一番星と屑星のふたつ星   作:てへぺろん

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スムーズに書けたので投稿します!


遂に出会ってしまった母と子、一体どうなることやら……


それでは……


本編どうぞ!




沈黙の家族

「………………………………………………」

 

「………………………………………………」

 

 

 空気が重い……いや、重すぎる。心臓の鼓動がハッキリと聞こえるぐらいに静けさが支配していた。

 

 

 女のアパートに居候することになってしまい数日間が過ぎた。オレが専業主婦をして女がパートに出向くことを繰り返していた。

 大した会話はしていなかったが、最近ではテレビを見ながらしょうもないことを呟いたり、女がたまに手料理を出してきた。それを期待した目で見つめてきてうざったいと思いながら食べてみると案外悪くなかったことを口走ると喜んでいやがった。今日は仕事は休みだったのでアパートで適当にぼんやりしながら過ごしていると何やら女はしきりに玄関を気にしていやがった。聞けば胸騒ぎがすると言うので何を言っているんだ?と思ったがまさかこんなことになるなんて……

 

 

 バカとニノが何故か玄関前に居た。扉を開けた女はバカと視線が交わると固まってしまった。バカも同じ状況に陥っていてここが何故わかったのか気になったが、とりあえずこいつらを中に無理やり引き込んだが……テーブルを挟んで対面した。オレが気を利かせてお茶を出しても誰も手をつけない。まぁこうなるよ、自分を捨てた母親と自分が捨てた娘と再会、更にはオレが一緒にいたこの状況にバカが何も感じないわけがあるわけない。きっと心境はぐちゃぐちゃだろうな。

 

 

あ、天野さん……この雰囲気どうにかできないですか?

 

無理だ。こればかりはバカと女の問題だからな

 

天野さんのお母さんでもあるんですよ?

 

違う!!オレはこいつらとは赤の他人だ!!

 

 

 ニノの発言に強く否定したことで声を荒げてしまった。その拍子にバカと女の視線がこちらを向いたその時に見てしまった。女は瞳の中に懺悔と後悔を、バカは瞳の中に漆黒に染まった星が禍々しく宿っていた。

 

 

 ――ひえっ!!?

 

 

 バカの禍々しい星を見てしまうと心が悲鳴を上げた……怖っ!!

 

 

 恐怖に拘束され、その瞳に何の感情が宿っていたのかオレでもわからなかった。だがスッと瞼を閉じると急に立ち上がってオレの手を引っ張った。

 

 

「帰ろ」

 

 

 その言葉の意味するものはただ家に()()と言うものだけではないとわかった。女をチラリと見れば絶望の表情を浮かべていた。女にも意味がわかったのだろう。その言葉の中に込められた真の意味、それは女との決別の意思の表れであり、親子の縁を切る……それがこいつが出した答えだ。踵を返して女を視線に入れることなく戸惑うニノと俯く女を尻目にオレとバカはアパートを去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………………………………………」

 

 

 バカがずっと無言を貫いてオレの手を引っ張っている。ニノを置いてきてしまったのには心苦しいがあいつなら大丈夫だろう。問題はこいつの方、母親とオレが一緒に居たこと、母親との再会、母親との決別と感情がごちゃ混ぜになっていることだろうな。

 

 

 アパートを去った後、ただひたすら歩く。歩いて、歩いて、見えてきた。数日間だけだが何故か懐かしい感じがする苺プロ(監獄)が見えた。オレはただ無言のまま手を引かれながらどこに連れていかれるのか気が気ではなかった。スタッフがすれ違い様に挨拶してくるのに対してバカは満面の笑みで挨拶を返す……その姿が恐ろしく映り、やっぱりこいつは嘘で形作られたアイドルの皮を被った化け物だと思った。

 そうしてオレは何故かあまり使われていない倉庫へと連れて来られた。普段から使われていなくとも整理整頓はされていたが少し埃が積もっている。そんな場所へと連れて来られて冷や汗が止まらない。

 

 

「………………………………………………」

 

「お、おい、こんなところに連れてきて……ど、どうするつもりだよ?」

 

 

 きっと声は震えていた。握られていた手は未だ離されずバカは背を向け表情を読み取ることができない。返事も返さない空気が重く息苦しさを感じさせる。

 

 

「………………………………………………ねぇ」

 

「は、はいなんでしょうっ!?」

 

 

 この重苦しい中での返答にオレは恐縮した返事を返してしまった。それほどバカの声質は同じでもそこには深淵を感じさせるほどの禍々しさを感じた。

 

 

「……なんであそこに居たの?」

 

「あ、あれは成り行きで……」

 

「……ずっとあそこに住んでいたの?」

 

「い、いや、初めの数日間はネットカフェで寝泊まりしながらぶらぶらしていた」

 

