一番星と屑星のふたつ星   作:てへぺろん

14 / 47
アイとコイの姉妹デート回もこれで終了です。


それでは……


本編どうぞ!




アイドル様とデート 後編

「どこで食べるの?」

 

「お前がアイドルの皮を被った化け物だからな。バレないところ」

 

「化け物じゃないよ?可愛い可愛いアイドルだよ?」

 

「可愛いアイドルは頭や足がぶっ飛んで喜ぶのか?」

 

「あれは面白かったね!今度もまたしよ?」

 

「ゾンビや怪物どもがまた犠牲になるのか……別にそれはいいんだけど」

 

 

 ゲームセンターで遊んで昼が過ぎた時間となっていた。バカも遊びに満喫したのかご機嫌の様子だが……

 

 

 プリクラで撮った写真を大事にしまい込んでアクアとルビーに見せるとかほざいている。やめろと言っても聞かねぇし、黒歴史をガキどもに見られるのかと思うと……気が滅入る。

 

 

 気分を変える為にオレ達は目的の場所へと辿り着いた。

 

 

「ここって……」

 

「そうだ」

 

 

 昼と言えばやっぱりラーメンでしょ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう……食べられないよ……」

 

「やっぱり油の乗った豚骨ラーメンはいい味だった♪」

 

 

 バカの顔色が悪い。食いすぎで妊娠したみたいに腹が出ていやがる……妊娠したことがあったんだったな。まぁそれはいいとして、これは自業自得だ。

 

 

 このラーメン店はそれほど人気があるわけではない。だが今はこのバカがいるのでそれも考慮してこの店を選んだが、決して不味いのではない。寧ろオレ的には好みの店で、ここの店長はアイドルとかそういうのには疎い人種でオレのこともただの客としてしか認識していないだろうからバカのことも知らないはずだ。

 

 

 店長のこだわりか豚骨ラーメンしかなく、量と油、味の濃さを自由に変えられる。トッピングも追加自由で値段もお手頃価格。味もいけるので知る人ぞ知る隠れた名店。そこで注文するのは量と油を増し増しにして味も濃くした濃厚ラーメンを頼んだ。バカもオレと同じものと頼んだ。初めはやめとけと忠告したがそれでも同じものを食べたいらしく実際に実物を見て唖然としてた。

 通常のラーメンの三倍はあるからな。しかも油も増して味も濃くしてあるために見た目からドロドロだ。お残ししないようにバカに言いつけて食べ始めたらやっぱりおいしい♪煙草も酒もいいけど、偶には油の乗ったものが恋しくなる時があるよね?そんな感じ。

 

 

 食べていると隣のバカが苦しそうにしていた。そりゃそうだ、体にあった量を超えた物を頼んだんだから。だからやめとけと言ったのに……お残ししないようにと言ってあったからバカは無理にでも食べ切ろうとするが無謀な挑戦だ。このままだとゲボを吐くことになるだろう。それはオレ的にも店側的にもダメなことだから食べれない分はオレが食べてやった。食べているその間にバカが真っ白に燃え尽きていた。無理をするからそうなるんだ。いい経験になったでしょ?

 

 

 腹が膨れたバカを近くの公園のベンチで休ませた。そこではガキを連れた母親達がいた。母親同士で世間話をしているんだろうが、オレには関係ないね。そうやって暇を潰していたらバカがずっと母親達を眺めていたことに気がついた。正確にはガキと仲良く話している母親達をだ。

 食べ過ぎて苦しんでいたのに、今ではただジッと眺めていた。こいつもアクアとルビーがいる。自分も母親だから他の母親のことを見ているのか?っとなんとなくだが、オレは声をかけなくてもいいのにかけてしまった。

 

 

「お母さんね、私を迎えに来てくれなかったんだ」

 

 

 ……そうだった。バカの家で酒を飲んだ時、酔いつぶれてうわ言のように呟いていた。

 

 

『……おかあさん……おいていかないで……すてないで……』

 

 

