一番星と屑星のふたつ星   作:てへぺろん

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日常系になりつつありますね。タグに「日常系」と追加した方がいいのかな?


追記:タグ追加しました。


たっぷりデートを楽しんだアイ。年頃の女の子が経験する『普通』の時間を知ることができた彼女は更なる高みへと昇る勢いです。


それでは……


本編どうぞ!




兄妹の誓い

「緊急会議を始めます」

 

「おう」

 

 

 『だいいっかいきんきゅうかいぎ』とひらがなで書かれた弾幕を掲げたルビーに真剣な眼差しを向けるアクア。彼らはアイが寝静まった後、寝たふりをしていた二人はアイが起きないように寝室から抜け出した。そして今、別室まで移動した二人は切羽詰まっている。

 

 

「お兄ちゃん、どうすればいいと思う?」

 

「まず相手が誰なのか聞き出せればよかったんだが……」

 

 

 アクアは思い出す。昨日の夜からアイはどこかに出かける様子だった。今日は仕事もレッスンも休みだったアイはアクアとルビーをミヤコに任せて出かけた。ミヤコが聞いても「内緒!」で済ませたようで、アイ大好きっ子のルビーが一人で出かけるアイに付いていくと駄々をこねてもミヤコが了承しなかった。そもそもアイに子供はいない設定なので、一緒だと何かとまずい。幼稚園児になったのにルビーはまだ親離れ出来ないのかとアクアは内心呆れていたが、彼自身もいつもと違うアイの様子に違和感を持っていた。

 そしてアイが帰ってきたのは夜、ルビーが真っ先に玄関へと向かい、その後をアクアとミヤコが出迎えたのだが、三人は目を奪われた。

 

 

 

 輝いているアイがそこにいた。

 

 

 まるでそこに一番星が輝いているかのようで、かつてアクアの前世であった雨宮吾郎は病院の屋上でアイがアイドルの自分を語ったその姿と重なった。

 

 

『星野アイは欲張りなんだ』

 

 

 アクアは勿論のこと、ミヤコやルビーですらアイに声をかけられるまでその姿に見惚れていた。

 

 

 その後はミヤコも交えて食事中ずっと三人は上機嫌のアイが気になっていた。B小町の歌を鼻歌を歌っている彼女の様子に三人共に何があった?と思い、何故そんなに機嫌がいいのか聞いてみれば……

 

 

 アイから「デートしてきたの♪」と思わぬ言葉を口にした。

 

 

 ガチャンっと部屋に響いた。アクアとルビーだけでなく、ミヤコも手にしていた箸や食器を落とし、アイが慌てた様子でアクア達に怪我がないか確かめようとするがそれどころではない。

 

 

 慌てた様子のミヤコが問い詰めるが、アイは「内緒!」と躱す。アクアとルビーも相手は誰かと聞いても「恥ずかしがっちゃうから()()()言えないの。ごめんね?」と残念そうな顔をされたらこれ以上追及できるほど最推しを困らせる度胸は二人にはなく、ミヤコは頭を抱えて「また闇が増える!!」と嘆いていた。

 結局アイが「まだ内緒にしておいてね♪」とウインクまで付けられたらアクアとルビーは何も言えなくなり、社長にはまだ内緒にしておくことをミヤコに約束させ、この短時間でミヤコはげっそりとやつれてしまった。

 

 

 トボトボと帰っていくミヤコを見送ったアイは()()()()()()()()()()()()()、寝る直前まで眺めていた。寝る時までいつも以上にご機嫌だったこともあり、これは余程のことがあるとアクアとルビーは第一回緊急会議を開くことになったのだ。

 

 

「このままだとママの処女が奪われちゃう!!?」

 

「いや、アイは処女じゃないだろ」

 

「なに言ってんの?ママは処女受胎だって言ってるでしょ?」

 

「いや、それは無理がある……って俺も実は処女受胎だったらいいなと思ってた」

 

「でしょ!?」

 

「でも現実を見よう。俺達がその証拠だ」

 

違う!!ママに男なんていない!!

