて・・・ただ食い殺されていくか弱いウサギだ。恐れをなした真人は殺される恐怖から逃れるように・・・逃げ出した。ただただ・・・殺されまいと、必死で、息を切らしながら。その姿は皮肉にも、彼がバカにしてきた人間の有り様そのものである。

 

「うあ・・・!」

 

逃げる最中で真人は足を挫いて転んでしまう。後ろを振り返ってみると、自分を殺そうとする。悠仁と(たつみ)の姿があった。

 

「・・・・・・あ・・・あぁ・・・ああ~!ああ~~!!ああ~~~!!」

 

真人は必死の抵抗なのか泥を投げ飛ばす。何度も何度も。砂利が入った泥が悠仁の頭に当たる。悠仁はぎょろりと真人を見つめ、彼に向かって拳を放つ。真人は怯えながらも咄嗟に躱したが、すぐに蹴とばされる。

 

「あ・・・あ・・・うっ・・・うぅ・・・」

 

這いずりながらも必死に逃げようとする真人。

 

ザッ・・・

 

そんな真人の前に、五条袈裟を着込んだ前髪が特徴の男が現れる。その男の姿を視認した真人は、その男の名を叫ぶ。

 

「夏油!!」

 

「助けてあげようか、真人」

 

真人を見下ろしている男・・・夏油傑・・・もとい偽夏油は感情が込められていない笑みを浮かべていた。




次の話ももう少しで完成しますので明日には投稿します。
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