だからあいつが自分でスカウトしに行ったと聞いた時は耳を疑ったものだ。
あいつは面白い術式を使うハーフだからとはぐらかしていたが、調べてみて納得がいった。
術式云々はともかく、ハーフだからと言う理由で悟が自らスカウトに行くわけがない。
あいつは性格が悪すぎるからな」
呪術総監部の上層部に呼び出された悟は障子扉のようなもので姿を隠している老人たちの批難するような鋭い視線を向けられている。その理由はもちろん、小学校での折本里香の完全顕現にある。
「特級過呪怨霊、折本里香、422秒の完全顕現。このような事態を防ぐために乙骨を君に預けたのだ。申し開きの余地はないぞ、五条悟」
「まぁ、元々言い訳するつもりなんてないですし」
上層部の鋭い視線に対しても悟はあっけからんとした態度をとっている。そんなふざけた態度に対し、上層部の1人は怒りを示している。
「何をふざけている!!折本里香があのまま暴走していれば、町1つ消えていたかもしれんのだぞ!!」
「そうなりゃ私も
上層部の怒りに対しても、悟はさらりと流している。
「あのね。私らがあの呪いについて言えることは1つだけ。
上層部に臆することなくそう進言した悟は手を振ってこの部屋から去ろうとする。その時、上層部の1人の老人が釘をさす。
「・・・・・・・・乙骨の秘匿死刑は保留だということを忘れるな」
「そうなれば・・・私と
上層部への釘にたいし、悟はサングラス越しで彼らを睨みつけてそう言い放った。これだ。これがあるから上層部は下手に手を出せない。特級に相当する者が3人も敵に回すことになる。そうなれば日本は終わりだ。上層部たちは忌々しい気持ちでいっぱいになる。
●
総監部本部から出た悟は高専への帰路を歩いていく。
「たくっ・・・野暮な年寄り共め。ああはなりたくないね。僕も気をつけよっと」
悟はサングラスを外し、包帯で目隠しをして身を整える。
「だいたいさぁ・・・若人から青春を取り上げるなんて、許されていないんだよ」
高専のグラウンドがよく見える場所で若人たちの授業風景を眺める。体力作りの授業で4人と1匹に指導をする
「・・・何人たりともね」
悟は自分たちの青春時代を思い出し、笑みを浮かべて彼らの元に向かうのであった。
●
授業終了後、
「折本里香ほどの大きな呪いを祓うのはほぼ不可能だ。だが解くとなると話は別だ。何千、何万もの呪力の結び目を読み、1つずつほどいていく。呪われているお前本人にしかできないやり方だ」
「具体的にどうすれば」
「私のお古だ。これを使うといい」
「刀・・・?」
「呪いは物に憑いてる時が1番安定する。お前はその指輪を通して折本里香と繋がったと聞く。ならパイプはできたも同然。里香の呪いを貰い受け、刀に込めて支配する。繰り返し量を増やし、いずれは手中を納める。後は晴れて自由の身だ。お前も・・・里香もな」
「刀に呪いを込める・・・」
普段から刀を使っている
「と同時に、お前は刃物の扱いを覚えた方がいい。じゃなければ話にならない」
「うっ・・・」
「何よりお前、超がつくほど貧弱だからな。まずは徹底的にシゴクから覚悟しておけ」
こうして
●
そして、地獄のシゴキから3ヶ月の時が流れた。シゴキのおかげでかなり体力がついてきた憂太は特訓の一環として、真希と模擬試合を行う。憂太は刀の木刀を、真希は薙刀の木刀を構える。この模擬試合にはマイン、棘、パンダが見学している。
まず先手を打つのは憂太。憂太は真希に接近し、刀の木刀を振るって攻撃を仕掛けるが、真希は繰り出される攻撃を次々と薙刀の木刀で軽く受け止める。攻撃を受け止め続けた真希は薙刀の木刀に力を込めて憂太に攻撃を仕掛けた。真希の渾身の攻撃を憂太は何とか受け止めた。シゴキの成果が出ている証拠だ。
「!」
「お!」
「ツナ!」
真希の一撃を受け止めた憂太の成長ぶりにマインは少し驚き、パンダと棘は軽い感嘆の声をあげる。憂太は薙刀の木刀を払いのけ、真希に攻撃を仕掛けていく。だが真希も簡単に1本取られるわけもなく、憂太の攻撃を次々と受け止め、憂太に蹴りを入れて距離を置く。互いに距離を置いた憂太と真希は構え直し、攻撃の機会を伺っている。
「やあやあみんな!調子はどうだい?」
そんな時、悟がやってきて生徒たちに声をかけてきた。悟の一声に憂太の注意が悟に向けられた。
「あっ・・・えーっと・・・」
バコンッ!!
だがそれがよくなかった。憂太の注意が逸れたことによって真希の一撃が彼の頬にクリーンヒットした。
「よそ見してんじゃねぇよ」
「はい・・・」
「さっさと構えろ、ハゲ」
(キッツ・・・!)