 ……バカとバカの母親に何があったかは……大体想像がつくが、オレには関係ない。だから自分で聞いておいて無視しようとしたが、勝手に昔話を語り始めやがった。

 短いようで長い時間だったが、語られた内容は重かった。その間にバカの腹は元に戻り、公園に居た母親達も消えて残っていたのはオレ達だけ。そしてバカは自分で語っておいて落ち込んでやがる。外見ではヘッチャラと装っているが、オレからしたらバレバレだ。

 

 

 やっぱりこいつは嘘つきだ。

 

 

 さっきまでは純粋に楽しんでいたくせに。チッ、嫌だが……あそこにいくか。

 

 

「おい行くぞ」

 

「今度はどこに連れて行ってくれるの?」

 

「つべこべ言わずにとりあえず付いてこい」

 

 

 これから行くところはオレにとっては関わりたくない場所だ。正直言えば行きたくない。行きたくないが、私は平気ですよとアピールしてくるうざったい状態のバカ……常にうざいが、付きまとわれるぐらいならと行先を告げずに重い足取りで向かう。

 目的地に近づくたびにどんどん足が重くなる。やっぱりやめようかなと思って何度か足を止めたが、笑顔()で見つめてくるバカにイラついた。この顔を見ていると腹が立つから嫌々ながらも目的地へと辿り着いてしまった。

 

 

「ここってカラオケだよね?」

 

「……そうだ」

 

「機嫌悪いね?」

 

「……うっさい」

 

 

 目的地へ着いたオレはバカの背を押して入らせる。受付で適当に時間を決め、スタッフから部屋番号を教えられて向かわせる。カラオケには男とデートと称して行くことはあった。金を出すからデートしてと言われ、金が余分に手に入り、全部向こう持ちだから内心では嫌々だったが付き合ってやったこともあった。バカの存在を知ってからはカラオケなんて行くことはなくなって懐かしいな……なんてそんな余計なことを思い出していたら、バカがずっとこっちを見ていた。なんだよ、なに見てやがる?

 

 

「意外だね。コイがここに来るなんて」

 

「誰かさんのせいでここに来る羽目になっちまったんだよ」

 

「へぇ、じゃあその誰かさんのおかげってわけだ。いや~流石私だね♪」

 

「……誰もバカのことだとは言ってないが?」

 

「でも私しかいないよね、状況的に考えてさ。これはまさに名推理!私って名探偵じゃない?」

 

「どこが名推理だよ。名探偵じゃなくて()探偵の間違いだろ」

 

「もうそんな小さいことばかり気にしていたら人生楽しめないよワトソン君?」

 

「……むかつく」

 

「むかつくほど可愛いってことだね!うんうん、やっぱりこれも私のカリスマ性がなせる魅力ってやつ?」

 

 

 調子乗り始めやがった。うざっ!自信過剰もいい加減にしろ。こっちは仕方なく連れてきただけだって!!ああもう、バカのせいでまたイライラしてきた。

 

 

「どこ行くの?」

 

「煙草吸いに行くだけだ。勝手に歌ってろ」

 

「ええ~、歌おうよ~!!」

 

「へっ、嫌に決まってんだろ」

 

 

 なんか言っているバカを残してオレは喫煙所へと向かい煙草に火をつける。

 

 

 そこで何本か煙草を吸って時間を潰すつもりだ。今頃バカが一人で歌っている頃だろう。歌っていたら悩んでいる暇もなくなってこっちはうざったい笑顔を見ずに済むし、オレは歌いに来たわけじゃない。バカの付き添ってやっているだけ。時間を潰すついでに近くのコンビニでガムかなんか買ってくるか。

 そうしている内に結構経った。時間も潰せたし喉も乾いたからドリンクバーでコーヒーでも入れて部屋で飲むか。

 

 

 ドリンクバーでコーヒーを入れ、部屋へ戻るとバカが剥れて待っていやがった。なんだよ?歌ってたんじゃないのか?ここに来た時よりも不機嫌になっているのは何故だ?

