カプセルコーポレーションに入社します!   作:ドッカン太郎

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配属決定

 

 

 俺たちはカプセルコーポレーションに内定が決まり、それを両親に報告した。両親からお祝いの言葉が雨のように降り注ぎ、それが知人や友人に広まるとおめでとうの言葉で埋め尽くされた。世界的な大企業の内定を勝ち取ったので、そりゃあとんでもなく嬉しいのだが、素直に喜べない事情がある。

 まず、俺たちはブルマ社長が実際に住んでいる住宅兼カプセルコーポレーション本社勤務に決まったのだが、そのことは隠さなくてはいけない。表向きは、同じ西の都にあるカプセルコーポレーション新設ビルで勤務することになっている。業務内容についても、守秘義務が多く、何の仕事をしているのと聞かれたら、「物品の調達」もしくは「開発」のどちらからしか言うことを許されない。

 

「はい、ベンさんとライムさん。これから教える内容について、絶対に社外には、というよりこの建物にいる職員以外には漏らさないでください。漏らしたら問答無用で懲戒解雇です。ではさっそく」

 

 そしてもう一つは、カプセルコーポレーション内では俺たちの知っている常識とかけ離れている現象が多発し、中には世界の均衡を崩しかねない情報が山ほどそろっているということだ。はっきり言って、王国の機密情報クラスだ。それを絶対に隠し通さなければいけないのは想像以上に苦しい。

 現在俺たちは入社前研修として、先日ブルマ社長から配布された「猿でもわかるカプセルコーポレーション超常現象ガイドブック」について、受付嬢のキャシーさんから本社内の研修ルームで説明を受けているのだが、とんでもない情報が雨あられのように殴り掛かってくる。

 

「まず、社長の家族構成ですが、ブリーフ前社長とビキニ夫妻の間でブルマ社長及びお姉さまのタイツ様が誕生なされました。その後ヤムチャさんという方と交際し、破局したのち、ベジータ様と結婚しました。ちなみにベジータ様はサイヤ人という宇宙人で、もともとは地球を侵略しようといらっしゃった方です。その後トランクス様が誕生しました」

 

 いや待て侵略してきた宇宙人と結婚しただと。突っ込みを入れようとしたが、キャシーさんは説明事項が多いので後で質問を受け付けますとぴしゃりといわれてしまったので何も言い返せなかった。

 

「ブルマ社長のご友人は非常に多いです。まず、ベジータ様と同じサイヤ人の孫悟空さん、別名カカロット、孫悟空夫人のチチさん、チチさんのお父さんである牛魔王さん、そしてお子さんには孫悟飯さんと孫悟天さんがいます。孫悟天さんはトランクス様とご友人で趣味は対決ごっこです。下手に近寄ったら大けが必死ですのでご注意を。また孫悟飯さんはビーデルさんと交際しております。ビーデルさんはミスター・サタンさんの娘です。またミスター・サタンの一番弟子であるミスター・ブウさんも時折いらっしゃいます」

 

 おいおいここでミスター・サタンとのパイプもあるのかよ……いったいどうなっているんだこの会社は。ライムさんの方を見ると険しい表情をしている。やはり情報量が多すぎて混乱しているのだろう。

 だが、これでは終わらなかった。

 

「武道家仲間も多く、クリリンさん、元カレのヤムチャさん、天津飯さん、チャオズさん、スケベじじいこと亀仙人さん、ヤジロベーさん、カリンさんがいますね。ちなみにクリリンさんは結婚しており、奥さんは18号さんで、お子さんはマーロンちゃんと言います」

「ピッコロ大魔王も今となってはブルマ社長の仲間です。孫悟飯と仲が良く、師弟関係です。ちなみにピッコロ大魔王はナメック星人で、地球の神を務めているデンデさんと同じ種族です。なお、デンデさんも孫悟飯さんやクリリンさんと友人関係です。神様の付き人であるミスター・ポポも一緒に来ます。あと、ナメック星人は水しか飲みません」

「皆様も周知の事実だと思いますが、セルは孫悟飯さんが倒しました。しかし、孫悟飯さんは注目が集まるのを嫌がり、事実の訂正をしませんでした」

「この世界にドラゴンボールと呼ばれる秘宝があり、7つ集めるとどんな願いもかなえてくれます。社長はそのボールを探し出せるドラゴンレーダーを開発し、これまで世界を救う戦いのために利用されてきました」

