カプセルコーポレーションに入社します! 作:ドッカン太郎
DAIMA面白かったですね!!スパキンゼロもやばいくらい面白いです!
「えー、ベン豪華客船に乗るの!?」
「そう、社長の誕生日パーティーでね」
「いいなあ……私も乗りたかったよ」
お昼休み。
社長秘書室の従業員専用の休憩室で、俺はライムにクルーズ旅行をすることを報告した。もっとも、仕事としてだし、クルーズ旅行自体をセッティングしなきゃいけないのでまだ確定事項じゃないのだが。
だから、その苦労を多少なりとも理解してくれる同胞のライムからは、羨望と合わせて同情もしてくれるので非常に助かっている。
「でもライム、お昼食べたら新本社行くんだよね? 予算増額交渉をしに行くの?」
「そうなんだよ……そろそろ2年目だから予算交渉をやってくれって話でさ」
「たしか新本社の予算交渉の担当に同期いたよね? カリーキュくんだっけ」
「ああ、いたいた。でも俺同期会とかであんまり話したことないんだよなあ」
実は入社して1ヶ月程度経った頃、同期会が開催された。新本社にいる同期が中心になって開催され、俺たちも招待された。だが、すでに新本社の方でコミュニティができていたこと、そしてあまりに多すぎる部外秘のせいでほとんど仕事に関する話もできなかったこともあって結局輪に入ることができず、「本社勤務のよくわからない奴ら」というレッテルを貼られてしまった。そこからは、当然誘われることはなかった。
カリーキュくんとは、俺たちの同期で新本社で会計担当として配属された。案件の予算を出してもらうにはまず、彼が窓口となるので、優秀じゃなければ務まらない。少しだけしか話さなかったが、非常にロジカルシンキングな話し方で、的確に自身の意見を述べるタイプだったので印象に残っている。
「まあでも、少しは仲良くなっとかなきゃなあ……なんとか頑張るわ」
「うん、私も応援してる!」
ライムからの、心強い応援を受け、俺はいざ新本社へと向かった。
今回、ケリーさんやレベッカさんは同行しない。ブルマ社長の誕生パーティーの出し物や出店の手配などで忙しいからだ。正直若手のうちから予算交渉という大役を任せてもらえるのはありがたいが、人手不足という実情があるため、能力を評価されて、というよりかは仕方がないからこいつにやらせようという感じが伝わるので、あんまり喜べない。むしろ、何かあったらすべて自分の力で何とかしなければいけない状況に追い込まれている分きつい。
まあどうしても予算部がゴーサイン出さなかったら最悪ブルマ社長を呼べばなんとかなるとケリーさんに言われている。いざというときはそれでなんとか切り抜けられるだろうと思い、俺はネクタイをキュッと締めたのだった。
「だめに決まってます、ベンさん」
資料を提出して開口一番これだった。
丸メガネをくいっと上げ、そこから俺を睨んできた。
「なんでただのパーティーで10億ゼニー相当のお金がかかるんですか?しかも取引先が一切参加していない。ミスター・サタン一家が参加されるというところで、まあ関係性の強化を理由として主張してきたのはわかりますが、どう考えてもここまでのコストをかける理由はありません。ただ我が社のお金をばら撒いているだけではないですか?」
正論すぎるし実際そうだからマジで返せる言葉がない。ブルマ社長から、社長室で「誕生日パーティーをパーッとやりたいわ。予算は10億くらいでね」なんて言われているので、お金をばらまきたいのかといわれたらそうですとしか言えない。
「だ、だけど社長の誕生日なんだしこれくらいかけるのは当然だと思います。昨年だって、5億ゼニーでやってたし……」
「だとしても倍増はおかしいです。せめて去年と同規模の金額に抑えることはできませんか? 第一、提供される飲食物だけで2億ゼニーって何ですか? 参加者に対して明らかに釣り合っていないです。そこの数字は去年から変わっていないようですが、減らす努力はしているのでしょうか?」
