現代より500年前、時は戦国時代。この戦乱の世で、武将も呪術師も戦に赴き、死ぬまで戦い続けた。この世では力こそが全て。強者は栄光を掴み、弱者は地に這いずり、待っているのは死と絶望。この過酷な時代の中で、
武将と武将。
呪術師と呪術師。
武将と呪術師。
終わりの見えない戦の中で、
今目の前に映っている光景はまさに、戦によって出来上がった火柱であり、周りには武将と呪術師の死体が転がっている。
『・・・目的は果たされました。帰還しましょう』
『・・・うん』
『わかった』
役目を終えた3人は仕えている主君が待つ城の帰還の準備に入る。その最中、次女は憎悪に満ちた表情をする死体に目を向け、もの悲しげな表情を浮かべる。その様子に弟は気がついた。
『姉上?』
『・・・ごめんなさい。できることなら・・・私を許さないでほしい』
『・・・・・・』
『何をしているのですか?帰りますよ』
『・・・うん』
『・・・ああ』
あの時次女が浮かべた悲しみ。姉の悲しみを見て、弟は何を思い、何を感じ取ったのか。それは、彼にしかわからない。
●
1度目の人生を思い返していたツクヨミは研究所に入り込んだもう1人の侵入者がいると予想できる研究サンプルの保管庫に辿り着き、槍を振るって解き放たれた呪霊を1体残らず祓った。呪霊を祓ったツクヨミは奥へと進み、侵入者を探す。ピチャ、ピチャ、とこの場に聞こえるのは足を踏むたびに聞こえる水の音のみ。するとツクヨミは急に足を止め、後ろを振り返って槍を振るう。
ガキンッ!!
ツクヨミを振るった槍は突如として突っ込んできた女性が振るった手刀によって受け止められる。ツクヨミは槍を強く握りしめ、実験用具ごと薙ぎ払う。攻撃を仕掛けてきた女性は体を反らして薙ぎ払いを交わし、バク転しながらツクヨミから距離を取る。
「クスッ。へぇ、あなたやるわね。呪力も気配も、消したつもりだったんだけど」
「・・・あなたも羅刹四鬼?」
「
羅刹四鬼の1人、道着を着込こみ、右頬の大きな傷跡が特徴の黒髪のポニーテールの女性、
「それは言えてるね。でも・・・死ぬのはあなたの方!」
ツクヨミは槍を構え直し、
(なっ⁉槍が蛇に⁉)
形を変えた蛇は自分を掴んでくる
「くっ・・・!」
表情を歪める
「あなた、なかなか面白い術式を使うのね。ふふ、いいわ。少し気分が高ぶってきた。あなたなら・・・私を逝かせてくれるのかしら?」
「・・・心配しなくても、あの世に昇天させてあげる」
ツクヨミは袖口より現れる蛇を槍に変えて、それを回して構え直す。迎え撃つ
●
同時刻、研究所の外の森の中。羅刹四鬼の
「あいつらって確か・・・楽厳寺学長とこの生徒じゃね?」
「援軍に来た・・・わけではなさそうだな。敵意が向きだしておる」
「じゃあ敵ってことで、殺しても問題ないわけだ!」
鳳凰院を庇ったということで2人を敵と認識した
「ラバック、清孝。お前たちがなぜここに・・・?」
「うちの学長の命令ですよ。鳳凰院元学長を天元様の結界に保護してやってくれっていう」
「あの楽厳寺がか⁉」
潔癖マニアとして有名な楽厳寺が総監部の意に反する命令を生徒に下した事実に彼と腐れ縁の仲である鳳凰院は驚愕する。
「爺さんに言われた通りの場所に来てみれば既にドンパチやってたってわけよ。こいつらって確か総監部直属だったよな?それが何でこのジジイを襲ってんだ?意味わかんねぇ」
羅刹四鬼が受けた任務は痛めつけてでも鳳凰院を連れ戻せというもの。対して楽厳寺からの任務は鳳凰院を天元の結界に連れていき無事に保護するというもの。天元の結界に連れて行くということは、鳳凰院を総監部の手から匿うことを意味している。明らかに任務の食い違いが起きている。だが敵対した時点で羅刹四鬼にとってはそんなことは関係ない。
「お前たちの目的が何であれ、儂らの邪魔をする術師は、五条悟解放の謀反者と見做してよいと言われている。それでも儂らの前に立つというならば・・・お前たちも俗世から救ってやろう」
「こっちの意見は聞く気がないみたいよ?」
「こいつらが話を聞くタマに見えんのかよ?少なくとも俺は見えないね」
元より話が通じる相手ではないとわかりつつ、ラバックと清孝は軽口をたたいている。
「ラバック!清孝!無駄口を叩いている暇はない!羅刹四鬼の狙いは・・・」
「わかってますよ。この状況が見えてないほど、俺もバカじゃないですからね!」
「てめぇらが動いてるってことは、どっかで兄弟も動いてるってこったろ?なら、やることは1つだろうが」
そう言ってラバックはグローブに備わっている糸を展開し、清孝は両手の手斧、白虎斧を構え直し、臨戦態勢に入り。そして清孝はゆっくりと起き上がるウサギに向かって声を上げる。
「おい、怪物!」
「怪・・・物・・・!」カチーンッ!
