初めからシリアス回続きで自分で書いていて滅入る……日常回入れたいですね。
それでは……
本編どうぞ!
天野コイ……それがあたしの名前。
幼い頃から家が嫌いだった。酒に溺れるクソ親父が嫌いだった。
昔は真面目だったらしいが、今の姿を見ればそんなのありえないと思える。母親とはあたしが生まれた直後に別れたらしい。そこに何か理由があったとしてもクソ親父を哀れだとは思わない。
幼い時から、家事や洗濯はあたしが担当だった……と言うよりしなければならなかった。やらなければ家中が酒の空き缶とゴミで溢れかえる。それだけならまだ良かった。
うっかり皿を割った時は殴られた。食事が美味しくなければひっくり返された。泣けばまた殴られた。幼くても一応一般的な知識が身についていたということは、赤ん坊から少なからず短い間までは大切に育てられていたということになる。そんな記憶があったならまだクソ親父を見る目が変わっていたのだろうか……まぁ、そんなことはありえないだろうけど。
そんな日々を送っていると見知らぬ女が時々やってきた。やってくる度に毎回女が違ったことに何度も首を傾げたこともあった。
クソ親父と女がベッドの上で何かしていた……あの時は何をしていたのか理解できずにその光景を見ていたら蹴られた。女はそんなあたしを見下しながらに笑った。結局数年後にその
これでも学校には行っていた。限度を超えた暴力で傷や痣が出来た日もあった。それが学校側にバレたらまずいとクソ親父は体調不良と偽って休まされたし、このことを話したらまた殴られると痛いのは嫌だからと頷くしかなかった。それに学校は嫌いだった。
友達なんて当然できなかった。友達を作って親しくなってクソ親父の所業がバレたらと思うと怖かったから。
誰にも助けを求められずにいつも一人。
陰キャとして学校を過ごす内に、一人ぼっちは
一人でいるとバカにする奴、物を取る奴、それを見て笑う奴。集団で個を弾圧する。
我慢した。泣けばクソ親父に殴られる。もし喧嘩をすればクソ親父の元に連絡がいく……知られたら怒られる。だからいじめを受け入れた。
でも日が経つにつれて、今まで蓄積されたいじめと家庭内暴力に血が次第に沸騰していく。我慢の限界が来ていた。
あたしが大人しい性格であれば良かった……けれど性格はクソ親父に似ていたようだ。
ある日、いじめの常習犯どもに絡まれた。その中のリーダー的な如何にもガキ大将の男子は好きな子に告ったけどフラれた腹いせにあたしに絡んできて、いつも以上にも増してうざかった。我慢していればいつか終わると思ったけど、そのガキはあたしを叩いた。
あたしが
その後はよく覚えていないが、先生達が沢山いた。泣き叫ぶガキどもと顔がボコボコなったガキ大将の男子の胸ぐらを掴んでいたあたし。誰もがいじめられっ子のはずのあたしを化け物のような目で見ていた。そして暴力沙汰を起こしたことで怒られた。
当然喧嘩をしたことでクソ親父に連絡がいき、全てはあたしが悪いと納得させられた。そして家に帰って待っていたのは暴力という名の教育。食事もお風呂も抜きで冷たい廊下に放置された。
もう嫌だった。あたしは……逃げた。
クソ親父は今頃焦っているのだろう。でもそれは子供が失踪してその責任を問われることに焦っているだろうからどうでもよかった。
それよりもお腹が減った。知らない場所、知らない人ばかり。どうすればいいのかわからない。
路頭に迷っていたあたしを見つけた金持ちの小太りの男。そいつは路頭に迷うあたしを買った。
あたしはそいつについていくしかなかった。生きたかったし、誰でもいいから頼りたかったのかもしれない。
小太りの男が住居に止めてくれた。しかし金なんてこの男からもらった金以外に持っていなくて何も払えないあたしに男は持ちかけた。
「君にはその顔と体があるじゃないか」
その男は裏社会を生きていた。だからこういう
「金が欲しいなら体を使え。生きたいのであれば頭を使え。君と言う武器を使え」
金の得方、社会で生きる為の術を教えられた。
初めては痛かったし、泣いた。でもこれ以外にあたしには何もなかった……金を得る為、生きる為に何度も知らない男に抱かれた。
