東方護郷譚・廻~幻想を護る者達~ 作:しがない東方二次創作者
~紅魔館 エントランスホール~
side-魔理沙
「...来たか」
「お、影政。無事だったか。...ここが
館の門の傍で門番っぽいのが座り込んでいた(というより寝ていた)が、迎撃して来なかったのでそのまま館内に侵入すると、影政が居た。門番の服に被弾の痕が結構あったから、状況的に影政があの門番を倒したんだろうな。
「...静かね。出迎えも無しなんて」
「
「...このエントランスホールで館の外観にそぐわない広さだ。他も弄っていると見ていいだろう」
私の見立てに影政は頷く。館に入った時点で空間が弄られている事に気が付いた。侵入者を惑わせる
「...さて、これからどうしようかしら。三人固まって動くか、バラバラに別れて探すか」
「私は別れて動きたいぜ。どれだけ広いか分からんが、別れた方が
館内の構造、広さが分からない以上固まって行動した方が安全だが、
「では、別れて探すとしよう」
「じゃ、私はこっちに」
「私はこっちだ。誰が先に
影政も別れることに賛成し、私達は各々方向に当たりを付けて動き出す。
「...お、地下階層もあるのか。本当に広いなこの館...」
早速地下に降りる階段を見付けて降りていく。魔法使いとしては、これほどの規模で空間を弄れる事に興味が湧く。
「っと、扉だ。さーて中には何が――」
階段を降り切ると、両開きの扉があった。幸い鍵は無かったのでそのまま開けて中に入ると―――目の前に広がる光景に絶句した。
―――見渡す限りの本棚。隙間なく仕舞われた無数の本。地下のせいか空気が悪い気がするが、それを気にさせないような
「すげぇ...ここを見付けただけでも来た甲斐があったぜ」
「...
箒に跨り、飛び上がる。良さげなものがあったら
「お、コイツは...『ヴォイニッチ手稿』?...なんだこりゃ、絵図は兎も角字が全く読めん」
「『金枝篇』...魔導書というよりは文化史だが、興味深い魔術もある。って、十三冊もあるな...最初と補遺の巻だけにして、
「『ソロモンの鍵』...ほう、装丁は新しめだが中身は古い魔術だな。昔のものを復活させたのか...」
「『ラジエルの書』...召喚術か。あんまり好きじゃない分野だが、面白そうだし借りていこう」
探索中に気になった本を
「...しかし、妖精のメイドすら出て来ないな。人手が尽きたってことはないと思うんだが...ん?」
静かな図書館内を飛んでいると―――
「...侵入者ですね」
目の前に、赤いショートヘアと赤い瞳、頭と背中に蝙蝠みたいな黒い羽、赤いネクタイを締めた白いシャツに黒いベストを羽織り、ロングスカートを履いた悪魔らしき少女が立ちはだかった。その傍には何冊か積まれた本が浮いている。
「おう、そうだぜ。外の
「...残念ながら、私は一介の名前も無い
使い魔改め小悪魔はそう自己紹介する。見た目は大人しそうな司書っぽい感じだが、悪魔相手なら油断は―――
「...おや、そのエプロンに包んでいるのは
「いやいやそんなつもりは無い!...私は見ての通り魔法使いなんでな。ここは正に宝の山だ。...お、そうだ。司書っぽいし、何冊か
小悪魔の言葉を否定する。
「...いいですよ。ついでに此方もどうぞ。主と同じような魔法使いの方に出逢えた幸運への餞別です」
小悪魔は笑みを浮かべ、積んでいた本の一冊を魔法で浮かせて私に寄越してきた。
「おっ、サンキュー。お前の主も魔法使いなのか、ソイツは興味が――」
―――本を開いた瞬間、間抜けな音と共に小さな魔力の爆発が炸裂した。爆風をもろに顔面に受ける。
「...ぷっ...アッハハハ!!...貴女の様な侵入者にあっさり貸すわけないでしょう?何より我が主は本を大事にするのです、余程仲が良いか信頼出来る方でも無ければ―――」
「...悪魔は名無しでも悪魔だな。油断しちまったぜ」
小悪魔が
怒りに任せてうっかり
「さて、偶然だが使い魔を倒した。恐らく主が出張ってくる筈」
誰か出て来ないか、ゆっくり飛びながら辺りを見回すと―――
「...小悪魔を消し飛ばしたのは貴女のようね」
目の前に少女が現れた。長い紫髪の先をリボンでまとめ、薄紫のゆったりとした服を着ている。さらにその上から薄紫の上着を羽織り、ドアキャップみたいな帽子を被っている。また服の各所に青と赤と黄のリボンを飾り、帽子には三日月の飾りが付いている。全体的にゆったりとしたその服装は寝間着にも見えた。眠そうな、面倒臭そうな眼差しで私を見ている。
「私を騙したからな。威力は最小限だったが乙女の顔を爆破するなんて、失礼な使い魔だったぜ」
「...顔と髪、帽子が煤けているのはそのせいだったのね。侵入者への対処と、悪魔の性で悪戯も仕掛けて一石二鳥を狙ったんでしょうけど...相手が悪かったわね」
紫の少女はそう言って呆れた表情を浮かべる。
「...使い魔消し飛ばしたってのに怒らないんだな」
「時間が経てば魔界から復活してくるしね。...それに、貴女に興味が湧いたし」
そう言って紫色の瞳で私を見つめる。
「ほう、奇遇だな。私も
「...じゃあ、『弾幕ごっこ』で見極めましょうか。多少は練習したけど、赤の他人相手の実戦は初めてだしね」
「あぁ、いいぜ!私が勝ったらこの帽子とエプロンに入れてる本は
そう言うと、少女の眉がピクッと上がった。
「...この図書館は私が管理しているの。そして
「あぁ、勿論。死んだら返すぜ!」
「――そう」
「うぉい?!いきなりかよ...!」
少女の背後に魔法陣が展開され、青いレーザーが左右から挟み込むように連射され、そこに青い光弾が扇形で撃ち出され、更に青い大型光弾が扇形の高速で撃ち出される。移動を制限して避けさせた後に大型弾幕の弾幕とか殺意高いな...!