「その女とジジイを連れてとっとと失せろ!んなところにいられると目障りなんだよ!」
「はあ~~⁉何だお前⁉それが人に物を言う態度かよ⁉」
「いや人じゃねぇだろお前」
ウサギは清孝の物言いに憤慨し、鳳凰院はウサギの発言に冷静にツッコミを入れる。
(・・・とはいえ、姿を変えると呪力消費が多くなる。このまま続けてももらった呪力が尽きて消えちゃうか・・・仕方ない)
自分を客観的に見ることができているウサギはこのまま続けても呪力切れで術式効果がなくなり消えてしまうと理解していた。ウサギはちらっとナジェンダに視線を向ける。対してナジェンダは首を縦に頷いた。それを確認したウサギはバッと駆けだし、上半身のみとなった鳳凰院の元へと駆けつけていく。
「行かせないっつーの!」
同時に
「オラァ!!」
清孝は
「ふんっ、ぬるいな。手斧など、ただの目くらましだろう。本命は・・・青髪の小僧!」
「お前の魂も解放してやろうか!」
ドォォン!!
拳と拳のぶつかり合い。お互いに力が均衡しているかのように見えたが・・・
「オ・・・ラァ!!」
ドォンッ!
「ぬぉ!!」
清孝の力が
「押し負けた⁉この儂が⁉」
「舐めてんじゃねぇぞ、クソジジイが!」
「ナジェっち今だ!」
鳳凰院を抱えたウサギは走りながらもう片方の腕を伸ばす。ナジェンダはそれに合わせて頷き、義手を飛ばしてウサギの手を掴んだ。そして義手に引き寄せられながらワイヤーを戻し、ウサギの肩に担ぎあげられる。一方、白虎斧に追いかけ回されている
「よっと・・・ありゃ逃げられちゃうなぁ・・・。じゃあ、
「おっと!俺もいるのを忘れないでくれよ!」
「悪いけど、あの人たちを追わせるわけにはいかねぇんだわ!」
「ラバック!清孝!ここは任せたぞ!」
去っていくナジェンダの声を聞いて、ラバックは振り向いてグッドサインを送り、清孝は早く行けと言わんばかりに視線を合わせずにシッシッと手を振る。
「・・・さて・・・と」
ウサギたちが去ったところでラバックは身構え、清孝は戻ってきたもう片方の白虎斧を手に取り、
「
「そのようだな。特にあの青髪の小僧。奴の腕力は中々のものだった。面白くなってきたわ。ここ久しく、歯ごたえのない相手ばかりだったからな。少しは退屈せずに済みそうだ」
「俺はさ、自分のポジション考えて、正面切った戦いは極力避けてんだ。けど、惚れた女が後ろにいるんでな。今回はガチでいかせてもらうぜ!」
「カッコつけてんじゃねぇ。重要なのはこいつらをぶっ殺せるかどうか。それだけだろうが」
対してラバックと清孝はその殺意に臆することなく堂々と
●
あの場をラバックと清孝に任せたウサギはナジェンダと鳳凰院を抱え、できる限り戦域を離れていく。
「・・・おい、付属品」
「付属品って呼ぶなっつってんでしょ」
抱えられている鳳凰院はウサギの文句にも意を介さず、特に木々が生い茂っている森に指を指す。
「俺をあそこに降ろしてくれねぇか?」
「はあ?オッサン自分の立場わかって・・・」
「人造受肉に関する大事なことだ。いいから降ろせ」
「・・・ウサギ、降ろしてやってくれないか?」
鳳凰院がこのような非常時に冗談でものを言わない男であるとわかっているナジェンダはウサギに言う通りにしてほしいと頼み込む。ウサギは仕方なく森の中に突っ込み、他に敵がいないか確認を取ってからナジェンダと鳳凰院を降ろした。
「で?大事なことって何?」
ウサギに急かされつつも、鳳凰院は這いずるように前に進み、雑草に隠れていた操作パネルの蓋を開け、キーボードをたたく。すると・・・
プシュー!ガコンガコン!ウィィィン!
