東方護郷譚・廻~幻想を護る者達~   作:しがない東方二次創作者

11 / 50
紅霧異変-2~湖上の氷精~

~霧の湖~

 

side-魔理沙

 

 

「...おーおー、すごい紅(・)い(・)霧(・)の(・)塊(・)だな」

「あれが元(・)凶(・)だろう。...行くぞ」

 

 

―――『霧の湖』は幻想郷北方に聳える『妖怪の山』から見て南東方向の麓にある湖だ。幻想郷創造前は霧など無い普通の湖だったらしいが、ある時から霧が湖面を覆うようになった。昼時の霧が最も濃く、方向感覚を見失いかねない程だ。

 その『霧の湖』が見えてきて全体を見回せば、真東寄りの南に建つ『廃洋館』のほぼ対岸側に巨(・)大(・)な(・)紅(・)い(・)霧(・)の(・)塊(・)が漂っていた。間違いなくあれが元(・)凶(・)だろう。

 

 

「湖の霧が濃いな。まだ昼には早いと思うんだが」

「紅(・)い(・)霧(・)の影響か、他の影響か......魔理沙、来(・)た(・)ぞ(・)」

 

 

 『霧の湖』に着き、紅(・)い(・)霧(・)の発生源を目指して飛んでいると、普通の妖精とは違う、白い光のようなものが赤い米粒形の弾や黄緑色のクナイ形の弾を撃ち出してくる。

 

 

「コイツら、形(・)を(・)持(・)て(・)な(・)い(・)妖精...になりかけのエネルギーみたいなヤツだな。紅(・)い(・)霧(・)の妖気で弾(・)を(・)撃(・)て(・)る(・)程(・)度(・)には強くなったみたいだ。これくらいなら落としても問題ないと思うぜ?」

「...そうだな。数は多い、気を付けろよ」

「影政もな!」

 

 

 弾を避けながら"イリュージョンレーザー"で撃ち終としていく。単体で撃つ弾は少ないものの、数が多いと結構な弾幕になるな。まぁ、私は当然だが影政も難無く避けてるから大した脅威じゃないな。

 

 

「っと、妖精が混じってきたな!」

「湖の霧も濃くなってきている。方向を見失うなよ」

 

 

 進んで行くと妖精が混ざり始めて青い光弾を撃ってくる。霧も濃くなってきて視界が悪くなるが妖精を落としながら先へ進む。しばらくすると、霧の中から何かが飛び出してきた。

 

 

「......!」

「...あれは、只の妖精ではなさそうだな」

「明らかにそこら辺の妖精とは違うな。紅(・)い(・)霧(・)の影響も無さそうだぜ。『大妖精(だいようせい)』と言った所か」

 

 

 背中には虫の翅のような縁がある一対の羽、左側頭部にサイドテールで結い上げた緑色の髪、白いシャツの襟元に黄色いリボンを付け、青いワンピースを着た大妖精は緑色の瞳を輝かせている。まるでいたずら出来そうな相手を見つけたって様子だが―――

 

 

「――邪魔するなら倒すまでだぜ!」

「......!!」

「瞬間移動か...後ろだ!」

 

 

 "イリュージョンレーザー"を撃ち込むが、大妖精は瞬(・)間(・)移(・)動(・)で私達の背後に回り込み、緑色のクナイ弾を螺旋状に並べた弾幕を展開する。

 

 

「おぉ?!中々やる妖精だな!」

「背後から襲いたいようだが...動きが単純に過ぎる」

 

 

 "イリュージョンレーザー"を撃ち込み続けるとまた瞬間移動で私達の背後に回って赤いクナイ弾で弾幕を展開する。即座に影政が対応して紅のクナイ弾を大妖精に撃ち込むと、また瞬間移動して私達から少し離れた場所に現れる。

 

 

「お?毛色が違う弾幕だな!」

「雪と氷か...ある程度冷気を操れるようだな」

 

 

 今度は楕円形の雪の弾と氷の弾を撃ち出してくる。横に広がったと思いきや、大きく曲がって私達を狙って飛んできた。妖精にしては面白い弾幕だが―――

 

 

「――時間が惜しいからこれで決めるぜ!」

 

 

恋符「マスタースパーク」

 

 

 ス(・)ペ(・)ル(・)カ(・)ー(・)ド(・)を切り、愛用してる魔道具"ミニ八卦炉"を構える。数秒のチャージを経て、極太のレーザーと星型弾をぶっ放す。

 

 

「...ぁ――」

 

 

 大妖精が瞬間移動で逃げようとするが、私のマスパの範囲殲滅火力を舐めちゃいけない。見事に直撃したのかスペルカードの効果が切れると大妖精の姿は無くなっていた。

 

 

「...前の乱入で見たが、『弾幕ごっこ』で使うには過大な火力じゃないか?」

「私にとって『弾幕はパワー』だからな!イメージの表現だからルールには抵触してないぜ!」

「...そうか。先に進むか」

 

 

 影政の言葉にそう反論して私達は先に進む。

 

 

