カプセルコーポレーションに入社します!   作:ドッカン太郎

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更新が遅れてしまいました。
だいぶ環境も変わり、色々バタバタしていたので。。。
神と神ですが、映画版とアニメ版の要素をごちゃ混ぜにしています!


破壊神

 

 

 俺はこのカプセルコーポレーションで様々な摩訶不思議に出会ってきた。空を飛んだり手からビームを出したり、何でも願いを叶える秘宝や宇宙人の存在を知ったり等。だからもう何が来ても驚かない自信があった。もちろん、船上バースデーパーティーの豪華さに、眉一つ動かない、なんてことはなかったのだが。

 けれど、俺はこの日さらなる摩訶不思議に出会う。ブルマ社長の誕生日パーティーに突如、謎の二人組が来たことから、この騒動が始まったのだった。

 

「あら、この人たちはあなたのお知り合い?」

「い、いや、これは……!」

「あたしはブルマ。ベジータの美人妻よ」

「「こんにちは、ブルマさん」」

 

 ブルマ社長からお声がけがあり、二人は急遽ブルマ社長の誕生日パーティーに招かれることとなった。しかし、珍しくベジータさんが狼狽えていた。

 一人はウサギのように長い耳を持ち、濃いグレーの皮膚をした猫のような男でビルスと名乗り、もうひとりはその猫のような男よりも身長が高く、大きな魔法の杖のようなものを所持している。彼はウイスと名乗ったが、どこか上品さを感じさせる佇まいだ。

 どう見ても地球上の生き物じゃないが、どうやら彼らはベジータさんのお知り合いらしいということで、参加者たちは何も奇異の目線を向けることなく歓迎した。そして途中に行われた同じく飛び入り参加したちびっ子3人組が銃を使った人質ごっこ(人質役がトランクスさんなのでみんな本気にしていなかった)で盛り上がったが、一番度肝を抜かれたイベントはビンゴ大会だった。

 

「おい、お前ら! 余興はこれでおしまいだ! 楽しいビンゴ大会の、始まり始まり〜〜!!」

 

 突如ステージに飛び上がったベジータさんが軽快に叫び、サルサ風のBGMに合わせて踊り始めたのだった。

 

「楽しいビンゴ! 楽しいビンゴ、ヘイッ!!」

 

 正直、あの場にいた全員が固まっていたと思う。誰もが知るあの厳格でプライドが高いベジータさんではなかったので、困惑しか無かった。しかし、意外な一面が見れたということと景品がドラゴンボールということでパーティーはさらなる盛り上がりを見せたのだった。まあ、そのせいで料理の注文が増え、料理班たちの怒号がさらに大きくなったのだが。

 

「あの人たち、何者なんでしょうね」

 ピーク時間を過ぎ、俺とレベッカさんが休憩をもらっていた。余り物のピザを食べながら、俺はレベッカさんに質問する。

 

「さあ、旦那さんのお知り合いってことしかわかんないね。でも、あの旦那さん、妙にペコペコしている気がするんだけど……」

「たしかに……あのベジータさんがペコペコするってなかなかレアですね。というか、あの人がダンスしたりたこ焼きを作るなんて、もう一生見れないですね」

「まったくだ……あんなのどこで習得したんだか。でも、全くもってあの人らしくない行動をしているから、そうさせているあの二人が怖くなるね……」

 

 確かに、神にさえ謙らないあのベジータさんが楽しいビンゴ!と叫んだり、ダイナミックにたこ焼きを作ったりと積極的に振る舞っている姿は違和感あるし、来訪者2人に対してあそこまで低姿勢なのは違和感がある。彼らの機嫌を損ねたらどうなるか、彼だけが嫌と言うほど熟知しているかのようだった。

 そして、機嫌を損ねた結果は不幸にもすぐ見ることになってしまった。どうやら、ビルスがプリンを食べたかったのに、ゲストの魔人ブウに独占されてしまったのだ。

 

