呪術廻戦ー呪いを斬るー   作:先導

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渋谷事変 閉門

自分たちのピンチに駆けつけてきた特級呪術師、九十九由貴。そんな彼女の友人、ナジェンダ。彼女たちは偽夏油と面を向かって口を開く。

 

赤女(あかめ)、覚えてるかな?世界から呪霊をなくす方法。あれの話の続きだと思って聞いてくれ」

 

「どんな手段をとるにしろ、人類を1つ上の段階へと進めることになる」

 

(さて、ラルゥが動く時間を私たちが稼がねばな)

 

由貴とナジェンダは事前に元夏油一派の幹部、ラルゥの人命救助の時間を少しでも稼ぐために、この世界から呪霊をなくし、人類の次なる段階について話している。

 

「人類のネクストステージ・・・それは、呪力からの脱却だよ」

 

「・・・違う。呪力の最適化だ」

 

この世界から呪霊をなくす方法は2つ。1つは人類から呪力をなくす呪力から脱却。2つは全人類の呪力をコントロールできるようになる呪力の最適化。呪力の脱却を求める由貴たちと呪力の最適化を狙う偽夏油の意見の食い違い。偽夏油の答えに渋い顔つきなる由貴は悠仁たちに顔を向けて意見を求めている。

 

「いや、俺らにはどちらもさっぱり・・・」

 

だがそもそも話についていけない悠仁たちからすれば何の話をしているのかさえさっぱりわからない。

 

「そのプランは12年前、禪院甚爾が死んだ時点で捨てたと思っていたよ」

 

「夏油君に話しかけたんだけどね・・・まあいっか」

 

由貴は今傑の肉体を乗っ取っているのが加茂憲倫(のりとし)・・・厳密には黒幕が乗っ取っているとわかっている。しかしそれでも話を続ける。

 

「初心に還ったのさ。それにそっちのプランには大きな穴がある。そうだろう?ナジェ」

 

由貴の問いかけに対し、ナジェンダは首を縦に頷き、口を開く。

 

「そっちの協力者の中に、エスデスがいるだろう?奴のことは私が1番よく理解している。残忍で冷酷。戦いを好み、勝利を収めて全てを蹂躙する。奴が呪術連に身を置いているのはあくまでも戦いを終わらせないためだ。そこへ最適化のプラン。奴がそれに食いつかないはずがない。人類全員が術師になれば、奴の手によって未来永劫に終わらない戦争の始まりだ。それを可能にさせるのが、最適化プランのもう1つの穴だ」

 

ナジェンダは義手の人差し指を指し、呪力の最適化のもう1つの大きな穴を語る。

 

「私の国を含め、海外では日本に比べて呪術師や呪霊の発生が極端に少ない。最適化のプランには天元様の結界が必要不可欠なはずだ。天元様を利用するということは、呪力が最適化され、術師となるのは日本にいる人間限定。呪力というエネルギーを日本がほぼ独占することになる。かの国はもちろん、世界各国が黙っちゃいない。生身の人間がエネルギー源なんだ。どんな不幸が生まれるのか、想像に容易い」

 

「それは私たちが描く理想とはかけ離れた世界だ」

 

呪力とはほぼ全ての人間にあるものだ。だが非術師はその呪力をコントロールする術を持っておらず、知る術もない。ゆえに呪力が漏れ出て呪いをまき散らし、呪霊を生み出してしまう。その呪力をコントロールする術を身に着けてしまえば呪霊が生まれない代わりに、呪力というエネルギーを日本が独占してしまう。そうなれば各国との衝突は免れず、エネルギーを求めての戦争が起こりかねない。そしてそれこそが、エスデスが偽夏油と手を組む最大の理由なのだ。だがそんなことは偽夏油は承知の上だ。

 

「ハハッ、それがなんだ?そもそも目的が違うんだ。私は呪霊がいない世界も牧歌的な平和も望んじゃいない。非術師、術師、呪霊・・・これらは全て可能性なんだ。人間という、呪力の形のね。だが、まだまだこんなものではないはずだ。人間の可能性は。それを自ら生み出そうとした」

