それでも待っていてくれるなら嬉しいです!
それでは……
本編どうぞ!
ルビーが風邪を引き、その風邪がアイに移ってしまった。天野に対策をしておけと言われていたみたいだったがそれを守っていなかった。自業自得だと俺も思うが熱を出しても仕事に向かおうとするアイ、何故そこまで無理しても仕事をするのか?「アクアとルビーの為にも……頑張らないといけない……から」と辛くても母親の責務を全うしようとする姿に感銘を受けた。だが止めなくてはと思ったが天野が斎藤社長とミヤコさんに条件を突き付けていた。
天野はアイと瓜二つだ。違いは髪型と色、それさえ同じなら誰にもわからない。俺は天野のやろうとしていることを理解した瞬間、この子はやっぱりアイの姉妹だと思った。
斎藤社長は残り、俺達はアイの看病をすることになった。熱を出して寝込んでいるアイが安らかな表情で眠っているのを見ると天野のことを信頼しているんだなと心が温かくなった。
しかし天野は一般人だ。瓜二つと言うだけでアイの仕事をこなせるのか?今日は撮影だと言っていたから演技力が壊滅的だったらと思うと居ても立っても居られなくなり監督……名を五反田泰志と言い、俺を早熟と呼ぶ。監督とは個人的な付き合いがあって、アイが出演するはずだった今回の短編ドラマの監督の下に行くと聞いていたから協力者を得る為に電話して天野のことを伝えた。監督は天野を知っていて彼女はアイの双子の姉妹だと伝え、何かあれば力になってほしいと頼んでおいた。その代わりに監督が俺を映画に出演させたいとお願いされたら首を縦に振るつもりだ。天野がアイに成りすましてまで覚悟してくれたんだ。推しの幸せを願うのはファンとして当然、なら推しの推しの為にも俺はそれぐらいで協力できるなら喜んでやるさ。
それとアイに風邪を移してしまい罪悪感を抱いているルビーだったが、天野に慰めてもらい少し気持ちが楽になったようだった。彼女が帰ってきたらお礼を伝えると恥ずかしながら言っていた。ルビーも少しずつだが天野を受け入れ始めたんだ。だから俺もアイの為に「ありがとう」と素直に感謝の気持ちを伝えるつもりでいた。
しかし天野は帰って来なかった。
言い方が悪いな、帰って来たが仕事を休むと言ってその後連絡がつかない。ミヤコさんが言うにはトイレから戻って来てから様子がおかしかったらしい。監督からも電話が掛かって来てそのことを伝えられたが天野がそうなった理由がわからずじまい。何があったんだと言う疑問はあるが今はアイが心配だ。
風邪で寝込んだアイだったが、斎藤社長と俺達の看病によって一時的にだが熱も下がっていた。そこに天野の件が舞い込んできて、連絡を入れたが一向に返信されることはなかった。訳がわからずドタバタしていたらアイが目を覚ましてしまい、このことは内密にしておくつもりで斎藤社長とミヤコさんはなんでもないと伝えたがそれを嘘だと見破られてしまった。アイは「コイに何かあったの!?」と天野のことになれば鬼ですら逃げ出す迫力で斎藤社長とミヤコさんに迫る。二人はアイの迫力に震えてしまい埒が明かないと俺とルビーに
もうこうなれば正直に話すしかない。こうなったアイに誰が勝てるのだろうか……正直に事の内容を説明すれば風邪を引いていてもお構いなしにとスマホをいじってメールを送信、それも手慣れているのか何通も途切れなく送る様子を俺達は眺めるしかなかった。それでも返信されないことが分かれば今度は電話に切り替えた。何度もコール音がスマホから僅かに聞こえてくるが留守番電話に切り替わる。諦めずに何度も繰り返すが同じことだった。
しばらく待ってもスマホが反応することもなくただジッと画面を見続けていたアイ。この後の行動は何となくわかる。俺はアイを傍でずっと見続けていたから。ルビーも予測がついているようで自然と目があった。案の定アイはベッドから立ち上がって出かけようとしたのを全員で止めた。天野に会いに行くと言うがこれ以上風邪を引いているアイに無茶はさせられない。代わりに斎藤社長がアパートへ車で向かうと言うので俺も一緒に同行するように頼んだ。
アパートについたがいくらインターホンを鳴らしても出てくる様子はなかった。中からも音や気配すらなく帰って来てないのかそれともどこかに出かけているのか……どちらにせよ、しばらくアパートの前で斎藤社長と共に待っていたが帰って来なかった。
それから数日も経った。初めはしばらくしたら帰って来るだろうと自分に言い聞かせていた。しかし誰も本心ではそんなことは思ってはいなかった。アイは何かを感じるのか仕事が休みの日はアパートに出向き、仕事の日も時間の合間に何度もメールと電話をするが電源が切られていた。ニノにもミヤコさんが知らせて彼女からも連絡をお願いしたが彼女にも返信すらしなかったようだ。
