B&T~記憶喪失の転生者、伝説級の暗殺術で異世界ディストピアをぶっ壊す~   作:五島七夫

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ソフィアの決断

「……ソフィア、大丈夫かしらね」

 

 そう声を掛けてきたのはエルだ。兵に依頼をして、エルとクラウにも駐屯地に移動してきてもらっている。今いるのは駐屯地の応接間で、机を囲むようにソファーが四つ、そのうちの一つに自分、もう一つにエル、そして大きめのソファーではクラウが横になって仮眠を取っている。

 

 先ほどの――ソフィアの一件は、まだ二人には伝えていない。原因も分からないまま適当なことを言って、変な混乱をさせたくなかったのが主な原因だ。しかしそれ以上に、やはりレムが介入してきたという事実が引っかかっており、これはあまり外聞しないほうが良い気がしていたのも理由にある。

 

 そして、ソフィアは執務室に籠り、フィリップ大佐など駐屯地で役職のある面子と今後のことを話し合っているようで、その間に自分たちは客間に通されているという流れだった。

 

「……アラン、アナタも寝たほうがいいんじゃない?」

 

 恐らく、返事をせずに考え事をしていたせいだろう。隣に座っているエルが、心配そうにこちらを覗き込んでいる。

 

「いや、大丈夫だ。ただ、少し疲れてるのかもな」

「えぇ……夜分の襲撃に、バルバロッサ壊滅の知らせ、疲れるのも無理はないわ。しかし……まさか、勇者パーティーが押されるとはね。正直、聖剣を起動させたのなら、もう安心かとタカをくくっていたわ」

「えぇっと、こういうことって、あんまりないのか?」

 

 こちらの質問に、エルは小さく頷く。

 

「聖剣を起動させた勇者の力は圧倒的……なんていうのは、まぁ伝承の話で、実物を見たことはないけれど。でも、こんな言い方するのも不謹慎かもしれないけれど、聖剣を持った勇者が居れば、あとは消化試合みたいなものなはずなのよ。勇者が降臨されるまでは人類が窮地に陥っているけど、その後は一気に巻き返す……それを、何度も繰り返してきたはずなのだけれどね」

 

 その言葉に、今までは感じなかったような違和感を覚える。魔王は何故、勇者が居ないうちにもっと攻勢に出て、人間世界を占拠しないのか? そんなお決まりの流れのようなものを、人類側も魔族側も、なぜ何度も繰り返しているのか?

 

 自分がそこまで賢い方だとは思わないが、それでもこれは異様なことだとわかる。外から見れば異常なことでも、しかしこの世界の人たちにとっては、それが常識になってしまっている。そこに強烈な違和感がある。

 

 しかし、そうなればこそ、腑に落ちる点も二つある。一つは、軍の取り乱しよう。負けるはずのない勇者が、此度ばかりは敗北した可能性がある――あくまでも拠点が潰されただけで、勇者が負けたという報告はないはずなのだが――それでも拠点が潰されること自体が想定の中になかったのだろう。

 

 もう一つは、ソフィアの推理が、やはり現実味を帯びているのではないかという点。この世界の人間と魔族だけでは、決められた十五年間、決められたように戦っているだけだった。そこに、自分のような部外者が来たとするならば、話は別だ。第三者が魔族側に入れ知恵をしているのなら、このように普段では起こりえないことも起こりえるのではないか。

 

 だが、それなら何故、レムはその対策を講じないのか。また自意識過剰かもしれないが、何故自分に特別な力を与えることもせず、この世界に放り投げたのか――いや、そもそも第三勢力自体がソフィアの想像の域をまだ出ていないことを考えれば、対策をこうじるほどでもないのかもしれない。それならなぜ自分がここにいるのか――正解も分からないまま、思考がぐるぐると周っている。

 

 そして、結局先ほどのソフィアの異変に思考が戻ってくる。あのようなことは、この世界では良くあることなのか――聞いた時点でエルには勘ぐられそうだが、少し聞いてみることにする。

 