とてつもなく口が悪く、辛辣な真希の発言に憂太は心身ともに痛めつけられる。
「はい・・・」
「私から1本取るんだろ?」
「・・・はい!!」
それでも憂太は痛みに負けることなく、真希に1本を取るために模擬試合を再開させる。模擬試合続行、今度は真希が攻戦を仕掛けてきた。真希の薙刀の木刀による攻撃を憂太は受け止める。最後の一撃を払いのけ、憂太はフェイントを仕掛けながら真希に攻撃を放つ。だが真希は騙されることなく、憂太の一撃を跳躍して躱した。
(躱された!けど崩した!着地で捉える!!)
憂太は真希が着地したタイミングこそ好機と見て、真希が着地しようとする瞬間に木刀を振るった。だが真希は着地すると同時に開脚前屈で憂太の一撃を躱した。
「嘘ぉ!!?」
予想外な躱され方に驚く憂太の隙をつくかのように真希は片足で彼の胴体を引っ掛けて体制を崩し、薙刀の木刀で頭を軽く突いた。
「だっ!」
「はい、死んだ。また私の勝ちだな」
「最後のいりました?」
「甘えんな。常に実戦のつもりでやれ。
真希のアドバイスを聞いて、憂太は唇を噛みしめ、気を引き締め直す。
「もう1本、お願いします!!」
憂太は刀の木刀を構え、真希に再戦を申し込んだ。
(そうだ・・・!僕は・・・里香ちゃんの呪いを解くんだ!!)
里香の呪いを解きたい。その一心で憂太は真希との模擬試合を真剣に打ち込み続けていく。
「憂太が高専に来て3ヵ月か。だいぶ動けるようになったな」
「シャケ」
「性格も前向きになったよね~」
模擬試合を見守っていたパンダたちは憂太の成長ぶりに関心を持っている。
「ふん!あんなのまだまだよ!実践についていけるとは思えないわ!」
それとは対照的にマインは面白くなさそうに憂太に悪態をついている。
「マイン、お前なぁ・・・」
「おかか」
「ふんっ!」
「あれれ~?マイン、まだ憂太のこと嫌いなのかな~?」
「うっさい!!!」
パンダと棘に咎められ、そっぽを向くマインをからかう悟に彼女はペットボトルの水をぶっかけようとした。だが水は悟の無下限呪術に阻まれ、そのまま地面に滴り落ちる。
「おお、怖い怖い、くくく」
(こいつムカつく・・・!)
自分をからかってくる悟にマインはふつふつと怒りが込み上げてくる。
「すじこ」
「確かに真希も楽しそうだ。今まで武具同士の立ち合いってあんまなか・・・」
パンダが話していると、彼に衝撃が走った。
(はぁ!!!天啓!!!!)
天啓が降りてきたと思い、パンダは憂太に声をかける。
「憂太ぁ!!!ちょっとこっち来い!!!カマン!!!」
「え?どうしたのパンダ君?」
「超大事な話だ。心して聞け」
パンダは呼ばれてやってきた憂太にとある質問をする。
「お前、巨乳派?微乳派?」
(今!!!???)
非情にしょうもない質問に対し、憂太は心の中でツッコみつつ、頬を赤らめながら答える。
「いや・・・あんまり気にしたことないんだけど・・・」
「ふんふんふん」
「人並みに・・・大きいのが好きかと・・・」
「ほっほーーーう」
憂太の答えにニヤニヤと笑っているパンダは今度は真希に声をかける。
「真希!!」
「あ?」
「脈ありデーース!」デース、デース・・・
非情にムカつくポーズと笑みを浮かべながらそう言い放つパンダに真希はピキッと血管がキレた。
「何勘違いしてんだ殺すぞ!!!!!」
「照れんなや、小学生か!」
「おーし!!殺す!!ワシントン条約とか関係ねぇからな!!!」
ワイワイと喧嘩を始めた真希とパンダの様子に唖然とする憂太とその様子を呆れるマインと棘。
「ははは・・・何の話かな・・・」
「昆布」
憂太の愛想笑いに対し、棘は無表情でそれだけを返し、それ以上の会話がなかった。
(狗巻君のことはまだよくわからなくて・・・ちょっとだけ怖かったり・・・)
棘は基本無表情でおにぎりの具でしかしゃべらないため、会話が成立しているのかどうかも微妙だ。そのためなのか憂太は棘に苦手意識を持っている。
「えっと・・・2人はいつもこうなのかな・・・三好さん」
「・・・ふんっ!」
「うぅ・・・」
憂太はマインにも話を振ろうとしたが、彼女は不機嫌そうに憂太を睨み、そっぽを向いた。よほどに嫌われているのだろう。
(小学校以来、何か余計に当たり強い気が・・・。僕悪いことしたかなぁ・・・?)
