B&T~記憶喪失の転生者、伝説級の暗殺術で異世界ディストピアをぶっ壊す~   作:五島七夫

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塔の攻略作戦会議

 目を覚ましてから数日、二人の熾天使と議論を重ね、構想していた武器の作成を続けていた。初期構想では連射性能や携行性などを重視していたものの、これから戦う敵の強さを考えたら魔王城に行く途中で渡したの試作品ですら火力が足らないということで、最終的には主に火力と、強力な火薬に耐えられるフレームをどう作るかという部分に焦点が絞られた。

 

 しかし、自分があれやこれやと意見を出すと、こちらより遥かに知識のある二人が客観的な立場から助言やアドバイスをくれるこの状況は何ともありがたい。以前のように一人で書物を漁りながら手探りで物を作るのも楽しくはあったのだが、こうやって誰かと一緒に一つの目的に向かって物を作ることが楽しくもある。

 

 逆に、こんな風に自分よりも圧倒的に優秀な助手に甘えてしまえば、自分自身の知識や技術の研鑽という点から見れば微妙なのだろうが――彼女たちからもらう助言も勉強にはなるし、何よりこれを作って彼を喜ばせたいと欲することは自分の願いだ。その辺りは彼女たちに代替されるものではないので、良い意見をもらえることにはしっかりと甘えることにする。

 

 ともかく、最終的に作る武器の目的と規格が決定し、あとは作るだけだ。艦内の施設を利用して前腕全体を覆うほどの長い手甲と、それに見合うだけの火薬の詰まった弾丸が作り、今は三人で机の上に置かれている試作品何本かと、その完成品とを眺めているところだった。

 

「一応完成しましたが……」

「これ、大丈夫なの? 一応、新型の装甲を打ち抜けるくらいの威力にはなったけれど……こんなものを生身で撃ったら間接が外れるどころか、衝撃で内臓がやられちゃうと思うけれど」

 

 完成品を見た途端、二人の熾天使はなんだか神妙な表情を浮かべた。

 

「なんですかなんですか、アナタ達だって作ってる途中はいったれいったれって結構テンション上がってたじゃないですか?」

 

 まるでこちらが悪いかのような雰囲気を醸し出しているが、最終的には熾天使の二人とも積極的に作成にいそしんでいたのも確かだ。最初の頃こそあまり表情が動かないと――とくにイスラーフィールが顕著だ――思っていたが、自分とやり取りをしているうちに少し感情が動くようになってきているように思う。それは概ね、滅茶苦茶なことを言う自分に対する呆れとか、驚きとか、そういった方向性の感情に思われるのだが、なんにしても情緒が豊かになるというのは良いことだろう。

 

 二人の方も思うところはあったのか、イスラーフィールとジブリールは互いに顔を合わせて目くばせをし、今度は気まずそうにこちらへと振り返った。

 

「それは否定しないと言いますか……」

「効率を無視して威力を追い求めるなんてやったことがなかったから、興味深くてつい、ね。でも、新型どころか巨大魔獣も一撃で葬れそうな量の火薬を人型サイズが使うなんて、あんまり想像できなくって」

「まぁ、確かに私もちょっとはしゃいじゃったのは認めますが、大丈夫ですよ! それに無茶苦茶度合いで言うなら、ナナコちゃんの機構剣とかソフィアちゃんの魔術杖の方が上じゃないですか?」

「まぁ、そうかもしれませんが……」

「何より、これを使うのは私たち以上に無茶苦茶な人なんですから。これくらいの方が景気が良いって喜んでくれますよ、きっと」

「はぁ……これで喜ぶって言うの? 肉の器にある者のことは、やっぱり理解不能だわ」

 

 ジブリールが呆れたような表情で完成品をつついたタイミングで、室内のスピーカーから艦内放送が聞こえ始めた。一同ブリッジに集まるようにという内容であり、自分は二人と熾天使を連れて移動を始めた。

 

 ブリッジに到着すると、自分たち以外のメンバーは既に集合していたようだった。よくよく見れば、内装や椅子の数などもピークォド号に似ている――以前によくアシモフが掛けていた場所には、今はホログラムのグロリアが腰かけている。

 

 ともかく、自分たちも空いている椅子に適当に――奇遇にもアガタの隣が空いていた――腰かけると、いつものようにチェン・ジュンダーが一番奥で周囲を見回した。

 

「さて、集まりましたね……それでは、海と月の塔の攻略、並びにアラン・スミスの復活作戦についてお話します」

 

 チェンから語られた作戦の概要としては次のようになる。作戦の大目標は、レムが深海のモノリスのコントロールを取り戻すこと――そうすればこの星をコントロールするシステムを取り戻すことができて、海底にいるアランの身体の治癒もできるようになる。

 

 その具体的な障壁として想定されるのは、星右京、ダニエル・ゴードン、リーゼロッテ・ハインラインの三名。また、ローザ・オールディスもトドメをさせなかったので、他の器へと移って立ちはだかる可能性を考慮しなければならない。

 

 また、ルシフェルという熾天使級の第五世代型アンドロイドの配備も考えられ――最後に、ヘイムダル攻略時に撃墜できなかったフレデリック・キーツの無敵艦隊による妨害も想定される。一言で言えば、敵もこちらも総力戦ということになるという予測が立てられていた。

 

 それに対してこちらができることと言えば――。

 

「完成したノーチラス号で海と月の塔へと接近し、あとはよしなにする形ですね」

 

