東方護郷譚・廻~幻想を護る者達~   作:しがない東方二次創作者

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紅霧異変-EX2~狂月を鎮める意思~

~紅魔館屋上~

side-レミリア

 

「どうして...どうしてフランが...?!」

 

 

 四人に分身した妹―――フランが影政達四人にそれぞれ襲いかかるのを見て、私は戸惑う事しか出来なかった。一月前、私達が幻想入りした際にそれを伝えた時は狂(・)気(・)の兆候は無く、計画(異変)が成就したらフランを出してあげようと考えていた。

 その計画(起こした異変)は影政達に阻止され、収拾を付けたら改めてフランと話してこれからを決めようと考えていた矢先に、今の状況だ。

 

 

「――レミィ!」

「――お嬢様!」

 

 

 ふと、聞き慣れた声が私を呼んだ。目を向けると、咲夜がパチェに肩を貸して此方に歩み寄ってきていた。図書館から殆ど出ないパチェまで来るなんて...

 

 

「パチェ、咲夜...」

「お嬢様、ご無事でしたか!侵入者を止められず――」

「それを咎めはしないわ。その侵入者に私は負けて、計(・)画(・)は阻止されたから。...パチェは、大丈夫?」

 

 

 咲夜の謝罪を拒否して赦し、彼女の肩を借りてぜぇぜぇと息をつくパチェに尋ねる。

 

 

「...はぁ...大丈夫、とは言えないわね。館が揺れた時に、不味いと思ってつい走ったらすぐ息切れしてこのザマよ。我が身の虚弱さが今は憎いわ...って、あれは...!」

 

 

 肩で息をつくパチェが上空で飛び交うフランと影政達に気付いて目を見開く。

 

 

「...二人は、フランを追って来たのかしら?」

「えぇ。図書館の外で何(・)か(・)が(・)破(・)壊(・)さ(・)れ(・)た(・)轟(・)音(・)が聞こえたから顔を出してみたら、破(・)壊(・)さ(・)れ(・)た(・)瓦(・)礫(・)と弾(・)幕(・)の(・)跡(・)を見付けたの。まさかと思ってフランの部屋に向かったら、扉(・)が(・)破(・)壊(・)さ(・)れ(・)て(・)い(・)た(・)わ。

 痕跡から地上(上)に向かったと分かったから、途中で咲夜と合流してフランを探して――館が揺れたから上がって来たんだけど...状況は思った以上に最悪みたいね」

 

 

 話し終えてパチェは息をつく。パチェにはフランが暴(・)れ(・)た(・)と(・)き(・)の備えを任せていた。フランの能(・)力(・)の前では意味を成さないトラップを、数を揃えて足止めさせてる間に外に雨を降らせる。後は狂(・)気(・)が治まるまで館の中で暴れさせる。今まではその方法でフランを抑え込んでいた。

 

 

「パチュリー様、今から雨を降らせれば――」

「ダメよ。既にフランの狂(・)気(・)は最高潮よ。ここで雨を降らせたら――私達諸共、館(・)そ(・)の(・)も(・)の(・)が(・)破(・)壊(・)さ(・)れ(・)か(・)ね(・)な(・)い(・)」

 

 

 咲夜の提案を否定する言葉で、今まで以上に最悪な状況だと察した。...私達に何が出来るのだろうか。

 

 

「...今は、五体満足に動けてる彼らに任せるしかないわ。私は発(・)作(・)がぶり返す可能性があるし、咲夜もレミィも『弾幕ごっこ』でやられたばかりでしょう?――彼らでダメなら、私達がやるしかないけど」

 

 

 パチェはそう言って、紅(・)い(・)月(・)に照らされて飛び回る八つの影を見上げた。

 

 

 


 

 

 

~紅魔館上空~

 

side-魔理沙

 

 

「レーヴァテイン」

 

 

「アハハ!!避けられるかなー?!」

「おわぁっ?!」

 

 

