東方護郷譚・廻~幻想を護る者達~   作:しがない東方二次創作者

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紅霧異変-6~紅月の決戦~

~紅魔館二階 バルコニーへの廊下~

 

side-影政

 

 

「...静かだ」

 

 

 空間操作で広く長くなっている廊下を飛んでいく。妖精メイドの迎撃も無く静かだ。まるで()()()()()()()()()()()かのように。

 

 

「...()()()、か」

 

 

 しばらくして、バルコニーを見付けてそこに降り立つ。夜空を見上げれば、()()()の更に上空に()()()()が浮かんでいた。...吸血鬼異変(あの異変)の決戦の時もこんな夜空だったな。

 

 

―――ゴォッ...!

 

「...!」

 

 

 ふと、階下から一瞬()()()()()()()()を感じた。一階を探索していたのは霊夢。誰かと交戦して『博麗の巫女』の奥義を何かしら使ったのか...

 

 

「...霊夢なら大事にはならないだろう」

 

 

 目覚め、出逢ってから日は経ってないが、霊夢は()()だと解った。霊力量、質、扱いは()()に迫るものがある。故に、霊夢が無事であると信頼できた。

 

 

「...俺も動くか」

 

 

 バルコニーから飛び立ち、()()()()を見上げる。ここまで誰にも出くわさなかったが、()()()()()をずっと感じていた。...恐らく、ここに来るのを待っていたのだろう。

 

 

「――居るんだろう?姿を現せ」

 

 

バサバサバサッ...!

 

 

 辺りを見回しながら声を出すと、背後から何匹もの蝙蝠が飛んでくる。蝙蝠は俺が見上げる先で集まり―――

 

 

バサバサ......バサッ...

 

 

 

 

 

 

 

 

「――あら、気付いていたのね」

 

 

 青白い銀髪のセミロングに、赤いリボンで締めた白っぽいピンク色のナイトキャップを被り、見た目相応の幼さを感じられる、ナイトキャップと同じ色合いの服と踝まで伸びたスカートを身に付け、腰は大きな赤いリボンで締め、背中の一対の悪魔のそれのような翼をはためかせ、深紅の瞳で此方を見下ろす少女が現れた。

 

 

「隠すつもりも無かっただろう?――()()()で空を覆ったのはお前だな?」

「えぇ、その通りよ。私は見ての通り()()()。太陽があると自由に出歩けないの」

「...吸血鬼らしい動機だな。自分の我儘の為に世界を変える権利があると思っているその尊大さ...以前幻想郷(ここ)に現れた()()()を思い出す」

 

 

―――『我がこの幻想郷を支配しよう!共存共栄など戯言。弱肉強食こそが真理である!聞け!我が名は――』

 

 

 自らが()()であると思っているような尊大さは()()()という種族の性格なのだろうか。吸血鬼異変(あの異変)を起こした吸血鬼を思い起こさせる。

 

 

「へぇ、私達が来る以前にも吸血鬼が居たのね。...ん?()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 吸血鬼の少女は自分の言葉に何か気になる事があったのか、尋ねるように反芻する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...一つ、尋ねるわ。その吸血鬼の名前、『ヴラド・スカーレット』じゃなくて?」

 

 

 彼女は吸血鬼異変(あの異変)を起こした吸血鬼の名前を挙げた。

 

 

 


 

 

side-??

 

 

「...そうだ。その口振りだと、あの吸血鬼の縁者か」

 

 

 眼下の剣士は私の問いに肯定する。...やっぱり、()()()幻想郷(ここ)に来ていた。...でも、さっきの口振りだとお父様は―――

 

 

「――えぇ、私の父よ。吸血鬼らしく尊大で、カリスマに溢れた夜の帝王。私にとって憧れの存在だったわ」

 

 

 そう答えながら、お父様の事を思い出す。

 

―――お父様は元居た世界で吸血鬼社会の帝王として君臨していた。部下や眷属、同族をも平伏させる圧倒的権力とカリスマを持ち、お父様自身魔術に精通して吸血鬼の身体能力と合わせて強大な戦闘能力を持っていた。それでいて、私達家族を大事にする家族想いでもあった。―――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()までは。

 

