一番星と屑星のふたつ星   作:てへぺろん

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B小町のあの子に心境の変化が現れるようです。


それでは……


本編どうぞ!




ちょっとした変化

「うわぁ~、アクア君の頬っぺたぷにぷにしてるね♪」

 

「あぷっ、や、やめr……やめてください!!」

 

「恥ずかしがっちゃってこの~♪」

 

「あわわわわ!!?」

 

「ルビーちゃんは幼稚園楽しい?」

 

「うん!よく運動して遊んでるの!」

 

「そうなの?ダンスとか好き?」

 

「大好き!でも前は好きじゃなかった」

 

「どうして?」

 

「ダンス下手だったから。でもママが教えてくれて……それから好きになったの!」

 

「へぇ~ミヤコさんがね」

 

「えっ?あっ!そ、そう、ミヤコママが教えてくれたの!!」

 

 

 きゃわ~~~❤うちの子かわいすぎ~~~❤このかわいさは私の遺伝だねウンウン!……でもうちの子って教えられないんだよね。

 アイドルに子供がいるってなるとスキャンダルになって私達B小町も社長達もアクアとルビーもおしまい。そうなるとアクアとルビーを幸せにできない。私はダメなママだけど、二人の幸せは守らないといけないから。だからなんとしても隠し通すつもり。

 

 

 同じメンバーの……名前はなんだったか憶えていない。一緒にドームで歌って踊ったのに憶えていないっておかしいことだけど、憶えられないものは仕方ない。その子達に揉みくちゃにされているアクアと楽しそうにお話しているルビーを見ていると思うところがある。

 

 

 コイが言う様に私ってバカだからさ、人の名前を覚えるのが苦手で間違って怒られることがあった。昔からそうだった。

 

 

 この20年の人生で学んだことがある。それはどうも私は『普通』からズレていること。

 

 

 見た目も考え方も『普通』とは違ってた。

 

 

 施設にいた時も私を見る目が異物を見る目と同じだった。気味が悪いと言われたことだってあったよ。お母さんもそれで私を迎えに来てくれなかったんだ……『普通』じゃない私を捨てたのは当たり前だったんだ。

 

 

 『普通』の人は『普通』じゃない人を受け入れることはしない。自分達の『普通』を守る為に私を攻撃したんだ。防衛本能ってやつ。同じメンバーのみんなもきっと防衛本能が働いているんだと思う。

 

 

 昔、()()社長に「アイドルやめる」って言ったことがある。B小町のセンターに抜擢されてから嫌味や陰口、悪戯まで日常茶飯事だった。私って『普通』じゃないから世界の厄介者だったの。でも社長からファンレター読めって言われて……そこから手始めにファンの人達を、そしてみんなを『推す』って決めた。大人も子供も幸せな人もそうでない人も全部。その中にB小町のメンバーも含まれていた。

 私がB小町に居る限り嫌がらせは尽きない。今までそうだったから、これからもきっとそう。でも構わないと思っていた。嫌がらせをしたいならどうぞご自由に……そう思っていたんだけど。

 

 

 コイが間違われて色々言われたみたい。

 

 

 私のお姉ちゃん……私の()()()()()。私の嘘を見抜いてくれた双子の姉妹。『普通』じゃない私が初対面の人の名前を憶えられないのにコイの名前は間違えずにしっかりと憶えていられた。

 

 

 双子の姉妹だからってこともあるかもしれないけど、私達は『普通』じゃないから……通じるものがあったのかも。そうだと嬉しいな。

 

 

 でも私のせいでコイが嫌味を言われて、怒っちゃってアクアとルビーと一緒に宥めようとしたんだけど、痛いところをついてくる。いじめられてそれがみんなの嫉妬からだってことも気づいてくれたし、忠告だってしてくれた。

 だけどこれからどうすればいいかなんてわからないよ。できればみんなとの不和を無くしたい。そっちの方がいいに決まっているから。

 

 

 でも私はバカだから……どうすればいいんだろう?ねぇ教えてよ……お姉ちゃん。

 

 

 そんなことを考えながらアクアとルビーを眺めていると視線を感じた。その方へ視線を向けると目があった……けどすぐに逸らされちゃった。

 

 

 コイに嫌味を言った子だ。ちょっと前に私にも「死んじゃえばいいのに」って言われた。名前はそう……

 

 

「○○」

 

 

 辛うじて思い出せた名を呟くとビクリと体を震わせた。きっと怖かったんだ。軽いショック状態にあったってアクアから聞いたし、私だと思ってたのに別人だったんだから。悪いことしちゃったかな?でもこればかりは自業自得だし……うん、ちょっと声かけてみよ。

 

 

「ねぇ」

 

――ひぃ!?

 

 

 声をかけたら小さな悲鳴を上げられた。そんなに怖がらなくてもいいのに。

 

 

「怖がらなくてもいいよ。だって私はアイだよ?」

 

「えっ?あ、ああ……アイ……ちゃんか……」

 

「そうだよ。なんかごめんね?お姉ちゃん……コイが怖がらせちゃったみたいだから」

 

「い、いや、べ、別に……いい……よ……」

 

 

 う~ん、相当怖かったみたい。笑みが引きつってるし、目を合わせてくれない。どうしよっかな?声をかけてみたけど何を話そうかなんて考えていなかった。

 

 

「ね、ねぇ……」

 

「うん?なに?」

 

 

 向こうから声をかけてきた。どうしたんだろう?