「っと、コイツは...随分小さい妖精だな。弾も撃てないザコだ。まぁ、直接ぶつかって来そうなら落とすくらいでいいと思うぜ」

 

 

 今度は羽虫みたいに羽ばたく小さい妖精が飛んでくるが、邪魔なのだけを落として先に進む。

 

 

「...普通の妖精と、あれは...」

「おっと...こりゃ氷塊か?大きさが大きさだから気を付けろ!」

 

 

 小さい妖精の群れを抜けると、普通の妖精が丸い光弾を撃って来るのに混じって氷塊が霧の中から何発も飛んでくる。

 妖精と氷塊を落としながら進むと、霧がより濃くなってきて方角が分からなくなってきた。

 

 

「不味いぜ...こんなに霧が濃いと方角も何もないな」

「...」

「影政、どうした?」

 

 

 前後不覚になりそうで足を止めて辺りを見回す。すると、影政は無言で目を閉じる。

 

 

「――そこか」

「うわっ?!」

 

 

 クナイ弾を一発目の前の霧に向かって飛ばすと、間抜けな声が聞こえてきた。って、目の前に居たのか...灯台下暗しを狙ったのかは分からないが、影政が居なかったらもうしばらく迷っていたかもしれない。

 

 

「おい、危ないぞ!折角霧で迷わせて驚かせようとしたのに!」

 

 

 目の前の霧が晴れ、背中に六枚の氷の羽を持ち、後頭部に青い大きなリボンを飾った、ウェーブが掛かったセミショートヘア、襟元に小さい赤いリボンを飾った白いシャツの上に青いワンピース(大妖精のと違ってスカートの縁に白いギザギザ模様が飾ってある)と白い靴下を身に付けた妖精がぷんすか怒りながら目論見をバラす。...まぁ、妖精と言ったらいたずらだからバラされなくても察しは付くんだが。

 

 

「霧を濃くしていたのはコイツか...」

「そのようだな。...しかし、コイツに絡まれるのは面倒だな。霧の湖(ここ)を根城にしているから仕方ないんだが今は...」

「...ん?あ、影政じゃん!ずっと見てなかったけど、久しぶり!」

「あぁ、久しぶりだな、『チルノ』」

 

 

 影政が面倒臭そうな表情を浮かべると、妖精...チルノは影政をじっと見て思い出したように声をあげる。コイツも影政の知り合いのようだ。

 

 

「...あのルーミアって妖怪もだが、随分知り合いが多いんだな、影政」

「幻想郷創造からあちらこちらに行ったからな。知り合いが増えるのは必然だ。...チルノ、悪いが俺達は急いでいるんでな。この霧を元に戻して先に進ませてくれるか?」

 

 

 影政は懐かしむような、どこか遠い目をしながらチルノに尋ねる。

 

 

「うーん、影政はあたいの友(・)達(・)だからなー。...あ、友達と言えば。先に大(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)が飛び出していったんだけど、会ってない?」

「...大ちゃん?」

「...状況を考えれば、さっきの緑色の髪の妖精の事か?」

「そうそう!会ってない?」

「その妖精なら、私(・)が(・)マ(・)ス(・)パ(・)で(・)消(・)し(・)飛(・)ば(・)し(・)た(・)ぞ(・)」

 

 

...ピシッ...

 

 

―――私がそう答えた瞬間、場の空気が凍った。比喩ではなく、文(・)字(・)通(・)り(・)に(・)。湖の霧が晴れて...いや凍(・)っ(・)て(・)結晶になって辺りを舞う。

 

 

「...消し飛ばした...?あたいの、友達を...?」

 

 

 チルノは俯き、わなわなと肩を震わせる。

 

 

「...魔理沙。チルノは妖精の中でも群を抜くバカではあるが、と(・)り(・)わ(・)け(・)友(・)達(・)想(・)い(・)だ。いつの間にか新しい友達を作っていたようだが、時間が経てば復活するとはいえそれでも友(・)達(・)が(・)居(・)な(・)い(・)時(・)間(・)は(・)生(・)ま(・)れ(・)る(・)。...だから気絶させる程度にしておけば禍根は生まれにくい」

「...つまり?」

「...魔理沙、この場は任せるぞ。――命は重い。それが妖精であろうとな」

「なっ?!ちょっ待っ――」

 

 

...ゴォッ!!

 

 

 影政が紅(・)い(・)霧(・)の発生源があると予想される方角へ飛び去っていく。慌てて追いかけようとすると私の背丈より大きな氷塊が掠める。

 

 

「うぉい?!」

 

 

 

 

「...許さない...大ちゃんの仇だ!お前は氷漬けにして粉々に砕くッ!!」

 

雹符「ヘイルストーム」

 

 

 チルノはそう叫んでいきなりス(・)ペ(・)ル(・)カ(・)ー(・)ド(・)を切る。氷弾が次々撃ち出され、まるで吹雪のように右へ左へ曲がって飛んでくる。

 

 

「っと...!クソ、氷漬けは御免だ!」

 

 

 吹雪のように襲い来る氷弾を避けながらチルノに"イリュージョンレーザー"を撃ち込む。

 

 

「うわっ?!...まだまだー!」

 

 

 耐久を削り取ってチルノは怯むが、すぐに持ち直して青い光弾と丸い雪弾を高速で連射しながら私に迫ってくる。

 

 

「近付いてくるか。なら、肉薄される前に――」

「――それっ!!」

...ビュォォッ...