だって一人で50人前以上食べるような人間が少なくとも5人以上いるからしょうがないでしょ、と言えないのが非常につらい。というかそういったところで信じてもらえるわけもない。この前テレビで見たフードファイター選手権で1位をとった選手ですら20人前程度だったので、いかにサイヤ人の胃袋はとんでもないということなのだが、それを理解できる人間はこの場所にはいない。
「とりあえず、まずは予算を見直してください。10億円かけるのはあまりにおかしいので、5億円以内に頑張って収めてからまた来てください」
俺は何か抗議しようと口を開いたが、それでは次の審査案件があるのでとぴしゃりといわれ、そのまま背を向けて去ってしまった。仮にも一応同期だから何とか融通利かせてくれよと内心思ったが、そんなことを言ったところで、逆上させるだけだと思い、俺はすごすごと引き下がった。
「そうか、5億円以内かぁ。このクルーズをなくせばいけそうなんだけど、こだわってそうなんだよな社長」
調整班にとりあえず事の次第を報告すると、うーんとケリーさんとレベッカさんは唸り始めた。
「まあ、予算部のいうことは正論っちゃ正論よね。たかだかただの誕生日パーティーに10億のコストかけないわよ普通。やるなら社長のポケットマネーでやるべきじゃないって」
「それはマジでそうだが、社長、全部技術開発にポケットマネーを使っちゃうから、パーティー関連は全部会社の金でやるタイプなんだよな」
確かにそうだ。ブルマ社長は数々の発明品を開発し、世に送り出しているが、世間一般的には実用性がないものまで開発している。例えば、ドラゴンボールを探すドラゴンレーダーや重力室、あとは最近時空を行き来できるタイムマシンまでも極秘に作っているようだ(「未来の私の息子に会いたいから」という私的な理由で)。しかしこれらのものを当然一般発売できるわけもないので、利益を生むはずもなく、絶対に予算は通らない。故に会社の利益にならないものは極力ブルマ社長のポケットマネーで作るようにしている(それでも足りない時は会社のお金でどうにか理由をつけて予算を下ろしているようだが)のだが、これらの開発コストは正直とんでもないものなので、パーティーとかはどうしても会社のお金でやらざるを得ない、という状況なのだ。
「とりあえずベン君お疲れさま。2年目でこんな難しい案件をやってくれてありがとう。予算部からはとりあえず5億円以内に抑えてほしいと指示が来たことを、社長に報告しに行くよ。ベン君も一緒に来てくれるかい?」
チーフリーダーのスカットさんが俺の肩をポンと叩くと、一緒に社長室へ向かった。そして俺から事の次第を説明すると、えーっ!と叫びながら、タブレット端末から目線を俺に移し、睨みつけた。
「アタシの誕生日パーティーの予算が下りなかったですって!? アタシ今月タイムマシン作ったりベジータのトレーニングロボのアップデートだったりでお金ないってのに……」
「申し訳ありません……予算部から10億円は高すぎるのでせめて去年と同じ5億円にしてほしいっていう要求がありまして……ここはクルーズ船をやめたり、飲料費を少しカットするなりするという方向性はいかがでしょうか」
「いやよ。この機にもう1隻くらいクルーズ確保しときたいし、飲料費なんてカットしたらあいつ等暴れだすし」
これはなかなか妥協点を見出すの難しそうだ。俺とスカット班長は若干うなだれると、いいわとブルマ社長が椅子から立ち上がる。
「アタシが直々に予算部に言って説明しに行くわ。ちなみにベン君、予算部の担当者の名前は?」
「カリーキュです」
「カリーキュか、確かベン君の同期よね。多分初めて話すけど何となく堅物のにおいがするわね。今まで私が誕生日パーティーの件で交渉しに行くなんてことなかったしね。じゃあ、今から行くからベン君、私の隣で勉強してってね。スカット、ベン君借りてっていいわよね?」
「大丈夫です。社長のそばにいる方が勉強になりますから」
今から行くのかと、社長の行動力の高さに驚かされたが、やはりこの人の胆力や精神力は尋常じゃないのは周知の事実だった。スカット班長から頑張ってというサムズアップももらい、俺は再び新本社を訪れた。
「貴方がカリーキュね」
「はい、カリーキュと申します社長。何の御用でしょうか」
