それでは……
本編どうぞ!
「おいガキども、バカとニノから何か聞いたか?」
「ううん、何も聞いてない」
「私も聞いてない」
「そうか、それじゃ何なんだ?」
苺プロ(監獄)に取り残されたアクアとルビーそしてオレ、バカとニノに残ってほしいとお願いされたからだ。アクアとルビーはお願いだったが、オレは決定事項だった……何この差?しかもニノにも言われた。あいつ最近バカに似てきたところがあって心配だ。
そんでオレ達は今、レッスン場でのんびりとバカ二人を待っている。ちなみに今は夜、他のメンバーは先ほどまで歌とダンスの練習をしていたが明日に備えて帰宅した。
現在のB小町の序列は『バカ』≧『ニノ』>『その他』となっている。バカとニノとの差が徐々に近づいているが、その他の連中も頑張って食らいついていて全体の質が上昇している。ニノが他の連中のリーダー的な立ち位置で引っ張っていることもあるし、おっさんがオレが渡した紙通りにダメなところを指摘したおかげでステータスアップに繋がったのは良かったんだが……おっさん、なんでオレの名を出すかな?そのせいでB小町の連中がダメなところを教えてもらいに来るようになっちまった。
おっさんを思って折角悪いところを書き出してやったのにこれじゃ意味ないじゃん!!そのことを言ってもおっさんは笑って誤魔化しやがるし、おばさんも微笑んでんじゃねぇ!!バカとニノはうっとりしてこっちを見ていたが……なんか鳥肌が立った。
そんなプチ騒動もあったが、仕事も終わって帰れると思った矢先にこれだ。あいつらオレ達をいつまで待たせる気だよ?あれこれ結構時間が経っているんだけど、アクアとルビーに聞いても知らないだと。帰り支度には長すぎるし……あいつらなんかやらかすつもりなのかもしれないな。
そう思っていたらレッスン場の扉が開いた。バカとニノが現れて……はっ?
「遅くまで残ってくれてありがとーう!!B小町のアイと!」
「いつもニコニコ笑顔のニノですっ!本日はわたし達のミニライブを楽しんでいってくださいね!」
アイドル衣装を身に纏った二人の姿だった。そしてその背後にはおばさんもいた……どうなってんの?それに残したのはお前らだろ。
あまりの出来事にオレ含めてガキどもと唖然としているとおばさんが説明してくれた。
バカとニノがオレとガキどもを誘ってミニライブを行いたいと言ったそうだ。有名になってからライブ以外の仕事も増えており、いつもライブ会場は満杯になる。ガキどもは催促して特別席でB小町のライブを楽しんでいる。しかしオレはアルバイトスタッフなので裏方だが、ライブ会場には行きたくないので誘われても拒絶している。
あんな輝く世界にオレが混じるわけにはいかない、オレの存在が飲み込まれてしまう。怖いから行きたくないんだよ。オレが頑なに拒絶し続けるのでミニライブと称して実行に移したんだとか。これはバカとニノの我儘だったらしく、明日も仕事があるにも関わらず忙しい中のミニライブなこともあり他の連中は不参加……って言うか、オレからしてみれば最近ようやく話すようになった連中といきなりミニライブはハードルが高い。ガキどもはバカが見せたいという理由でオレ達は残されていたようだ。
マジかよ、最近絡みがうざ過ぎると思っていたがこんなことに踏み切るとは何考えてんだ?
