一番星と屑星のふたつ星   作:てへぺろん

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コイは今度はあの子との遊ぶようです。


それでは……


本編どうぞ!




引き立て役とデート 前編

 アイドルにも休日はある。本日は現在人気上昇中のアイドルグループ『B小町』も仕事はお休みで思い思いの過ごし方を送る日となる。その一人、ニノもそうだ。

 彼女は外出中で変装済み、前までは地下アイドルだったのが今では有名人の仲間入りを果たし、道を歩けば注目の的であった。ドーム公演から仕事が増え、個人宛てにも仕事をこなす日々が続いていた。更には出演した映画がヒットして更に人気がアップ。そんな忙しい日々での休日、休みの日ぐらいはアイドルとしての自分を忘れ、ただ一人の女の子として町へと出かけていた。

 

 

 しかしニノには目的があった。可愛い服装でおしゃれをして彼女は家を出てとある場所へと向かう。

 

 

 彼女には約束があった。ある人物との待ち合わせの場所、それは公園だった。予定より少し早く出かけたことで公園には誰もいない……いや、居た。

 パーカーを着込みフードで顔を隠す人物。その人物は煙草を吹かしており、ニノは駆け寄った。相手はまだ気づいていないのだろう快晴な空をぼんやり眺めて黄昏ている。

 

 

「お待たせしました」

 

 

 声をかけられて顔を隠した人物が振り向いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天野さん、今日はよろしくお願いします!」

 

 

 ニノの目的の人物とは天野コイだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃレースゲームからしましょう」

 

「ニノはやったことがあるのか?」

 

「あまり得意ではありませんが、何度かやったことがあります」

 

「そうか、なら操作方法を教える必要はないな」

 

「はい、それじゃ早速勝負しましょう!」

 

「へっ、オレに勝てると思うなよ?」

 

「望むところです!」

 

 

 仕事もなく、ゆっくり休めると思っていた。しかしコイは休みの日にはアイが何かしら関わってくる。早朝からアパートにやってきて一日中居座ったこともあった。だから明日が休みでも自分は休める日が来ないんだろうなぁと思いながらも渋々仕事をしていたらニノがコイに声をかけた。それも「明日、一緒に遊びませんか?」と誘ってきたのだ。意外な出来事にコイは一瞬耳がおかしくなったのではないかと疑ったが、間違いではなかった。なんで急に?と疑問を抱いているとニノは語った。

 B小町が遠征中の時にニノはアイから自慢話をされた。コイとアイが遊んだ時のことを自慢げに語っていたと彼女は知った。更にコイにとって黒歴史確定のプリクラで撮った写真まで自慢したそうだ。それを聞いた瞬間脳内でブチ切れた。一瞬でイライラゲージがMAXになるのを感じたが、ニノは返答を待っている。それも期待した目で見ていて丁度いいと思った。

 

 

 明日もアパートに押しかけてくる光景を思い浮かべ、またアイの相手をしないといけないのが憂鬱だった。しかし黒歴史確定の写真を見せびらかしたことでアイに対する苛立ちが湧いて会いたくない。だからニノの誘いに乗ることにした。答えを聞いたニノは「楽しみにしています!」と言ってレッスンへと戻っていった。しかし疑問は残っている。何故ニノが自分を誘ったのか?

 ニノはアイに対して嫉妬していた。メンバーのいじめに加担していたし、死ねなんて心無い言葉を言ってしまった。本人とはもうそのことはケリがついており、ニノは吹っ切れたことでパフォーマンスに磨きがかかり、アイにはまだ遠いが確実に強くなっていた。仲良く手を繋ぐ友達……っと言うよりも差は大きいがライバルに近い関係だった。そんなニノがアイと瓜二つのコイを遊びに誘うとはどういうことなのだろうか?

 

 

 それは当日になってみないと何とも言えない。コイは疑問を心にしまい、嫌々ながらもアイに用事で明日はアパートにはいないことをメールで伝える。伝えておかないと後が怖いから。するとすぐにメールが来て『何の用事?』『どこに行くの?』『男……じゃないよね?よね?よね?』『もし男だったら……』なんてメールが届いた。恐怖心を掻き立てられて足が震えていたが、勝手に黒歴史確定の写真見せたこともあってそっちが悪いと自分自身に言い聞かせて恐怖心を抑え込んだ。スマホを震える手でしまって深呼吸をする。

 後は時間との勝負だ。アイが帰って来るまでに仕事を終わらさないとバッタリ遭遇したら強制連行されてしまいかねない。事の詳細を吐くまでじっくりと尋問されるだろう。それだけは勘弁だった。

 

 