「アタシの誕生日パーティーに文句つけたって聞いたけどほんと?」
「文句というより、昨年と同様に5億円までカットするようにお伝えしたまでです。いくらなんででも10億円は高すぎるかと」
「そうね、確かにただのパーティーで10億円は高いかもね。ちなみにカリーキュ君はどこが問題だと思う?」
「私としてはやはり食事代とクルーズ船が高いと感じております。食事代については人数とあまりに釣り合っていません。また、クルーズ船も資産としての購入ということであればまだ理解はできますが、それならば会社に関係のない人物を招くべきではないと思います。あくまでカプセルコーポレーションの利益になる使い方をするべきです」
予算部についた俺は早速、カリーキュ君と社長の応酬を小さな会議スペースで眺めることとなったが、こんな毅然と社長に理路整然と主張するなんてと俺は驚いてしまった。同じ2年目でなおかつ俺は社長に最も近いのに、ここまで話せない。何て優秀な奴なんだと俺が感心していると、ブルマ社長は足を組みはじめ、何かを悩むような表情を見せた。
「カリーキュ君、ありがとう。まずね、クルーズ船についてだけど、資産としての購入もそうだけど、実はこの前新しく離島を見つけてね、そこのリゾート地計画を立てているの。もしそのリゾート地が完成すれば、観光事業も新しく立ち上げられるから、それに備えてクルーズ船を購入しておくべきかなと思ってるわけ」
「予算部ではその話は把握してませんが」
「まあね、まだあたしの頭の中の話だからね。で、さっき関係ない人物を乗せるべきじゃないって言ったと思うけど、今回呼ぼうと考えているのは、そういったフィールドワークに長けた連中を含んでるの。環境への配慮とかも考慮しなきゃいけないから、新進気鋭の生物学者も同行してくれるし。それで偶然にもあたしのパーティーが近いから、どうせならやっちゃおうと思ってるのよ」
なるほど、これはうまい。
正直リゾート地計画なんて社長秘書室ですら承知していなかったので、その場しのぎの嘘っぱちの可能性もあるかもしれない。そしてそれはブルマ社長もそう思われることを承知の上で、裏を取らせないために自身の頭の中でしか話がないといってその手を封じさせた。さらにまだ新規事業計画の初期段階であるので、調査が必要だと主張したため、ただの娯楽のための10億ゼニーが、新規事業のための投資金額に成り代わってしまった。
「な、なるほど……しかし、食費はどう説明しますか? あまりに高すぎます」
カリーキュくんも社長の論理を理解し、ぐっと唇を噛み締めたが、それでも説明しきれていない食費についても負けじと噛みつく。
「食費についてはこれはほんとに言う通りよ。人数と全く釣り合ってないから、別の用途に使うためにお金をごまかしているんじゃないかという疑問にもなるから、疑って当然ね。でもね、これは本当にこのくらい必要なの。アタシの旦那はその、フードファイターでさ、しかも息子も平気でフードファイター並みに食べるのよ。んで、旦那の友人っていうより、戦友?みたいなのも3人くらいいてそいつらもすっごく食べちゃうの。だからこればっかりはどうしても減らせないわねえ。もしどうしてもというなら後で食材購入のレシートを見せるわ」
「しかしパーティーで必ずお腹いっぱいになる必要はないのではないでしょうか。軽食程度の量で事足りるはずですので、もっと減らせるかと存じます」
「軽食でこの金額なのよ!頑張って頑張って減らしたのよ。だからこれはもうどうしようもないの!」
「軽食であれば1人前程度でいいでしょう!大食い大会でもないのに食べなきゃ我慢ができない方たちということであれば、いっそその方たちを招待しなければいいのではないでしょうか!我がカプセルコーポレーションの不利益になりうる存在です!」
瞬間、空気は一瞬にして張り詰め、予算部のほかのメンバーの目線が一瞬にしてこちらへとむけられた。
その刹那、カリーキュ君の顔が強張る。己がどれほどの失言をしてしまったのかを悟ったのだろう。しかし、もう遅かった。この会社における絶対強者の虎の尾を踏んでしまったのだから。俺はせめてもの情けで顔を背ける。
