東方護郷譚・廻~幻想を護る者達~ 作:しがない東方二次創作者
~紅魔館屋上~
side-レミリア
「どうして...どうしてフランが...?!」
四人に分身した妹―――フランが影政達四人にそれぞれ襲いかかるのを見て、私は戸惑う事しか出来なかった。一月前、私達が幻想入りした際にそれを伝えた時は
「――レミィ!」
「――お嬢様!」
ふと、聞き慣れた声が私を呼んだ。目を向けると、咲夜がパチェに肩を貸して此方に歩み寄ってきていた。図書館から殆ど出ないパチェまで来るなんて...
「パチェ、咲夜...」
「お嬢様、ご無事でしたか!侵入者を止められず――」
「それを咎めはしないわ。その侵入者に私は負けて、
咲夜の謝罪を拒否して赦し、彼女の肩を借りてぜぇぜぇと息をつくパチェに尋ねる。
「...はぁ...大丈夫、とは言えないわね。館が揺れた時に、不味いと思ってつい走ったらすぐ息切れしてこのザマよ。我が身の虚弱さが今は憎いわ...って、あれは...!」
肩で息をつくパチェが上空で飛び交うフランと影政達に気付いて目を見開く。
「...二人は、フランを追って来たのかしら?」
「えぇ。図書館の外で
痕跡から
話し終えてパチェは息をつく。パチェにはフランが
「パチュリー様、今から雨を降らせれば――」
「ダメよ。既にフランの
咲夜の提案を否定する言葉で、今まで以上に最悪な状況だと察した。...私達に何が出来るのだろうか。
「...今は、五体満足に動けてる彼らに任せるしかないわ。私は
パチェはそう言って、
~紅魔館上空~
side-魔理沙
「アハハ!!避けられるかなー?!」
「おわぁっ?!」
手にしていた悪魔の尻尾みたいな杖から真っ赤なレーザーの刃が伸び、縦に振り下ろしてくる。斬撃の軌跡の形で赤い米粒弾が大量に出てきて此方に飛んでくる。その弾幕は隙間も無く避けさせるつもりもない、
「『弾幕ごっこ』じゃないぞこんなの?!ルーンの奴一体何しやがったんだ!」
「アッハハハハ!!」
「うわぁ来たぁ!!」
あの吸血鬼をどうにかしたらルーンを一発殴る。そう決めて再び飛んできた斬撃と弾幕を躱す。
「くっそー、一方的にやられるのはごめんだ!」
斬撃に捉われないよう飛び回りながら"イリュージョンレーザー"を撃つ。
「アッハハハ!!その程度じゃ止まらないよー!!」
だが、向こうは被弾しても怯む様子もなく刃を振り回して弾幕を飛ばしてくる。マスパが撃てればいいダメージが入りそうだが、あんな弾幕が飛んでくるんじゃチャージ中にやられる。どうにか隙を作れれば...
「...よし、やってみるか!」
考えてる間にやられたら元も子もない。ふと思い付いたやり方を試すことにした。エプロンのポケットから青白い液体を詰めたアンプルを三本取り出して左手の指に挟み込む。箒にミニ八卦炉を装備して―――一気にブーストを掛ける。
「アハハ!!今度は追いかけっこね!!」
予想通り追いかけてくる。背後から飛んでくる弾幕を躱して飛びながら隙を伺い―――アンプルを投げる。
アンプルの中身が炸裂して分厚く広い青白い煙が広がる。これで私とアイツの視界が遮られた。吸血鬼の視力がどんなものかは分らないが、少なくとも私は前後不覚になる濃さの煙だ。アイツが前後不覚で足止めされてることを祈りながら、すかさず箒からミニ八卦炉を外して煙の方に向けて構えてチャージする。
煙から赤いレーザーの刃が突き抜けて薙ぎ払われ、煙は一瞬で散る。私を捉えたアイツは瞳を輝かせて満面の笑みを浮かべるが―――
「アハッ、見ぃつけた♪こんな煙じゃ私は――」
「本命はこっちだ!吹っ飛べッ!!」
ミニ八卦炉から真っ白な極太レーザーと星弾が放たれ、まっすぐアイツ目掛けて飛んで行った。
side-霊夢
「アッハハハ!!逃がさないよー!!」
「あぁもう...!『弾幕ごっこ』しないなんてふざけた吸血鬼ね!」
青い米粒弾を円形で高速連射しながら吸血鬼が追いかけてくる。弾速が異常に速く、此方を
「これで...落ちなさい!」
「キュッとしてー...ドカーン!!」
「はぁ?!」
―――吸血鬼が左手を翳して
「私はどんなものでも
吸血鬼が
「ほらほら、カゴが壊れるよ!」
吸血鬼は黄色い大型弾を次々撃ち出す。大型弾が光弾に当たると、
「弾同士の干渉は
あちこちから飛んでくる光弾の中に
