一番星と屑星のふたつ星   作:てへぺろん

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アイの過去が暗いのでまだシリアス回は続きます。


それでは……


本編どうぞ!




第三回緊急会議+α

「お兄ちゃんどうしよう……」

 

「どうしようと言われてもな……」

 

 

 恒例ともなりつつあるアクアとルビーの会議。今回で三度目『だいさんかいきんきゅうかいぎ』とひらがなで書かれた弾幕を掲げつつ、不安を宿した表情のルビーと困り果てた表情のアクア。そして今回の議題もアイについてのもの。それもアイの母親についてだ。

 

 

 コイが戻って来た。アクアとルビーは二人とも大いに喜んだ。コイがアイの下を離れたのは仕事先で何かあった……その詳細は話してくれなかった。言いたいことはあったが無事に帰って来てくれてホッとした。これでアイもニノも元に戻ると考えていたが、自分達が想像していたよりも厄介なことが起こっていたことを知った。斎藤夫妻もニノから事情を聞かされた時は二人揃って頭を抱えた。

 アイの母親、あゆみが現れた。今までアイにとって母親の存在は大きなものであり恐怖の対象でもあった。そんな相手と突如として出会うことになっただけでなく、行方不明のコイが一緒に住んでいた。この事実にアイは複雑な感情を抱いたに違いない。成り行きと本人は言っていたがこのような偶然が起こるものなのだろうか?

 

 

 まるで()()()()()()()()()()()()()()()()ようにも思えてならなかった。

 

 

 運命の再会は決して感動的なものにはならなかった。アイは母親のあゆみとの縁を切る選択を選んだ。そのことを聞いたアクアとルビー、斎藤夫妻は何も言えなかった。自分達はその選択をどうこう言える資格はない。言えるとするならばコイだけだがその本人も何も言わなかった。アイがそう決めたならとアクア達は普段通りに接したがファンに笑顔を向ける彼女に対して憐れみを覚えたのは錯覚ではない。

 生まれた時から一緒だった母親、初めから嫌っているならアイは母親の話なんて一度も掘り返そうとするはずはない。その母親との記憶は苦痛と悲しみの過去だけではなく、楽しく幸せな時間もあったはずだ。

 

 

 今、アイの心の中では様々な葛藤を抱いている。

 

 

 この問題を解決しようと今日も会議を開いたわけだが何せアイとあゆみとの問題に口を出せるのかと言えば難しい。自分達はアイの子供であるがあゆみにそのことを伝えていいのかも迷う。娘を捨てたことを後悔しているとしても信頼はそう簡単に戻らない。特にルビーはあゆみのことをどちらかと言えば嫌っている。ルビーは前世で実の親は一度も見舞いに訪れることなく彼女は亡くなった。親なら子を愛するのは当然なのにあゆみはアイを捨てた。その事実がルビーに嫌悪感を抱かせた。だからあゆみの味方をするつもりはない。しかしこのまま放っておくことはできない。アクアも同様だ。

 アイは自分自身では気づいていない。だがアクアとルビーは知っている。三人で仲良く眠る深夜のベットで聞こえる寂しそうな声。

 

 

 アイが「お母さん……」と何度も寝言を呟いている姿を二人は知っている。そんな姿を見せられてファンである二人が放っておけるわけがなかった。

 

 

「ニノちゃんなら何とかしてくれるかな?」

 

「だといいが、この件はアイと母親の問題だからな……流石にニノでも難しいと思うぞ。彼女だってわかっているんだろう。天野に引っ付くアイを複雑な表情で眺めているのがその証拠だ」

 

「むむむ……もうこんな時に限ってアマはなんで静観してるの!!アマにとっても他人事じゃないのにっ!!」

 

「天野も複雑な心境なんだろう。血は繋がっていても母親の記憶はないみたいだし、いきなり血の繋がった親子だと理解しても納得するかは別だからな」

 

「だけど……なんで一緒に居たの?」

 

「天野は根が優しい子だろ?きっと見捨てられなかったんだよ」

 

「……悪い人じゃないのはわかるよ。でもだからってママより毒親を優先したのは気に入らない」

 

「毒親って……まさ色々とあったんだろう。あの子はああ見えてしっかりしている。きっとアイの事で悩んだと思うぞ?だからそこは許してやれよ」

 

「むむむ……」

 

「帰って来てアイとニノにみっちりと()()されたようだからいいんじゃないか?」

 

「う~ん、まぁ……そこは大目に見てあげる。私は子供じゃないからね!」

 

「(いや、俺達は子供だって)」

 

 

 ルビーのドヤ顔に呆れたアクアだった。しかしどうするべきか悩む。

 

 

 娘と母親との縁を切ったとニノから聞かされた。だが寝言から本心では母親を求めている。そのことを知っているアクアとルビーはアイドルとしてのアイを見ていると心が痛む。笑顔を浮かべてファン達に弱っている姿を見せないように振る舞っているのが印象に残る。だからこそ何としても助けたいが自分達では限界があった。

 自分達はアイの子供でしかない。血は繋がっていても立場は親と子、真の意味でアイの気持ちを理解してあげることはできない。ニノでもこの役は努められないだろう。しかし一人だけアイと同じ立場に立てる人物がいる。