何かあった、天野にしかわからない何かが……だが本人はどこにいるのかわからなければ対処できない。アイは表面上では笑顔を振りまいているが、テレビやレッスン場で見かけるそれは気丈に振る舞っているだけだと俺達は知っている。ニノもそうだ、彼女も子供である俺とルビーに「天野さん……どうしちゃたのかな?」と寂しそうな表情で問いかけてくる。俺達はそれになんて答えればいいのかわからなかった。みんな不安がっていた。
勝手にいなくなった天野に苛立ちを覚えたことはある。でも彼女の過去を知っていれば必ずしも悪いとは言えない。きっと仕事先で何か嫌なことがあったんだろう。俺も前世でそう言った悩みを持つ人と関わったことがあるからそうなんだろう。
天野がアイだけでなくみんなを変えた。斎藤社長とミヤコさん、ニノやグループメンバー、俺とルビーにも影響を与え、彼女がいないとこんなにも寂しいものだとは思ってもいなかった。彼女の存在は俺達にとってかけがえのないものになっていたんだろう。
「………………………………………………」
「ママ……」
「アイ……」
今日も今日とて電話しても繋がらない天野の名がスマホの画面に表示され、アイはそれを眺めている。その表情はアイドルの顔でも母親としての顔でも無く、捨てられた子犬のようだった。
アイのファンである俺とルビーですらどうすることもできずに歯痒い思いを抱いていた。
「天野……君はどこに行ったんだ?」
俺は
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「……アイ、今時間ある?」
「ニノ……うん、いいよ」
コイの行方は未だにわからない。それでもアイドルの時間は止まってはくれない。
今日はB小町全員でモデルの仕事だった。最近のB小町は輝かしいアイドルグループになり始めていた。しかしその最中コイが消えた。そのことに不思議がっているメンバーがアイにそのことを訪ねても用事でしばらくいないとはぐらかす。
ニノのおかげもあるのだが、コイのアドバイスにより他のメンバーも力をつけ、アイやニノ以外のサイリウムが増えたこともありアイに対する嫉妬を少し和らげる結果になった。仲睦まじくとはいかぬものの以前の関係よりも緩和されていた。それでもアイは嘘をつく。弱みを見せない、知りたくないとこは見せない……それがアイだからだ。
しかしそんな嘘も
「アイ、どうして笑えるの?」
「何のことかな?」
「とぼけないで。天野さんがいなくなったのにアイが一番心配しているはずだよね?辛いはずなのに……なんでそんな笑顔でいられるの?」
「仕事は疎かにしちゃいけないんだよ?それに私達はアイドルなんだからファンのみんなを心配させるわけにはいかないもん」
「嘘つかないで」
「えっ?」
ニノがアイを誰もいない控室に呼び出した。アイは笑顔だった。仕事でもファンの前ではいつも笑顔を振りまいている。しかしそれは虚しい嘘……ニノはわかっていた。アイは無理をして笑っていると。
「アイにとって天野さんは仕事よりもファンよりも大事なはず、あの人がどうしているのか心配する自分の心に嘘までついて……無理して笑顔を振りまいているなんてわたしからはバレバレだよ」
「無理してなんて……」
「そんなにわたしのことが信用できない?」
「ち、違うよ?ニノを信用してないなんてことはないよ。ただ……」
「ただ……なに?言い訳を考えているの?確かにアイには酷いことを今まで何度もしてきたのは自覚している。信用されていないのも仕方ないって。けど辛いなら辛いって正直に言ってよ!!前までは違ったけど今はずっと一緒にB小町やってきたライバルでしょ!!!」
「ニノ……」
アイの胸にニノの言葉が吸い込まれていく。締め付けられたように苦しかったが、それは決して悪いものではなかった。
「わたしは天野さんがいない日々が寂しい。今すぐにアイドルとしての仕事も何もかも捨てて探しに行きたい」
ニノは仕事が休みの日はコイを探している。共に遊んだゲームセンター、ラーメン屋に公園とコイが行きそうな場所に出向いていたが見つからず、アクアとルビーにその寂しさを紛らわせて貰っている。それでも彼女の寂しさは埋まらない。
「アイなら尚更だよね?天野さんは優しいからなんだかんだ言いつつもちゃんとアイのことを面倒見ていてくれたんでしょ?」
「……うん」
「だったら一番辛いのはアイだよ。他人のわたしでもこんなに辛いんだからさ……今日ぐらいはライバルの愚痴ぐらいは聞いてあげる」
「ニノ……ありがとう」
アイは胸の内を吐き出した。勝手にいなくなってしまったコイに対する愚痴を延々と語り、ニノはそれを静かに受け止めていた。吐き出した後は気持ちが軽くなった。ライバルとして対峙している二人だったが今だけはただの友人としていられた。そしてコイが帰ってきたら二人はこの鬱憤をぶつけてやろうと誓い合ったのだった。