だけど慣れと言うのは恐ろしいものだ。いつからか抱かれていたのが抱くようになった。
『あたし』が『オレ』となった。
幼さを捨てたオレは街中をうろつき、金払いのよさそうな男に声をかけてホテルに誘った。独り身のさえない男を甘い言葉で誘惑した。大金を出すと言ってきた男には愛想を振りまいて
金払いのいい相手は連絡先を交換し確保する。金払いの悪い相手はその場でおしまい。安定して金を手に入れる為には必要なことだ。
だが最後は一人。いつもそうだ。
体は温まっても心はいつも冷めていた。
そうやって金を手に入れる日々が続く。煙草と酒が癒してくれる唯一の相棒となった。未成年であった為に煙草と酒をやっていることがバレたらまずい。いつも男にせがんで買ってきてもらってた。中には未成年だからと知って辞めさせようとする男もいたが、正しい行動を起こしているように見えても未成年のオレとホテルにいる時点で積みだ。
結局オレの言いなりになる。弱みを握ればチョロいもんよ。
男を抱く日々もそれなり経ったある日のこと。
「君ってアイに似ているね」
「え~それ誰ですかぁ?
男を抱くときは
「まだ小規模のアイドルグループ『B小町』のセンターの子、名前はアイって言うんだ」
「へ~、そうなんですか~」
オレが地下アイドルにそっくりだと言う。全然アイドルなんて興味無かったが、男がライブのチケットを持っていて一緒に見に行こうと誘った。正直反吐が出るほど嫌だったが、デート代と称して金を払ったから乗ってやった。
お気に入りのパーカーを着込み、素顔を隠すいつもの格好で男と待ち合わせ場所にいき、合流して目的地へと辿り着く。
ライブ会場は思った通り小さくあまり目立たない場所にあった。地下アイドルなのだから当然だろうと興味のないオレは男にたかって始まるまでの間は適当にそこら辺をぶらつきながら食べ歩きをしていた。それにどうせ地下アイドルだ、興味はないしライブも男の付き添いで暇つぶしにもならない無駄な時間と思っていた。
小さい会場ながら客はまぁまぁいた。男ばかりで女は一人か二人か程度。オレも含めれば三人ぐらいだが、オレを数に入れる必要はない。
周りの目もあって煙草と酒はお預けをくらい、さっさと終わらないかとボケっとしていると……
『一番星が舞い降りた』
「「「「「ありがとうございました!!」」」」」
「すごかった……すごかったぉ!!ほらね言ったでしょ!君とそっくりな彼女がアイで……って、あれ?」
何か聞こえた気がしたが、そんなものどうでもよかった。
早くあの場から逃げ出したかった。
なんだあれは?
だれだあれは?
あいつは……なんなんだ?
センターに居たあいつ……オレと瓜二つの顔をしていた。
似すぎている……世界に自分と同じ顔をした人間が三人いると聞くが本当だった。
例え同じ顔をした奴とあっても動揺はそこまでしない。ちょっと驚いただけだ。だけど……
体が拒絶した。本能が逃げろと発した。オレと言う存在がかき消される気がした。
瓜二つのあいつは輝いていた。例えるならば……一番星。
闇を飲み込む無限の光を放つ星。中でも一番光輝く星々の頂点。オレはあいつを見て……怖いと思った。それと同時にこう思った。
あいつは嘘つきだ。
仕草の全てが研究されて自然ではない嘘で塗り固められた作り物。視線、口角、そしてあの万人を魅了するだろう笑顔ですら作り物。
相手が求める一番喜んでもらえる笑顔を
人間の形をした嘘の塊……
だけど……理解してしまった。理解したくなかったのに。
あいつはオレと同じ嘘つきで、探しているんだ……
『愛』を……探しているんだ。
詳しくはわからない。けどあいつの星の瞳が語っている。
辛い過去がある。苦しんでいる。愛を知りたいと訴えていた。
オレは……あいつが本物の輝きを手に入れられる資格を持っていると思っている。今はまだあいつは嘘で作られているが、本物の『愛』を手に入れたら輝きは真の光を照らすことになる。嘘が本物になった時、弱点すらなくなり……
『完璧で無敵な一番星になる』
オレと瓜二つなのに……オレにはないものを手に入れていく未来が見えた気がした。比べてオレはこれからずっと闇から逃れられない運命に縛られ続ける未来が待っていることを幻視させる。
……なんで?