 

 

「アイちゃんのお姉さん……天野さんってどんな人なの?」

 

「う~ん」

 

 

 どんな人……か。私と同じで嘘つきなんだって言えたらいいけど、それでコイに嫌われたくないし……社長達にもあまり過去は話さない方がいいって言われた。でも話した方がいいと思う。このままお姉ちゃんが怖がられて悪者みたいにされたら嫌だもん。

 

 

「コイはね……」

 

 

 運命だった出会いから雇われるまでの経緯と煙草とお酒が好きだってこと、お父さんから暴力を受けていたこと、学校でいじめにあっていたこと、家出したことは伝えたけど、男のことは伝えなかった。それだけは社長達にもきつく言われた。この話をすればファンや記者があれこれ模索したり、実は私も同じことをやっているのでは?とあらぬ疑いまでかけられるって。私と瓜二つだから余計にって言ってたし、有名人のスキャンダルは世間の大好物とも言ってた。

 私もアクアとルビーを産んでるからスキャンダルの的なんだけど、コイも同じように秘密を隠していると思うと私達ってやっぱり姉妹だねって……コイは嫌がるけど、なんだか嬉しくなる。

 

 

 出会ってそんなに経ってないのにコイのことばかり考えるようになった。勿論アクアとルビーのことも忘れてないよ?ついつい考えてしまうのは家族だから……コイも私の家族だもん!

 

 

 ……そうなってほしいな。お姉ちゃんって堂々と言える関係になりたい。いつか4人で暮らせないかな?

 

 

「アイ……ちゃん?」

 

「あっ、ごめんごめん、どんな人って質問だったね?」

 

 

 コイのことを考えていたら返答忘れちゃってた。私ってばうっかりしてた。テヘッ♪えっとどんな人か……

 

 

「……家族になってほしいなって思ってる」

 

「?お姉さんなのに家族じゃない?」

 

「私は嫌われているの」

 

「えっ?な、なんで……?」

 

 

 ちょっと意外な表情をされた。嫌われているなんて思ってなかったんだ。『普通』はそうなんだろうけど、私達は『普通』じゃないから。

 

 

 私もそこは聞いていないし、話してくれない。でもなんとなくわかる。顔も声も瓜二つ……だから私と比べられることが多かったと思う。コイ自身のことを見てくれなかったんじゃないかな?私達が姉妹だってことを嫌がるのもそれが原因なのかもしれない。

 でも……それでもアクアとルビーのこと、社長達、同じメンバーのこと、そしてバカと言いつつも私を見てくれている。そのことが嬉しく、嫌われていることが悲しくなる。

 

 

 アクアとルビーのことは隠してそのことを伝えると黙っちゃった……どうしたんだろう?

 

 

「……嫌われていても、アイちゃんは天野さんと仲良くしたい?」

 

「もちろん」

 

 

 これは本当のこと。仲良くなって家族になりたい。

 

 

「お母さんに捨てられたから……今度は捨てられないように頑張るつもりなの」

 

「そういえばアイちゃんは施設に居たんだよね?」

 

「うん、私はお母さんがいて、コイにはお父さんがいたけど、お互いに親には関わらなくなって最近まで知らなかったの。お姉ちゃんがいるって。瓜二つだから通り魔に間違われたことで知るきっかけになって……本当だったら刺されていたのはコイじゃなく私だった。私のせいでコイには酷いことしちゃったって後悔しているし、下手したらコイが……死んじゃってたかもしれなかった」

 

 

 自宅でお酒を出した時も私が寝ちゃって、逃げることはできたのにそうしなかった。アクアとルビーのことも子供の時間を奪うなって心配してくれて、私の嘘を見抜いてくれた。文句言いつつも付き合ってくれる……優しいお姉ちゃん。

 

 

 お母さんが帰って来るまで家で一人ぼっち。私にも姉妹がいたらって思うことがあった。そしたらコイと出会えて……神様がかなえてくれたのかな?そうなら神様に感謝しないといけないね!

 

 

 胸の内を打ち明けると黙り込んじゃった。

 

 

「……ごめん」

 

「?なにが?」

 

 

 あれ?なんで急に謝られたんだろう?

 

 

「……死んじゃえばいいのにって前に言ったこと」

 

「あのこと?」

 

「……そう」

 

 

 俯いていて表情は見えないけど、声が震えてた。

 

 

「……アイちゃんはいつも目立ってた。センターになったのだってアイちゃんが努力したからって社長が言ってたけど、それでも……引き立て役にはなりたくなかった。悔しくて才能がない自分が情けなくて、比べて才能があって誰よりも輝くアイちゃんが憎かった」

 

「……」

 

「でも私が普通に持っているものを持っていないって気づかされて……ちょっと言い過ぎたと思った。死んじゃったら嫌味も言えなくなるのは困るから」

 

「嫌味は言うんだ」

 

「……うん、言うと思う。だって完璧なアイちゃんじゃないと……自分が許せないから

 

 

 蚊のなく声だったけど、聞こえた……私にはハッキリとそれが聞こえた。

 

 

「……ダンスの練習しなきゃ」

 

「そうだね」

 

「……負けないから」

 

「うん、私も同じ」

 

 

 休憩時間が終わり曲に合わせてダンスをするとアクアとルビーが応援してくれる。その光景をここで見れるなんて私ってば幸せ者~♪

 

 

 みんなもアクアとルビーの応援に虜になっていた。そして……あの子も。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 初めから一緒にいたのに名前を忘れちゃうなんて……でも今度はあの子の名前をハッキリと思い出した。

 

 

 完璧になれば……私もB小町の一員になれるかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ()()は私を受け入れてくれるかな?

 

 

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