小学校の実習以来、余計に関係が拗れてしまっているせいで、憂太はマインに対し、苦手意識を持っている。そこへ校舎から
「おっ。やぁ
「お疲れ。全員揃っているな」
悟の挨拶に
「真希とパンダは・・・そのまま鍛錬を続行。棘、指名の任務だ。お前に適任の呪いだから、行ってしっかり祓って来い」
「シャケ」
「ご指名・・・」
「棘は1年で唯一の2級術師。単独での活動も許されてんの」
「へぇ~、すごいなぁ・・・」
(あんた特級でしょ・・・)
2級という高い等級を持つ棘に憂太は本当に感心するような声をあげる。マインは2級より上の特級である憂太に呆れている。
「憂太、マイン、お前たちも行ってくるといい。棘のサポートだ」
「はぁ!!?」
「えっ⁉サポート・・・」
「というよりは見学だな。憂太は呪いについてまだ知らないし、マインもまだ棘とは組んだことがないから『呪言』も詳しく知らないだろう」
「うっ・・・」
痛いところを突かれ、マインは図星を突かれたように押し黙る。
「呪術は多種多様。術師の数だけ祓い方があると思ってくれていい。棘の呪言はそのいい例だ。2人とも、しっかり勉強してくるんだ」
「呪言?」
「文字通り、『言葉に呪いが込もる』んだ。口で説明するより、実際に見た方が早い。呪いを解くなら、呪いを知ることも重要なことだ」
呪いを解くことに重要なこと。それを聞いた憂太は任務に同行する決心を固める。とはいえ、当たりがきついマインとまた組むことになり、不安の気持ちも大きくなるが。
●
棘の任務の見学とはいえ、今回が初めての任務となるため、憂太はちょっと緊張気味である。
(初めての実戦・・・いや2回目か・・・。緊張するなぁ・・・)
緊張で身体を縮みこませている憂太。
ポンポンッ
すると、棘が憂太の肩をポンポンと軽く叩いている。
「ん?」
「シャケ」
「ひぃ⁉えっ・・・あ・・・ごめんなさい・・・?」
「・・・・・・」
棘が片手をあげてビビった憂太は思わず棘に謝罪した。やはりいまいち会話が噛み合っていない様子だ。
「バカやってないでとっとと行くわよ」
「あ・・・はい・・・。よろしく・・・お願いします・・・」
後からやってきたマインが車に乗ろうとした時、憂太は彼女に軽くお辞儀をする。憂太の言葉にマインは彼を睨みつける。そして、彼に近づいて人差し指を向けた。
「この際だからハッキリ言っとくわ。あたしはまだあんたを認めてない。小学校の件、どうにかなったのはあの呪いのおかげ。あんたの力じゃない。それを忘れるんじゃないわよ」
言いたいことを言ったマインは不機嫌そうに車に乗り込んだ。彼女にまだ認められていないことがハッキリとわかった憂太は少し落ち込みを見せている。そんな時、棘が憂太の肩に手をのせる。
「明太子」
「え・・・?あ・・・えっと・・・??」
棘の意図が全く伝わっていない憂太は戸惑いを見せている。
「憂太。ちょっと」
「あ、はい!」
そこへ見送りに来た悟に呼ばれ、憂太は彼女の元に駆け寄る。
「悪いね、今回僕も
悟は憂太の緊張をほぐしつつ、今回の任務の注意点を話す。
「前回みたいに運よく引っ込んでくれるとは限らない。里香の力は刀に収まる範囲で使うこと」
「・・・・・・」ゴクッ・・・
悟の注意に憂太は固唾を飲んでいる。
「もしまた全部出しちゃったら・・・」
「出しちゃったら・・・?」
「僕と
(!!!???なんで今追い打ちかけるの!!??)
里香の全容を出したら3人仲良く処刑されると聞いた憂太は緊張をほぐすどころかさらにプレッシャーが高まってしまうのであった。
●
3人を乗せた車は今回の任務先に到着した。その場所とは寂れた商店街であった。
「到着です」
商店街の入り口前に車が止まり、3人は車から降りる。今回の任務の詳細を頬が痩けて、実年齢より上に見えるような男性が説明する。
この男の名は伊地知潔高。呪術高専に所属する補助監督の1人で、学生時代では悟と
「ハピナ商店街。現在はほぼシャッター街となっています。ここら一帯を解体して大型ショッピングモールを誘致する計画がありまして、その視察中に低級の呪い群れを確認。狗巻二級術師にはその祓いをお願いします」
伊地知が任務の説明をしている間にも、棘はいつの間にか姿を消している。
「てっ、あれ⁉狗巻術師⁉」
「ん・・・いない・・・」
「棘ならあそこ」
マインが指をさした方角には薬局店があり、そこから棘が出てきた。
「ありあとやした~」
(買い物してる!!)
