それでは……
本編どうぞ!
「ママー見てみて!大きな観覧車!!!」
「ルビー、声を抑えろ。どこに厄介者の目があるかわからない。ここで俺達の関係がバレたら終わりなんだぞ?」
「あっ、ごめんごめん……
ここはとある遊園地。そこにはカップルや家族連れで訪れているお客で賑わっていた。そしてこの
女の子と男の子を連れた若い女性と顔をフードで隠したパーカー姿の
「ホントおっきいね!」
「ねぇねぇ!どれから乗る!?観覧車?それともジェットコースター?」
「ルビー、落ち着けよ」
「お兄ちゃん落ち着きすぎ!」
「そうだよアクア、今日ぐらいはしゃいだっていいんだよ」
「アイ……わかった。全力で楽しむように頑張るよ(前世であまり遊園地に行ったことがなかったな。ちょうどいい機会だし楽しむか)」
もうわかるだろうが星野一家だった。アクアとルビーにアイ、そしてパーカー姿の人物は一人しかいない。
「じゃあマm……
「う~ん……コイなら何に乗る?」
「………………………………………………」
「……コイ?」
パーカー姿の人物はコイだった。
何故星野一家とコイが遊園地に遊びに来ていたのか?事の発端はテレビで偶然遊園地の特集をしており、それを見たルビーが行きたいと言ったことがきっかけだった。星野家は家族関係は訳ありでアクアとルビーに構う時間も減り、コイかミヤコに任せっきりのところが多い。母親として何かできることはないかとアイは考え、次の休みに家族で遊園地に遊びに行こうと言うことになった。しかしアイは有名人、もしアイに子供が居るとバレればスクープとして世に広まってしまう。だからこそ注意深くならなければならないず、当初ミヤコにも付いてきてもらう予定となっていたが、どうしてもずらすことのできない仕事の都合で来られなくなり、壱護は仕事先を転々と駆けまわっている。遊園地を楽しみにしていたルビーを悲しませるわけにはいかないアイだったが、
いつも文句を言いつつも支え、力になってくれる頼もしい存在……コイも誘っていた。寧ろ
そういう事情があり、4人で遊園地へと遊びに来ていたのだ。しかしどういうことだろうか?コイの様子が変だった。それにいち早く気づいたのはアイだった。
フードが左右に揺れている……世話しなく辺りを見回しているようだ。アイが覗き込むと彼女はニタリと笑う。何故コイが世話しなく辺りを見回しているか見当がついたようだ。
「コイってば、遊園地を楽しみにしてたんだね♪」
「――ばっ!?そ、そんな訳ないだろ!ここに来たのだってお前が無理やり……」
「そうだけどうずうずしているよ?今のコイ、ルビーみたい♪」
「――なっ!!?」
アイの言葉に顔を真っ赤にして驚くコイ。彼女は実は遊園地を楽しみにしていたのだ。しかし大人故の葛藤か恥ずかしさを隠したかったのか、どちらにせよ今の彼女はまるでルビーのように興奮状態にあった。
「ええー!?アマと一緒なんてヤダ!!」
「オレだってごめんだね!!そもそも楽しみにしてなんかいない!!」
「もうそういう言い訳はいいから楽しもう!」
「ち、違う!楽しむつもりなんて……」
「何から乗りたい?」
「……」
アイの追及に視線を逸らした先にあったアトラクション……それはレーシングカートだった。そこからコイの視線がそれに釘付けである。
「それじゃ初めはあれにしよっか」
「オレは別に……」
「アクアとルビーもいいよね?」
「おr……ゴホン!僕はいいよ」
「なんでもいいから早く乗りたい!」
「それじゃ行こ?」
「……し、仕方ない。バカとガキどもの面倒を見ないとおっさんおばさんに叱られるからな」
「乗りたかったくせに」
「う、うるさい!!」
更に顔を真っ赤にして怒りを表すが、列に並ぶと興奮の方が勝っていた。今か今かと待ち続けてそして番が回って来た。
「私と
「うん、二人でやっつけようね!」
「とか言っているぞアクア。大口を叩く奴らをオレ達で負かしてやるぞ!!」