 

偽夏油は片手を広げ、自らの呪力を込めている。

 

「だがそれではダメなんだ。私から生まれる者は、私の可能性の域を出ない。答えはいつだって、混沌の中で黒く輝いているものだ。わかるかい?私が作るべきは私の手から離れた混沌だったんだ。・・・すでに、術式の抽出は済ませてある」

 

「「!!」」

 

術式の抽出を済ませた。その言葉を聞いた瞬間、由貴とナジェンダは目を見開き、悠仁に質問をする。

 

「君たち!真人という呪霊はどうしたんだ⁉魂に干渉できる術式を持った呪霊がいたはずだろう⁉」

 

「さっきあいつが取り込んだけど」

 

「マジんが~~~!!?」

 

「最悪だ・・・起きてほしくない事態が起きてしまった・・・」

 

質問に対して悠仁はキョトンとしながら答え、その答えに由貴は素っ頓狂な声を上げ、ナジェンダは重苦しい表情で頭を抱える。その間にも偽夏油は地面に手を翳し、術式を発動させた。だがその術式は呪霊操術ではない。うずまきは準1級以上の呪霊の術式を抽出する。それが意味することとは・・・その呪霊の術式を自分のものとして使用することができる。

 

「無為転変」

 

偽夏油はうずまきで抽出した真人の術式、無為転変を発動する。すると偽夏油の一定範囲に謎の紋様が浮かび上がる。その紋様は宙を浮かび、怪しく光り出す。

 

「天元の結界・・・じゃない。これは・・・術式の遠隔発動!」

 

「礼を言うよ、虎杖悠仁、和倉(たつみ)

 

「「!!」」

 

「呪霊操術で取り込んだ呪霊の術式の精度は取り込んだ時点でその成長を止める。君たちの戦いで真人は成長した」

 

偽夏油が真人たちと手を組んだ最大の理由。それは真人を術師との戦いで成長させ、十分に強くなったタイミングで真人を取り込むためだったのだ。今回の渋谷の事件はそのための必要な鍵の1つにすぎなかったのだ。

 

「本当は漏瑚・・・禪院赤女(あかめ)対策に斬鬼も欲しかったけど・・・まあ、仕方ないね」

 

偽夏油は漏瑚と斬鬼を手に入れようと考えていたようだが、それらは(たつみ)と宿儺によって阻まれてしまった。しかし偽夏油はすでに仕方ないと気持ちを切り替えている。

 

「・・・何をした?」

 

由貴の問いかけに偽夏油は答える。

 

「マーキング済みの2種類の非術師に遠隔操作で無為転変を施した。虎杖悠仁のように呪物を取り込ませた者。吉野順平のように術式を所持しているが脳のデザインが非術師のもの。それぞれの脳を術師の形に整えたんだ。前者は器としての強度を、後者は術式を発揮する仕様を手に入れた。そして・・・」

 

偽夏油は懐から封の結びを取り出し、その結びを解いて封印を解いた。

 

「今、その呪物たちの封印を解いた。マーキングの際、私の呪力に当てられて寝たきりになった者もいたが・・・じきに目を覚ますだろう」

 

各地で正体不明の呪いを受けて寝たきり状態になってしまった一般人が何人もいるという情報は以前からあった。恵の姉、伏黒津美紀もその1人だ。その原因となっていたは、この偽夏油だったのだ。

 

「まあ、マーキングした非術師の中には術師となり、死んだのもいるけどね。あれの再選別は大変だったなぁ・・・」

 

偽夏油は12年前の出来事を振り返り、苦労じみた表情で肩を竦めている。

 

「彼らにはこれから、呪力への理解を深めてもらうため、殺し合いをしてもらう。私が厳選した子や呪物たちだ。1000人の虎杖悠仁が悪意を持って放たれたとでも思ってくれ」

 

「1000人か・・・思ったよりも控えめだな」

 

「ああ。それに人間の理性を舐めすぎだ。力を与えただけで人々が殺し合いを始めるとでも?」

 

