東方護郷譚・廻~幻想を護る者達~ 作:しがない東方二次創作者
~紅魔館 パーティーホール~
side-影政
「――お集まりの皆様、ごきげんよう。私がこの『紅魔館』の主『レミリア・スカーレット』よ。まず、
―――宴会の準備が終わり、参加者一同が前に並ぶ『紅魔館』の住人達に注目する中、レミリアは自己紹介し、謝罪の言葉を述べて頭を下げる。
「...影政、霊夢、魔理沙。この三人に倒された以上、また
「『フランドール・スカーレット』、レミリアお姉様の妹だよ!ちょっと長い名前だから気軽に"フラン"って呼んでね!皆と仲良くなれたら嬉しいな!」
「...『パチュリー・ノーレッジ』よ。魔法使いだけど、この館の地下にある大図書館の司書でもあるわ。蔵書は私でも把握しきれない程大量で多種多様だけど、
「パチュリー様の使い魔、『小悪魔』と申します。大図書館の司書補も兼任しています。大図書館が見たいという方は私にお申し付けくださればご案内しますね」
「紅魔館メイド長『十六夜咲夜』と申します。今回は給仕を主にさせていただきますが...無礼講とはいえ、
「紅魔館門番『紅美鈴』と申します。この度は私達『紅魔館』の住人がご迷惑をおかけしたこと、申し訳ございませんでした。この宴会を通して、皆様と仲良くなれたらと思います」
紅魔館の住人が各々自己紹介する。
「...ま、少なくとも
「宴会やるって言い出したのは霊夢だろうが...まぁいいや。皆、持つもの持てよー」
霊夢から乾杯の音頭を任された魔理沙の言葉で、参加者各々酒やドリンクが注がれたグラスを手にする。
「――皆持ったな?それじゃ、
―――レミリア達紅魔館の住人の紹介が終わり、魔理沙の音頭で宴会が始まって二時間程経ち、既に日を跨いで翌日を今日として迎えた。明らかに洋装の空間で宴会と呼ぶのも変な気がするが、気にしないでおこう。
<...魔理沙から聞いたけど、貴女元々魔女だったらしいわね。どんな魔法を修めていたか、興味があるわ
<今はその日その時の気分に身を任せる気紛れな悪霊だけどね。その枯れちまった知識でいいなら教えてやるよ。
<...サニー、本当にやるの?
<当然よルナ!
<探検位別の日にでもやれるでしょうに...今回は上機嫌な霊夢からの誘いで参加できたこの宴会で満足したら?
<カニーヒェン、だったかしら?準備の手伝いに加わってくれたこと、改めて感謝するわ。...
<"カニン"で構いませんよ。従者としての心得や家事は『八雲藍』という式神の方から学びました。...藍さんから皆伝を認められた今でも、料理に関しては主様の境地に全く届いていませんが
<ふむ...貴女がいいなら、
<...お誘いは嬉しいですが、
パーティーホールには白いテーブルクロスを引いた丸テーブルと椅子があちこちに並べられ、招待を受けた参加者各々が好きに座って飲み食いや会話に興じている。
ホールの中央に、多種多様な料理と酒、ワイン、ソフトドリンクが並ぶテーブルがある。そしてホール内を咲夜を中心に妖精メイド達が忙しなく歩き回って給仕を勤めて...いるのは五指に入る程度で、大半は好き放題飲み食いするか遊んでいる。やはり妖精はメイドに向かないと思う。
―――閑話休題。
「――こんな所ですかね。お話ありがとうございます。いやはや、いつの間に
「霧を利用して魔法と結界で隠していたらしいからな。ルーンはそれをあっさりすり抜けて入りこめたそうだが」
「流石ルーンさん。後でインタビューしてみますかね。――で、ここからは『妖怪の山』の住人としての文句です。目覚めたなら
そんな会場の一角。俺の前でメモを取りながら鴉天狗の少女...『
"幻想郷最速"を謳う速さを活かした情報収集能力による情報の新鮮さが売りで、
情報が少ないと必然的に
―――文は
「すまない。目覚めて四日、そして挨拶、報告回りも途中で今回の
「幻想郷創造を成し遂げ、今まで護り続けてきた貴方が
文はビシッとペン(河童謹製のインク切れしない万年筆だ)の先を俺に指して宣言する。
「――じゃ、私はこの館の関係者辺りにお話聞いてきますね!あ、明日から新聞も届けるのでそのつもりで!」
文はそう言い残して次のインタビュー対象を求めて歩き去る。
「...さて、少し歩くか」
中央のテーブルから霊夢が持ってきたらしい日本酒(幻想郷には無い銘、恐らく過去に紫が
<『――それじゃ、次はソロだよ!我ら騒霊楽団のゲストのフルートの音色に酔いしれろ!』
<『不肖ルーン・スティルゲイズ、ソロで一曲吹かせて貰うよ』
会場の奥には舞台があり、そこでは『騒霊楽団』とそのゲスト枠として加わっているルーンが宴会に歌曲を添えていた。ちょうどルーンが
―――フルート以外にもルーンは様々な楽器を演奏できる。本人は趣味の一つだと言っているが、所作も音色も
「わぁ...お兄様すごーい!フレアもそう思うでしょ?!」
「うん。...創造主様は、多彩な人なんだね」
ルーンの演奏を最前列で聞いているフランの嬉しそうな声を背にして再び歩き出す。
「...む。影政、今は一人か?」
「さっき
「あぁ。目覚めたことの報告が遅いと軽く怒られた」
外の夜空がよく見える大窓(間違いなく空間操作の産物だろう)の傍のテーブルで談笑していた慧音と妹紅の近くを通りかかると声をかけられた。
「
慧音はそこで口を噤む。
「そりゃあアイツも怒るわな。感謝もお礼も無しに飛んで行って決戦、
「...それくらいは甘んじて受け止めるさ」
半目で俺を睨む妹紅の言葉に何も言い返せず、苦笑してそう答える。
「...って、いかんな。宴の席で説教臭くなってしまった。まぁ、座ってくれ。話を変えようか」
「だな。改めて、
「あぁ。二人も人里の防衛お疲れさん。里は霧で被害が出たか?」
慧音に空いてる椅子を示されてそこに座りながら尋ねる。
「少し
「私と宗二で全部ぶっ飛ばしたよ。アイツの大槌で派手にかっ飛んでいく様を見たのは久しぶりだったね」
<...ゴフッ...噓だろ...