 手にしていた悪魔の尻尾みたいな杖から真っ赤なレーザーの刃が伸び、縦に振り下ろしてくる。斬撃の軌跡の形で赤い米粒弾が大量に出てきて此方に飛んでくる。その弾幕は隙間も無く避けさせるつもりもない、殺(・)意(・)に満ちたものだった。箒を急加速させてギリギリ躱したが、次も避けられるか...というか―――

 

 

「『弾幕ごっこ』じゃないぞこんなの?!ルーンの奴一体何しやがったんだ!」

「アッハハハハ!!」

「うわぁ来たぁ!!」

 

 

 あの吸血鬼をどうにかしたらルーンを一発殴る。そう決めて再び飛んできた斬撃と弾幕を躱す。

 

 

「くっそー、一方的にやられるのはごめんだ!」

 

 

 斬撃に捉われないよう飛び回りながら"イリュージョンレーザー"を撃つ。

 

 

「アッハハハ!!その程度じゃ止まらないよー!!」

 

 

 だが、向こうは被弾しても怯む様子もなく刃を振り回して弾幕を飛ばしてくる。マスパが撃てればいいダメージが入りそうだが、あんな弾幕が飛んでくるんじゃチャージ中にやられる。どうにか隙を作れれば...

 

 

「...よし、やってみるか!」

 

 

 考えてる間にやられたら元も子もない。ふと思い付いたやり方を試すことにした。エプロンのポケットから青白い液体を詰めたアンプルを三本取り出して左手の指に挟み込む。箒にミニ八卦炉を装備して―――一気にブーストを掛ける。

 

 

「アハハ!!今度は追いかけっこね!!」

 

 

 予想通り追いかけてくる。背後から飛んでくる弾幕を躱して飛びながら隙を伺い―――アンプルを投げる。

 

 

ボフンッ...

ボフンッ...

ボフンッ...

 

 

 アンプルの中身が炸裂して分厚く広い青白い煙が広がる。これで私とアイツの視界が遮られた。吸血鬼の視力がどんなものかは分らないが、少なくとも私は前後不覚になる濃さの煙だ。アイツが前後不覚で足止めされてることを祈りながら、すかさず箒からミニ八卦炉を外して煙の方に向けて構えてチャージする。

 

 

 

...ゴォッ...

 

 

 煙から赤いレーザーの刃が突き抜けて薙ぎ払われ、煙は一瞬で散る。私を捉えたアイツは瞳を輝かせて満面の笑みを浮かべるが―――チ(・)ャ(・)ー(・)ジ(・)は(・)終(・)わ(・)っ(・)た(・)。危機的状況だからか、今まで以上に、自分史上最速でできた。

 

 

「アハッ、見ぃつけた♪こんな煙じゃ私は――」

「本命はこっちだ!吹っ飛べッ!!」

 

 

恋符「マスタースパーク」

 

 

 ミニ八卦炉から真っ白な極太レーザーと星弾が放たれ、まっすぐアイツ目掛けて飛んで行った。

 

 

 


 

 

side-霊夢

 

 

「アッハハハ!!逃がさないよー!!」

「あぁもう...!『弾幕ごっこ』しないなんてふざけた吸血鬼ね!」

 

 

 青い米粒弾を円形で高速連射しながら吸血鬼が追いかけてくる。弾速が異常に速く、此方を殺(・)し(・)に(・)来(・)て(・)る(・)弾幕だった。避けられなくはないけど、気を張り詰めてないと被弾しかねない。

 

 

「これで...落ちなさい!」

 

 

霊符「夢想封印」

 

 

 ス(・)ペ(・)ル(・)カ(・)ー(・)ド(・)を切り、三色の霊撃弾を展開して撃ち出す。咲夜(あのメイド)には通用しなかったけど、あの吸血鬼なら―――

 

 

「キュッとしてー...ドカーン!!」

「はぁ?!」

 

 