呪術に目覚めた人類同士の殺し合い。それを宣言した偽夏油に対し、ナジェンダと由貴は皮肉を飛ばしているが、偽夏油は飄々としている。

 

「物事には順序があるのさ。その程度の仕込みを私が怠るわけないだろう。質問が軽くなってきているよ」

 

偽夏油に逆に煽られて由貴は笑みを繕いながらもカチンときている。

 

「・・・ムカつくからあいつボコろう!」

 

「いや、今動けないんだけど!」

 

悠仁の言うとおり、裏梅の氷の呪術によって彼らは身動きが取れない状況だ。だが・・・

 

バシャアアアアアン!!

 

「うぁ⁉」

 

突然氷の呪術が解除されて、氷は一瞬で水となって霧散していく。

 

「くっ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

すると突然裏梅が顔色を悪くして地に膝をつき、苦しそうに息を吐いている。

 

「どうした?裏梅」

 

(反転術式で肉体は再生させた・・・これは・・・毒か!)

 

そう、裏梅は毒に侵され、体力を急激に奪われてしまっているのだ。いったいどうやって裏梅の体に毒が入ってしまったのか。それは脹相の血液が関わっている。

 

「・・・脹相の血には毒が混じってる。浴びれば体の機能を奪っていくよ」

 

「穿血で俺の血が混じったんだ。当然だ」

 

裏梅は脹相の穿血を手で止めていた。その際に毒がある脹相の血が裏梅の体内に入り込んだ。毒に侵されたのはそれ以外にあり得ない。

 

「待って!真衣ちゃんの援護がない!あっちにもまだ仲間がいるかも・・・」

 

真衣の援護射撃がないことに西宮が疑問を抱いたが、その疑問をナジェンダが答える。

 

「心配ない。葵と銃の子・・・それからスーツの子は私たちの仲間が保護している。この場において場違いだからな」

 

どうやら三輪や真衣、それから負傷した東堂は由貴たちが話している間にラルゥが保護してくれたようだ。

 

「大丈夫ですか?禪院赤女(あかめ)

 

「ああ。だが、立つのがやっとだ」

 

「幻魔鏡の影響ですね。・・・すいません」

 

「・・・もう過ぎたことだ」

 

疲労困憊状態の赤女(あかめ)は今までの戦いの水を流し、自分を支えてくれているアマテラスを許した。

 

「立てるかい?弟君」

 

「弟君言うな」

 

「動けるか?」

 

「ああ。私は体温を調整できる。問題ない」

 

「大丈夫か?清孝」

 

「ちくしょう、あのおかっぱ舐めやがってクソが・・・!」

 

裏梅の術式が解けたことで身動きが取れなかった一同は何とか動ける状態になった。

 

「・・・俺はもういいや・・・」

 

日下部は何もかもやる気をなくして大の字になって寝転がっている。

 

「まだ話の途中だよ。私の配った呪物は1000年前から私がこつこつ契約した術師たちの成れの果てだ。だが、私と契約を交わしたのは術師だけじゃない。・・・まあ、そっちの契約はこの肉体を手にした時に破棄したけどね」

 

「・・・まさか・・・!」

 

偽夏油の言葉を聞いて、由貴たちは彼が今から何をやろうとしているのか察しがついた。

 

「これが・・・これからの世界だよ」

 

偽夏油がそう言い放つと同時に、偽夏油の足元が黒くドロつき、大きく広がっていく。沼のようにドロドロした影の中より、呪霊操術によって数えきれないほどの呪霊を解き放った。おそらくこの呪霊の群れは偽夏油の言う1000年前に契約を交わした呪霊たちなのだろう。偽夏油は傑の肉体を手にしてすぐに呪霊たちとの契約を破棄し、呪霊操術を取り込み、それら全てを今解き放ったのだ。だが恐るべきはその数だ。生前の傑は6000以上の呪霊を所持していたが、次々と現れる呪霊はその群を越している。その合計数は軽く見積もっても一千万はくだらない。解き放たれた呪霊は黒き靄と共に舞い上がり、各地へと散り散りになっていく。