「うわっと⁉」
「ここは俺の秘密開発室と繋がっていてな。部屋が機能してるってことはここはまだ見つかってなかったってわけだ」
突然草原の一部から煙が噴射し、それと連動するようにその場所に穴が開き、何かが入ったカプセルが現れる。その現れたカプセルの中を見て、ナジェンダとウサギは目を見開いて驚愕する。
「げっ⁉」
「こ、これは・・・!」
培養液で満たされたカプセルの中に入っていたのは、人の姿をした何かであった。
「これが・・・人造受肉に必要な・・・ホムンクルスだ」
「これが・・・ホムンクルス・・・!」
「つっても、これはただの器だがな。呪骸とそう変わんねぇよ」
そう、この人の姿をした何かは、鳳凰院が作り上げた人造人間、ホムンクルスだ。
「お前らから話を聞いてた時から、実は既に錬成は始まっていたんだよ。何せ内容が内容だったからな。遠隔操作で特急で作らせてもらったぜ」
(このホムンクルスを術式の遠隔操作で⁉しかもこの短時間で・・・!やはりこの人はただものじゃない・・・。総監部が欲しがるわけだ)
遠隔操作でホムンクルスを短時間で作り上げた鳳凰院の能力にナジェンダは驚く。それもそうだ。如何なる錬金術使いでも1日で、それも1時間足らずでホムンクルスを作るなど不可能だ。それを平然とやってのけた鳳凰院の能力は、どう考えても特級を満たすほどのものである。
「さて、こっからが問題だ。実はこのホムンクルス、器と言うだけあって内臓がないんだよ。どんな人造人間でも、内臓がなきゃ生きてはいけねぇ。それを錬成するためには反転術式の生のエネルギーが必要なんだ。そして残念ながら、俺は反転術式が使えんし、禪院姉の反転術式のエネルギーを抽出することもできん。だが、生のエネルギーを錬成することはできる」
鳳凰院の説明を聞いて、ナジェンダは人造受肉が危険と言われる由縁を理解する。
「・・・!まさかその錬成に必要なものが・・・」
「そう、それこそが他者の寿命。俺の術式で寿命を抽出し、それを生のエネルギーの変換させ、ホムンクルスの内臓を錬成する。仕上げに魂の情報の代わりに核である呪物をホムンクルスに取り込ませ、肉体が呪物に適合するように構築、分解、再構築を繰り返すことによって、肉体が呪物と一体化し、受肉が完了する。それこそが、人造受肉の全貌だ」
「寿命の・・・抽出・・・」
「この寿命の抽出がハイリスクだ。命を削るというわけだから当然、想像を絶する苦しみを味わうことになる。ッ下手をすれば呪力が拒絶反応を起こし、最悪命を落とすことになる」
人造受肉全貌とそのリスクが明らかになり、ナジェンダとウサギは固唾を飲んでいる。
「だが、人造受肉が成功すれば、こちらの戦力が増え、この状況を打破できるかもしれん。こいつは危険な賭けだ。失敗すればナジェンダ、お前の命はない。それでもお前は死滅回游平定のため、こいつに命を捧げるか?」
鳳凰院は機械の左掌から赤い勾玉を取り出した。この赤い勾玉こそが、彼女らの目的である特級呪物、
「決めるのはお前らの覚悟だ。どうする?賭けに乗るか?乗らないか?」
鳳凰院はスサノオの核を見せ、ナジェンダとウサギに再び覚悟を問いかけた。
●
その頃、研究所のシュミレータールーム。
「シン・陰流我流奥義―――双月」
「へっへっへ!禍々しいなぁ、その刀!今の
「はぁ!」
「ほらほらほらぁ!どうよ
「ふっ!」
「壮絶な修行してるっつったろ!」
「はぁ~い、得物没収!」
術式の要である刀が奪われても、
「・・・・・・刀には打つ者の魂が宿る。そうだろう?武虎」
「あ?」
ズズズ・・・バッ!