 それからお父様は変わってしまった。本拠の城を失い、私達家族と僅かな従者を連れて別荘の一つ...今の『紅魔館』に逃げ込むように移住してからずっと自室に籠り、何かをしていた。私達家族ですら、入ろうとすれば声を荒げ、最悪暴力を振るわれた。私達は耐えながら、いつかお父様が元に戻る事を願っていた。

 

―――その願いは、お父様の部屋から響き渡った()()()()()()()()()で断たれた。部屋に駆け付けると、散らばった本や魔道具に半ば埋もれた、()()()()()()()()()と、『人ならざるものの楽園たる幻の郷について』という題の()()()()()()()()()()()()()()()()が残っていた。

 

―――その本こそが幻想郷についての断片的な情報を記したものだった。お父様が余白に書き殴っていた考察や追加情報を元に私達は幻想郷に向かう準備をした。

 お父様を追いかけたかったのもある。でも、それ以上に()()()という種族そのものの存在が危うくなっていた。急速に発展していく人間文明によって吸血鬼どころかあらゆる()()()()()()()の存在が消滅しようとしていた。

 消滅に巻き込まれる前に、私達はお父様が幻想郷に向かうのに利用した転移魔法の再現に成功し、幻想郷に移住した。

 

 

―――そして、この異変を起こした。吸血鬼が大手を振って出歩ける環境を創るために。我が名を知らしめる為に。そして、()()()の為に―――

 

 

「...そうか。吸血鬼異変(あの異変)の決戦の時もこんな夜空だった。幻想郷が崩壊しかねない、最悪の異変だった」

 

 

 剣士はそう言って()()()()を見上げる。

 

 

「...お父様は何をしたの?」

「『幻想郷を支配する』。そう宣言して弱っていた妖怪を糾合して暴れ回った。多くの人妖の犠牲の上に、俺が奴に――()()()()()()()()()()()

「...あぁ。幻想郷(ここ)に来ても、お父様は()()()()()()、か...」

 

 

 剣士の答えに瞑目する。お父様はその権力とカリスマで支配領域を広げたけど、()()()()()()()()()()()()()だとできる限り避け続け、争わず交渉で事を成すことを目指していた。―――そのやり方を捨てて()()()()()()()()()()使()()なんて、お父様は()()()()()最期を迎えたのね。

 

 

「...ありがとう。お父様の事を確認出来ただけでも良い収穫だわ。――さぁ、お前は大罪人の娘を前にどう思って私を倒すのかしら?」

 

 

 礼を述べ、改めて剣士に問う。剣士の言葉が事実なら、お父様は幻想郷における大罪人というべき存在だった。その娘を目の前にして、どんな感情を抱くのか―――

 

 

「...妙な事を聞くな。吸血鬼異変(あの異変)は確かにお前の父が起こしたものだ。だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。――お前は()()()()()()()()()()()()()()()()。それを俺は倒す。幻想郷を護る為に」

「――そう」

 

 

 剣士の答えに一瞬呆ける。...今まで私に相対してきた者達とはまるで違う。

 

―――『貴様はあの吸血鬼の娘だ!奴がここに居なくてもその罪は娘の貴様にもあるんだ!』

―――『あの吸血鬼の罪は貴様の罪だ!貴様を討って復讐を遂げる!』

 

―――私に相対した誰もが私は()()()()()()だと言った。お父様は自身がやっていた()()を決して私達にさせなかったのに。...でも、目の前の剣士は言った。()()()()()()()()()()()()()として私を倒すと。お父様が起こした()()と私は無関係だとあっさり言ってのけた。私を()()()()()ではなく、私()()として見ている。...あぁ、ここに来た意味はあった。

 

 

 

 

 

「...気に入ったわ。なら、私も全力で抵抗しましょう。...我が名は『レミリア・スカーレット』。こんなに月が紅いから――本気で殺すわよ。楽しい夜になりそうね――!