「なぁ、エル」

「なに?」

「なんというか……同じことをうわごとのように繰り返して、心ここにあらずって感じの症状の病気とか、そういうのってあるか?」

 

 前世の感覚から言えば、狐憑きとでも言うのが近いのだろうが、エルには通用しないだろう。こちらの質問に、エルは少し思い出す様な仕草を見せ、改めてこちらに向きなおる。

 

「実際に見たことは無いけれど、話には聞いたことはある。なんでそんな質問を?」

「えぇっと……」

「……見たのね。それも、別れていた短期間で、私が見ていなくて、アナタが気にする相手なんて、一人しかいない」

 

 やはり、エルに隠し事は出来ないか。こちらも頷き返す。

 

「……あぁ、もう落ち着いたんだがな。ソフィアが、拠点陥落の報告を受けた時に」

「そう……でも、私が知っているのとは違うかも。ただ疲れが溜まっていただけじゃない?」

「うん、なんでそう思うんだ?」

「その症状が出た人は、もう普通に戻れないって聞くから」

 

 それを聞いて、自分で自分の血の気が引くのが分かる。レムは、精神がもたないと言っていた。つまり、あそこで対応していなければ、ソフィアはあの状態から戻ってこれなかったという事か。

 

「……一応、詳しく聞いていいか?」

「えぇ、知っている範囲で、だけど……その症状は、解脱症って言われている。なんでも、魂が神のもとに先立って救済されてしまって、肉体がこの世に残っている状態だとか。魂が体に無いから、ただ本能的に、一定の言葉を繰り返す……そんな感じだったと思うわ」

 

 なんなら、クラウとかのほうが詳しいと思うけれど、そう付け足された。しかし、アレが魂の救済だなんて到底思えない。

 

「……その症状、出るのに前触れとかあるのか?」

「さぁ……でも、割と偉い人とか、権力のある人がなる傾向にはあるようね。歴史上で解脱症になった学院の教授や聖職者、騎士階級はいるみたい。現世での徳が高いせいか、神に救われてしまうのかしらね?」

 

 その条件になら、ソフィアは合致すると言っていいだろう。そして、前世的な考え――別に心理や医学の知見や記憶がある訳でもないが――立場故の過剰なストレスで、精神に異常をきたすとか、そんな感じか。

 

 とはいえ、一時的な症状ならまだしも、普通に戻れないとまでは考えにくい。そもそも冷静に考えれば、この世界の住人と前世の人間では、脳や精神の構造が別物の可能性だってある。魔法がある世界なのだ、そう考えればなんだってありうる。

 

 逆に、エルの言っていたことが正しいと仮定すれば、レムが介入して収まった理由になる。つまり、神のもとに救済されそうだったのを、女神の側で拒否すれば、現世に魂が残ると言えるのだろうから。

 

 ただ、レムは「その子を救いたいか」と聞いていた。アレは、取り繕うことのない、打算なしの提案だったように思う。つまり、あの症状は、レムから見ても悪いものという判断だったからこそ、救うという言葉が出たのではないか。もし神があの子を救済してあの症状が出たのなら、引き止めたいか、とでも表現したように思う。

 

 結局、考えたところでなんの結論にも達しなかった。ただ、なんとなく、胸にざわつく不安が残るだけだった。

 

 ふと、応接間の時計から鐘の音が聞こえる。回数は五回、ただ秋の暮れという時期のせいか、まだ窓の外は暗い。そして、鐘が鳴り終わるのと同時に、応接間のドアがノックされ、ドアが少し開かれ、そこから男が顔を覗かせる。

 

「……冒険者諸君、ソフィア准将が今後の正規軍の対応を、講堂にて発表する。諸君らにも同席してほしいとのことなので、講堂に来てほしい」

「あぁ、分かった」

 

 そう男に返し、クラウを起こす。眠りは浅かったのか、すぐに目を覚ましてくれたので、そのまま三人で部屋を出る。

 

 講堂に着くと、まだ明朝というのに、かなりの数の兵たちが一堂に会していた。広さ的には、前世でいうところの体育館と同じくらい、椅子などは用意されていないので、皆一様に立ったまま、しかし勇者と最前線の基地が堕とされた影響なのか、そこかしこで兵たちが小声で話し合っているのが聞こえる。

