それでは……
本編どうぞ!
オレは煙草と酒が大好きだ。相棒と言ってもいい。相棒を堪能している時は嫌なことを忘れられて癒しを与えてくれるはずなのに今は何も感じない。
苺プロ(監獄)の屋上で酒を味わったはずだが癒されない。煙草を吹かしているがそれでも心は一向に軽くなることはなかった。原因はわかっている。バカとあの女の関係が原因だ。なんでオレがあいつら
バカはあの女のことを忘れ去ろうとしている。そんなことはあいつが決めたことなんだから放っておけばいいのに胸が痛くなる。最近はバカとあの女のことばかり考えている自分が気持ち悪い。アクアとルビーにも「何とかできないの?」と言われる始末だ。あいつらの仲を取り持てってか?冗談じゃないね!なんでオレがそんなことしないといけないの意味わかんない。おっさんおばさんはいつも通りだし……いや、いつも通りならおかしくないんだが、なんかこうお前を信じているみたいな目で見られている感じがする。信頼されているのか?バカは心配じゃないのか?バカが壊れて使い物にならなくなったらB小町はおしまいなんだぞ?もうなんだよ訳わかんねぇよっ!!
なんか訳が分からなくて頭を掻いていると屋上の扉を誰かが開けた音が聞こえてきた。反射的に振り向けばニノが居た。きっとオレに用があるんだろう。ニノが近づいて来るので煙草を消す……文句あるか?ないだろ?
「天野さん……ちょっとお話しませんか?」
「説教はもう勘弁だぞ」
「そっちの
「ああ、暇だから別にいいぞ」
ニノが隣に来てそっと寄り添う……って寄り添う必要ある?いや、まぁ別にそれはいいけど。
「……天野さんはアイがこのままの状態でいいと思いますか?」
「……別にいいんじゃね?バカが決めたことだし」
「本心ではそう思ってませんよね?」
「……なんでそう思う?」
「天野さんは優しい方ですし、アイのことを表面は嫌っていても裏面では好きだったりする人ですからね」
「誰があのバカのことを好くかっ!!あ、あいつのことが好きだなんて絶対にあり得ないことだから勘違いすんじゃねぇ!!」
「そう言うことにしておきます。今は真剣に話がしたいので」
「お前から話を振った癖に……」
「ちょっとした仕返しです。最近ずっとアイとベタベタしていて構ってくれなかったので」
悪戯が成功したように舌をちょろっと出して小さく微笑んだ。小悪魔がこんなところにいやがるとはな。それにバカの方からベタベタ引っ付いてくるからオレのせいではないぞ。
「アイ……このままだと本当にお母さんと仲直りできなくなってしまいます」
「だろうな」
「そんなの絶対に辛いに決まっています。わたし、アイと天野さんが帰った後でアイのお母さんのあゆみさんと少し話をしました」
「ほう」
「憐れな人だなって思いました。そして心の底から後悔しているって感じました。アイにやってきたことは許せないと思います。わたしだってお母さんにそんなことされたら……一生心に傷が残ると思います」
「ニノは一人暮らしだと言っていたな」
「はい、わたしがアイドルになる為にこっちに引っ越しすることを両親は許してくれました。初めての一人暮らしは大変で、今は人気も出ましたけど人気が出る前はお金は仕送りして貰っていました。けど生活費も厳しくて食事や洗濯も一人で全部しないといけないし、アイドル目指しているから健康や体重に気を付けたりしないといけなくてやること多くて。天野さんも一人暮らしでしたよね?」
「ああ」
「寂しくないんですか?」
「元々一人だったからな。クソ親父なんて家に居ると暴力ばかりだから居ない方が安心できたね」
「……そうですか」
そう聞いたニノは悲しそうな表情を浮かべた。なんでお前がそんな顔をする?オレの過去なんてお前にとってはどうでもいいことのはずなのによ。
「……ただ」
「ただ?」
「最近ではうざい引っ付き虫がくっ付いてきて一人ではいられないことの方が多くなっちまった」
「ふふっ、そうですか♪」
「なんで笑う?」
「さぁ?何故でしょうね♪」
それを聞いたニノは笑った。解せぬ……
「アイは寂しがっている。
「あっ、そ、そうなんだ」
うん、嘘は言っていないな。アクアとルビーはおっさんおばさんの養子設定だからな。まさかガキどもが自分の子供なんて言えないし……黙っとこ。
「だから……アイには家族が必要なんだと思います。わたしじゃこればかりはどうすることもできない問題。でも天野さんはアイのお姉さんですからあなたの言葉ならアイは聞いてくれます」
「オレはバカとは他人だ」