「なっ⁉」
刀から禍々しい呪力が溢れだし、
「なんなんだ、この刀はぁ⁉」
ヒュンッ!バッ!
大きな隙が生まれた
ゴキィ!!
体を傾けて彼の首を捻じ曲げる。そして、足を開いて彼の首から離れ、呪力を纏った拳を叩き込んだ。殴り飛ばされた
「特級呪具、妖刀村雨。武虎の魂が込められた最後の一刀。この刀は持ち主を選ぶ。相性が合わないものが手に渡ると、ああなる」
そう、
「まさか・・・これを狙って、わざと・・・!」
「お前はこの刀を禍々しいと言ったからな。妖刀に嫌われたのだ」
首を折られても生きている
「よくも・・・よくもお前ぇぇぇ!!!」
襲い来る
「葬る」
ジャキンッ。スパァ!!
すると
シン・陰流居合―――夕月
「豪が軽いと喜ぶべきかもな、
「へ・・・危険な女だなぁ、おい・・・。好きになっちまいそうだよ・・・へっへっへ・・・」
ドオオオオン!
それと同時に、研究所の外から凄まじい轟音が聞こえてきた。
「今の衝撃は・・・外か?みんな、無事だといいが・・・」
●
同時刻、研究所の外で戦闘を繰り広げているラバックは自身の術式で糸を操り、
「さあ、かかってこい!」
「はっ!何が来いだ!お前が糸飛ばして攻撃してんじゃねぇか!」
ラバックの糸の攻撃に対して、
「ふはは!いいぞ小僧!それでこそ救済のし甲斐があるというもの!」
「本気で殺しにかかって何が救済だ!笑わせんじゃねぇ!!」
清孝は
「ぬぅぅん!!」
ドォォン!!
「ぬっ!」
「水連射弾!」
清孝が術式を発動させると、中に入っていた水がペットボトルを貫き、何発もの弾丸となって
「皇拳寺・百裂拳!!」
「水分子操術・・・お前、加茂家の人間だったのか」
「あ?加茂だからなんだっつーんだ?」
水分子操術を見て清孝が加茂家の人間であるとわかった
「わからんな。お前が加茂の人間なら、なぜ儂らの邪魔をする?お前は学長の命令で来たようだが、学長と総監部。どちらの立場が上か知らぬわけではあるまい?」
「ごちゃごちゃとるっせぇ!!俺はてめぇらのそのジジイの命令は当たり前っつぅ態度が殺してぇほど気に入らねぇんだよ!!加茂ならジジイの命令は何でも聞くと思ってんのか?そういうのを操り人形っていうんだよ!俺は俺だ!加茂清孝だ!加茂って家柄だけで俺の存在を否定される筋合いはねぇんだよ!それでも否定するってんなら・・・もう呪い合うしかねぇだろうが!!」
「度し難いな。救いようがないほどに。だが喜ぶがいい。お前のそれも、死によって救われる。お前のその苦悩、儂が救ってやろう」
「はっ!死が救済なんて何トチ狂ってやがんだ!」
ボコォ!!
清孝が指をクイッと上げると地面から白虎斧が飛び出し、
「白虎演舞!!」
白虎斧は周りの風を引き寄せ、竜巻を作り上げる。そこへ、ラバックの攻撃を掻い潜った
「
「そうかよ!」
清孝は制服の懐からもう1本ペットボトルを取り出し、迫る爪に向けて放り投げる。ペットボトルは爪に突き刺さったが、そこから溢れた水が槍となって
「束なれ糸!そして、高まれ遠心力!」
清孝が
「そのまま動くなよオッサン!超奥義!ワイヤーインパクトォ!!」
ラバックは白虎演舞の竜巻のど真ん中まで高く跳躍し、
「ふんっ!!」
ドォォン!!
