一番星と屑星のふたつ星   作:てへぺろん

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就活は思う様にうまくいかないのでストレス発散の意味を込めての投稿!!


アイとあゆみの関係は果たして良くなるのかそれとも……


それでは……


本編どうぞ!




母と子

「………………………………………………」

 

「………………………………………………」

 

 

 空気が重い……いや、重すぎる。心臓の鼓動がハッキリと聞こえるぐらいに静けさが支配していた……これってデジャブだよね?

 

 

 オレは今、苺プロ(監獄)の待合室でバカが隣に座り、対面には星野あゆみが座っている。何故この女がこの場に居るのかと言うと少し時間を遡る。

 

 

 昨日ニノと話してバカと女の関係を何とかするべくとりあえず事務所へとやってきたが、その前で人影を発見した。もしかして未だに捕まっていない犯人か!?と警戒したが、物陰に隠れて事務所を眺めていたのがあの女だったことに驚いた。

 まさか向こうから接触してくるとは思っておらず、アパートで塞ぎ込んでいるものとばかり思っていた。しばらく女の様子を窺っていると勇気を振り絞ってここまで来たが一歩を踏み出せない。物陰から出ようとしてもすぐに隠れてしまう。その寂しそうな後ろ姿といつまで経っても変わらない状況にそろそろこっちもイライラしてしまい声をかけてしまった。驚いた拍子に「きゃあ!?」とかいい歳のはずなのに可愛らしい声上げんなと思った。女の方もまさかオレに声を掛けられるとは思ってもいなかったようで、口をパクパクとするだけで言葉が出て来なかった。

 

 

 女に「こんなところで何している?」と聞いても気まずそうな顔をして何も言わずに去ろうとした。このまま止めることなく別れる選択肢もあったが選ばず「バカに用があるんだろ?用を済ませてから帰れ」と腕を掴んで伝えると驚いていた。本当はバカに会いに来たもしくはオレに会いに来たかその両方か……まぁそんなことはどうでもいいんだが、事務所に用があるのは間違いない。それでもグチグチして中々入ろうとしないのでオレが無理やり引っ張り入れた。腕を引っ張りながら歩いているとガキどもを連れたおっさんおばさんが丁度いいタイミングで出会うことができた。

 おっさん達の視線から逃れようと女はオレの背に隠れるが今更遅いし、いい歳こいて何やってんだ?と思った。「その人は?」とおばさんが気になっているので包み隠さず伝えると視線は同情や軽蔑が含まれたものへと変わる。特にガキどもはバカの事が大好きだから睨みつける形となったがこれは仕方ない。女も居心地が悪そうだがここまで来たんだから諦めろ。

 

 

 おっさんおばさんにバカの居場所を聞けばレッスン中だと言うので待合室で女を待たせておく。手が空いてからでいいので女が来ていることを知らせずにバカを連れてくるように頼み、誰にも近づけさせないように念を押しておいた。おっさんおばさんもわかってくれたようでガキどもの面倒を見る予定だったが、今回は任せることにした。悪いな、今度愚痴でも酒盛りでも付き合ってやるからさ。

 バカが来るまで落ち着かずソワソワしている女にイライラしながらも待っているとゆっくりと扉が開いた。当然やってきたのはバカだが、女の姿を視界に入れると驚いた表情を一瞬見せた。しかしスッと無表情へと変わり扉を閉めようとしたのをオレが阻止し、バカの腕を引っ張って無理やり座らせることに成功したが……何か言いたげのバカに睨まれた。

 

 

 な、なんだよ?こっちはニノやガキどもがお前を心配してなんやかんやうるさくて鬱陶しいから仕方なくやっているだけなんだぞ!!お、お前の為なんかじゃないんだからっ!!だからそんな目で睨まないで怖いですぅ!!?

 

 

 

 ま、まぁ……そういう経緯で話し合いの場を無理やりセッティングした訳だが……こうなるわ。でもこれ以外の方法なんて思いつかなかったんだから仕方ない。だがまずいな、さっきからずっと沈黙の時間だけが過ぎていく。

 折角のチャンスを活かさないともう後はないだろう。以前は話し合いの余地すらなく切り上げたんだから二の舞にならないようにしないとこれが恐らく最後のチャンスなんだから。

 

 

「……コイ」

 

「……なんだ?」

 

「これどういうこと?」

 

「見ればわかるだろ」

 

「社長がコイが待ってるって言われたからここに来たんだけど……()()()()()がいるなんて聞いてなかったよ?」

 

「………………………………………………」

 

 

 ()()()()()か……女を見れば俯いていた。実の娘から見ず知らずの人と認識される辛さはオレにはわからんがきっとその顔は酷いものになっていることだろう。自業自得とは言えバカも容赦ないな。

 

 

「ぶっちゃけ言えば、前々からうざったいお前が最近更にうざったいから何とかしようと思ってその原因を連れてきたってわけだ」

 

「……この人とは関わらないでって言ったよね?」

 

「あー耳にクソが溜まって聞こえないですぅ」

 

「……嘘つき」

 