 運よく遭遇することなく、ニノと遊ぶ日を迎えた。それまでにメールの受信件数が999を超えていたり、何度も電話がかかってきたが全て無視し、帰宅後シャワーを浴びて速攻で寝た。早く寝たのもアイ対策で、もし玄関前で待ち伏せされていたら捕まってしまうからだ。十分な睡眠時間を得たコイは真夜中にアパートを飛び出し、約束の時間までネットカフェで時間を潰していた。勿論発信器などつけられていないか確認し、尾行もされていないか要注意しながら待ち合わせの場所で待っていると案外早くやってきた。軽い挨拶を済ませてどこに行こうか悩んでいるとニノは「アイちゃんと遊んだ時と同じところに行きたい」と言った。

 何故?と思ったが理由は教えてくれなかった。ニノは馬鹿ではない。考えがあるのだろうとコイは了承した。それで二人はゲームセンターへとやってきて同じように初めにレースゲームをすることになった。

 

 

「うわぁ……天野さんってお強いんですね」

 

「まぁ、何度も遊んでいるから自然と身に付いたんだよ」

 

「でも次は負けませんよ!」

 

「へっ、今度も潰してやるよ!」

 

 

 アイのように初心者ではないニノ、少なからずこういった遊びは学んでいるようで途中まで二人はいい勝負をしていたが、隠しルートでショートカットしたコイに負けてしまった。しかし勝負はまだ一度目、次は負けないと意気込みニノは再挑戦するが結果は負けてしまった。やはりゲームの腕はコイの方が上らしい。

 

 

「負けちゃいましたね。今度は勝てると思ったんですけど」

 

「そう簡単に負けられるか。対戦系でオレに勝てると思うなよ?」

 

「ならお次は協力系……あれをしましょう」

 

「なぁ、あのバカどこまで話してんだ?」

 

「レースゲームの後はガンシューティングゲームで遊んだと言っていました。詳細も自慢げに話していましたよ」

 

「あの野郎め……ぶん殴ってやる」

 

「天野さん、怒るのは後で今は遊びましょう?」

 

「あっ、悪い悪い」

 

 

 レースゲームを楽しんだ後、二人が遊ぶのはゾンビや怪物が出てくるホラー要素ありの対戦系ではなく協力プレイ型のガンシューティングゲーム。お金を入れて次々と出てくるゾンビや怪物を倒していく。やはり遊んだことがあるのかニノも難なく敵を撃破していき、ボスも倒してあっという間にラストステージへ。ラスボスは流石に何度かダメージを受けたが何とか倒してエンディングへ辿り着いた。経験者での協力プレイだったので二人はノーコンティニューでクリアしたこともあってか気分が上がりハイタッチをした。

 意外にも二人の相性は悪くなさそうだ。その後もアーケードゲームやメダルゲーム、種類の違うレースゲームやガンシューティングゲームを遊び、音楽系はやっぱりコイは見ているだけだった。ニノは誘ったが、嫌がるコイに強要することはなかった。そしてダンスゲームだが、アイには劣るがコイは見た。踊っているニノの表情がとても楽しそうにしており、彼女もアイと同じくアイドルなんだなっと見惚れてしまっていた。

 

 

 そして問題は次だ。アイと遊んだ時にプリクラで写真を撮った。それが黒歴史確定の写真となったのは言うまでもない。自慢されたニノはこのことも聞かされており、視線がコイに向いたがそれだけは絶対に嫌だ!と主張するので諦めた。ニノは強要はしてこない、そのことにコイは安堵し、そろそろ煙草を吸いたくなったので一言断ってから喫煙所へと向かう。ニノはその間は待ち惚けをくらう羽目になるが大丈夫だと言ってくれるのでコイとしても気軽で良かった。

 

 

 一旦別れたコイとニノだったが、その二人を陰から見つめる怪しく光る瞳が存在していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで?どうして?コイがニノと遊んでるの?レースゲームで勝負してた。ゾンビを撃ってた。他にも色々と遊んで私と遊んだ順番と同じだった。それもニノのダンスに見惚れているなんて……私の方が上手いのに。用事とか言っておきながら妹の私よりもニノを優先して楽しんでいるなんておかしくない!!?」

 

「お、おいクソアイドル、そんなに力を入れるな。ヒビがいっているぞ!?」

 

「あ、アイさん、店側に迷惑をかけてはいけないわよ!?」

 

社長達は黙っててっ!!

 

「「す、すみません!!」」

 

「アイ……」

 

「ママ……」

 

 

 サングラスにマスクを装着した怪しい姿の大人達と幼稚園児が二人、もうわかるかと思うが星野一家と斎藤夫妻であった。御一行はゲームセンターの柱に隠れてコイとニノの様子を窺っていた。その内の一人、アイはサングラス越しでもわかるぐらいに不気味な光を放つ瞳で凝視しており、力が籠りすぎて柱にヒビが入っていた。彼女の周りには人を惹きつけるオーラではなく、かけ離れた人を寄せ付けないどす黒いオーラを漂わせており、スタッフや客たちすらアイに近づけない。そんな母親の姿を見ていたアクアとルビーは何とも言えない表情でアイを見つめていた。

 

 