だが
「ぬるいわ。この程度が奥の手とは、笑わせるな」
ラバックはすぐに糸の斧を解き、距離を取る。
「そうかな?俺の目的は達成されてるんだぜ。後ろを見てみな!」
ラバックの指摘通りに後ろを振り返ってみると、そこには先ほどの衝撃で吹き飛び、木に突き刺さった白虎斧と、離れた場所には清孝がもう1つの白虎斧を握りしめていた。そしてその2つの白虎斧の柄を見てみると、糸がピンと張ってある。
「俺の術式、糸繰呪法の糸は界断糸と呼ばれていて、その鋭さは特級呪具にも引けを取らないぜ。とっておきの1本だ。お前でも切れないぞ」
自身の術式の開示と、清孝の白虎斧を持ったままのクラウチングスタートの姿勢。これによって
(!まさか・・・!)
「逃げられると思うなよ。俺が操れるのは、目に見える水だけじゃねぇ!」
清孝が腰を上げると同時に、彼の足元に小さなクレーターが出来上がる。
「水鱗躍動・俊!!」
ビュンッ!!
術を発動すると同時に、清孝は目に留まらぬ速さで走り出す。これによって、白虎斧同士で張った糸が
「ぬ・・・ぬぅぅぅ!!」
辛うじて糸を目で追うことができたが、振り切れないと判断した
ズシャア!!
「ぐああああああ!!」
だがラバックの言うとおり、糸は切ることができず、
「クソッタレ!!このジジイ、首に力を集中しやがった!」
「いや!十分だよ!!」
清孝が悪態をつくが、ラバックは即座に糸を束ね、長槍を作り上げ、そのまま
ズンッ!!
「ぬぅ!!」
槍は見事に
「ぬ、ぬるいわ小僧共・・・!修行を重ねてきたこの身体・・・この程度の傷ごときで・・・!」
「身体がどんだけ強かろうが関係ねえ。界断糸が体に突き刺さった時点で、お前の心臓に糸が向かってる」
「!!」
「ぐはぁ!!!」
体内で心臓がバラバラになったことにより、
「お前案外えぐいな」
「そう?」
ともあれ、
「おぉ~、やるじゃ~ん。
「お前を生かして帰したら、総監部のジジイにチクんだろ?そしたら学長の方も立場なくなるだろうが」
「そういうこと!立場を悪くすんのは俺らだけで十分!悪いけど、しっかり口止めさせてもらうぜ!」
ラバックは
「ま、そりゃそうだ。私でもそうするもん」
にっこりと微笑み、2人の考えに賛同する
「ふんっ!」
「「!」」
(んだこの液体?油か?)
液体に纏わりついた糸はその重みでたるみ、緩くなってしまう。これでは結界の意味がなくなってしまう。
(まずい!液体の重みで糸がたるんで役に立ってねぇ!)
「油っつぅか、あたしの汗だね。羅刹四鬼はこういう体の操縦得意なんよ。これでその糸の結界は役に立たないわけだ」
ヒュンッ!ヒュンヒュンヒュンッ!
謎の液体の正体が汗であると明かすや否や、たるんだ糸を掻い潜りながら、目で負えないスピードで縦横無尽に動いて2人の視界を乱す。
「は、速ぇ!」
「だけじゃねぇ!リミッター解除にどさくさに紛れての能力開示!この
リミッター解除と能力開示による身体能力の底上げによって素早くなった
「ふっ!」
ドゴォ!
「ごはっ!!」
直撃を受けたラバックは吹っ飛ばされ、木に激突する。
「ラバ!!」
「ふんっ!」
ドカァ!!」
「がっ・・・!」
清孝がラバックに気を取られた隙に
(くっそ・・・一撃が重てぇ・・・!)
(立てねぇ・・・!次くらったらマジで死ぬ・・・!)
「お前が1番強そうだから、お前から先ね」
「くっ・・・お前、強いな・・・顔もいい・・・。敵って立場じゃなきゃ、お前を口説いてたとこだぜ・・・」
「ははっ、お前みたいなタイプ、加茂にはいないからオーケーしたかも。でもま、それは来世で」
ズンッ!!
「がっ⁉」
不意を突かれるように
(あたしの・・・汗・・・!)
「汗は皮膚から分泌する水分子だ。その99パーセントが水。であるなら、俺の術式の操作対象だ。衛生面的に、使いたくはなかったけどな」
「水鱗躍動・轟!!」
ドオオオオオン!!!