―――吸血鬼が左手を翳して握(・)り(・)潰(・)す(・)ように動かすと、霊撃弾が全て雲(・)散(・)霧(・)消(・)する。咲夜(あのメイド)に続いて主力の奥義を破られたことで思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。

 

 

「私はどんなものでも壊(・)せ(・)る(・)んだー。だからその気になれば貴女だって壊(・)せ(・)る(・)けど、それじゃつまんない。...だから、楽しませてね?カゴの中の鳥はいつ出られるかな?!」

 

 

「カゴメカゴメ」

 

 

 吸血鬼がス(・)ペ(・)ル(・)カ(・)ー(・)ド(・)―――いや、カード擬(・)き(・)を切った。私の周りに緑色の光弾が縦横に配置されて籠を作る。

 

 

「ほらほら、カゴが壊れるよ!」

 

 

 吸血鬼は黄色い大型弾を次々撃ち出す。大型弾が光弾に当たると、崩(・)れ(・)て(・)弾(・)幕(・)に(・)変(・)化(・)し(・)た(・)。しかも一(・)発(・)一(・)発(・)が(・)バ(・)ラ(・)バ(・)ラ(・)で(・)不(・)安(・)定(・)な(・)弾(・)速(・)と(・)軌(・)道(・)を取り始める。

 

 

「弾同士の干渉は制(・)御(・)不(・)能(・)に(・)な(・)り(・)か(・)ね(・)な(・)い(・)から忌避すべきなのに...!本当、ふざけてるわねッ!!」

 

 

 あちこちから飛んでくる光弾の中に偶(・)然(・)で(・)き(・)た(・)隙(・)間(・)を見出して抜けていきながら"ホーミングアミュレット"を撃ち出す。

 

 

「おっとと...避けながら撃てるなら、まだまだ行けるよね!じゃあ、もっとカゴを小さくするよー!!」

 

 

 被弾するも少し怯んだだけで、狂(・)気(・)に満ちた笑みを浮かべて右手を翳すと、緑色の光弾が再び籠を作る。宣言通りに籠(・)の(・)目(・)が(・)よ(・)り(・)小(・)さ(・)い(・)せいで動ける範囲が狭まっている。これでさっきみたいに崩されたら...っていうかもう大型弾展開してるし!

 

 

「...一か八か、やってやるわ。見(・)ら(・)れ(・)な(・)い(・)ようにしてよ、名(・)前(・)も(・)御(・)利(・)益(・)も(・)知(・)ら(・)な(・)い(・)ウ(・)チ(・)の(・)神(・)様(・)!」

 

 

異想「亜空穴」

 

 

 博麗神社(ウチ)が祀っている神様に普(・)段(・)や(・)り(・)も(・)し(・)な(・)い(・)神(・)頼(・)み(・)をしながら、ス(・)ペ(・)ル(・)カ(・)ー(・)ド(・)を切った。大型弾で崩れ始めた籠の目を抜け、飛んだ先に入(・)口(・)を創り、出(・)口(・)を繋ぎ―――

 

 

「...え?」

 

 

―――飛び出した先で、私を見て驚いたように目を見開く吸血鬼目掛けて、霊力をありったけ纏わせた大幣(お祓い棒)を全力で振り翳した。

 

 


 

 

side-影政

 

 

「アッハハハ!!迷路に惑え!!」

 

 

「恋の迷路」

 

 

 螺旋状に色とりどりの光弾の壁が広がっていく。迷路の分かれ道のように所々に隙間があり、そこを抜ければ近付けるが―――

 

 

「ほらほら、素直に抜けるとこうだよ!」

「くっ...!」

 

 

 隙間を抜けた瞬間、光弾の壁をぶち抜いて赤い大型弾が狙(・)い(・)撃(・)ち(・)してきた。避け切れず被弾して軽く吹っ飛ばされるが、すぐ持ち直して再び迷路を抜けていく。向こうは俺(・)を(・)視(・)認(・)すると大型弾を撃ってくるようだ。向こうに視認されない位置の隙間を選んで抜けて近付くしかないが、壁を作る弾幕は密度が高く此方からも向こうの姿を見るのは難しい。

