一番星と屑星のふたつ星   作:てへぺろん

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アイドルが輝く為には一人の力だけでは輝けない。それを支える人達がいるから輝ける。裏方から見たアイドルの姿はどう映っているのか。


それでは……


本編どうぞ!




舞台裏の光

「それでね、あの人ったらキャバクラでキャバ嬢にウザ絡みして店から出禁くらったこともあったわね」

 

「ふーん、まぁあの顔だから当然と言えば当然だな」

 

「そうね♪」

 

 

 珍しい組み合わせが月が夜空に浮かぶ夜に同じテーブルでお酒を片手に会話していた。

 

 

 一人はミヤコ、そしてもう一人はコイだった。何故この二人が一緒にいるのか?

 

 

 二人がいる場所は斎藤夫妻の部屋であり、ミヤコがコイを誘ったのだ。壱護はどこか?残念なことに彼は今も仕事中であろう。あと言っておくとアイも同じマンションに住んでいるが、彼女にはコイがいることを内緒にしている。知れば「私達も混ぜて!」とアクアとルビーも連れて乱入してくるだろうからだ。ミヤコは今、コイと一対一で話し合いたいと思っていた。

 

 

 アイドルグループ『B小町』の仕事は忙しく、今までミヤコがアクアとルビーの面倒を見ていたが、あまりの忙しさに手が回らず、そんな時にコイの存在を知る。アクアとルビーの秘密を知り、猫の手も借りたい状況であった為なんとしても欲しい人材だった。彼女の性格には少々問題があるが極悪人ではないし、アルバイトスタッフ兼アクアとルビーの面倒を任せると意外にもちゃんとしていたことに驚いた。

 お金の為とは言っているが、慰謝料と口止め料に迷惑料を要求しておきながら、こっちが次第に払うと約束すれば律儀に待っていてくれている。仕事もちゃんとしているので、雇って正解だったとミヤコは内心ガッツポーズを取った。ベビーシッターをしていた時に出会っていればと今でも思ったりするが、とっくに過ぎてしまったことなので忘れよう。

 

 

 そのお礼を兼ねてお酒で支払うつもりでこの場に誘った……だけではなかった。

 

 

 ミヤコはコイと対面した時は良い印象を抱かなかった。アイに手を挙げ、弱みを握りお金を要求し、人を馬鹿にしていることに腹が立った。だが彼女の闇を知るとその気持ちもどこかへ消えてしまった。

 

 

 暴力、いじめ、理不尽な目に遭って家出をした先で社会の闇に身を落とした。もし犯人に間違われていなかったら、アイと出会わなければ彼女が双子の姉妹だったこともわからず、一生、二人は関わることなく人生を送っていたかもしれない。言い方は悪いが刺されなかったらアイが刺されて死んでいたかもしれない。壱護が夢見た『自分が育てたアイドルでドームをサイリウムで染め上げること』も叶わなかったかもしれない。ミヤコ自身も夢見ていたそれは……ドーム公演の日に叶った。

 ミヤコは感謝と罪悪感を抱いていた。コイを真っ当な道へと進ませるために無理やり雇用したりした。嫌々と言いながらもアクアとルビーだけではなく、アイを元気づけたりしてくれた。

 

 

 どこかにアイが出かけて上機嫌で帰ってきた時、彼女は今までよりも更に輝いていたようにミヤコには見えた。しかしデートなんて言葉が口に出たからミヤコは頭を抱えた。翌日にはコイと遊んでいたことを知ると安堵から涙が流れたほどだ。コイの存在がどこか危なげなアイを支えてくれる柱となっていて、更にはニノにも多大なる影響を与えた。

 アイとニノは初期メンバーの生き残り。B小町の中でお互いに付き合いが長いはずだが、仲は良いとは言えなかった寧ろ悪かった。しかしコイの登場で少しずつだが二人の仲は悪くはなくなったようで、初めはコイに怯えていたニノだったが、共に映画の撮影に出向いた時に何かあったのか距離が近くなった。同時にニノのパフォーマンスの質が上がり、怯えていた彼女はどこに行った?その変化に壱護とミヤコはコイを「弱みでも握っているのか?」と疑ったぐらいだ。ニノがグーンと成長したおかげでB小町は更に力をつけた。

 

 

 しかしコイと一緒に居る時のニノを見つめるアイの瞳がどこか恐ろしかった。

 

 

 まだアイとメンバーとの仲は改善したとは言えないが、少しはマシになった……たぶん。

 

 

 ミヤコはお互いの立場が苦労人ポジションの位置にいることにある意味でコイに同族意識が芽生え、アイの暴走の被害者であることに同情したりと一緒にお酒を飲もうと考え行動に移した結果が現状だ。お酒が飲めるとわかるとコイは食いつくので連れ込むのは簡単だった。

 

 

「コイさん、仕事にはもう慣れた?」

 

「少しはね。だがニノの時みたいにオレを外へ出すのは辞めてほしいんだけど?」

 

「あらどうしてかしら?」

 

「わかっているだろ?バカと瓜二つなのに性格はクソ、言葉遣いも荒いし、格好もパーカーで現場に向かう。それは人の自由だから許されるけど顔を隠して煙草吸ってる見るからに不良な人間がスタッフとか会社のイメージダウンに繋がるぞ?」

