セリカ氏の召喚に応じてはや1週間。
来る日も来る日も聖杯に潜り続けた地底人には眩しすぎる日常ではあるが、狩人である私もこのキヴォトス、学生の在り方も少しは馴染んできた。と思う。
1週間の内容はこんな感じだ。
1日目
まず学生に必要な必需品の購入やセリカ氏のソファの弁償などするため、狩りでは全く使わなかった『輝く硬貨』*1を換金した。
一切使わずに木箱の中に眠っていたのでおよそ一学生が待っていい金額ではないぐらいにはお金が手に入った。
セリカ氏は目を輝かせ借金がどうの言っていたが聞いてもはぐらかせられてしまった。まだ信用が足りないのだろう。
必要な物は無事購入。
その後もセリカ氏との買い物を楽しんだ!
2日目
アビドス高等学校に登校して集まった【対策委員会】のメンバーによるキヴォトスの常識を知る勉強会が始まった。
曰く『キヴォトス人は頑丈』
曰く『銃不所持より全裸の方が多い』
曰く『普通ヘイローで個人の識別はできない』
一つ目は実際に本気ではないとはいえ獣を殺す武器で殴りつけてもアザが出来る程度には頑丈だ。
雑魚ならさほど問題はないが、実力者がならば長期戦は避けられず苦戦を強いられるだろう。
二つ目はそれだけ銃という存在が身近な世界だからか。というか聖杯にも時折りいたが、この世界にも全裸がいるのか…。
三つ目は何気なく対策委員会のメンバーのヘイローを落書きしていたら全員驚愕してセリカ氏にはどん引かられた。解せぬ。
普通はただの輪っかとしか認識できないみたいだが、
そして学生ならば将来のためにも勉強が必須だ。
私も試しにテストをしたが、脳髄の奥まで狩りと
その日は勉強漬けに終わった。
3日目
半日の勉強漬けが終わり爆ぜそうな頭を鎮静剤*2で落ち着かせているとセリカ氏が何処かに出かけるらしい。
ついて行こうとすると凄く怒られてしまった。
だが協力者が召喚主を置いて単独行動するなど言語道断!!
と言うわけで新しく覚えたジェスチャー『
どうやらバイト、労働による金銭を求めているようだ。
なるほど。事情は理解した!
セリカ氏は複数のバイトを掛け持ちしている。ならば早く終わらせ……え?雑草抜きに火炎放射器はダメ!没収!!って?
そんなー
残りの半日をセリカ氏とバイトをこなしていった。
4日目
登校中に腰に下げている『仕掛け武器』に興味を持った不良生徒に絡まれてしまった。見せるだけならば構わないが、流石に奪おうとするのは見逃せないので『
気を取り直してセリカ氏と共に電車に乗ると今度はケモケモヘルメット団を名乗る集団が電車をハイジャックしに来た。メンバー全員のヘルメットが獣耳だったのでちょっと…ほんのちょっとだけ獣性が高まり『銃槍』でツンツンして大人しくしてもらった。
朝からのトラブルにため息が止まらないセリカ氏と学校に到着すると小規模のカタカタヘルメット団が攻めてきた。
もう面倒なので大砲で吹き飛ばした。
5日目
シロコ先輩に勝負を挑まれた。
どうやら『仕掛け武器』に興味があるらしい。
試しに『ノコギリ鉈』と『獣狩りの短銃』を貸して、逆に私はシロコの銃を貸してもらいお互いに武器の扱い方を教えて三本勝負。*3
一本目は慣れない装備で泥試合の引き分け。
私はリロードの概念に戸惑いつつ
二本目はシロコ先輩の勝ち。
やはり慣れぬリロードの隙を突かれて、鋭いキックからの変形攻撃の往復ビンタによりノックアウト。
三本目は私の勝ち。
やはり引くのがいけない、狩りとは常に死中に活を見出すもの。思い切り前にでて至近距離で顔面に連射からの腹パンでノックアウト。
三本勝負は引き分けで終了。
ん、今度は自分の武器で思い切りやろう!