 

 

「...見えた」

 

 

 隙間から此方に背を向けた姿を見付け、壁に阻まれる前に光弾とクナイ弾を放つ。

 

 

「きゃっ?!アッハハ!!やるじゃん!!もっと遊びましょ!!」

 

 

「スターボウブレイク」

 

 

 迷路が消え、手にしていた杖を横薙ぎに降ると下方から虹のような色とりどりの光弾が舞い上がってくる。そして、バラバラの弾速で真っ直ぐ落ちてくる。隙間は少ないがあるため、避けれない訳ではないが―――

 

 

「ほらほら、どんどん行くよー!!」

 

 

―――案の定、続けざまに杖を振り薙いで光弾を舞い上がらせて落下させる。正に虹色の大波のような弾幕だ。不規則な弾速は弾幕の隙間を作ったり埋めたりと安定しない。

 

 

「――やるか。あれは分身だ。本(・)体(・)と(・)殆(・)ど(・)遜(・)色(・)無(・)い(・)強(・)さ(・)の(・)分(・)身(・)を三体出せるとは凄まじいが――騎士王の聖槍よ、目の前の障害を貫け」

 

 

聖槍「ロンゴミニアト・チャージ」

 

 

 ス(・)ペ(・)ル(・)カ(・)ー(・)ド(・)を切り、伝説の騎士王が振るった白き聖槍を喚(よ)び出す。両手で構え――弾幕を薙ぎ払って吶喊する。

 

 

 


 

 

~紅魔館屋上~

 

side-レミリア

 

 

「...狂(・)気(・)に染まった妹様相手にあれだけ渡り合えるなんて...」

 

 

 上空で繰り広げられる戦闘を見上げ、咲夜が呟く。フランの狂(・)気(・)を孕んだ暴力の嵐を苦戦しつつも捌いているのは素直に凄い実力だと感じる。私は身(・)体(・)の(・)一(・)部(・)を(・)破(・)壊(・)さ(・)れ(・)る(・)被害を受けてやっと抑えられるのに。

 

 

「『弾幕ごっこ』とは言え、私を倒しただけはあるわ。これなら...」

「油断しないで、レミィ。フランの狂(・)気(・)でいつ状況が変わってもおかしくないわ」

「そうね...でも、あの立ち回りを見てると期待してしまうわ」

 

 

 もしかしたら、あの四人がフランの狂(・)気(・)を...そう淡い期待を抱きながらパチェに目を向けて答えると、彼女の上着に何かが入っていたのに気付いた。

 

 

「...パチェ、上着のそれは?」

「...あぁ、これ?フランの部屋に落ちていたのよ。ただの人形ではなさそうだから一応拾ってきたの」

 

 

 パチェはそう言って上着から人形を取り出す。吸血鬼のような見た目の人形だけど、こんな人形はあげた記憶が無い。

 

 

「この人形、フ(・)ラ(・)ン(・)と(・)ル(・)ー(・)ン(・)の(・)魔(・)力(・)を(・)感(・)じ(・)る(・)のよ。パーツも綺麗にされてるけど年季が入ってるのは分かるし...壊(・)れ(・)た(・)人(・)形(・)のパーツを組み合わせて作ったんだと思うわ」

「...私達が異(・)変(・)解(・)決(・)に抵抗している間にルーンがフランと接触したってことね。...理由は後で問い詰めるとして、少なくともルーンは害意を持ってフランに近付いた訳ではなさそうね」

 

 

 二人の魔力が入っているということは、二人一緒に作ったのだろう。害意があるならこんなことはしないだろうし、するにしても何か罠を仕込むはず。接した時間は少ないけど、それでもルーンの人柄で害意や悪意のある行動はしないと思えた。そんなことを考えながら人形を見ていると―――

 

 

 

...ピクッ...