 

 自分たち三人は、講堂の壁際に陣取り、准将の登場を待つ。最初は後ろのほうに行ったのだが、屈強な男たちの背中ばかり見えて、肝心の将軍の姿が見えなくなる可能性があったからだ。

 

 さて、待つこと数分、奥の扉からソフィアとフィリップ大佐とやらが出てくる。まず、大佐が全体に号を発すと、先ほどまでのどよめきが嘘のように静まり返り、全体が一斉に休めのポーズを取った。そして、前方中央の台にソフィアが上がる――目の下にクマが出来ているのを見る限り、相当疲れも溜まっているのだろう。

 

 だが、瞳の力は強い。マイクなどない、拡声器もない、彼女はその小さな体で、全体に彼女の決断を伝えなければならない。そして少女は大きく息を吸い、良く通る声で話し始める。

 

「皆さん、知っての通り、バルバロッサの地が落ちました。そして、今後の正規軍の対応について、私の方で取り決めたことを発表します。この決定は、王国側の許可はまだ出ていません。

 とはいえ、緊急の事態ですから、私の権限でひとまず決定されています。今後、変わる可能性があることも留意しておいてください」

 

 ソフィアはここまでは兵全体を見渡しながら話していたが、いったん切って、今度は真正面を見つめて続ける。

 

「結論から述べれば、大規模な兵をバルバロッサに派遣することはしません。何故ならば、我々は最悪のケース……勇者様なしで、魔王と戦う可能性を考慮しなければならないからです」

 

 准将の言葉に、場の空気が更に緊張したのを感じる――誰も、自分が直接魔王と戦うことなど考えていなかったから、仕方がないのだろう。だが、兵たちの練度は高いのか、今のところ皆静かに小さな将軍を見つめている。そしてそれを確認して、少女は演説を続ける。

 

「この場合、まず優先しなければならないのは、大陸との窓口であるここ、レヴァルの防衛です。レヴァルが陥落すれば、我々人類は魔族と戦うための足場を失うことになります。狂気山脈から侵入してくる魔族達に、レムリアは徐々に侵され……最後には、人間世界は破滅を迎えるでしょう」

 

 人間世界の破滅、その言葉が強すぎたせいか、今度は少しざわめきが起こった。だが、少女が大きめに咳払いをすると、場は静かに戻った。

 

「……そして、皆さんこれもご周知のとおり、レヴァルも現在、恐らく魔族による工作が行われています……昨日の夜中、私も魔族の襲撃を街中で受けました。

 これは、レヴァルの内部に魔族が侵入している証拠です。今、大規模な兵をバルバロッサに送ってしまえば、魔族の工作により、たちまちレヴァルの街は獅子身中の虫に対応できず、魔族によって破壊し尽くされてしまうでしょう。

 ですから、我々の対応として最優先でやらなければならないことは、レヴァルに巣くう魔族による驚異の排除。並びに防衛です」

 

 そこで少女は一旦言葉を切り、聴衆に対して微笑みを送った。

 

「何より、バルバロッサが陥落したことは、勇者様の敗北を意味する訳ではありません。私は、三か月間ですが、勇者様と一緒に旅をしました……勇者シンイチ様は聡明で、非常にお強いお方です。

 そして、シンイチ様をお守りするテレサ様、アガタ様、そして我が師であるディック先生は、それぞれ一騎当千の兵《つわもの》です。そして、聖剣レヴァンテインの加護があるのです。きっと勇者様は生きており……今も、再起の機を狙っているはずです」

 

 なるほど、確かに――そんな声が起こる。今まで歴史上になかった勇者の窮地に、大の大人たちが取り乱してしまっていた、というのもあるだろう。

 

 だが、そんな中、前列の聴衆の一人が手を上げた。

 

「……もし、勇者様が亡くなってしまっていた場合は、どうするのですか?」

 