 敵の戦力に関する考察を述べた後、チェン・ジュンダーがそうあっけらかんと言い放った。まぁ、確かにそんなものかもしれない――自分が納得しかけている反対側で、ナナコが驚いたように椅子から飛び上がっているのが視界に入ってきた。

 

「えぇ!? いや、ざっくりしすぎてませんか!?」

「いえいえ、ソフィアやグロリア、レムと長く時間を掛けて相談した結果でもありますし、ブラッドベリの了承も得ています。まぁもう少し詳細に語るとですね、結局何をするにしても星右京と彼のJaUNTが障害になるのですよ。

 先日のレヴァル襲撃を見ればわかりますが、彼は一度に巨大な兵器すらも別の場所へと送り込むこともできる……逆に一気に退避し、戦力を別の場所へ移し替えることだってできるでしょう。そうなれば、相手も状況に合わせて戦力の配備を変えるでしょうし、こちらとしても状況のコントロールが非情に難しいというのが正直なところです」

 

 チェンが語った内容は、先ほど自分がよしなにするしかないと納得した理由と完全に一致していた。普通の相手ならばもう少しコントロールもできるだろうが、瞬間移動をされればその限りではない――更に厄介なのは、右京の扱う瞬間移動は彼自身だけでなく、他の者だけを転送できる点だろう。

 

 そんな能力を相手にするとなれば、あまりに緻密な作戦を立てていても無意味だろう。あまり作戦の筋書きを重視しすぎていると、それを崩された時に一気に瓦解してしまうリスクすらあり得るのだから。

 

 ナナコも納得してくれたのか、「なるほど」と言って椅子に深く腰掛けた。

 

「我々の目標はただ一つ、レムの人格がコピーされているマイクロチップを海と月の塔の最下層へと運び、海の女神を復活させることです。先ほどはざっくりとお伝えしましたが、おおよそ戦力を三方へ分散させることになると思います。

 まず、レムを最下層へと連れて行く者……これは海と月の塔の内部に精通している者が良いでしょう」

 

 チェンは一度言葉を切り、自分の隣に座るアガタの方を見た。内部構造に詳しいのは勿論だが、主君であるレムをあるべき場所に戻すというのには彼女が最も相応しいだろう。とはいえ自分たちが攻め入るとなれば、海と月の塔の最下層はかなり厳重な防衛が敷かれることが想定される。そうなれば、彼女の行く道を支える者が必要――勿論迷わず自分が手を上げることにした。

 

「アガタさんと一緒には私が行きますよ」

 

 こちらの挙手に対し、アガタは安心したように微笑みを浮かべ、同時にチェンはこちらに対して頷き返した。

 

「えぇ、それが良いでしょうね。とくに屋内に関する戦力としては、貴女が最も適任でしょう……実際にリーゼロッテ・ハインラインとも互角にやり合ったのですから、レムがシステムと同調している間の護衛もできるでしょうしね。

 ナイチンゲイルやセブンスも強力ですが、全力を出されると海と月の塔を内部から破壊しかねないですから。力の取り回しの良さの点から言っても、貴女が内部の攻略に向いていると言えますから」

 

 ソフィアとグロリアからなるユニットのコードネームは格好いいなと思っていると、チェンは「さて」と区切りながら件の小夜啼鳥の方を見た。

 

「次に、外での戦闘での戦闘に関して。フレデリック・キーツの無敵艦隊と飛行型の第五世代型による迎撃が予測されます。これらの戦力に対しては、ナイチンゲイルとノーチラス号が戦闘に当たります」

「貴様の考えた作戦にケチをつける訳ではないが……陸路で向かうという手段はないのか?」

 

 空から攻めることで余分な戦闘が発生するのなら、陸路で強襲を掛けたほうが良いのではないか――T3が言いたかったのはそういうことだろう。

 

「貴方の意見ももっともです、T3。ただし、以下二つの理由から敢えてノーチラスによる強襲を決定しました。

 一つは、我々にとってこの星で安全な場所など無いということ……海と月の塔へと向かうにも、結局一定の距離まではノーチラスで接近する必要があります。しかし、どこまで近づいても大丈夫なのか? という点に関しては……」

「成程……森から浮上したらすぐにでも居所を割られることを想定すれば、すぐにでも攻撃が開始されるかもしれないということか」

「えぇ。それに陸路で向かうとしても、ADAMsを使えるアナタや空を行けるナイチンゲイル以外のメンバーでは移動に時間が掛かりすぎますからね。それなら、ノーチラスで一気に接近したほうが、こちらも戦力をすぐに現地へと運べるというものです。

 もう一つの理由として、海と月の塔の立地が挙げられます。陸から一キロメートルほどの距離とは言えど、海に浮かぶ孤島という立地には変わりありません。そうなれば、向こうとしては塔へと向かう橋に戦力を集め防衛に徹されると、その攻略は難しくなります。

 また、向こうとしてはこちらに攻め込まれたくないのなら、橋を落とすという選択肢だってあり得ますからね」

 

 チェンが一度言葉を切るのに合わせ、アガタの肩に座っていたレムが浮遊し、全員が見える位置で停止した。

 

「実際、有事の際を想定して、海と月の塔へと通じる橋は海底に沈めることが可能です」

「そうなれば、陸路で向かってそのままむざむざ引き返す事もあり得るわけか……成程、ノーチラスで接近するのが良いという判断には納得だ」

 

 T3は頷き、レムはアガタの肩に戻ると、再び一同はチェンの方へと視線を集めた。

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