棘の腕にはレジ袋が携わっている。その様子から買い物をしてきたのが誰が見てもわかる。
「何買ったの?」
憂太の問いかけに棘は答えるように買ったものを取り出した。それは即効性の喉薬であった。
「喉薬?」
「それだけ?気が利かないわね。ついでに飲み物とか買ってきなさいよ」
「おかか」
「はぁ・・・」
マインの愚痴に対し、棘はそれだけ言い返した。まるでパシられるのはごめんだと言わんばかりに。マイペースぶりに伊地知は少しため息をこぼす。
「要は金をかけた建物に曰くが付くと後々面倒なので、今のうちに祓ってくれとのことです」
「シャケ」
「では、帳を降ろします。ご武運を」
3人が商店街に足を踏み入れると同時に、伊地知は帳を降ろした。帳によって辺りはおどろおどろしい雰囲気が醸し出している。
「呪い・・・低級の群れって言ってたよ」
「ほら、とっとと行くわよ」
「明太子」
3人は低級の呪いを探すために商店街を歩いていく。しばらく歩いていると、棘とマインは呪いの気配を感じ取り、立ち止まる。憂太も立ち止まろうとした時・・・
【ずるいよ、ママ・・・お兄ちゃんの方が多いよ】
「!」
1体の魚型の呪霊が通りすぎていく。いや、1体だけではない。
【いいじゃん、ダブりは交換しよう】
【金木犀の香りだぁ・・・】
【迷子のお知らせです】
ブツブツブツブツブツブツ・・・
【みんなで渡れば怖くない】
1体、2体と次々と呪霊が通り過ぎていき、やがては数えきれないほどの呪霊の群れが1か所に集まった。
「前に真希が言ってたでしょ。弱い奴ほどよく群れるって。これがいい例だわ」
「とは言っても・・・いくら何でも多すぎじゃあ・・・」
いくら弱い低級の呪いだとしても、これらを1体1体祓っていくのはかなり骨が折れる。すると、棘は口元を覆っていた襟元を卸し、口を露にした。彼の口には舌を合わせて何かの紋様がついている。口を露にした棘は呪霊の群れに近づく。
「!狗巻君!そんなに近づいたら危な・・・」
「黙って見てなさい」
憂太が注意を言うものの、マインの一声で黙らせる。群れに近づいた棘は群れに向けて呪いが籠った言葉を発する。
「爆ぜろ」
ドカアアアアアアアアアアン!!!!!!
棘の発せられた呪いの言葉によって、全ての呪霊に火が付き、そして言葉通りに爆発した。呪いの言葉によって応じられた言葉を強要する。それが、棘の術式、呪言である。
(これが・・・呪言・・・)
呪言を目のあたりにした憂太は驚愕している。全ての呪霊が落ちていくのを確認した棘は襟元で口元を覆い、2人の元に戻る。
「え?あ、そっか・・・もう終わりか」
「本当にあたしたち必要ないじゃない。あーあ、無駄な時間を使ったわ」
呪霊を祓ったためにもう任務が完了したのだ。必要ないにも関わらず同行させられたマインは愚痴をこぼしている。
「・・・ツナマヨ」
(めっちゃ声枯れてる!!!)
呪言を使ったせいか、棘の声がもうすでにガラガラ声になっている。呪言は非常に強力な術式だが、使う言葉によっては声帯や舌に掛かる負担が大きい。だから今こうして棘はガラガラ声になっているのだ。
(あ、だから・・・喉薬・・・)
棘がなぜ薬局で喉薬を買ってきたのかようやく理解した憂太。
(すごい力だけど・・・それなりにリスクもあるんだな・・・)
今回の呪言のおかげで呪いについてまた1つ勉強になった憂太である。3人は商店街に入った道を通り、外に出ようとするが・・・。
「おかか」
「ちょっと、呪いはもう祓ったはずよ?なんで帳が上がらないのよ」
「え?あ、本当だ。これじゃあ出られないね」
呪霊を祓ったにもかかわらず、帳が上がらず、帰ることがままならない。不測の事態に3人が困っていると・・・
ギニュウン!
「「「!」」」
背後に突如として大きな気配を感じ取り、3人は振り返る。そこには座り込んだ人間の見た目をしたマンモスのような呪霊がいた。
(なんだこの呪い・・・!今までのとは気配が・・・)
呪いに詳しくない憂太でさえ、目の前にいる呪霊の強さを肌で感じ取った。呪霊は片手をあげて印を結ぶ。
【ゾんば】
マンモス型呪霊がそう一言発した瞬間、憂太と棘の間に一筋の光が差し込んだ。その光は憂太の右手を照らしている。
ドンッ!
「うわっ⁉」
それを見た棘は憂太を突き飛ばした。すると・・・
ドォン!!
光の筋を中心に重力が重くなり、地面に大穴を開けた。
「棘!!」
「狗巻君!!」
「捻じれろ!」
ベキ!!ベキ!!ベキ!!