「は、はい(天野の奴、滅茶苦茶生きが良いじゃないか。やっぱり楽しみにしていたんだな)」
二人乗りのカートでアイとルビー、コイとアクアのペアで競い合うことになった。以前ゲームセンターで遊んだ時とはまるで違う感覚に戸惑うアイだったが、ルビーにサポートされるもコイとアクアの前には歯が立たなかった。負けた悔しさもあってもう一回勝負することになった。並びなおして再挑戦するもやはりコイペアには敵わない。経験の差は熱意ではどうしても上回ることができなかった。
「コイにまた負けた!!く~や~しい~!!!」
「へっ!お前達ド素人がオレ達に勝てると思ったか!!」
「ぐぬぬ、アマのくせ!!初心者の子供相手に大人げないと思わないの!?」
「勝ち負けに手加減なんてあるかよ!!なぁアクア?」
「天野さん流石に大人げないかと……」
「……レーシングゲームはやったことあるが、レーシングカート初めてなんだ。一応初心者扱いになるはずだぞ?」
「……」
などと言っているがアクアは大人げないと思った。アクアの何か言いたげな視線にたじろぐコイだったが、立場が悪いと思ったのかレーシングカートはこれぐらいにして次のアトラクションを何にするのか話し合うことに。そして次のアトラクションはウォーターライド、水上で稼働するアトラクションに決めた。
今度は競い合うことなくボート型のライドに乗り込み、ゆっくりと高所まで巻き上げられた後、すぐに落下して着水する。着水時に大きな水飛沫を上げて乗客の歓声が響く。肌に触れる水が気持ち良さを感じさせてくれた。ウォーターライドを堪能した後はコーヒーカップで安らかな一時を過ごした後、昼食時となっていた。近くのレストランで各自好きなメニューを選んで味を堪能して、午後からルビーは「ジェットコースターに乗る!!」と意気込んでいた。コイも「ジェットコースターか……」とワクワクを抑えられない様子でアイとアクアはその様子が普段の彼女とはギャップがあってクスリと笑ってしまい、顔を真っ赤にして怒っていた。
いざジェットコースター乗り場に向かったが、アクアとルビーの体格では危険で乗ることができないと知った。その時の落ち込みようは凄くルビーは膝から崩れ落ちた。コイも同じように崩れ落ちていたから、本当はみんなで乗りたかったんじゃないかとアクアは言葉には出さずにそっと胸の内に秘めておくことにした。まるでお預けをされた子供のように落ち込む二人をどうにかするべくアイとアクアは目についたお化け屋敷へ入ることにした。
お化け屋敷は廃病院をモデルにしているようで、薄暗い明かりと病院独特の建物の作りに医療器具が散乱してそれらしく雰囲気を出していた。お化け屋敷に入ると先ほどの落ち込む具合はどこに行ったのやら、ルビーは辺りから聞こえる物音にビクビクしながらアイにくっ付いている。お化けが現れる度に悲鳴を上げてアイの服を強く握りしめて離れようとしない。対してコイはお化け屋敷の作りとお化けの出来に関心しながら色々と観察していた。その様子をコイの隣からアクアは眺めていたが、アイがお化けが平気だったことに意外性を感じていた。
「……アイはお化け大丈夫なのか」
「お化けなんかよりもあのバカの方が恐ろしいからな。アクアもそう思うだろ?」
「……うん」
アクアの呟きを拾ったコイの言葉に同感の意を示してしまった。しまったと思ったが、そのことが本人に聞こえたのだろう。
「コイ、アクア……どうかした?」
「「イイエナンデモアリマセン!!」」
振り返ったアイの瞳が怪しく光り、ただならぬ雰囲気を発していた。お化け役の人もコイ達も底知れぬ恐怖を感じた結果、一番怖いのはアイだと言うことに異論はなかった。