「タイツ様は治安を守る銀河パトロールのジャコという隊員とご友人であり、地球に遊びに来ることもあるそうです」

「サイヤ人は大食いで、平気で50人前くらいは食べます。また、若くて健康な時代が長いくせに戦ってばかりで働かないようです。まったくもってけしからんと社長がおっしゃっていました。あと、髪を金色に変化できます」

「今紹介した方の半数近くは多分空も飛べますし普通に戦います。何なら軍隊なんて足にも及びません。彼らの特殊な能力やパワーについてまとめた資料もあるので目を通してください」

 

 キャシーさんがすべての説明をし終えるころには、夕方になっており、日が落ちていた。もはや脳みそが働いておらず、俺たちは机の上で溶けていた。

 

「では、何か質問はありますか?」

「……ありません」

「それでは入社前研修を終了します……これからは先輩としてのアドバイスですが、正直今日一日で受け入れようとせず、受け入れられそうなところから始めてください。私も初日、そんな感じでしたから。質問は後日でも受け付けてますよ」

 

 そう言ってキャシーさんは微笑みながら研修部屋を去っていく。俺たちは何も言えず、しばらく無言で机に突っ伏していた。

 正直、あまりにも突っ込みどころが多すぎる。

 まず宇宙人と社長が結婚しているなんて初耳だ。就活において社長の経歴含む企業情報はリサーチするのが当然だが、そんな情報は表には出てきていない。しかも元はといえば侵略してきた宇宙人だと。なんでそんな奴と結婚できたんだ。てか今ロボットの名前出てこなかったか? ロボットと結婚しているのか? そして子供もいるの?

 あとピッコロ大魔王もなんで仲間になった。世界征服だとか何とか言ってた奴をなぜこの企業は彼を丸め込めたのだ。

 地球の神様もまさかの宇宙人? 笑えて来る。こんな事実が知れ渡ったら世界中で宗教戦争が起こるぞ。

 そして平気で空を飛んだりエネルギービームを打てる連中が多すぎる。俺たちはヒーロー漫画の世界にでも住んでいるのか。あとこの前急に現れた黒髪の男がまさかセルゲームの金髪の男と同一人物なんてありえない。なんで自力で髪色を変化させられる。こんなの床屋いらずじゃないか。

 脳内で突っ込み大会を披露していた俺は、ライムさんの様子を見る。ライムさんもまた、受け入れがたい現実の嵐と懸命に戦っているのだろう。そう思い、とりあえずお疲れさまでしたねという言葉を投げかけようと口を開いたとたん。

 

「っ……」

 

 ライムさんがそっと涙を流していた。俺はあまりに突然で驚いてしまったが、反射的にポケットに手を入れて、ハンカチを差し出す。

 

「あ、ありがとうございます。すみません……」

 

 俺のハンカチで目じりをぬぐった彼女はぺこりと頭を下げ、俺もいえと間抜けな返事しかできなかった。

 

「何か、あったんですか……?」

「いえ、なんでもないんです。花粉症かなきっと……」

「そんなわけないですよ。俺でよければ、話聞きますよ。その、これから同期になるんですし」

 

 ヤバイ、踏み込みすぎたか。けれど、正直同期がいきなり泣いているのをほっとくのもどうかなと思う。

 

「では、どこか行きませんか? おなかすいちゃいました」

 

 カプセルコーポレーションを出るともうすっかり夜になっていた。今日はウィークデーであり、仕事帰りのサラリーマンが多かった。とりあえず全国チェーンの格安焼き鳥居酒屋を見つけたのでそこに入り、ビールと焼き鳥を注文し、乾杯した。

 

「とにかく今日一日お疲れさまでした。はっきり言って疲れましたよね……」

「本当にそうですね。私、正直今日言われたこと絶対忘れない自信ありますが、情報量が多いので、何とか整理したいですね……」

 

 枕詞的な雑談を交わし、沈黙が入る。そして、俺はいよいよ切り出した。

 

「あの、なんであの時泣いていたか、当ててもいいですか?」

「えっ……」

「孫悟飯さんがほかの女性と交際していると、知ったからですか?」

 

 そう、たぶん彼女は孫悟飯に恋している。

 昔彼女は孫悟飯に助けられたといっていたし、あの最終問題でも、セルを倒した相手は金髪の青年ではなく、孫悟飯と書いていた。あの資料だけで孫悟飯と回答できるはずもないと社長も言っていたので、彼女の中ではどこか確信めいたものがあったに違いない。そして、孫悟飯がセルを倒したと知った時、ものすごく嬉しそうにしていた。

 おそらく彼女がカプセルコーポレーションに入ったのも、何かしら孫悟飯と接点を持ちたかったからではないだろうか。世界の大企業に入れば、孫悟飯の情報を持っているのではないかと考えたのではないか。

