拉致監禁された上にお持ち帰りされたコイはと言うと……
それでは……
本編どうぞ!
「酒」
「ダメ」
「……煙草」
「残念でした。煙草なんてここにはありませ~ん!」
「ふっざけんな!!」
「大声出さないでよ。アクアとルビーが怯えちゃうでしょ?」
オレはこのバカに買われた。
拉致監禁までされたオレに金を差し出してきた。その額は見慣れた金額よりも少ない。有名なアイドルでも手元に何十万もの大金を持ち歩いているわけはないようだ。微々たる金額だったし、ましてや相手がこのバカだ。
反吐が出るほど嫌だったから断ろうとしたら瞳が不気味に輝いて……まるで受け入れないと明日が来ないと語っていた。
金縛りにあったような感覚に陥ったオレはそのままお持ち帰りされた。
オレが今いる場所はイカレ野郎に刺されたマンションではなく、別のマンションだった。おっさんおばさんが住んでいるマンションらしく、その方が何かと都合がいいらしい。犯人は今も捕まっていない。また狙われるかもしれないとのことでここは引っ越したわけだが……
こんな体験は初めてだ。いつもなら男が金を払う。女の中には女同士のLOVEな関係を好む性癖を持った奴はいるが会ったことはない。
このバカが金を払った訳だが、
まぁただ同然に金を手に入れることはできたが……バカ以外に問題があった。
入院してから一度も煙草も酒も得ていない体は我慢の限界がきそうだった。よく入院中我慢できたと思う。煙草がないとイライラするし、酒が恋しい。欲してた……今すぐにと。
だがここには煙草はない。酒はあるが、飲ませないだと……ふざけるなっ!!こっちは死活問題なんだけど!?
「酒!!煙草!!よこせ!!」
「ダメで~す。コイにはまだ早いから」
「オレは20歳だ!!」
「私も20歳!凄い偶然だね?」
「オレ達は双子なんだから当たり前だろぉ!!?」
「コイは私のことを姉妹だって認識してくれているんだね?」
「ち、違う!!今のは……と、とにかくオレは買い出しに出かけてくる!!」
「ダメで~す!お金払ったんだからちゃんと相手してくれないと……アイ困っちゃう」
「うわきもっ!?そのあざとい表情うざすぎ!!……っていうかそろそろ
「そう言って逃げようとしてるのわかっているんだからね?」
ちくしょう!!金は手に入れたから買い出しするついでに逃げてしまおうと思っていたが……こいつ意外と用心深い。事務所からこいつは手錠を外そうとしないし、オレを一人にさせないつもりだ。
「もうオレは20歳なんだから煙草も酒も合法なんだからいいだろう!?」
だがこれだけは譲れない。煙草と酒は相棒だ。それがなければオレは頭おかしくなって死ぬ。
「でもそれは今の話でしょ?コイって未成年の頃からやっているよね?」
「……やってねぇし」
「嘘ついたから外出禁止ね?」
鬼!悪魔!!嘘つきバカアイドル!!最悪な人生の中で今一番の地獄に居る。こんなの生き地獄だ……もうこいつぶん殴っていい?一度叩いたんだから二度三度殴っても同じだからいいよね?
「ママ!どうしてそんなアマを連れ込んだの!?」
「ルビー落ち着けって」
「お兄ちゃんだってこんなアマが家に居てほしくないでしょ!!」
ぶん殴ってやろうとしていたらガキがギャーギャー騒ぎ始めた。
男がアクアで女がルビーだったな。アクアの方は本名はアクアマリンらしいが……なんだこのキラキラネームは?バカが考えた名前だろこれ?ガキに同情する気はないが……将来大丈夫か?
バカの子供にしては賢そうだ。特にアクアの方はオレに応急処置を施したのを覚えているし、ルビーの方も幼く見えて流暢に言葉を喋っている。アマなんて言葉どこで知った?まぁそんなことはどうでもいい。
ガキが二人もいるのにオレを一緒にさせるのはどうかしている。おっさんおばさんもオレの過去を知り、子供の教育に悪いと反対したがバカのゴリ押しでアクアとルビーも今晩一緒にいることが決定してしまった。
煙草も酒も得られず、バカのせいでイライラしている自覚はある。そんなオレがガキに手をあげるとは思わなかったのか?