 

「おぉっ?!目くらましか!」

 

 

 すると、チルノは腕を振って私の目の前に吹雪を発生させて目くらましを仕掛けてくる。

 

 

「――食らえっ!」

「うぉっ?!氷(・)の(・)剣(・)?!」

 

 

 吹雪を突っ切ってチルノは氷の剣を私に向かって振り降ろすが間一髪で躱す。『弾幕ごっこ』で近接攻撃を使うなんて霊夢の大幣(お祓い棒)以外で初めて見たぞ?!

 

 

「おりゃ!それっ!」

「おっ?!とっ?!」

 

 

 チルノの剣撃を躱す度に色とりどりの光弾がまき散らされ、だんだん逃げ場がなくなっていく。妖精の癖にコイツ...!

 

 

「このっ...!」

「おわっ?!」

 

 

 八卦炉から魔力の衝撃波を飛ばしてチルノを引き剝がす。私も近接は出来ない訳じゃないが、そんなの魔(・)女(・)ら(・)し(・)く(・)な(・)い(・)からな。"イリュージョンレーザー"を撃つべく砲台を展開する。

 

 

「――その弾は、ただバラ撒いた訳じゃない!」

 

 

《凍符「パーフェクトフリーズ」》

 

 

 チルノがス(・)ペ(・)ル(・)カ(・)ー(・)ド(・)を切る。冷気がチルノから放たれると、ゆっくり漂っていた光弾が凍(・)っ(・)て(・)動(・)か(・)な(・)く(・)な(・)る(・)。そこにチルノ自身が青い光弾を扇形で撃ち込んでくる。固定障害を作った上に範囲型の弾幕は中々やるな...!しかも最後に凍った光弾が舞い散るように動くのも厄介だ。

 

 

「っと...中々やるな!」

 

 

 弾幕を躱しながら"イリュージョンレーザー"を撃ち込む。

 

 

「ぎゃっ?!...くっそー、コイツで最後だ!今度こそ氷漬けになれ!」

 

 

雪符「ダイアモンドブリザード」

 

 

 チルノは最後のス(・)ペ(・)ル(・)カ(・)ー(・)ド(・)を切る。大量の氷弾が吹雪のようにランダムな軌道で飛んでくる。シンプルだが避けにくい弾幕だ。だが―――

 

 

「回避を邪魔する弾も無い。コイツで止めだ!」

 

 

 氷弾を避けながら八卦炉を構えて魔力をチャージする。弾幕共々これで―――

 

 

―――『命は重い。それが妖精であろうとな』

 

 

「...チルノ、だったな。大妖精(友達)消し飛ばして悪かったな。だが、急いでいるのは事実だ。消(・)し(・)飛(・)ば(・)す(・)のは勘弁してやる!」

 

 

《恋符「マスタースパーク」》

 

 

 フルチャージ出来たが、威力を少(・)し(・)落(・)と(・)し(・)て(・)ぶっ放す。

 

 

「こんなもの、あたいの能力で――」

 

 

 チルノは能力で凍らせようとしたようだが、その前に極太レーザーがチルノを飲み込む。

 

 

「ごめん、大ちゃん...仇、取れなかった...」

 

 

 レーザーが消えると、消滅せずに気絶したチルノが落ちていくのが見えた。火力調整は苦手なんだが、上手くいったようだ。

 

 

「...まぁ、『弾幕ごっこ』では消(・)し(・)飛(・)ば(・)さ(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)が、湖に落ちてゴボゴボ溺れて一(・)回(・)休(・)み(・)になっても私は知らんからな」

 

 

 湖面に落ちていくチルノを見送りながら呟く。...らしくもない事をしたが、これでいいんだろうか。

 

 

「――あら、丁度終わらせたみたいね」

「――お、霊夢か。そっちも終わらせたみたいだな」

 

 

 そこに霊夢が追い付いてきた。

 

 

「...珍しいじゃない。いつもは妖精なんて雑に消し飛ばしてるのに」

「...まぁ、あれだ。妖精の友達を消し飛ばしたのが申し訳なくてな」

 

 

 私が落として湖面でプカプカ漂うチルノを見て眉を上げる霊夢の言葉に、私は頭を掻きながら答える。

 

 

「...アンタが影政のやり方を真似する必要はないんじゃない?人には人のやり方があるんだから、アンタはアンタのやり方を貫きなさい」

「...そうだな。でも、今度からは少し気を付けるよ」

「そ。――じゃ、さっさと行くわよ」

「あぁ。影政、今追い付いてやるからな!」

 

 

 話を切り上げ、霧が晴れた湖を紅(・)い(・)霧(・)の発生源目指して飛び立つ。

 

 

 

―――to be continued―――

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。