シロコ先輩と再戦の約束をして対策委員会の部室に入ると、余裕がない時に身内で争うな!と激昂したアヤネのちゃぶ台返しをくらい私とシロコ先輩はノックアウト。
勝者 奥空アヤネ
6日目
昨日の罰として校内の清掃を済ませ再びセリカ氏とバイトに行く。
柴関ラーメン
柴大将に武器を構えるという失礼な態度を取ってしまったが柴大将は笑って許してくれた。なんと聖人だろうか、私ならモツ抜きしていた。
セリカ氏と同様に雇ってくれた。
ただ喋れないのは変わらないので大人しく皿洗いと片付けに徹した。
しかし改めて訪れる客を見て思うのだがキヴォトスで【人間の大人】は居ないのだろうか?大人はほとんど獣や機械仕掛けの人形ばかりの不可思議な世界。
鐘の音に惹かれこの地に降りたが、何の役割があるのか未だに見えずにいる。
ボンヤリと考えているとセリカ氏に集中しろと尻を蹴られてしまった…。
賄いで頂いたラーメンは最高!!!
〈◎〉+1
7日目
勉強に集中しているとまたカタカタヘルメット団が来た。
何度も懲りない奴らだと前に出ようとしたが、ホシノ先輩に止められた。
3回も後輩に任せっきりじゃ先輩の威厳が無くなっちゃうから任せて!
とのことで共に追い払うことに。
ホシノの盾は恐ろしく頑強だ。
私が持っている『
そう、本来ならば盾とは相手の攻撃から身を守る物だ。そんな盾もヤーナムでは役立たずである。化け物相手に盾は丈夫でもそれを支える人間が非力では意味が無く扱われない。
故に私たち狩人は受けるのではなく避ける戦い方なのだ。
今回も大したことなくヘルメット団を追い払ったが、連携面で問題があることが分かった。
各々が好きに動くため、弾幕を張ろうとしたノノミ先輩の射線上に前に出ようとしたシロコ先輩が入ってしまったり、小さなトニトルスの落雷に驚いたアヤネのドローンがセリカ氏に激突したり、後輩の負傷に気取られたホシノ先輩が手榴弾に吹っ飛ばされたりなどなど……。
個々の実力はある。だが連携不足で実力を発揮しづらい。
私が喋ればまだマシだっただろうが無いものねだりしてもしょうがない。いずれにしても指揮役が必要だ。
これは、いずれ来たる『先生』に期待するしかない。
こうして1週間は過ぎていった。
今は教室で勉強中。時折り頭が痛くなって鎮静剤を飲みたくなるが、残念ながらホシノ先輩からみんながいる前で飲むなと注意を受けてるので我慢だ。
「相変わらずすごい集中力ね…」
「そうですね。ここ数日で点数の方も赤点回避まで上がりましたから、私も見習わないと!」
「勉強も大切ですが、休憩も大切ですよ☆ほら、ハントちゃんあーん!」
「…?」
ノートと睨めっこしているとノノミ先輩から飴を貰い頬が緩む。
「飴一つで幸せそうねー」
「ハントさんのお話では狩りの時は薬しか口にしてないらしいですし、それほど過酷な世界だったのでしょうか」
「ふふっ☆いい子いい子、です!」
「……!」
さらに頭を撫でられ気分が良くなる。*4
タッタッタ!
ん?足音的にシロコ先輩、音の重さ的に何か重いもの…人を背負ってるのか?
「ただいま」
「おかえり、シロコせんぱ……い?」
視線を入ってきたシロコ先輩に向ける。
シロコ先輩の背中には砂まみれの大人が…!
「うわっ!?何っ!?そのおんぶしてるの誰!?」
「わあ、シロコちゃんが大人を拉致してきました!」
「拉致!?もしかして死体!?シロコ先輩がついに犯罪に手を……!!」
「みんな落ち着いて、速やかに死体を隠す場所を探すわよ!体育倉庫にシャベルとツルハシがあるから、それを…あっ!ハント、あんたの狩人道具で!」
「……」
「……」
シロコ先輩と目が合う。
(私ってそんなに信用がない?)
(日頃の行いのせいでは?)
トサッ
「いや……普通に生きてる大人だから。うちの学校に用があるんだって」
「えっ?死体じゃ、なかったんですか……?」
「拉致したんじゃなくて、お客さん?」
「そうみたい……」
"やっほー!こんちには!"
「わぁ、びっくりしました。お客様がいらっしゃるなんて、ハントちゃん以外に久しぶりですね」
「そ、それもそうですね……でも来客の予定ってあひましたっけ……」
"「シャーレ」の顧問先生です、よろしくね!"
「…!」
先生、とうとう現れたか!
「……えっ、ええっ!?まさか!?」
「連邦捜査部『シャーレ』の先生!?」
「わあ☆支援要請が受理されたのですね!良かったですね、アヤネちゃん!」
「はい!これで……弾薬や補給品の援助が受けれます。あ、早くホシノ先輩にも知らせてあげないと……あれ?ホシノ先輩は?」
「委員長は隣の部屋で寝てるよ。私、起こしてくる」
ダダダダダダダダダダッ!!