 

「……違ったら、ごめんなさい」

「いえ、そうなんです。私、悟飯君のことがずっと好きで、彼に会いたくて西の都にきたんです」

「彼が西の都にいるって知ってたんですか?」

「カプセルコーポレーション周辺で、空を飛ぶ人間があちこちで目撃されているという噂を聞いたんです。孫悟飯君もあの時空を飛んでいたから、きっとそこにいるんじゃないかなって思って……」

 

 恋する乙女のような表情を浮かべながらビールを口に含む。何て行動力だ。俺は感心しながらあわせて注文した枝豆を放り込む。

 

「孫悟飯君との出会いについて、聞いてもいいですか?」

「出会いだなんて、そんな大したものじゃないですけど……会ったのは、私がチャズケ村に住んでいた時でした。私がリンゴを取ろうと思って川に落ちちゃったところを助けてくれたんです」

「命の恩人だったんですね」

 

 ええと、頬をわずかに赤らめなら語る。決してビールのせいではないだろう。

 

「それに、私だけじゃなくて、おじいちゃんも助けてくれたんです」

「お祖父さんって、確か武道家って言ってましたよね? 当時孫悟飯さんとセルゲームに出ていて、助けてくれたとか?」

「違います。村で一緒に住んでた時です。当時、セルゲームの開催告知があった直後で、世界中がパニックになっていた時期でした。うちの村では、都会の大金持ちがこっちに来て、私たち村人にシェルター建設を命じていたんです」

 

 セルは、セルゲームに戦士たちが敗北したら、全世界の人間を皆殺しにすると宣言した。田舎であればターゲットにされにくいだろうという考えで、当時都会から離れようとする動きが活発だった。しかし、ひどい交通渋滞で中々移動できず、結局俺たちの家族は地下シェルターを高額で購入することとなったのだった。今にして思えば、セルは人知を超えた力を持っているのだから無駄な抵抗でしかなかったのだが、当時は必至だったのだ。

 

「でも、私のおじいちゃんは武道家なんですが、もはやセルに勝てるものは一人もいないと悟っていたし、シェルターなんかでセルから身を守れないと思っていたので、私たちはシェルター建設に協力しませんでした。それにしびれを切らした大金持ちの一味は、私たちに無理やり建設作業に協力させようと、殺し屋を雇ったんです」

「……まじか」

「おじいちゃんは拒否をし、殺し屋と戦いました。でも、その殺し屋はとんでもなく強くて、おじいちゃんが殺されそうになったんです。そんな時、村を訪れていた悟飯君が助けてくれました」

 

 そういうことだったのか。一家の恩人とあらば、惚れない方が不自然だ。

 

「悟飯君はそのあと、手からビームを出してシェルターを簡単に破壊しちゃいました。だから私、ああいう力のことに関しては、ベンさんより先輩なんですよ」

 

 そう言ってふふんと胸を張り、俺はくすっと笑ってしまう。

 

「後でおじいちゃんが言っていました。セルを倒してくれるのは、サタンじゃない。あの子供かその親だって。だから、セルが倒されたって知った時、悟飯君がやってくれたんだって思ったんです」

「そうだったんですね……せめてお礼は俺からも、彼に伝えたいですね」

「ええ。だから、ここに配属できたことは、すごくうれしいんです。きっと悟飯君に会うこともできるでしょうから」

 

 そう言って彼女はビールを飲みきり、お代わりを頼む。そして、ちょっとだけ意地悪そうな笑みを浮かべた。

 

「そういうベンさんは、今好きな人とかいるんですか?」

「え?」

「私の好きな人の話をしたんだから、ベンさんだってするべきです!」

「いや、俺好きな人なんていないですよ……もっぱら就活に夢中だったし」

「ふーん、でも、元カノとかいるんじゃないんですか?」

「……いないですよ。生まれてこの方彼女なんてできたことないし、俺そもそも女の子と二人で飲むのだって初めてなんですよ」

 

 ライムさんはえっとびっくりした表情を見せる。悪かったな、俺はがり勉で恋愛はまったくもって経験ないんだよ。

 

「すみません、結構意外で……ベンさん顔もかっこいいし、頭いいからモテるかなって……」

「都会じゃそういうのは流行らないんです。ライムさんだってモテそうな感じしますよ」

「私だって田舎すぎて相手にされませんでしたよ。孫悟飯さんに会いたいってずっと思ってたんですが、もう彼女さんがいるのなら難しいですね……しかも相手はミスター・サタンの娘さんか、絶対勝ち目ないですよ」