 

「しっ!声を下げろ!アイが起きるだろ!!」

 

「あっ、ごめん……」

 

 

 二人の声はアイには届かなかったらしい。そっと寝室を覗くと愛らしい寝顔をさらけ出していて胸をなでおろした。確かにデートとアイの口から出たのは驚いた。就寝するまでずっと笑みを浮かべていたぐらいに楽しかったのだろう。知らない男と楽しそうに買い物したり、食事をして遊んだりしているアイの姿を想像するだけでもゲボを吐いてしまいそうになった。ルビーもその光景を想像してしまったのか食事を終えてからお風呂に入るまでの間は放心状態が続いていたぐらいだったのだ。しかしいったん落ち着きを取り戻したアクアは引っかかるものがあった。

 

 

「変なんだよな」

 

「なにが?」

 

「アイがデートって言ったの」

 

「どこが変なの?ママが悪い男に騙されているかもしれないのにおかしなこと言っている暇なんてないの!」

 

「……そもそも相手は男なのか?」

 

「えっ?お兄ちゃん頭おかしくなったの?」

 

「正常だ。なぁルビー、最近のアイってどう思う?」

 

「どうって?」

 

「最近のアイは天野に夢中じゃなかったか?」

 

「……うん」

 

「それなのに男に会いに行くってのも……アイだから余計におかしく感じるんだ。アイが会っていたのは天野なんじゃないか?」

 

「はぁ!?あのアマに会いに行ってた!?」

 

 

 アクアの口から出た言葉にルビーは驚き、不快感を露わにした。アイが男と会っているだけでも不快なのに更にはコイと会っていたとなれば相当なものだ。

 

 

「でも住所を知らないはずだよ!?」

 

「俺達が見ていない時に教えたとか……いや、天野はアイを嫌っているからそれはないか。でも最近のアイは何と言うか押しが強いと言うか……」

 

「あの手錠どこで入手したんだろうね?」

 

「それは知らない方が俺達の為でもあると思うぞ?」

 

「……そだね」

 

 

 前世が医者だったアクアも母親を取られるかもしれないと気が高まっていたルビーですらもアイの秘密に冷静さを取り戻した。アクアの言うように知らない方がいいことも世の中あるのだ。

 

 

「天野と会っていたならそれほど問題じゃないな」

 

「問題ないわけないじゃん!相手があのアマだったらママが寝取られたことになっちゃう!!」

 

「いや、寝取られてはいないだろ」

 

「お兄ちゃんなんでそんな冷静でいられるのさ?最推しがあのアマに騙されているかもしれないのに守らないとって思わないの?キモオタでしょ!!」

 

「キモオタ言うな。天野は悪い子じゃないと俺は思いたい。あの子は運悪く社会の裏側に関わってしまっただけなんだ」

 

 

 アクアはコイの会話から彼女が多くの男と肉体関係を持っていたことを知った。子供に聞かせる内容ではないからミヤコは渋ったが、無理を言って彼女の過去を聞き出した。ミヤコの方も幼稚園児に聞かせる内容でもないのでぼかしていたが、アクアの前世が成人をとっくに過ぎた医者だったので、ぼかしたところで無駄だった。ルビーの方も前世が子供とはいえ、幼稚園児ではない。そういう知識はなくともコイが辛い人生を送ってきたことは理解しているつもりだ。

 だがそれとこれとは話が別、ルビーにとってコイは母親のアイを叩き、馬鹿にする言葉を投げつける不良。煙草と酒に溺れ、アイの御厚意に対して平気で唾を吐く。双子の姉妹であっても看過できるものではなく、ルビーがコイに対する好感度はマイナスとなっていた。

 

 

「……それでも……私は好きじゃない」

 

 

 ルビーがそれを言うのも仕方ない。コイとのファーストコンタクトはワーストコンタクトだったのだから。

 

 

「今はそれでいいが、俺が危惧しているのはそこじゃない」

 

「?どういうこと?」

 

 

 ルビーは首を傾げた。アクアの危惧しているのはそこではなかった。

 

 

「ルビー、俺達の父親のことなんだが……」

 

「なに言ってんの?私達はママしかいないんだよ?父親なんて存在しないんだよ?」

 

「……まぁ、そう思うならそれでいいが、もしかするとアイが危険かもしれないんだ」

 

「えっ?さっきからお兄ちゃんは何を言っているの?」

 

 

 アクアは自分の考えをルビーに伝える。 

 

 

 元々犯人の目的はアイだった。しかし間違えてコイが刺され、犯人はまだ捕まっていない。そもそも引っ越したばかりの住所を何故知っていたのか?住所が知られているのはおかしいのだ。それにアクアとルビーの存在、子供がいることも知っていた。何故そんなことまで知っていたのか?