「――『牙門影政』。幻想郷の護り手として、お前を倒す」

 

 

 


 

 

side-影政

 

 

 ()()()()()である吸血鬼...レミリアは高速で飛びながら弾幕を展開する。赤い大型弾、青い光弾、小丸弾を放射状にばら撒く。総じて弾速が速く、大型弾の隙間を光弾と小丸弾が埋めてくる。

 

 

「まずは小手調べといった所か...」

 

 

 弾幕を躱しながらレミリアを追いかけ、クナイ弾を放つ。しかし、高速で飛び回るレミリアを捉え切れない。

 

 

「...高速で飛ぶ相手にはこっちだな」

 

 

 神力を紅い光弾として練り上げ、四発一気に飛ばす。光弾はレミリアの魔力を感じ取ると軌道を変えて増速しレミリアを追尾する。

 

 

「へぇ...私の速さについてこれるかしら?」

 

 

 俺が手を変えた事に気付けたレミリアは弾幕を展開しながら更に高速で飛んで光弾を振り切ろうとする。俺は弾幕を躱しながらクナイ弾をレミリアの前にばら撒く。

 

 

「しまっ――くっ...!

「確かに速いな。だが、()()程ではない。それに挟み込めば回避機動で速度も鈍る」

 

 

 予想通りクナイ弾を避けようと速度が鈍った所に増速した光弾がレミリアに全弾直撃する。

 

 

「ふふ、やるわね。じゃあ、これはどうかしら?

 

 

神罰「幼きデーモンロード」

 

 

 レミリアは()()()()()()を切る。レミリアから紫色の光弾がばら撒かれ、そこから水色の光線が交差して伸び、それに合わせて水色のレーザーが放たれる。レーザーで移動範囲が制限された所に黄色い大型弾と青い光弾がばら撒かれる。吸血鬼の威厳を示すような派手な弾幕だ。

 

 

「移動を制限した上に別の弾幕...単純だが厄介だな」

 

 

 弾幕を躱しながらクナイ弾を撃ち込む。レミリアは高速で移動するが、弾幕を展開する時に動きが止まるのを狙って撃ち込んでいく。

 

 

くっ...!まだまだ、夜は続くわよ!」

 

 

 ダメージが溜まってレミリアは怯むが、すぐに持ち直して飛び出す。追いかけると俺目掛けて赤い大型弾を撃ってくる。大型弾の軌跡から火の玉から飛び散る火の粉のように赤い丸弾がばら撒かれていて、下手に大型弾を避けると飛び散った丸弾に当たる。躱しながら追尾光弾を放つ。

 

 

「流石に学習するわ。それ神力だから地味に効くのよ...!」

 

 

 だが、レミリアは大型弾を光弾にぶつけて迎撃する。爆散した大型弾から光弾がばら撒かれる厄介なおまけ付きだ。

 

 

「ふっ...!」

 

 

 軽く息を吐き、光弾を躱しながら再び追尾光弾を放ち、続けざまにクナイ弾をばら撒く。大型弾を撃つ際はどうしても動きが単調になる。光弾を迎撃しようとすればクナイ弾に当たる。どちらかには被弾するであろう組み合わせだ。

 

 

「ちっ、厄介ね...!」

 

 

 レミリアはクナイ弾を受ける事を選んだようだ。光弾を迎撃しながらクナイ弾が少しずつ削っていく。しかし、それでも決定打に欠ける。光弾が当たればいいんだが―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恋符「マスタースパーク」

 

 

―――突然だった。()()()()()()()()()()咄嗟に避けると、見覚えがある真っ白な極太のレーザーと星弾がレミリア目掛けて飛んでいく。

 

 

「っ?!しまっ――」

 

 

 レミリアも避けられずレーザーに飲み込まれる―――が、()()()()()しているのを見逃さなかった。

 

 

「よっ、影政!加勢するぜ!」

「...予告無しに撃つのは関心しないな」

「すまんすまん。影政なら躱せるだろうと思ったからな、実際躱せただろ?」

 

 

 俺の隣に箒に跨った魔理沙が現れる。マスタースパークを背後から撃った事を咎めるが、悪びれる様子もない。

 

 

「...で、さっき見えたが白い服のチビが()()()()()でいいんだな?」

「あぁ。『レミリア・スカーレット』、"吸血鬼"だ」

「"吸血鬼"か...本でしか見たことないが、相手にとって不足無しだぜ」

 

 

 魔理沙はそう意気込んで帽子を被り直す。

 

 

「...霊夢は見たか?」

「いや、見てない――お、丁度来たな」

 

 

 魔理沙が館の方に目を向けると、紅白の人影が此方に飛んできていた。

 

 

「...私が最後みたいね。状況は?」

()()()()()と交戦中。魔理沙がマスタースパークで乱入してきた所だ」

「乱入とは酷い言い草だぜ。...()()()()に来たのは影政だけじゃ無いって示したかったんだよ」

「...お話はおしまいよ。来るわ」

 

 

 

バサバサバサッ...!