オレも辛い過去があって苦しんだ。それなのに幸せになれない?あいつは手に入れられるのに?
闇に生きているから?
穢れてしまっているから?
同じのようで違い、違うようで同じ。なのに幸せになれる資格があり、一方はその資格がない。光輝く世界に闇に染まった者の居場所はない……そのことに腹が立ち、輝きに焼かれる。
憎い……憎くて、憎くて、たまらなく憎くて……羨ましい。
羨ましい……羨ましくて、羨ましくて、たまらなく羨ましくて……憎い。
その日から……
それからだ。
髪を
『B小町』が売れ始めたことであいつの話題が上がる度にむかついた。人気が出れば出るほど街中、ネット、広告、宣伝などで見かける回数が増す。それに比例して男どもにもあいつの存在が知れ渡る。
引っかけた男の中にはオレをあいつと間違えた奴もいた。その時は非常に不愉快を感じたけど、見た目が瓜二つだから一度は見逃してやった。間違えは誰にもあるからね。だけどホテルに連れ込んだ時にオレをあいつを重ねて見ていたから話は別だ。だからそいつとは
オレをあいつに見立てて近づいて来た変態野郎も現れたが、そいつとは即おさらばだ。オレをあいつの代わりにしようとした。
オレは代わりなんかじゃない。あいつではなくオレを見ろ!!
それでも……必ず『アイ』の面影が付きまとい、呪縛のように絡みつく。
金の為にも男を抱かねばならない。そうしなければ煙草も酒も手に入れられなくなって生きていけなくなる。オレにあいつの面影を見てもそのことを口に出さなければ……すっごい嫌だが、見逃すしかなかった。
星野アイ……それがあいつの本名だ。この時はまだ『アイ』としてしか名前を知らなかったが、後に本名を知ることになるだなんて……
「初めまして、私は星野アイ。あなたのお名前は……?」
最悪な形で出会うことになった。しかも最悪な事実も知ることになる。
オレと
確かにそれなら顔も瓜二つなのに納得がいく。だけど寄りにもよって
やっぱりオレの人生はクソだ!!
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星野アイ……それが私の名前。
現役アイドル20歳で子持ち。アクアとルビーは双子なの。とってもきゃわ~~~❤な可愛さを持ったすっごーい天才な私の子供達。アクアとルビーを愛してあげなきゃと思うと……やっぱり私は愛されていなかったんだって実感する。
お父さんはいなくてお母さんはいたけど、私を愛してはくれなかった。
物に当たって怒る姿が怖かった。悪口を言われたこともあった。けど本当のお母さんだから愛してほしいって……思いたかった。
そんなお母さんは窃盗で逮捕されて私は施設に預けられた。施設にいる間も釈放されたらお母さんは迎えに来てくれる……現実は迎えになんて来てくれなかった。
お母さんの子供だから迎えに来てくれる……それはただの願望だったんだ。
悲しかった。嫌だとは思ったことはあったけど、お母さん以外いなかった。お父さんも知らないし、祖母も祖父の事も知らない。
私と同じ声と瓜二つの顔をした子と出会った。その出会いが
天野コイ……DNA鑑定で私と彼女は姉妹だとわかった。それも双子……これも運命なのかな?
私はアイドルなのに子供を産んだ。でもそれは間違いなんて思わない。生まれてきてくれて嬉しかった。
アクアとルビーも双子!その母親の私も双子……これってもう運命だよね?
コイは私のことを
私は嘘つき……間違っていないけど、わからないように嘘を嘘で隠していた。それなのにコイは私が嘘で作られたアイドルなのを見抜いた。なんでわかるのか……わかっちゃった。
コイも嘘つきなんだ。嘘つき同士だからわかるんだ。私達はやっぱり双子の姉妹なんだ。わざわざ髪を
これからはコイがお姉ちゃん。アクアが「姉かどうかまではわからない」とか言っていたけど私がお姉ちゃんって認めれば何も問題ないよね?
