一番星と屑星のふたつ星   作:てへぺろん

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【あらすじ】
話し合うことで歪ながらも母と子の縁を切らずにできた。後は本人達の頑張り次第で未来は変わっていくことだろう。今回はアイの心情回です。


それでは……


本編どうぞ!




家族への一歩

 コイが消えた。

 

 

 その事を知ったのは私が風邪を引いてしまった日のことだった。その日は仕事は入っていて折角勢いが乗っている稼ぎ時に運が悪い。世の中はお金が大事って知ってしまった。アクアとルビーの将来の為にも道を残してあげないといけない。ダメな母親だけどこれぐらいはしてあげたいの……だって家族だもん。でも今回の件でもしも仕事が来なくなったりしたら二人に将来の道を残せなくなってしまう……それは絶対にダメ、アクアとルビーの未来は母親の私が守らないといけない。だから()()社長やミヤコさんの静止も聞かずに向かうつもりだったけど、体が思う様に動かなくてコイに持たれかかっちゃった。

 あはは……もう最悪。みんなに迷惑をかけちゃう私ってほんと馬鹿だよね。うざがられる理由がよくわかっちゃうなぁ~なんて内心自虐しているとコイが私の代役をかって出てくれた。なんやかんや言いつつもいつも支えてくれる私のお姉ちゃん、ルビーのこともフォローしてくれてコイの事がますます好きになっちゃった♪アクア達に見送られる背中に「ありがとう」って誰にも聞こえてはいないけど二度目の感謝を呟いた。コイが帰ってきたら感謝の気持ちを行動で示すつもり。具体的には抱き着くつもりでいる。人気アイドルB小町のセンターである私に抱き着かれるなんてなんて羨ましいんだ!ファンから嫉妬の視線間違いなしだね!あっ、でも風邪引いてるからコイに移ったらまた迷惑かけちゃう……でも抱きしめたい衝動に駆られちゃう!!この胸のドキドキを抑えられない。早く帰って来ないかな~と思いつつ睡魔に負けて目が覚めた。

 

 

 寝ぼけながらもコイを求めて視線をアクア達に向けると様子がおかしいってすぐに気づけた。その時は熱も下がっていて徐々に寝ぼけていた感覚も取り戻すけど胸がドキドキした。でもこれは嫌なドキドキ……社長とミヤコさんは「なんでもない」と言ったけどすぐにわかった。嘘をついている……二人の目はコイに何かあったと確信させる目をしていた。それが胸をドキドキさせていた理由だった。コイに何かあったと確信したら堪らなくなって二人に詰め寄ったけど何故か震えて話にならなかったからアクアとルビーに聞いたら……コイがいなくなったって。

 世界が真っ黒になった。コイがいなくなった?どうして?帰ってきたらいっぱい感謝を伝えようと思っていたのに……私はスマホを手に取りコイにメールした。何通も送ったけど一向に返信が来ない。待っていることが苦痛に感じた。メールがダメなら電話で……それもダメだった。なんで?コイなら文句を言いつつも返してくれるのに!?何度も電話してもダメ、それが胸のドキドキを加速させる。嫌な気持ちになる。ジッとしているのが苦痛に感じる。電話も通じないなら直接コイのアパートに行こうとしたら止められた。代わりに社長とアクアが見に行ってくれると言うから我慢した。けどコイには会えなかった。

 

 

 それからずっと苦しい日々が続いた。コイがいなくなって数日、時間が経つごとに不安が募っていった。どうして私の前から消えちゃったの?でもそれは私の為だったのだと思う。仕事先で嫌なことがあったんだ。そんなコイの優しさに嬉しさと辛い思いをさせてしまった後悔を感じながらも探しに行きたいのに行けないもどかしい思いに縛られる。それがイライラする。ニノも探してくれているけど……それでも見つからない。ニノも寂しいはずなのに私の愚痴に付き合ってくれてニノが居なかったら今頃アイドルとしての『アイ』を捨てていたと思う。でもそんなことをしたらコイにきっと見放されてしまう。だから我慢したけど徐々にその我慢も限界に達しそうになっていた時にニノからメールが届いた。見るとコイが見つかったって。