 何故アイ達がここに居るのか?事の発端は昨日コイが用事があるとメールがアイの下に届いた。アイは不審に思い、何通のメールを送ったが無視された。何度も電話したが出なかった。コイにも用事の一つや二つあるのはわかる。しかしアイの脳裏には男の影が浮かぶ。

 コイは人には言えない秘密がある。男と寝てお金を稼いでいた。それも何度も()()()()()()をしていた。最近そんなことはなくなって安心していたが、ふっと思い出す。コイが入院生活をしていた時に彼女のスマホに電話がかかってきた。相手は男、それも()()()()()()だった。それを知ったアイはその時の感情をどう説明すればいいのかわからなかったが、どす黒いものが胸の内から湧きあがっていた。その時のことを思い出すと居ても立っても居られなくなり、真夜中に同じマンションに住む斎藤夫妻の下へと訪れた。斎藤夫妻は仕事で疲れて寝ていたのに叩き起こされてしまう。それだけならまだよかった(本人達にとってはよくない)のだが……

 

 

 コイに発信器をつけていなかった……いや、つけること自体おかしなことだが、現在コイの正確な居場所がわからない。おそらくアパートに居るだろうが、こちらの行動もおそらく察知されている。ならばとアイはアクアとルビーをミヤコに任せて、壱護に「協力してくれないとアイドルやめる」と脅して車を出させた。アパートの傍で待機、コイが出てきたら尾行することにした。しかしそこはコイの経験が生き、尾行されていないか警戒しながら行動する彼女に手こずり見失ってしまう。次第に日が昇り始め、仕事の疲れと叩き起こされてある意味疲労が溜まっている壱護も諦めて帰ろうとしたがアイは諦めきれなかった。

 そこで世界を味方につけることにした。ツイッターでパーカーを着込んでフードで顔を隠すいつも同じ格好のコイの特徴を載せて、その人物の特徴と似た格好の人がいないか探る。あまりこういうことは褒められたことではない。壱護もアイの仕出かしたことを注意しようとした……が睨まれてあっさり黙り込んでしまう。しばらく待っていると一つのつぶやきに目がいった。

 

 

 『○○のゲームセンター前にそれっぽい人いた』

 

 

 アイはそのゲームセンターに覚えがあった。コイとデートした時と同じゲームセンターだったのだ。コイは遊びに行くつもりだったのか?そう思ったが、その後のつぶやきを見てその考えは吹き飛んだ。

 

 

 『その人、可愛い女の子と一緒にいた』

 

 

 すぐさまそこに向かうように壱護に指示する。一刻も早くゲームセンターに行かなければならなくなった。

 

 

 可愛い女の子がアイ自身でないこと、そしてコイが自分以外の誰かと一緒にいることに苛立ちを感じた。何故苛立ちを感じたのかアイ自身理解できなかったが、今はどうでもいい。コイに直接問いただせばいいのだから。

 到着した時には日は昇り、仕事の人もそうでない人も目覚めている時間帯となっていた。ゲームセンターに到着して車から降りようとするアイを壱護は止める。有名人のアイが現れたら大騒ぎになってしまう為、人前に出る時は変装する必要があるが生憎急いでいたので手ぶらだった。一度帰ろうと壱護は言うが頑なに拒否するアイ、仕方ないので壱護はミヤコに連絡し変装用の道具を持ってくるように指示した。少し待っているとアクアとルビーと共にミヤコが現れた。ミヤコから奪い取るように変装用の道具を身に着けるアイのただならぬ雰囲気に気迫されるアクア達は流されるまま彼女の後を追った。斎藤夫妻もアイを放っておくと何をするかわからない危機感を感じて自分達も追うことにした。

 

 

 そしてアイ達は見た。コイがニノと楽しそうに遊んでいる姿を。

 

 

 アクア達はコイがニノと遊んでいることは意外だと思ってもそこまでおかしいことだとは思わなかった。最近二人の距離が近いことは知っていたから。しかしアイは違っていた。

 アイは気づいたのだ。二人が遊んでいるのは自分がコイと遊んだ時と同じもの、同じ順番であることを。しかも楽しそうにしていたことに……それを知った時、アイは何故か胸が痛んだ。その正体はわからない、腹痛でもなければ便秘でもない。ならばなんだろう?アイ自身理解できないものだった。コイを見つけ次第、これはどういうことか迫ろうと思っていたが、ニノが一緒だとは夢にも思わず訳が分からない状態だがわかったことがある。

 

 

 アイとコイは毎回ではないものの休日はいつも一緒にいることが多かった。本来なら今日という日もアイはコイと一緒に過ごそうと考えていた。しかしコイから伝えられたメールには用事があるとだけでニノと遊ぶとは一言も書いてなかった。

 

 

 コイは自分に嘘をついたんだと。コイにとっては黒歴史確定の写真を勝手に自慢した仕返しのつもりだったのだが、アイはそんなこと知る由もない。

 

 

「コイが……お姉ちゃんが……ニノに寝取られるっ!!?」 

 

 

 瞳から留めなく溢れ出る不気味な光はどす黒い輝きを放っていた。

 

 

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