それでは……
本編どうぞ!
「ころして……ころして……」
「なんで?コイのすっごいきゃわ~~~❤な姿だったのに?」
「やめろ!!思い出すな記憶に残すな!!!」
「ヤダ、だってレア物だよ?しっかり覚えたしスマホに保存したもん。社長達にも見せよっと♪」
「それはやめてくれぇぇぇえ!!?」
公園のベンチに項垂れるオレ。恥ずかしさで死んでしまいたい気分だ。ダブルバカにオレの恥辱姿を何枚も撮られ、新たな黒歴史の誕生だった。それをおっさんおばさんに見せるとかほざいてやがる。ニノがいる手前だからガキどもの名は出さないが絶対見せる気だ……マジ勘弁しろよっ!!そんな思いは毎度のことながらこの
「はぁ……もういい、さっさと帰ろうぜ」
「まだ18時だから大丈夫だよ」
「あまり遅くなるとガキどもが心配するだろ。それに明日は遠出だろ?疲れを残すとパフォーマンスに影響を及ぼすことぐらいわかれよ」
「ぶぅー!そんなことぐらいわかってます!!コイと少しでも一緒に居たいんですー!!」
「はいはい」
「私の扱い適当すぎるよー!!」
「無視だ無視。おいニノもいつまで馬鹿面してやがる!!」
「――はっ!?あまりにも素敵でカッコ良くてあまりのギャップ萌えが可愛くて魅力的な天野さんに我を忘れて没頭していました!!」
「お、おう……そ、それは楽しそうでなりよりだ」
「はい!天野さんとこうしてデートできるわたしは幸せ者です♪」
「むぅー!!」
テンションのおかしいニノにバカが剥れていやがる。もうお前らこれぐらいにしてくれ。こっちはダブルバカの面倒を見るだけでもう疲れてんだから。
「――ゴホン!!それじゃお前らさっさと帰るぞ」
オレ達は明日に備えて早めに帰ることにした。散々弄ばれて疲れたからさっさと帰りたかったこともあるが、仕事があるのも事実。一応こいつらは多忙な身だから仕事に影響することは避けるべきだったからな。
そうしてニノを家に送り届けた。ただ「天野さんはいつでも押しかけてきていいですからね♪」なんて別れ際に言われた……言っておくとオレはお前の彼氏でも彼女でもなんでもないぞ?しかしバカは「ここがニノの……うん、憶えたからね」なんて呟いていた。犯罪だけは起こさないでくれよ頼むから!!後はこのバカをマンションまで送ればおさらばだ。ようやく解放される……あん?
ふっと視線をマンション前に向けると誰かがいた。その人物はたった今タクシーに乗りそのまま走り去って行ってしまった。マンションの住人か?だが妙に気になった。何がとは自分自身でもよくわからないが……って!?
隣のバカがいきなり走り出した。タクシーを追っている……が、当然追いつくはずもなくすぐにタクシーは曲がり角へと消えた。
「いきなり走って一体どうしたんだよ?」
「……ううん、別になんでもない」
「なんでもないわけないだろ。知っている人物だったのか?」
「……見間違い……かも」
答えがハッキリしない。知らない人物なら後を追ったりしない。必然的に知っている人物なんだろうが……なんでそんな思い詰めた顔をしている?
「知っている奴だったんだろ?思いつく奴は誰だったんだ?」
「……きっと見間違いだったんだ。うん!心配してくれてありがとう。もうここまででいいよ」
「……」
はぐらかされた。それにおかしいぞ?いつもなら少しでも一緒に居たいから引き留めるはずなのに……話したくないなら聞かないことにするけどよ。
「部屋まで送っていく。ストーカー野郎も捕まっていないんだから念のためだ」
「……ありがとう」
そう、ストーカーは警察の捜査を搔い潜って今もどこかに潜伏している。既に海外にでも高飛びしたのかそれとも秘密の隠れ家でもあるのか、犯人だけ捕まっていないことだけは確かだ。セキュリティが良くてもどこか人為的なミスかでマンションに入られている可能性だって捨てきれない。事件から結構な時間が経ち、今更ながらも今のこいつはどこか心ここにあらずと言った感じがして危うい。とりあえず適当に理由付けをしておっさんおばさんに引き渡さないとな。
その後はおっさんおばさんの部屋まで行き、バカを引き渡した。ガキどもに会うと笑顔を見せるがオレにはそれが表面上のものだとハッキリとわかった。おっさんは今日も仕事だからおばさんに先ほどの件を伝えて注意しておくように言っておいた。
おばさん達に見送られオレも帰路についた。帰りしなに煙草と酒を買うのを忘れず、いつも通りの出迎えてくれる奴など一人もいないアパートへと帰って来たが、バカの思い詰めた顔が忘れられない。何故あんな顔を?あいつにそこまで思い詰めた顔をさせる人物とは?
「………………………………………………」
煙草と酒を堪能しながらだが味よりもその人物が気になっていた。バカは交友関係は全然ダメ、あいつが気にする人物なんて両手で数えられる程しかいないに決まっている。あいつが心許す奴なんてオレが知っている人物ぐらいだろうな。オレがまだ顔を合わせていない人物の線を踏まえて考えてみよう。
あの時、一瞬だけ見たんだ。タクシーに乗る姿を……後ろ姿だけだが確かに見た。けど一瞬の記憶力なんて曖昧だ。バカの方に気を取られて意識を向けた時には既にうろ覚えだ。だから思い出せ、あの時の光景を!!
しばらく記憶を辿っていた。バカが知っている人物、見間違いだと言っていたが嘘だ。誰かが頭の中に思い浮かんでいるはずだ。それが誰なのか……待てよ、一瞬、一瞬だがオレはマンション前に居た人物にある感じを抱いたのを思い出した。
その人物が誰かに似ている……そんな気がした。
「誰だ……誰に似ていた?」
ふっと思い出した手がかりを頼りに懸命に記憶を辿る。後もう少し、後もう少しで思い出せる気がする!!
記憶を辿っていくと古いものから新しい記憶へ、ごく最近のガキどもとバカとで遊園地に遊びに行った時の記憶が鮮明に思い出される。あの時は楽しかったなぁ……なんて感傷に浸っているどころじゃ……あっ!?
煙草を危うく床に落としそうになった。それは何故か?それ程の衝撃を受けたからだ。その事実を思い出すとしばらく呆然としていたが、オレはすぐさま煙草の火を消し飲みかけの酒を胃袋に入れて出かける準備をする。
本当はこんなことしたくない、したくはないが仕方なくだ。夜中になっちまったがそんなことは知ったことか。何もなければそれでいいだけだからな。しばらくの間は我慢してやる……だから感謝するんだな!!
「よっ、アクア。しばらくここで居候させてもらうぞ」
「あ、天野……さん?」
突如の訪問に出迎えたのはアクアだった。困惑しているアクアを部屋に押し入れながらオレは外に誰もいないかを確認して扉を閉める。チェーンも忘れずに。少ない荷物を放り出して、未だに困惑するアクアを余所にソファーに腰を下ろす。すると扉が開き、風呂上りのパジャマ姿のルビーとバカがオレを見つけて驚いていた。仕方ないだろ?こっちは嫌々ながら来てやったんだよ。
「悪いな、しばらくだがここに居候させてもらうぞ」
「「「えっ?」」」
困惑は更に広がるが知ったことじゃない。いつまでそんな馬鹿面を晒しているんだよ?だって仕方ないだろ。
アクアの後ろ姿が……マンション前に居た人物によく似ていたんだからよ。