棘はマンモス型呪霊に呪言を発した。これによってマンモス型呪霊の左腕は捻じれ、使い物にならなくなった。
「!ケホッ!ケホッ!ケホッ!」
だが連発で強烈な呪言を使ったせいで棘は喉を痛め、片手を地につけて咳き込む。そのタイミングを狙うかのように棘の頭上に光が差し込んできた。
「棘!!」
重力が落ちる前にマインは左手で棘の身体を抱え持って光の筋から離れ、右手に持ったライフルガンでマンモス型呪霊に弾丸を撃ち込む。マンモス型呪霊はその場に動こうとはせず、まともに弾丸を受ける。
【ゾら】
だがマンモス型呪霊はよほどに頑丈なのかダメージを負った様子はない。
「ちっ・・・!なんて固い奴!」
「!!三好さん、上!!」
「!!」
そこへ憂太が何かに気付き、マインに注意を促そうとするが遅かった。
【コケエエエエエエエ!!】
上から鶏の頭に足が生えたような姿をした呪霊が現れ、マインを蹴り飛ばした。
「三好さん!」
「くっ・・・!もう1体いるなんて・・・!」
蹴とばされたマインは地に着地し、態勢を整えようとする。するとその最中に足元に1つの卵が落ちていたことに気付く。
「・・・卵?」
この場に卵が落ちていることに怪訝な顔をするマイン。と、その瞬間・・・
ピカーッ!!ドカアアアン!!!
「きゃあ!!」
突然卵が発光し、その直後に爆発を引き起こした。爆発に巻き込まれたマインはダメージを負い、棘と共に地に倒れる。
【コケケケケケケ!!】
その様子に鶏頭の呪霊はバカにするように嘲笑っている。
「くっ・・・こいつ・・・!」
マインは鶏頭型の呪霊にライフルを向けて弾丸を撃ち放つが、それよりも素早く鶏頭型の呪霊はマンモス型の呪霊の背中に隠れた。マンモス型の呪霊に弾丸がヒットするが、やはりダメージはない。マンモス型の呪霊に隠れた鶏頭型の呪霊はケタケタと嘲笑う。
(こいつ・・・!自分じゃ勝てないってわかってて・・・!)
強者に縋る鶏頭型の呪霊の狡猾さにマインは苦虫を嚙み潰したような表情になる。その間にもマインの頭上にマンモス型の呪霊が放った光が降りてくる。
「三好さん!狗巻君!」
危険を察した憂太がマインと棘の元に駆け寄り、2人を抱えて光の筋から躱した。
「なになになになにあれ!!?」
2人を抱えた憂太はその場を離れ、呪霊2体から隠れるように身を隠す。2体の呪霊は3人を追いかけることなく、その場から動く気配はない。
「ちょっと!これじゃあ話が違うじゃない!低級って言ったはずでしょ!鶏はともかく、あのマンモスは準一級よ!!?」
「そ、そんなこと言われたって僕にもわからないよ・・・」
聞かされた任務の内容と食い違っていることに対し、マインは怒鳴っており、憂太は彼女を落ち着かせようとする。だがマインの言ったとおり、鶏型の呪霊はせいぜい3級程度。だがマンモス型の呪霊は準一級という高さだ。小学校で見た巨大呪霊よりも遥かに強いということは憂太も身に染みた恐怖心で理解している。
「はぁ・・・それより棘、大丈夫なの?」
「あ!そうだ!狗巻君ケガ・・・指大丈夫⁉」
2人は棘が負った怪我を心配する。憂太を突き飛ばし、手が光に触れていたせいか、棘の人差し指は折れ曲がってしまっていた。
「うわぁ・・・痛そう・・」
「シャケ」
棘は指の骨折部位を治そうと無理に元に戻そうとする。
「ああ!そんな、下手にいじんない方が・・・」
憂太は注意をしているが、棘は気にせず指を元に戻してみせた。
「・・・ごめん・・・」
「?」
「僕のせいだ・・・」
「・・・・・・」
棘が怪我を負ったのは自分のせいだと思っている憂太は責任を感じている。その間にもマインは2体の呪霊の様子を確認する。2体の呪霊の動きには何の変化もない様子だ。
「追ったりこっちを探ってる様子はない・・・完全に舐めてるわ、あいつら」
「伊地知さんに連絡を・・・」
「無駄よ」
「えっ?」
憂太は伊地知に連絡しようとするが、マインがそれを無駄だと言い放った。その理由は帳のせいだ。
「ここは帳の中。圏外よ。この場をどうにかするにはあの2体を祓うしかない」
呪霊を祓わないと危機を脱することができない以上、自分たちでどうにかするしかないとわかっているマインはライフルガンを抱えて立ち上がる。
「棘、あんたは乙骨とここで安静にしてなさい」
「高菜?」
「えっ?三好さん!まさか・・・1人で行くつもり?」
「あんたまだ戦闘には慣れてないでしょ!そんなのが一緒にいたって足手纏いよ!」
「・・・っ」
マインは止めようとする憂太に悪態をついて2体の呪霊を祓いに向かった。足手纏いとハッキリ言われた憂太は顔を俯かせる。その様子を見ていた棘は立ち上がり、フラフラした様子でマインを追いかけようとする。