「よこせ、このバカもの!」

「バカっていったな、オマエお菓子にしてたべちゃうぞ!」

「……完全にキレたぞーー!!!!」

 

 ビルスが絶叫したことで、誕生日ムードが一気に崩れた。慌てたベジータさんが飛び出したが、孫悟飯さんやピッコロさんなどの超戦士たちの抵抗によりさらに激昂し、もはやベジータさんでも止められない事態へと悪化する。ビルスは彼らの必死の抵抗をまるで退屈そうな遊びを拒否するかのように冷たくあしらっており、素人目から見ても力の差は歴然だった。だから俺はただ、物陰でその様子を震えて眺めているしか無かった。

 

「ちょっとあんた! 何やってんのよ! ベジータの知り合いだか何だか知らないけどさっ! あたしの38歳のバースデーが台無しじゃないの!」

 

 そんな最中、ブルマ社長がビルスに啖呵を切る。俺たちだけでなくビルスに倒されたベジータさんたちも驚愕しており、ベジータさんはよせというが、社長は止まらず、ビルスにビンタをした。ビルスはそれに腹を立てたのか、首に手刀を浴びせた。

 

「なっ……よ、よくも俺の、俺の……ブルマをーーーーー!!!!」

 

 ま、まじか。ここでキレる人だったのかこの人。

 夫婦仲がいいという話は聞いたことなかったが、ちゃんと家族愛はあったのかこの人に、と場違いな感想を抱いてしまったが、ベジータさんは怒りによってすさまじい力を発揮したようで、ビルスをひるませていく。

 だが、やはり力の差は歴然だったようで、数分もたたずしてベジータさんは再び力尽きてしまう。

 

「な、なんだあの化け物……あの孫悟飯さんやベジータさんですら止められないなんて……レベッカさん」

 

 俺は避難しようとレベッカさんを呼びかけたが、俺の側にはもういなかった。彼女は、空席になったテーブルに置かれている空いた皿やグラスを片付けていた。

 

「な、何やってるんですか! そんなことやってる場合じゃーー」

「逃げれるもんなら逃げればいいだろ、ベン。舞空術も使えないあたしらにはどうしようもないって分かんないのか?」

「……っ、でも、今こんなことしたって意味ないですよ! 誰も飯なんて食べてないですし……」

「いるだろ、そこに」

 

 そういうと、レベッカさんは俺の後ろにある寿司屋台を指差していた。そこには、ウイスと名乗る来訪者が一人、寿司を堪能していた。そこには料理班のスタッフが一人で対応していた。

 

「あいつ、料理班のベテランでさ、ずっとブルマ社長に寿司を握り続けてる職人なんだよ。あんな状況だってのに、全然怯えるどころか、いつも通り寿司握ってるんだ」

 

 俺は、その寿司職人の顔を見た。彼は汗一つかかず、ウイスに寿司を一生懸命握り、もてなしている。空中で空気をも揺らす激しい戦闘が行われているにも関わらずだ。

 

「ベン。社長秘書室に入っているってのはそういうことだ。私たちはある意味、常に命の危険にさらされているし、常に自分ひとりではどうしようもない状況に出くわしているんだ」

 

 俺は必死の抵抗むなしく地面に横たわっているベジータさんら超戦士たちの姿を見る。彼らですらこうなのだ。俺が騒いだところでどうしようもない。

 

「……そうですね。軍隊並みの力を持ってる人達に囲まれるって、そういうことですもんね。だから、俺がぎゃあぎゃあ言ってても、仕方ないってことですね」

「そういうことだ。とはいえ、戦う必要はないんだ。ただひとつ、信じればいい」

 

 レベッカさんは、額から冷や汗を流しながらも笑って振り向く。

 

「社長の友人やベジータさんを、信じないと私たちは生き残れないんだ」

 