 

 

「もう遅い!待ってたのに」

 

「はっ?待ってた?」

 

「そっ、はい」

 

「……なんだこれ?」

 

「なにってマイク。そんなこともわからないの?」

 

 

 何とぼけた顔をしている?オレに歌えと?冗談じゃない、お前の機嫌を直す為に連れてきただけでオレは歌いに来たわけじゃないんだぞ?そのことを伝えたらこいつオレが帰って来るまで待ってたらしい……はっ?小一時間ぐらいは時間を潰していた。その間ずっと待ってたって言うの?そう聞くとバカは首を縦に振った。あまりにも遅いから喫煙所を覗いたらしいがその時はオレがコンビニで買い物と雑誌の立ち読みをしていた頃だ。連絡を取ろうにもオレのスマホはこいつにダメにされて仕方なく帰って来るまでずっと待っていたということを聞かされた。

 

 

 ……何考えてんだ?オレはバカの頭ん中はお花畑すらない空っぽだということを理解した。そして当の本人は長い時間待たせていたことに対して不服だと視線で訴えてきていた。

 

 

「コイと一緒に歌いたいから待ってたの」

 

「おいおい、お前の為に連れてきてやったってのに無駄な時間を使いやがって……料金もただじゃないんだぞ?」

 

「だったら初めから歌ってよ」

 

「歌わないって言ってるだろ。オレは歌う為に来たわけじゃねぇって」

 

「じゃあ私も歌わない」

 

 

 更には頬を膨らませて怒っていやがる。怒っている姿も様になるのが腹が立つ。何よりもオレの御厚意(ごこうい)を無駄にするつもりだ。

 

 

 マジでオレが歌わないとこいつも歌わないつもりだ。それならいいよ、もう帰るっ!!

 

 

「……」

 

 

 つもりだったが、バカが腕を掴んで離さない。ま、まさかまた発信器をつけられているとかないよねっ!!?

 

 

 どっと嫌な汗が流れたが、バカが神妙な面持ちで見つめてくる。オレは無視して帰るという選択肢を選べなかった。

 

 

「……明日からまた仕事なの」

 

「知ってる」

 

「しばらく忙しくなるからこうして遊べないの」

 

「ふーん」

 

「施設でも友達なんて出来なかった。誰かとこうやって遊んだ記憶がほとんどないの」

 

「……そうかよ」

 

「私が『普通』じゃないから……」

 

「……」

 

「だからお母さんは私を捨てたんだなって……捨てられて当たり前だったんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っ」

 

 

 バカの瞳に薄っすらと光る液体が湧きあがっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……チッ」

 

 

 バカの手からマイクをぶんどった。

 

 

「……えっ?」

 

「一曲だけだからな」

 

「――ッ♪」

 

 

 

 視線で早く曲を入れろと訴えた。そしたらバカがしけた面を満面の笑みに変えて機械を操作する。流れてきた曲はやっぱり……

 

 

 『サインはB』それをバカと一緒に歌うことになるなんて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……恥っ!!

 

 

 体中が熱い。短い時間だったがとんでもなく長く感じた。それもバカと一緒に歌うという公開処刑……も、もうこれでいいだろぉ!!?一曲だけの約束だから文句はないはずだ!!

 

 

 オレは煙草を吸いに……

 

 

「………………………………………………」

 

 

 バカが惚けた顔でオレを見ていた。な、なんだよ?なにか文句でもあるのかよ!?体が熱く、早くここから逃げ出したい衝動に駆られながらも見られていることに我慢できずにバカに言った。

 

 

「な、なにを惚けていやがる!!」

 

「………………………………………………」

 

「……ど、どうした?なにか言えよ!!」

 

「………………………………………………」

 

 

 ……反応しない?どうなっているんだ?

 

 

 気になったオレはバカの目の前で手を振ってみたがそれでも反応は返って来なかった。あまりにも反応がないのでスッと体の熱が収まってしまった。もしかしてバカだと思っていたけど遂にぶっ壊れたとか?仕方ないから肩を掴んで揺すってみるとハッとした様子で我に返ったみたいだ。

 

 

「凄いね。コイって歌が上手いんだね!」

 

「う、上手くないし……」

 

 

 バカが上手いなんて言い出すなんて……い、いやオレは上手くなんかない。バカはアイドルに対してオレはただの一般人で比べれば天と地の差があるはずだ。こいつはオレを調子づかせようとしているだけ、そうすれば調子に乗って何曲も歌ってくれるとかとか思っているに違いない。そんな手には乗るつもりはないからっ!!