 

 

「...ん?」

「レミィ、どうしたの?」

「...何でもないわ」

 

 

 人(・)形(・)の(・)手(・)が(・)一(・)瞬(・)動(・)い(・)た(・)ように見えたけど、気のせいだろうと思って色とりどりの弾幕と人影が飛び交う空を見上げる。

 

 

 


 

 

 

~紅魔館上空~

 

side-ルーン

 

 

「アハハハ!!跳ねまくる弾を避けられるかなー?!」

 

 

「カタディオプトリック」

 

 

 僕の周りに球体の結界が張られる。そこに中丸弾と小丸弾を撒き散らす青い大型弾が次々撃ち込まれる。結界にぶつかると反(・)射(・)す(・)る(・)よ(・)う(・)に(・)跳ね返って軌道を変える。

 

 

「くっ...!結界の空間が広いからまだいいけども...!」

 

 

 飛び交う弾を躱しながら反撃の隙を伺う。何度か跳ね返ると流石に魔力を失って弾が消えるものの、フランはどんどん撃ち込んで補充してくる。

 

 

「流石お兄様!!じゃあこうしちゃうよ!!」

 

 

 フランが手を振ると、結(・)界(・)が(・)狭(・)ま(・)り(・)始(・)め(・)た(・)。跳ね返る頻度が増えて更に避けにくくなっていく。

 

 

「不味い...!ぐっ?!」

 

 

 中丸弾を躱した先に飛び込んできた大型弾に被弾して軽く吹き飛ばされる。追加で被弾しないように防護結界を展開しながら体勢を立て直す。

 

 

「...魔力が心許なくなってきたけど、節約はしてられないね!」

 

 

星壁「アステロイドベルト・サークル」

 

 

 ス(・)ペ(・)ル(・)カ(・)ー(・)ド(・)を切り、自身の周りに様々な大きさの小(・)惑(・)星(・)を展開して飛び交う弾幕に突っ込む。小惑星が壁として犠牲になって弾を防ぐ。小惑星が尽きる前に弾幕を抜けて...!

 

 

「噓?!あの弾幕を抜けて――」

 

 

 弾幕を抜けてフランの姿を捉え、逃げられる前にありったけの星弾と、残った小惑星を光弾に変化させて一気に撃ち込んだ。

 

 

 


 

 

 

side-フラン

 

 

―――つまらない。

 

 

 

 

 

―――分身は全部やられた。

 

 

 

 

 

 

―――皆、最初は慌てて逃げ惑っていたのに。叫んでいたのに。

 

 

 

「皆、何とか凌いでぶっ?!」

「いきなりあんなヤバいのと戦わせやがって!!これ位甘んじて受けろ!!」

「『弾幕ごっこ』じゃない弾幕なんて初めてよ...これ以上は勘弁してほしいわね」

「そうだな。...だが、様子がおかしいな」

 

 

 

―――今は、落ち着いた様子で私の前に居る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ツマラナイものは、イラナイ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――イラナイモノハ、壊シチャエ。

 

 

 

「...あの手は!止めるわよ!!」

「霊夢?!急にどうしたんだよ?!」

「あの手は能(・)力(・)を発動する予備動作だ!発動されたら...僕(・)ら(・)が(・)破(・)壊(・)さ(・)れ(・)る(・)!!」

「...急ぐぞ」

 

 

 

 

―――目(・)ガ四(・)ツ(・)。全部マトメテ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

...スッ...

 

 

 

「―――だ、め。壊しちゃ、だめ...!」

「...あ...?」

 

 

 

―――人、形?邪魔スルナラコイツモ―――

 

 

 

「...思い、だして」

 

 

―――思イ出ス?何ヲ?