「おばさんはいいのかよ?こいつら明日も仕事なのに影響出ても知らないぞ」
「いいじゃない、この子達があなたの為にしたいって言っているんだし。ミニライブ楽しみなさいよ」
「ええ……」
正直ここまでしてもらう価値がオレにあるとは思えない。ニノとは成り行きで仲良くなっただけだし、バカは双子の姉妹(断じて認めないが)だからと言う理由で絡んでいるだけだ。こんなことに労働も時間も割くなって!!だがガキどもの方は……
「マm……アイちゃんとニノちゃんのミニライブ!?マジっ!?うっひょー!!生き返って良かったー!!!」
「ここは天国か?極楽浄土か?いや、そんなことは些細な事……今ここが楽園なんだからなっ!!転生人生最高ぉぉぉ!!!」
滅茶苦茶喜んでいたが聞こえてはいけないのが聞こえた気がした……そ、空耳だな。うん、そうだ、最近疲れが溜まっていたからな!!っとまぁガキどもはいい。オレは内心ではバカとニノがこうしてミニライブをすることに何か別の理由があると思っている。
「「………………………………………………っ」」
さっきからお互いを敵視している気がする……うん、気がするじゃないなこれは。笑顔のはずなのに笑っていない。バッチバチに火花が飛び散っているのが見えているんだよなぁ……巻き込まれる前に帰ろ。
「ねぇコイ、どこに行こうとしているの?帰ろうとしているなら……おかしいよね?」
「天野さん、わたしのライブ……見てくれないんですか?……ぐすっ」
気配を消して抜け出そうとしたが行く手を遮られて無理だった。バカの手がポケットに入っている……
ニノまで汚染されてしまい馬鹿が二人に増えた。清純キャラだった良い子はもういない……涙が出てくる。そんなダブルバカに対抗できる力をオレが持っているわけもなく、何事もなかったように元に居た場所に戻ったところで曲が流れ始めた。
「ああ……生ライブをこんな近くで見られるなんて幸せ~!!私ってば幸せすぎ~♪」
「ああ……生でしか得られないこの興奮……いいっ!!やっぱりここが楽園だった!!」
生で大好きなバカのライブを堪能できて更にはニノとのダブルペアにガキどもが感激に震えていた。確かに凄かった。目を奪われてしまったぐらいだ。これがライブ会場だったならどうなることやら……これ以上の輝やきはオレにとって劇薬過ぎるぞ。
「どうコイ?私の歌とダンスは?」
「天野さん、どっちが凄かったですか?」
ダブルバカが感想を求めてきた。期待した目で見てきやがる……目を奪われたなんて言えるか。
「まぁ……どっちも良かったんじゃね?」
「「……」」
正直に言うのは癪なので素っ気なく返してしまったらスッと期待した目に光がなくなった……怖いって!!な、なんでだよ!?嘘は言ってないし、どっちも褒めたつもりなんだけどっ!?
「アイ、天野さんにはまだ理解していないようだから次で勝負だよ」
「うん、ニノより私の方が凄いって言わせるから」
「それはこっちのセリフだから」
「私が勝つ」
「ううん、わたしが勝つから」
ダブルバカが言い合っている。なるほど、こいつらどっちが凄いかったか選んでほしいわけね。どちらか一方を選べばいい話なんだけど、正直どっちが凄いかなんて選べない。どっちも輝いていて眩しすぎる……オレにとってお前らは高嶺の花よりも遠くに存在し、手が届かず届かせようとすれば焼かれてしまう星々なんだよ。
「まったく、バカどもが……」
お前らのファンでもなんでもないオレなんかを相手にしている暇があるならアクアとルビーにも構ってやれってんだ。脳内も馬鹿な奴らだよ……
「ああ……最ッ高!!やっば、失禁しちゃう!!!」
「俺は……夢を見ているのか?だったら覚めないでくれ!この感動を永遠に感じていたい!!!」
ガキどもが感涙を流していた。お前ら生で何度も見てんだろ?今更なんだ……っと言いたいところだったが……
「はぁ……はぁ……どう?私の方が凄かったでしょ?」
「はぁ……はぁ……はぁ……あ、天野さんどうでしたか?」
バカとニノが息を切らして汗だくで全てを出し尽くした表情でオレを見ていた。
「………………………………………………」
言葉が出なかった。
見惚れてしまっていた。
美しかった。
星が輝いていた。
レッスンやライブで何度も生ライブを堪能していたガキどもですら感涙を流していたぐらいに最高のパフォーマンスだった。おばさんも静かに涙を流している。それをこんなオレの為に披露するこいつらは正真正銘の大馬鹿だとわかった。
「はぁ……はぁ……ねぇ?さっきから黙ってないで何か言ってよ?」
何も答えないオレにバカが痺れを切らして近づいてきた。息も絶え絶えながら、期待を含んだ瞳に見つめられる。火照った体温から発する熱気と甘い吐息を感じてしまったオレはこの時に思考がバグってしまったんだ。