「嘘つきはお前もだろ。縁を切ったつもりだろうが寝言でお母さん……なんて呟いていたって聞いたぞ」

 

「……それってもしかして……」

 

「ストップ、耳かせ」

 

 

 バカが何か言うのを阻止する。この場には女がいる。アクアとルビーとの関係性を知られないようにしなければならないので念のためだ。ガキどもから寝言で何度も「お母さん……」とバカが呟いていたのを聞いたことを耳打ちすると諦めたようにため息をついた。

 

 

「夢を見るの。施設暮らしなんかせずに……暴言も吐かれず捨てられずに『普通』に生活している夢を何度も……何度も見るの」

 

「それはきっとまだ未練が残っている証拠だな。こうでありたかったって思いが夢になってそう見せているんだと思うぞ」

 

「でも……もうそれは叶わない夢だよ?もう終わったんだよ?」

 

「そうだな、その夢は幻だ。お前は施設暮らしだし、暴言も吐かれたし捨てられた」

 

 

 オレ達の会話は聞こえていることだろう。女は俯いたままだがその言葉一つ一つが刃となって心を切り裂いている。女の体が震えていたのが証拠だ。それでもオレは女に思い知らしめるつもりで会話をやめるつもりはない。

 

 

「お前はこの女のことが怖いんだろう。受けた仕打ちはなかったことにはならない。過去は変えられないけど未来は違う。未来は決まっていないし、決められてもいない。なぁ、一度と話し合ってみてもいいんじゃない?あの時は一方的に話もせずに帰っちまっただろ?」

 

「で、でも……」

 

 

 そう言ってバカはチラリと女を視線に入れたがすぐに逸らした。

 

 

「言いたいことがあるならこの場で言え……言うべきだ」

 

「別に何も言うことないよ?この人は……お、おか……お母さんじゃないもん」

 

 

 バカはそう言うが声は震えていた。嘘が得意なこいつでさえ動揺が表面に現れて、オレの視線からも逃れようとする。

 

 

「見え見えの嘘ついてんじゃねぇよ。こっちを見ろ」

 

「……」

 

「チッ、こっちを見ろ言っているんだっ!!」

 

 

 視線を逸らそうとするがそうはさせない。両手を顔に添えて視線を無理やり合わせる。綺麗な星を宿した瞳と視線が重なり、バカは恥ずかしいのか頬が少し赤い……って言うかこんなことをしなくちゃならなくなったオレの方が恥ずかしいわ!!こいつがいつまでもグチグチしているからだ。やっべ……これ滅茶苦茶恥っ!!

 

 

「い、いいか、お前がどんなことを思っていようとオレの知ったことじゃないが一度この女と話し合ってみろ」

 

「……でも」

 

「言葉にしなちゃ伝わらないことだってある。人間は相手の気持ちを理解できるほど優れちゃいないし、心を読める悟り妖怪でもないんだ。だから言葉にしないといけない時がある。きっとそれが今だ、大丈夫。何があってもオレが隣に居る」

 

 

 何言ってんだオレ……何があってもオレが隣に居るとかどこの主人公だよ。キザな野郎が言うセリフにこの展開ってギャルゲーじゃん!くっそ恥かしくて死にそうなんですけどっ!!?

 

 

「……ならいいよ」

 

 

 説得が通じて女と対面する。女の方も恐る恐るながら対面することになった。そんな中で手に感触が伝わって来た。バカがオレの手を握ってくる。きっと不安なんだろう……その手は汗で濡れていた。握られた手はとてもか弱く、バカの内面を表しているかのようであった。オレは握られた手にそっと力を入れると握り返してくる。チラリと横顔を盗み見れば、視線同士が合わさりバカの表情に小さく笑みが浮かび上がった。

 勘違いしてやがる。今のはバカの為を思って行動した訳じゃない。これはあれだ……いつまでもへっぴり腰だと話が進まないと思ったので早く終わらせたいが為にやった行為なだけだ。決してこいつの為じゃないからなっ!!

 

 

「……あ、あの……ま、また会ったわね」

 

「そうですね」

 

「……げ、元気にしてた?」

 

「元気です」

 

「……あ、アイドルになったのね。そ、それも人気アイドルのセンターだなんて……す、すごいわね」

 

「そうですか」

 

 

 先に切り出したのは女の方だった。勇気を振り絞って話を続けようとしていたが、無表情で女の言葉をバカは素っ気ない返答に場の空気が重くなった。女も素っ気ない態度を取られてまたもや俯いてしまう。このままだとまた平行線だなと思い、俯いている女に言ってやる。

 

 

「おい、言いたいことはそれだけか?」

 

「……えっ?」

 

「あんただってこのバカに言いたいことあるだろ?今ので全部なのか?」

 

「……い、いいえ!まだいっぱい……いっぱい話したいことがあるのっ!!」

 

「それを言うのはオレじゃないだろ」

 

「……そ、そうね。わ、私の話を聞いて!!」

 

 

