カタカタヘルメット団の前哨基地。
アビドスの生徒と謎の大人によりボコボコにされ逃げ帰ってきたヘルメット団達がたむろしている。しかし今いるのはたった2人だけ。
他のメンバーは逃げた、主にハントのせいで。
キヴォトスでは『死』の概念は遠いものだ。現実世界では銃弾一発で生死を分ける危険極まりない代物だが、キヴォトスの住人はただの喧嘩で気軽に引き金を引けるほど頑強。そんな中でハントから余りに強すぎる本物の殺意や凶器を向けられたチンピラ生徒は遠かったはずの『死』を目の前で、肌で感じてしまい依頼を放り出し完全逃亡した。
少し窮屈に感じたはずの前哨基地も今や広々と動ける、虚しいほどに。
「クソクソクッソがあああ!!!」
「リーダー叫ばないでください!耳に響くんですよ!?」
「これが叫ばずにいれるかぁー!?」
「ちっ、しょうがない…」
「ぐうあああ!!ちくしょ ガッ ぐあっ!?」
赤いリーダー格のヘルメット団が残ったもう1人のヘルメット団の銃床による打撃で黙らせられる。
「悔しいのは分かりますが、まずは大人しく休んで体力回復に努めましょうよ」
「ぐぬぬ!!」
赤ヘルメット団が怒りを込めて睨むが、数秒も続かず諦めたように何もない地面を見つめる。
「……はあ、これでウチらも念願の学校っていうのが手に入ると思ったのに…」
「ま、そう上手くいったらウチらみたいなチンピラ居ないでしょうし」
悔しそうに赤ヘルメット団が呻き俯く。
もう1人のヘルメット団も横になり何もない天井を見つめる。
「「………」」
互い無言になり静寂に包まれる。
風の音、砂がテントにぶつかる音、自分の心音や呼吸音のみが耳に入る。
数秒か数分が経過すると何気なくお互いを見つめる。
「なあ」「あの」
「「………」」
被ってしまった。
「リーダーからどうぞ」
「おう、お前なんでまだここに居るんだ?」
「それはリーダーがまだここに居ますから」
「はっ!何だ?アタシが一人ぼっちだと可哀想だからか?」
「はい」
「おい!」
さも当然のように肯定され思わず拳を振り上げる。
「だって、リーダーってば寝坊してみんなに置いてかれて半泣きになりながら電話してきたじゃないですか」
「い、いいつの話しをすりゅんだ!!アタイは泣く子も黙るカタカタヘルメット団のリーダーだぞ!お前がいなくたってアタシはだ─
「じゃあウチはこれで…」
─いじ、へ?は!ま、まってぇ!!」
そそくさと立ち去ろうとする最後の部下の足にしがみつき慌て引き止める。冗談じゃない!誰があんな
「……ぷぷ」
「…え?」
まるで我慢できず吹き出すような声に見上げると口元を抑えて小刻みに震えているヘルメット団。同時に己の醜態を自覚する。
「こ、この野郎ー!!!」
「ぬわぁーー!!」
「…んで?お前はなんだ?」
「コホンコホン、リーダーの諦めない姿勢はウチの好みですが、実際問題、どうやって戦うのですか?武器はまだありますけど…」
「みなまで言うな、あの人形みたいな顔の気味
「だったらなおさら…」
「チッチッ」
人差し指を立てニヒリと口角を上げる。
ヘルメット団が疑問に首を傾げ、赤ヘルメット団が親指で背後の錠付きの鎖でぐるぐる巻きにした物騒な箱を指す。
さらに疑問を深め、数秒思考して意図に気づくとヘルメット団の表情が固くなり真顔になる。
「……リーダー、
「
「─分かりました。寂しがりなリーダーを放っておけないので、ウチも加勢します!」
「一言余計だわ!
「はい、リーダー!」
恐怖はある。だがそれ以上にプライドもある。
引き下がれぬ二人の少女が新たな武器を手に立ち向かう。
ただ……何事にも引き際というものがある。
現在
先生含め、私たちアビドスのメンバーはカタカタヘルメット団の前哨基地に向かって進行中である。
何故そこに向かってるのかはホシノ先輩からの提案で、待っていてもまた数日置きに攻めてくるから消耗してる今のうちに前哨基地を襲撃しよう、ということ。
その案に乗りこうして進行中。
まあ、いい加減しつこいと思い私が獣に向ける殺意をそのままぶつけたのでそんなに数は残ってないと思うが、それでも綺麗さっぱり叩き潰した方が安心できるだろう。
特に心配事も無く歩いているが一つ気になる事がある。
"………" ジー
「………」
"…" ジー
「…」
先程からシャーレの先生からお熱い視線を注がれている。
"ジーー"
なんてことだ、とうとう声にまで出し始めた。
まあ原因は分かってるので、右手に持ってる物を渡してみよう。*1
"え?あ、えと、いいの?"