清孝の一撃は
「じゃあな。お前、俺の好みの女だったぜ」
清孝は
「あぁ~!もったいねぇ!いい女だったのに!」
「おめぇは惚れた女がいんだろ。他の女に眩んでんじゃねぇよ」
「バッカ!それとこれとは別だろ⁉」
「筋が通んねぇよ!」
戦闘が終わり、惜しんでいるラバックに清孝が呆れていると・・・
ゴオオオオオオオオオオ!!!
「うおっ⁉なんだなんだ⁉」
「すげぇ近いな・・・行くぞ!」
近くで轟音が鳴り響き、2人は何かあったのではと危機感を募らせ、急ぎその場所へと向かった。
●
ドカァァン!!
同時刻、衝撃音と共に、研究所の天井を蹴り飛ばして外に出た
「月光蝶・流星!」
ツクヨミは
「はぁっ!」
ズンッ!
「なっ・・・⁉」
槍は貫いた。だが貫いたのは
ドカァ!
「ぐっ・・・!」
ありえない回避方法に驚くツクヨミは
「うふっ、深爪になっちゃった♡」
「くっ・・・!」
月光蝶を弾いて一部深爪になって血を流す
「受肉した
「・・・私たちのことを知ってるの?」
「むしろ知らない術師は少ないと思うけどね」
「
「・・・・・・」
「皮肉なものよね?勝利に導く英雄が、今や秩序を乱す大罪人になるなんて」
「・・・大罪人・・・そう呼ばれても仕方ない」
「あら。否定はしないのね」
「事実だから」
「私たちは渋谷事変で取り返しのつかない罪を犯した。弟に会いたい。ただそれだけの理由で羂索に手を貸して、何の力もない人間をたくさん殺した。これは決して許されることじゃない。500年前だってそう。戦場に出てた兵士だって、帰りを待っている家族がいたはずなのに、私たちが自分勝手に、その家族の命を奪ったんだ」
ツクヨミの脳裏に浮かぶのは500年前の戦乱の火。その火の中で散りゆく命が自分たちを恨めしく呪う顔であった。
「きっと私たちはいい死に方をしない。地獄に落ちたって、灼熱の業火に焼かれると思う」
でも、と、ツクヨミは続ける。
「こんな私たちを、必要としてくれる人間がいるんだ。その人が、ここにいていいんだと言ってくれた。私たちを拾ってくれた、将軍様のように」
渋谷事変以降、ナジェンダは敵であるはずの自分たちを必要な仲間であると言ったことがあった。普段ならば疑うところだったが、ツクヨミはその言葉に嘘偽りがないと断言できた。なぜならばその時の姿勢も、言動も、しぐさも、顔つきも、何もかもがかつて信頼して仕えていた主君と瓜二つだったから。
「私は、姉様と弟と一緒に、この時代に生きると決めた。これまで殺してきた何百人もの命を背負って。それを阻むというのなら・・・」
ツクヨミは覚悟を決めたような表情を浮かべ、槍を回す。
「押し通す!誰にも、私たちの存在を否定はさせない!」
自分たちが必要としてくれる人間がいるこの時代で生きることを決めたツクヨミは自分たちの存在を証明するために、戦うことを選んだツクヨミは槍を構える。
「意気込むのは勝手だけどね、そういうセリフは・・・私を殺してからいいな!」
対して
ヒュルルルルッ!スパッ!
「!」
「・・・え?」
両者の間に回転する刃が飛んできて、爪を斬り落とした。第三者の介入に
「今の・・・まさか・・・」
驚愕はあるものの、それ以上に胸が高鳴るこの喜びの感情。感情を必死にこらえつつも、ツクヨミは刃が飛んできた方角に視線を向けた。そこには、1人の男が立ってた。
●
場所は変わって薨星宮の直上、空性結界で天元の護衛をしている由貴、脹相、アマテラスは炬燵に入って羂索の対策会議を行っている。するとアマテラスはふっと笑みを浮かべた。
「ん?」
「どうしたんだい?」
「・・・
●
姿を現したその青髪の男は少し異質だ。長柄の槌を持ち、胸に赤い勾玉が浮き出た白い着物を着込んでいる。何より注目すべきは頭にある2本の角だ。この角は本物で、これがあるだけで彼が普通の人間ではないことがよく理解できる。ツクヨミはその男を見て、声を震わせながら口を開く。
「・・・スー・・・君・・・」
スー君。そのあだ名はツクヨミが自分の弟に対して呼んでいた愛称だ。そう、今目の前にいるのが、アマテラスとツクヨミが一度は羂索と組んでまで探していた最愛の弟・・・
(あの赤い勾玉!