「そう言うことにしておいて……天野さん、色々とあると思います。でもわたしは今のアイを見ていられない。折角乗り越えなければならない存在に近づけたのにこのままだとアイが落ちていってしまいます」
「あのバカが落ちる?」
「はい、表面は輝いているように見えて中は濁っている。わたしにはわかるんです。このままだとアイがアイじゃなくなって……アイの形をした何かになってしまう」
「……」
ニノが言う言葉は他人が聞けば何のことかわからないだろうが、オレにはハッキリとわかる。嘘付きアイドルの皮を被った化け物が嘘しか吐けなくなった星野アイと言う真の化け物になってしまう。そうなるとオレが憎み、嫉妬し、羨んだ輝きも嘘になっちまう……それは気に入らない。
だけど親子の縁を切ることを決めたのはバカ自身だ。今更オレが言ったところでどうにかなるのか?「
「もう
「………………………………………………」
バカの奴め、本当にいいライバルを持ったよ。みんなから心配され、支えられている……羨ましいじゃねぇか。だからますます憎くなる。これ以上、ニノに迷惑をかけるわけにはいかないな。
「……明日、少しバカと話してみる」
「天野さん……信じてました!!」
ニノの表情に花が咲いたように感じた。そこまで喜ぶことかよ?まぁいいや、ニノには迷惑をかけたからな。聞いた話では時間のある限り街中の人に聞きまわってわざわざ女のアパートまで探しにやって来たんだからこれぐらいの期待に応えてやる……バカが話し合いに応じてくれるかは別としてな。
「それにしても運がいい」
「何のことですか?」
「オレのこと探してたって聞いた。オレってパーカーにフード姿だろ?よくオレのことを憶えている奴がいたな。特徴的だが顔は見えないはずだぞ?」
「いえ、そんなことなかったみたいですよ?金髪のカッコイイ男の人が教えてもらいました。
「ん?」
何故かニノの言葉に引っかかった。
「男とはどんな奴だった?」
「あっ!勿論天野さんの方が何倍もカッコイイんですけど、ほんの1%ぐらいはカッコイイ人だったんです。でも安心してください!わたしは天野さん一筋ですのでっ!!」
「あっ、うん……あ、ありがとう?そ、それで特徴とかは?」
「ええっと金髪以外では……笑顔を浮かべた優しい人でした。わざわざアパートまで案内してくれたんですよ」
「……そうか」
多分だがオレは会ったことない奴だな。しかし謎だ、なんでオレが金髪であることを知っていたんだ?もしかしてスタッフか?それならニノが知っているはずなんだが……
「あっ、それと誰かに似ていたような気が……」
「似ているって誰に?」
「う~ん……どこかで見た気がするんですよ」
「思い出せないならいい。それじゃオレは先に帰るぜ」
「あっ、わかりました」
そう言ってオレは屋上を後にした。アパートに帰ってからもなんて話をきり出そうかと要らぬ考えを巡らせているとスマホにメールが届いた。差出人はニノだった。
「ん?ニノからか、内容は……」
ニノからのおやすみメールかと思って内容を確認してみた。
『金髪の人の件ですけど思い出しました!!』
「思い出したのか」
オレはメールに対して呟いた。そして返信に『誰に似ていた?』と打ち込み、待っていると……メールが届く。何の警戒もなく内容を確認する為に開く。そこにはこう書かれていた。
『その男の人、
しばらく無言でそのメールを見つめていた。スマホ画面が明かりを失ったことに気づいてから手が動いた。
『このことはバカに伝えたか?』
そうオレはニノにメールで送る。するとちょっとしてから返信が来た。
『いいえ、そこまでは詳しく伝えていませんでした。天野さんを見つけたとメールしたらすぐにアイから電話が掛かって来てその流れのまま有耶無耶になりましたけど?』
その内容に対してこう返信する。
『このことはバカには黙っていてくれ。理由は聞かないでくれ。頼む』
メールを送る。さっきよりも間が空いて返信が来る。
『わかりました』
それだけ返って来た。少し間が空いたのはお願いの意味を考えていたんだろう。素直に従ってくれてホッとしたオレは安堵のため息が出た。
何故こんなことをしたのか……本能的な部分が多いがその男に対していい感情が湧かなかった。そして何よりニノから送られて来たメールを再び目を通す。
『
「……まさかな」
それは意図して呟いたものではない。自然に漏れたものだ。
オレは布団に包まり、何も考えないように瞳を閉じているといつの間にか朝になっていた。睡魔に負けてくれて良かったとこの時は思った。それでも手元のスマホに残った
翌日、オレはメールのやり取りを意識しないように平静を装うことにした。顔を洗い、バカと女の関係をどうにかすることに全力を注ぐことにした。