 

 

「私ね、一緒に歌おうって思ってたけど途中から見入っちゃってた」

 

「はっ?お前……途中から歌ってなかったのか?」

 

「そうだよ。初めは小さい声だなって思ってたけど、段々いい声になってきて振り付けも完璧だったし!もしかして練習していたの?」

 

「れ、練習なんてやってない!!……っていうか、振り付けとかしてたのか!!?」

 

「うん!それはもう楽しそうにしてたよ!」

 

「……」

 

 

 沈静化したはずの体温が上がっていくのを感じる。それもさっきよりも熱いと感じられた。

 

 

 う、嘘だ……た、確かにバカの話題が上がる度にむかついて、動画でバカのライブ映像を見たことがあったが憶えようとも思わなかったし、そもそも大っ嫌いなバカを馬鹿にするために見ただけで振り付けなんて意識してなかった。歌詞も画面に映るのをただ言葉に出しただけでそれを楽しそうにって……楽しいなんて……思ってないのにっ!!?

 

 

 頭の中がぐわんぐわんと様々なものが回っている……楽しんでいたなんてありえないっ!!?

 

 

 それもこのバカに見られていただって!?こいつの言葉が嘘じゃないってわかるから余計に認められない。認めたくない……のにバカが褒めてくる。

 

 

「もうびっくりしちゃった!歌も上手いし、決めポーズも完璧!」

 

「お、おい、もうやめろ……やめてくれ……っ!

 

 

 ヤバい、脳みそが溶けそうだ!!こいつはわかっててやっているんじゃねぇだろうな!?

 

 

「コイがここまで上手いなんて知らなかったよ!もう一回歌っちゃお♪」

 

「――はぁ!?ちょ、ちょっと待て!!待ってぇ!!一曲だけって約束だったのに!!?」

 

「私は途中までしか歌えてなかったから初めからやり直しね」

 

「じょ、冗談じゃない!!」

 

 

 このままここに居ればまた恥ずかしい思いをしなければならなくなる。オレはこの場から撤退しようとしたが、カチャリと聞いたことのある音が聞こえた。恐る恐る手元を見るとバカと手錠で繋がっていた。

 

 

「最後まで歌ってくれないと帰さないからね?」

 

 

 この後、滅茶苦茶歌わされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや~、カラオケで歌うのっていつもと違って面白かったね♪」

 

「……死にたい」

 

 

 一曲だけのはずが何度歌わされたか……しかもこのバカとデュエットさせられるとは思っていなかった。逃げられなかったとはいえ、オレが口を閉ざして歌わなければ良かったんだが、そうしたら不気味な光を宿した瞳がギロリと見つめてきた。しかも無表情でだ……怖かった。

 だが終わりだって必ず来る。終了間近の連絡を知らせるコール音が備え付けられた電話から聞こえてきた時は助かったと思ったけれど、こいつが延長を申し出たのは予想外過ぎて唖然とした。終わりが遠のき、地獄のライブが続いて帰りが夜になった。

 

 

 夜なんだけど熱い。まだ体温が下がる気配がない……ちくしょう、これも全部バカのせいだ!!

 

 

「カラオケなんて連れて行くんじゃなかった……」

 

「もう、どうしてそんなこと言うかな?私はコイと一緒で良かったよ?」

 

「……そうかよ」

 

「それにカラオケなんて久しぶりだったんだよ?」

 

「……メンバーと行ったことはないのか?」

 

「あるよ。初めの頃だけ。センターに抜擢されてからみんなとギスギスし始めてそこからは行かなくなっちゃった。誰かとこうして遊ぶのもなくなって、やることないしアイドル活動に専念して、妊娠して、また専念して休みがあってもアクアとルビーの面倒を見ないといけない。それはいいんだけど、同じ歳の子と『普通』に遊ぶことしてなかったなぁって改めて思い知ったの」

 

 

 そう語るバカの横顔が……寂しそうに見えた。

 

 

