~紅魔館一階 廊下~
side-霊夢
「っと、早速お出ましね!」
廊下を進んでいると、メイド服の妖精が次々現れて弾幕を展開する。それを躱しながら"パスウェイジョンニードル"で落としていく。
「妖精を雇うなんて、変なヤツね。あの気まぐれでいたずら好きな性格で仕事出来るのかしら」
妖精を落としながらそんなことを考えていると―――
―――スッ...
「――仕事が出来ないのは確かね。でも、見ての通り広いから人手が必要なのよ」
「っ!」
目の前に突然、妖精とは異なるメイド服の少女が現れた。銀髪のボブカットに、もみあげ辺りから三つ編みを結っていて、髪の先には緑色のリボンを付けている。頭には白いカチューシャ、青と白のメイド服を着ていて、膝丈のスカートを履いている。腰には懐中時計を提げていて、左足のベルトにはナイフが収納されている。
「...所で、妖精メイド達を落とすの止めてくれないかしら?人手が足りなくて掃除が進まないの」
「こっちに攻撃してくるから落としてるだけよ。そっちこそ、妖精達を退かせなさいよ」
「...そう。じゃあ、私が直接掃除しないと、ね!」
メイドはそう言うなり青い柄のナイフをばら撒いてくる。更にナイフの回避を妨害するように赤いクナイ弾を扇形でばら撒く。
「掃除って、そういうことね。――なら、こっちもやらせてもらうわよ!」
ナイフとクナイ弾を躱しながら"パスウェイジョンニードル"を撃ち込む。
「――あら危ない」
「なっ、消え――危なッ?!」
すると、メイドの姿が消える。―――瞬間、背後に気配を感じて振り向きざまに大幣を薙ぐ。ナイフが数本飛んできていて、大幣が纏った霊力でナイフが弾け飛ぶ。
「あら、行けたと思ったのだけど。感覚が鋭いわね」
「...よく分からないけど、面倒な能力なのは確かね」
メイドは瞬間移動でもしたように私の背後に回り込んでいた。...かなり厄介な能力を持っていると"勘"が言っている。
「掃除のし甲斐があるわね。さぁ、種無し手品に惑いなさい!」
奇術「幻惑ミスディレクション」
メイドはスペルカードを切る。赤いクナイ弾を扇形でばら撒く。これくらいなら―――
「なっ?!っく...!」
メイドは一瞬で反対側に移動してナイフを高速でばら撒く。クナイ弾と交差して避けにくくなるけど、掠りそうになりながらも躱す。
「厄介ね...『弾幕ごっこ』じゃなければもっと厳しかったかも」
弾幕を躱しながら"パスウェイジョンニードル"を放つ。メイドは瞬間移動で躱してくるけど、弾幕を撃つ際の硬直に合わせて撃ち込んでいく。
「くっ?!やるわね...でも、貴女はここから先へは進めないわ」
スペルカードを削り取って怯ませる。でも、メイドはナイフを構えながら言ってのける。
「随分自信があるようね。さっさと退くなら見逃したけど、やる気ならぶっ飛ばして進むだけよ」
「そうなるのは貴女の方よ。...私は文字通り時間を止めてでも阻止出来る。貴女をここで倒してお嬢様の食料になってもらうわ!」
幻幽「ジャック・ザ・ルドビレ」
メイドはスペルカードを切る。赤い大型弾を三発ずつ高速で拡散させる。弾速は速いけどこの位は―――
「――なっ?!」
―――目の前に沢山のナイフが並んでいた。さっきまでそこには無かったのに...!
「どうしてナイフが目の前に――くっ?!」
咄嗟にナイフを避けようとして大型弾に被弾してしまった。砲台の陰陽玉が一個犠牲になる。
「ふふ、『博麗の巫女』も私の能力には手間取るようね」
「...私を知ってるの?」
「貴女自身の事は知らなかったわ。でも、幻想郷について調べていたら『博麗の巫女』について少し知れたの。『妖怪退治を生業とする"博麗大結界"の管理者』――その見た目、間違いなく巫女でしょう?」
メイドはそう答える。...いつどうやって調べたか気になるけど、この館の連中はある程度幻想郷について調べていたようね。...でも、私にはもう一つ役目がある。
「...その通りよ。私は『博麗霊夢』、当代『博麗の巫女』であり...アンタ達みたいな異変を起こす連中をぶっ飛ばすのも仕事よ!!」
霊符「夢想封印」
スペルカードを切る。『博麗の巫女』に代々伝わる奥義の一つであり、霊力を籠めた赤、青、緑の光弾をばら撒く。
「見た目からして食らえば不味いわね。でも、その程度なら――」
メイドは瞬間移動で光弾を避けてナイフで迎撃しようとする。けど―――
「――その光弾は単に高威力ってだけじゃ無いのよ」
「っ?!」
光弾はナイフを飲み込みながらメイドを追尾する。狙った相手にぶつかるまで追いかけ続けるのが最大の強みであり、メイドが三色の光弾を立て続けに食らう。着弾の瞬間に躱すなんて芸当でもしなければこれで―――
...フッ...