 そう言って、彼女は料理班が奮闘しているキッチンへと向かった。

 考えてみれば、レベッカさんの言う通りだ。あんな超戦士たちを圧倒する奴らに対して、できることなんてない。逃げたところで消し炭にされるだけだ。どこへ逃げたって一緒なら、せめて彼らを信じて、自分の仕事をする。そのほうがよほど有意義ということだ。

 俺は激闘が繰り広げられている場面に背を向けて、空いたお皿を手に取り、キッチンへと向かおうとした。

 

 だが、その瞬間。空が急に暗くなった。

 

「ーーえ?」

 

 あれだけ幸運に恵まれたかのような青空だったのに、急に嵐の前触れかのように空が暗くなる。まるで急に夜になったのかなと錯覚させるほどだったが、腕につけている時計の時刻は明確に昼の時間を示している。

 そうだ、この現象は研修のときに教えてもらった。暗くなるのは地球上に存在する7つの秘宝が集いしとき、呼び出される龍が現れる兆候なのだ。

 果たして、天を穿つほどの光が、船から放たれる。やがてその光は曲線を描き、蛹から蝶が生まれるように光がほどけ、緑色の龍が姿を現した。

 

「あれが、神龍……」

「そうか、ベンは初めてか……」

「はい……こんなに大きいんですね……」

 

 神龍を見て、時々世界が一瞬だけ光を失い、昼間なのに真っ暗になることがあったのを思い出す。その時は、西の都に住む人々がいうように、カプセルコーポレーションの実験によるものだと思っていたが、実はその現象によって世界は幾度も救われていたのだと思うと、感慨深いものがある。そして、今回も再び世界を救うべく、龍が現れたのだった。

 

 神龍と社長の仲間たちとのやり取りは、俺たちがいる側からはよく聞こえない。ただ、空が明るくなり、しばらくすると、突風が船を揺らし始めた。腕で顔をかばいながら覗き見ると、神々しい赤い炎が船上で燃えていた。その炎の中に、社長の古くからの友人であり、地球の希望の象徴である孫悟空さんがいた。あんな姿は初めて見たが、おそらく神龍の力によって強化されたのだろうか。どちらにしても、この絶望的な状況をひっくり返す可能性が生まれたということには違いない。

 孫悟空さんは赤い炎をまといながら早速ビルスへと特攻し、船から引きなはすように吹っ飛ばす。その後負けじとビルスも孫悟空さんへ殴り飛ばす。互角の勝負を繰り広げ、空気の振動が先ほどよりも小刻みに、しかし激しくなっていく。二人はやがて大きく上空へと昇っていき、俺たちの目からは見えなくなっていた。しばらくすると、あれほど激しく船を揺らしていた振動がなくなり、船の周囲は静寂を取り戻す。

 

「大丈夫だ、孫悟空さんならやってくれる。俺にできることは、信じることだ」

 

 俺はレベッカさんの言葉を反芻し、戦場であるキッチンへと戻っていった。

 

 空いたお皿が片付き、いつの間にか寿司屋からウィスがいなくなったので、船に残された残りの参加者にドリンクを渡したりしていると、30分ほど時間が経過していた。ふと空を見上げると、孫悟空さんの首根っこをつかんでビルスたちが空から降りてきたのだった。その姿を見て、仲間たちや俺たちスタッフは絶望の表情を浮かべた。

 なんせ、あの孫悟空さんが敗北したのだから。

 ビルスは冷たい表情で孫悟空さんをデッキに放り投げる。わずかに悲鳴を上げたので、死んでこそはいないが、体中はボロボロで、もはや戦える状況ではない。

 

「では、約束通り地球は破壊する」

 

 そう告げたビルスは指に小さなエネルギーをため始める。小さな、と言っても多分あれだけで地球を爆破できるほどの威力があるのだろう。

 まさかこれが地球最後の日になるのか。こんなところで俺は死ぬのか。俺は今更ながらに震えてくる。止めに入りたいところだが、はっきり言って無駄だ。もう、俺の死は確定している。

