6月になる前に投稿できました。
それでは……
本編どうぞ!
「そうですか……ありがとうございました」
通行人の答えに落胆した様子の女性……それはニノだった。道行く人に片っ端から声をかけている。今の彼女は変装してB小町の『ニノ』だとわからせないようにしながら一体何をしているのだろうか?
「(天野さん……どこにいるのですか?)」
コイを探していた。仕事のない日は彼女の行方を追っている。そして今もどこに行ったのか胸が張り裂けるような思いをしながら彼女の特徴を話して探し回っている。それでも見つからない。
既に数日間も会っておらず連絡すら返してこない状況、更にはミヤコから伝えられたコイの様子を知っているニノにとって不安が心に宿っていた。それが最悪なケースが脳裏に浮かぶ。
「(まさか自殺……ううん、あの人がそんなことするわけない!!優しい人だからアイやわたし達を見捨てて消えるなんてことは絶対にしない!!)」
脳裏に浮かんだ恐ろしい考えを否定する。そんな無駄なことを考えているよりももっと情報を集めないといけないとニノは通行人に話を聞くが、結局有力な情報は得られず太陽が沈み夜が来ても諦めきれなかった。
「(後もう少しだけ探していなかったら……また帰るしかないのかな……)」
もう少しだけ探してみようと思っていてもまた同じ結果になってしまうのではないか?今日も見つからないのか?コイを見つけたら胸に抱いた鬱憤と寂しさをぶつけようと誓い合ったアイも仕事でこの場におらず、不安はますます大きくなっていく一方だった。
「(後何人か聞いて誰も知らなかったら……次はどうすればいいの?)」
スマホを眺めると画面にはコイとのツーショット、それをニノは悲し気に見つめていた。
「はい……ありがとう……ございました」
最後の通行人も知らなかったようだ。落胆は絶望に変わりつつあり、天気は雨でもないのにポロポロと目から液体が流れていた。もう今日は諦めるしかない……
「すみません、そこのお嬢さん少しお時間いただいてもよろしいですか?」
「えっ?」
そんな時だった。ニノは背後から声を掛けられた。その声に反応して振り返ればそこには……
「君の探している人……もしかしたら知っているかもしれませんよ」
そこには笑みを浮かべた
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一瞬惚けてしまっていた。
天野さんと会えない寂しい日々が続いてアイにはああ言ったのに精神的に辛くておかしくなりそうだった。だから時間の限り探し回ったけどそれでも誰も天野さんのことを知らなかった。精神的に参っていて考えたくもないことを考えてしまった。今日も何の成果もなしに帰らないといけないの?悲しみが込み上がり、涙が出てきた時に急に声をかけられて振り返ったら金髪のカッコイイ男の人がいた。一瞬その姿に惚けてしまった自分をふざけるな!と殴りたくなった。カッコ良さなら天野さんの方が上なのに少しでも初対面の人に惚けてしまったことが気に入らない。でも今はそれよりも男の人の言葉がわたしの脳を支配した。
『君の探している人……もしかしたら知っているかもしれませんよ』
この人は天野さんの居場所を知っているかもしれない。
「どこ!?天野さんはどこにいるんですかっ!!?」
わたしはたまらず男の人に飛びついた。その人はスーツ姿だったけどそんなことお構いなく掴んでしまった。シワになると冷静だったなら少し考えればわかることだったのにこの時のわたしは冷静でいられるほど天野さんを安く見ていない。そんなわたしを慰めるように男の人はゆっくりと語り掛けてきた。
「落ち着いてください。僕の言う探している人があなたの探している人と必ずしも同じとは限りません。君の探している人はきっと大丈夫ですから一度冷静になってください」
男の人の
「あっ、す、すみません。ご迷惑おかけして申し訳ありません!」
「いえ、君にそこまで思われているだなんて……きっと素敵な方なんですね」
「はい!天野さんは苦しんでいたわたしを奈落の底から救ってくれた人で見た目は不良なんですけど優しくて気が利いてカッコ良くて面倒見が良くて歌は上手いしダンスも上手で嫌々言っておきながらノリノリで後で恥ずかしがる姿がとてもギャップ萌えで可愛くてわたしが涙を流せばなんやかんや言っても構ってくれる素敵な大切な人なんです♪」
「そうですか、それは素敵ですね」
「はい!あなたも天野さんの良さがわかる人ですね!なんだか気が合いそうです!」
「ふふっ、そうかもしれませんね」
この男の人は天野さんの良さを理解してくれたいい人だった。ずっと笑顔を崩さないで聞いてくれるし、物腰が柔らかいから話しやすくて優しそう。天野さんには負けるけどね!あっ、そうだ、天野さんのこと聞かないと!!