「!狗巻君!もう動いて大丈夫なの?」
「昆布。・・・ケホッ」
ついて来ようとする憂太に棘は片手でストップの意を示し、首を横に振った。
「え・・・?三好さんと一緒に行くってこと・・・?」
棘は歩いてマインの元に向かおうとしている。棘の意図に気がついた憂太は顔を俯かせ、竹刀袋の手提げをぎゅっと握りしめる。
「・・・ありがとう、狗巻君」
「!」
「でも、大丈夫だよ」
意を決した憂太は去っていったマインを追いかけに走り、棘は彼についていった。
●
一方、マインは2体の呪霊がよく見える場所に移動し、ライフルを構えて狙撃できる体制に入っている。2体の呪霊・・・特にマンモス型の呪霊はちっとも動かないため、狙いが定めやすい。
(『予定外の準一級の出現』、『帳が上がらず閉じ込められた』・・・。あのマンモスを完全に仕留めるには、『ピンチ』が足りない・・・!先にあの雑魚を仕留めるか・・・それとも・・・初手を撃ってゴリ押すか・・・)
マインはどうやってあのマンモス型の呪霊を攻略するかで悩んでいる。
「三好さん!」
そこへ憂太と棘がやってきた。マインは2人に気付いたが、狙撃に集中して顔を向けようとしない。
(す、すごい集中力だ・・・)
「足手纏いって言ったでしょ」
「・・・確かに、そうかもしれないね・・・。でも・・・何も行動しないで、誰かが傷つくなんてこと・・・僕は見たくない!!」
「!」
悪態をつくマインに憂太は彼女に負けないように言い返して、彼女の隣に立つ。まさか言い返すとは思わなかったマインは驚いて憂太に視線を向ける。
「3人で頑張ろう!!3人であの呪いを祓うんだ!!」
初めて会った時はあんなにうじうじしていた憂太が言うようになり、マインも棘も目を見開いて驚いている。
「・・・ふん!そこまで言うなら・・・チャンスをあげるわ。やれる?」
「!・・・うん!」
事態の収束だけでない。マインに認めてもらえるチャンスを与えられ、憂太はより一層に気を引き締め直す。
●
2体の呪霊は今もなおちっとも動こうとしない。無防備もいいところだが、マンモス型の呪霊は準一級。隙はない。じっとしている2体の呪霊の背後に憂太が接近する。
【ゾぉ?】
【コケ?】
憂太に気付いた2体の呪霊は彼を見た。それと同時に、彼に憑いていた里香の存在にも気づいた。
【やっちゃえ、憂太ぁ】
【・・・オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!】
【クエアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!】
里香の煽りが聞こえたのか2体の呪霊は怒りの反応を示している。
(お、怒った⁉なんで⁉ただでさえおっかないのに!!)
怒りの原因が里香であることに気付いていない憂太は困惑している。マンモス型の呪霊は印を結び、攻撃態勢に入る。
(目を離すな・・・足を止めるな・・・刀に呪いを込める・・・!)
憂太は気を引き締め直し、集中して呪いの力を刀に込めた。同時に憂太の真上に光が降りようとしてきた。憂太は光の筋を躱し、重力を回避する。マンモス型の呪霊は何度も光を卸し、憂太に攻撃を仕掛ける。憂太は光を躱すことで幾度もの重力の嵐を回避しながらマンモス型の呪霊に近づく。彼が思い浮かべるのは、棘の人柄であった。
(狗巻君は優しいんだ。不用意に人を呪わないために、呪いの込もらないおにぎりの具で話してるんだよね?今日だって助けてくれた。危険から遠ざけようとしてくれた。あの時も、緊張してた僕に、気を遣ってくれてたんだよね?)
マンモス型の呪霊に近づく憂太に鶏頭型の呪霊が不意打ちで蹴りを放ってきた。その動きが見えていた憂太は蹴りを躱す。鶏頭型の呪霊は何度も何度も蹴りを放ち、憂太はその全てを躱す。次に浮かべるのはマインの人柄。
(三好さんだってそうだ。喉を傷めた狗巻君を守ろうとしたんだよね?僕と狗巻君を危険から遠ざけようと、たった1人で戦おうとしてくれた。やっとわかってきた・・・本当の三好さんを。周りへの当たりが厳しいだけで・・・本当は心優しい女の子なんだ)
憂太は刀を振るって鶏頭型の呪霊に攻撃を仕掛けた。だがその攻撃は躱されてしまい、鶏頭型の呪霊は爆弾卵を産み落としてマンモス型の呪霊の背中に隠れる。卵が爆発する前に憂太は走り出し、本命であるマンモス型の呪霊に呪いが込められた刀を振るった。マンモス型の呪霊は右手で斬撃を受け止めた。右手に切り傷ができたが、傷はかなり浅い。
【ゾら】
(浅い!ていうか固い!)