(…またか、本当にしつこい奴らだ)
「じゅ、銃声!?」
「!!」
窓から外を見ると案の定カタカタヘルメット団の集団が迫ってきている。
「わわっ!?武装集団が学校に接近しています!カタカタヘルメット団のようですが」
「あいつら……!!性懲りもなく!」
「ホシノ先輩を連れてきたよ!先輩!寝ぼけてないで、起きて!」
「むにゃ……まだ起きる時間じゃないよー」
「ホシノ先輩!ヘルメット団が再び襲撃を!こちらの方はシャーレの先生です」
「ありゃ〜そりゃ大変だね……あ、先生?よろしくー、むにゃ」
「先輩、しっかりして!出動だよ!装備を持って!学校を守らないと!またハントに任せっきりにしちゃうの!?」
「ふぁあー……むにゃ。おちおち昼寝もできないじゃないかー、ヘルメット団めー」
「すぐに出るよ。先生のおかげで、弾薬と補給品の心配はしなくていい」
「はーい、みんな出動です☆」
「ほら、ハントも行くわよ!」
「…!」*5
セリカ氏と共に外に出る。
目の前には迫り来るカタカタヘルメット団。
「出てきやがったな!前回は訳分からん雷にやられたが、今度はそうはいかないからなあーー!!」
あのうるさい全身赤いヘルメットがリーダー格だろう。
《皆さん、お待たせしました。オペレーターのアヤネです》
《"私も微力ながらサポートするよ!"》
背後から二つのドローンが飛んできた。
一つはアヤネ、もう一つの見覚えのないのが先生のだろう。
《"セリカ、奥のスナイパーを狙える?"》
「はあ!?いきなり何よ!」
「落ち着いてセリカちゃん、ここは一度従ってみようよ」
「そうですよ、セリカちゃん。それに生徒は先生の言うことを聞くものです」
「ぐっ、わ、分かったわよ。やってやればいいんでしょ!」
《"ノノミは弾幕張って、ホシノは盾を構えて敵の注意を引いて"》
「はーい!ノノミ〜行きまーす☆」
「可愛い後輩を守るために、おじさん行くよー!」
《"シロコは赤いヘルメットにミサイルを!ハントは…えっと?"》
「……」
今、私が持っている武器は『仕込み杖』と『火炎放射器』。火炎放射器はともかく杖は初見では武器とは思わないだろう。
先生のドローンにアピールするために武器を振り変形させ、少しだけ火を吹かせた。
《"かっこいい…なるほど、分かった"》
「…ッ!」*6
よし、伝わったようだ。
《"ハントは遮蔽物に隠れてる敵の炙り出しとホシノに集まったヘルメット団の撃退!"》
(了解!)
ハントはノノミの弾幕で近寄らないヘルメット団に火炎放射器で遮蔽物もろとも焼き尽くす。
「な、なんだ!?炎!?」
「うわあっちいい!!?」
「ゲホッ!コホコホッ!!息苦しい、もう無理ぃ〜!!」
「ちょ、外にアギャ!?」
出てきたヘルメット団を変形した杖をムチのように振るい切り裂く。
「こ、こんやろう!」
ガキン!
ズドッ
突進してきたヘルメット団に再び変形した杖を突き出し剥き出しの喉を突いた。
「ゴッ━━!?」
ヘルメット団は喉を抑え倒れた。
寄ってくる敵を炎や杖で蹴散らしながらホシノ先輩のもとに辿り着く。
「うへ〜!あんなに炎出して熱くない?大丈夫?干からびない?」
「……」*7
「うへへ、頼もしい後輩だね」
「クッソが!何てこずってんだよアイツら!数はこっちが勝ってるだろ!?」
「ん〜」
ホシノ先輩が盾から少し顔を出し前を見る。
14人のカタカタヘルメット団が遮蔽物に隠れながら射撃してくる。偶に手榴弾が飛んでくるがそれはセリカが撃ち落としてくれている。
「数が多いねえ。ねえ、ハントちゃん。前みたいに不思議な道具で蹴散らさない?」
(彼方で吹っ飛ばしてもいいが、ここはアレを使ってみよう)
「およ?それは…」
ハントが懐から取り出したのは『油壺』。
ホシノ先輩は一目見て「油?」と聞き私が頷くとニヒリと笑った。
「ハントちゃん、おじさんとちょっと火遊びしない?」
「…」コク
「うへ。アヤネちゃんと先生、ちょっと作戦があるんだけど」
ホシノ先輩は耳に付けてるインカムに声をかけて作戦を伝えると私は油壺を一つ渡した。
「おーい!ヘナチョコガタガタヘルメット団や〜い!」
「「「あっ?」」」
「そんな所でコソコソしてないで、こっちに来てみなよ〜」
見え透いた煽りだが果たしてこれで釣れ━
「「「やってやろうじゃねえか!この野郎!!!」」」
━ちゃうんだ…。
「あっ!?馬鹿!ここは慎重にってはな」
タタタタタッ!!