 

 

「...無粋な人間共ね。まぁ、いいわ。纏めて掛かって来なさい」

 

 

 蝙蝠が集まり、レミリアは人の形を取る。明らかに不機嫌な表情だが、俺達に向けて挑発するように手を揺らす。

 

 

「...霊夢、魔理沙には既に言ったが相手は"吸血鬼"だ、スピードとパワーに気を付けろ」

了解(りょーかい)よ。...知ったような口振りね」

「昔、"吸血鬼"相手に戦ったからな。――行くぞ」

「あぁ、アイツを倒して()()()()だ!」

 

 

 一斉に散開してレミリアに迫る。

 

 

「纏めて殺してあげるわ。地獄の針山に呑まれるがいい!

 

 

獄符「千本の針の山」

 

 

 レミリアは()()()()()()を切る。赤いナイフと米粒弾が交差するように円形でばら撒かれる。ナイフは米粒弾にぶつかって向きを変えて変則的な軌道を取る。飛びながら展開される弾幕は立体的な螺旋状になり、その中での回避を強いられる。

 

 

「っと、弾が速いな...!」

「隙間を縫ってアイツを追うのよ!」

「そいつが出来れば苦労は無いぜ...!」

 

 

 霊夢と魔理沙は弾幕を躱しつつ、それぞれ"ホーミングアミュレット"と"イリュージョンレーザー"をレミリアに撃ち込む。

 

 

「...援護しよう」

 

 

 俺自身も弾幕を躱しながら追尾光弾を放つ。霊夢の"ホーミングアミュレット"と合わせて追尾弾が増える形になる。

 

 

「本当、追尾弾は厄介ね...!」

 

 

 レミリアは高速で飛びながら追尾弾を振り切ろうとする。そこにクナイ弾と"イリュージョンレーザー"がばら撒かれ、速度を鈍らせる。

 

 

くっ...この程度...!」

 

 

 "ホーミングアミュレット"と光弾が直撃し、レミリアは怯む。すぐに持ち直して飛び回りながら赤と青のナイフを螺旋状に高速でばら撒く。

 

 

「うぉっ...?!躱せなくはないが、速い...!」

 

 

 魔理沙はナイフを避けるのに精一杯のようだ。此方も援護したいが、次々撃ち出されるナイフの弾幕に阻まれる。

 

 

「どうしたものか......っ!」

 

 

―――逡巡していた意識が"相棒"の鞘に霊夢が使う白いお札が一枚貼り付くのに気付いて戻される。霊夢を見れば、弾幕を躱しながら"パスウェイジョンニードル"と"ホーミングアミュレット"をレミリアに撃ち込み、距離を一定に保ちつつ飛び回っている。

 

 

「...なるほどな。()()()で行くか。吸血鬼にも効くだろう。――聖人の血に触れた運命の槍よ」

 

武起「ロンギヌスの槍-聖人の血の穂先-」

 

 

 鞘からお札を剥がして見ると、短い文が記されていた。それで霊夢の狙いに気付いて()()()()()()を切る。

 

 さる世界宗教の教祖が磔刑にて死した際、その死を確かめるべく使われた名も無き槍。聖人の血に触れたそれは聖遺物となり、血に触れて盲目を快癒させた槍を使った兵士の名を持った。その槍を()び出し、弾幕を躱しながらレミリアに迫る。

 

 

「...その槍はまさか...面白い...!

 

 

神槍「スピア・ザ・グングニル」

 

 

 レミリアは一瞬驚いた表情を浮かべるが、すぐに不敵な笑みを浮かべて()()()()()()で紅く輝く神の槍を展開する。

 

 

「しぃっ...!」

「ふっ...!」

 

 互いに吶喊し、神槍と聖槍がぶつかり合う。

 

 

「貫け――!」

 

 

 数合穂先をぶつけ合い、レミリアは距離を取ると槍を投擲する。

 

 

ぐっ...!