「ところであなたの言う人って言うのは……?」
「偶然見かけました。パーカー姿でフードで顔を隠した
「――天野さんだ!!」
パーカーでフードで顔を隠しているその特徴は天野さんの証。見つけた、やっと見つけた!!
「それで天野さんは今どこに!?」
「この先のアパートから出て行くのを見ました」
「それってどこですか!?」
「よろしければご案内いたしましょうか?」
「是非お願いします!!」
やっぱりこの人はいい人だった。わざわざ案内までしてくれるなんて優しい人だと思った。
案内されて辿り着いたアパートは安っぽかった。ここに天野さんがどの部屋かに居る……わたしは一部屋ずつ訪ねようとしたが腕を掴まれた。わたしを止めたのは男の人だった。
「待ってください、こんな時間に訪ねるのは非常識です。明日訪ねてみては?」
時間ギリギリまで尋ねまわっていたし、わたし達が辿り着いた頃には今日と言う日が変わろうとする時刻になっていた。
天野さんがすぐ目の前にいるかもしれないのにそれを邪魔する男の人に対して苛立った。ここまで他人に苛立ちを覚えたのはアイ以外にいないと思う。けど今はどうでもよかった。一刻も早く天野さんに会いたい一心だったから。
「君の事情は知りませんが、見かけた限りでは追い詰められたりした感じはしませんでしたし……もしかしてその方は家出しているのではないですか?」
「えっ!?よくわかりましたね……正確には家出ではありませんけど」
「こう見えても僕は見る目があると自負していますから。ふむ、何故家出したか理由をお聞きしても?」
「それがわからなくて急に仕事を休むって言って家出してもう数日間ずっとなんです。聞いた話だと少し目を離した隙に思い詰めた顔で帰って来たって……きっと何かあったんです」
「なるほど、しかし見かけた様子から推察すると今日明日で会えなくなるようなことは起こらないと思いますよ?だから今日は一度帰った方がいいと僕は思います。明日、他の方と一緒に訪ねた方がいいかと」
「で、でも……」
早く天野さんに会いたいけど部屋がわからないし、もうすぐ真夜中にいきなり知らない人が訪ねてくるのは訪ねられた側からしたら怖いよね……どうしようか悩んでいると男の人がこう言った。
「非常識な方は嫌われてしまいますよ?」
「じゃあ明日にします」
天野さんに嫌われる……想像すると気持ち悪くなる。だから男の人が言う様に明日アイと一緒に訪ねることにした。
「今日はこんな時間まで付き合わせてしまって申し訳ありませんでした」
「いえ、こんな美しいお嬢さんとお散歩できました。僕にとってはご褒美ですよ」
わたしの謝罪も軽く冗談で済ませてしまう。天野さんに恋していなかったらもしかしたらこの人に恋していたかもしれない。カッコ良くて優しくて魅力的な笑み、どこか天野さんと通じるものを感じたから。
「それでは僕はこれで失礼しますね」
「はい、色々とありがとうございました」
最後まで笑みを絶やさずに男の人は帰っていった。
「いい人だったなぁ……あっ!名前聞いておけばよかったけど、これ以上迷惑かけちゃダメだしこれでよかったんだ」
男の人に感謝を心の中で送っておいた。後はアイに天野さんのこと伝える為にわたしはスマホをポケットから取り出した時にふっと思った。
「あれ?さっきの人……誰かに似ていた気がしたけど……まぁそれはいいか。それよりもアイに天野さんのこと知らせないと……」
「後はお任せしますよ。アイさんの輝きを曇らせるわけにはいきませんし、もっと僕の為にも輝いてもらわないと奪っても重みを感じられませんから。しかしコイさん、あのニノさんから特別な感情を向けられているとは……意外でした。あなたにますます興味が湧きましたよ。是非とも会ってお話したいですが、もう少し先になりそうですね。その時が楽しみです♪」
「アイ、ここに天野さんが居るみたい」
「う、うん……」
翌日、わたしはアイと共に例のアパート前にやってきたんだけど……アイの様子がおかしいって気づいた。ここに来る前までは一緒に天野さんと
天野さんが怖いとか?それはありえないこと、天野さんはアイのお姉さんでとても優しい人。あの人の優しさを理解しているのはアイ……いや、一番理解しているのはわたしだけど、アイは何を怖がっているの?