 すぐにニノに電話してどこに居るのか聞き出した。それほど離れていない場所に居るとわかってホッとしたけどなんでそんなところに居るのとも思った。でもそんな疑問よりもコイに会いに行くのが先、明日ニノと一緒にそこへ向かうことにした。

 

 

 コイと色々()()しなければならない。ニノとそう決めていた。私達に心配かけたんだからこれぐらい当然だよね?待ってて、今すぐそこに行くから……そう思っていた。

 

 

 コイが居るかもしれないアパートについた瞬間、震えが止まらなくなった。何故か怖いと思ってしまったのはどうしてかわからない。懐かしいような感じがしたの……それが訳が分からなくて不安だったけどニノが居てくれて良かった。おかげで震えに打ち勝ち、二人で部屋を一件ずつ訪ねて1階はハズレ、残る2階へと階段を上ると足が止まった。なんか嫌な感じが強まった。何か思い出したくないものが込み上がってくる感じだった。ニノが手を握ってくれなかったら多分動けなかったと思う。ニノに頼ってばかりでダメだなぁなんて思っていると最後の部屋へと辿り着いた。ここにコイが居るかもしれないと何気なく表札を見ると「あっ」って無意識に声が出た。

 だって……その表札には私と同じ『星野』って書かれていたから。胸がドキドキする……今まで以上にないほどに鼓動が脈打っているのがわかる。理解したくない、ここを離れないとっ!!でもコイに一秒でも早く会いたいと求めているから逃げる選択肢を放棄した。でもこの時の感情はよく思い出せない。ぐちゃぐちゃになってたんだと思う。だって中から人が出てきたその人に見覚えがあったから。

 

 

 私の悪夢、私のお母さん……その人だった。

 

 

 嫌な予感がした。そしてその予感は私の範囲を超えていた。その人とコイが……一緒に住んでいた。

 

 

 なんで?どうして?コイには私の過去を伝えていた。だからお母さんにいい思い出はないと知っているはずなのに……なんでどうしてその人と一緒に居るの!?

 何がなんだか理解できないでいた。連れられて部屋に入るに入ったけど目の前の光景が受け入れられない。忘れられない幼い時の記憶が鮮明に思い出してあの時のよりも老けているけど間違いない。でも目の前のその人が……お母さんだなんて認められない。お母さんだなんて……体が拒絶する。震えそうになる体を無理やり抑え込んだけど早くここから去りたかった。

 

 

 声を荒げたコイのおかげで心にちょっとした余裕が出来た。コイが私を見てビクッと震えたけど気のせいだよね?だってコイは私の味方……のはずなのにこの人と一緒に居たのはなんで?色々と聞き出さないといけなくなった。私は目の前の人から逃げるようにコイの手を引っ張ってアパートを後にした。ニノを置いてくる形になったけどごめんね?もうあの場に居るだけで苦痛で我慢できなかったの。

 私とコイが先に苺プロダクションに帰って来た。でもこれで終わりじゃない。コイとは色々と聞き出さないといけないことがある。使われていない倉庫があるって知っていたからそこにやってきた。雰囲気に押されて恐縮した様子のコイ……返事も受け答えも緊張した様子だったけど、いつものコイで安心した。

 

 

 もしも居なくなっている間に男と寝てたら……手を出していたかもしれない。そうならなくて良かった。不本意な行動は避けたかったし、何より男なんて気にしていられなかった。

 

 

 ずっと寂しかったんだよ?ニノでもこの寂しさは埋められないし、アクアとルビーもコイの代わりにはなれないもん。コイが居ないなんて今はもう考えられない。胸の内をぶつけた。コイを見ればやっぱり思った通り私のことで苦しんでいたんだ。いつもは「赤の他人だ!」って言うけど本当はとても優しいお姉ちゃんに熱い鼓動の音が聞こえてドキドキした。それにね、コイは私の頭を撫ででくれたの!!