スサノオの介入は想定していなかった
「スー君・・・どうして・・・」
「話は後だ。今は敵を鎮圧する方が先だ」
「!・・・うん」
スサノオの言葉にツクヨミは爆発しそうな感情を抑え、表情を引き締め直す。
「いつも通りのフォーメーションで行く。姉様はいないけど、いけるよね?」
「ああ」
お互いに首を縦に頷き、先に動いたのツクヨミだ。ツクヨミは手に持っていた槍を粒子に変え、その粒子を足元に注ぎ、形を作り上げて2匹の狼を具現化させる。
「白狼!黒牙!食いちぎれ!」」
ツクヨミの指示を受けて、2匹の狼は
「天叢雲剣!」
スサノオは槌による突きを放ち、自分の術式、天叢雲剣によって生成した回転刃を
「ふっ!」
そこへツクヨミが接近し、
(3番の力は未知数!ならタネがわかってる2番から片付ける!)
狙いをツクヨミに絞った
「ぐっ・・・!」
ツクヨミが体制を整える前に
ガクッ
「っ⁉」
だが突然体に力が抜けてガクンと膝を折り、放った拳はツクヨミの頬を掠り、空を切った。
(これは・・・毒⁉まさか・・・あの時の・・・!)
「ふっ!」
ツクヨミはこの好機を逃さず、すかさず
(ヤバい・・・これは・・・!)
スサノオはさらに槌の刃を回転させ、
(この絶え間ない激しい痛み・・・!これは・・・マジで・・・)
逝くぅ!!!!
ツクヨミは双剣の斬撃を振るい、スサノオは槌を叩き込んで
「ふふ・・・今のはとってもよかったわ・・・危うく逝きそうになっちゃった・・・♡」
「これだけやってもまだ立つなんて・・・」
「タフだな」
タフなんてレベルを超えている
(こういうタイプの奴を仕留めるには全身に浴びせるような大きい一撃でないと難しいかも・・・。でも私もスー君も姉様の万華鏡ほどの威力を持った技が少ない。あるとすれば、この受肉体の呪術・・・)
「・・・スー君」
「なんだ?」
「一か八かの賭けに出る。ついてきてくれる?」
スサノオはツクヨミの顔を一目見る。その表情は、覚悟が据わった表情をしている。
この姉はいつもそうだ。人を殺さなければ生き残れないあの戦乱の中で小さなアリにさえ食べ物を分け与える心優しき性格。その心優しき姉が、人を殺せば殺すほど、他者の命を哀れみ、1人で涙を流す。それでも命を背負う彼女は、気持ちを押し殺し、何事もなかったかのように取り繕う。500年前からスサノオはその表情を見る度、無力感に苛まれる気持ちになる。
これが彼女の呪いなのだとするなら・・・俺も背負おう。祓うこと叶わぬ姉の呪いを。
「・・・ああ」
スサノオが首を縦に頷いたことで、ツクヨミは笑みを浮かべ槍を生成する。ツクヨミは作り上げた槍を回転し、それを
「クスッ、残念」
嘲笑する
(!あの子、何を・・・?)
槍に近づいたツクヨミは拳に呪力を練り上げ、突き刺さった槍に打ち込もうとする。
「呪槍術―――震天!!」
ドガァ!!
地面に突き刺さった槍がツクヨミが叩き込んだ拳によって衝撃が加えられ、地面に響いた。すると・・・
ビキ!ビキ!ビキキ・・・!
ドシャアアアアアアアアアアン!!!!
地盤が崩壊し、それが呪力を帯びたガケ崩れとなり、
「さ、さすがにその攻めは勘弁・・・!」
予想していなかった攻撃に
「姉上!!」
ツクヨミに駆け寄ったスサノオは彼女を守るように抱きしめ、共に土砂に飲まれる。逃げようとしていた
●
「な、何がどうなってやがんだぁ⁉」
土砂崩れの轟音によって駆けつけた清孝とラバック、さらに生き残った研究員はその凄惨な現場を目撃し、驚愕する。
「お、おーい!誰かいないかー⁉」
ラバックと清孝はこの土砂の中で生存者がいないか呼び掛けながら辺りを見回す。すると・・・
ボコッ!!ドォォォン!!