まぁ、ガキに手を挙げる気はないよ。カラスのガキ?あれはオレの幻覚だ。だからガキでもないし、この世に存在しないに決まっている。
ガキに手を挙げちまったら……クソ親父と同じだ。それだけは……嫌だ。
「天野さん」
「……なんだよ?」
バカの息子……アクアがオレに何か用があるようだ。
「未成年の飲酒喫煙は法律で禁止されています。そのことを今更どうこうと指摘するつもりはありませんし、煙草と酒の中毒性も知っています。禁煙を望んでも中々やめられないことも……酒の方は飲みすぎなければいいと思っていますが煙草は考えてほしいんです。アイはアイドルです。煙草の副流煙には多くの有害物質が含まれていて、副流煙による健康被害としては喘息などの呼吸器障害、肺がん、動脈硬化、心筋梗塞などの症状が発生するリスクが存在し、自分のみならず周りの人にも影響を及ぼしてしまう。受動喫煙と言ってさらされると、喫煙者と同じかそれ以上のリスクがあります。アイにはアイドルをやめても元気でいてほしいと思っている。だからアイの前では煙草は控えてくれませんか?」
「アクア……!!」
「えっ?おに……ちゃん?」
……ええ?なにこのガキめっちゃ喋るじゃん。それにめっちゃ詳しくね?えっ、なに?このガキ天才なの?バカと天才は紙一重って言うけどバカから天才が生まれたわけ?そのバカもなに感動してんだ?娘の方は驚いているな。オレも驚いたわ。
母親はバカ、息子は天才、娘は……このガキも天才の素質がありそう。平凡ならアマとか言葉は使わない。なんなんだこの一家は?
比べてオレは……ちっぽけだなぁ。
「……わ、わかった。なるべく頑張ってみる。っていうか明日になったらオレは帰るから」
「えっ?なんで?」
「なんで?って言葉が出てくる時点で意味わからんのだけど?」
「お金払ったよね?」
「今日の分はな。まさか明日の分も払ったのか?」
「違うよ?一生分」
「……お前はオレをあんなはした金で買えると思ってんの?オレを買った奴の中には一発
「……」
「ねぇお兄ちゃん、あのアマ何言ってんの?」
「ルビー、俺達はもう寝よう」
「ちょ、ちょっと待ってよ!!あのアマまたママに乱暴するつもりかも……!」
ガキどもは寝室へと消えた。アクアの奴、会話から何の話をしているのか見当がついているようだった。本当にガキか?ルビーの方がガキらしい……まぁそんなことはどうでもいい。問題はこいつの方だ。
黙り込んだバカはオレを無表情で見つめている……怖っ!?
「……」
「な、なんだよ?何かあるなら言えよ」
強く出たが……自分でも声が震えていたのがわかった。なんでこいつこんなに怖いんだよ!?
「……今日……
「……まぁな」
「じゃあ……」
カチャっと音が聞こえ、手元を見れば邪魔な手錠が外されていた。
唖然とした。すると今度はコトンと何かをテーブルに置いた音が聞こえ、反射的にそっちを見てみると酒瓶が二つのコップと共に置かれていた。当然それを置いたのはバカだ。唖然としているオレは酒瓶とバカを見比べていた。
「飲もう?」
「アクア……ルビー……ママは……ここよぉ……むにゃむにゃ……」
待ちに待った酒。それをバカと一緒に呑んだ。結構いい酒だった。あのおっさんにもらったもので、一人で飲むには量が多かったそうだ。酒瓶を開け、会話もなくただ酒を飲んでいると途中からバカが酔いだした。比べてオレは未成年の頃から飲んでいるから慣れてしまっている為にこの程度では酔わない。
そして数分後には眠気に負けてテーブルに突っ伏して眠ってしまった。夢の中でもガキと戯れているのか?幸せそうな顔しやがって。
んっ?待てよ、今がチャンスじゃないか。手錠は外されオレは今は自由の身、それに今日一日だけの付き合いだとこいつ自身が認めた。ならここに留まる必要はない。娘の方はオレがここにいることを望んではいないし、丁度いい。そもそもオレはこのバカは嫌いだ。そうと決まればさっさと煙草でも吸いにいくか。
あばよ、噓つきアイドル様。
「……おかあさん……」
「――っ!?」
お母さん?このバカの……母親。
オレ達の……母親。
「……おかあさん……おいていかないで……すてないで……」
「……」
何を立ち止まる?早く煙草を買いに行かないといけないんだ。足よ動け……動けよ!!
「……おねえちゃん……」
「……っ」
「……ちくしょう」
外出禁止されていたな。勝手に出たらこのバカに何をされるかわかったもんじゃない。明日買いにいけばいいだけだ。それに酒もまだ残っている。まだ……のんびりするか。
酒瓶が空になるまでオレは一人酒を楽しんだ。
「天野コイ、お前を雇うことにした」
「良かったねコイ!これで安定してお金を稼げるよ!!」
「………………………………………………」
おっさんが何かを言っている。そしてバカが喜んでいる。
どういうことだよ!!?