 

「じゃあね、虎杖悠仁、和倉(たつみ)。君たちには期待しているよ」

 

「はっ!!てめぇ・・・待ちやがれぇ!!」

 

「くっ・・・五条先生えええええええええ!!!」

 

悠仁と(たつみ)は偽夏油を追いかけ、獄門疆を奪い返そうと動く。だがそれらは次々と現れる呪霊の渦によって阻まれてしまう。

 

「・・・聞いてるかい?宿儺。始まるよ。再び・・・」

 

 

 

呪術全盛平安の世が

 

 

 

偽夏油は呪霊の渦と黒い靄の中に紛れて、獄門疆を持って渋谷から立ち去っていった。

 

今この瞬間より、世界は変わった。

 

日付が変わり、11月1日・・・

 

日本は・・・呪われた。

 

 

10月31日に起きた大規模な事件を渋谷事変と名付けられた後のこと。東京は偽夏油が放った呪霊の手によって魔境へと変わってしまった。世間一般では連続で続く怪奇現象として報道されているが、これらは全て放たれた呪霊が各地で暴れまわっている結果なのだ。建築物はもちろん、被害者も続々と湧き出ている。ハッキリと無事と断言できたのは奥多摩の町村、青梅市、あきる野市、八王子市、町田市の一部各島嶼だけ。だがそれも今だけだ。呪霊は一千万もいる。いつそちらに入り込むのかもわからない。

 

東京の政府はこの事態を受けて、呪霊の存在を世間に公表することとなった。ただし、呪霊はあくまで東京にのみに発生するものとして公表するそうだ。その理由は一般人の呪力の漏出を東京へ促し、呪霊の発生を東京に限定させるためだ。

 

被害は今のところは東京のみにとどまっている。他の地域に被害が出ていないのは明治に張り直した皇居を中心とした結界と幕末に東京遷都候補地だった薨星宮直上を中心とした結界を無理やり県境まで拡張したからなのかもしれない。これがなければ今ごろは日本は東京のような呪霊の無法地帯となっていたところだろう。

 

そんな人街魔境と化した東京のコンビニ。普段ならば人の賑わいも見せているところだが、今の東京では従業員はおろか、人の気配が微酔も感じられないほどの静けさだ。そんな静かなコンビニの中で、ところどころ汚れている小さな女の子がコンビニのお弁当を素手で食べている。商品のお弁当を勝手に食べるなど本来では犯罪として罰せられるところだろうが、今はそんなことを言える状況ではない。それどころか人がいないのだから咎める者は誰1人としていない。

 

「・・・・・・?」

 

すると少女はコンビニの入り口前に何かの存在を感じ取り、そちらに視線を向ける。

 

【おいで・・・】

 

コンビニの入り口前には、1つの人影があった。

 

【おいで・・・ここは危ない・・・】

 

少女に手招きするそれは生気が全く感じられず、その声もかなり震えていた。明らかに普通ではない。だが少女は普通ではない存在が何が普通ではないかを理解していない。ゆえに、自然と会話をしてしまう。

 

【温かいお風呂・・・お歌も歌えるよ・・・】

 

「・・・・・・お母さんは?」

 

【・・・お母さんもお父さんも・・・お姉ちゃんも弟も先生もいるよ・・・】

 

「・・・私に弟はいないよ。後先生は嫌い」

 

【私・・・に弟はいないよ・・・あと先生・・・は嫌い・・・】

 

その存在は少女の言葉を真似するように復唱し、顔が破綻する。

 

「大丈夫?飲む?」

 

少女は持っていたペットボトルのお茶をそれに勧めようとする。すると、破綻した顔のそれは少女の言葉に嘲弄を浮かべた。

 

【・・・ちょう・・・だい・・・】

 

そう言われて少女はペットボトルのお茶を持ってコンビニの入り口まで歩き出した。少女が内と外の境界線である出入り口を出ると・・・

 

 

グパァ!!