「おっとと...避けながら撃てるなら、まだまだ行けるよね!じゃあ、もっとカゴを小さくするよー!!」
被弾するも少し怯んだだけで、
「...一か八か、やってやるわ。
「...え?」
―――飛び出した先で、私を見て驚いたように目を見開く吸血鬼目掛けて、霊力をありったけ纏わせた
side-影政
「アッハハハ!!迷路に惑え!!」
螺旋状に色とりどりの光弾の壁が広がっていく。迷路の分かれ道のように所々に隙間があり、そこを抜ければ近付けるが―――
「ほらほら、素直に抜けるとこうだよ!」
「くっ...!」
隙間を抜けた瞬間、光弾の壁をぶち抜いて赤い大型弾が
「...見えた」
隙間から此方に背を向けた姿を見付け、壁に阻まれる前に光弾とクナイ弾を放つ。
「きゃっ?!アッハハ!!やるじゃん!!もっと遊びましょ!!」
迷路が消え、手にしていた杖を横薙ぎに降ると下方から虹のような色とりどりの光弾が舞い上がってくる。そして、バラバラの弾速で真っ直ぐ落ちてくる。隙間は少ないがあるため、避けれない訳ではないが―――
「ほらほら、どんどん行くよー!!」
―――案の定、続けざまに杖を振り薙いで光弾を舞い上がらせて落下させる。正に虹色の大波のような弾幕だ。不規則な弾速は弾幕の隙間を作ったり埋めたりと安定しない。
「――やるか。あれは分身だ。
~紅魔館屋上~
side-レミリア
「...
上空で繰り広げられる戦闘を見上げ、咲夜が呟く。フランの
「『弾幕ごっこ』とは言え、私を倒しただけはあるわ。これなら...」
「油断しないで、レミィ。フランの
「そうね...でも、あの立ち回りを見てると期待してしまうわ」
もしかしたら、あの四人がフランの
「...パチェ、上着のそれは?」
「...あぁ、これ?フランの部屋に落ちていたのよ。ただの人形ではなさそうだから一応拾ってきたの」
パチェはそう言って上着から人形を取り出す。吸血鬼のような見た目の人形だけど、こんな人形はあげた記憶が無い。
「この人形、
「...私達が
二人の魔力が入っているということは、二人一緒に作ったのだろう。害意があるならこんなことはしないだろうし、するにしても何か罠を仕込むはず。接した時間は少ないけど、それでもルーンの人柄で害意や悪意のある行動はしないと思えた。そんなことを考えながら人形を見ていると―――
...ピクッ...
「...ん?」
「レミィ、どうしたの?」
「...何でもないわ」
~紅魔館上空~
side-ルーン
「アハハハ!!跳ねまくる弾を避けられるかなー?!」
僕の周りに球体の結界が張られる。そこに中丸弾と小丸弾を撒き散らす青い大型弾が次々撃ち込まれる。結界にぶつかると
「くっ...!結界の空間が広いからまだいいけども...!」
飛び交う弾を躱しながら反撃の隙を伺う。何度か跳ね返ると流石に魔力を失って弾が消えるものの、フランはどんどん撃ち込んで補充してくる。
「流石お兄様!!じゃあこうしちゃうよ!!」
フランが手を振ると、
「不味い...!ぐっ?!」
中丸弾を躱した先に飛び込んできた大型弾に被弾して軽く吹き飛ばされる。追加で被弾しないように防護結界を展開しながら体勢を立て直す。
「...魔力が心許なくなってきたけど、節約はしてられないね!」
「噓?!あの弾幕を抜けて――」
弾幕を抜けてフランの姿を捉え、逃げられる前にありったけの星弾と、残った小惑星を光弾に変化させて一気に撃ち込んだ。
side-フラン
―――つまらない。
―――分身は全部やられた。
―――皆、最初は慌てて逃げ惑っていたのに。叫んでいたのに。
「皆、何とか凌いでぶっ?!」
「いきなりあんなヤバいのと戦わせやがって!!これ位甘んじて受けろ!!」
「『弾幕ごっこ』じゃない弾幕なんて初めてよ...これ以上は勘弁してほしいわね」
「そうだな。...だが、様子がおかしいな」
―――今は、落ち着いた様子で私の前に居る。
―――ツマラナイものは、イラナイ。
―――イラナイモノハ、壊シチャエ。
「...あの手は!止めるわよ!!」
「霊夢?!急にどうしたんだよ?!」
「あの手は
「...急ぐぞ」
―――
「―――だ、め。壊しちゃ、だめ...!」
「...あ...?」
―――人、形?邪魔スルナラコイツモ―――
「...思い、だして」
―――思イ出ス?何ヲ?