 さようなら父さん、母さん、そしてライム。あと、カリーキュくん。

 俺は目を閉じて、最後の瞬間に備える。

 

 だが、その瞬間はいつまでたっても訪れなかった。代わりに小さな破壊音が聞こえただけだ。目を開けると、なんてことはない、船の手すり部分がわずかに損壊しただけだった。

 

「おや、ビルス様ずいぶん小さな地球を破壊されましたね」

 

「ふん、残念だよ。体力がもう残ってなかったか。完全破壊はまた次の機会にしよう」

 

 その発言でもう地球を攻撃することがないと確信できた一同は皆安堵の表情を浮かべる。俺もまた、全身が脱力し、その場にへたり込んだ。

 

「悟空さん、ビルス様が死んだら次の破壊神になりませんか?」

「お、おい!」

「はは、そいつはごめんだよ」

「それは残念」

 

 俺にはこの会話の意味はよくわからないが、ビルスのことを破壊神と言っていたことから、たぶん彼は神様的な存在だったのだろう。まああれほどの力を見せているので疑いようはないし、破壊の神にはきっとふさわしい。しかし、そんな存在から後継者の候補として提案される孫悟空という人物に対して、俺は恐ろしく感じてきた。

 

「ベジータ夫人」

「え、私? ……なによ」

「騒がせて済まなかったな」

「それよりもアタシを叩いたこと謝ってよ」

「……す、すまん。……よかったらまたパーティーに呼んでくれ」

「暴れないって約束したらね」

「了解した。今度こそプリンというやつを食わせてもらうぞ」

「プールいっぱいに用意してあげるわよ。ただし、食べてからまずいなんて言わないでよ?」

「まずかったら今度こそ地球を破壊してやる」

 

 いや、やはり社長も恐ろしい。あの破壊神らしきビルスに謝罪させるだけでなく、騒動の中心人物がまたずけずけとパーティーに行きたいと言い出しても不満を顔に出さず、堂々と受け入れてしまった。やはり、我らが社長の器はとんでもなく広い。

 

「そしたらまたビルス様と戦えるな!」

 

 孫悟空さんがワクワクした表情でビルスを見つめる。ビルスは微笑みを浮かべただけでウィスとともに光をまとってその場からロケットのように上昇し去っていった。

 

 彼らが去ったあと、張り詰めていた緊張が解け、皆が息を吐き出した。とりあえず地球は救われたのだ。

 

「さて、地球が救われたし、アタシのパーティーの続きをしましょう!!まだごちそうは残ってるはずだしね! ……ベジータお手製のたこ焼きもね!」

 

 社長がそう呼びかけると歓声と怒声が船内に響き渡る。それを聞いた俺たちはすぐさまデッキの厨房に戻る。そう、これからが俺たちの本当の仕事だ。地球を救った英雄たちを労うという大事な仕事が待っているのだ。

 

 しかしふと破壊神という単語が脳裏によぎる。この先社長はビルス及びウィスと親交を深める可能性がある。そうなるとまたこういった命の危機にさらされる可能性がある。俺は、この先この会社でやっていけるのだろうか。

 いや、彼らが来る前からもそうだったはずだ。考えてみれば俺たちがどう頑張って逆立ちしても敵わない存在が身近にたくさんいて、戦いの火種になりうる要素を多数持っている。すなわち言い方は非常に悪いが、社長は人間の形をした格兵器相当の武器を複数保有しているのだ。そんな社長のそばにいて、俺は大丈夫なのだろうか。

 

「おいベン! たこ焼き持っていけ!」

 

 レベッカさんの声で現実に引き戻される。俺は今頭に浮かんだ思考を振り落とし、良くない考えから逃げるようにたこ焼きを手に取り、急いで会場に持っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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