 

 

「私、を...あなたと一緒に、作ってくれた人の、言(・)葉(・)...」

 

 

―――言(・)葉(・)ナンテ、思イ出シテモ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――まずは、『家族と友達は絶対に壊さない』事から始めよう―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――『家族と友達は絶対に壊さない』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...あぁ...」

 

 

―――思イ、出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――私ハ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――私は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...嫌、だ...」

 

 

―――もう、見たくない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――お姉様や、館の皆の...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――お兄様と、友達の...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――悲しむ顔は、もう見たくない!!

 

 

 

 

 


 

 

side-ルーン

 

 

「―――あぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 フランは吼えるような叫び声をあげ、翳していた左手を右手で掴む。まるで破(・)壊(・)す(・)る(・)こ(・)と(・)を(・)拒(・)絶(・)し(・)よ(・)う(・)とするように。

 

 

―――突然だった。目の前に僕とフランとで作った人形が自(・)律(・)し(・)た(・)よ(・)う(・)に(・)飛んできてフランの前に立ちはだかり、たどたどしくも言(・)葉(・)を(・)発(・)し(・)た(・)。そして、フランの狂(・)気(・)が治まって―――いや、狂(・)気(・)と正(・)気(・)がせめぎ合い始めた。

 

 

 

「もう嫌なの!!能力に振り回されて皆の悲しい顔を見るのは!!」

 

 

 左手が握(・)り(・)潰(・)す(・)動きをしようとガクガク動くが、フランは叫びながらそれを抑え付ける。

 

 

「私の『大切なもの』は絶対に壊さない!壊させない!!」

 

 

 それでも左手は指先をピクピク動かして抵抗している。

 

 

「だから...だからッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の言う事を聞けぇぇぇぇぇぇ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フランの渾身の叫び声が響き渡って数秒。左手の疼(・)き(・)が治まった。フランは息を吐きながら左手を降ろす。息を落ち着かせて顔を上げると―――

 

 

「...ごめんなさい!!」

 

 

 僕達に向けて思いっ切り頭を下げた。

 

 

「能(・)力(・)に振り回されて、『弾幕ごっこ』も何もないあんな酷い戦い方をして、皆に迷惑を掛けて...本当に、ごめんなさい!!」

 

 

 謝る姿に霊夢と魔理沙は困惑した表情を浮かべている。狂(・)気(・)に染まったさっきまでの姿とはまるで違う様子に戸惑っているようだ。

 

 

「――状況の変化が急すぎて言葉が見つからないが」

 

 

 影政が口を開く。フランを見つめる眼差しは優しいものだった。

 

 

「――謝るのなら、俺は許そう」

「...あー、そうだな。狂気(なんかヤバい感じ)も治まってるし、私も許すよ」

「――そんな真剣な謝り方されたら怒れないじゃない。後は館の住人にもちゃんと謝ること。いいわね?」

「フラン、僕も許すよ。――言(・)葉(・)が届いていて、よかった」

 

 

 満場一致で、フランを許す言葉が出る。フランは顔を上げて嬉しそうな、泣きそうな表情を浮かべる。

 

 

「ありがとう...皆、ありがとうッ!!」

 

 

 フランの目から涙が一筋流れ、頭を思いっ切り下げるとキラリと涙の粒が飛んだ。

 

 

「...フラン、言(・)葉(・)を思い出してくれて、よかった」

 

 

 フランの傍に人形がフワリと近付く。

 

 

「...どうして...動けて、話せるの?」

「分からない。...ただ、"フランを止めたい"。その意(・)思(・)だけはあった」

 

 

 人形はそう答える。...意(・)思(・)の力は侮れない、本当に。

 

 

「...ありがとう、『フレア』。私に思い出させてくれて。あれが無かったら、私は二(・)度(・)と(・)戻(・)れ(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)だろうから」

「...『フレア』...?」

「あなたの名前。たった今思い付いたんだ。――私の意(・)思(・)に火を付けてくれた。だから、『フレア』」

「...いい、名前。私は『フレア』、フランの友達」

「私はフラン、『フレア』のお友達。...よろしくね!」

 

 