 

 

「……癪だけどアマの力を借りるしかないよ。癪だけど」

 

「何故二回も言った?それは置いておいて……やっぱり天野に任せてしまうことになるんだな」

 

「癪だけどね」

 

「何回言うつもりだよ。ルビー、言っておくが天野に甘えるだけの俺達じゃないぞ?サポート役に回っても俺達なりにアイを支えるんだ」

 

「勿論、ママの幸せが一番だからね」

 

「ああ」

 

 

 アイの姉妹であるコイだけにしかこの問題を解決できる適任者はいない。彼女に任せてしまう罪悪感はあるが見ているだけの薄情な真似はしない。アイの為に協力することを惜しまないアクアとルビーであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方で同じマンションに住む斎藤夫妻は……

 

 

「アイドルを育てるのってこんなに大変なことだったのね……」

 

「おいミヤコ、現実逃避するな。あのクソアイドルが色々と特別なだけだ」

 

「わかってるわよ。コイさんも戻って来て一安心したけど今度は母親の件を持ち帰ってくるなんて誰が予想できるのよ?」

 

「まぁ……気持ちはわかる。痛い程わかるぞ」

 

 

 グッと拳を握りしめてミヤコに共感する壱護。テーブルには空になった酒瓶が何本もあり二人は酔っていた。酔わなければやってられなかったからだ。それもコイの失踪から始まり彼女がいない間の仕事と不安の中で時間だけが過ぎていた。コイが帰って来た時はどこに行っていたんだ!と感情を抱いたものの無事に帰って来てくれたことに安堵した。何故姿を眩ませたのか詳細は教えてもらっていないがアイの関連であることは大体予想できた為、アイやニノが解決してくれるだろうと楽観的に見ていたが予想外の事態が発覚した。

 アイが母親と再会を果たしたが、それは決して喜べる再会ではなかった。アイの過去を知り、アイドルへの道を進ませたのは壱護だ。母親に対して複雑な感情を抱いていることは知っていた。更に話を聞けばコイと一緒に暮らしていたと聞き、母親とアイとコイのややこしい三角関係に発展している事態に胃薬が欲しくなったぐらいだ。

 

 

「……ねぇ、私達はどうするべきかしら?」

 

「どうするもなにも今まで通りにしていればいいじゃねぇか」

 

「今まで通りって……アイさんはああ見えてもきっと心では助けて欲しいと思っているはずよ?」

 

「だろうな。だがこの問題は選択肢を誤れば永遠に引きずる結果になる。それこそクソアイドルの今後を決める分岐点の一つと思ってもいいだろう」

 

「だったら尚更助けてあげるべきじゃない?」

 

「今まで助けてきただろ。それはこれからも変わらねぇよ。だから俺達は今まで通りクソアイドルと悪ガキに接すればいいさ。あいつらから助けを求められた時はそれに答えてやればいいんだよ。それに急に母親が現れて感情と心はバラバラになって考える時間が必要だ。親子の縁を切ったと聞いたが、縁って言うのは不思議なもんで意外と切ろうと思っても簡単には切れないもんなんだよ」

 

「……そういうものかしらね?」

 

「そういうもんなんだよ。お前に声をかけたあの時もきっと縁だったんだ。くすぶっていたお前に声をかけ、同じ夢を見た。そしてお前は傍にいてくれる……俺の自慢の嫁だよ。こうして酒を飲みながら悩みを共感している今この瞬間があるのは縁が繋いでくれたおかげだと思ってるぜ」

 

「な、なによ、ちょっとカッコイイこと言っちゃって……そうね。今まで通りあの子たちを支えていけばいいのよね」

 

「そうだ。子供を見捨てるなんてことは大人はしちゃいけねぇ。あいつらはまだまだ体の大きなガキんちょだ。これから悩むことなんていくらでも生まれるだろう。それを自分達で解決しなければいかなくなる。俺達は陰から支える。どうしようもない時は俺達が表立って助けてやればいいさ」

 

 

 そう言って酒を口にする壱護の姿に見惚れるミヤコが居た。

 

 

……あなたの妻になれて良かったわ

 

「おん?何か言ったか?」

 

「別になんでもないわ。ただ……これからもよろしくお願いするわよ社長♪」

 

「……お前酔ってんのか?」

 

「そういうあなたも酔ってるわよね?お相子よ」

 

「……そうだな、なら俺からも……ゴホン、今後ともよろしくお願いするぜ別嬪さん!」

 

「勿論よ♪」

 

 

 きっと今後も問題が起きて大変なことが起こるかもしれないが、その時も大人が彼女達を支えてやればいい。今は夫婦の時間をゆっくりと楽しむであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カァー!!」

 

「よしよし」

 

 

 星々の光に照らされたマンションを遠くから鴉と眺める小さな女の子が目撃された。しかし目を離した隙に消えていた。一説には幽霊だったとか見た者の勘違いなど某ネット版で囁かれたりしたが、この出来事もすぐに忘れ去られてしまうのであった。

 

 

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