<こ、こんな娘に負けるなんて...
<師匠も小兎姫さんもどうしたのー?このお酒美味しいし、飲みやすいのに...
妹紅が向けた視線の方を見やれば、飲み比べでもしていたのか小首を傾げる小傘の前で突っ伏す宗二と小兎姫の姿があった。宗二は結構酒に強いはずだが...意外にも小傘はザルなのかもしれない。二人に視線を戻す。
「そうか。里に被害が無くて何よりだ」
「
「長引きそうなら私も加勢しようかと思っていた矢先に、
妹紅は悔しさを飲み込むようにグラスの酒を呷る。
「妹紅も言ってるように、必要な時は遠慮なく頼ってくれよ。出来る限り応えよう」
「あぁ。その時はよろしく頼む。...そろそろ行くとしよう。宴会を楽しんでくれ」
慧音の言葉に頷き、席を立つ。
「充分楽しんでるよ。ワインなんて滅多に飲めないしね」
「あぁ。またな、影政」
二人に見送られながら歩き出す。
「...あ、影政様」
「阿求か。レミリアとの話は終わったのか?」
「はい。縁起に必要な情報は集まりました」
今度は阿求に声をかけられた。宴会が始まって早々にレミリアの下に向かって文と一緒に話を聞いていたが、一通り聞きたいことは聞けたようだ。記憶した内容を整理していたのか、テーブルには文や言葉が綴られた紙の束が置かれている。阿弥に似て活動的だ。
「影政様、此度の
阿求はそう言って微笑む。
「慧音が
「はい。幸い邸までは届かなかったので、
幸い阿求は
「無事なようで何よりだ。...まだ、酒も料理も手を付けてないのか?」
「お料理は摘めるものは少しいただきましたが、お酒はまだですね。ですが、記憶の整理もひと段落したのでこれから宴に混ざろうかと。...小兎姫を見ませんでしたか?」
「向こうで宗二と小傘とで呑んでいたぞ。...飲み比べで宗二共々小傘に負けていたが」
「小兎姫ったら...大して強くないのに飲み比べなんて。兎も角、ありがとうございます。影政様も、宴を楽しんでくださいね」
阿求は頭を下げ、小兎姫達の方へ向かう。それを見送り、再度歩き出す。
<お~?大ちゃんが二人いるぞ~?
<チルノちゃん、まさかお酒飲んじゃったの...?!
<食べ物沢山、美味いのだー
<ほらほらパチュリー、もっと飲めよー
<そんなにいらないわよ。...私を酔い潰した隙に本を盗むなんてさせないわよ
<...ほらもっと飲めよ。いいから飲め
<図星だからってゴリ押しても無駄よ
<お兄様、私も楽器演奏してみたい!
<あらあら〜。フランちゃんは、何か弾ける楽器はあるの~?
<...無い!
<それ胸を張ることかな?...じゃあ、ちょっとだけピアノ弾いてみよっか
<全く、妖精は使えないのが多いわね...
<妖精は気まぐれでイタズラ好きですからねぇ。...他の種族の方を雇うとか、どうですかね?
<...さっき話したカニンって兎は有望だったわね。でも、私並に主への忠誠が高いから無理だったわ
<...であれば、ここで働けるのは妖精か妖怪か、私みたいな悪魔しかいませんねぇ
<へぇ、美鈴は海向こうの大陸出身なのか
<はい。これでも四千年生きてるので、古今色々な武人と手合わせしてきたんですよ
<四千年...歴史の編纂者として実に興味深い。色々聞かせてくれ
<...武人との手合わせや、傭兵として戦争に参加したことくらいしか話せませんよ?