 その言葉に、再び会場はざわめきたつ。少女が最初に言った最悪の場合――自分たちが、魔王に立ち向かわないといけない可能性。もちろん、軍人なのだから、ある程度の危険は承知の上だろう。正規軍は学院や貴族階級の出身者が多いと聞いているから、傭兵や冒険者に比べれば指揮や練度、道徳観に優れているだろう。

 

 それでも、魔王は勇者が倒すものとお決まりになっているのなら――そして、魔王が不死身の肉体を持って、強力な力を持っていると聞いているのなら、やはり動揺するのも無理のないことのように思える。

 

 それを見越していたのか、少女は後ろで控えていたレオ曹長から、自前の杖を受け取り、そして台に杖の底を思いっきり叩きつけた。乾いた音が鳴り響き――その音を引き金に、聴衆は再びソフィアに目を向けた。

 

「その場合は、先ほど申し上げた通り、異世界の勇者様のご助力なしで、我々は世界の脅威に立ち向かわなければなりません。勇者様の召喚には、十五の年月が必要……そこまで、我々人類は持ちません。

 元々、勇者様に関係のない世界の危機を救っていただこうとしていたのが、我々の怠慢だったのかもしれません。私たちは、私たち自身の力で、魔族に立ち向かわなければならない……そんな時が来たという、神の啓示なのかもしれません……ですが……!」

 

 そこで少女は杖を頭の上で振り回し、再び底で台を叩いて見せた。その様は可憐でありながら勇ましく、華奢でありながら剛毅であり――聴衆の気を引き付けるのに十分だった。

 

「私たちには、偉大なる七柱の創造神の加護があります! そして、このソフィア・オーウェルが、魔族を断つ剣となり、人類を護る盾となります!

 この命燃え尽きるまで、誰よりも前で人類解放のための旗を振り、誰よりも多く魔族と戦い続けると誓います!!」

 

 その声は、講堂を震わせるのではないかと思うくらい、強く美しく響いた。皆、息をのんで少女を見守っている――そしてソフィア・オーウェルは、勇ましい顔から一変、はにかむような笑顔で左の手を差し伸べ、兵たちに向き合った。

 

「……ですが、私一人の力では、私一人の手では、世界を護ることは出来ません。ですから……皆様にも、どうか協力していただきたいのです。私の背中を預けます。どうか……私と共に、戦ってください」

 

 兵たちの士気が最高潮に達したのだろう、今度こそ講堂は、屈強な男たちの鬨《とき》の声で震えている。確かに、今の演説は、供に少女と戦おうと決意するのには十分なものであった。戦乙女とでも言うべきか、その旗手が最前線にいるのだから、男として戦う意識が昂らないはずがない。

 

 半分は予想通り、半分は想像以上だったのだろう、兵たちを鼓舞することには成功したが、場内の勢いに驚いてしまったのか、ソフィアは両手を振りながら慌てているようだった。

 

「あ、あわわ……その、もう一回言いますけど、勇者様はきっと生きていらっしゃますので! ですが、もしもの時は……よろしくお願いいたします」

 

 そう言いながら頭を深々と下げる少女に対し、再び男たちの歓声が上がった。今回の件、ソフィア自身はどこまで狙っているか分からないが、やはり彼女は凄い。絶望の淵の近くにあった兵たちの士気を、ここまで引き戻せたのだから。

 

 そして、場内が少し落ち着いてから、また最前列の兵の手が上がった。

 

「それで、具体的に、我々は目先はどうすれば?」

「それに関しては、先ほど申し上げたように、まずはレヴァルの防衛を固めつつ、フィリップ大佐の指揮で連隊を組み、バルバロッサへ救護と調査団として派遣します。派遣する人以外は、レヴァルとその半径十キロメートル内の警護を固めます。

 詳しくは、自身の所属する連隊長の指示に従ってください。この後は、この場を各連隊長にお任せします」

 

 そう言ってソフィアはフィリップ大佐の方に振り向くと、連隊長は頷きながら少女と壇上を入れ替わった。そして、ソフィアがこちらを手招きしているのを確認し、自分たちも講堂を後にした。