「どうしたの怖気ついて?」
「な、なんだろう……体が勝手に震えるの」
そう言うアイの手を見れば微かに震えていた。
「……ここで待ってて、わたしが聞きに行くから」
「ま、待って!一緒に行く!」
「……無理したらダメだからね?」
「……ありがとう」
アイにお礼を言われるとくすぐったい。わたし達はライバル同士なのわかってる?でも今はそんなことは後回し、天野さんがこの部屋のどこかに居るはず。昨日からずっとこの時を待っていたんだから。早く会いたい……会ってあなたのぬくもりを感じたい。
1階の入り口付近の部屋から訪ねてみる。住人の人は年齢は様々だったけど、中には留守の部屋もあった。けど全てハズレ、留守の部屋はどうすることもできないから2階を訪ねるつもり……あれ?
気づいた。2階へと階段を上るとアイが足を止めていた。わたしがどうしたのと聞いても反応しないどころか汗を掻いていた。ここに来てからアイの様子がおかしいのは何かあると悟った。このまま連れていいのかと思ったけどアイはわたしの手を握った。
驚いたわたしは手を振り払ってしまったけど、触れられた手は汗で濡れていてアイ自身も自分の状態に混乱しているみたいで訳がわかっていなかった。きっと怖いんだ。訳がわからないって怖いよねわかる。だから今はライバル同士じゃないことにしておいてあげる。
一度は振り払ってしまった手で汗で濡れているアイの手を握る。今度驚いたのはアイの方。
「これで怖くないよ」
「ニノ……うん!」
さっきまでの混乱が嘘のように汗が止まり濡れている手に力が入る。笑顔のアイと共に部屋を訪れるがまたハズレ、そして残った一番奥の部屋か留守だった部屋のどちらかに天野さんが居る。だからなのか気持ちが昂る。会える、やっと会えると昂っていると隣のアイが「あっ」と声を漏らした。どうしたの?アイが見つめる先にその答えがあった。
部屋番号と共に書かれた住人の名前を示す表札に『星野』って書かれていた。その瞬間わたしは思い出す、アイが施設暮らしだったって。母親が迎えに来なかったって聞いたこともある。これがもしわたしの想像している通りなら……運命って実際にあるんだと呆気に取られていると扉が開いて中から現れたのは……
「「……えっ?」」
見知らぬ女の人とアイが固まった。わたしの想像が現実になったんだと理解した。
「おいどうした……ってお前らっ!!?」
「天野さん!!」
中から天野さんが現れてわたし達を見て固まった。やっと会えた……会えて嬉しい!!今すぐに天野さんに抱き着きたかったけど、女の人が邪魔で通れない。その人を突き飛ばしても天野さんに触れたかった。ぬくもりを感じたかった。ぐちゃぐちゃになった思いが溢れかえりそうになったけどグッと堪えたのはひと悶着あるなって確信したから。
天野さん、アイそしてこの女の人が……アイと天野さんのお母さんなんだ。