 

 

【ぐあああ~~~~】

 

少女の視界に巨大なアンコウとカエルの融合体の呪霊の巨大な口が広がった。今まで少女が話していたのは呪霊の頭に吊るされた人の形をした呪いの結集体だったのだ。巨大な呪霊は少女に恐怖を与える間もなく、彼女を食らおうとする。

 

 

 

 

 

ズシャアア!!

 

 

 

 

 

すると、1人の男が飛び出し、巨大呪霊の頭に飛び移り、黒い剣を突き刺してその頭蓋骨をかち割った。飛び出してきたその人物は、ジャケットを着込み、首元に錨のマークがついたスカーフを付けた黒髪の男だった。

 

「・・・ごめんな。驚かせちゃったかな?」

 

男は呪霊から黒い剣を抜き取り、安心させるように爽やかな笑みを浮かべて少女に近づく。

 

「怪我はないか?」

 

「・・・・・・」

 

「誰かと一緒じゃないのか?お父さんとか・・・お母さんとか」

 

「・・・わかんない」

 

男は尋ねながら少女の身元を確認する。

 

(この辺り商業ビルばっかりだし、この辺の子供じゃないのは確かだな)

 

少女の身元はわからない。しかし彼女の靴の汚れ具合で、この地域の子供ではないということだけは理解した。

 

「いっぱい歩いたか?」

 

男の問いかけに少女は首を縦に頷いた。

 

「・・・そっか。よく頑張ったな」

 

男はにっこりと微笑んで少女の頭を撫でる。

 

【・・・があああ~~~~・・・】

 

すると、巨大な呪霊はまだ仕留めきれておらず、大きな口を開けて男と少女を食らおうとする。男が呪霊に視線を向けようとしたその時・・・

 

 

ドンッ!!グシャア!!!

 

 

巨大な呪霊は見えない何かに殴り飛ばされて、跡形もなく砕け散った。

 

「・・・ダメですよ、ウェイブさん。気を緩んでちゃ」

 

ビックリする男に刀を携えて白い制服を着込んだ黒髪の少年が近づいてきた。

 

「あなたは強いですけど、隙だらけですからね」

 

「お・・・おう・・・悪い・・・乙骨・・・」

 

黒髪の男に近づいてきた黒髪の少年の名は乙骨憂太。呪術高専東京校に所属する2年生で、6人しかいない特級呪術師の1人である。

 

そしてこの黒髪の男の名はウェイブ。とある目的のために故郷の村から離れ、現在初任務に当たっている新米呪術師だ。所属はまだ決まっていない。

 

「ところで・・・その子は?」

 

「ああ・・・生き残りだけど・・・ここの子供じゃない」

 

憂太は少女に顔を向けてにっこりと微笑む。

 

「ごめんね。ビックリした?」

 

少女は先ほど潰された呪霊に視線を向けようとするが、ウェイブはそれを隠そうと手を伸ばす。しかしそれは意味がない。なぜなら少女は呪霊が見えているのだから

 

「・・・えっと・・・もしかして・・・見えてる?」

 

少女が呪霊が見えている様子を見て、あちゃ~とした表情を浮かべている。

 

「・・・ダメだよ、『リカちゃん』。やりすぎは」

 

憂太は呪霊を殴り飛ばした見えない存在に対して注意するのであった。

 

 

変わり果ててしまった東京の川がよく見える橋の上。悠仁は由貴とナジェンダと話していた。

 

「すまない。あの時迷った。ここまで事態が進んでしまったのであれば、一度泳がせて様子を見るべきなのではと」

 

「・・・気付いたかな?私たちは君たちの味方というわけではないんだ。ただ世界から呪霊をなくしたいだけのしがない美女たちさ」

 

「お詫び・・・というわけではないが、あの場にいた全員は私たちと私たちの仲間が責任をもって送り届けよう。それでいいな?由貴」

 

「ああ。・・・私もいい加減、天元と向き合わないとね・・・」

 

「私たちはもう行くが・・・君はどうする?虎杖悠仁」

 