 

 

 もしかしたら犯人はアイの関係者、または協力者によってその情報を知らされて犯行に及んだ可能性があった。

 

 

 斎藤夫妻はまずないだろう。あの二人はアイに献身的に接して娘のように思っている。他にもアイに関わっている者は何人かいるが、アクアとルビーのことは秘密とされ知るものはごくわずか。その中でもアクアが目に着けた人物……

 

 

 アクアとルビーの父親。つまり自分達の父親が怪しいと睨んだ。

 

 

 父親がアイを殺そうとしていると。

 

 

 可能性の話だが、ないとは言えない。犯人はまたアイを狙って犯行に及ぶかもしれない状況に変わりはないのは確かなのだ。この話を聞かされてルビーも危機感を覚えてあたふたし始めた。

 

 

「ど、どうしよう!?」

 

「斎藤社長とミヤコさんには話すつもりだ。ただまだ可能性の話だと言うことは忘れないでくれ。父親が誰か話してくれたら一番手っ取り早いがあのアイだ。話してくれるのを待つしか俺達には方法がない」

 

「そんな……!!」

 

「それにもう一つ心配なことがある」

 

「もう一つって?」

 

「天野のことだ」

 

「ああ……ママと同じだもんね」

 

「犯人が間違えたんだ。また間違えて襲われる可能性だってある。アイだけでなく、天野の身にも危険が及ぶ可能性があるんだ。俺的にはアイと天野が一緒にいる方が守りやすいし、斎藤社長が天野を雇ったのは正解だったと思っている。俺達もそのおかげで二人の傍にいやすくなった」

 

「ママはいいけどアマは別に……」

 

「ルビー、天野に何かあればアイが悲しむ。推しの幸せを願わないのか?」

 

「ぐぬぬ!ママが幸せになってほしいけどあれは嫌だ。でも……死んでほしいとは思ってない」

 

「……ああ、死んだら会えなくなる。それはとても悲しいことだ。俺達は運が良かっただけ、転生なんて多くの人は体験できずに天国に行ってしまうからな(さりなちゃんがもし転生していたら会えるかな?)」

 

 

 アクアの脳裏にはアイを推していた少女の姿が浮かび上がった。

 

 

 長くはない短い間だったが、アクア……雨宮吾郎は転生してもその少女のことを忘れたことはなかった。

 

 

『せんせ』

 

「お兄ちゃん?」

 

「――ッ!!?」

 

 

 アクアの目にはルビーと一人の少女が重なったように見えた。

 

 

「い、いやなんでもない。それよりもルビーも協力してほしい。俺の予想も合っているかわからないし、まずは犯人が捕まることを祈るが、見ているだけなんてことはしたくない。みんなでアイと天野を守るぞ!!(さりなちゃんが転生しているなんて僕の傲慢だ。そんなことあるわけがないのに……)」

 

 

 だがすぐに頭から振り払う。さりなとルビーは違う、別人だと自分に言い聞かせた。

 

 

「うん!!ただしあのアマが余計なことをすれば話は別だからね!」

 

「ああ、今はそれでいい」

 

 

 アイとコイを魔の手から守る為、推しの幸せの為に兄妹は固い握手を交わしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見てアクア!ルビー!昨日コイと一緒にプリクラ撮ったんだよ♪」

 

 

 固い握手を兄妹で交わした翌日、アイは自慢げにプリクラで撮った写真をアクアとルビーに見せつける。昨日コイとの約束も早朝になれば無効となり、彼女がこれを知れば悶絶するだろう。

 今日から仕事が忙しくなる大変な時期の早朝だったが、この日のアイのコンディションは最高に達していたと言っても過言ではないと彼女のファンであるアクアとルビーは後に語る。ちなみにルビーはアイとコイがデートしていたことを知ると表情に般若が宿り、アクアはいつもはツンツンしている(コイ)と最推しの(アイ)がイチャコラする妄想をして「尊い」と呟いていた。

 

 

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