憂太が驚いている間にも鶏頭型の呪霊が出てきて憂太の腹部を蹴り上げ、さらにその場で爆弾卵を産み落とし、すぐに爆発させた。
「がっ・・・!」
さらに追い打ちでマンモス型の呪霊の光に掠り、憂太はダメージを負った。
(僕じゃこの呪いに敵わない・・・でも!)
自分ではマンモス型の呪霊には勝つことはできないのは憂太自身わかっていた。だが・・・憂太は覚えている。小学校で巨大呪霊に呑まれた時、マインが『ピンチの数』を数えていたことを。
「三好さん!!!!」
憂太の合図によってずっと遠方で隠れていたマインが姿を現し、ライフルの銃口をマンモス型の呪霊に向ける。
「誰が怪我を負って来いって言ったのよ!!バカ乙骨!!」
(2人の優しさには・・・絶対に応える!!)
「だけど・・・このピンチ・・・絶対に無駄にはしないわ!!」
銃口に集まってくる呪力は巨大呪霊の腹の中で放とうとしたものと同等・・・いや、それ以上の精度だ。
御三家の1つである五条家には無下限呪術の他にもう1つ、隠された相伝の術式がある。だが五条家では、もう1つの相伝術式は無下限呪術の前では無に等しいとされている。ところが、五条家の当主である五条悟は10年前の星漿体護衛任務で危機に陥った際に、最初は見向きもしなかったこの相伝の術式に相応の価値を見出した。
この術式の真価は、術師が危機に陥れば陥るほど・・・感情が高ぶれば高ぶれるほど、呪力が増大し、『無限』のエネルギーを放出することが可能になる。だがこの術式は、如何なる困難も屈しない強い精神を持った者でなければ使うことは叶わない。ゆえにこの相伝の術式はこれまでのマインの祖父を含め、継承した者は五条家という環境に腐り、使用することもままならず、歴史から消えかけようとしていた。
ところが、消えようとしていた相伝の術式は、先々代の五条家当主の弟である祖父を持つマインに受け継がれ、彼女の逆境を乗り越えんとする強い精神を持って今、現代に蘇ろうとしている。その術式の名は・・・
浪漫呪法
ドオオオオオオオオン!!
銃口に溜まった呪力はマインが引き金を引いた瞬間に、巨大レーザー砲のように放たれた。迫りくる巨大な呪力に鶏頭型の呪霊は跳躍して避けたが、マンモス型の呪霊は動かない。そして、マンモス型の呪霊はそのまま巨大な呪力砲に飲み込まれた。
【オオオオオオオオオオオオオオ!!!】
呪力砲に呑まれたマンモス型の呪霊は雄たけびを上げ、呪力砲が晴れた頃にはもう祓われて、この場にはいない。
「す、すごい・・・」
壮大な威力を持つ浪漫呪法の本質に憂太は驚愕している。その間にも鶏頭型の呪霊は生き延びようとその場から逃げ出した。
「逃がさないわよ!」
ドンッ!
マインは逃がすまいとライフルの呪力弾を放つが、鶏頭型の呪霊には当たらない。それによって不利にもかかわらずマインを煽る鶏頭型の呪霊。だがマインはにっと笑っている。なぜなら狙って撃ったのは呪霊ではない。マインが撃ったのは・・・棘が落とした喉薬の方だ。弾に当たった喉薬は弾かれ、宙を舞う。
「バーカ。そっちは行き止まりよ!」
マインがそう言い放つと同時に建物に隠れていた棘が飛び出し、宙に舞った喉薬を受け取り、それを全て飲み干した。そして、向かってきた鶏頭型の呪霊に向けて、呪言を放つ。
「潰れろ!!!」
グッチャアア!!!
呪言によって鶏頭型の呪霊は言葉の通りに、内臓ごと潰れ、血をぶちまける。
「すご・・・」
「高菜!」
感心する憂太に棘が駆け寄る。怪我の心配をしているのだ。
「あ、大丈夫大丈夫。掠っただけだから」
頭の血を拭う憂太に棘は笑みを浮かべ、片手をあげた。行くときにできなかったハイタッチをしようということだろう。
「シャケ!」
「うん!お疲れ!」
パァン!