自分に視線を向けて問いかけるナジェンダと由貴。悠仁の答えは・・・最初から決まっている。

 

 

一方その頃、渋谷跡地。事件の後ということもあり、ここは他の街と比べても崩壊がかなり目立つ。ただここは他と比べても呪霊が少ない。そんな何もない崩壊地点に、包帯を巻いた1人の女性が花束を持ってやってきた。皮肉にもその女性は、事件に関わっていた家族たちを失い、1人だけ生き残ってしまった。

 

「・・・菜々子・・・美々子・・・真奈美さん・・・祢木・・・私の大事な家族・・・。ごめん・・・私があいつの口車に乗ったばっかりに・・・」

 

女性は亡くなった家族を想い、一筋の涙を静かに流している。

 

「・・・みんな・・・どうか見てて・・・私は必ず、家族の仇をとってみせるよ」

 

女性は流れる涙を拭き、花束を置いて家族たちに黙とうを捧げ、巻いていた包帯を外した。

 

「・・・宿儺・・・いや・・・虎杖悠仁は・・・私が殺す」

 

女性・・・禪院黒女(くろめ)の瞳にはどす黒く・・・言葉では形容しがたいほどの憎悪を燃やしているのだった。

 

 

同時刻、呪術総監部の上層部の間。ある程度の呪霊を祓い終えた憂太は障子扉のようなもので姿を隠している老人たちの鋭い視線を向けられている。

 

「ご苦労、乙骨」

 

「労う気がないんだから、さっさと本題に入りましょう」

 

憂太は上層部の視線を気にせず、さっそく本題に入ろうとする。

 

「これで僕があなたたちの命令に従うとわかったでしょう」

 

「・・・・・・呪霊をいくら殺したところで何の証明にもならんさ」

 

「じゃあ、縛りでもなんでも結んだらいい。五条先生の教え子とか関係ありませんよ。彼は渋谷で狗巻君の腕を落としました」

 

どうやら棘は渋谷の事件で腕を斬り落とされてしまったらしい。そしてそうなってしまった根本的な原因は・・・宿儺の暴走。棘はそれに巻き込まれてしまったのだ。

 

「虎杖悠仁は・・・僕が殺します」

 

宿儺を身に宿す悠仁に対して憂太は殺意が込められた冷たい表情を見せるのであった。

 

 

呪術総監部より通達

 

一、夏油傑の生存の事実を確認。同人に対し再度の死刑を宣告する。

 

二、五条悟を渋谷事変共同正犯とし、呪術界から永久追放かつ、封印を解く行為も罪と決定する。

 

三、禪院赤女(あかめ)を五条悟同様、渋谷事変共同正犯とし、呪詛師に認定し、死刑を宣告する。

 

四、夜蛾正道を五条悟、禪院赤女(あかめ)、夏油傑を唆し渋谷事変を起こしたとして死罪を認定する。

 

五、虎杖悠仁の死刑執行猶予を取り消し速やかな死刑の執行を決定する。

 

 

 

 

六、虎杖悠仁の死刑執行役として特級術師乙骨憂太を任命する。

 

 

 

 




陸章『渋谷事変』  完

次回
漆章『死滅回游』



時間がかかってしまいましたが、ようやく渋谷事変を終わらせることができました。

私のつたない小説に趣味趣向が合わない方ももちろんいらっしゃると思いますでしょうが、もしここまで読んでくださった方がいるならば、とても嬉しく思います。特にお気に入りを入れてくださった方や高評価を頂いてくださったたくさんの読者様には本当に感謝しており、達筆の励みになりました。

どんな形にしろ、死滅回游編では今まで登場しなかったキャラたちをたくさん出てきます。死滅回游という殺し合いの舞台で彼らはどんな風に行動し、どんな役目が与えられるのでしょう。今から書くのが楽しみになってきました。

長々と申し訳ありません。

最後にここまで読んでくださった読者の皆様方、本当にありがとうございます。次回の死滅回游編も読んでいただけると嬉しいです。

以上、作者からの感謝の言葉でした。
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