一番星と屑星のふたつ星   作:てへぺろん

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推しの子の物語はあの運命の日を境に始まる。しかしこれは推しの物語……


それでは……


本編どうぞ!!




瓜二つ

 ()()の人生は最悪の連続だった。

 

 

 クソ親父は()()()を殴った。

 

 

 怖かったから()()()は逆らわなかった。

 

 

 それでも()()()は殴られた。

 

 

 あいつは()()()を捨てた。

 

 

 どいつもこいつも()()()をバカにした。

 

 

 だから()()()はむかついた。

 

 

 むかついたから()()()はわからせてやった。

 

 

 バカにしていた奴らは()()()を恐れた。

 

 

 ()()()は怒られた。

 

 

 ()()()が悪いのか?

 

 

 ()()()は身を守ったらダメなのか?

 

 

 ()()()は逃げた。

 

 

 ()()()はお腹が減った。

 

 

 ()()()は何か食べたかったがお金が無かった。

 

 

 ()()()は金が欲しかった。

 

 

 ()()()は生きたかった。

 

 

 ()()()は生き方を知らなかった。

 

 

 ()()()はどうすればいいのか……迷った。

 

 

 迷っていた()()()を買った奴がいた。

 

 

 ()()()は金の得方、生き方を教えられた。

 

 

 ()()()には体があった。

 

 

 ()()()は顔が良かった。

 

 

 ()()()の容姿と体は価値があった。

 

 

 ()()()の容姿と体は金になると知った。

 

 

 同時に失った……()()()を。

 

 

 ()()()を失い()()を得た。

 

 

 ()()は……そうして今を生きている。

 

 

 価値のない今を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそだるぅ。昨日の相手は最悪だったが金は存分に手に入ったから……まぁ良しとしよっか」

 

 

 人気の少ない朝にオレは歩いていた。昨日泊まったホテルで過ごせば良かったが……きもい奴がいるから諦めた。貧相に見えて意外に懐が蓄えられていて()()()だが「踏んでくれ」だの「こっちの穴も頼む」だの「蔑んだ目が素敵❤」だの……きも過ぎた。ドМの相手は勘弁してほしい。この瞼を閉じても蘇るあの光景を消し去りたい。はぁ、この疲労感を癒してくれるのはやっぱ煙草と酒(相棒)だけだよ。

 

 

 早く自販機かコンビニでもいいから見つけたい。切らした煙草の補充と酒を手に入れて堪能したいが見つからない。この辺は初めてだから土地勘なんてないし、適当にぶらついて見つけるしかないのか……そう思っていた矢先にオレは見た。

 

 

「カ、カラス!?チッ、あっちいけおら!!」

 

「「「「「――!!!」」」」」

 

「うわぁ!?」

 

 

 嫌な記憶を蘇らせるカラスを排除しようとしたら集団がオレに向かってきた。あっぶな!?こいつら怒って……って追ってくる!?カラスの集団に追われるなんて初めて!!

 

 

「カラスのくせに!焼き鳥にして食っちまうぞ!!」

 

 

 逃げながらそう叫ぶとカラスは散り散りに飛び去って行った。一体何だったの?まぁどうでもいいけど、そのせいで無駄な体力を使っちまったし、知らない道に出てしまったことに気がついた。元々初めて来たところだから気にしてないが、カラスに負けた気がして腹が立つ!!

 

 

くすくす♪

 

 

 今……笑い声が聞こえたような?それも子供の声だったような……いや、これ以上やめよう。嫌な記憶が蘇りかねない。

 

 

「もうっ!今度あったら焼き鳥にしてやる……あん?」

 

 

 カラスに対する苛立ちを募らせていると目線の先に男がいた。

 

 

 マンションの前で白い花束を持った黒ずくめの男。何か独り言を呟いていてきもい。こういう奴はたまにいる。関わらない方がいいと感じて通り過ぎようかと思った時だった。

 

 

 そいつはオレに気づいた。そして目があった。

 

 

「――!!?アイ……アイィィィィィィィイ!!!

 

 

 その男はいきなり襲い掛かってきた。白い花束が舞い、手に持つものに気が付いた。

 

 

 ――やばいっ!?

 

 

 きもいしおかしい奴だと思っていたが、ナイフを持っていきなり襲ってくるとは思いもしなかった。咄嗟に距離を取ろうとしたが……カラスの集団に追いかけられ無駄な体力を消耗したせいなのか足元の小石にふらついた。

 

 

「――ッ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………………………………………なんでオレが刺されなきゃいけねぇんだよ!!

 

 

 ★------------------★

 

 

 今日はドームの公演日。アイドルグループ『B小町』そしてセンターを務めるアイが大勢の人を釘付けにする日である。

 双子のアクアとルビーは前日から楽しみにしており、アイもそんな二人の期待に応えたいと思っている。緊張は少しあるが、我が子にアイドルとしての自分を見せてあげるのだとワクワクが止まらない。予定の時間になったら斎藤夫妻が迎えにくる手筈になっており、今のうちにやれることをやっておこうとしていたアイだったが……

 

 

「――痛ッ!?」

 

 

 突如()()()()()が走った。一瞬、ほんの一瞬のことだったが、アイはたまらず膝をついてしまった。とても我慢できる痛みではなかった。

 

 

 前日から楽しみにしていたルビーはベッドで寝ていてアイの様子に気づいていなかったが、薄っすらと瞳を開けていたアクアが慌てて駆け付けた。

 

 

「アイどうした!?」

 

 

 母親のアイの様子がおかしいのに気づいて心配する。だがアイの方は何事もなかったかのようにケロッとした表情を浮かべていた。自分自身でも不思議そうにしている。

 