<構わない。一介の武人や傭兵の視点からでも得られる歴史はあるからな
―――会場のあちらこちらで誰もが楽しそうに飲み食いや談笑に興じている。紅魔館の住人も馴染んで来ているようだ。
「...主様、今お一人ですか?」
歩いていると、カニンが話しかけて来た。
「カニンか。あぁ、そうだ。...宴会、楽しんでいるか?」
「
<まてまてー!
<わーにげろー!
カニンはそう言って苦笑する。さっき会話を耳にしたが、やはり妖精をメイドとして使うには向かないようだ。俺達の背後で、給仕そっちのけで追いかけっこをしてるらしい妖精メイドのものらしき声が通り過ぎていく。
「妖精は気まぐれでいたずら好きだからな。誰かの命令で動くというのは嫌いだろう」
「そうですね。...でも、実質お一人で館の仕事の大半を熟しているだけあって、かなり家事や掃除の腕はあるようです。私は藍さんから多くを学びましたが、あの方からも学べる事はありそうです」
どうやらカニンは咲夜に興味を持ったらしい。この宴会を通して彼女も新たな繋がりを持とうとしているようだ。
「...主様、改めて
「ありがとう、カニン。そっちも、結局妖怪の襲撃は無かったがよく我が家を護ってくれた」
カニンの労いの言葉にそう返す。彼女を宴会に招く為に一度帰宅した際に聞いたが、幸い我が家には
「『弾幕ごっこ』を制定してから初めて起きた大きな
「何故もっと早く思い付かなかったのかと言いたくなったな。少し危うい場面もあったが、血を流さずに解決を成せた。実績ができれば普及も早まるだろう」
カニンの質問にそう答える。『弾幕ごっこ』は幻想郷を変えるだろう。ルーミアやチルノと言った、そこまで力が無い妖怪でも戦えて、
「なるほど...主様もそのように認めるなら、『弾幕ごっこ』はこれからの基本的な戦い方になりそうですね」
「そうだな。弾幕を張れるだけの力があれば誰でも
ふと、出入口が開け放たれたバルコニーに見覚えのある人影二つを見付けた。一人はレミリア、もう一人は―――紫だった。どうやらいつの間にか来ていたらしい。
「...主様?」
「――紫を見付けた。いつの間に来ていたようだ。少し話してくるが、構わないか?」
「勿論です。行ってらっしゃいませ」
カニンの下を離れ、バルコニーに向かう。
「...あら、影政」
「あら、影政。宴会は楽しんでる?」
バルコニーに出ると、予想通りレミリアと紫が話していたようだ。俺に気付いて話しかけてくる。
「あぁ、楽しんでるよ。...紫、藍と橙は留守番か?」
「
「そうか。...二人は何を話していたんだ?」
藍と橙が居ない理由を把握し、逆に尋ねながら二人の傍に立つ。
「"賢者"として、幻想郷の新たな住人とお話したいと思ってね」
「こっちも幻想郷について聞いていたわ。...ここは本当に、
レミリアはそう言ってワインを一口飲み、夜空に目を向ける。
「影政、目覚めて早々に
紫はそう言って微笑む。
「――貴方のことも、紫から聞いたわ。幻想郷創造から今まで、
レミリアは口を噤む。
「レミリアが気に病む必要は無い。俺が
「...ほら、気にする必要は無かったでしょう?」
「...そうね」
レミリアは俺の返答に一瞬呆けるが、誤魔化すようにワインを飲む。
「...紫、"賢者"としてレミリア達を迎えるのに異存は無いな?」
「勿論ですわ。貴女達の挨拶の時に霊夢も言っていたけど、今回のような
紫は
レミリアが起こした様な
「...そう言ってもらえると嬉しいけど、しばらくは
「それがいいだろう。頻繫に
「こ~ら~!そんなところで何やってんのよ~!!」
突然間延びした大声が聞こえてきたと思いきや、顔を真っ赤にした霊夢が一升瓶片手にバルコニーの出入口に立っていた。微かに酒の臭いが漂ってきて鼻を突く。
「こっち来て呑みなさ~い!じゃなきゃ退治するわよ~!!」
「...出来上がってるな」
「...私やフランと交戦していた時と大違いなんだけど」
「ふふ、霊夢は飲み会、宴会の規模に比例して酔いが酷くなるのよ。退治されちゃう前に会場に戻りましょうか」
「紫は分かってるわね~!ほら~、アンタらも来なさ~い!!」
困惑せざるを得ない俺とレミリアの言葉に紫はクスクスと笑いながら答え、霊夢を連れて会場に歩き出す。
「...影政といい、霊夢といい、退屈することはなさそうね」
レミリアは呆れつつも嬉しさを含んだため息を吐き、後を追うように歩き出す。レミリアも、
「――レミリア」
「――何かしら?」
レミリアを呼び止める。
紅霧異変、超ハイペース投稿終了!
次回から挨拶回りですが、何話か新規で追加しますのでお楽しみに