「...
「
「...そう。貴女の言い分はよく、よーく分かったわ」
「...一般的にそれは
少女改めパチュリーはそう吠えて
「属性を組み合わせるとか高度な事を...!魔法使いとしては強敵だな。だが、私は負けるつもりは無いぜ!」
大型弾と光弾を躱しながら"イリュージョンレーザー"をパチュリーに撃ち込む。避けようとはしてるがあまり動かないな。体力はそれほどなかったりするのか...?
「くっ...!やるわね...適正の割に高い火力、相当努力したのね」
「適正?...あぁ、
「きゃっ?!...隙を見せた私が悪いわね。なら、これで...!」
パチュリーは再び
「おっと...太陽観測(直視はヤバいから魔法で遮光してるぞ!)してると偶に見る炎の柱みたいだな!」
「あら、天体観測もするのね」
「偶に、な!
「...
弾幕を躱しながら答えていると、パチュリーが眉を上げる。...ルーンの事を知ってるのか?
「...ルーンは私と同じく"魔法の森"に住んでる
「...そうよ。一週間程前、
―――突然だった。パチュリーは急に身体をくの字に折って激しく咳き込み、弾幕も魔法陣も消える。
「ゴホッゴホッ!...あ、しまっ――」
「っぶねぇぇぇ!!だが、受け止めたぜ!!」
パチュリーの浮遊魔法が解けたのか、落下して床に激突する前に
「パチュリー、大丈夫か?!その咳き込み、まさか喘息じゃ――」
「ゲホゲホッ!...んっく......はぁ...はぁ...はぁぁ...」
何か出来ることは無いかと聞こうとしたが、パチュリーは咳き込みながらも手で私を制する。上着の裏に震える手を入れると、淡い水色の液体が入った小瓶を取り出す。中身を一気に飲み干して数秒、パチュリーの咳き込みが治まった。
「...ありがとう、魔理沙。
「...どういたしまして。『弾幕ごっこ』以外の要因でそうなる前に止められて良かったぜ」
呼吸が落ち着いたパチュリーのお礼にニカッと笑いながら答える。だが、発作を治す手段ってのは...
「...ルーンには感謝しないとね」
「その小瓶の事か?魔法薬っぽいが...」
「彼を
どうやらルーンが渡した魔法薬だったようだ。私も魔法薬の作成は得意だと自負するが、数秒で喘息の発作を治めるような効果を持つものは作れた試しがない。アイツ、"星"が専門だという割には色々な分野に詳しいんだよな...
「流石ルーンだな。アイツ、一目見て適正とか得意な分野を見抜くからな...そういや、そのルーンの姿が見えないが、どこに行ったんだ?」
「彼が"少し図書館内を見てくるよ"って行ってからしばらくして貴女が来たから、まだ図書館内に居る筈よ」
「お、そうか。じゃあ、戻るがてらちょっと探してみるか。私も一週間位アイツの姿を見てないしな」
「あら、『弾幕ごっこ』は再開しないのね?」
「...する訳ないだろ。目の前で喘息の発作見ちまったらやる気も起きないぜ。魔法使いにとって
「...そうね。じゃあ、私をベッドまで運んでくれるかしら?今は自力で飛べないから...発作は
「それくらいお安い御用だ、案内は頼むぜ。さ、乗ってくれ。自力で座るくらいは出来るだろ?」
「えぇ。...箒に乗るなんて初めてね」
パチュリーの頼みを引き受け、箒に彼女を乗せた私はゆっくり箒を浮かせた。それからパチュリーをベッドに連れていくまで、魔法やら館の事を聞いた。
~紅魔館 地下部屋への階段~
side-ルーン
「...さて、この先には何があるのかな」
装飾も無い石の階段を下りながら呟く。そこら中に魔法のトラップがあるが、隠形魔法で潜り抜けていく。...トラップがほぼ全て
図書館出入口の扉を出て更に奥、そこには壁しか無かった。しかし、
「...(この館に入った時から感じていた
―――『ルーン、
―――一週間程前。
「...ここか」
しばらく階段を下りて、遂に行き止まり...両開き扉の前に着いた。見た目は館内で使われているデザインだ。
―――
「――随分厳重な扉だ。そうまでして封じ込めたいものが中に居るのかな」
隠形魔法を維持し、扉の魔法を
「...誰?」
―――薄暗く広い部屋。目の前で一対の