それでは……
本編どうぞ!
強制的に雇われたオレは与えられた仕事をこなし終わったところだ。仕事と言っても教養のないオレにできることは知れている。主にB小町の連中を補佐し、おばさんの手伝うことだ。アルバイトなんでそんなもん。
B小町の連中を補佐するに当たって、歳が近いってのもあって仲が良くなる……訳ないよなぁ?
待合室で会った二人……名前?興味ないから覚えていない。バカとオレを間違えたからむかついたし、あいつらがオレを見て怯えていたから知らね。
バカと瓜二つなこともあり、バカが姉妹だとか言うからチラチラと盗み見てくる視線がうざったいから睨み返してやったらオレと目を合わせようとしなくなった。他の連中も同様に距離が遠い。
この展開はもう予想がついていた。
嫌っているバカと瓜二つの別人が居たらどう思う?そいつが姉妹だとわかり、態度が不良だ。絶対関わりたくないだろ?おっさんおばさんもオレが仲良くなれるとは思っていないだろ。だが……
「社長って子供がいたの?」
「あ、いえ、おr……僕達は実の子供ではなくてですね……」
「あなたルビーって言うの?社長がつけたの?」
「さいt……じゃなくて、ママがつけてくれたんだよ」
「それじゃミヤコさんか……ミヤコさんってキラキラネーム好きだったんだ」
ガキどもはそうではないらしい。流石に関係のない幼稚園児に嫌味を言う奴はいない。
アクアとルビーはおっさんおばさんの養子と言う設定でいくらしい。仕事が忙しく、家に子供二人だけのお留守番は危険だということで『苺プロダクション』(監獄)に連れてきた。その際に仕事しながら子供の面倒を見るのは難しい為、反吐が出るほど嫌だが、バカの姉妹であるオレに保護者として付き添うことになった。
ドーム公演が成功したおかげで『苺プロダクション』(監獄)の名は更に世に広まり、仕事が増えて人手が足りないのでアルバイトスタッフとしても時より現場に顔を出すのがオレだ……っというのは体裁で、本来はガキどもを使い、バカとメンバーの仲を良くしようと言う目的だ。
成功するのか微妙だ。肝心なバカはオレの隣にいる。それはオレが指示したからだ。何故か?こいつがバカだからだ。
アクアとルビーは賢い。バカを嫌っている連中に対しても嫌な素振りを見せずに接している。ルビーは少し思うところがあるのか少々固いが、愛想を振りまいている。アイドルのレッスンは厳しいもので、体力も精神も使う。そこに純粋なガキどもが現れて愛くるしい仕草を振りまけば連中は夢中になる。実際、休憩時間である今、連中はアクアとルビーに夢中だ。
問題はバカの方で口を滑らせる可能性がある。オレが見てないと「そうそう可愛いでしょ?だってうちの子供だから♪」とかボロを出すかもしれない。番組で「うちの子が~」とか言ったそうだからな。親バカにもほどがある。だからこうしてオレの目の届くところに置いておかないと危なっかしい。
「ボク可愛いね?ちょっと撫でてもいいかな?」
「え、えっと……そ、その……」
「ルビーちゃんお菓子いる?」
「わーい!ありがとう!」
「きゃわ~~~❤やっぱりうちの子きゃわ~~~❤❤❤」
……はいアウト。既にワンアウト。こいつ親バカ過ぎて頭が痛くなる……
「ふんっ!」
「――痛っ!?もうなにするの?」
「声を控えろ。聞かれたらどうする?」
軽く横腹を小突いてオレの忠告にハッとして声を潜めた。
「バカ面を晒すな。ガキどもの事がバレたら終わりなんだぞ?」
「うん、そうだよね。アクアとルビーの秘密は何としても守らないとね!」
「初めからそうしろよ」
「……ありがとう」
「はぁ?何がだ?」
「アクアとルビーの面倒を見てくれて。社長達も仕事が忙しくなってきているのは知ってた。だからアクアとルビーまでに手が回らなくなって家に置いていかないといけなくなる。でも二人はまだ子供だから何かあったら心配で……」
「ガキどもは子供なのか不明だがな」
「アクアとルビーはまだ子供だよ?」
「子供……子供……なんだよな?」
あいつらガキ……なんだよな?間違ってないよな?中身は実はアラサーのおっさんだったりおばさんだったりしないよな?
「アクアとルビーと事務所で会えるのはコイが引き受けてくれたからなんだよ?」
「無理やりだがな」
「とか言いつつちゃんとやってるよね?」
「金を手に入れる為だ。サボると金を手に入れられない。やる気がなくとも金を手に入れるには我慢する……滅茶苦茶嫌だがこっちは我慢してんだよ!それに金がないといきていけない。世の中は金だ」
「そうだよね、世の中お金だもんね」
「そうだ。お前がオレのスマホを水没させなければこんなところにいない」
「じゃあ私のやったことは正解だったわけだ。流石私だね♪」
「……」
バカの脳天をぶっ飛ばしたくなった。ウンウンと頷く顔を見ているだけでイライラが溜まっていく。こいつの頭の中はお花畑らしい……やっべ、イライラしたらまた煙草が吸いたくなってきた。
「……」
「どこ行くの?」
「煙草吸いに行くだけだ」
「じゃあ私も……」
「お前はここに居ろ。いいか、ボロは出すなよ?」
「わかった」
バカを残してオレは喫煙所へとやってきた。前に誰かが吸っていたんだろう。煙草の臭いが鼻につくがオレにとってはいい香りだ。おっさんからもらった煙草に火をつけ満喫していると……
「おう悪ガキか」
「おっさん……」
おっさんが現れて手に煙草を持っている。目的は同じらしい。しかしオレをジッと見て煙草に火をつけようとしない……なんだ?