憂太は笑みを浮かべ、棘とハイタッチを交わした。その時、マインが憂太に声をかける。
「乙骨」
「あ、三好さん」
「・・・あんた、意外にガッツあるじゃない。見直したわ」
「!」
「・・・しょうがないから!あんたのこと、認めてあげるわ!」
マインは頬を赤らめ、恥ずかしそうにそっぽを向いた。やっと自分のことを認めてもらえて、憂太は嬉しそうな顔をする。
「・・・後・・・助けてもらったのに・・・キツイこと言って・・・ごめん・・・」
「あ、ううん!三好さんが無事ならそれで」
小学校の一件に謝罪をするマインに憂太は笑って許した。マインは不服そうな顔をして頬を赤らめる。
「・・・マインでいい」
「え?」
「むず痒いのよ・・・苗字で呼ばれるの」
「!うん!これからもよろしく!マインちゃん!」
「ちょ・・・いきなりちゃん付け⁉調子乗んな!」
「えええ!!??」
マインに理不尽に怒られ、憂太は困惑した様子を見せている。その様子に棘はにっこりと微笑んでいる。
(里香ちゃんの呪いを解いたら、もう普通の人間。呪術高専にいられなくなるけど・・・それまでに少しでも、みんなの役に立ちたいな)
憂太はそんな思いを抱きながら、マインと棘と共に商店街の帰路を歩くのであった。
●
憂太たち3人が歩いていく姿を、五条袈裟を着込んだ男が建物の上から見ていた。
「・・・残念。噂の里香ちゃんを見に来たのに」
男の発言からして、2体の呪霊をけしかけたのは、この男で間違いないようだ。
「同じ特級。早く挨拶したいなぁ。落とし物も届けなきゃだし」
男はそばにいた呪霊が吐き出したものを取り出した。取り出したものとは、刀を持った女性が拾った憂太の学生証であった。
●
翌日、憂太は棘とマインが入学する前の境遇についてパンダから聞かされる。
「棘の呪言はな、生まれた時から使えちゃったから、昔はそれなりに苦労したそうだ。呪うつもりのない相手を呪っちゃったりなぁ。マインの方も相当苦労したそうだ。ただでさえ珍しいハーフに加え、見えないもんも見えると来たもんだから、イジメの格好の的だったんだ」
「えっ?イジメ?マインちゃんが?」
あの強気なマインがイジメられていたと知り、憂太は本当に驚いている。
「境遇としては、憂太にかなり近い。だから入学当初、棘は気にかけてたし、マインもマインで意識はしてたんだ」
憂太は外で花の水やりをやっている棘とマインに、より親近感がわいてきた。
「2人とも誤解されやすいけど、いい奴なんだ。これからも、よろしく頼む」
「!うん!僕こそ・・・」
パゴッ!
よろしくと言おうとしたところに通りかかった真希に薙刀の木刀で頭を叩かれた憂太。
「オラ、朝練行くぞ!」
「あ、そっか」
これから朝の特訓をしようとする真希と憂太に対し、パンダはニヤニヤと笑っている。
「パンダ!!何笑ってんだ!!殺すぞ!!」
「え~~?べっつにぃ~~~?」
「あ、真希さん、ちょっと」
「あ?」
「刀に呪いを込めるの、もう少しスムーズにやりたいんだけど何かコツとか・・・」
「知らねぇ」
憂太の質問に対し、真希は素っ気なく返した。
「呪力のことは私に聞くな」
「?」
真希の何か含みがあるような言い方に憂太はわけがわからず、首を傾げた。
●
同時刻、ハピナ商店街跡地。この場には高専関係者が何人も集まっており、呪術を使うと残る残穢の調査をしている。この場には悟と
彼女の名は新田明。呪術高専に所属する補助監督の1人で伊地知の後輩である。
「商店街をくまなく捜索したところ、4種類の残穢が発見されましたっス。これ以上は何も見つからないだろうと、伊地知さんからっス」
「ああ。わかった。調査ありがとう」
「はいっス!」
「んじゃ、ちゃちゃっと行こっか」
明の報告を聞き、悟と
「・・・間違いないな」
「うん。これは確定だね」
留まった残穢を確認した悟と
●
高専に戻った悟と
「申し訳ございません。検証の結果、何者かが私の帳の上から二重に帳が降ろしていたことが判明しました。加えて、予定にない三級と準一級の呪いの発生。全ては、私の不徳の致すところ。何なりと処分を」
想定外の事態が起きたのは自分の責任であると感じている伊地知は頭を下げて謝罪する。
「いや、いい。相手が悪すぎた」
「!と、申しますと・・・犯人に心当たりが?」
「お前もよく知ってる奴だ、伊地知」
悟は重い空気の中、二重に帳を降ろした犯人の名を口にした。
「夏油傑。6人の特級呪術師の1人。100を超える一般人を呪殺し、呪術高専を追放された最悪の呪詛師だよ」
夏油傑。かつての友の名を聞いた途端、
(・・・お前は今も・・・傑と共にいるのか・・・?
マインの術式の詳細については、章最後に設定で書くつもりです。
経緯は強いてあげるとすれば・・・恵とだいたい同じと言った感じですかね。