 

「そうはならなかったわよね?ニノさんから()()()()挨拶したって聞いたわ。それにあなたに感謝していたわよ?おかげで溜まっていた鬱憤がスッキリしたって」

 

「……あいつそんな余計なことまで言っていたのか。後で絞めてやる」

 

「口止めもしてなかったのにそれは無いと思うわよ?やめてあげなさい」

 

「……チッ、はいはいわかったよ」

 

「はいは一回でしょ?」

 

「お前はオレの母親か!?」

 

「はいは?」

 

「……はーい」

 

「ふふっ♪」

 

 

 ミヤコは小さく笑った。こうしてお酒を飲んで話し合える同性がいることで彼女も仕事のストレスから解放されるのだろう。夫の壱護では話す内容も違い、アイではこうはならなかっただろう。それにミヤコはコイに近しい道を歩む可能性もなくはなかったのだから。

 

 

 ★------------------★

 

 

「……うぅん……あら?私ってばいつの間にか寝てしまったいたのね」 

 

 

 コイさんとお酒を飲んでいたはずだけど……彼女の姿はどこにもなかった。どうやら私は酔いつぶれて寝てしまっていたようね。お酒には強いと思っていたけど、そんなことはなかったわね。

 

 

 私は斎藤ミヤコ、年齢は……トップシークレットよ。決しておばさんじゃないから!!

 

 

 初めて見た東京の光はキラキラしていて私の心を奪っていった。この東京がこれから私が生きていく場所であり、まるでゲームの世界みたいだと思ったわ。自分を磨いて人に気に入られ、仕事も転職を繰り返してスキルアップしての繰り返し。初めは良かった、けど次第に次から次へと私よりも可愛い子が現れて、タレントの肩書も意味もなくなっていき、過去の栄光にみっともなくしがみつく。自分の居場所を失いかけていた……そんな時にあいつに出会った。

 斎藤壱護に誘われて、芸能界では上手くいかなかった私は今度は裏方に回って、皮肉だなと思ったけど、アイドルの背中を見るのが……いいえ、アイドルの光が思いの外、悪くなくて、あいつの夢で私の夢でもあったドーム公演は大成功して感極まって泣いてしまった。でもそれで終わりじゃなくてこれからも私は裏で光を支えていくって決めていた。

 

 

 そんな中でコイさんの存在が明るみに出ると……私は正直に言えば初めは関わりたくなかった。不良で暴力的、アイさんには悪いけど、受け入れられそうになかった。でも彼女のことを知れば知るほど嫌いにはなれなかった。

 

 

 アイさんがアイドルなのに妊娠し、父親は誰なのかも不明で闇が深すぎると思ったわ。アクアとルビーを産んだのも十分なスキャンダルだけど、コイさんの闇は更に深かった。世の中の理不尽の犠牲者……それがあの子だった。

 私も居場所を失っていたら……壱護(あの人)に会わず、それでもしがみつこうと足掻いていたら……誰かの愛人にでもなっていたかもしれない。もっと酷ければ……コイさんと同じ道を歩んでいたかもしれない。大人達の事情で人生を狂わされた悲しい子供、でもあの子は優しさを持っている。それは私が保証する。

 

 

「……もう、あの子ったら」

 

 

 コイさんはソファーで寝てしまった私に毛布をかけてくれていた。そのちょっとした行動が彼女の優しさを証明する証だった。

 

 

 仕事は忙しく、自分の時間もほとんど取れなくなった。けどそれを苦だとは思っていないわ。コイさんのおかげで仕事は少しは楽になったし、アイさんも更に磨きがかかって、最近ではニノさんも輝きを増した。まだメンバーの内ではギクシャクしているけど、少しずつ変わっていくと予感させてくれる。

 B小町の輝きはアイさんだけでは終わらない、終わらせない。みんながそれぞれの輝きを宿せるようにする。それも裏方の仕事……コイさんとは仕事上では上司と部下の関係だけど、良い関係を築けると思っている。

 

 

「さっ、明日も頑張るわよっ!!」

 

 

 アイさん達だけじゃない。コイさんにも本当の幸せを手に入れる日が来るように壱護(あの人)と話し合って決めた。私達は全力でサポートしていくつもり、アイさんのように手のかかる子じゃないけど、あなたが真っ当な道を進めるようにするのも大人の役目、少しぐらい大人に甘えても罰は当たらないわ。

 

 

 それと……アイさんが狙われている。アクアから伝えられた以前のマンションは引っ越したばかり、その住所を知ることができる人物は知れている。その中で浮上した人物……

 

 

 アクアとルビーの父親、アイさんを身ごもらせた張本人。

 

 

 どこの誰かは知らないし、その可能性があるだけで本当にそうであるかまではわからない。犯人も父親なのかも不明、だけど捕まっていないのは確か。警察も動いているけど、私達も指をくわえて見ているだけなんてことはしないわ。もし何かあったら私達は……きっと離れ離れになってしまう。そんな予感を連想させる。

 アイさんの過去は知っている。ようやく幸せを手に入れられたアイさんを悲しませるようなことは私はしたくない。それにあの子は私と壱護(あの人)にとっては大きな子供なの。だからコイさん、アイさんのことをお願いね?アイさんにはあなたが必要なんだから。

 

 

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