「うおおおおっ⁉」
「なんだぁ⁉」
土砂の中より人の手が飛び出し、強い衝撃と共に手を飛び出した人物が姿を現した。2人が警戒してる中で現れたのは、土で汚れているスサノオと、彼に抱えられているツクヨミだった。
「・・・無茶な作戦を考えたな」
ツクヨミをそっと降ろすスサノオはそう一言を述べた。
「無茶でもいけるって思ったんだ。だって・・・スー君なら守ってくれるって信じてたから」
「・・・・・・」
ツクヨミはにっこりと微笑み、会いたかった最愛の弟に抱きついた。
「また会えて嬉しいよ、スー君。本当に」
再会の喜びをかみしめ、自分に抱きついてくる姉。その姉に声をかけようとした時、彼女の姿を見て目を見開き、姉を引きはがす。
「スー君?」
疑問を浮かべるツクヨミとは対照的にスサノオは手を素早く動かし、彼女の乱れた髪の毛、そして着崩れた着物を丁寧に直していった。
「・・・よし!!」
姉の正装がキッチリしたことによってスサノオは満足気に頷いた。その様子を見たツクヨミはポカンとした後、クスリと笑みを浮かべる。
「もう・・・雰囲気台無し」
2人の姉弟水入らずの笑いあいにラバックと清孝、研究員は置いてぼりをくらってポカンとしている。
「えっと・・・何が何だかわかんないんですけど」
「安心しろ、俺もだ」
全員が呆けている間にも、ナジェンダを抱えた
「人造受肉を行ったんですね、学長」
「状況が状況なんで、そうした方がいいと判断したまでよ。それに・・・」
鳳凰院は満面な笑みで弟を会話を繰り広げるツクヨミに視線を向ける。
「よくよく考えてみりゃ、嬢ちゃんは500年前の人間。善悪問わず、多くの人間の十字架を背負ってるんなら、覚悟も据わってるわな」
人造受肉のを行う際、ツクヨミの覚悟を鳳凰院に語っていたウサギはフンスッ!と得意げに鼻を鳴らしている。
「・・・嬢ちゃんを舐めてたのは俺の方だったわけだ。恐れ入ったぜ、マジで」
鳳凰院はニッと笑い、念願だった弟の再会を果たしたツクヨミに心の中で祝福を送った。
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その日の夜。死滅回游が開催されているどこかのコロニー。死滅回游に参加している1人の男がたった今、1人の術師を殺害した。
「5ポイントが追加されました」
「ったり前だろ。殺したんだから」
術師を殺した男には、悪魔のような尻尾を備え、天使の羽を生やした愛嬌のあるデザインの髑髏の奇妙な生物が憑いていた。
「どいつもこいつも貧弱すぎる。400年前の方が幾分かマシだった」
男はこれまでも多くの術師と戦い、殺してきたがどれもこれも弱すぎる相手ばかりなので、好戦的な彼は不満を隠しきれず、親指の爪を噛みしめる。
「どこにいる・・・宿儺・・・!!」
もうすでに死んだ術師に眼中になく、彼は自分を満足させてくれるほどの桁違いの強者と戦うことしか考えていない。その相手が史上最強の術師、宿儺であればどれほどよいものかとも。
「得点が200を越えました。100ポイントを消費して、死滅回游にルールを追加しますか?」
奇妙な生物が死滅回游にルールを追加するかと尋ねると、男は考え始めた。
「・・・そうか・・・ルール・・・。名前と・・・強さの基準として得点・・・あ、ルール追加すると減っちまうか・・・。じゃルールの追加回数もだな。それからどこのコロニーにいるか・・・」
男は慎重に考え、自分を満足させる強者を求めて、200もあったポイントのうち100点を消費し、死滅回游に新たなルールを追加する。
「コガネ、ルール追加―――全
死滅回游
総則9『
死滅回游泳者ボルスはどこのコロニーに向かった?
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東京第1結界
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東京第2結界
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仙台結界
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桜島結界
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御所湖結界(オリ話)