 フランは満面の笑みを浮かべて人形―――フレアを抱きしめた。

 

 

 


 

 

 

~紅魔館屋上~

 

side-レミリア

 

 

「パチュリーを騙してフランに近付いたこと。フランを暴れさせてしまったこと。その結果館に被害を出したこと。客(・)人(・)としてあるまじき行為の数々、本当に、申し訳ございませんでした」

 

 

 ルーンはそう謝罪して頭を深々と下げる。

 

―――フランの狂(・)気(・)がすっかり治まっていた。今までは抑(・)え(・)込(・)ん(・)で(・)い(・)る(・)だけだったのに、あの子は狂(・)気(・)を乗(・)り(・)越(・)え(・)て(・)い(・)た(・)。色々気になることはあるけれど...今は、ルーンに感謝を伝えたかった。ずっと私達では解決出来なかった事を、彼はやってのけた。

 

 

「紅魔館の主として、貴方の行為を赦しましょう。――そして、ありがとう。私達でさえ抑えるだけで精一杯だった、あの子の狂(・)気(・)を乗り越えさせてくれた」

 

 

<一体どうなってるのコレ魔力の糸が通ってるからそれが原因?いやでも(ry

<あっ、ちょ、痛い...

<パチェ、フレアに乱暴しないで!

 

 

 ルーンの謝罪を受け入れ、少し離れたところで性分を発揮しているパチェと、怯えも無く止めようとするフランを見やり、感謝を述べて頭を下げる。

 

 

「...僕は、きっかけを作っただけだよ。乗り越えられたのはフラン自身の意(・)思(・)だ」

「でも、私はそのきっかけさえ作れなかったわ。狂(・)気(・)を抑えることだけに拘って、あの子を閉じ込めて...私は、真摯に向き合えなかった。...狂(・)気(・)が怖かったの。館の住人を、大切な家族を壊(・)さ(・)れ(・)る(・)ことが怖かった。...姉失格ね」

 

 

―――だから、紅(・)い(・)霧(・)で幻想郷を覆おうとした。私達が支配する広い世界で、あの子を自由にさせればいつか狂(・)気(・)も治まるだろうと。...それでは何の解決にもならないのに。寧ろ狂(・)気(・)を悪化させる可能性もあったのに。

 

 

「...姉妹関係については、僕は何も言えないよ。それは君達二人で解決すべき問題だからね。...でも、今のフランなら、ちゃんと君を受け入れてくれると思うよ」

「...そう、ね。あの子は乗り越えられたんだもの。私も乗り越えないと、姉として示しが付かないものね」

 

 

 ルーンの言葉で、私は決意する。―――まずは、フランと二人で話そう。狂(・)気(・)を恐れて今まで出来なかった、当たり前のことをやろう。...今より幼かった頃、フランも私も能(・)力(・)を発現していなかった頃のように、お互いに笑い合えるように。

 

 

「――そっちの話は終わった?終わったわね。さぁ、宴会よ宴会!夜が明ける前にパーッとやるわよー!!」

 

 

 霊夢が割り込み、私やフランと相対した時とはまるで違う、やる気に満ち溢れた表情で、フンスと鼻息を荒くして声高に主張する。

 

 

「さっきまでとは大違いね。...まぁ、いいでしょう。咲夜、今から準備出来る?」

「はい。幸い食料庫やワインセラーは無事でしたから。美鈴も小悪魔も、残った妖精メイドも全部動員しましょう」

「料理なら私も手伝うぜ!これでもレパートリーは豊富なんだ」

「僕は...呼びたい娘達が居るからそっちに行ってくるよ。宴会に歌曲を添えなきゃね」

「俺は人を呼んでこよう。異(・)変(・)について話を聞きたい連中も居るだろうしな」

「私は神社からお酒持ってくるわね!」

 

 

 霊夢の音頭を皮切りに、館は俄かに騒がしくなり始めた。

 

 

―――to be continued―――

 

 

 

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