「なんだよ?」
「ああ、いやなに、アイが煙草に興味を持ったらと思うとな……」
「……オレをあのバカと重ねて見てんじゃねぇよ」
「お前は悪ガキ、あいつはクソアイドルだ。重ねてなんて見れねぇよ」
そう言って煙草に火をつけた。おっさんはバカとオレの区別がつくってか?自信ありげな態度で気になった。少し引っかけてやる……鳥肌が立つが、これが一番効果的だろう。
「悪ガキって……
「――ブッ!?ゴホゴホッ!!」
おっさんは噴出した拍子に煙を吸い込んで
「お前……コイだよな?」
「そうだよ。今のはわざとバカの真似をしたの。自分で言っていて鳥肌立つけどな。おっさんもオレをバカに重ねているんだね」
「いや、俺は……」
「ふん、口では否定しても説得力ないよ。今まで抱いた男どもはオレをバカに重ねていた。オレがバカを嫌っているのを知ると口には出さなかったが、脳内ではオレではなくバカを見ていた」
「……」
「どいつもこいつも……オレをあのバカの代わりに見ていやがる。
煙草が短くなり、新しい煙草に火をつける。オレの愚痴は止まらない。
「アイに似ているから、アイの声を聞きたい、アイと重なり合いたい……そんな欲望の為にオレに近づく奴もいた。抱き始めた時はバカも無名で、男どもはオレの顔と体が目的でオレの中身なんてどうでもいいんだ。バカが売れ始めれば穢れたオレよりも輝いているバカに
煙草を吸い終わる速度が上がる。また新しい煙草に火をつけた。
「所詮オレはあのバカの
煙草に火をつける手が止まらない。
「B小町の連中はバカに嫉妬しているが、それはあのバカに価値があると無意識に感じているからだ。嫉妬って言うのは相手に自分よりも才能、能力、優れたところがあって、価値があると負けた気になる。それを認められないから嫉妬なんだ。相手に価値がないとわかると嫉妬どころか興味すらなくなるんだ。価値があるから嫉妬する。オレの容姿と体は価値があると教えられたが、それは外見の話。中身は空っぽのスッカラカン。比べてあいつは噓つきだが、誰よりも輝ける光を宿すことができる才能と素質があり、何より努力をしている」
最後の一本に火をつけた。
「バカもそうだ。オレがバカの姉妹……オレは断じて認めないが、あいつは自分の心にポッカリ開いた穴を埋めたいだけだ。偶然オレに出会い、オレの存在を知ったからあいつはオレに開いた穴を埋めてもらおうと思っているんだろう」
「いや、そんなことは……」
「ないなんてことはないはずだ。あいつは興味のない奴の名前は間違える傾向にある。おっさんは特別だ。おっさんの名前を間違えているのはわざとなのかは知らん。あいつにお持ち帰りされた時に聞かされた。アイドルになるきっかけを語っていたあいつは笑っていた。おっさんのことを何も思っていないわけがない」
「アイがか?」
「そうだ。オレが双子の姉妹じゃなければ……バカはオレに興味すら抱かなかっただろうな。名前すら憶えてもらえなかったはずだ。あなたは誰?って言われてたかもな」
「……」
「オレは闇に生きる方が
「お前……」
最後の煙草が燃え尽きる。吸殻を捨ておっさんを見ると何か言いたそうにしているが言葉が出て来ないんだろう。おっさんの手が止まってた。
……ちょっと愚痴りすぎたみたいだな。感情的になりすぎたらしい。
「おっさん、煙草吸わないならそれくれよ」
おっさんのポケットから勝手に煙草の箱をぶんどる。
「しばらくは仕事はやってやる。金を手に入れる為だ。それと忘れるなよ?慰謝料と口止め料と迷惑料、絶対払ってもらうからな!」
オレはその場を離れる。呆然とするおっさんを残して……
「……なにやってんだろ……オレ……」
オレらしくもない。おっさんに愚痴を言ってしまったことに後悔した。
「……はぁ、戻ろ」
どれぐらい時間が経ったか、おっさんと喋っていて忘れていた。サボっていたと思われたら金が手に入らなくなる。バカがいるレッスン場へ戻るとそこには手に光る棒(?)を持ってオタ芸を披露するアクアとルビー、そしてバカとB小町の連中が歌って踊っていた。
「~~~♪~~~~♪♪♪」
バカの笑顔が眩しくて……闇に生きるオレには辛かった。