「本当は元々コイがだらしない生活送っていないか心配で見に行くだけだったんだよ?」

 

「それで発信器は度が過ぎるぞ」

 

「にひひ♪」

 

「笑って誤魔化すな」

 

「でもおかげでコイとデート出来たから私はラッキーだと思ってるよ?」

 

「デートとか気持ち悪っ!?そもそもオレに連れまわされて嫌じゃなかったのかよ?」

 

「全然。ゲームセンターに誘ってくれて、一緒にプリクラ撮ったり、ラーメン屋さんで食べきれないのに食べて気持ち悪くなって、カラオケで一緒に歌ってくれた。それを嫌だなんて思わない。おかげでこれが『普通』なんだって実感できた。今日だけは『普通』の女の子になれた気がしたんだよ?」

 

「……そうか」

 

 

 そこで会話が途切れた。沈黙のまま、マンションの前まで送り届けてオレは帰ろうかと踵を返した時にバカに呼び止められた。

 

 

「……ねぇ、コイ」

 

「……なんだよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………………………………………」

 

  

 バカをマンションに送り届けてアパートに帰ってきたオレは綺麗になった部屋でベットの中に潜り込んでいた。今日もシャワーだけ浴びて適当にバカの買ってきた食材の残りで食事をして、まだ真夜中になっていないのに今はすぐさまベットに入りたい気分だった。

 

 

 今日のことを思い出す。

 

 

 バカが突如アパートにやってきた。

 

 

 発信器なんてものをつけてやがって恐怖した。

 

 

 言われるがまま掃除して、朝食を食べさせられた。

 

 

 犬のようにバカがついてくる。

 

 

 バカとゲームセンターで遊んだ。

 

 

 対戦系では全勝し、協力系ではエンディングまでクリアした。

 

 

 バカがナンパされた。

 

 

 チャラ男を追い返した。

 

 

 プリクラで一緒に写真を撮った。

 

 

 濃厚ラーメンを食べた。

 

 

 バカが無理をして気持ち悪がってた。

 

 

 バカが過去を語りやがった。

 

 

 うざったいからカラオケに連れて行った。

 

 

 オレと歌いたいとほざきやがった。

 

 

 仕方ないから一曲だけ付き合ってやった。

 

 

 一緒に歌いたいと言っときながら途中から惚けていたとか……最後まで歌えよ。

 

 

 オレの歌を上手いとか言いやがった。

 

 

 無意識に振り付けを踊っていたらしい……死にたい。

 

 

 結局一曲だけにはならず何度も歌わされた。しかもデュエットで。

 

 

 こんなに恥ずかしい思いをしたのは初めてだった。

 

 

 

「………………………………………………っ」

 

 

 

 布団を頭まで被る。瞼を閉じるとバカの声が聞こえてきた。

 

 

『……明日からまた仕事なの』

 

 

『しばらく忙しくなるからこうして遊べないの』

 

 

『施設でも友達なんて出来なかった。誰かとこうやって遊んだ記憶がほとんどないの』

 

 

『私が『普通』じゃないから……』

 

 

『だからお母さんは私を捨てたんだなって……捨てられて当たり前だったんだ』

 

 

『本当は元々コイがだらしない生活送っていないか心配で見に行くだけだったんだよ?』

 

 

『にひひ♪』

 

 

『でもおかげでコイとデート出来たから私はラッキーだと思ってるよ?』

 

 

『全然。ゲームセンターに誘ってくれて、一緒にプリクラ撮ったり、ラーメン屋さんで食べきれないのに食べて気持ち悪くなって、カラオケで一緒に歌ってくれた。それを嫌だなんて思わない。おかげでこれが『普通』なんだって実感できた。今日だけは『普通』の女の子になれた気がしたんだよ?』

 

 

『……ねぇ、コイ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『コイと遊べて本当に楽しかった!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これは……嘘じゃない』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オレ……も……たのし……かった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふわぁ……朝……かぁ」

 

 

 いつの間にか朝になっていた。そういえば昨日意識を手放す前に何か言ったような気もしたけど……まぁどうでもいいことだったに違いない。さてと、朝食の前に顔でも洗うか。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。