東方護郷譚・廻~幻想を護る者達~ 作:しがない東方二次創作者
~紅魔館 地下部屋~
side-ルーン
「――誰?」
広く薄暗い部屋で、一対の虹の七色の水晶が揺れる。明るい金髪を赤いリボンでサイドテールに纏め、白いナイトキャップを被り、白いシャツの襟元に黄色いリボンタイを締め、深紅のベストを羽織り、縁に白い線が走る深紅のラップ・アラウンド・スカート、白い靴下と赤いストラップシューズを履いた少女だった。此方に振り向いた深紅の瞳は、この館の主のそれによく似ていた。
「初めまして。僕は『ルーン・スティルゲイズ』。一週間位前にこの館を訪ねた時、君の魔力を感じてね。興味が湧いてここに来たんだ」
「ふぅん...変な人。私は、『フランドール・スカーレット』よ。...お姉様とか咲夜の許可を得たならともかく、一人で来たなら...どうやって入れたの?」
この部屋に向かう階段、部屋の扉に仕込まれた大量のトラップや防護魔法や結界から予想は出来たけど、やはりこの部屋には本来そう簡単には入れないようだ。
「僕は魔法使いでね。この部屋に繋がる階段と、扉に仕込まれた魔法をすり抜けて来たんだ」
「...へぇ。
僕の答えで興味を引いたのか、深紅の瞳が輝く。やはり、あれはパチュリーが仕込んだものか。...あれほどの防御手段を講じ、部屋への出入りを厳しくする程の危険性を、
「...ねぇ、私と少し遊んでくれる?ここ暫くお風呂以外でこの部屋から出たことがないし、家の住人以外の人は初めてなの。一人で来たなら、その内パチェとか咲夜が怒りに来るだろうし、それまでどう...かな?」
「...いいよ。僕なんかで良ければ一緒に遊ぼうか」
「本当?!やったー!私の事は"フラン"って呼んでね!私は貴方の事をルーンって呼ぶわ!」
「うん、構わないよ。じゃあ、まずは何をしようか?」
彼女...フランは満面の笑みを浮かべてはしゃぐ。この喜び様、本当にこの館の住人以外との交流が無いようだ。...この子に付き合いながら少しずつ理由を探ってみよう。
「うーん...まずはお話しましょ!一月位前にお姉様が『私達は幻想郷に着いた』って言ってたんだけど、それから今までお姉様はここに来ないし、何も教えて貰えなかったんだ。だから、『幻想郷』について教えて!」
「...分かった。僕が知り得ることでいいなら話してあげるよ」
「わーい!こっちこっち!」
フランの言葉に一瞬怒りがこみ上げて来たが、フランの為に治めて微笑みながら頷き、フランに招かれてベッドの端に座る。フランが言う"お姉様"とは、この館の主の事だろう。彼女は幻想入りを成してからずっと、今外で起きている
「まず、『幻想郷』は――」
―――それから僕は幻想郷の成り立ちや過去に起きた
「――『幻想郷』、私も見て回りたいなぁ。でも、外には出られないし...」
「...どうして、外に出られないんだい?」
幻想郷についてひと通り語り終えると、フランの表情に影が差す。思ったより早く理由を聞けそうだ。
「お姉様は『外は危険な場所だから』って、物心ついた時から館から出たことがないの。――それに」
フランは俯くが、意を決したように顔を上げて僕を見つめる。
「...私ね、
「...なるほど、ね。"反省したから部屋から出して"とか、出られるようにお願いしたことは?」
「...無い。言っても認めてくれないだろうし...
周りを見回せば、ベッドや部屋中に人形やおもちゃが無造作に置かれていた。それなりに年季が入ったものや、
「そっか。...フランはいい子だ。自分の
「うん......ルーンは、私の
「別に怖くないさ。むしろ懐かしいとも思う。...昔、今の君みたいな状況になっていた子を相手にしたことがあってね。その子も自分の
「プレゼント...?...うん。いいよ」
僕の提案にフランは戸惑いながらも頷く。フランの許可を得て、ベッドから立ち上がって部屋中の
「...そんな
「
集めた
「わぁ...どんどんくっついて、形ができてる」
「本当はちゃんとした道具があれば良かったんだけど、生憎今は持っていなくてね。魔法でやるしかないんだ」
「でも、すごいよ。見た目は糸なのに、まるで元からそうだったみたいにくっついてる...!」
フランと話しながら、"プレゼント"を形にしていく。ふと、フランの視線が僕の指先に移った。
「......」
「...どうしたんだい?」
「...んー...」
フランは僕の指先の動きを見つめ、真似するように自身の指を動かす。すると...