「……男と……寝た?」

 

「ね、寝てない!そもそも何もする気力が湧かなかったんだ。だから寝ていないっ!!」

 

「……そう、それじゃ……なんで……なんであの人と一緒に居たの?別に一緒に居る必要なかったよね?よねっ!?」

 

「――ッ!!?」

 

 

 バカが振り返った。漆黒に染まった星が禍々しく輝きながらオレを捉えている。

 

 

「ずっと、ずっと探していたんだよ?風邪を引いた私の代わりに代役を名乗り出てくれた時……凄く嬉しかった。だから帰ってきたら沢山お礼を言おうねってアクアとルビーも帰って来るの待ってたのに……帰って来なかった」

 

「……」

 

「怖かった……コイがいなくなったって知って、探しても見つからなくてみんな心配していたんだよ?」

 

「そ、それは……悪かったと思ってる」

 

「仕事先できっと嫌なことがあったんだよね?コイは優しいからきっと私に関することだったんだよね?」

 

「い、いや……ち、ちがう……」

 

「嘘付き、何があったのかは聞かないけど私の為にそんなに苦しんで……ごめんね」

 

「……」

 

 

 バカはやっぱり馬鹿だ。お前が謝る必要なんてないのに……勝手に変になっていなくなったのはオレの身勝手な行い、お前が謝る必要はないんだよ。

 

 

あっ

 

 

 バカが呟いた。オレは何を血迷ったのか自分でもわからない。バカの頭を撫でてしまっていた。そのことに気づいて慌てて手を引っ込めようとしたらその手を掴まれた。

 

 

「ダメ、もっと撫でて」

 

「い、いや……」

 

「撫でて」

 

「……」

 

 

 言われるがまま引っ込めようとした手を頭に乗せて撫でてやるとバカは気持ちよさそうにしていた。その姿はまるで子犬、撫でる度に尻尾があればフリフリと振っている姿が容易に想像できた。「んふっ♪」なんて色っぽい声を上げやがる……それは卑怯だぞ心臓に悪い。だからある程度撫でてやって終わりにすれば物欲しそうな瞳を向けてくる。尻尾が垂れ下がっているのが容易に想像できた。

 

 

「もっと撫でてよ」

 

「嫌だ」

 

「むー!!」

 

 

 今度は頬を膨らませて抗議してきやがった。おいやめろ、その顔をオレに見せるな!ああもうわかったわかったからっ!!

 子犬を甘やかす人間の気持ちがわかった気がした。これは抗えない。抗議して来たバカを再び撫でてやると可愛らしい顔で気持ちよさそうに尻尾を振っていることだろう。

 

 

「えへへ♪」

 

 

 しばらく満足するまでバカを撫で続ける羽目になるとはな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ♪」

 

「もういいだろ?」

 

「うん♪お姉ちゃん成分沢山摂取したからもういいよ」

 

「お姉ちゃん成分とか気持ち悪いこと言うな!!まったく……」

 

「ねぇ……コイ?」

 

「あん?なんだよ?」

 

「もうあそこには行かないでね?」

 

「……」

 

「約束してよ。もうあの人とは関わらないって」

 

「……お前はそれでいいのか?」

 

「……」

 

「……後悔はないんだな?」

 

「ないよ、後悔なんてあるわけないよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()だから」

 

「……そうか」

 

 

 オレとお前は赤の他人だろうが……今回は反論しないでいてやる。今のこいつの顔を見れば反論する気も失せちまった。バカは笑顔を浮かべている。しかしその笑顔は何の意味も持たないものだとわかっている。オレを嘘つき呼ばわりするがお前も大概だな。それでもいいと突き進むなら何も言わないでおいてやるよ。

 

 

 その日からバカが今まで以上にめんどくさくなった。ベタベタとオレに引っ付くようになり、まるであの女のことをオレの存在でかき消そうとしているみたいだった。ニノもその様子を複雑な表情で眺めるようになり、バカがファンに振りまく笑顔はまるで仮面を被っている姿にしか映らなくなった。

 

 

 また嘘をつく……いや、今回は違う。元々あの女なんて初めから存在しなかったように振る舞っていた。

 

 

 バカはこう見えてガードが堅い。携帯電話を3台も持っていたのを憶えている。抜けているように見えるが用心深く、アクアとルビーの秘密を徹底的に守り通そうとしていたのがわかった。

 あの女の存在を……自分の母親の存在を徹底的に消す気だ。自分に母親なんて存在しないと自分自身に刻み込むように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……本当にそれでいいのかよ……」

 

 

 オレは苺プロ(監獄)の屋上で煙草を吸いながら星々の輝きが降り注ぐ街を眺めながら呟いた。

 

 

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