「はい。剣と銃が一体化した仕掛け武器です、扱いには気をつけて怪我しないように。」
"わあー!ありがとう!"
左手にメモで注意しつつ手渡すと先生はこの場にいる誰よりも子供のように小躍りしながら喜び、その様子をアビドスの面々は若干呆れて、先頭を歩くホシノ先輩に至っては半目で「この大人、大丈夫か?」と言わんばかりである。
"剣と銃の合体…しかも変形、すごくすごーくロマン溢れるあっ"
周りの視線に気づいて顔が茹で蛸になる先生。
だが夢中になるのも分かる。不謹慎かも知れぬが狩りの最中私は新たな仕掛け武器に巡り合うことを楽しみしていた時期もある。
それぞれの武器の性能はもちろん、様々な背景が武器を通して伺えるのは記憶が欠如した私がヤーナムの状況を知る手掛かりとしても重要であった。
今先生に渡したレイテルパラッシュもその一つ。
何故か懐に入っていた『カインハーストの招待状』を手に向かったが、結局誰が私を招いたのかは分からず仕舞い。*2
"えー、コホン!外の世界でも見なかった武器だけど、キヴォトスだとみんなも持ってたりするの?"
考え事をしていると気を取り直した先生がアビドスの面々に質問するが、私と先生以外が顔を見合わせては首を横に振る。
《バットやナイフを使う生徒は偶にいますけど、基本的に銃ですね》
「そもそも、みんな銃で撃ちまくるからわざわざ近接武器使うヤツなんて、あんまり居ないわね」
「ん、あまり痛くないし」
"そ、それはそれで大丈夫なのかな?痛くなくても怪我はしないようにね?"
「大丈夫、私は強いから」
表情の変化が乏しいシロコ先輩だがドヤ顔で胸をはる。
"んー、やっぱりここは銃社会なんだね。"
「ですね☆ そういえば、先生はキヴォトスの外から来られたのですよね?外では大きなケモ…動物とかいますか?」
"大きな動物?居るけど、キリンとか象とか、熊さんとかでそう珍しい物でもないね。あっと、ごめんね!いつまでも持ったままで。"
「……」フルフル
ハントは気にするなと首を横に振りながら武器を受け取り、キヴォトスの外という言葉が出たのでついでに気になることをメモに書き先生に確認する。
「先生、一つ質問があるのですが、『ヤーナム』という単語は知ってますか?」
"ヤーナム?う〜〜〜ん、ごめん!知らないや。"
知らぬか…一体どこで嗅いだ匂いなのか気になるが、そろそろ目の前の
「………」
先ほどから会話に入ってこず先頭を黙々と歩くホシノ先輩であるが、彼女から強まる警戒心と僅かばかりの不安を感じる。
それもそうだろう、前哨基地が近いというのに静かすぎる。それに加えてまだ昼頃だというのに夕日が沈んだように暗い。
空を見上げるが快晴。
しかし瞳で見ると何かが現実世界に侵食し、拡散し始めている。
「…霧?」
「あら?どうしました、ホシノせん…ぱ、え?」
「な、なによこの霧!?こんなのさっきまで…!」
「…アヤネ、霧の向こう見れる?」
《だ、ダメです。霧が濃すぎて1m先も観測できません!》
"これは異常気象?いやでも、唐突すぎる…アロナ、解析をお願いできる?"