「...あ、
「見てるだけで再現...いや、オリジナリティも加えている...すごいじゃないか!」
フランの指先に僕のものと似た小さな魔法陣が展開され、そこから
「えへへー。昔、パチェにちょっと魔法を習った時にも驚かれたなぁ。『一目見て再現するなんてどうなってるのよ...』って驚いてた!」
フランは翼を揺らしながら照れくさそうに笑みを浮かべる。
「フランなら、いい魔法使いになれるよ。...ちょっと作り方を変えようか。フラン、その糸をここに入れられるかい?」
「えーっと...こう?」
「そうそう、いい感じだよ。その糸をこっちと繋げるように伸ばして...」
フランに"プレゼント"作成の一部を手伝ってもらいながら、少しずつ形にしていく。そして―――
「――よし、これで完成だ」
「わぁ...すごーい!」
―――"プレゼント"...一体の人形が完成した。赤味が強い赤銅色の長髪を黒いリボンでポニーテールで結い上げ、瞳は深紅。白いシャツの襟元に赤いネクタイを締め、上にフランのものに似せた黒いベストを羽織り、縁に白い線を二本飾った黒いロングスカートを履き、足に茶色のロングブーツを履いている。そして背中には、大きな蝙蝠のような翼を一対持っている―――フランやレミリアのような吸血鬼のような容姿の人形だ。フランは出来上がった人形を見て一際瞳を輝かせ、翼をパタパタ揺らす。
「この
「本当にいいの?!――あ、でも...」
瞳が輝くが、すぐにフランは表情を暗くして俯く。自分の
「...
「...うん」
「そっか。...じゃあ、ちょっとした”おまじない”をかけてあげよう」
優しくフランの手を取り、人形を持たせる。そして、僕はフランと目線を合わせて不安そうに揺れる深紅の瞳を見つめる。"おまじない"とは言うけど、魔法は使わない。ただ、フランの心に"言葉"を刻ませるだけだ。
「――この子は
「...壊したく、ない。ずっと、大事にしてあげたい。...でも、思わず
フランは今にも泣きそうな表情を浮かべる。
―――『
―――やっぱり、昔の
「――いいかい、フラン。
自分自身の左胸に手を添え、
「"絶対に壊さない"...私に、できるかな?」
「出来るさ、絶対に。...でも、最初から何もかもに"壊す"、"壊さない"という意思を向けながら
「...分かった。やってみる...!」
「じゃあ、この子はたった今から
「わぁ...!私の、友達...!」
フランが頷いたのを確認し、人形を渡して手を離す。フランは瞳を輝かせながら人形を掲げて眺める。
「ありがとう、ルーン
「――
フランの僕に対する呼び方の変化に一瞬呆ける。...僕が
「その...ここまで私に親身になってくれるのが嬉しくて、さ。
―――『ルーンは...兄さんは
人形を抱くフランの上目遣いを見つめて、嘗て
「...まぁ、僕は構わないよ。でも、ちゃんと血が繋がっている実の姉が怒らないかい?」
「...お姉様は関係ない。どうせ言っても適当にあしらうだろうし、私がルーンをお兄様って呼ぶって決めたから、それでいいの」
フランの言葉を聞いて心の内に不安と怒りが湧いてくるけど、表には出さない。フランと
「...姉のこと、随分冷たく言うじゃないか」
「...