「……綺麗だ」
「ふぇっ!!?」
「……あっ!?」
咄嗟に自分の口を塞いだが遅かった。何を言ってしまったんだっと思った。アイドルは可愛いを売りにしているのに綺麗と言ってしまい、バカに馬鹿なことを呟いてしまっていた。反射的にバカを見ると歌とダンスで火照った熱とは別の意味での熱で顔を真っ赤にしていた。
「綺麗……綺麗……コイに綺麗って言われた……えへへ♪」
バカがぶつぶつと何か言っているが……オレはこの場を離れたかった。今のオレはどうかしている。また変なことを口走らないとも限らないし、オレ自身落ち着きたかったこともある。ぶつぶつ呟いてオレのことなど視界に入っていないバカを放ってレッスン場から逃げ出そうとした時、震える声が聞こえて無視すれば良かったものをそちらに視界を動かしてしまった。
「天野さん……わたしは……アイに負けたんでしょうか……」
ニノが今にも涙を流しそうにしていた。これは嘘……ではないと思った。バカに負けたと悔しそうに唇を噛みしめていた。
負けてない、こいつもバカのように星になっていたんだから。
「……お前も綺麗だよ」
「――ッ!!」
まただ、やっぱりオレはどうかしている。一度ならず二度までも変なことを口走ってしまった。
「天野さんに綺麗と言われた……胸がドキドキする……嬉しい♪」
ニノもバカと同じ状態になって……今なら逃げれると思いさっさとレッスン場を抜け出した。
オレ自身も体が熱い。どこでもいいから煙草を吸って落ち着こうと思い事務所の屋上へとやってきた。なんであんなことを言ってしまったのか考えても答えが出ず、煙草を吸っているとおばさんが現れた。
「なんだよ何か用か?」
「用がないと会いに来てはいけないのかしら?」
「別にそうじゃねぇけどさ……バカとニノはどうしたんだよ?」
「あの二人ならアクアとルビーに任せてあるわ。しばらくは上の空の状態が続きそうだったから」
「嘘だろ?」
「本当よ、コイさんあなたって女たらしだったのね♪」
くすりとおばさんが笑う。女たらしってそんなつもりだったんじゃないんだよ!ただ先ほどはどうかしていただけなんだって!ほんとどうにかしてた、ニノだけでなくあのバカを綺麗なんて言ってしまったんだ。
歌って踊るバカが笑顔を振りまき、それに負けじとニノも満面の笑みを浮かべる。キレのあるダンスで魅了し、アイドルの愛らしさを前面に引き出してファンを虜にしてしまう。アクアとルビーが虜になり、どちらが凄いか決める勝負だったが、オレは二人に見惚れていた。優劣をつけるなんてできなかった。ただどっちも凄かったと褒めてやればそれで終わりでよかったのになんであんなことを言ったんだよ……
「はぁ……」
「あら、ため息なんてついてどうしたのよ?」
「オレはどうかしちまったんだなっと思ってよ。まったく、自分が気持ち悪い」
「そうかしら?私は今のコイさんのことは好きよ?」
「好きとか気持ち悪いこと言ってんじゃねぇよ!?」
「ふふっ♪でも初めて会った頃よりもコイさん表情が生き生きしているのは確かよ」
「……オレが?」
「ええ、会った時は人生に対して不貞腐れていた感じだったけど、今のコイさんは輝いているわ」
「……そんなことあるわけがないだろ」
おばさんはオレが輝いていると言うがそれはあり得ない。輝いているって言うのはバカとニノのような奴のことを言うんだよ。オレは闇なんだ。闇が輝くとか矛盾が生じてしまうだろ。おっさんもバカをスカウトするぐらいだから見る目はないと思ったが、妻であるおばさんもオレを見る目はないな。
ここにいるとおばさんにいじられ続けてしまうのは勘弁だ。もう煙草は十分吸ったし落ち着いたからさっさと帰ろ。
「あら?どこに行くの?」
「もう帰るんだよ」
「そう……ありがとう」
「はぁ?いきなりなんだよ?」
何故かおばさんにお礼を言われた……なんで?
「あなたが居なかったらアイさんは変われなかった。ニノさんとも仲良くできず他のメンバーとも溝が深くなっていたわ。最悪もうB小町は解散していたかもしれないもの」
「あのバカが居れば解散まではいかなかっただろう。だがバカだけのグループになっていた」
「……そうね、きっとコイさんの言う通りになっていたわ。それをあなたは変えてくれた。
「……ふん、また明日も仕事がある。オレは先に帰るから。あばよ、おばさん」
また体が熱くなった。ちくしょう……今日はおかしなことばかり起きやがる。ついてない一日だったぜ。
ちなみに翌日、バカとニノが更に輝いていた。これ以上があるのかと驚くばかりであったが、バカが「もう一回綺麗って言って!」って絡んできてうざかったから頬を引っ張ってやった。ニノも期待した瞳でジッと見つめてきた。頬は引っ張らなかったが無視するとションボリしていた。