でもコイには……人には言えない秘密があった。
病室を訪れた途端にコイは嫌な顔をするけど、私の代わりに刺されたんだからお見舞いぐらいは許されるよねうん。小言を言いつつも付き合ってくれるコイ、
コイの事が知りたくて……知らなければいいことを知った。
それはコイがトイレに立った時のこと、付き添うと言っても拒絶されてちょっとショックだった時にスマホの着信音が聞こえた。
コイのスマホ……誰からだろう?
画面を見れば男の人らしき名前……妙な胸騒ぎがした。
だから……ダメだとわかっていても出た。社長が止めたけどもう出ちゃったから遅い。
『やっほ!元気してる?』
やっぱり男の人の声だった。
「どちら様ですか?」
『何言ってんの?僕だよ○○だよ』
「……知りません」
『またまた~!今日のコイちゃんは天然ボケキャラさんかな?』
コイと同じ声だから向こうは私をコイだと思っているみたい。コイを
『ねぇ最近溜まっててさ、いつもよりも手元にお金があるから久々に
「……えっ?」
何を言っているのか理解できなかった。
『また彼女ができたんだけどなかなか
何かを相手が勝手に言っているだけ……きっとそうに違いない。
『もしかして
相手が言い終わる前に終了ボタンを押した。耳障りな声が流れなくなったスマホの画面を睨みつける。
頭の中が揺れている。
理解できない……理解したくない。
私だって20歳。そういう性の知識は知っているし、アクアとルビーがいるんだから経験済み。色々とあの頃は拗らせていたからだけど……コイの方は事情が違う。
コイは……
「マジかよ……」
社長がそう呟いた。スマホの会話が社長にまで聞こえていたみたい。視線を向けるとビクッと体が震えたのを見逃さない。
「……そんな怖い顔をするな」
「怖い顔なんてしてないよ?」
「……そういうことにしておくわ」
私って怖い顔してた?あれれ、おかしいな?そんなつもりなんてなかったのに……
「まぁ……人には色々な事情がある。芸能界にも色々あるみたいに何か訳があるんだろ」
「訳って……なに?」
「……世の中は綺麗事だけじゃないってことだ」
社長はそう言って黙ってしまった。私だって綺麗事だけじゃないって知ってるよ。だからかな?コイの瞳に宿っていたのは
私が妊娠してアイドル活動を休止していた頃、宮崎の病院にいた時に社長が教えてくれたっけ。
でも思えば……あれってコイのことだったんだ。双子の姉妹だとすると……私が妊娠していたのが16歳だからコイもその時は16歳。その時から……もしかしたらその前から
……色々とコイから聞き出さないといけない。ただの勘違いの可能性もあるから……そうであってほしい。
だからコイが帰ってきたら問いただそうとしていると社長に止められた。
なんで?って聞いたら怪我人に無理はさせられない。それに絶対に口論になるからダメって。
私はそんなことをするつもりはない。ただ本当のことを知りたいだけ……だけど社長には珍しく私を無理やり言葉で抑え込んだ。
「お互いに姉妹だとわかったばかりで、お前も奴も心の整理がついていない。今はまだその時じゃない。そのことを聞くのは少ししてからでも遅くはねぇぞ?」
……今は我慢する。だけど諦めたわけじゃないからね。
私がお姉ちゃんを守らないと。私とお姉ちゃんは家族なんだから。
だからお母さんみたいに……私を捨てないで。
『
アイの双子の姉妹。金髪のショートヘアだが、金髪なのは髪を染めている。地毛はアイと同じく紫がかった黒髪でアイと同じなことを嫌った為だ。声までアイと同じ。煙草と酒が相棒。
『星野アイ』
コイの双子の姉妹。紫がかった黒髪のロングヘアー。顔が整っているのはもちろんのこと、観客の目を引きつける天性の才能を持つ天才アイドル。
原作では悲劇のヒロインだが、この世界線では現時点では健在。コイがいることで彼女の心に変化が見られ始める。