ホシノたちの前にはまるで壁のような深い霧が何の前触れもなく現れた。その光景にハントは目を見開き、酷く動揺する。
(この霧は…!?この臭いは…!なぜ
ありえない、有ってはならない。悪夢はこの手で
「……!」
「あっ、ちょっと!ハント!いきなりどうしたのよ、待ちなさい!」
事態を確認するべく駆け出し霧の中に入ったハント、それに釣られてセリカも霧の中に突入した。
突然のことにホシノが遅れて反応し、慌てて霧に向かって二人に呼びかける。
「セリカちゃん!ハントちゃん!」
「ん、連れ戻してくる!」
「待って、シロコちゃ─」
二人を連れ戻そうと霧に入ったシロコを止めようと手を伸ばすが、その手は霧に阻まれた。どれだけ力を込めてもシロコの手には届かない。
「─っ!?この!」
霧が突然透明な壁のようになり、ホシノの銃撃、盾の殴打、拳、蹴り、体当たり、全てが霧に阻まれて手応えがまるで無い。
「ホシノ先輩、下がってください!」
ノノミのリトルマシンガンVが回転し続けざまに轟音が鳴り響く。
「そんな…!」
しかし、弾は全て霧に着弾したが霧の前で弾が回転するばかりで貫通せず、やがて地面に落下して軽い金属音が鳴るばかりで効果がない。
"普通の霧じゃない、すぐにでも助けに…アロナ?「避けて」って──"
《先生!!》
「GRRAAA!」
"──ぁ"
大きく開けた口
眼前に迫る牙
生温かい吐息
直面した己の死に世界がスローモーションになり、この状況を打開しようと脳が高速で思考を巡らせてこれまでの人生の記憶が次々に流れるその刹那…覚えのない記憶を垣間見る。
( "血塗れの……斧…?")
いよいよ牙が先生の喉元に届くときに、ふと頭上から空気を切り裂く音が聞こえた。
ゴン!!
「GU!?」
「ずえりゃあああ!!!」
ドゴォン!!!
衝撃音と共に巻き上がった土煙に思わず尻餅をつき目を瞑る先生。若干腰を痛めたが手で煙を払いながら状況を確認すると、目の前にコート姿の大おと……いや、斧を持ったカタカタヘルメット団だ。
斧に叩き潰されたのは獣、大型犬のようだ。
普通の大型犬ではない。一部皮膚が剥がれ筋肉や骨まで露出してまるでゾンビみたいだ、さらに頭を潰されてもまだ死んでないのか弱々しく抵抗している。
「ハアッ!ハア!──ぐっ、大丈夫っですか!?」
"大丈夫、ありが──っ!!"
全身に浅くない切り傷、切断されたのか半分になったヘルメット、そして腹部から足にまで滴る赤い液体と鉄の匂い。
それを見た先生は弾かれるように立つ…が勢いがあまり今度は顔からこけるが再び立ち上がり駆け寄る。
"アヤネ止血パックをお願い!"
《は、はい!すぐに!》
ドローンから投下された救急パックを受け取りすぐに手当てをしようとするがカタカタヘルメット団が震える手で拒む。
「ウチは大丈夫です!これくらい他のヘルメット団と抗争でいつのことですから!ウチよりもリーダーを助けにゔ、げほ、こほっ!」
"まず最優先は止血!"
腹部を抑え咳き込むカタカタヘルメット団を支え──近づいて気づいたが顔に右目から口元まで縦に深い切り傷があり痛々しい──血を吸って濡れた服を捲ると左脇腹に刺し傷、貫通はしてないようだがそれでもとめどなく鮮血が流れ続けて止血しなければ命に関わる。
また、子供が血を流す現実に先生の顔が歪む。
しかし襲撃は止まらない。
《この反応は…!みなさん、霧と反対方向から敵性反応が来ます!数は1…3…6、いえ10です!》
"くっ、ノノミ!ホシノ!迎撃をお願い!"
「はい、絶対に先生たちには近づけさせません!」
「……っ」
「ホシノ先輩!」
「…うん、ごめん。すぐ行くよ!ノノミちゃん!」
ホシノは一度霧を睨みすぐにノノミの後を追う。そしてまもなく奥から
ホシノは思考する。ここアビドスであのような
(あの斧、確かハントも同じものを持っていた。名前は『獣狩りの斧』だっけ…あの霧にあの犬、いったい何が起きてるの?)
「準備は大丈夫ですか、ホシノ先輩?」
「バッチリだよノノミちゃん。ノノミちゃんは弾幕、私は抜けたヤツを狙う。アヤネちゃんは周囲の警戒!」
後輩に指示を飛ばし迫る
そして、先生はカタカタヘルメット団の応急処置を終わらせて遮蔽物の裏に横にさせ戦況を確認しているとヘルメット団がぽつりぽつりと話し始めた。
「ウチら…アビドスにやられて……特に杖使いの、変な奴に…やられたのが、悔しくて、リーダーと一緒に……一矢報いようと、したんです」
"君、無理して喋っちゃ…"
「前に、拾った…気味が悪い武器をげほっケホケホ、ふぅー…ふぅー、使うことに、したんです」
"それって…"
先生がいまだ
「武器ごほっこほ!!…武器の素振り、してると……リーダーが、突然、様子がおかし、く、なったんです。誰も…居ないのに、散ったメンバーが戻っ、て来たって言って、この刀、でアビドスの首をはねる、とか。ウチは、心配で、ちか…づ……いたら……!」
カタカタヘルメット団の体がガタガタ震え過呼吸になり、先生は咄嗟にヘルメット団の両手を手で包み必死に呼びかける。
"大丈夫!先生が全部丸っと解決しちゃうから!"