 

 

 槍の特性が()()()()()()で制限されているのか、辛うじていなす。が、その軌跡から赤い光弾の弾幕がばら撒かれる。

 

 

「狙って投擲すれば貫くまで追いかける神の槍。そう簡単には避けられないわよ!」

 

 

 レミリアの手に再び紅い槍が現れ、投擲する。

 

 

「ちっ...!」

 

 

 軌道を見極めて躱そうとするが、脇腹を掠って服に切り傷が出来る。が、レミリアに肉薄する事が出来た。

 

 

「ふっ...!」

「くっ...!」

 

 

 レミリアに槍を突き出し、レミリアは身体を捩って躱しながら槍を展開し、お返しと言わんばかりに高速で突いてくる。

 

 

「はぁっ...!」

「っと...!」

 

 

 互いに弾幕を撃たず槍の応酬が始まる。突き、薙ぎ払い、いなし、カウンター...打ち合う中で互いに槍を裁き切れず服や肌に切り傷を増やしていく。

 

 

「っはぁ...見事な腕ね。でも、私は吸血鬼。こんな傷はダメージにならない」

 

 

 レミリアは息をつきながら不敵に笑う。実際肌の切り傷は既に再生して服の破れが痕跡となっていた。

 

 

「だろうな。...()()()()()()()()()()()()()()()

「...どういう――」

 

 

 

異想「亜空穴」

 

―――フッ...

 

――こういう事よッ!

「なっ、いつのごぶぅっ?!

 

 

 霊夢が横合いからレミリアに霊力を纏った蹴りを入れる。脇腹に直撃し、レミリアは館の時計塔の方へ吹っ飛んでいく。

 

―――『博麗の巫女』の奥義の一つであり、境界の賢者()()()を擬似的に再現したもの。出入口を作ってその間を瞬時に移動するものだが、展開するとその位置に固定されてしまう。吸血鬼の動体視力であれば見抜かれる可能性が高かった。

 故にレミリアを足止めし、奇襲を掛けられるタイミングを作るように霊夢からメッセージを受けた。その為に近接戦闘を仕掛けて拘束した訳だ。

 

 

「――やったな二人とも!影政がいきなり槍で突っ込んだ時は、下手したら味方撃ちになりかねないし何やってんだと思ったが、そういう事だったのか」

 

 

 槍を還すと、納得したような表情の魔理沙が傍に寄ってくる。俺とレミリアが槍の応酬を仕掛けている間は、流石に撃とうにも撃てなかったようだ。

 

 

「『亜空穴』は出入口の展開が見られたら避けられるのが難点だけど、影政のおかげで――まだ動けるようね」

「意識外からの一撃は堪え――まだ立てるか」

「――マジかよ。吸血鬼ってのはタフだな」

 

 

―――瞬間、時計塔の方から殺気を感じ、各々身構える。目を凝らせば、時計塔の根本でレミリアがよろよろと立ち上がっているのが見えた。

 

 

 

 

 

 

「...流石に、今のは効いたわ。だが―――舐めるなよ、人間如きが!!

 

 

神術「吸血鬼幻想」

 

 

 レミリアが時計塔の上空に飛び上がり、深紅の瞳を輝かせて弾幕を放ってくる。高速で紫色の大型弾が拡散し、その軌跡に配置された赤い光弾がゆっくりと俺達を狙ってばら撒かれるパターンを、飛び回りながら立て続けに繰り返す。

 

 

「うぉっと?!」

「くっ...大型弾の投射間隔が速いのが面倒ね!」

「向こうも本気か...」

 

 

 俺達は散開し、弾幕を躱しながらレミリアに撃ち込む。レミリアは飛び回りながら弾幕を展開し続けるが、やはり弾幕展開時は動きが単調になるのを見逃さず撃ち込む。

 

 

ぐっ...!この程度で...!」

 

 

 ()()()()()()を削り取り、レミリアは怯む。レミリアから紅いオーラが溢れ出すと、沢山の蝙蝠を飛ばし、残った一際大きな蝙蝠が赤い鱗弾をばら撒く。

 

 

「蝙蝠?!でもこの程度なら...」

「クソ、蝙蝠なんて小さい的は狙えないぜ...!」

「人の形に戻った時を狙え!」

 