「いだだだ!?」
「ん、私が相手!」
リーダー格のヘルメット団が止めようとするがシロコ先輩に妨害される。
「チビが調子に乗んなー!」
「盾でイモッてんのはテメーもだろうが!」
「このペチャパ アバー!?」
「最後はおじさんでも怒っちゃうよ?」
続々と近づいてくるカタカタヘルメット団に私とホシノ先輩は目を見合わせ頷く。
3
2
1
《"今だよ!"》
《投下!》
「ほい!セリカちゃん!」
(セリカ氏!)
ヘルメット団の頭上にアヤネのドローンから爆薬箱が投下されると同時に私とホシノ先輩は油壺を投げ込む。
そして
「これで終わりよ!」
セリカ氏が爆薬箱を撃ち抜いた。
ドガーーーーーン!!!
「いやぁ〜負けないとは思ってたけど、あんなド派手に勝っちゃうとはね〜。覚悟決めたヘルメット団みんな泣きながら逃げていったし」
「確かに勝ちましたけど、想定より威力が高くて地面が抉れて後片付けが…。あと、本当に怪我は大丈夫ですか?」
「平気平気〜」
「……」*8
油壺2個、追加されたことによりさらに爆炎が広がり飲み込まれたが、ホシノ先輩の盾のおかげで黒焦げで済んだ。
「先生の指揮が良かったね。私たちだけの時とは全然違った。これが大人の力……すごい量の資源と装備、それに戦闘の指揮まで。大人ってすごい」
「今まで寂しかったんだね、シロコちゃん。パパが帰ってきてくれたおかげで、ママはぐっすり眠れまちゅ」
「いやいや、変な冗談はやめて!先生困っちゃうじゃん!それに委員長はその辺でしょっちゅう寝てるでしょ!」
"あはは、一応女なんだけどね…"
「そうそう、可哀想ですよ」
「あはは……少し遅れちゃいましたけど、あらためてご挨拶します、先生」
その後は各々自己紹介する。
私は喋れないので皆が喋ってる間に挨拶をノートに書く。
「それでこちらは…」
ちょうど自分の番になったので先生にノートを渡す。
"これは?"
先生はノートに目を落とす。
「初めまして、私は一年生の
事情あって喋れないので筆談ですみません。私は狩人武器による近接戦が得意です。
よろしくお願いします。先生。」
"うん、こちらこそよろしくね!ハントちゃん!"
何処かで嗅いだことのある匂いをほのかにただよせながら先生は微笑んだ。
連邦捜査部S.C.H.A.L.Eの顧問先生
通称:シャーレの先生
キヴォトスの外から来たごく普通の女性の大人。
シャーレは失踪した連邦生徒会長によって付与された権限のもとに、あらゆる規約や法律による規制や罰則を免れる超法規的機関。
つまり、やろうと思えばやりたい放題できる異質な組織ではあるが、先生はそれを全ての生徒のために使っており書類と格闘してひーこら言いながら生徒を助け、生徒に助けられと持ちつ持たれつの日々を過ごしている。
容姿は肩まで伸ばしたふわふわの茶髪、背は170cm、デスク作業が多いためか全体的に少しふっくら━━この先、デブは無いぞ━━している。
頭の横には先生の
余談
基本的に生徒のために何でもやる明るく活発的な人なのだが、ハントの啓蒙が60以上ある時に先生に会うとそこには2頭身の落書きのナニカがいる。
それだけでも意味不明なのだが、その時の言動や行動がとても教師とは思えず、足を舐めるわ、抱きついて深呼吸するわ、セクハラ発言するわ、と通報待ったなしである。
この落書きのナニカは高すぎる啓蒙が見せた幻覚なのか、それともこれが先生の本性なのか、真相は悪夢の中である。