 

 ソフィアに招かれたのは、先ほどの応接間だった。今度は四つのソファーがきちんと四人で埋まる形になる。

 

「ソフィアちゃん、凄かったですね、お疲れ様です!」

「そ、そんなこと……むしろ、みんなが凄い元気で、びっくりしちゃったくらいで……」

「いやぁ、それだけ男どものハートを鷲掴みってことですよ。ささ、喉でも乾いたでしょう、お茶をどうぞ」

 

 そう言いながら、クラウはいつの間にか淹れていたらしい紅茶のカップをソフィアの前に置いた。

 

「はふぅ……ありがとう、クラウさん」

「いえいえ。それで、私たちに話があるんですよね?」

 

 余程喉が乾いていたのだろう、中身を飲み干して後、そのままカップを膝の上に乗せながら、ソフィアは頷いた。

 

「うん。出来る限り早く、レヴァルの安全を確保しないといけないんだ。だから私は、今からレヴァルの地下通路に向かうつもりだよ」

 

 今から、という言葉を飲み込めなかったのだろう、エルがすぐにソフィアの言葉を遮った。

 

「あのね、今からって……アナタ、一睡もしていないでしょう? それに、場所は……」

「場所は、レオ曹長が地図を見つけてくれたから分かるよ。多分、街中にあった入口は封鎖されているから、城壁のちょっと外側にある入口……これは、兵たちが場所を確認済み。

 それに、バルバロッサの地が落ちたことと、レヴァルの襲撃は連動しているかもしれない。だから、一刻も早く調査しないと」

「それでも、そんな目の下にクマがある状態で……」

「うぅん、大丈夫……だいじょう……」

 

 エルと話しているうちに、ソフィアが瞼をぱちぱちとし始める。先ほどの演説で緊張が解けたせいで、眠くなってきたのか――いや、そういう感じではない。膝にのせていたカップを落としてしまった。

 

「あれ……なんで……?」

「……ソフィアちゃん、ごめんなさい、一服盛らせてもらいました。もし何か異変があったら起こしますから、今はちょっと休んでください」

「クラ……さ……」

 

 クラウの名を呼びかけて、ソフィアは背もたれに体を預けて眠ってしまった。一瞬、深夜の話が脳裏をよぎる――ジャンヌが魔族と組んでいて、クラウもそれに組している可能性はゼロではないと。

 

 しかし、その邪推はすぐに引っ込めることにした。クラウはソフィアをゆっくりとソファーに横にして、毛布をかけて頭を撫でている、その所作があまりにも優しかったからだ。

 

「……こんなに小さいのに、あんなに頑張って。お疲れ様です、ソフィアちゃん」

 

 そうだ、クラウは良い奴だ。俺の勘がそう言っている、それだけで彼女のことを信じていいと思う。

 

 ソフィアを寝かしつけて、カップを拾って机に戻して後、クラウは自分とエルの方を交互に見た。

 

「アラン君とエルさんも。昨日から一睡もしてないですよね? 何か異変があったら、私がすぐに起こしますから、お二人も寝てください」

 

 つまり、こうなることを見越して、コイツは先に仮眠を取っていたのだろう。ソフィアも凄いが、クラウの気遣いも中々すごい――そう思っていると、怪しい笑顔で瓶を取り出している。

 

「もし寝付けなそうなら、寝れるお薬をお出ししますけど?」

「……それ、大丈夫なヤツなんだろうな?」

「失敬な! 普通の睡眠薬ですよ」

「睡眠薬って時点で若干犯罪の臭いがするが……」

「むー、それならアラン君にはあげません! エルさん、要ります?」

 

 クラウの質問に対し、エルも若干苦笑いを浮かべて「結構よ」と断っていた。

 

「……それじゃあ、三時間で起こします。本当は、六時間くらい寝てほしいですけど、そこまで寝かせるとソフィアちゃんに怒られちゃいそうなので」

 

 一服盛った時点で怒られそうなものだが。そう思いながら、自分はソファーに身を委ねて眠りに落ちることにした。

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