 触れられた手から温かくて気持ちいい感触と優しさが伝わってくる。コイは辞めようとしたけどダメ、もっと撫でてほしいと要求すると応えてくれる。私が満足するまでずっと撫でてくれて天国に居る気分だった♪けどこれは伝えておかないといけない。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()。だからあの人とは関わらないで……そう決めたの。

 

 

 私とあの人は()()()()()()()()()()()だって。

 

 

 もうお母さんなんて私には存在しないって決めた。

 

 

 決めたのに……どうして胸が痛くなるの?

 

 

 何故……夢を見るの?

 

 

 その夢はあり得ない夢だった。

 

 

 私が施設暮らしせずにお母さんから暴言も吐かれなかった『普通』に生活している夢を見る。それも何度も何度も同じ夢を見るの。その時の私は嘘偽りのない笑顔でお母さんも笑っていて……羨ましかった。でも楽しい夢のはずなのに虚しくて最後は目が覚めてそれがありもしない夢だって気づく。

 その夢を見ている時にアクアとルビーに知られちゃってたみたい。寝言で「お母さん……」って呟いていたのを聞いたってコイから聞いた。それもあの人が私の目の前に居る時に知ったことだった。

 

 

 レッスンが終わってニノとメンバーと別れて待合室に向かった。社長から「コイがお前を待ってる」って聞かされてコイの方から待っていてくれることに嬉しくなった。急いで早歩きで待合室に到着したら……防衛本能ってやつかな?扉に手を掛けたものの開けるのを躊躇った。何かこの扉の向こうにある……そう思ってゆっくりと扉を開けるとコイだけじゃなくあの人もいた。それを理解したらこの場から去る選択をしたけどコイに腕を引っ張られて無理やり座らせられた。

 ……あの人とは関わらないでって約束したのに。さっきまでコイを求めていたのにこの時はイラついちゃって睨みつけた。けど今日のコイはいつもと違って頑固で、話を切り上げて去りたかったけどダメだったからもう諦めて大人しく従うことにした。

 

 

 だっていつになくコイが攻めてきて視線を逸らしても見つめられるし、不安は私に対して『何があってもオレが隣に居る』なんて言われちゃったら……ドクンと胸が高鳴っちゃった。コイが隣に居てくれるから恐怖を我慢できた。怖くて手を握っても握り返してくれたことが嬉しかった。ただ目の前の人の話を聞くだけ聞いたらそれでお終いにするつもりだった。もう何も感じない、もう親子じゃない、だからもう二度と会わないつもりだった……だったのに。

 

 

 初めて知った。恐怖の象徴だったこの人がどう私のことを思っていたのかを。

 

 

 私の存在がこの人をおかしくしてしまったって知ることができた。

 

 

 何度も謝って泣いている……この人のことをやっとわかることができた。

 

 

 だけど簡単に許してあげない。ずっと寂しかったんだから……迎えに来てくれると信じていたんだからね?

 

 

 だから私は『あなたのこと……()()()()()()()()()()()()()』って伝えた。

 

 

 そうして……B小町のライブチケットを目の前に置いた。うん……()()()()()()からこれで我慢して。

 

 

 コイの手を引いて待合室から出ようとしたら……

 

 

『アイ……ありがとう……!』って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 久しぶりに名前を呼ばれた。そのことが嬉しかったなんて……言えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局見送っちゃった。見送るつもりはなかったのに……話し合いなんてする必要はないと思ってた。あの人は私に何の興味もないと決めつけていた。私は逃げていただけだった。けどみんなに支えられてここまでこれた。そしてコイに背中を押されて……私の胸の内にまた一つ、欲しいものができた。

 いつか……あの人のことをお母さんって呼べる日が来てほしい。私とあの人次第だとコイは言うけど……そうだよね。だから私はあの人も推すことに決めたんだ!いつかアクアとルビーのことも紹介できたら嬉しい。

 

 

 そっと隣を盗み見ると私と瓜二つだけどその顔を見ていると鼓動が高鳴るのを感じちゃう。

 

 

 コイは赤の他人だって言うけど……そんなの認めないから。

 

 

 絶対にコイのハートを釘付けして手に入れる。絶対の絶対にコイと家族になるんだ!!

 

 

 知ってるよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 星野アイは欲張りなんだよ?だから……待っててね、お姉ちゃん♪

 

 

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