 意を決した女は語る。それは懺悔と後悔の告白だった。女とバカは一緒だった……オレと違ってな。そこにはオレの知らない秘めた想いや嫉妬、恨みに怒りがあったんだろう。必死に言葉を選びながらも途中で訳が分からないことを言っていた。それでも言葉を途切れさせることはなく胸の内を語っていた。

 ずっと後悔していたと、男を取られると思って八つ当たりしてしまったこと、バカの為だと自分に言い訳して迎えに行かなかったことを全て話した。バカは女の言葉を無表情で聞いていた。そこにどんな感情があったのかは流石のオレにもわからない。その気持ちを理解できるのはバカ本人しかいないからだ。

 

 

 女の顔はぐちゃぐちゃになっていた。汗と鼻水そして涙で顔を汚していた。それは今まで溜めこんでいた感情が液体となって表面に現れた証なのかもしれない。これを見てバカがどう思うか……女にとって残酷な答えが返って来ても受け入れるしかない。後はバカ次第だ。これでも縁を切る選択をするなら今度こそ何も言わない。

 バカはしばらく黙っていた。その間も女の嗚咽は止まらない……正確には何分か経っただけだが体感では何時間も静寂が支配していたような感覚だったがバカが口を開いた。

 

 

「……迎えに来てくれるって……思ってた」

 

「………………………………………………」

 

「でも……迎えに来てくれなかった。私の為を思って迎えには行かなかったみたいですけど……迎えに来てほしかった」

 

「………………………………………………」

 

「ずっと一人ぼっちだと思ってた。でもコイと出会って……私にはもうコイしか家族はいない」

 

 

 アクアとルビーの事を隠しているのはわかるがオレがいつお前の家族になったんだよ。赤の他人だって言ってんだろっ!?バカの発言に抗議の声を上げそうになったが空気を読んで黙ることにした。

 

 

「あなたのこと……()()()()()()()()()()()()()

 

「……そ、そう……よね」

 

「………………………………………………」

 

 

 女は気づいていない。バカの言葉に秘められた意味を気づけない疎い女に対してバカは一枚の紙を目の前に置いた。それはB小町のライブチケットだった。人気アイドルB小町のライブチケットは今はファンが増えて手に入れられる機会は少なくなった。それが何故目の前に置かれたのか理解できないでいる女を尻目にバカはオレを引っ張って扉の前に行く。

 

 

「えっ、えっと……これは?」

 

「それは差し上げます。今度そこでライブをします……暇なら見に来てくれても構いませんよ」

 

「――ッ!?」

 

「それじゃ……」

 

「ま、待って!!」

 

 

 去ろうとしたバカを呼び止める女は震える声でこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイ……ありがとう……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 女は苺プロ(監獄)から去った。その背中を沈黙と共に見送ったオレとバカだったが、いつまでもこの場に居続けるつもりはないので事務所に戻ろうとした時だ。

 

 

 バカの表情を見てオレは足を止めてしまった。

 

 

 星の瞳に薄っすらと涙を込めていた。それは悔し涙でも悲しみに彩られた涙ではなかった。嬉し涙……オレにはそう見えた。

 

 

「……酷い人だった。散々お母さんに見捨てられないように頑張っていたのに……結局迎えに来てくれなくてさ」

 

「ああ、酷い女だな」

 

「……それなのに今更だよ……後悔なんかして……ライブ見に来てくれてたんだ」

 

「そうらしいな」

 

「……私……気づかなかった。もしかしたら自分でも気づかないフリをしていただけだったのかもしれない……もうお母さんは私に興味ないって思ってたもん」

 

「そうか」

 

「……アクアとルビーもいつか紹介できる日が来るかな?」

 

「もし来るならお前の自慢話で一日が過ぎてしまうな」

 

「……コイのことも忘れてないよ?」

 

「なんでオレがそこで出てくんだよ。オレは関係ない他人だ」

 

「そんなことないよ、コイは私のお姉ちゃんなんだから」

 

「気持ち悪いこと言ってんじゃねぇよ!!赤の他人だって言ってんだろがっ!!」

 

「……ねぇ」

 

「オレの抗議は無視か……それでなんだよ?」

 

「……いつか……いつかお母さんって言えると思う?家族に戻れる日が来るのかな?」

 

「それはお前とあの女の頑張り次第だな」

 

「……そっか」

 

 

 そう言うとバカは涙を拭った。

 

 

「決めた。あの人のことも()()ことにしたよ」

 

「へぇ……その心は?」

 

「だって私は星野アイだよ?星野アイは欲張りなんだから!!」

 

「へっ、そうかよ」

 

「うん、だからコイも私に夢中にしちゃうからね♪」

 

「誰がお前のような化け物野郎に夢中になるかよ」

 

「ひどーい!!」

 

 

 笑顔を浮かべた。嘘じゃない本当の笑顔を……バカは強欲な性格をしていらっしゃるようだ。この様子ならもう大丈夫、仕事も私生活にも影響はないだろう。まったく、お前は星のように輝いているよ。憎らしくうざったくて羨ましいアイドル様、だけど今だけは応援しておいてやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつかあの女と面と向かって母親と言える日が来るといいな。

 

 

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