「なに、じゃあアンタは、あたしの旦那は会社にとって不利益な存在だっていいたいの?」
「い、いえそんなつもりは……」
カリーキュくんは必死に取り繕い、事態の収拾に図るも、もはや遅い。この社長は怒ったら、その火が消えることはない。
「社会人なんだから、自分の言動に責任を持ちなさい。アタシの旦那や息子は、アタシの会社にとって不要と言いたいわけ?」
「ち、違います! 私はただ、コストがかかりすぎるのではと指摘しただけで……」
「へぇ、なら旦那と息子に言ってみようかしら。あんたたち金食い虫だから来るなって若手職員に言われたから、悪いけど来ないでねって。息子の方はもうね、すっごく楽しみにしてたから、恐竜のように暴れるでしょうけど、それを抑えられる自信はあたしにはないわね。だから悪いけどカリーキュくんそう言ってもらえない?」
「……言い過ぎてしまいました。大変申し訳ございません」
「とりあえず、ベンくんが提案した案で文句ないかしら? カリーキュくん」
「……はい」
カリーキュくんは目線を上げず、肯定する。そしてその言葉を聞いたブルマ社長は、わざとらしいまでの笑顔を浮かべて、よかったわーと高い声をあげた。
「じゃ、これで予算よろしくね。それじゃ」
そして背を向けてエレベーターホールへと向かったので、俺もそそくさとあとをついていく。予算部のドアを閉める際、カリーキュくんの顔を見つめる。彼はこの世の終わりのような表情を浮かべ、大粒の涙を零さないように堪えるので精一杯の様子だった。俺はその姿を見て、ひどく胸が苦しくなり、気づいたら彼のもとに駆け出していた。
「あれ、ベンくん?」
「すみません、先にお戻りください!」
「いえ、待ってるわよ。どーせちょっとだけでしょ?」
「すみません、ありがとうございます!」
先程まで般若のような表情を浮かべていたのに俺と話すときはにこやかなのが少し恐怖を感じたが、そんなことは置いておき、俺はすぐさまカリーキュくんの隣に急いだ。
「カリーキュくん、今日定時後新本社のエントランスで待っててくれ」
彼は一瞬驚いた表情で俺を見上げるが、俺はそそくさに予算部を出た。
***
「カリーキュくん、何食べる? 好きなもの食べなよ。今日は俺が奢るよ」
「……ありがとうございます。だけどちょっと食欲がないんです」
会社の業務をなんとか定時で終わらせ、俺たちは会社の近くの格安の海鮮居酒屋に来ていた。しかしカリーキュくんは先ほどよりかは落ち着いたけれど、声のトーンは明らかに落ちており、俺と目線は一生合わない。
「そっか、じゃあとりあえず俺頼んじゃうわ。飲み物はビールでいいか」
「僕はウーロン茶でお願いします」
「おっけ、わかった。すみませーん」
程なくして店員さんが現れ、俺は飲み物と適当なツマミを注文し、その後ビールとウーロン茶が届いた。とりあえず軽く乾杯をして、ちびちびビールを口に含む。
「なあ、カリーキュくん。そういやカリーキュくんの趣味ってなに?」
「……読書です」
「へー、最近なんの本読んだの? 小説?」
「いえ、ビジネス書です」
「へー、俺そういうのあんまり読まないんだよな。どういうのがおすすめ?」
「なんでもいいとおもいます」
「そ、そっか。俺漫画しか読まないからなあ。カリーキュくん漫画とかは読まないの?」
「はい」
「……なるほどね」
痛い沈黙が続く。考えてみれば、カリーキュくんは話がそこまで得意な方じゃなかったし、俺もそこまで口が上手いわけじゃない。だから、サシで飲むとこういう感じで会話が盛り上がらないのは自明の理だった。俺は飲みに誘ったのを少しだけ後悔し始めた。とにかく何か別の話題がないかどうか模索していると、カリーキュくんが口を開く。
「どうして、今日飲みに誘ったんですか? こんな口下手な僕と飲んだって楽しくはないでしょ?」
彼は鬱陶しそうに俺を睨みながら返す。俺はビールを口に含んで、そんなことはないよとごまかしたが、彼の険しい表情は変わらなかった。
「僕は昔から、理屈っぽいし硬いし、笑わないしで堅物扱いされてきました。それだから、別につまんないと思われてもいいですよ。昔から友達なんていませんでしたし」