そしてお化け屋敷を堪能した星野一行は射的をみんなでやった。景品のうさぎのぬいぐるみをルビー、アクア、アイの順で狙うも上手くいかず、頼りの綱であるコイが見事に景品をゲットした。ゲーム慣れしていることが活きたのだろう。ゲットしたうさぎのぬいぐるみはルビーに差し出す。一瞬ポカンとしたルビーだったが、うさぎのぬいぐるみを胸に抱いて素直に喜んでいた。その光景を見ていたアイとアクアは心が温かくなった。
その後もメリーゴーランドで回転木馬に乗ることを恥ずかしがるコイを無理やりアクアとルビーの協力を得て座らせその光景をスマホのカメラで撮影すると言う恥辱を受けた後、ポップコーンを食べたり、アイスクリームを堪能したりと遊園地を満喫した。そして時間が過ぎてそろそろ帰る時間になった時、ルビーは駄々を捏ねた。まだ乗りたいものがあったからだ。それは観覧車だった。
観覧車に乗ってゴンドラがゆっくりと上昇していくと沈みゆく太陽とライトアップされた遊園地の光景が神秘的にだった。アクアとルビーにアイだけでなく、コイもその光景に魅了されていた。その神秘的な光景を遊園地最後の思い出として刻み込み、日も落ちて帰宅する星野一行だった。
「ママぁ……むにゃむにゃ……」
「アイぃ……むにゃむにゃ……」
「すっかり寝ちゃってるね……やっぱりうちの子の寝顔きゃわ~~~❤」
「まったく、親馬鹿めが……」
アイ達は帰って来た。遊園地を満喫して帰りのタクシー内では遊び疲れたのかウトウトし始めたアクアとルビーはマンションに付いた時には二人は夢の中、仕方なくコイが二人を抱っこしてベットに寝かせたところだ。傍には射的で当てたうさぎのぬいぐるみも添えて。遊び疲れてスヤスヤと寝る我が子の姿にアイは相変わらずメロメロのようだ。
「じゃ、オレは帰る」
「もう遅いから泊っていってよ」
「嫌だね」
「明日は仕事だよ。どうせなら一度帰るよりここから通った方がいいよ?」
「確かにそうだが……」
「泊ろ?ね?今布団準備してくるから」
「あっ、おい!!」
アイは静止を聞かずに押し入れから
「おいちょっと待て、なんで二枚ある?」
「コイの布団と私の布団」
「なんでだよ!?お前は向こうで寝ろ!!」
「本当は一枚で添い寝しようと思ったんだからね」
「そんなこと聞いてねぇよ!!」
「いいからいいから!!もう遅いんだから早く寝よ」
「嫌だって言ってんだろ!!お前と寝るとか冗談じゃないっ!!」
「………………………………………………寝よ?」
抵抗するコイの顔に近づくアイの瞳が不気味に光る。逃がさないとばかりに手錠をチラつかせながら。
「………………………………………………はい」
そんなアイに勝てるわけがないコイは死んだ目で布団の中に潜り込む。見るからに機嫌を良くするアイはルンルン気分で潜り込む。もうこうなったら意地でもさっさと寝てしまおうと考えるコイだったが、不意に声を掛けられて気がそちらに向いてしまう。
「……なんだよ?」
「ねぇ、今日は良かったでしょ?いっぱい遊んで美味しいもの食べて充実した一日だったよね!」
「はいはい」
「ジェットコースターに乗れなかったけど、アクアとルビーがもう少し大きくなってからみんなで乗ろう!」
「はいはい」
明日は仕事なのに今日一日の記憶を語るアイ。早く寝よと言っていたくせに楽しかった記憶が邪魔をして寝付けないでいるらしい。それに対してコイは相槌を打ちだけで早く寝ろと思いつつ寝かせるつもりあるのか?とも思っていた。しばらくアイは語っていたが段々と会話が途切れ途切れなり始め、やがてアイは沈黙した。寝息がコイの方に聞こえてきてようやく寝たかと安堵のため息が出た。
「すぅ……すぅ……」
「……まったく、語るだけ語って自分だけ先に寝やがって……」
ぶつくさ言いつつも、コイはアイの掛け布団がずれているのに気づく。彼女はそっとずれていたのを直すと顔を覗き込む。そこには幸せそうな寝顔があった。
「……ガキどもと楽しめて良かったな」
それだけ言うと明日の仕事の為に彼女も夢の中へと旅立つのであった。