 俺は誰かに聞かれていないかあたりを見回して、そうですねと相槌を打つ。社長の交友関係の話は外でするなとキャシーから釘を刺されていたのでヒヤッとしたが、ウィークデーの夜の喧騒の中に消えているはずだ。

 

「ていうか、ベンさん、思ったんですけどもう敬語やめません?」

「え?」

「だって、私たち同期だし、恋バナチックな話もしてますし、いろんな世界の秘密、持ってるじゃないですか」

「……確かに、馬鹿らしくなってきた」

 

 もう正直俺たちは同期として来年の4月から就職することが決まっているのだ。よそよそしい関係を続ける意味はもうないだろう。

 

「わかったよ、ライムさん。4月からよろしく」

「さん付けもいらないよ、ベン。こちらこそよろしくね」

「オッケー、ライム。孫悟飯さんに会えるといいね」

「うん、孫悟飯さんに会って、お礼を言うのが私の当面の目標かな!」

 

 砕けた雰囲気になったところで、俺たちは再び乾杯した。

 これは、来年4月が楽しみだ。

 

 

 

 年月が経ち、エイジ776年4月1日。

いよいよ俺たちは、カプセルコーポレーションの入社式に臨んだ。ちなみに入社式は、カプセルコーポレーション本社ではなく、新設ビルの方だ。

 俺たち、カプセルコーポレーション社長秘書室以外にも同期がおり、その数なんと100人ほどだ。事務職以外にも、食品部門やカプセル部門など様々な職種の人間がそろっており、さすが世界一の大企業だなと感心する。しかし、俺たちは機密保持を理由に、あまり彼らとかかわる機会もないんだろうなと思うと、ちょっとだけさみしかったりする。

 社長の挨拶も終わり、入社式が終了すると、早速俺たちはカプセルコーポレーション本社の社長室に向かう。これからブルマ社長直々に配属の発表があるためだ。

 

「え~、入社式お疲れさまでした。今回、社長秘書室に入る新人はライムさんとベン君の二人だけ。まあ、大体毎年そんなもんだけど、とりあえずチャチャっと配属伝えるわね」

 

 ブルマ社長はタブレット端末から俺たちの端末にデータを送った。そこに配属が記されている。俺の配属は……パーティー調整班と書かれていた。ライムさんの方は、開発班と書かれてある。

 

「じゃあ、業務内容について説明するわね。パーティー調整班の主な業務内容は、アタシの仲間たちが出席するパーティーの調整よ。いわゆるプライベートのパーティーね。変な連中が多いから大変だろうけど頑張ってね」

 

 あのガイドブックに載っていた連中が出席するパーティーのセッティングか。確かにある意味うちの会社内でしかできないことだろう。

 

「次にメンテナンス・開発班だけど、この建物の設備のメンテや、まだ表には出せていない新商品の開発などの補助をしてもらうの。ガイドブックに書いてあった、重力室や宇宙船やタイムマシンとかね」

 

 確かにガイドブックには、地球の300倍の重力空間でトレーニングできる重力室や、過去と未来を行き来できるタイムマシン、そして4000万光年かかる距離をたった7日で行けてしまう宇宙船の存在が記されていたが、それ関係のメンテナンスや開発を行うのか。はっきり言って、俺たちのような若者に任せていい代物ではないが、この社長の価値観はすでにぶっ壊れている。

 

「それじゃあ、細かいことはここにいる先輩に色々聞いてね。じゃあ、これからよろしくね!」

 

 そう言ってブルマ社長は颯爽と部屋を出て行ってしまった。

 

「よし、ベンというのは君だな。早速俺たちのオフィスに行くぞ。俺の名前はケリーだ。よろしくな」

 

 ケリーと名乗った赤髪の180センチの男性は、俺の肩にポンと手を置き、ニカっと笑う。俺より10センチくらい背が高く、ガタイも大きい。これは頼りになりそうな先輩だ。

 

「貴方がライムちゃんね。よろしく。私はステイシーよ」

「ライムです、よろしくお願いします」

 

 ライムに話しかけてきた、ステイシーと名乗る女性は、反対にライムより小柄だった。眼鏡をかけた金髪のミディアムヘアで、かわいい感じの印象を受ける。

 これからそれぞれのオフィスで研修を受けることになり、俺たちは社長室から出る。

 さあ、いよいよ、初日の始まりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




自分が社会人になった時、こんな感じだったなあというのを思い出しながら書いてます。
すでに特別待遇感のある同期の姿を見せられる同期ってたまったものじゃないと思いますが、まあブルマらしいですね。
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