「でも同期会とかは顔出してたじゃないか」
「あれはあくまで仕事ですよ。僕だけ行かないってのも変ですし、同期の顔を覚えておけば仕事をするうえで役に立つと思ってるまでです」
「じゃあなんだ、お前同期と別に仲良くなりたいとかそういう気持ちはないってことか?」
「はい、別に仕事上の付き合いですしね」
ああ、なるほど。こいつ多分悪いやつじゃないんだ。だけど、思ったことをそのまま言っちゃうから、敵を作っちゃうんだ。
俺はなんだかおかしくなり、ふっと笑った。
「なんかおかしいことでもいいました?」
「……お前、ブルマ社長にそっくりだな」
「……はぁ? どういうことです?」
彼の堅苦しい表情が崩れ、疑惑に満ちていく。
「だって、思ったことそのまま言うじゃん。社長もそうだよ。あの人はオブラートに包むことなんてしない。やりたいって思ったことはやりたいってはっきり言うし、相手への悪口もガンガン言っちゃうんだ。そういう意味じゃ、非常にそっくりだよ」
「……そうなんですかね。そうは思えませんけど」
「そうだよ。だって社長が言ってたんだもの」
すると彼はえっと彼の中で一番大きな声を出して驚いてみせた。
「今日あんな事があっただろ? それでその後オレ社長室に行ったんだけどさ、社長ワイン飲みながら、『あの子はあたしによく似てるわね~。まあ弁は立たないけど、社長に真っ向から意見できる人材は必要だからね。あたしはああいう性格嫌いじゃないわよ』って言ってたんだ。だから社長は、お前を評価してるんだよ」
これは俺の作り話でもなんでもなく本当に社長はそう言っていた。俺がカリーキュくんを飲みに誘った際、社長もそれを察していたようで、社長室に戻った際にカリーキュくんを評価する発言があったのだ。今から思うと、実際、社長の話を聞いて、確かにそこは似てるなあと納得した。
「……そうなんですね、よかった……」
カリーキュくんの瞳から涙がにじみ出ている。そりゃそうだ。会社のトップにあんだけ怒られれば、不安で不安で仕方なくなる。だから俺は、彼を励ましたくて、今日飲み会に誘ったのだ。
しかし、社長は俺が薄っぺらい言葉で彼を励ますであろうことを予測して、実に強力な材料を提供してくれた。改めて社員のマインドコントロールがうまいなあと実感してしまう。
「俺さ、今日カリーキュくんと飲みに行けて楽しかったよ。さっきお前は同期とあんまり関わりたくないって言ってたけどさ、俺とは仲良くしてくれると嬉しいな」
そう言って俺は、彼にフライドポテトを差し出す。カリーキュくんはじっとポテトを見つめ、その後フォークを手に取った。
「……ベンくんとは色々今後お世話になるでしょうし、これからもよろしくお願いします」
「あはは、よろしくね。硬いから、敬語いらないよ」
「いや、なんか敬語は正直癖になっちゃってるので、敬語のままのほうが楽なんですよ」
「そっか、じゃあそのままでいいよ。とりあえず食べようぜ、ポテト美味しいよ」
そういって、俺たちは揚げたてのポテトをつまみ、口に入れた。どうせ業務用のスーパーで買った冷凍のポテトを揚げただけなんだろうけど、なんとなくすごく美味しく感じた。
今度、ライムさんも誘って3人で飲みに行こうかな。そう思いながら俺は居酒屋の天井を見上げたのだった。
***
「それでは、ブルマさんの誕生日を祝って、カンパーイ!」
「カンパーイ!!」
乾杯の合図とともに、ブルマ社長の船上バースデーパーティーが始まった。皆がグラスを掲げ、談笑を始めていく。俺は正直ウェイター係として裏で控えているだけなので、そこまでパーティー気分じゃないのだが、楽しそうな会話を聞いているとこっちまで楽しくなってくる。もちろん、カヤンさん含む料理班のヘルプもしているので、気は抜けないのだが。
しかし、人生初のクルーズが、仕事とは言え世界一の大企業が所有する船でできるということは本当に栄誉なことだ。カリーキュくんやライムさんからも羨望のメッセージが届いたが、彼らにいいお土産話ができそうだ。
しかし、俺はこのとき知らなかった。
地球存亡の危機が、もうすぐそこまで迫っているということを。