 

 弾幕を躱しながら、人の形に戻ったレミリアに撃ち込む。

 

 

「これは躱せるかしら?」

 

 

 再び紅いオーラが溢れ出し、赤い大型弾を高速で連射してきた。距離を詰めれば避ける隙間が無くなるような拡散具合だ。

 

 

「うわっ、ちょ、おぉ?!」

「なんて速さと数...ちゃんと避ける隙間はあるけども...!」

「この弾速だと妨害の弾も要らないという訳か...」

 

 

 大型弾を躱しながら、再び人の形に戻ったレミリアに撃ち込む。

 

 

「さぁ、まだまだ行くわよ!」

 

 

 紅いオーラが溢れ出し、今度は赤い火の玉弾をゆっくり移動しながら高速連射でばら撒く。

 

 

「大型弾よりはマシだが数が多いぜ!」

「これ位は避けられる、わねっ!」

「行け...!」

 

 

 大型弾の弾幕に比べれば隙間に余裕があり、霊夢は"ホーミングアミュレット"、俺は追尾光弾をそれぞれ放つ。人の形に戻ったレミリアの魔力に反応して軌道を変えて飛んでいく。

 

 

ぐっ...?!よく耐えたわね...紅色の支配者の威光を見よ!

 

 

紅符「スカーレットマイスタ」

 

 

 レミリアは()()()()()()を切る。赤い大型弾に中丸弾と小丸弾を付随させた弾幕を、時計回り、反時計回りで交互にばら撒いてくる。大型弾は高速だが、中丸弾と小丸弾は少し遅いのが厄介だ。

 

 

「...これを切るか」

 

 

銀弾「悪魔狩りの弾丸」

 

 

 弾幕を躱しながら()()()()()()を切る。悪魔や魔女、人狼、そして吸血鬼に効くと伝えられる銀の弾丸を召喚し、拡散させて撃ち出す。あえて当てに行くことはしない。狙いは――

 

 

「その弾...忌々sぐぅっ?!

「動きが鈍ったな!撃ちまくれ!」

「言われなくてもやるっての!」

 

 

 銀の弾丸を躱そうとしてレミリアの動きが鈍る。それを見逃さず霊夢と魔理沙が"パスウェイジョンニードル"と"イリュージョンレーザー"の集中砲火をレミリアに浴びせる。

 

 

「...ここまでやれるとはね。これが最後の()()()()()()よ」

 

 

 集中砲火を浴びて軽く吹っ飛ばされたレミリアだが、すぐに持ち直して感心したような表情で宣言して手に一枚のカードを持つ。

 

 

「最後か、気を引き締めていくぜ!」

「潔い吸血鬼ね。さっさと終わらせるわよ」

「あぁ、これで終わらせるとしよう」

 

 

 各々身構える。

 

 

「私の()()は失敗する。...だが、ここで折れては吸血鬼ではない。私は最後まで抵抗する。――我が理想郷よ、ここに顕現せよ!

 

 

「紅色の幻想郷」

 

 

 レミリアが()()()()()()を切る。紫色の大型弾が波紋状に撃ち出され、その軌跡に赤い中丸弾が配置される。中丸弾は()()()()()()ようにゆっくりと拡散して動き出す。

 

 

「成程な。()()()で全てを覆った世界がアイツの描く理想郷か...!」

「でも、それは断固阻止するわ。人間に被害が出るし、洗濯物も干せないしね!」

「――行くぞ」

 

 

 俺達は散開し、大型弾と中丸弾を躱しながら"パスウェイジョンニードル"、"イリュージョンレーザー"、クナイ弾の集中砲火をレミリアに浴びせる。

 

 

くっ...!まだまだァ!!

 

 

 レミリアは一瞬怯むが、深紅の瞳を光らせて吼えながら再度大型弾を拡散させ、中丸弾で空間を覆う。

 

 

「霊夢、影政!一気に決めようぜ!」

「――そうね、通常弾じゃ決め切れないかも」

「――分かった。狙おうとして被弾するなよ」

 

 

 魔理沙の提案を受け入れ、魔理沙はミニ八卦炉を構えてチャージを始め、霊夢は大幣(お祓い棒)を構えて陰陽玉を展開し、俺は牙龍(相棒)を抜いて構える。

 

 

「っ...来なさい!全力で受けて立つ!