「せん、せい?」
"そう!生徒が困っていたら助けるのが大人として、先生としての務めだからね!だから大丈夫、君のリーダーも絶対に助ける!!"
「……っ!お、ねが…い、リーダーを、助け……て!!」
体力の限界なのかカタカタヘルメット団は目を閉じる。先生はすぐに脈と息の有無を確認し、ただ気絶してるだけにひとまず安心すると…
"アロナ?敵の様子が変わった?いったい…?"
視線を斧が突き刺さった
それはホシノたちが迎撃していた
「………」
「GAARRR!」
「BAU!BAU!」
一人の人型は、背はおよそ180cmのとんがり帽子に全身が骨と燃えかすのような布を身に纏った異形の者。右手に刀、左手に炎が燻っている。
二匹の獣は、黒い犬。四足歩行の時点で
対峙したホシノは今までない圧迫感に冷や汗を流し後輩を守るために前に出る。
《"2人とも無事!?"》
「私は平気、弾もまだある」
「わ、私も大丈夫です、先生。ですが…」
ノノミが固唾を吞む。
相手は人智の及ばない化け物、しかも
「……」
人型が左手でホシノたちを指差す。すると二匹の黒い犬がゆっくりと獲物を追い詰めるように動き始める。
《"相手は未知の敵!私たちの最優先事項は全力で生きて学校に帰ること!"》
《私も全てのドローンを動員して全力でサポートします!ちゃんと全員無事に帰ってきて下さい、ホシノ先輩!!》
「……うへへ、もちろんだよ、アヤネちゃん!お転婆な後輩ちゃんたちを引きずってでも戻るからね!」
「そうです☆まだまだやる事はいっぱいあります、ここで倒れるわけにはいきません!」
「「GAAAAAA!」」
《"ホシノ!2秒後に左にシールドバッシュ、右に射撃!"》
黒い犬が走り一気に距離を詰めるのを先生の指示通り、2秒後の左から迫る黒い犬が飛び上がった瞬間に顔面に盾を叩きつけ、右からタックルしようと屈む犬に引き金を引く。
「「GUOOA!?」」
(まったく、3人とも勝手に霧の向かうに行っちゃって…帰ったらお説教だよ!)
ホシノたちが戦闘をしているとき、霧の向こう側では……
「よおヒヒ、来たなぁ!あっハハ!!」
目が血走り、瞳が溶け、鮮血で彩られ、青いキノコのような人型に囲まれた赤いヘルメット団と対峙していた。
「いくぞおまえらぁ!!カタカタヘルメット団の底力見せてやれええええアハハハハハハ!!!!!」
目覚めはまだ、訪れない。
人型
名称:旧主の番人
聖杯ダンジョンにのみ登場するボス。(なお、普通にモブとして登場することもある)
上位者の眠りを守るために姿と魂を業火に焼かれ、灰となり永き生を得た存在。
刀と炎で遠近距離と対応でき、また後半では刀に炎をエンチャすると刀を振るたび炎が追加で飛んでくるので厄介である。
戦い方は近距離を極め、刀に合わせ銃パリィからの内臓攻撃。また番人は復帰すると高確率で刀を左右に振って後ろに下がるので、刀を左右に振る瞬間を再び銃パリィで内臓攻撃を狙う。
上記を繰り返せればはめ殺せれる。
余談
姿と魂が炎に焼かれ灰になるのがダクソの黒騎士を彷彿させる。
黒い犬
名称:番人の猟犬
名前の通り旧主の番人のペット。
聖杯ダンジョンにのみ登場する敵モブ。
モブとして徘徊する番人と一緒に徘徊している。数は2〜4匹と多く、さらにフロムの伝統なのかクソつよ犬の枠であり、素早い動き、高火力、炎ブレス、数の暴力と可能であれば無視したい存在。
なお、ブラボの犬は銃で吹っ飛ぶのでその隙を有効活用し狩ってしまおう。