 

「……アクア?」

 

「ねぇどうしたの?お腹痛いの?」

 

「うん……うん?痛いと思ったけど、痛くない?」

 

「ええ?もしかして……便秘?」

 

「あー!アクアったら女の子に対してそんなことダメなんだぞ?」

 

 

 ガオー!とアクアを優しく捕まえてしまうアイ。捕まったアクアは優しい抵抗をするものの、先ほどのアイの苦しむ表情を心配してもう一度聞いてみた。

 

 

「本当に大丈夫?体調が悪いなら……公演は中止にしたほうが……」

 

「ううん、大丈夫だよ。ちょっと……変な気分になっただけだから」

 

「変な気分?」

 

 

 アクアは首を傾げた。

 

 

「うん……きっと気のせいだから心配しないで」

 

「……わかった」

 

 

 アクアを解放したアイは立ち上がって冷蔵庫に入っていた水入りのペットボトルに口をつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………………………………………………なんでオレが刺されなきゃいけねぇんだよ!!』

 

 

「えっ?」

 

 

 アイは感じた……何かを。

 

 

「………………………………………………」

 

 

 不意に感じたその何かが気になった。そして先ほどの誰かの声が頭から離れない。

 

 

 アイはペットボトルをおいて、まるで誘われるように玄関へと向かう。

 

 

「……アイ?どこ行くの?」

 

 

 アクアの静止も聞かずにアイは扉を開けて出て行ってしまう。太陽の日差しが眩しい空を眺めるよりも不意に廊下から下を覗いた。

 

 

 そこには誰かいた。二人、アイの視力では顔まではわからない。二人ともフードで顔が隠れていたが、彼女は見た……見てしまった。

 

 

 お腹の箇所が赤く染まっていた。そこから何かが突き出ていた……いや、刺さっていた。

 

 

『………………………………………………なんでオレが刺されなきゃいけねぇんだよ!!』

 

 

 先ほど聞こえた声の意味……アイの本能的なようなものが理解してしまった。そして理解した彼女は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だれかたすけて!!!人が刺されたー!!!

 

 

 アイは大声で叫んだ。アイドルをやっていて歌にダンスレッスンと練習を積み重ね、声量も周りに十分届くほどに肺活量も鍛えられていたことでその二人にも声が届いた。

 

 

 その二人が視線をアイに向けた。彼女の姿を小さいながらも捉えたのであろう無傷の片方は驚いた様子で何かを言っているようだが声量が小さくて聞こえない。もう一人は驚いてはいたものの、苦痛の表情を浮かべてその場に倒れた。それを見た片方がアイと赤く染まるもう一人を何度も見比べている様子だが、マンションから騒ぎを聞きつけた住人が顔を出した。それを知ったのか慌てた様子で走り去ってしまった。

 

 

 アイは警察と救急車を呼ぶべきだと思ったが、先に体が動いていた。背後でアクアの声が聞こえたがそれでも彼女は止まらなかった。何故かはわからないが嫌な汗が流れていた。

 

 

 一階へ到着し、現場に駆け付けると状況がハッキリとわかった。

 

 

 腹部を赤く染めていたのは血だ。体格はアイと同じくらいだろうか。おそらくだが歳はアイとそう変わらなさそうだ。顔はフードで隠れていたが口元は見え、そこから血が流れて苦痛の表情を浮かべている。

 

 

「だ、大丈夫ですか!?しっかりして!!」

 

 

 住人達は詳細がわからずその様子を上から眺めているだけで駆け付けたのはアイ一人。それでも助けないと間に合わなくなると感じたが、応急処置のやり方はわかる。しかしこの傷では素人の手に負える状態ではない。彼女はどうすればいいのかわからず苦しそうなこの子を抱き起すことにした。

 

 

ぐっ……うぅ……

 

「大丈夫、大丈夫だからね!?」

 

 

 抱き起こしたが、この後どうするべきか……救急車を呼ぶべきだがスマホなど持ってきていなかった。その時にアクアの声が聞こえた。

 

 

「アイ!その人を寝かせて!腹部か……危ない場所だが、僕が何としても助けないと!」

 

「アクア……?」

 

 

 アイの目にはアクアの姿が一瞬あの医者の姿と重なった。

 

 

「アイ早く!」

 

「あ、うん。で、でも先に救急車を呼ばないと……」

 

「ルビーを起こして呼んでもらっているから大丈夫。この人を助ける為にアイにも手を貸してほしい!!」

 

「う、うん!」

 

 

 救急箱片手にアクアが駆け付けた。アクアの指示に従ってパーカーの子を寝かす。苦しそうな声を上げるこの子の手をアイは握ってあげる。そうしないといけない気がしたからだ。アイは言葉をかけ、パーカーの子の意識を途切れさせないように懸命に励ましながらアクアの指示に従い応急処置を施す。そうしている内にサイレンの音が近づいてくる。

 

 

 幸いなことにパーカーの子に意識はまだあった。傷は深いがまだ死んでいない。助かる希望はある。

 

 

 アクアとアイが協力した応急処置は完璧なものだったと後にわかる。だが今はまだ危険な状態なのに変わりはない。救急隊が到着し、自分達のできることはここまで。救急隊の人にパーカーの子を任せようとアイが握っていた手を放してタンカーにこの子が乗せられた時だ。

 

 

「あっ」

 

 

 声を上げたのはアイ。彼女は見た。アクアも……フードが外れ、パーカーの子の素顔が現れた。

 

 

「「――えっ!!?」」

 

 

 二人は驚愕した。パーカーの子の顔はよく知る人物と同じであったから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その顔は星野アイと瓜二つだった。

 

 

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