「私、を...あなたと一緒に、作ってくれた人の、
―――
―――『家族と友達は絶対に壊さない』
「...あぁ...」
―――思イ、出した。
―――私ハ
―――私は
「...嫌、だ...」
―――もう、見たくない。
―――お姉様や、館の皆の...
―――お兄様と、友達の...
side-ルーン
「―――あぁぁぁぁぁぁ!!!!」
フランは吼えるような叫び声をあげ、翳していた左手を右手で掴む。まるで
―――突然だった。目の前に僕とフランとで作った人形が
「もう嫌なの!!能力に振り回されて皆の悲しい顔を見るのは!!」
左手が
「私の『大切なもの』は絶対に壊さない!壊させない!!」
それでも左手は指先をピクピク動かして抵抗している。
「だから...だからッ!!」
フランの渾身の叫び声が響き渡って数秒。左手の
「...ごめんなさい!!」
僕達に向けて思いっ切り頭を下げた。
「
謝る姿に霊夢と魔理沙は困惑した表情を浮かべている。
「――状況の変化が急すぎて言葉が見つからないが」
影政が口を開く。フランを見つめる眼差しは優しいものだった。
「――謝るのなら、俺は許そう」
「...あー、そうだな。
「――そんな真剣な謝り方されたら怒れないじゃない。後は館の住人にもちゃんと謝ること。いいわね?」
「フラン、僕も許すよ。――
満場一致で、フランを許す言葉が出る。フランは顔を上げて嬉しそうな、泣きそうな表情を浮かべる。
「ありがとう...皆、ありがとうッ!!」
フランの目から涙が一筋流れ、頭を思いっ切り下げるとキラリと涙の粒が飛んだ。
「...フラン、
フランの傍に人形がフワリと近付く。
「...どうして...動けて、話せるの?」
「分からない。...ただ、"フランを止めたい"。その
人形はそう答える。...
「...ありがとう、『フレア』。私に思い出させてくれて。あれが無かったら、私は
「...『フレア』...?」
「あなたの名前。たった今思い付いたんだ。――私の
「...いい、名前。私は『フレア』、フランの友達」
「私はフラン、『フレア』のお友達。...よろしくね!」
フランは満面の笑みを浮かべて人形―――フレアを抱きしめた。
~紅魔館屋上~
side-レミリア
「パチュリーを騙してフランに近付いたこと。フランを暴れさせてしまったこと。その結果館に被害を出したこと。
ルーンはそう謝罪して頭を深々と下げる。
―――フランの
「紅魔館の主として、貴方の行為を赦しましょう。――そして、ありがとう。私達でさえ抑えるだけで精一杯だった、あの子の
<一体どうなってるのコレ魔力の糸が通ってるからそれが原因?いやでも(ry
<あっ、ちょ、痛い...
<パチェ、フレアに乱暴しないで!
ルーンの謝罪を受け入れ、少し離れたところで性分を発揮しているパチェと、怯えも無く止めようとするフランを見やり、感謝を述べて頭を下げる。
「...僕は、きっかけを作っただけだよ。乗り越えられたのはフラン自身の
「でも、私はそのきっかけさえ作れなかったわ。
―――だから、
「...姉妹関係については、僕は何も言えないよ。それは君達二人で解決すべき問題だからね。...でも、今のフランなら、ちゃんと君を受け入れてくれると思うよ」
「...そう、ね。あの子は乗り越えられたんだもの。私も乗り越えないと、姉として示しが付かないものね」
ルーンの言葉で、私は決意する。―――まずは、フランと二人で話そう。
「――そっちの話は終わった?終わったわね。さぁ、宴会よ宴会!夜が明ける前にパーッとやるわよー!!」
霊夢が割り込み、私やフランと相対した時とはまるで違う、やる気に満ち溢れた表情で、フンスと鼻息を荒くして声高に主張する。
「さっきまでとは大違いね。...まぁ、いいでしょう。咲夜、今から準備出来る?」
「はい。幸い食料庫やワインセラーは無事でしたから。美鈴も小悪魔も、残った妖精メイドも全部動員しましょう」
「料理なら私も手伝うぜ!これでもレパートリーは豊富なんだ」
「僕は...呼びたい娘達が居るからそっちに行ってくるよ。宴会に歌曲を添えなきゃね」
「俺は人を呼んでこよう。
「私は神社からお酒持ってくるわね!」
霊夢の音頭を皮切りに、館は俄かに騒がしくなり始めた。