フランはそう言って、部屋の一角に並ぶ複数の戸棚に目を向ける。ガラス戸越しにぬいぐるみや食器などが見えるが、あれらが姉からのプレゼントなのだろう。―――使ってはなさそうだけど、大事そうに保管はしているから完全に姉を見切った訳ではなさそうだ。
「...フランは、姉のことがどれ位嫌いかな?」
「すごく大っ嫌い。...でも、今までこの館で一緒に暮らしていたし、"いらない"、とは思わないかな」
予想通りの答えだった。姉がフランをどう思っているかは分からないけど、姉妹関係の改善が不可能ではなさそうだ。何かしらすれ違いや、彼女なりに考えがあるのかもしれない。
「...大っ嫌いなら、いつか"喧嘩"するかもしれないね。最近、幻想郷で新しい"喧嘩"の方法ができたんだ。フランがよかったら教えてあげるけど...どうかな?」
「"喧嘩"に方法ってあるんだ...でも、気になるから教えて!」
フランは僕の表現に戸惑うものの、興味が勝って目を輝かせる。
「じゃあ、教えてあげよう。新しい"喧嘩"の名前は――『弾幕ごっこ』」
side-フランドール
「...いやはや、フランには驚かされるね。あっという間に習得して、
私の手には、十枚の
―――『弾幕ごっこ』は、
・通常弾幕と
・弾幕は自分のイメージや能力を表現した、意味があるものを作る
・弾幕は相手が回避できる隙間を必ず作る
・原則始める前に使えるカードの枚数や
・勝敗は"スペルカードを全部クリアする"、"体力がなくなる"ことで決める
これが『弾幕ごっこ』の基本的なルール。接近戦もできるみたいだけど、この戦い方は殆ど
「じゃあ、実際にやってみようか。条件は..."スペルカード二枚"、"被弾は三回まで"でどうかな?」
「うん、それでいいよ!初めてだけど、負けないから!」
お兄様が提案した条件を受け入れ、お互い空中に浮き上がる。私が
「――『ルーン・スティルゲイズ』、美しさと残酷さを併せ持つ星の神秘を見よ!」
「――『フランドール・スカーレット』、えーっと...深紅の禁忌に震えろ!」
『弾幕ごっこ』が始まった。私は鱗弾を二重の円形で撃ち出す。距離をとればちゃんと隙間ができるからルールに違反しない。
「よっと...うん、ちゃんとルール通りだね。こっちも行くよ!」
私の弾幕を躱しながらお兄様も弾幕を撃ち出す。二つの魔法陣から黄色い星弾を連続して半円形で撃ち出し、お兄様自身は黄色いレーザーを左右に撃って私の動きを制限してくる。
「これくらいなら躱せるよ!そーれっ!」
レーザーに当たらないように最低限の動きで星弾の隙間を抜けながら、こっちも弾幕を撃ち続ける。
「まだまだ――きゃっ?!」
「被弾一回目。その避け方は無理があったんじゃないかな?」
弾幕を撃つことに集中し過ぎてレーザーに近寄り過ぎた。慌てて避けようと飛んだら、丁度飛んできた星弾に当たってベストに焦げ跡が付く。
「ち、ちょっと油断しただけだもん!じゃあ、
少しムキになりながら
―――
―――あの頃は楽しかった。お父様も居て、ちょっとだけ背が高かったお姉様も私の手を引いてくれた。でも、
「っと...
思い出に浸りかけた意識が、お兄様の驚いたような声で戻される。どうやら罠に嵌ったようだ。右の袖に光弾が当たったらしい焦げ跡が見える。
「わーい、当たったー!お兄様も油断しちゃったね?」
「はは、弾幕の分析に意識を集中し過ぎちゃったね。...じゃあ、お返しだ。墜ち逝く星の輝きは、大地に破滅を齎さん!」
お兄様が
「このくらいなら――」
私に当たりそうな弾をヒョイっと避ける。当たらなかった弾は部屋の床に落ちると―――沢山の小丸弾が噴き出すように飛び散り、放物線を描きながら落ちる軌道で弾幕を構成した。
「わわっ?!そういうことね!」
火の粉みたいに降ってくる小丸弾が
「さぁ、まだまだ星は降るよ」
今度は大型弾が一気に三つ現れ、バラバラに落ちてくる。中丸弾の数も増えて避けにくくなっている。
「わっ、っとと...!」
地面に落ちた中丸弾から小丸弾が噴き出し、バラバラに落ちてくる。それを躱して―――
「...あ、しまっ――」
お兄様は既に次の大型弾を降らせていた。小丸弾の弾幕を抜けた目の前に一発の大型弾が迫ってくる。私は咄嗟に
「なっ?!
―――私の
︎ 確かに大型弾に
―――お兄様は言った。『家族や友達は絶対に壊さない』って意思を持てと。私は大型弾
―――あぁ...
―――やっぱり、私は危険なんだ。
―――これじゃあ、せっかく親身になってくれたお兄様まで
―――私は......私、は......
「...ハハ...」
「――フラン?」
~紅魔館上空~
side-ルーン
「あんなに
「アハハッ、久しぶりのお外だぁ♪これでもっともーっと遊べるよ、お 兄 様 ?」
―――フランが
「――ルーン、百年ぶりだな。こんな状況で再会とはついてないが」
「おいおいルーン、アイツは一体なんだよ?!見たところレミリアと同じ吸血鬼っぽいが...ヤバいだろアレ?!」
「――色々聞きたいことがあるけど、そんな暇は無さそうね」
僕の下に、無事に目覚めたらしい
「んー?お兄様の知り合い?まぁいいや。私と遊んでくれるなら大歓迎だよ!アッハハハ!!」
フランに視線を戻せば、