「――危なっ?!」
「今のは危なかったわ。――でも、私なら避けられる」
背後に気配を感じて振り向くとメイドの指に挟まれた爪のようなナイフが迫っていた。大幣で受け止め、鍔迫り合いをしながらメイドはそう言って不敵に笑う。
「...アレを避けたのはアンタが初めてよ。本当、厄介な能力ね」
「――言ったでしょう?文字通り時間を止められるって」
「...本当、厄介ねっ!」
大幣から霊撃を放ってメイドを弾き飛ばし、"パスウェイジョンニードル"を撃つ。時を止められるとは言え、奇襲...初見や意識外からの攻撃は流石に対応できないようね。
「っ...!」
霊撃で吹き飛んだメイドは持ち直して十数本のナイフを曲線状で一気に飛ばしてくる。それを躱そうと身体を動かす―――
「ぐっ...!」
―――背後から別のナイフが飛んできて、咄嗟に陰陽玉を犠牲にして防ぐ。すぐに反応できない、いやらしいタイミングでの攻撃...時を止めることができるからこその芸当ね。このままじゃジリ貧、どうしたものか...
「ふふ、いつまで耐えられるかしらね?さぁ、我が時の世界に惑え!」
幻世「ザ・ワールド」
メイドはスペルカードを切る。メイドから紅い火の玉弾がばら撒かれる。間違いなくこれだけじゃない筈...!
「...ちょ、多っ?!」
―――瞬間、目の前に青い柄のナイフと緑の柄のナイフが現れ、左右に散って火の玉弾の回避を妨害してくる。避けられないナイフは大幣で弾き飛ばしながら躱していく。
「さぁ、まだまだ行くわよ!」
メイドは再び火の玉弾をばら撒き、一瞬でナイフが現れて飛んでくる。撃ち込める隙は火の玉弾をばら撒く時とナイフが現れた直後くらいしかないのも厄介ね...!
「あぁもう本当に面倒ね...!アレを使うか。出来れば元凶に取っておきたかったけど...!」
火の玉弾とナイフを躱しながら"パスウェイジョンニードル"を撃ち込む。その際に左手でお札を自分の身体に貼る。
「きゃっ?!何か策がありそうだけど...でも、これで終わりよ!」
メイド秘技「殺人ドール」
ダメージが溜まってメイドは怯むものの、すぐに持ち直してスペルカードを切る。メイドの周りに赤と青のナイフがびっしりと展開され、それが私に飛んできた―――
side-咲夜
時を止め、ナイフを追加で配置しながら巫女...『博麗霊夢』に歩み寄る。『弾幕ごっこ』のルールに抵触しない、ギリギリのこの距離と配置ならそうそう避けられない筈。
「...聞こえていないでしょうけど、冥土の土産に教えてあげるわ。私は『十六夜咲夜』、この『紅魔館』のメイド長であり、お嬢様を護るナイフよ。――さようなら、『博麗の巫女』」
あぁ、巫女と言えば美鈴が『巫女は食べてもいい人類』って以前言ってたわね。巫女の血はどんな味なのかしら。そんなどうでもいいことを考えながら時を動かす―――
「夢想天生」
「――この世界ではそうやって動いているのね」
「っ?!何故動いtぐはぁっ?!」
―――突然だった。大幣が私の脇腹に直撃して吹き飛ばされる。体勢を直せずに廊下を数メートル転がり、起き上がると―――
「...正直、アンタが護ろうとしてる元凶の為に残したかったんだけどね。コレを切らせたのはアンタが初めてよ」
―――青く光る身体と、その周りを高速で回転する八つの陰陽玉を纏って、ナイフすらすり抜けてゆっくりと近付いてくる霊夢がそこにいた。まだ時を止めているのに何故...?!
「――『博麗の巫女』に代々伝わる奥義の秘中の秘。あらゆる世界、事象から浮くことで攻撃を通さず、此方の攻撃を一方的に通す。...悪いけど、これ以上アンタの相手をしてる時間は無いの。――これで決めるわ」
―――陰陽玉の輝きが増し、無数の光弾が視界一杯に広がった。霊夢の言葉が事実なら、私にはどうすることもできない。
「――お嬢様、申し訳ございません」
side-霊夢
「あ"~霊力ごっそり減った...スペルカードじゃなかったらぶっ倒れてたかも」
気絶して倒れ伏す、被弾による焦げ跡と服の破れが目立つメイド...咲夜を見ながら息を吐く。他にも厄介な能力持ちを見知ってるけど、このメイドのはそれに並ぶものだった。...私と同じ人間でこんな能力持ってるなんてね。
「...この館広過ぎよ。もう夜も更けてるじゃない。...紅い満月なんて不気味ね。さっさと元凶ぶっ飛ばしに行きましょうか」
廊下の窓から見えるいつもと違う夜空を見ながら浮き上がり、先を目指して飛び立った。
―――to be continued―――