 

行くぜ!全力でぶっ放すッ!

――これで終わりよ!

――決める

 

 

恋符「マスタースパーク」

霊符「夢想封印」

牙刃「紅龍の牙」

 

 

 魔理沙の真っ白な極太レーザーと星弾、霊夢の三色六発の霊撃弾、俺の牙突の鋭い斬撃がレミリアに迫る。

 

 

 

 


 

 

 

~紅魔館屋上 時計塔の根本~

 

side-レミリア

 

 

「――あぁ、負けた、か...」

 

 

 時計塔に背を預け、ポツリと呟いて()()()を見上げる。戦う力は愚か、立ち上がる気力も無い。

 

 

―――スタッ

 

 

「...私の負けよ。()()()も消すわ」

 

 

 屋上に着地した三人分の足音を聞き、そう宣言する。右手に()()()を纏う魔法陣を展開し―――()()()()。夜空を覆っていた()()()が全て消えていく。

 

 

「...さぁ、煮るなり焼くなり好きになさい。敗者に出来ることはないのだから」

 

 

 そう言うと、三人は互いに顔を見合わせる。

 

 

「負けを認めて霧も消した。なら私達が求めることは何も無いな」

「そうね。...強いて挙げるなら、()()()()の宴会の準備はやってもらいましょうか」

「『弾幕ごっこ』は死合うものではない。そうして負けを認めるなら、何もしない」

 

 

 三人の言葉に一瞬呆ける。...あぁ、ルーン(あの客人)も同じような事を言ってたわね。『弾幕ごっこ』...不思議なルールね。

 

 

「...私を生かせば、また()()()で空を覆うかもしれないわよ?」

「お、またやるつもりか?私は歓迎するぜ!今度は私一人でお前を倒してやるよ」

「その時は今回みたいに『弾幕ごっこ』でぶっ飛ばすだけよ」

「...()()は人妖のガス抜き、力の維持としての側面もある。――嘗てはそれで死傷者が当たり前のように出ていた。人口バランスの著しい変化は幻想郷を崩壊させかねない。それを抑制するのが『弾幕ごっこ』だ。『弾幕ごっこ』であれば、()()の意義と犠牲の減少に繋がる訳だ」

 

 

 私の問いに三人は平然と答える。

 

 

「...『幻想郷』、面白い所ね」

「『幻想郷は全てを受け入れる』。こうして()()を起こす者であれ、静かに暮らしたい者であれ、幻想郷は何者も拒まない。..."郷に入っては郷に従え"というように、『弾幕ごっこ』のようなルールには出来るだけ従ってもらうが」

「...そう。私は、私達は受け入れられてもいいのね」

 

 

 影政の言葉に安心感が満ちる。...お父様を追って、吸血鬼(私達)の存在意義を喪う前にと移住したけど、それが正解だった。

 

 

「...ありがとう。あぁ言ったけど、今は()()を起こすつもりはないわ。"()()ばかり起こす厄介者"になるつもりもないしね」

「ちぇ、つまらないな。...まぁ、()()ばっかじゃ魔法の研究の余裕も無いしな」

「――じゃ、()()()()ということで宴会よ宴会!準備はアンタ達に主にやって貰うからね!」

()()()()以上にやる気に満ち溢れてるな。...立てるか?」

 

 

 私と戦っていた時とは打って変わって嬉しそうに息巻く霊夢をよそに、影政は私に手を差し伸べる。

 

 

「...えぇ、どうにか。影政、ありが――」

 

 

ドゴォォォォォン!!

 

 

―――突然だった。轟音と共に館が大きく揺れる。私の視界に舞い散る瓦礫と土煙が映る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...これは、ちょっと不味いかな」

アッハハハハハ!!まだまだ遊び足りないわ!!

 

 

 瓦礫と土煙を突き抜け、服の焦げ跡と肌の擦り傷や切り傷が目立つルーン(あの客人)と、深紅の瞳をギラギラ輝かせて狂ったように吼える私の妹『フランドール・スカーレット』が紅い月の下で相対した。

 

 

―――to be continued―――

 

 

 

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